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Trademark Appeal Case

ARM商標の類否と著名性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2019−900224(T2019−900224/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第6146897号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第6146897号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1に示すとおりの構成よりなり,平成30年6月5日に登録出願,第41類及び第42類に属する別掲2のとおりの役務を指定役務として,令和元年5月9日に登録査定,同月24日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する商標

1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標に係る登録異議の申立て(以下「本件異議申立て」という。)において,本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は,以下の6件であり,いずれも,登録商標として現に有効に存続しているものである(以下(1)ないし(6)をまとめて「引用商標」という。)。

(1)登録第5318225号商標(以下「引用商標1」という。)は,「ARM」の欧文字を標準文字で表してなり,平成19年4月27日に登録出願,第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として,同22年4月23日に設定登録され,その後,令和2年6月9日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

(2)登録第5815180号商標(以下「引用商標2」という。)は,「ARM」の欧文字を横書きしてなり,2014年6月17日に域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,平成26年9月25日に登録出願,第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として,同27年12月25日に設定登録されたものである。

(3)登録第5889420号商標(以下「引用商標3」という。)は,「ARM」の欧文字を横書きしてなり,2014年6月17日に域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,平成26年9月25日に登録出願,第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として,同28年10月21日に設定登録されたものである。

(4)登録第5931828号商標(以下「引用商標4」という。)は,別掲3のとおりの構成からなり,平成28年7月21日に登録出願,第9類,第16類及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同29年3月17日に設定登録されたものである。

(5)登録第6049275号商標(以下「引用商標5」という。)は,「arm」の欧文字を横書きしてなり,平成29年7月31日に登録出願,第9類及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同30年6月8日に設定登録されたものである。

(6)登録第6049276号商標(以下「引用商標6」という。)は,「Arm」の欧文字を標準文字で表してなり,平成29年7月31日に登録出願,第9類及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同30年6月8日に設定登録されたものである。

2 申立人が本件異議申立てにおいて,本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は,「Arm」の欧文字からなる商標であって,申立人の名称として長年にわたって使用され,申立人を表示するものとして著名な商標であると主張するものである(以下「使用商標」という。)。

第3 登録異議の申立ての理由(要点)

申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第8号,同第11号及び同第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号該当性

本件商標は,引用商標と外観・観念・称呼において紛らわしい類似商標であり,また,本件商標の指定役務も引用商標の指定役務と同一又は類似するものを含むことから,商標法第4条第1項第11号に該当する。

2 商標法第4条第1項第15号該当性

申立人の使用商標は,申立人の国際的な著名商標であって,本件商標は,申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生じさせるおそれがあるから,商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 商標法第4条第1項第8号該当性

本件商標は,その構成中に申立人の著名な略称である「Arm」を含むものであって,申立人の承諾を得ていないものであるから,商標法第4条第1項第8号に該当する。

第4 当審の判断

1 使用商標ないし申立人の略称としての「Arm」の周知・著名性について

(1)申立人の提出に係る甲各号証及び同人の主張によれば,以下のとおりである。

ア 申立人「アーム・リミテッド(Arm Limited)」は,1990年に設立され,英国に本社を置く会社であって,ソフトバンクグループの傘下にあり,プロセッサや中央処理装置(CPU)の設計・ソフトウェアの開発を行う会社である(甲8,甲9)。

また,申立人の技術により設計されたプロセッサや中央処理装置(CPU)は,スマートフォン,タブレット端末,ルーター等のあらゆる電子機器に使用されており,その技術を利用した製品は,世界中の1,300億以上の電子機器に搭載され(同上),特に,半導体の設計の分野で圧倒的なシェアを有している旨主張している。

イ 申立人は,ソフトバンクグループの買収によって,我が国の新聞等のメディアに紹介された(甲10〜甲23)。

ウ 申立人の2018年度第3期の財務状況表において,2017年の売上が18億3,100万ドル(約2,000億円),ライセンス契約は511社に及んでいる旨主張している(甲24)。

エ ソフトバンクグループによる「戦略的提携について」と題する資料(2016年7月18日付)には,申立人の買収経緯及び提携について記載され(甲25),「ソフトバンクグループ社によるアーム社の事業に関する説明資料」とされる資料には,申立人の半導体の累計出荷数は1,200億個,2017年の市場シェアは39%と記載されている(甲26)。

オ 「ソフトバンクグループ社によるアーム社の事業に関する説明資料」とされる資料には,申立人の財務情報,中国への事業拡大のためのベンチャー会社の設立について説明され,アマゾン社が申立人の技術を採用したサーバーを大量に採用した旨記載されている(甲27)。

(2)判断

ア 使用商標の周知・著名性

上記(1)によれば,申立人は,1990年に設立された英国に本社を置く会社であり,「プロセッサや中央処理装置(CPU)の設計・ソフトウェアの開発」の分野で業務を行っており,「プロセッサ及び中央処理装置(CPU)の設計,コンピュータソフトウェアの開発,半導体の設計」の役務を提供していることがうかがえる(以下,これらの役務を「申立人提供役務」という。)。

また,同人は,2016年に,ソフトバンクグループの買収により同グループの傘下となり,そのことが我が国のメディアに紹介されたことが認められる。

さらに,使用商標「Arm」の欧文字は,申立人の社名を構成する文字の一部であることが認められる。

しかしながら,証拠として提出された甲各号証は,ソフトバンクグループが申立人を買収した新聞記事やインターネット記事(甲10〜甲21),ソフトバンクグループが作成した申立人との戦略的提携等に関する資料(甲25〜甲27)等であって,我が国において申立人提供役務について使用商標を使用した事実やその使用状況を具体的に示すものではない。

また,申立人の財務状況表とされる英文の書面(甲24)により,2017年の売上が18億3,100万ドル(約2,000億円),ライセンス契約は511社に及んでいる旨主張しているが,当該書面の翻訳文の提出はなく,3頁にわたる表形式の記載内容のいかなる部分が申立人提供役務について使用商標の周知・著名性を示すものなのかを把握することができないばかりか,当該資料の内容が事実であることを裏付ける客観的な証拠の提出もない。

さらに,2017年度決算説明会において半導体の出荷数を1,200億個,市場シェア39%であり,各事業分野の市場シェアを説明したとする説明資料(甲26)を提出しているが,我が国において,使用商標が付された商品・役務の販売(提供)数,売上高などの実績を示す証拠は見いだせず,使用商標の使用状況を具体的に示す資料とはいえないものである。

してみれば,甲各号証によって,使用商標の使用状況を具体的に把握することはできず,その周知性の程度を推し量ることができないから,これらの証拠に基づいて,使用商標が使用された結果,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人提供役務について周知・著名性を獲得していたということはできない。

その他,使用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間で,申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。

したがって,使用商標は,申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者の間に広く認識され,周知・著名性を獲得していたということはできない。

イ 申立人の略称としての著名性

「Arm」の欧文字は,申立人の社名の一部であるとしても,申立人が提出した甲各号証からは,「Arm」の欧文字が,我が国において申立人の略称を表示したものとして単独で使用され,申立人の略称として一般に広く認識されていることを認め得る証左は見いだせないことから,当該欧文字が申立人の略称として我が国において著名となっていたと認めることはできない。

2 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標

本件商標は,別掲1のとおり,左側に濃淡のある青色で表された円図形内に,白抜きで表された右回りの上向き三角形状図形と,左回りの下向き三角形状図形を,それぞれ上下の頂点が青色の曲線で一部外側に飛び出すように表された図形(以下「図形部分」という。)を配し,右側に青色で表された「ARM」及び灰色で表された「Standard」の欧文字を上段に表し,その下段に「アームスタンダード」の片仮名(以下「ARM」及び「Standard」の欧文字と「アームスタンダード」の片仮名を合わせて「文字部分」という。)を配した構成よりなるところ,当該図形部分と文字部分とは,視覚的に分離して看取されるものである上,常に一体不可分のものとして認識すべき事情を有するものではないから,それぞれ独立して自他役務の識別標識として機能を果たす要部と認識されるものとみるのが自然である。

また,図形部分は,我が国において特定の称呼及び意味合いを有するものとして親しまれているという事情は見いだせないことから,特定の称呼及び観念は生じない。

一方,文字部分は,その構成中の「ARM」の欧文字と「Standard」の欧文字とが半角程度の間隔を設け,異なる色彩をもって表されているとしても,「ARM」の欧文字と「Standard」の欧文字のいずれか一方が,識別標識として強く支配的な印象を与えるものとみることはできないから,当該欧文字は一体のものとして認識されるというべきである。

そして,下段の片仮名は,上段の欧文字の読みを特定したものと無理なく理解されるものであり,当該片仮名に相応して,文字部分からは「アームスタンダード」の称呼が生じる。

そして,「ARM Standard」の欧文字及び「アームスタンダード」の文字は,一連の語として辞書等に採録がなく,特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないことからすれば,一種の造語として把握されるものである。

そうすると,本件商標は,文字部分に相応して「アームスタンダード」の称呼を生じ,また,特定の観念を生じないものである。

(2)引用商標

引用商標1ないし引用商標3,引用商標5及び引用商標6は,「ARM」,「arm」又は「Arm」の欧文字からなるものである。

また,引用商標4は,別掲3のとおり,上3分の1を青色で,下3分の1を白色で表した長方形中の左下部の白色部分に,青色で「ARM」の欧文字を配した構成よりなるものである。

そうすると,引用商標はいずれも「ARM」のつづりからなる欧文字を有するものであるところ,当該文字は,「腕」を意味する英語であり(コンサイス英和辞典第13版。以下同じ。),我が国においてもその意味が広く一般に知られている「arm」と同じつづりであるから,当該構成文字に相応して「アーム」の称呼を生じ,「腕」の観念を生じるものである。

(3)本件商標と引用商標の類否

本件商標と引用商標は,上記(1)及び(2)のとおりの構成よりなるところ,全体の外観においては,図形の有無又は図形の形状及び構成文字数に明らかな差異を有するものであり,本件商標の文字部分と引用商標との比較においても,その構成文字数が大きく異なること等からすれば,両者は,視覚的な印象が著しく相違し,外観上,判然と区別し得るものである。

次に,称呼においては,本件商標から生じる「アームスタンダード」の称呼と引用商標から生じる「アーム」の称呼とは,「スタンダード」の音の有無という明らかな差異を有するものであるから,称呼上,明瞭に聴別し得るものである。

そして,観念においては,本件商標は,特定の観念を生じないものであるのに対し,引用商標は,「腕」の観念を生じるから,観念において紛れるおそれはないものである。

そうすると,本件商標と引用商標とは,外観,称呼において明確に相違し,観念においても紛れるおそれはないことから,これらを総合して全体的に考察すれば,本件商標は,引用商標と商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれのない非類似の商標というのが相当である。

(4)小括

以上によれば,本件商標と引用商標とは,その外観,称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標であるから,本件商標の指定役務と引用商標の指定役務とが同一又は類似するものであるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)使用商標の周知・著名性

使用商標は,上記1(2)のとおり,申立人又は申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者の間に広く認識されていたものとは認められないものである。

(2)本件商標と使用商標の類似性の程度

ア 本件商標

本件商標は,上記2(1)のとおり,図形部分と「ARM Standard」及び「アームスタンダード」の文字部分からなるものであるところ,文字部分が要部になり得るものであり,その構成文字に相応して「アームスタンダード」の称呼を生じ,また,特定の観念を生じないものである。

イ 使用商標

使用商標は,「Arm」の欧文字を横書きしてなるものであるところ,その構成文字に相応して,「アーム」の称呼を生じ,「腕」の観念を生じるものである。

ウ 本件商標と使用商標の類似性の程度

本件商標と使用商標は,外観,称呼において明確に相違し,観念においても紛れるおそれはないことから,これらを総合して全体的に考察すれば,本件商標と使用商標は,非類似の商標であり,両者の類似性の程度が高いとはいえないものである。

(3)使用商標の独創性

使用商標を構成する「Arm」の欧文字は,「腕」の意味を有する英語として,よく知られた語であることから,その独創性の程度は低いものである。

(4)役務の関連性,需要者の共通性

本件商標の指定役務中,第42類に属する「機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計」,「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の設計に関する助言」,「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」,「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守に関する助言」等の役務と申立人提供役務とは,同一又は類似の役務であって,その需要者を共通する場合があり,役務の関連性はあるものといえる。

しかしながら,本件商標の指定役務中,第41類に属する全指定役務及び上記以外の第42類に属する多数の指定役務と申立人提供役務とは,その提供の目的・手段及び役務の提供者が異なり関連性が高いとはいえず,また,需要者の範囲も一致しないものである。

(5)判断

以上(1)ないし(4)を総合的に判断するに,使用商標は,申立人又は申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであり,また,本件商標と使用商標とは,類似性の程度は高いとはいえず,さらに,使用商標の独創性の程度は低いものである。

加えて,本件商標の指定役務中,第41類に属する全指定役務及び第42類に属する多数の指定役務と申立人提供役務とは,その提供の目的・手段及び役務の提供者が異なり,需要者の範囲も一致しないものである。

そうすると,本件商標の指定役務と申立人提供役務とが一部の役務において関連性を有し,需要者が一致する場合があり,使用商標が申立人の社名の一部であるとしても,本件商標権者が,本件商標をその指定役務について使用をした場合において,これに接する取引者,需要者は,使用商標又は申立人を連想,想起することはないというべきであり,本件商標は,その取引者,需要者をして,他人(申立人)の業務に係る役務であるかのように,役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものということはできない。

(6)申立人の主張について

申立人は,別件商標に対して,申立人の使用商標を引用して商標法第4条第1項第15号に基づく拒絶理由が通知されているから,本件商標も同第15号に該当する旨主張している(甲28)。

しかしながら,商標法第4条第1項第15号該当性については,個別,具体的に判断されるべきものであり,また,商標の周知・著名性については,当該商標の使用状況について具体的,客観的証拠によって認定されるべきものであるところ,本件異議申立てにおいて,申立人の提出に係る証拠等を検討した結果,上記1(2)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,使用商標が我が国において,申立人の業務に係る商品及び役務について需要者の間に広く認識されていたとはいえないとの判断,認定に至ったものであり,別件の商標登録出願において拒絶理由が通知されたことによって上記判断,認定を覆すことはできないことから,申立人のかかる主張は採用できない。

(7)小括

その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第8号該当性について

上記1(2)イのとおり,「Arm」の文字は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の略称として著名になっていたということはできない。

してみれば,本件商標は,その構成中に「ARM」の文字を有しているとしても,他人の著名な略称を含む商標とはいえない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当しない。

5 まとめ

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号,同第15号及び同第8号のいずれにも該当するものでなく,その登録は,同条第1項の規定に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。

よって,結論のとおり決定する。

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