Trademark Appeal Case
周知標章と同一商標の登録
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2020−900154(T2020−900154/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第6240148号商標(以下「本件商標」という。)は、「ureru」の欧文字を標準文字で表してなり、平成31年3月1日に登録出願、第41類及び第42類に属する別掲のとおりの役務を指定役務として、令和2年2月25日に登録査定、同年3月27日に設定登録されたものである。
2 引用標章
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する標章(以下「引用標章」という。)は、「ureru」の欧文字からなるものであって、同人の略称として著名であり、また、同人が提供する役務(顧客からの依頼に基づき広告デザイン会社などに発注を行う役務。以下「申立人役務」という。)について使用され、需要者の間に周知されていると主張するものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号及び同第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第21号証を提出した。
(1)本件登録異議申立に至る経緯
ア 本件商標と引用標章の類似性
本件商標と引用標章は、いずれも「ureru」の文字を表してなるものであり、称呼も共通する。また、引用標章は「売れる」という意味も含むところ、商標権者の商号である「株式会社売れるネット広告社」から明らかなとおり、本件商標も「売れる」という意味であり、いずれも「売れる」つまり商品が売れることであることから、観念も共通する。
したがって、両者は同一の商標である。
本件商標の指定役務と引用標章が用いられる役務は、いずれもコンサルティング又は情報の提供であり、その用途、需要者の範囲が一致することから、類似する役務である。
イ 本件商標の使用状況
商標権者の商号は「株式会社売れるネット広告社」であり、また、商標権者が有する商標として「売れるネット広告」がある。商標権者は、自身のホームページに「株式会社売れるネット広告社」や「売れるネット広告」の表記を使用しているが、役務の表記に「ureru」を用いることはしていない。
これに対して、申立人は、その商号「株式会社ureru」の株式会社を省略した「ureru」も役務の標章として使用しており、本件商標が登録されると、申立人は、自身の商号の略称である「ureru」を使用することができなくなる。
ウ 商標権者の行動
(ア)申立人に対する請求
商標権者は、平成31年2月4日付けで申立人に対して、「株式会社ureru」という申立人の商号使用が「売れるネット広告」という商標権者の商標権を侵害する行為だとして、商号使用等の即時停止を求める内容証明郵便を発送している(甲2)。
これに対して、申立人は、平成31年3月11日付けで、商標権者の請求には理由がなく応じることはできない旨の返答を行った(甲3)。
これらのやりとりを経た後の平成31年3月1日、商標権者は、「ureru」という本件商標の出願を行っている。
また、その後、商標権者は、令和元年7月29日、申立人を被告として、上記と同じく、商標権を侵害する行為だとして、商号使用等の即時停止等を求めるとともに、「売れるネット広告」ないし「売れるネット広告社」が商標権者の商品等表示に該当し、「bariureru.com」という申立人の使用するドメインが不正競争行為に該当するとして、差止等を求める訴訟を福岡地方裁判所に提起し(甲4)、当該訴訟は、現在も係属中である。
さらに、商標権者は、令和元年12月25日、申立人に対して、上記訴訟のうち「bariureru.com」の使用差止について、仮処分命令申立を行った(甲5)が、当該仮処分申立事件は、被保全権利が認められないとの理由で却下され、商標権者の請求が否定される結果となった(甲6)。
(イ)申立人以外に対する請求
a 株式会社ウレルに対する訴訟
商標権者は、「株式会社ウレル」に対しても、「ウレル」という単語が商標権者の商標「売れるネット広告」に対する商標権侵害にあたると主張して訴訟を提起したことがある(甲7、甲8)。
b 株式会社FIDに対する訴訟
商標権者は、「株式会社FID」に対して、商標権侵害、著作権侵害、不正競争防止法違反を理由として、侵害行為の差し止め等を求めて訴訟を提起したことがある(甲9)。
(ウ)商標権者代表者のコメントと商標権者の行動の矛盾
商標権者代表者は、商標の保護等に関して、フリーライドは絶対に許さない等と主張している(甲10)が、実際には、少しでも商標権者の登録商標に似ている表示を使用している第三者がいれば訴訟を提起し使用を止めさせるとともに、使用を止めない場合には、当該第三者の使用標章自体を商標登録出願することで他人の権利を奪っている。申立人に対しても、申立人の名称の略称を商標登録することで申立人に商号変更させることを強いて、結果として商標権者の保護される利益の範囲を拡大させようとしている。
このような行為自体、商標法の保護する利益の範囲を不当に拡張するものであり、商標権保護の精神を毀損する行為である。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当すること
ア 「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」について
他人の標章が未登録であることを奇貨として、不正の利益を得る意図で出願する行為は、公正な取引秩序を乱すおそれがあり、その独占使用を認めることは、取引秩序の維持という商標法の目的に反する。
本号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、社会の一般道徳観念に反するような商標が含まれる。社会の一般的道徳観念に反するような場合には、ある商標をその指定役務について登録し、これを排他的に使用することが、当該商標をなす用語等について当該商標出願人よりもより密接な関係を有する者等の利益を害し、商標登録目的が不正と評価されるときも含まれる(甲12、甲13)。
イ 本件について
(ア)商標権者と本件商標との関係
商標権者のホームページでは、本件商標は使用されていない。
(イ)申立人と本件商標の関係
申立人は、本件商標と同一である商号の略称「ureru」を自身の役務の標章として使用している。
(ウ)商標権者の本件商標取得が申立人の利益を害すること
本件商標が登録されると、申立人は、自身の商号の略称である「ureru」を使用することができなくなってしまう。
また、自身の商号についても、商標法が権利侵害を否定するのは「自己の名称を通常の方法で使用する場合」に限られており、商号を強調する表示等の使用方法については、商標権侵害の可能性をぬぐえないことになる。そうすると、会社名の表示自体に支障をきたすことから、自由な営業活動を行うことができず、活動が委縮してしまう。
(エ)商標権者の商標登録の目的が不正であること
商標権者は、平成31年2月4日の時点では、本件商標の登録出願を行っていなかった。そのような状態で、申立人に対し「株式会社ureru」という商号の使用等の即時停止を求める内容証明郵便を発送している(甲2)。したがって、商標権者は、遅くとも平成31年2月4日には、申立人に対して「株式会社ureru」という商号を使用することを停止させる意思を有していた。
その後、申立人は、同月8日に、商標権者の要求に応じることはできない旨を連絡し、商標権者は、同年3月1日に、本件商標について登録出願を行っている。
そうすると、商標権者は、本件商標自体を商標権者が使用していないこと、申立人の商号の略称と本件商標が同一であること、本件商標について商標登録すれば申立人が商号の略称を使用することができなくなり、申立人の商号についても通常の方法以外での使用ができなくなることを認識した上で、本件商標登録を行ったということになる。
このように、商標権者は、自社の商標や商号に少しでも似たところがある商号や役務を、できるかぎり使用できないように追い込んでいるのであり、商標登録目的は不正である。
(オ)小括
以上から、本件商標登録を行ったとしても、商標権者は本件商標自体を使用するわけではなく、本件商標を商標権者が登録することは、本件商標について商標権者よりもより密接な関係を有する申立人の利益を害することになる。
そして、商標権者は、本件商標登録出願をする前から申立人に対して、商号使用停止を要求し、申立人の要求拒絶の後に本件商標登録出願を行っており、本件商標登録が認められる結果、申立人は、商号の略称を使用できなくなり、商号についても通常の方法以外での使用ができなくなるなど、申立人に商号の変更を間接的に強いる結果を生じさせており、商標登録目的は不正である。
したがって、本件商標登録出願は、社会の一般的道徳観念に反するものであり、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当すること
ア 他人の名称の略称該当性
本件では、他人である申立人の名称は「株式会社ureru」であり、「株式会社」を除いた「ureru」は、他人の名称の略称にあたる。
イ 著名性について
申立人代表者は、「公益資本主義推進協議会」(全国の企業経営者235名ほどが加盟)、「公益財団法人CIESF」というNGO団体、「認定NPO法人テラ・ルネッサンス」(参加法人会員178社、参加個人会員1,800名以上)、「一般社団法人九州の食」(参加法人数200社以上)、及び「福岡商工会議所」(会員事業者数1.6万社以上)に所属、参加等しており(甲14〜甲17)、申立人の名称は周知されている。
また、申立人の顧客数は、40社に上り(甲18)、顧客の中には東京証券取引所一部上場企業も含まれており(甲19)、同企業の通信販売の広告は、申立人が制作・印刷を請け負い、新聞の累積折り込み済チラシの枚数は、全国で1億3,060万4,386枚、チラシの納品先である新聞販売店舗の数は、全国で1万3,611店に上る(甲20)。新聞以外にも、平成28年11月から令和2年8月までの間に、1,784万3,001枚の広告を配布予定である(甲20)。
申立人の業務は、顧客からの依頼に基づき、様々な広告デザイン会社や広告会社への発注を行うことであり、申立人の発注先は88社に上る(甲21)。
このように、申立人は、申立人代表者が様々な団体に参加することで、団体参加者や団体に関与する人に、申立人の商号やその略称を広く認知されている。また、申立人は顧客・仕入先をあわせて128社を超える取引先を抱え、最終的に広告を配布する新聞販売店舗等の数は全国で1万3,611店に上っており、全国の広告に関わる需要者等にとって、申立人の名称及びその略称は知れ渡っている。
したがって、申立人の標章は著名である。
ウ 小括
以上から、本件商標は、「他人の名称の著名な略称」を含む商標である。
(4)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当すること
ア 本件商標と引用標章の同一性
本件商標と引用標章はいずれも「ureru」の文字を表してなるものであり、同一である。
イ 引用標章の周知度・著名性
上記(3)のとおり、引用標章は、需要者の間に周知されている。
ウ 商標権者の主観
商標権者は、令和元年7月29日提訴の商号使用停止等請求訴訟において、商標権者の商標「売れるネット広告」と申立人の商号「株式会社ureru」が類似していることを前提として、申立人が商標権者商品等表示と類似の表示を使用することによって、需要者・取引者において、商標権者と申立人が同一の営業主体であるか又は商標権者役務と申立人役務とが同一の出所を有するものと誤信するから、申立人の営業又は役務は、それぞれ商標権者の営業又は役務と混同を生ずるおそれがあると主張している(甲4)。
したがって、商標権者の主観としては、商標権者の商標「売れるネット広告」と申立人の商号「株式会社ureru」の間でさえ、出所について混同のおそれがあると考えている。
エ 小括
本件では、本件商標が「ureru」であるのに対して、引用標章も同じ「ureru」であり、引用標章に周知性があることから、商標権者の主観として述べた上記ウ以上に、需要者・取引者において、申立人と商標権者が同一の営業主体であるか又は申立人役務と商標権者役務とが同一の出所を有するものと誤信することになるから、需要者が出所について混同するおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は、「他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれ」がある標章である。
4 当審の判断
(1)引用標章の周知・著名性について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査によれば、申立人代表者が、「公益資本主義推進協議会」、「公益財団法人CIESF」、「認定NPO法人テラ・ルネッサンス」、「一般社団法人九州の食」及び「福岡商工会議所」という団体に所属、参加していたこと(甲14〜甲17)、申立人が顧客・仕入先をあわせて128社を超える取引先を有し(甲18、甲21)、「一般社団法人九州の食」及び我が国の大手製薬会社と取引があり(甲16、甲19)、当該製薬会社の通信販売の折込チラシの印刷を請け負い、全国で1万3,611の販売店舗に当該折込チラシを配布していること(甲20)が推認できる。
しかしながら、引用標章が申立人の略称として使用され又は申立人の役務について使用され取引された役務の取引額など取引の実績を示す証左は見いだせない。
イ そうすると、引用標章は申立人の略称といえるものの、上記アのとおり、「ureru」の欧文字が申立人の略称として使用された取引の実績を示す証左は見いだせず、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることもできないから、引用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の著名な略称と認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第8号について
本件商標及び引用標章は、上記1及び2のとおり、いずれも「ureru」の欧文字からなるものであるが、上記(1)のとおり、引用標章は、申立人の著名な略称と認められないものであるから、本件商標は、他人(申立人)の著名な略称を含む商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
本件商標と引用標章は、いずれも「ureru」の欧文字からなるものであるが、本件商標の指定役務と申立人の提供する役務(顧客からの依頼に基づき、様々な広告デザイン会社や広告会社への発注など)の関連性や取引者、需要者が共通すると認め得る事情は見いだせず、なにより、上記(1)のとおり、引用標章は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用標章を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第7号について
ア 申立人は、商標権者は本件商標を使用していない、商標権者は本件商標の登録出願前から申立人に対して商号使用停止を要求している、商標権者は申立人がその要求を拒絶した後に本件商標の登録出願を行っている、本件商標の登録が認められる結果、申立人に商号の変更を間接的に強いる結果を生じさせており、商標登録の目的は不正であるとして、本件商標の登録出願は、社会の一般的道徳観念に反するものであり、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する旨主張している。
イ しかしながら、商標権者が、本件商標の登録出願前に、申立人に対して、商号使用停止を要求したのは、本件商標とは別の登録商標を基に要求したものであって、そのこと自体は差止請求権の行使から逸脱した行為ではないし、また、自己の商標と関連する標章を商標として採択することは少なくないから、本件商標の登録出願又は登録の目的が不正であると認めることはできない。
また、他に、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべき事情は見いだせず、かつ、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる証左も発見できない。
そうすると、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号及び同第15号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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