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Trademark Appeal Case

著名商標の類否と混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2019−900126(T2019−900126/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第6117299号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第6117299号商標(以下「本件商標」という。)は,「PHILLIPS」の文字を標準文字で表してなり,平成30年5月8日に登録出願,第12類「原動機付きオートバイ・自転車並びにそれらの部品及び附属品,電動式オートバイ・自転車並びにそれらの部品及び附属品,自転車・電動自転車並びにそれらの部品及び附属品」を指定商品として,同31年1月8日に登録査定,同月25日に設定登録されたものである。

なお,本件商標の商標権は,商標登録原簿の記載によれば,令和元年11月28日に放棄の申請がなされ,その登録は抹消されているものである。

2 登録異議申立人が引用する商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議の申立ての理由において,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は別掲1に示すとおりであり(以下,全てをまとめて「引用商標」という。),いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由

申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第63号証を提出した。

申立人は,日本国においてフィリップス社の商標に関して多数の登録商標(甲2〜甲57)を有している。これらは多岐にわたる商品・役務に用いられ,特定の商品・役務に限られない市場における広範囲な分野においてフィリップス社を示すものとして著名な,また申立人が排他的な権利を有する商標である。

(1)本件商標と引用商標の類似性について

本件商標は,「PHILLIPS」の文字から「フィリップス」の称呼のみを生じるものであるのに対して引用商標は「PHILIPS」の文字又は「フィリップス」の片仮名から,それぞれが「フィリップス」の称呼のみを生じるものであるから,本件商標と引用商標とは称呼を共通にする。

また,本件商標と「PHILIPS」の文字とは外観上「L」の欧文字が2つ連続するか否かの違いはあるとしても,それ以外の部分は一致しており,全体として極めて類似した印象を与えるものである。

したがって,本件商標と引用商標とは,類似の商標である。

(2)フィリップス社及び引用商標の著名性について

フィリップス社はオランダのアムステルダムに本拠を置く多国籍企業である。1891年創業以来,欧州を中心に照明機器事業を展開,その後,多種多様な電気機器に関与する総合電機メーカーへと成長,現在ではヘルスケア製品・医療関連機器を中心とする電機メーカーとして,100カ国以上で77000人以上の従業員を擁して事業を展開しており,2018年には2兆2240億円超の売り上げを記録している。フィリップス社は,2016年ないし2018年には,毎年継続して900ミリオンユーロ(約1100億円)の広告促進費用を計上して事業活動に当たっており,この費用はパナソニックにおける広告宣伝費に鑑みても大きい額である(甲61,甲62)。

また,フィリップス社は,我が国においては約2000名の従業員を擁し全国約80カ所に事業所を展開している。

フィリップス社は,これまで,FIFAワールドカップの公式スポンサーやF1ウィリアムズのメインスポンサーを務め,今現在もオランダプロサッカーリーグのPSVアイントホーフェンのスポンサーも務めている。

そして,我が国でもスポーツ・文化・芸術・ボランティア活動への関与を通じたフィリップスブランドの育成と活用によって,その認知度とブランド価値を高めてきた。同時に,1980年代から日本の全国ネットでテレビコマーシャルを展開するなど多くの広告費を投じ,かつ引用商標を効果的に使用することによって,我が国においてもその信用を今日まで維持・発展させてきた。

フィリップス社の図形と「PHILIPS」の欧文字を配したロゴ商標は,1934年にオランダで商標登録され,たちまち世界中で知られるフィリップス社のシンボルマークとなった。

さらに「PHILIPS」なる欧文字からなる商標等は,全世界で商標登録されている。そして世界各国において引用商標を用いた事業活動を行い,結果,フィリップスブランドは,例えば世界最大のブランドコンサルティング会社であるインターブランドによるグローバルなブランド価値評価ランキング2018年(甲58)の43位にランクインされており,またフォーブス誌の「世界で最も価値のあるブランド」ランキング(甲59)においても93位と,そのブランド価値は世界的に高く評価されている。

そうすると,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,特定の分野に限られず多岐にわたる分野において,取引者及び需要者の間に広く認識されており,その著名性は相当に高いものと認められ,その状態が現在においても継続しているものと認めることができる。

(3)本件商標と引用商標が付される商品等の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性について

上記(2)のとおり,フィリップス社及び引用商標の著名性は特定の商品・役務に限られるものではなく,引用商標に類似する商標が付された商品等に接する取引者及び需要者らが「かのフィリップス社」の商品であるという認識を抱くことは必至である。

特に,我が国では,フィリップス社と比較的近い一般消費者向け商品を扱っている総合電機メーカー(例えばパナソニック社,三菱電機社,三洋電機社など)が,本件商標の指定商品である「原動機付オートバイ・自転車並びにそれらの部品及び付属品,電動式オートバイ・自転車並びにそれらの部品及び付属品,自転車・電動自動車並びにそれらの部品及び付属品」に関する事業を展開していることが多々あり,一般需要者や取引者にとって,総合電機メーカーが製造販売する自転車関連商品を取引することはごく一般的なことと認識されている(甲60)。

したがって,引用商標を付した一般商品者向け商品等の取引者及び需要者は,本件商標を付した商品等の取引者及び需要者と相当の部分において共通すると考えられる。

(4)本件商標を,その指定商品に使用した場合,取引者及び需要者が「フィリップス社及び系列・関連会社の業務に係る商品である」と混同するおそれがあり,さらに事故や故障等により,その品質・性能如何によっては,類似する引用商標の価値評価を著しく損なう可能性が高いものであることから,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断

本件商標は,上記1のとおり,令和元年11月28日に,商標権が放棄され,本件商標権の登録の抹消がなされているが,本件商標権は,それまでは有効に存続していたものであるから,本件登録異議の申立てについて審理するものであり,以下のとおり判断する。

(1)引用商標の周知性について

ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば,次の事実が認められる。

(ア)フィリップス社は,1891年(明治24年)に創業した,オランダに本拠を置く多国籍企業であって,現在はヘルスケア製品及び医療関連機器を中心とする電機メーカーである。

(イ)「PHILPS」の文字からなる標章は,インターブランドの「ベストグローバルブランド」において,2018年に43位にランクインされており(甲58),フォーブスの「世界で最も価値のあるブランド」において93位にランクインされている(甲59)。

(ウ)フィリップス社の広告促進費用は2016年(平成28年)ないし2018年(平成30年)において900ミリオンユーロ(約1100億円)が計上されているが,我が国における広告費の金額は不明である(甲61)。

(エ)申立人は,我が国のスポーツ大会等においてスポンサー及びAEDの貸出し等を行っている(甲63)。

イ 判断

上記アの事実からすれば,フィリップス社は1891年(明治24年)に創業し,その広告促進費用は全世界で1100億円にのぼるものであり,海外においてはブランドランキングにランクインされていることは認め得る。

しかしながら,我が国における,フィリップス社の業務に係る商品の売上げの実績を裏付ける証拠は提出されておらず,フィリップス社の市場占有率等を客観的に示す証拠も見いだせない。また,フィリップス社がスポーツ大会等でスポンサー活動等を行っていることはうかがえるものの,フィリップス社の我が国における広告費等は確認できない。

そうすると,我が国におけるフィリップス社の業務に係る商品の売上げ,市場シェア及び広告等による引用商標の周知性の程度を推し量ることはできない。

また,海外においてはブランドランキングにランクインされているとしても,当該ランクと引用商標の我が国における周知性との関連は不明である。

したがって,提出された証拠によっては,引用商標がフィリップス社の業務に係る商品を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認められない。

(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について

ア 本件商標

本件商標は,「PHILLIPS」の文字を標準文字で表してなるところ,該文字(語)は,辞書類に「プラスドライバー」の意味を有する語として載録されているとしても,一般に広く親しまれた語であるとはいえないから,一種の造語として認識されるというのが相当である。

そうすると,本件商標は,その構成文字に相応して「フィリップス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。

イ 引用商標中,「PHILIPS」の欧文字からなる商標

引用商標中,「PHILIPS」の欧文字からなる商標(以下「引用PHILIPS」商標という。引用商標1,3,5,8,9ほか)について,当該文字は,辞書に載録されておらず,既成の語とはいえないものであるから,特定の意味や観念を有しない一種の造語として認識されるというのが相当である。

してみると,引用PHILIPS商標はそれぞれの構成文字に相応して「フィリップス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。

ウ 本件商標と引用PHILIPS商標の比較

本件商標と引用PHILIPS商標とは,中間に位置する「L」の文字の一つか二つの差異のみであって,他の構成文字は同じであることから,外観上,近似した印象を与えるものである。

次に,称呼においては,本件商標及び引用PHILIPS商標からは,共に「フィリップス」の称呼を生じるものであるから,その称呼を同一にするものである。

さらに,本件商標及び引用PHILIPS商標は,共に特定の観念を生じないものであるから,観念においては,比較することができない。

そうすると,本件商標と引用PHILIPS商標とは,観念においては比較することができないとしても,欧文字部分の外観において,近似した印象を与えるものであって,かつ,その称呼を同一にするものであるから,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合的に勘案すれば,両者は互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。

エ 本件商標と,「フィリップス」の片仮名からなる商標及び「PHILIPS」の欧文字と図形との結合商標との類否について

本件商標と,「フィリップス」の片仮名からなる商標(引用商標15〜18,20,24等)及び「PHILIPS」の欧文字と図形との結合商標(引用商標2,4,6,10,12,51,55等)とは,外観においては,その構成が相違することから,外観上,相紛れるおそれはない。

次に,称呼においては,両者は,共に「フィリップス」の称呼を生じるものであるから,その称呼を同一にするものである。

そして,観念においては,共に特定の観念を生じないものであるから,比較することができない。

そうすると,本件商標と,「フィリップス」の片仮名からなる商標及び「PHILIPS」の欧文字と図形との結合商標とは,外観において相違し,観念において比較できないとしても,称呼において同一であるから,その類似性は低いとはいえない。

(3)商品の関連性の程度,取引者及び需要者の共通性

上記第1のとおり,本件商標の指定商品は,第12類「原動機付きオートバイ・自転車並びにそれらの部品及び附属品,電動式オートバイ・自転車並びにそれらの部品及び附属品,自転車・電動自転車並びにそれらの部品及び附属品」であるところ,これらの商品は,いわゆる乗物及びその付属品である。

これに対し,引用商標の指定商品及び指定役務は別掲1のとおりであるところ,フィリップス社は,ヘルスケア製品及び医療関連機器を中心とする電機メーカーであるから,フィリップス社の業務に係る商品はヘルスケア製品及び医療関連機器を中心とする電機製品であるといえる。

そうすると,本件商標の指定商品とフィリップス社の業務に係るヘルスケア製品及び医療関連機器を中心とする電機製品とは,その提供者,用途及び機能が全く異なるものであり,商品の販売経路も異なるものであるから,本件商標の指定商品とフィリップス社の製造に係るヘルスケア製品及び医療関連機器を中心とする電機製品との関連性の程度及び取引者,需要者の共通性は低いものである。

(4)商標法第4条第1項第15号該当性について

引用商標は,上記(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,フィリップス社の業務に係る商品及び役務を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。

また,本件商標の指定商品と,フィリップス社の製造に係るヘルスケア製品及び医療関連機器を中心とする電機製品との関連性の程度及び取引者,需要者の共通性は低いものである。

そうすると,本件商標と引用商標とが類似し又は類似性が低いとはいえないとしても,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用したときには,これに接する取引者,需要者が引用商標を連想,想記することはないというべきであり,本件商標は,その取引者,需要者をして,当該商品がフィリップス社又は同人らと経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものとは認められない。

その他,本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(5)申立人の主張について

申立人は,我が国では,一般需要者や取引者にとって,総合電機メーカーが製造販売する自転車関連商品を取引することはごく一般的なことと認識されているから,引用商標を付した一般商品者向け商品等の取引者及び需要者は,本件商標を付した商品等の取引者及び需要者と相当の部分において共通する旨主張する。

確かに,我が国においては,電機メーカーが自転車関連商品を製造,販売している場合があるものの,上記(3)のとおり乗物と電機製品とは,関連性の程度及び取引者,需要者の共通性は低いものであり,またフィリップス社が本件商標の指定商品を製造,販売しているという証拠も提出されていない。

したがって,申立人の主張は,採用することができない。

(6)まとめ

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものではなく,その登録は,同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。

よって,結論のとおり決定する。

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