Trademark Appeal Case
商標の識別力と公序良俗
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2020−900060(T2020−900060/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第6219562号商標(以下「本件商標」という。)は、「インスタントクール」の片仮名及び「INSTANTCOOL」の欧文字を2段に表してなり、平成31年4月22日に登録出願、第21類「化学物質を充てんした保温保冷具」を指定商品として、令和2年1月8日に登録査定、同月24日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由の要点
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、本件商標に係る指定商品(以下「本件指定商品」という。)について、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第7号に該当するものであるから、その登録は、取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第15号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
1 商標法第3条第1項第3号及び同項第6号該当性について
(1) 本件商標は、「インスタントクール」の文字と「INSTANTCOOL」の文字を上下2段に表してなり、かかる語は、「瞬時冷却」の意味で用いられており(甲4ないし甲9)、本件指定商品の品質あるいは特徴の説明と観念が同一であるから商品の品質を表すものであって、宣伝広告を表示したにすぎず、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2) 本件指定商品を扱う取引の場においては、瞬時に冷えることを標榜する保冷剤が各種、多数存在し、これらは商品名に付加して「瞬間冷却」「急速冷却」「急冷」などの説明文を表示しており、本件商標が本件指定商品に使用されても、当該商品の品質の説明文としての機能しか果たさず、本件商標は需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないから、商標法第3条第1項第6号に該当する。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1) 本件商標権者の代表取締役は申立人の企業に在籍していた経緯があり(甲1及び甲2)、退社時に在職中に知り得た業務上の情報の取扱いなどに関する合意書を締結した(甲10)。
(2) 本件商標の出願は、上記(1)の合意書の契約に反し、申立人の商品情報を剽窃したものであり、このような違法行為に基づく商標出願は社会的正当性を欠くものである。また、本件商標権者の代表取締役は、申立人の商品「瞬間冷却パック」の顧客吸引力に便乗する目的で、同商品の「INSTANT COOLING PACK」に酷似した文字を本件商標に剽窃して使用したことは明らかであるから、商標法の予定する公正な協業秩序に対する侵害であり、公の秩序を害するおそれがあるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
第3 当審の判断
1 商標法第3第1項第3号及び同項第6号該当性
本件商標は、「インスタントクール」の片仮名と及び「INSTANTCOOL」の欧文字を2段に表してなるところ、その構成中「INSTANT」及び「インスタント」文字は「即席、即座」の、「COOL」及び「クール」の文字は「涼しくさわやかなさま、清涼」の意味を有する語として親しまれていることから、その構成全体からは、「即座に涼しい」ほどの意味合いを暗示させる場合があるとしても、申立人が提出した証拠によれば、本件指定商品を取り扱う業界において、「瞬間冷却」「急速冷却」「急冷」の文字が使用されている実情(甲4ないし甲9)はうかがえるものの、「インスタントクール」「INSTANTCOOL」の文字が、本件商標の登録査定時に、商品の品質等を表示するものとして、取引上一般に使用されている事実は発見できず、さらに本件指定商品の取引者、需要者が、当該文字を商品の品質等を表示したものと認識するべき事情も発見できなかった。
そうすると、本件商標は、「即座に涼しい」ほどの意味合いを暗示させる場合があるとしても、その構成全体として特定の意味合いを想起させない一種の造語として認識、理解されるとみるのが相当であるから、本件商標をその指定商品について使用しても、商品の品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいうことができず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものといえるから、商需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものともいえない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同第6号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第7号該当性
申立人は、本件商標の商標登録出願の経緯について、本件商標権者の代表取締役は申立人の企業に在籍していた経緯があり、退社時に在職中に知り得た業務上の情報の取扱などに関する合意書を締結したが、本件商標の出願は、上記の合意書の契約に違反するものである。また、本件商標権者の代表取締役は、申立人の商品の顧客吸引力に便乗する目的で、同商品に酷似した文字を本件商標に剽窃して使用したことは明らかであるから、商標法の予定する公正な協業秩序に対する侵害であり、公の秩序を害するおそれがある旨主張しているが、上記申立人の主張は、私人間の紛争というべきであり、私人間の紛争は、本来、当事者間の交渉等によって解決、調整が図られるべき事項であって、当事者間の合意に反する行為が、社会的正当性を欠き、商標法の予定する公正な協業秩序に対する侵害であり、公の秩序を害するおそれがあるものと解すことはできない。
そうとすれば、本件商標は、その出願の経緯において、社会的相当性を欠くといった事情等も認められず、その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合に該当し、その出願経緯などに公序良俗に反するおそれがあるとも認められない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標には当たらないから、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第7号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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