結論テキスト
審判費用は,請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2019−890022(T2019−890022/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第5868828号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1(1)のとおりの構成からなり,平成27年7月1日に登録出願,別掲1(2)のとおりの役務を指定役務として,同28年6月17日に登録査定,同年7月22日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録無効の理由において引用する商標は,以下のとおりであって,いずれも現に有効に存続しているものである。
商標の構成:旅
登録出願日:昭和51年11月16日
設定登録日:昭和55年2月29日
最新更新登録日:令和2年1月7日
書換登録日:平成23年4月6日
指定商品:第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」(第32類「ビール」については,最新更新登録時に,更新申請されていない。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成17年4月12日
設定登録日:平成17年11月18日
更新登録日:平成27年10月20日
指定商品:第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」
以下,引用商標1及び引用商標2をまとめて「引用商標」という。
請求人は,本件商標の指定役務中,第35類「酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」についての登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を審判請求書及び審判事件弁駁書において要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第30号証(枝番号を含む。)を提出した。
引用商標は,請求人の子会社,宝酒造株式会社により,商品「清酒」について,昭和57年(1982年)8月の販売開始より現在に至るまでおよそ40年近くの長きにわたって,継続して使用されている商標である。
(1)宝酒造株式会社のウェブサイト中,商品紹介ページの抜粋には,引用商標の使用に係る商品が掲載されている(甲4)。
(2)宝ホールディングス株式会社の90周年記念誌中,「<宝酒造>商品の歴史」頁の抜粋(甲5)及び宝酒造株式会社の社内報に掲載された,引用商標の使用商品の新発売に関する記事(甲6)により,引用商標の使用に係る商品が,1982年(昭和57年)8月に発売されたことが示されている。
(3)甲第7号証及び甲第8号証は,宝酒造株式会社マーケティング部発行の,酒販店向け小冊子「宝酒造ニュース」の抜粋であり,甲第7号証は昭和58年(1983年)6月25日発行,甲第8号証は昭和61年(1986年)5月1日発行のものである。
これらに示すとおり,引用商標の使用に係る商品は,昭和57年(1982年)の新発売後,すぐに人気の商品となり,発売翌年の昭和58年(1983年)6月には新ラベルの商品を追加して,「旅」にちなんだ全国の名勝地の風景を描いた8種類のデザインの商品を取り揃えたラインナップとなり,また,昭和61年(1986年)には,当時の級別制度による一級の商品に加えて二級の商品を拡充して,全国の酒販店や自動販売機にて,大々的に商品展開していた。
(4)宝酒造株式会社の商品カダログ中,引用商標の使用に係る商品の掲載箇所について,販売以来,現在に至るまで,隔年で抽出したもの(甲9〜甲26)から,引用商標が,商品「清酒」について,発売以来現在に至るまで,およそ40年近くにわたって継続して使用されている。
(5)これらに示すとおり,引用商標は,宝酒造株式会社の業務に係る商品「清酒」の商標として,永年,商品に顕著に表されて使用されてきた。
(1)本件商標は,動き商標であって,「商標の詳細な説明」に記載されているとおり,「ワクワク」の文字から「旅」の文字に徐々に変化する様子を表したものであり,本件商標の変化の後の標章(図5)が「旅」の文字を表したものである。
当該変化後の標章の「旅」の文字は,筆順の1画目・3画目・7画目・10画目の部分を黄色で,それ以外の部分を青色で表した構成よりなり,2画目の横棒部分においてステンシル風の切り欠き部分を有し,全体として2色使いで多少レタリングが施されてはいるものの,昨今の商取引において,需要者の注意を引き視覚的効果をねらう方法として文字を装飾的に図案化するなどの表現方法は広く一般的に採用されているところであるから,この程度のレタリング技法にあっては,「旅」の文字を装飾して表したものと直ちに把握し得るものであって,「旅」の文字以外の何物でもない。
したがって,本件商標は,時間の経過に伴い変化した後の状態である「旅」標章の構成文字に相応して,「タビ(旅)」の称呼及び観念を生ずる。
(2)これに対し,引用商標1は,「旅」の文字よりなり,引用商標2は,「旅」の文字を顕著に表した構成よりなるから,いずれも,「旅」の構成文字に相応して「タビ(旅)」の称呼及び観念を生ずるものである。
また,引用商標は,宝酒造株式会社により「清酒」について,40年近くにわたって使用されてきたものであって,ロングセラー商品の商標として強い識別力を有するものである。
(3)本件商標の変化後の状態である図5の標章は,本件商標権者の所有に係る登録第5913098号商標と同一の構成よりなるものであるが,同登録は,異議2017−900081号の異議決定により,引用商標1及び引用商標2と類似の商標と認定され,その指定役務中,第35類「酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について,登録が取り消されている(甲27,甲28)。
(4)してみれば,本件商標は,引用商標と,動き商標と文字商標の違いはあるとしても,「タビ(旅)」の称呼及び観念と,識別力の強い「旅」の構成文字自体も共通にするものであって,かつ,最終的に引用商標と類似の標章へと変化を遂げる商標であるから,これらの点を全体的に考察すると,本件商標と引用商標は,相紛れるおそれのある類似の商標といわざるを得ない。
(1)「動き商標」の類否に関する商標審査基準について
ア 商標法第4条第1項第11号に関する商標審査基準(以下「審査基準」という。)に照らして確認してみると,まず,「動き商標」の類否判断については,「6.(1)『動き商標の類否の判断は,動き商標を構成する標章とその標章が時間の経過に伴い変化する状態から生ずる外観,称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合して商標全体として考察しなければならない。』」「6.(4)(イ)『文字や図形等の自他商品・役務の識別機能が認められる標章が変化する動き商標と,その標章と同一又は類似の標章からなる図形商標等とは,原則として,類似するものとする。』」「6.(5)『自他商品・役務の識別機能が認められる標章が変化する動き商標の場合,その変化の前後の標章と当該標章からなる図形標章等とは,原則として類似するものとする。』」との基準が示されている。
イ これらの審査基準でいう「変化」には,「移動」のみならず,「変形」も含まれると解される。
ウ 「変化」に「変形」が含まれるとすれば,本件の動き商標の変化(変形)後の標章は,上記異議2017−900081号の決定(甲28)により,引用商標と類似と認定された商標と同一の構成よりなるものであるから,当該審査基準,特に,「変化の前後の標章と当該標章からなる図形商標等とは,原則として,類似するものとする。」との基準に該当することは明白であり,これより生じる外観・称呼・観念のそれぞれの判断要素を総合して商標全体として考察してみても,本件商標は,引用商標と類似するものである。
(2)商標の一般的類否判断基準との整合性について
ア 新しいタイプの商標の類否判断手法については,従来の文字商標等における判断手法と殊更に異なるものではないと解されるべきである。
イ 商標の一般的類否判断基準に照らして考察してみると,商標の類否判断方法については,「1.(1)『商標の類否は,出願商標及び引用商標がその外観,称呼又は観念等によって需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に観察し,出願商標を指定商品又は指定役務に使用した場合に引用商標と出所混同のおそれがあるか否かにより判断する。』」「1.(2)(ア)『商標の類否においては,全体観察のみならず,商標の構成部分の一部を他人の商標と比較して類否を判断する場合がある。』」との基準が示されている。
また,結合商標について,「4.(1)(ア)『結合商標は,商標の各構成部分の結合の強弱の程度を考慮し,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど強く結合しているものと認められない場合には,その一部だけから称呼,観念が生じ得る。』」とされている。
これらの点を総合すると,商標の類否判断においては,構成要素の一部が商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,各構成部分が不可分的に結合しているとはいえない場合等,分離観察することが妥当である場合には,商標の構成の一部だけを要部として抽出して他人の商標と比較し,商標そのものの類否を判断することも許されるべきといえる。
ウ 「動き商標」における「動き」そのものの識別力に関しては,「6.(2)『原則として,動きそのものについて,独立して自他商品・役務の識別標識としての機能を果たし得る部分(以下「要部」という。)として抽出することはしない。』」と明示されており,動き自体は自他商品・役務の識別力を有しないことは明らかである。
エ 本件商標は,「旅」の文字の構成要素が分解されて配置された「ワクワク」の文字が,変化(変形)して,最終的に「旅」の文字へと収束する様子を表した商標である。
動き商標は,「動くもの」,すなわち変化前の標章や動きの途中の各コマの標章,変化後の標章と「動き方」,すなわち動きの軌跡及び動きそのものを構成要素とするところ,動きそのものは,原則として自他商品・役務の識別標識としての機能を果たし得ないものであって,本件商標の動きも,特定の称呼,観念を生じるような軌跡を描くものではなく,識別力を有しない。かつ,本件商標の動きの途中の標章も,構成要素が分解されて配置された状態にすぎず,特定の称呼・観念を生じないため,印象の弱いものである。
そうすると,本件商標にあって,看者の記憶に残り,商品・役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるのは,変化前の「ワクワク」の文字と,変化後の「旅」の文字の標章といえ,かつ,全体として不可分的に結合しているとはいえないから,本件商標から,最終的な状態として看者の記憶に残る変化の後の標章の「旅」の文字を表した図5の標章を,商標の要部として抽出した分離観察も妥当なものである。
してみれば,本件商標は,異議2017−900081号の決定(甲28)のとおりに引用商標と類似の標章である,「旅」の文字を表した図5の標章に変化するものであるから,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合すれば,本件商標は引用商標と出所混同のおそれがある類似の商標といえる。
オ 上記のとおり,商標の一般的判断基準によっても,本件商標は引用商標と類似するといえ,また,「動き商標」に関する審査基準に基づく結論とも合致し矛盾しない。
「動き商標」についての審査例をみても,登録商標と類似すると判断されている(商願2016−76626号(甲29の1〜甲29の6),商願2016−79725号(甲30の1〜甲30の4))。本件商標は,これらと同様の条件下にあるものといえ,これらの例に照らしてみても,本件商標は引用商標と類似する。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(1)本件商標に関する被請求人の主張について
ア 外観
本件商標は,変化前の「ワクワク」の文字が,一旦ばらばらに分解され,何が表されているのか全く判読できなくなった状態を経て,「旅」の文字へと変化を遂げるものであるから,たとえ変化の動きが比較的短時間になされるものであったとしても,視覚上,一続きの「ワクワク旅」が表されたものといえず,変化の前後で分断して把握され,最終的に「旅」標章へ帰結する。そして,変化後の「旅」標章は,静止した状態で固定されるから,変化を遂げた最終的な状態として記憶に残りやすく,独立して看者の注意を引く。
してみれば,本件商標の外観において,全体が不可分的に結合したものとはいえず,変化後の「旅」標章を要部として抽出した分離観察も妥当である。
イ 称呼
本件商標は,変化後の最終状態として静止した状態で固定して記憶に止まる「旅」標章が,出所識別標識として強く支配的な印象を与え,この部分から,独立して「タビ」の称呼が生じる。
ウ 観念
被請求人は,本件商標から「ワクワクする旅」の観念が生ずるとして,証拠を提出しているが,「ワクワク旅」の文字が使用されている例が幾つかみられるとしても,広く一般に使用されているとまではいえず,熟語的語とはいえない。
また,本件商標は,変化前の「ワクワク」の文字の要素が,一旦ばらばらに分解され,判読不能となった後に,「旅」の文字へと変化を遂げるものであるから,変化の前後で分断して把握されるものであり,そもそも「ワクワク旅」なる一体の商標が表されたものでなく,本件商標から「ワクワクする旅」の観念が生ずるという被請求人の主張は失当である。
エ 以上のとおり,本件商標は,変化後の「旅」標章も,独立して出所識別標識としての機能を果たすものであり,本件商標が一体不可分のものとのみ把握されるとして引用商標とは類似しないという被請求人の主張には理由がない。
(2)分離観察の点について
本件商標は,変化前の「ワクワク」の文字の要素が,一旦ばらばらに分解され,判読不能となった後に,「旅」の文字へと変化を遂げるものであるから,変化の前後で分断して把握されることに加え,変化後の「旅」標章は,静止した状態で固定され,変化を遂げた最終状態として記憶に止まりやすいから,変化後の「旅」標章は,独立して看者の注意を引く。
また,被請求人は,酒を試飲又は購入する目的の旅が存在することを根拠に,「旅」の文字は自他役務の出所識別力は乏しく,役務の出所識別標識と支配的な印象を与えるものではないと主張するが,仮にそのような旅が存在するとしても,「酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」との関係においては,「旅」の文字自体が役務の質等を表したものとはいえず,当該役務について,自他役務の識別力を有しないとはいえない。
してみれば,変化の始まりの部分に「ワクワク」の文字を有するとしても,変化後の「旅」標章も,出所識別標識として,独立して看者の注意を引き,取引に資されるものといえ,この部分に着目した分離観察も妥当である。
(3)審査基準について
審査基準「6.(5)・・・その変化の前後の標章と当該標章からなる図形商標等とは,原則として,類似するものとする。」は,図形商標等と記載されているから,図形商標に限定されるものでなく,文字のみからなる,文字を要部とする場合の文字部分も含まれる。
そして,審査基準では,動き商標の類否判断の際には,構成全体でなく,変化後の標章を抽出した分離観察による類否判断も許容され,「その変化の前後の標章と当該標章からなる図形商標等とは,原則として,類似するものとする。」の基準どおり,本件商標は引用商標と類似する。
また,被請求人は,ホログラム商標の類否についての審査基準を挙げ,「単語及び熟語等が複数の表示面に分割されて表される等,もともとは一つの単語や熟語等であることが明らかな場合には,当該単語及び熟語等の一部からなる文字商標等,一つの表示面の標章と同一又は類似の標章からなる文字商標等とは,原則として,類似しないものとする」を参考にすべきとしているが,当該基準は,「もともとは一つの単語や熟語等であることが明らかな場合」が前提であり,本件商標は,熟語でもなく,「単語及び熟語等が複数の表示面に分割されて表される等」の一続きの表示方法でもないから,当該基準に当てはまらない。
(4)異議2017−900081号の決定例について
本件商標は,当該異議決定に係る商標と,動き商標と「旅」の文字からなる商標との違いはあっても,変化後の標章の構成を同一にするものであり,変化後の標章も独立して出所識別標識としての機能を果たし得る。
動き商標の類否の審査基準どおり,変化後の標章を抽出した分離観察による類否判断も許容されているから,当該異議決定の事案とは,同じ条件下にあり,同じ類似判断がなされるべきである。
(5)過去の審査例について
いずれも動き商標の構成中の一部,特に変化後の標章を抽出して文字商標等と類否判断がなされ,類似するとされた事例であり,本件商標は,これらと同様の条件下にある。
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第32号証を提出した。
(1)外観
本件商標は,全体として3秒で,黄色と水色で顕著にデザイン化された「ワクワク」の文字(図1)が,分解,移動及び結合を経て(図2〜図4),「旅」の文字(図5)に変化する動き商標である(甲1の2,乙1)。
本件商標の構成中,変化の終わりに登場する「旅」の文字は,変化の始めに登場する「ワクワク」の文字が変化してできあがるものであり,各文字は,文字を異にするものの,デザイン上,統一感がある。
そして,「ワクワク」の文字から「旅」の文字に徐々に変化する動きは,全体として3秒という比較的短い時間になされることから,本件商標に接する取引者・需要者は,「ワクワク」の文字と「旅」の文字とを分離して記憶・認識するのではなく,全体としてデザイン化された一つの「ワクワク旅」なる商標と無理なく自然に記憶・認識できる。
加えて,本件商標を全体として見ると,上記のとおり「ワクワク旅」なる文字を認識できるところ,そのうち「ワクワク」の文字は,5文字中4文字を占めており,しかも変化の始まりに登場する部分であるから,当該部分を省略して記憶することは通常ない。
「ワクワク」の印象は,「旅」の印象よりも高いか,あるいは少なくとも同等といえる。
また,本件商標においては,変化の終わりに登場する「旅」の文字部分だけが独立して,見る者の注意を引くように構成されているともいえないし,「ワクワク」が「旅」に比して印象が薄いということは決してない。
そうすると,本件商標は,構成される文字,デザインの統一感,変化の時間から,「ワクワク」の文字と「旅」の文字とを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど,不可分的に結合しているものといえる。
(2)称呼
本件商標の構成において,文字として認識できるのは,「ワクワク」と「旅」の部分であるところ,これら文字に相応して生ずる「ワクワクタビ」の称呼は,音構成がわずか6音にすぎず,語呂良く,淀みなく一気に称呼できる。
そして,本件商標は,「ワクワク」の文字から「旅」の文字に徐々に変化する動きが,全体として3秒という比較的短い時間になされることから,取引者・需要者においても,一連の「ワクワクタビ」の称呼により取引に当たるのが自然であり,たとえ,簡易迅速を尊ぶ商取引においても,「ワクワク」又は「タビ」のいずれかの称呼により取引に当たることはない。
そうすると,本件商標からは,その構成から,「ワクワクタビ」の称呼のみが生じる。
(3)観念
「ワクワク」の文字は,「期待・喜び・興奮などで心がはずむさま。」を意味する「わくわく」の片仮名表示と認識され(乙2),「旅」の文字は,「住む土地を離れて,一時他の土地に行くこと。」を意味する語として認識されている(乙2)。
そして,旅に関連する情報においては,「ワクワク旅」なる用例が広く一般に使用されているとおり(乙3〜乙27),「ワクワク」の文字と「旅」の文字とが熟語的に関連性の高い語であることは一般に認識できる。
また,酒蔵を巡る旅など,酒を試飲又は購入する目的の旅が存在することは,周知の事実であるところ(乙28〜乙32),旅先において,本件指定役務である「酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が提供される場合がある。
「旅」及び「ワクワク」の意味,上記事情を踏まえると,本件商標が,本件指定役務に使用される場合,本件商標は,全体として「ワクワク」の文字から「旅」の文字に徐々に変化する一体不可分の動き商標と明確に認識されるから,これよりは,全体として「ワクワクする旅」なる観念が生じる。
引用商標1は,「旅」の漢字1文字からなるところ,この構成に相応して,「タビ」の称呼及び「旅」の観念が生じる(乙1,乙2)。
また,引用商標2は,黒塗りの四角形図形内において「旅」の漢字1文字と「CUP」の欧文字が白抜きで表されてなるところ,その構成全体から「タビカップ」の称呼が生じるとともに,その構成中,顕著に大きく表された「旅」の文字部分から,「タビ」の称呼及び「旅」の観念が生じる(乙1,乙2)。
本件商標と引用商標とを対比すると,本件商標と引用商標とは,「旅」の文字を有する点で共通するものの,本件商標は,「ワクワク」の構成を有するのに対して引用商標はこの構成を有しないから,両商標は,外観において顕著な相違がある。それゆえ,両商標は,時と処を異にする離隔的観察においても,外観において相紛れるおそれは全くない。
また,仮に本件商標の「旅」の部分のみを捉えても,変化の終わりに登場する「旅」の部分は,変化の始めに登場する「ワクワク」の文字が変化してでき上がるものであり,顕著にデザイン化されたものといえるから,本件商標の「旅」の部分と引用商標とは,外観において明確に区別できる。
さらに,本件商標からは,「ワクワクタビ」の称呼及び「ワクワクする旅」の観念が生じるのに対し,引用商標からは,「タビ」の称呼及び「旅」の観念が生じることが認められるから,両商標は,称呼及び観念においても顕著な相違がある。
加えて,両商標の間に,商品・役務の出所の誤認混同を来すおそれを認めるに足りる取引の実情は一切存しない。
そうすると,本件商標と引用商標とは,その外観,称呼及び観念において相違し,両商標が,同一又は類似する商品・役務に使用されたとしても,取引者,需要者において,その商品・役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあると認めることはできない。
したがって,本件商標は,引用商標と類似しない。
(1)分離観察について
請求人は,本件商標の構成中の「旅」を抽出し,この部分だけを引用商標と比較して商標そのものの類否を判断した。
しかし,本件商標と引用商標とを比較すると,本件商標の顕著にデザイン化された「旅」の文字部分と引用商標の構成が大きく相違するだけでなく,「旅」と熟語的な関連性を有する「ワクワク」の部分の有無も相違し,また,本件商標の「ワクワク」なる文字部分は,本件指定役務の特性を示す文字ではないことから,本件商標に接した取引者,需要者は,「ワクワク」なる文字部分にも注目することになるため,両商標は,取引者・需要者に対し,外観に関して全く異なる印象を与える。
本件商標の構成中,変化の始まりの部分である「ワクワク」の部分は,取引者・需要者に強い印象を与えるから,当該部分を省略して記憶することは通常ない。
また,本件商標においては,「旅」の文字部分だけが独立して,見る者の注意を引くように構成されているともいえない。
加えて,前記のとおり,酒蔵を巡る旅など,酒を試飲又は購入する目的の旅が存在することは,周知の事実であり(乙28〜乙32),本件商標が本件指定役務について使用された場合には,本件商標の構成中の「旅」の部分は,旅に関連して提供される役務であることが表示された部分と捉えられるものであるから,「旅」の文字だけを捉えると,自他役務の出所識別力は乏しく,役務の出所識別標識として支配的な印象を与えるものではない。
そうすると,両商標に接した取引者・需要者は,本件商標の一部に共通する「旅」の文字が含まれていても,商標全体の構成を念頭に置きつつ,「ワクワク」の文字の有無・相違などに着目するから,両商標を類似のものとは受け取らない。
したがって,請求人の上記主張には,理由がない。
(2)引用商標について
請求人は,宝酒造株式会社のウェブサイトその他の資料(甲4〜甲26)を提出し,引用商標について強い識別力がある旨主張する。
しかし,上記提出資料は,引用商標の使用例であるとしても,このことが,本件商標が本件指定役務について使用された場合に,その構成中の「旅」の部分のみを取引者・需要者が識別力の強い部分と認識することにどのように結びつくか全く不明である。
また,前記のとおり,酒蔵を巡る旅など,酒を試飲又は購入する目的の旅が存在することは,周知の事実であり(乙28〜乙32),本件商標が本件指定役務について使用された場合には,「旅」の文字は,旅に関連して提供される役務であることが表示された部分と捉えられるものであるから,「旅」の文字だけを捉えると,自他役務の出所識別力は乏しく,役務の出所識別標識として支配的な印象を与えるものではない。
したがって,引用商標について強い識別力があることを前提とする請求人の上記主張には,理由がない。
(3)審査基準について
請求人は,動き商標の類否に関する審査基準(改訂第14版)の記載例を指摘し,本件商標と引用商標とが類似する旨主張する。
しかし,上記基準の「6.(4)イ」の例は,図形部分と文字部分とが分離して観察できる動き商標の例であり,「ワクワク」の文字から「旅」の文字に徐々に変化する様子が表されてなる本件商標は,当該例と異なる。
また,上記基準の「6.(5)」の記載は,具体例が必ずしも明確でないものの,「その変化の前後の標章と当該標章からなる図形商標等」の関係について記載されているとおり,基本的に,動き商標と図形商標との類否を想定した記載と推察されるから,「ワクワク」の文字から「旅」の文字に徐々に変化する様子が表されてなる本件商標と引用商標との類否に妥当する基準とはいえない。
なお,請求人の主張のとおり,上記基準の「6.(5)」の記載中の「変化」に「移動」「変形」が含まれると解したとしても,本件商標と引用商標との類否に明らかに妥当する基準とはいえない。
むしろ,ホログラム商標の類否についての上記基準の「7.(4)」をみると,「単語及び熟語等が複数の表示面に分割されて表される等,もともとは一つの単語や熟語等であることが明らかな場合には,当該単語及び熟語等の一部からなる文字商標等,一つの表示面の標章と同一又は類似の標章からなる文字商標等とは,原則として,類似しないものとする」とされている。
当該記載は,ホログラム商標の類否についての記載であるが,ホログラム商標と動き商標は,いずれも標章の変化する状態が表れる商標であることからすると,当該基準の方が,本件商標と引用商標との類否に参考にすべき基準といえる。
上記基準の記載をどのように解釈するか否かはさておき,全体として「ワクワクする旅」なる観念を生ずる本件商標は,たとえ「ワクワク」の文字と「旅」の文字とが変化の前後で表れるとしても,「旅」の文字部分のみ分離することは妥当ではないから,請求人の上記主張には,理由がない。
(4)異議決定例について
請求人は,異議2017−900081号の決定例(甲28)を指摘し,本件商標と引用商標が類似する旨主張する。
しかし,商標の類否の判断は,本件商標自体の具体的な構成とその指定役務との関係から,査定時・審決時において,指定役務の取引の実情等を考慮して個別かつ具体的に判断されるべきものであって,上記決定例は,本件商標の判断を左右するものではない。
そして,上記決定例は,「旅」の文字からなる商標についての決定例であるから,「ワクワク」の文字から「旅」の文字に徐々に変化する様子が表されてなる本件商標とは,商標の具体的構成が明らかに異なり,上記決定例をもって,本件商標の登録の適否を判断する基準とするのは適切でない。
なお,上記決定例の商標は,本件商標の構成中の「旅」と同一構成の商標であるが,上記決定例は,取消理由に対し,被請求人が何ら意見を述べることなく,本件指定役務と同一の指定役務についての登録が取り消された事案であり,本件商標と引用商標の類否について,引用商標と外観において明確に区別できる旨の被請求人の前記主張は,上記決定例と何ら矛盾するものではない。
したがって,事案が異なる上記決定例に基づく請求人の上記主張は,失当である。
(5)審査例について
請求人は,商願2016−76626号及び商願2016−79725号の審査例(甲29の1〜甲30の4)を指摘し,本件商標と引用商標とが類似する旨主張する。
しかし,前記異議決定例と同様の理由から,上記審査例は,本件商標の判断を左右するものではない。
そして,上記審査例は,いずれも,当該出願人が商標の類否の判断について意見を述べることなく,拒絶査定となっており,どのような理由に基づいて判断されたかは必ずしも明確でない。
また,上記審査例は,時間の経過に伴い「MARVELOUS!」の文字が表れる動き商標,時間の経過に伴い「STORICO」の文字が表れる動き商標についての審査例であるから,「ワクワク」の文字から「旅」の文字に徐々に変化する様子が表されてなる本件商標とは,商標の具体的構成が明らかに異なり,本件商標の登録の適否を判断する基準とするのは適切でない。
したがって,事案が異なる上記審査例に基づく請求人の上記主張は,失当である。
以上によれば,本件商標は,引用商標に類似しないというべきであり,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
請求人が本件審判を請求するにつき,利害関係について争いがないから,本案について判断する。
本件商標は,別掲1(1)のとおり,時間の経過に伴う標章の変化の状態を5つの図で表した動き商標であって(以下,それぞれの図を1枚目から順に「図1」ないし「図5」という。),図1から図5にかけて,「ワクワク」の文字から「旅」の文字に徐々に変化する様子が全体として3秒で表されているものである。そして,「ワクワク」の文字(図1)は,1文字目の「ワ」の1画目,3文字目の「ワ」の2画目及び「ク」の文字の右側部分が黄色で,それ以外の部分が水色で表されており,「旅」の文字(図5)は,筆順の1画目・3画目・7画目・10画目の部分が黄色で,それ以外の部分が水色で表されているものである。
このように,全体として3秒という短い時間の間に,黄色と水色でデザイン化された「ワクワク」の文字(図1)が,分解,移動及び結合を経て(図2〜図4),「旅」の文字(図5)に変化するという一連の流れにおいて,変化の終わりに登場する「旅」の文字は,変化の始めに登場する「ワクワク」の文字が変化してできあがるものであって,「ワクワク」及び「旅」の各文字は,色彩も含め,デザイン的に統一感があるといえる。
してみれば,かかる構成態様においては,「ワクワク」及び「旅」の文字のいずれかが強く支配的な印象をもって認識・記憶されるとすべき理由は見いだせない。
また,変化前の「ワクワク」の文字は,「期待・喜び・興奮などで心がはずむさま。」を意味する「わくわく」の片仮名表示と認識され(乙2),変化後の「旅」の文字は,「住む土地を離れて,一時他の土地に行くこと。」を意味する語(乙2:以下「『旅』の観念」ということがある。)であるところ,いずれも,「酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」との関係において,役務の質等を表示する語とはいえないものであって,自他役務の識別力に強弱の差はないというのが相当であるから,観念上の観点からみても,「ワクワク」及び「旅」の文字のいずれかが強く支配的な印象をもって認識・記憶されるとすべき理由は見いだせない。
そして,被請求人の挙げる「ワクワク旅」の使用例において,「ワクワク旅」の語の使用例(乙3〜乙11,乙13〜乙15,乙18〜乙20,乙22)のほか,「ワクワク旅するコトハジメ」(乙12),「ドイツの美味しい料理とビールでワクワク旅気分!」(乙21),「ワクワク旅に出たくなる」(乙23)のような使用例がみられることと,「わくわく」及び「旅」の各語の意味を併せてみると,「ワクワク旅」の文字からは,容易に「ワクワクする旅」の観念が生じるものといえ,これより生ずる「ワクワクタビ」の称呼も語呂よく一気に称呼し得るものである。
そうすると,本件商標は,全体として,「ワクワク旅」の文字を,時間の経過に伴う標章の変化の状態によって表したものというべきであり,「ワクワク旅」の文字に相応して,「ワクワクタビ」の称呼及び「ワクワクする旅」の観念を生ずるものである。
(1)引用商標1について
引用商標1は,「旅」の文字よりなるものであるから,「タビ」の称呼を生じ,「旅」の観念を生ずるものである。
(2)引用商標2について
引用商標2は,別掲2のとおり,黒色の四角形内に白抜きで大きく「旅」の漢字を表し,その下に小さく「CUP」の欧文字を表してなるところ,その構成中「旅」の文字部分は,顕著に表されており,小さく表された「CUP」の文字部分とは,その構成上,別個のものとしてみられることから,看者に強い印象を与えるものであって,当該文字部分が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たす要部として看取されるものというのが相当である。
そうすると,引用商標2は,その構成文字全体に相応して,「タビカップ」の称呼を生じるほか,その要部である「旅」の文字に相応して,「タビ」の称呼をも生じ,また,「旅」の観念を生じるものである。
本件商標と引用商標は,上記1及び2のとおりの構成よりなるところ,本件商標は,上述のとおり,全体として,「ワクワク旅」の文字を,時間の経過に伴う標章の変化の状態によって表したものとみるべきものであるから,本件商標における「ワクワク」の文字から「旅」の文字への変化や色彩の有無の相違等からすれば,本件商標と引用商標は,外観において,明らかに異なるものである。
次に,称呼についてみるに,本件商標から生じる「ワクワクタビ」の称呼と引用商標から生じる「タビ」の称呼とは,構成音数の差異,「ワクワク」の音の有無の差異等から,明瞭に聴別できるものである。
また,観念についてみるに,本件商標から生じる「ワクワクする旅」の観念と引用商標から生じる「旅」の観念とは,「ワクワクする」という意味合いの有無の差異から,十分に区別し得るものである。
そうすると,本件商標と引用商標とは,外観,称呼,観念のいずれの点からみても,相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
その他,本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
以上のとおり,本件商標と引用商標は非類似の商標であるから,本件商標の指定役務中「酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と引用商標の指定商品が類似するものであるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(1)請求人は,本件商標は,視覚上,一続きの「ワクワク旅」が表されたものとはいえず,変化の前後で分断して把握されるものであり,変化後の「旅」標章は,静止した状態で固定されるから,変化を遂げた最終的な状態として記憶に残りやすく,独立して看者の注意を引き,出所識別標識として強く支配的な印象を与える一方,「ワクワク旅」の語は,広く一般に使用されているとはいえず,「ワクワクする旅」の観念も生じない等述べ,本件商標は,変化後の「旅」標章も,独立して出所識別標識としての機能を果たす旨主張している。
しかしながら,本件商標は,その構成中,変化前の「ワクワク」及び変化後の「旅」の各文字は,色彩も含め,デザイン的に統一感があり,「ワクワク」の文字から「旅」の文字へ連続して変化する構成態様においては,「ワクワク」及び「旅」のいずれかが強く支配的な印象をもって認識・記憶されるとみるべき理由は見いだせず,本件商標は,構成全体として「ワクワク旅」の文字を時間の経過に伴う標章の変化の状態によって表したものというのが相当であるから,変化の前後を一体のものとして認識されるものというべきである。
また,「ワクワク旅」の文字自体は,辞書等に載録のないものであるとしても,上述のとおり,被請求人の挙げる「ワクワク旅」に関する使用例と「わくわく」及び「旅」の各語が有する意味を併せてみると,「ワクワク旅」の文字からは,容易に「ワクワクする旅」の観念が生じるものといえ,「ワクワク旅」の文字より生ずる「ワクワクタビ」の称呼も語呂よく一気に称呼し得るものである。
なお,請求人は,子会社である宝酒造株式会社のウェブサイトその他の資料(甲4〜甲26)を提出し,引用商標について強い識別力がある旨主張しているが,これらの証拠は,引用商標の使用例であるとしても,引用商標を使用した商品の歴史やカタログにおける掲載状況を示すにすぎないものであり,販売実績や売上高を示すものではなく,具体的な取引状況を量的に把握することはできないものであるから,これらの証拠から,直ちに「旅」の文字が請求人の業務に係る商品を表すものとして広く知られているとはいえないものである。
そうすると,引用商標に強い識別力があるとはいえないものであり,本件商標の変化後の「旅」の文字のみに着目して本件商標を記憶するようなことはないというべきである。
以上を総合して判断すると,本件商標は,「ワクワク」から「旅」への文字の変化を一体的に捉えるべきものであり,全体として「ワクワク旅」の文字を表したものとみるのが相当であるから,変化後の「旅」の文字のみを抽出して他の商標と比較し,商標そのものの類否を判断することは許されないというべきである。
(2)請求人は,新しいタイプの商標の類否判断手法については,従来の文字商標等における判断手法と殊更に異なるものではないと解されるべきであり,審査基準において,「文字や図形等の自他商品・役務の識別機能が認められる標章が変化する動き商標と,その標章と同一又は類似の標章からなる図形商標等とは,原則として,類似するものとする。」,「自他商品・役務の識別機能が認められる標章が変化する動き商標の場合,その変化の前後の標章と当該標章からなる図形商標等とは,原則として,類似するものとする。」旨の記載があることから,動き商標の類否判断の際には,構成全体でなく,変化後の標章を抽出した分離観察による類否判断も許容され,「その変化の前後の標章と当該標章からなる図形商標等とは,原則として,類似するものとする。」の基準どおり,本件商標は引用商標と類似する旨主張している。
しかしながら,本件商標は,上述のとおり,変化後の「旅」の文字が,出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めることはできないものであり,「ワクワク」から「旅」への文字の変化を一体的に捉えるべきものであって,変化の前後の文字のいずれかが需要者の記憶に残るというようなものではないから,請求人が挙げる審査基準の考え方に直ちに当てはまるものではない。
そうすると,本件商標においては,上述のとおり,変化後の「旅」の文字を抽出した分離観察による類否判断は許容されないものであって,本件商標は引用商標と類似しないものである。
(3)請求人は,異議2017−900081号の異議決定において,本件商標の変化後の状態である図5の標章と同一の構成よりなる登録第5913098号商標が,引用商標と類似の商標と認定され,その指定役務中,第35類「酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について,登録が取り消されているから,本件商標についても同様に引用商標と類似の商標と判断されるべきであると主張している。
しかしながら,本件商標は,上述のとおり,「ワクワク」から「旅」への文字の変化を一体的に把握すべきものであり,全体として「ワクワク旅」の文字を表したものと捉えるのが相当であって,変化後の「旅」の文字が独立して出所識別標識としての機能を果たすものということはできないものであるから,本件商標と引用商標とは,外観,称呼,観念のいずれの点からみても,相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
そうすると,本件商標については,変化後の「旅」の文字と同一の構成よりなる登録第5913098号商標に係る異議2017−900081号の異議決定と同様の判断をすることはできない。
(4)請求人は,商願2016−76626号及び商願2016−79725号の審査例(甲29の1〜甲30の4)を挙げ,いずれも動き商標の構成中の一部,特に変化後の標章を抽出して文字商標等と類否判断がなされ,類似するとされた事例であり,本件商標は,これらと同様の条件下にあるとして,本件商標と引用商標は類似する旨主張している。
しかしながら,商願2016−76626号の審査例は,時間の経過に伴い「MARVELOUS!」の文字が表れる動き商標,商願2016−79725号の審査例は,時間の経過に伴い「STORICO」の文字が表れる動き商標についての審査例であり,いずれの事例においても,全体の文字を把握できないものからの変化であって,最終的に「MARVELOUS!」及び「STORICO」の文字のみが認識されるものであるから,かかる構成態様においては,変化後の「MARVELOUS!」又は「STORICO」の文字が,看者の記憶に残り,商品・役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるといい得ることに対し,本件商標は,「ワクワク」から「旅」への文字の変化を一体的に捉え,全体として「ワクワク旅」の文字を表したものとみるのが相当である。
してみれば,本件商標は,上記の審査例に係る商標とは,商標の具体的構成が明らかに異なるものであるから,これらの審査例と同様の条件下にあるとはいえず,当該審査例は,本件の判断を左右するものではない。
(5)したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用することはできない。
以上のとおり,本件商標は,その指定役務中,第35類「酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について,商標法第4条第1項第11号に該当しないものであり,同条第1項の規定に違反して登録されたものではないから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効にすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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