Trademark Appeal Case
色彩商標の識別力と装飾性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2017−14944(T2017−14944/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第39類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として,平成27年4月1日に登録出願され,その後,指定役務については,原審における同28年3月30日付け手続補正書により,第39類「引受地・配達地にかかわらず全国均一料金で提供する信書の送達」(以下「本願指定役務」という。)に補正されたものである。
第2 原査定における拒絶の理由の要点
原査定は,「役務の提供の用に供する物又は役務の広告の装飾等に使用される色彩は,多くの場合,それらの魅力向上等のために選択されるものであって,役務の出所を表示し,自他役務を識別するための標識として認識し得ないものであるところ,本願指定役務を取り扱う業界においては,本願商標と近似する赤色が,役務の提供の用に供する物又は役務の広告の装飾等として使用されている。そうすると,本願商標をその指定役務の提供の用に供する物や広告に使用しても,これに接する取引者,需要者は,役務の提供の用に供する物又は役務の広告に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり,何人かの業務に係る役務であることを認識することができない。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。また,出願人が提出した証拠からは,本願商標が使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものと認めることはできない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
第3 当審における証拠調べ通知
当審において,本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,別掲2に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対して,令和元年6月20日付け証拠調べ通知書(以下「証拠調べ通知書」という。)によって通知し,期間を指定してこれに対する意見を求めた。
第4 証拠調べ通知書に対する請求人の意見の要点
請求人は,証拠調べ通知書における赤色の使用は,以下のとおり,本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとの判断の根拠とはなり得ない旨述べた。
なお,請求人は,本願商標は,永年にわたる使用の結果,自他役務の識別標識として機能していることから,商標法第3条第1項第6号には該当しない旨主張し,証拠方法として,原審及び当審において,甲第1号証ないし甲第220号証を提出している。
1 他者による赤色の使用が部分的かつ装飾を目的としたものにすぎないこと
証拠調べ通知書において引用された他者による赤色の使用は,いずれも,役務の提供の用に供する物や役務の広告宣伝媒体の一部に,装飾を目的として付されているにすぎず,請求人による赤色(本願商標)の使用態様とは本質的に異なるものである。
また,証拠調べ通知書における引例に係る事業者は,役務の広告宣伝媒体又は当該役務の提供の用に供する物の一部に赤色を装飾的に使用しているものの,これらの引用例における他者使用に係る赤色は,役務の広告宣伝等に当たり,その魅力向上を目的とし,装飾を目的として部分的かつ補足的に使用されているにすぎない。
他方,請求人は,請求人の事業に係る旗章・徽章・ブランドマーク,役務の提供の用に供する物(制帽・制服・配達用かばん,郵便差出箱,配達用車両,年賀はがき等),役務の広告宣伝媒体において,共通かつ一貫して赤色を象徴的かつ目立つように使用してきたのであり,かかる色彩の使用態様は,証拠調べ通知書において引用された他者による赤色の使用例とは一線を画すものである。
2 本願商標が識別力を具備し,かつ,独占不適応ではないこと
証拠調べ通知書において引用された他者による赤色の使用の事実が,本願指定役務の分野における請求人と赤色との結びつきを弱化させることはない。
そもそも色彩というものは,性質上,装飾を目的として役務の提供の用に供する物や広告宣伝媒体等に部分的に用いられることは常であり,単色については殊更である。
かかる色彩特有の事情を考慮した場合,色彩のみからなる商標の識別力の判断に当たり,他者による色彩の使用を,装飾を目的とした部分的かつ補足的な使用を含め広く考慮しすぎることは適当ではない。
商標法第26条第1項第6号では,「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標(他の商標の一部となっているものも含む。)」には商標権の効力は及ばないとされており,色彩のみからなる商標が登録されたとしても,当該商標の商標権の効力が及ぶのは,他者が,自己の商品又は役務の出所表示(商標)として当該色彩を使用した場合に限られ,他者による装飾的な色彩の使用には及ばない。よって,他者による色彩の装飾的な使用を広く考慮し,色彩のみからなる商標の独占適応性を殊更厳格に判断する必要はない。
本願商標を構成する赤色が,請求人の業務に係る本願指定役務の出所表示として全国的に広く知られ認識されるに至っている事実は,平成30年5月30日提出のアンケート結果(甲162)においても裏付けられた。
また,請求人は,本願商標を構成する赤色を,役務の提供の用に供する物や広告宣伝媒体に共通かつ一貫して使用してきたほか,郵便配達車両や郵便差出箱等においてはその全面に赤色を付す等,赤色の使用態様は,本願指定役務の分野はもとより,証拠調べ通知書において引用された他者による赤色の使用に係る特定信書便の分野にまで広げてみても他に例を見ないものである。
本願商標が他の文字や図形などと結合した態様で使用されてきた例があるとしても,色彩が構成の主として使用され,その結果,色彩が需要者の目につきやすく強い印象を与えるものであるのであれば,色彩単独で自他役務識別機能を発揮する。
3 結語
以上のとおり,証拠調べ通知書において引用された他者による赤色の使用は,本願指定役務について使用される本願商標の識別力を減殺するものではなく,一方,本願商標は,請求人による永年にわたる使用の結果,請求人の業務に係る本願指定役務の出所表示として需要者に認識されるに至っている。
よって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号には該当しない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号の該当性
(1)商標法第3条第1項第6号の趣旨
商標法は,「商標を保護することにより,商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り,もつて産業の発達に寄与し,あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(同法第1条),商標の本質は,自己の業務に係る商品又は役務と識別するための標識として機能することにあり,この自他商品又は役務の識別標識としての機能から,出所表示機能,品質保証機能及び広告宣伝機能等が生じるものである。同法第3条第1項第6号が,「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を商標登録の要件を欠くと規定するのは,同項第1号ないし第5号に例示されるような,識別力のない商標は,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,自他商品・役務の識別力を欠くために,商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される(平成21年(行ケ)第10270号参照)。
(2)本願商標の構成
本願商標は,別掲1のとおり,色彩のみからなる商標であって,赤色(RGBの組合せ:R204,G0,B0)のみからなるものであり,第39類「引受地・配達地にかかわらず全国均一料金で提供する信書の送達」を指定役務とするものである。
(3)本願指定役務と同種の業界における赤色の使用
役務の広告や,役務の提供の用に供する物に使用される色彩は,多くの場合,役務の魅力向上等に資する装飾等として採択されるものであって,文字や図形等と組み合わせるなど,具体的な形態を伴う場合はともかく,そのような形態を伴わない場合には,役務の出所を表示し,自他役務を識別するための標識としては認識し得ないものである。
そして,本願指定役務と「信書の送達」という目的,手段が共通し,提供の用に供する物品(配達車両,封筒,制服,ヘルメット等)も共通する特定信書便配達業の事業者によって,広告宣伝に資するウェブサイトや,役務の提供の用に供する配達車両や従業員の制服,ヘルメット等に色彩を付すことは,当該役務の広告や,役務の提供の用に供する物の美感を向上させるための装飾等として一般的に行われ,別掲2のとおり,本願商標の赤色(以下「本願赤色」という。)と近似する赤色も多数使用されている実情があることから,本願指定役務と同種の業界において,赤色は一般に利用されている色彩であって,特異な色彩であるとはいえない。
してみれば,本願赤色は,本願指定役務と同種の業界において,多くの事業者によって,役務の魅力向上等に資する装飾として,役務の提供の用に供する物や広告宣伝において一般に使用されている赤色の一類型といい得るものであり,これに接する取引者,需要者は,役務の魅力向上のために使用される色彩と認識するにとどまるものとみるのが相当である。
(4)小括
以上のとおり,本願赤色は,一般的に使用される色彩であって,自他役務の識別力を欠くために,商標としての機能を果たし得ないものである。
したがって,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであるから,商標法第3条第1項第6号に該当する。
2 本願赤色の使用による識別力獲得について
請求人は,「本願赤色は,永年にわたる使用の結果,請求人の提供に係る本願指定役務を表示するものとして認識されるに至っており,本願商標は自他役務の識別標識として機能していることから,商標法第3条第1項第6号には該当しない」旨主張している。
ところで,使用により自他役務識別力を獲得したかどうかは,当該商標が使用された期間及び地域,役務の提供量及び営業規模,広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情,当該商標やこれに類似した商標を採択した他の事業者の役務の存在,役務を識別し選択する際に当該商標が果たす役割の大きさ等を総合して判断すべきであるが,輪郭のない単一の色彩それ自体が使用により自他役務識別力を獲得したかどうかを判断するに当たっては,指定役務を提供する事業者に対して,色彩の自由な使用を不当に制限することを避けるという公益にも配慮すべきである。
そこで,上記観点から,以下検討する。
(1)請求人の沿革及び郵便について
請求人は,平成19年10月に発足した日本郵政グループ(発足時は日本郵政株式会社,郵便事業株式会社,郵便局株式会社,株式会社ゆうちょ銀行,株式会社かんぽ生命保険。その後,郵便事業株式会社と郵便局株式会社は合併し,日本郵便株式会社(以下「日本郵便」という。)となった。)の持ち株会社である(甲34)。
郵便は,明治4年に,官営の「信書(書状・はがき)その他所定の物品を国内・国外へ送達する通信制度。」(広辞苑第7版)に係る事業として開始して以来,民部省の駅逓司,逓信省,郵政省,総務省の外局としての郵政事業庁及び日本郵政公社が提供してきたものであり,平成19年の日本郵政グループ発足を経て,平成24年10月に請求人傘下の郵便事業株式会社と郵便局株式会社との合併により誕生した日本郵便が引き続き郵便事業を行っている(甲5)(以下,請求人及び請求人の子会社である日本郵便並びにその前身として郵便事業を行ってきた逓信省,郵政省,郵政事業庁及び日本郵政公社をまとめて「請求人ら」という場合がある。)。
郵便は,請求人らが我が国の国内全体において独占的に管轄・提供してきたものであり(郵便法第4条),平成15年に,「民間事業者による信書の送達に関する法律」(以下「信書便法」という。)の施行に伴い,信書の送達の事業は民間へ解放されることとなったが,郵便と同様の信書の送達事業,すなわち,信書の大きさや重量,料金,引受・配達地に関わらず全国均一料金で信書の送達の役務を提供し得る「一般信書便事業」(信書便法第2条第4項及び同第5項)へ参入した事業者はない(郵便法第2条,同第4条,甲2〜甲5,総務省HP「信書便事業者一覧(令和2年7月3日現在)」(https://www.soumu.go.jp/yusei/tokutei_g.html)。
郵便の窓口業務を行う施設である郵便局は,2017年3月末現在で日本全国に24,421局ある。郵便事業用車両の保有台数(2016年度)は,自動二輪車(原付を含む。)が85,368台,軽自動四輪車が30,245台及び小型貨物自動車が2,838台であり,郵便差出箱(郵便ポスト)の設置数(同)は181,523本(甲133)である。さらに,平成29年用年賀はがきの総発行枚数は,31億4,207万枚である(甲132〜甲134,甲154)。
(2)本願赤色の使用について
ア 請求人らの営業標識における「赤色」ないし本願赤色の採択
(ア)郵便創業期の徽章等
明治17年6月23日の太政官布達第15号には,郵政徽章として「丸に一引」の標章が指定され,その色彩として「赤色」と記載されている。また,同20年2月8日の逓信省告示第11号には,「自今(T)字形ヲ以テ本省全般ノ徽章トス」とされ,同年の公達第60号には,郵政旗における当該徽章(以下「〒マーク」という。)の色彩として「赤」が指定されている(甲6)。
(イ)コーポレートカラー
平成19年,「日本郵政株式会社CIデザインマニュアル」が制定され(以下「デザインマニュアル」という。:甲38,甲39),「企業がもつ思想や独自性をより効果的に訴求するために特定の色を選択し,その企業の色と定め,色彩面から他企業との差別化を図るため」のコーポレートカラーとして本願赤色が採択され,請求人自ら「ゆうびんレッド」ないし「ゆうせいレッド」と称している(甲38〜甲40)。
なお,コーポレートカラー制定前に請求人らによって使用され,本願赤色と同一視できる近似した赤色と本願赤色をあわせていう場合は「本願赤色等」という。
(ウ)〒マーク
郵便の標識である〒マークは,上記(ア)のとおり,その色彩として「赤色」が指定され,日本郵政グループの発足時にも,本願赤色で表示された〒マークが採択されている(甲6,甲39,甲111等:別掲3)。
(エ)グループブランドマーク
日本郵政グループ発足時,持ち株会社及び事業子会社が日本郵政グループであることを表示する標章として,「JAPAN POST」の頭文字である「J」と「P」をモチーフとした図形からなるロゴマーク(以下「JPロゴ」という。)を本願赤色で表し,その右側に「日本郵政グループ」の文字を灰色で表したグループブランドマーク(以下「グループブランドマーク」という。)が採択されている(甲6,甲34,甲37:別掲4)。
(オ)コーポレートブランドマーク
また,請求人,郵便局株式会社,郵便事業株式会社,株式会社ゆうちょ銀行,株式会社かんぽ生命保険の各社の社標としてコーポレートブランドマーク(以下「コーポレートブランドマーク」という。)が採択されている(甲34:別掲5)。
請求人のコーポレートブランドマークは,JPロゴの下部に「HOLDINGS」の文字及びその右側に「日本郵政」の文字を配し,これらの全てを本願赤色で表したものである(別掲5)。
郵便局株式会社のコーポレートブランドマークは,JPロゴの下部に「NETWORK」の文字及びその右側に「郵便局」の文字を配し,これらの全てをオレンジ色で表したものである(別掲6)。
日本郵便(旧郵便局株式会社及び旧郵便事業株式会社)のコーポレートブランドマークは,JPロゴの下部に「POST」の文字及びその右側に「日本郵便」の文字を配し,これらの全てを本願赤色で表したものである(別掲7)。
株式会社ゆうちょ銀行のコーポレートブランドマークは,JPロゴ及びその下部に「BANK」の文字及びその右側に「ゆうちょ銀行」の文字を配し,これらの全てを緑色で表したものである(別掲8)。
株式会社かんぽ生命保険のコーポレートブランドマークは,JPロゴ及びその下部に「INSURANCE」の文字及びその右側に「かんぽ生命」の文字を配し,これらの全てを青色で表したものである(別掲9)。
以下,上記(ア)及び(ウ)ないし(オ)に係る請求人らの標章を「営業標識」という。
イ 役務の提供の用に供する物における本願赤色等の使用
(ア)制帽・制服・配達用かばん
郵便創業期から平成19年10月の日本郵政グループ発足を経て現在に至るまで,本願赤色等は,本願指定役務の提供に用いられる制帽,制服等,郵便物を収納する行李・肩掛箱・かばん(以下「配達用かばん」という。)に使用されている。
a 制帽等
郵便の創業期の笠には,「丸に一引き」の標章が付され,その色彩として本願赤色に近似する赤色が使用されている(甲7,甲9)。
また,日本郵政グループ発足時にはデザインマニュアルの下,制帽には〒マーク,及び従業員用ヘルメットには,〒マーク,JPロゴ,「郵便局」の文字が付され,それらの色彩として本願赤色が使用されている(甲42,甲53)。
b 制服等
郵便の創業期の制服の襟は,「丸に一引き」の標章が付され,その色彩として本願赤色に近似する赤色が使用されている(甲7,甲9)。
日本郵政グループ発足時の社員用ネックストラップは,ひも部分の全体に本願赤色が使用され,当該ひも部分には「JAPAN POST GROUP」の文字が白色で複数表示されている(甲39,甲52)。
郵便創業期から日本郵政グループ発足時を経て現在に至るまで,請求人らの制服には,主に黒色,紺色が使用され,本願赤色等は目立つような態様で用いられていない(甲7,甲9,甲42)。
c 配達用かばん
郵便の創業期の配達用かばんは,その側面に付された「郵便」・「御用」等の文字の色彩として,本願赤色に近似する赤色が使用されている(甲7)。
(イ)配達車両
郵便創業期から日本郵政グループ発足を経て現在に至るまで,本願赤色等は,本願指定役務の提供に用いられた各種車両(以下,これらをまとめて「配達車両」という。)に使用されている。
a 人車
人車(人力で荷物を運ぶ車)は,その車体全体の色彩として本願赤色に近似する赤色が使用されている。また,その車体には「小包郵便」の文字や,〒マークを表示した郵政旗が掲げられている(甲7,甲10)。
b 自動二輪車,軽自動四輪車等
配達車両は,人車から馬車,自転車,原動機付自転車,自動二輪車,軽自動四輪車,小型貨物自動車等へと変化したが,その車両の車体の色彩として本願赤色等が継続して使用されている(甲7,甲8,甲11〜甲16)。
配達車両は,その車体全体に本願赤色等を使用するものがあり,その車体の側面には,〒マーク,JPロゴ,「郵便」の文字,「日本郵便」の文字や図形が白色や黒色で表示されている(同上)。
原動機付自転車又は自動二輪車は,その車体の一部に白色も使用されている(甲13〜甲16)。
c 自動運転車
請求人は,平成30年3月に東京都千代田区等において,自動運転車による郵便物等輸送の実証実験を行ったが,この実験に用いられた自動運転車両は,その車体にJPロゴ及び「日本郵便」等の文字や図形が白色で表示されると共に,車体の色彩として本願赤色が使用されている(甲182〜甲196)。
(ウ)郵便差出箱
明治34年頃より日本郵政グループ発足を経て現在に至るまで,本願指定役務の提供に用いられた郵便差出箱(郵便ポスト)は,本願赤色等が使用されている。
郵便差出箱は,円筒形又は立方形の形状であり,全体に本願赤色等が使用され,「郵便/POST」の文字,「日本郵便」の文字,〒マーク,JPロゴ等の文字や図形が付されている(甲7,甲8,甲17〜甲19)。
郵便差出箱には,赤色のみならず,青色,オレンジ色,灰色も使用されている(甲7,甲8,甲17)。
(エ)年賀はがき
昭和24年から日本郵政グループ発足を経て現在に至るまで,本願赤色等は,年賀状用はがき(以下「年賀はがき」という。)に表示されている「郵便はがき」の文字,「日本郵便」の文字,料額印面(切手部分)に表示された「鶴」,「梅」,「竹」,「富士山」等をモチーフとした図形,郵便番号記載欄の枠等に使用されている。料額印面は,オレンジ色や青色等,赤色以外も使用されている(甲7,甲8,甲62)。
ウ 郵便局,請求人ホームページ及び各種業務に係る個別標識における本願赤色等の使用
(ア)郵便局
日本郵政グループ発足以降,郵便局の内外における看板には,〒マーク,JPロゴ,「郵便局」等の文字や図形に本願赤色が使用され,また,本願赤色は,看板の7割程度の面積を占める部分に表示されている一の角を曲線で表した縦長台形,看板に全面的に表された横長長方形にも使用されている(甲43〜甲46)。
(イ)請求人及び日本郵便のホームページ
請求人及び日本郵便のホームページには,JPロゴ,「日本郵政」の文字,「郵便局」の文字,上部のバナー部分の装飾的な図形,タイトルの背景としての帯状の図形,欧文字「T」の形状の装飾的な図形,文字の背景,その他ホームページに記載された文字及び図形に本願赤色が使用されている(甲47〜甲50)。
(ウ)各種業務に使用している個別標章
請求人の業務に係る「Webゆうびん〒」のウェブサイトに表示された「Webゆうびん〒」の文字,同ウェブサイトに表示された図形及び文字,「レターパック」に用いられる封筒に表示された図形,「レターパックプラス」に用いられる封筒に表示された図形,「スマートレター」に用いられる封筒に表示された「スマートレター」及び「SmartLetter」の文字,「レターパックプラス」に用いられる封筒に表示された「レターパックプラス」の文字,「ゆうパック」の送り状に表示された「ゆうパック」の文字及びJPロゴ等に本願赤色が使用されている(甲51,甲112,甲113)。
また,平成25年3月21日には,日本郵便の商業施設である「KITTE(キッテ)」が東京駅丸の内南口前の旧東京中央郵便局跡地に開業したが,当該施設の看板に表示された文字又は図形の一部にも,本願赤色が使用されている(甲115〜甲117)。
(エ)登録商標
請求人は,各種商品及び役務(本願指定役務を含む。)について,文字,図形又は立体的形状と本願赤色等の結合からなる登録商標を有している(甲114)。
エ 広告宣伝における本願赤色等の使用
(ア)年賀はがきの広告宣伝
平成19年ないし同21年,平成29年ないし同31年には,年賀はがきの販売に当たり,パンフレットやポスターをはじめとする広告宣伝(甲62〜甲65,甲198〜甲209),年賀はがき専門のウェブサイト「郵便年賀.jp」(甲21,甲22),新聞,雑誌やテレビ(甲66〜甲73,甲76〜甲86,甲90〜甲92,甲136〜甲141,甲153,甲210〜甲215)における広告宣伝において,「年賀はがき」の文字,「日本郵便」の文字,JPロゴ,その他チラシやウェブサイトに表示された文字及び図形に本願赤色が使用されている。
また,年賀はがきの引受や発送開始のニュースは,新聞,テレビ,インターネット記事等により国内で報道された(甲23〜甲27,甲135,甲142〜甲152,甲163〜甲178等)。
(イ)日本郵政グループの広告宣伝
平成19年の日本郵政グループの発足時には,日本郵政グループCI発表会が開催され(同年3月19日開催),「ゆうびんレッド」がコーポレートカラーとして採択された旨のニュースがテレビ(20番組),新聞・オンラインニュースサイト(94紙)等により国内で報道された(甲42)。
また,平成24年10月には,日本郵便を含む新たな日本郵政グループ発足を広告するインターネット記事(甲36),平成27年の日本郵政グループ上場時の新聞広告(甲110),平成28年1月及び同30年1月の挨拶状等(甲106,甲179,甲180),平成29年10月のプレスリリース等の広告宣伝において,「日本郵政グループ」の文字やグループブランドマークと共に,広告物に表示された幾何図形や広告物の背景,JPロゴの色彩,〒マークの色彩や背景等として本願赤色が使用されている。
(ウ)関連商品・役務の広告宣伝
請求人の配達車両や郵便差出箱を模した玩具,郵便局で販売されるキャラクター付きのレターセット,郵便局で販売されるチョコレート菓子,日本郵便の企画に係る商品カタログ,「フレーム切手」の提供,請求人主催の展覧会の開催,「スマートレター」の提供,「ゆうパックに関連した通販事業者向けのクラウドサービス等,請求人の業務に関連した商品・役務について,平成21年ないし同28年にかけて,プレスリリース,雑誌,チラシ等において広告宣伝が行われており,これらの広告に表示された配達車両の車体,郵便差出箱,〒マーク,JPロゴ,「郵便局」の文字,「日本郵政グループ」の文字,「日本郵便」の文字,その他,広告に記載された文字及び図形の色彩に本願赤色が使用されている(甲28〜甲33,甲56〜甲58,甲87〜甲89,甲93〜甲105)。
(エ)女子陸上部における広告宣伝
請求人が運営する「日本郵政グループ女子陸上部」のユニフォームや応援旗に本願赤色が使用されている(甲39,甲54,甲55,甲74,甲75等)。
「日本郵政グループ女子陸上部」は,平成28年に開催された「第36回 全日本実業団対抗女子駅伝競走大会(クイーンズ駅伝in宮城)」において優勝したことが報道され(甲156),陸上部の選手たちは本願赤色を一部に有するユニフォームを着用し,また,応援を行う請求人の社員が着用したスポーツウェアの一部に本願赤色が使用されている(甲156〜甲159)。
(オ)東京オリンピック・パラリンピック競技大会のスポンサーシッププログラム発表会における広告宣伝
日本郵便は,令和2年に開催が予定されていた東京オリンピック・パラリンピック競技大会のスポンサーシッププログラムへの参画が決定し,平成27年夏に,東京においてオフィシャルパートナー発表会見が開かれ,その様子を報道する記事中の写真において,同会見の会場の背景にグループブランドマーク及びコーポレートブランドマークが表示されている(甲107,甲108)。
(3)本願赤色に係る需要者の認識について
ア 新聞記事等
平成24年5月28日付け朝日新聞朝刊に「ネクタイもハンカチもポスト色」の見出しの下,「全国郵便局長会通常総会で,郵便ポストにちなんだ赤いハンカチを取り出す野田佳彦首相」との記事,同日付け日本経済新聞朝刊に「赤ネクタイで関係強化訴え」の見出しの下,「・・・現職の首相として初めて同総会に出席した。郵便ポストにちなんで赤いネクタイを着け,赤いハンカチを振り回すパフォーマンスも。」との記事がある(甲118,甲119)。
平成27年4月8日付け日経産業新聞に「『青と赤』巻き返し」の見出しの下,「・・・赤をコーポレートカラーとする日本郵便の存在・・・ローソンの店頭には赤い郵便ポストが置かれ・・・」との記事がある(甲120)。
平成26年10月29日付けの「教えて!郵便屋さん」のウェブサイトにおいて,「郵便屋さんの赤いバイク・・・『郵便やさん』と聞いて何をイメージされますか?あの赤い郵便バイクについてのお話しです。・・・」との記事(甲123),同28年2月17日プリントアウトの「ワールドミニカー(ミニカーダイキャストカーショップ通販)」のウェブサイトにおいて,「・・・私たち日本人にとって『郵便=赤』というイメージが強いですが・・・」との記事がある(甲125)。
平成27年11月8日付け宮崎日日新聞ウェブサイトに「郵便局がカープ応援」の見出しの下,「・・・カープも郵便局も赤がイメージカラーなのでぴったり。・・・」との記事がある(甲126)。
イ 本願商標の認識度に関するアンケート調査
請求人は,本願商標について需要者の認識度を調査するアンケート調査を行い,「色彩商標に関する調査報告書」を提出した(以下「本アンケート調査」という。:甲162)。
本アンケート調査は,回答者に対し「『信書』とは,受取人の個人名が書かれている手紙,招待状や請求書などの文書のことです。」等の説明をした上で,「信書」を配達するサービスを行っている企業・団体のイメージカラーとして本願赤色の正方形の画像を提示し,当該色彩から想起する企業・団体名を自由回答で記載させることによって調査したものであり,20歳から69歳の全国47都道府県に所在する一般の消費者を対象に行われた。
その結果,3,040件の回答があり,本願赤色から請求人及び関連するサービス等を想起すると回答したものは1,950件(64.1%)である。
一方で,本願赤色から請求人及びその関連サービスが想起されなかった回答は,1,090件(35.9%)あり,かつ,企業・団体名を自由に回答するという設問の回答中には「ドコモ」,「楽天」,「コカ・コーラ」の他に,「赤帽」,「ヤマト運輸」,「日本通運」,「佐川急便」等が含まれている。
(4)判断
上記(1)ないし(3)を総合してみれば,請求人らは,郵便創業期以来,継続して,日本全国において,営業標識,役務の提供の用に供する物,広告宣伝等に,本願赤色等を使用していることが認められる。
しかしながら,請求人らによる本願赤色等の使用態様については,以下のとおりである。
ア 営業標識における本願赤色等の使用態様について
(ア)郵便の創業期の郵政旗,郵便徽章は,その色彩として「赤色」が指定されているが,当該赤色は,郵政旗,郵便徽章の構成要素として,常にこれらの標章を構成する図形と結合して使用されていたものであり,本願赤色等のみが独立した標章として使用されているということはできないから,郵便創業期の「赤色」の指定により,本願赤色等のみが独立した識別標識として認識され,その機能を果たしていたとはいえない。
(イ)〒マーク
〒マークは,別掲3のとおり,「〒」の記号と本願赤色との結合からなるものであり,〒マークに使用される赤色は,その構成要素として,常に「〒」の記号と結合して使用されるものであって,本願赤色のみが独立した標章として使用されているということはできないから,〒マークに本願赤色が指定され,使用されているとしても,本願赤色のみが独立した識別標識として認識され,その機能を果たすものとはいえない。
(ウ)グループブランドマーク,コーポレートブランドマーク
グループブランドマーク及びコーポレートブランドマークは,別掲4ないし別掲9のとおりの構成よりなるところ,グループブランドマーク(別掲4),請求人のコーポレートブランドマーク(別掲5)及び日本郵便のコーポレートブランドマーク(別掲7)に使用される本願赤色は,いずれも,グループブランドマーク及びコーポレートブランドマークの構成要素として,常にこれらの標章を構成する文字及び図形と結合して使用されるものであり,本願赤色のみが独立した標章として使用されているものではないから,グループブランドマーク及びコーポレートブランドマークに本願赤色が指定され,使用されているとしても,本願赤色のみが独立した識別標識として認識され,その機能を果たすものとはいえない。
イ 本願指定役務の提供の用に供する物における使用態様について
(ア)制帽,制服,配達用かばん等における使用態様
制帽,制服,ヘルメット,配達用かばんは,本願赤色等が使用されているが,これらの赤色は,〒マーク,JPロゴ等の図形又は「郵便」の文字,「郵便局」の文字と結合し,これらの標識の構成要素として使用されていたものであり,本願赤色等のみが独立した出所識別標識として強い印象を与えるとはいい難いから,その使用により,本願赤色等のみが識別力を獲得したということはできない。
また,日本郵政グループの社員用ネックストラップは,そのひも部分に本願赤色が使用されているが,当該ひも部分には,請求人の役務の出所を識別する標識として「JAPAN POST GROUP」の文字が白色で表示されていることからすれば,ネックストラップの上記赤色は役務の魅力向上等に資する装飾として認識されるものというのが相当であり,本願赤色のみが独立した出所識別標識として認識され,その機能を果たしてきたということはできないから,その使用により,本願赤色のみが識別力を獲得したということはできない。
加えて,請求人らの制服は,主に紺色が使用され,本願赤色等が請求人らの制服において目立つように使用されているとはいえない。
(イ)配達車両,郵便差出箱における使用態様
配達車両及び郵便差出箱は,本願赤色等が全体に使用されているが,配達車両及び郵便差出箱には,請求人らに係る業務の出所を表す標識として「郵便」の文字及び「日本郵便」の文字,〒マーク,グループブランドマーク又はJPロゴ,「郵便POST」の文字等が常に表示されている。
そうすると,配達車両及び郵便差出箱に接する需要者は,役務を識別する上で重要な標識として,請求人らが長年にわたって使用してきた「郵便」や〒マークといった標識により出所を認識するといえるものであり,配達車両及び郵便差出箱に使用されている赤色のみがこれらの標識と分離して観察され,需要者に強く印象付けられるとはいえないから,当該赤色は役務の魅力向上等に資する装飾として認識されるものというのが相当である。
また,配達用自動二輪車の車体が赤色であるとしても,その一部(前面の泥よけ部分)は白色であり(甲13〜甲16),郵便差出箱に使用されている色彩は,青色やオレンジ色等も含まれており(甲7,甲8),配達車両や郵便差出箱に本願赤色等のみが統一して使用されていたとはいえない。
したがって,配達車両,郵便差出箱における色彩の使用は,本願赤色等のみが独立した出所識別標識として認識され,その機能を果たすものということはできないから,その使用により,本願赤色のみが識別力を獲得したということはできない。
(ウ)年賀はがきにおける使用態様
年賀はがきは,本願赤色等が使用されているが,上部に表示された「郵便はがき」の文字,下部に表示された請求人の役務の出所識別標識である「日本郵便」の文字,料額印面に表示された「鶴」,「梅」,「竹」,「富士山」等をモチーフとしたその年ごとの図形の色彩として使用されており,常に年賀はがきに表示された文字及び図形と結合して使用されていたものであるから,年賀はがきにおいて,本願赤色等のみが独立した標章として使用されていたとみることはできない。
また,年賀はがきに使用されている色彩は,オレンジ色等の色彩も含まれており(甲7,甲8),本願赤色等のみが統一して使用されているものではないから,年賀はがきにおける色彩は,本願赤色等のみが独立した出所識別標識として認識され,その機能を果たすものといえず,その使用により,本願赤色等のみが識別力を獲得したと認めることはできない。
ウ 郵便局,請求人ホームページ及び各種業務に係る個別標識における本願赤色等の使用態様について
(ア)郵便局,ホームページにおける使用態様
日本郵政グループの発足以降,郵便局においては,郵便局の外看板に表示された図形,郵便局の窓口の看板に表示された図形,ゆうゆう窓口(郵便局の時間外窓口)の看板に表示された図形に本願赤色が使用されており,本願赤色が全体的ないし7割程度の面積を占める部分に使用されているものがある。
しかしながら,郵便局の看板に接する需要者は,役務を識別する上で重要な標識として,請求人らが長年にわたって使用してきた「郵便局」,〒マーク,JPロゴといった標識により出所を認識するといえるものであり,上記看板等の赤色のみがこれらの標識と分離して観察され,需要者に強く印象付けられるとはいえないから,これらの赤色は,独立した識別標識として認識されるというよりは装飾のための色彩として認識されるものというのが相当である。
また,請求人及び日本郵便のホームページには,本願赤色が使用されているが,これらの赤色は,請求人の業務に係る役務の出所識別標識である「日本郵政」の文字,〒マーク,グループブランドマーク等の構成要素として,これらの標章を構成する図形と結合して使用されているか,又は装飾的な図形や記載された文字の色彩として使用されているものであり,赤色のみが独立して役務の識別標識として使用されているとみることはできない。
したがって,郵便局,ホームページにおける色彩の使用は,本願赤色のみが独立した出所識別標識として認識され,その機能を果たすものということはできないから,その使用により,本願赤色のみが識別力を獲得したと認めることはできない。
(イ)各種業務及び登録商標における使用態様
請求人の業務に係る「Webゆうびん〒」のウェブサイトや,「レターパックプラス」,「スマートレター」の封筒及び登録商標には,本願赤色等が使用されているが,当該赤色は「ゆうびん」の文字,〒マーク,コーポレートブランドマーク,「レターパックプラス」の文字,「SmartLetter」の文字等役務を識別する上で重要な標識として,請求人らが長年にわたって使用してきた「郵便」や〒マークといった標識により出所を認識するといえるものであり,本願赤色等のみがこれらの標識と分離して観察され,需要者に強く印象付けられるとはいえないから,当該赤色は役務の魅力向上等に資する装飾として認識されるものというのが相当である。
また,請求人が挙げる登録商標は,いずれも文字,図形又は立体的形状と本願赤色等の色彩との結合商標である。
さらに,各種ウェブサイトや封筒に使用されている色彩や登録商標は,青色,オレンジ色等の色彩も含まれており,本願赤色のみが統一して使用されているとはいえない(登録第5209500号商標,登録第5252847号商標,登録第5445210号商標等)。
したがって,郵便局,ホームページにおける色彩の使用は,本願赤色等のみが独立した出所識別標識として認識され,その機能を果たすものということはできないから,その使用により,本願赤色等のみが識別力を獲得したと認めることはできない。
また,日本郵便の商業施設の看板に表示された文字又は図形の一部の色彩に本願赤色が使用されているとしても,当該赤色は「KITTE」の文字の色彩の一部又は看板の装飾的な図形の色彩の一部に使用されており,本願赤色のみが「KITTE」の文字や看板と分離して観察され,需要者に強く印象付けられるとはいえないから,当該赤色は役務の魅力向上等に資する装飾として認識されるものというのが相当である。
エ 広告宣伝における使用態様について
(ア)年賀はがき,日本郵政グループ,関連役務・商品の広告宣伝における使用態様
平成19年以降,年賀はがき,日本郵政グループ,関連役務・商品の広告宣伝には,本願赤色が使用されているが,これらの広告宣伝物には,背景全体や面積の半分程度を占める図形の色彩として本願赤色が用いられているものがあるとしても,これらののぼり,チラシ,ウェブサイト,新聞や雑誌の広告記事,テレビ広告等には,〒マーク,JPロゴ,「日本郵政グループ」の文字,「日本郵便」の文字,「郵便局」の文字が常に表示されており,これに接する需要者は,役務を識別する上で重要な標識として,請求人らが長年にわたって使用した,又は日本郵政グループ発足時に広く報道された営業標識により出所を認識するといえるものであり,赤色のみがこれらの標識と分離して観察され,需要者に強く印象付けられるとはいえないから,これらの赤色は,独立した識別標識として認識されるというよりは装飾のための色彩として認識されるものというのが相当である。
そうすると,これらの広告宣伝に本願赤色が多用されているとしても,当該赤色は,独立した役務の出所識別標識として認識されるというよりは,広告宣伝の注目度を上げるために使用される装飾とみられるものであり,本願赤色のみが独立した出所識別標識として認識され,その機能を果たすものということはできないから,これら使用により,本願赤色のみが識別力を獲得したと認めることはできない。
さらに,のぼり,新聞,雑誌等の広告記事,ポスター,ウェブサイト等においては,背景全体や半分以上の面積を占める図形の色彩として本願赤色が使用されているものもあるが,例えば,本願赤色とは明度,彩度が異なるものや,赤色がグラデーションで表示されているもの(甲136〜甲141,甲153,甲198,甲199,甲201〜甲203,甲209〜甲215),本願赤色が目立つような態様でないもの(甲21,甲22,甲90〜甲92,甲206),オレンジ色も注意を引くもの(甲63〜甲65)等,必ずしも本願赤色のみが統一して使用されているとはいうことはできないから,これらの広告宣伝における本願赤色の使用により,本願赤色のみが独立した出所識別標識として認識され,識別力を獲得したとはいい難い。
(イ)女子陸上部のユニフォームにおける使用態様
請求人が運営する「日本郵政グループ女子陸上部」のユニフォームや応援用の旗等において,本願赤色が使用されているとしても,これらの赤色は,本願指定役務の提供に当たり,出所識別標識として使用されているとはいえないものであるから,その使用により本願赤色がその指定役務について自他役務識別力を獲得したことを認めることはできない。
(ウ)東京オリンピック・パラリンピック競技大会のスポンサーシッププログラム発表会における使用態様
東京オリンピック・パラリンピック競技大会のスポンサーシッププログラムの報道において,請求人のグループブランドマーク及びコーポレートブランドマークが報道されているとしても,これらの報道においては,本願赤色は,「日本郵政グループ」の文字やグループブランドマーク及びコーポレートブランドマークと結合して使用されていたものであって,本願赤色のみが独立して使用されているとはいえないものであり,色彩のみが独立して出所識別標識として強い印象を与えものとみるべき特段の事情は見いだせず,その使用により本願赤色が指定役務について自他役務識別力を獲得したと認めることはできない。
オ 需要者の認識について
(ア)新聞記事等
請求人が提出した新聞記事等には,「郵便ポスト」,「郵便バイク」,「郵便局のイメージカラー」が「赤色」である旨の記載があるものの,これらの記事からは本願指定役務の需要者中のどの程度の需要者が,本願赤色のみについて,自他役務の識別標識として認識しているのかを具体的,客観的に把握することはできない。
(イ)アンケート調査
本アンケート調査の結果によれば,本願赤色から請求人及びその関連サービスが想起された回答の合計は,1,950件(64.1%)であるところ,請求人らが創業以来,長年にわたって郵便事業を独占してきたことを踏まえれば,当該数値は,需要者の認識度として決して高いということはできないものである,
一方で,本願赤色から請求人及びその関連サービスが想起されなかった回答は,1,090件(35.9%)で,その回答中には「ドコモ」,「楽天」,「コカ・コーラ」の他に,「赤帽」,「ヤマト運輸」,「日本通運」,「佐川急便」等も含まれているものであり,本願赤色に接した3割以上の需要者が請求人以外の者を想起し,かつ,その中には本願指定役務と関連性が高い信書便事業の業者も含まれていることが認められる。
してみれば,本アンケート調査の結果は,必ずしも,本願赤色のみが需要者の間において,請求人ないし請求人の業務に係る本願指定役務の出所と密接に結びつけられて認識されることを証明したとはいえないものである。
また,本アンケート調査では,実施に当たり「信書」についての説明中に「郵便局」,「郵便局のポスト」等が記載されており(甲162),回答者に郵便業務を長く独占してきた請求人を想起させるように予断を与えるものであることから,調査結果が公平な方法で抽出されたものとはいい難い。
カ 小括
以上のとおり,郵便の創業期から現在に至るまで,本願指定役務の提供の用に供する物及び広告宣伝等において,本願赤色等が使用されてきたとしても,これらの赤色は,常に請求人の出所識別標識としての特定の文字や図形と結合してその構成要素の一つとして使用されるか,又は,役務の魅力向上等に資する装飾として認識されるものというべきであり,本願赤色のみが独立した出所識別標識として認識され,その機能を果たしているとはいえない。
また,別掲2のとおり,本願の指定役務と同種の業界(特定信書便配達業)の分野においては,本願赤色に近似する赤色を役務の提供の用に供する物や広告に使用する例が多数存在しており,その点からも,請求人の業務に係る役務で使用されている本願赤色は,請求人特有の色彩ということもできない上,請求人が提出した新聞記事等やアンケート調査の結果を考慮しても,本願赤色が,請求人の業務に係る役務を表示する特異な色彩として一般に認識され,あるいは需要者において独立した出所識別標識として周知されているとはいえない。
さらに,本願商標は,輪郭のない単一の色彩であり,これと近似する色彩を使用する請求人以外の者が多数存在することからすれば,色彩の自由な使用を不当に制限することを避けるという公益にも配慮すべきである。
したがって,本願指定役務の提供の用に供する物及び広告宣伝において,長年にわたって本願赤色等が使用されているとしても,本願赤色がその指定役務について自他役務識別力を獲得したことを認めることはできない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,「証拠調べ通知書における他者による赤色の使用が部分的かつ装飾を目的としたものにすぎない」とし,これらの使用例は「広告宣伝媒体(ウェブサイト等)や役務の提供の用に供する物(配達車両等)の一部に,装飾を目的として赤色が補足的に付されているにすぎず,赤色を主とし,当該色彩が目立つように使用されている例は少ない」,「役務の広告宣伝媒体及びその提供の用に供する物に共通かつ一貫して赤色を用いている例はない」旨主張している。
しかしながら,証拠調べ通知書で挙げた使用例には,本願赤色と近似する赤色をロゴマークや役務の提供の用に供する車両に目立つように使用している例(別掲2(6−1)〜(6−3),同(9),同(15−1),同(15−2))や,本願赤色と近似する赤色を役務の提供の用に供する車両,従業員のヘルメットや帽子,従業員の制服,ロゴマーク等に共通して使用している例(別掲2(5−1),同(5−2),同(13),同(22),同(27))があることから,証拠調べ通知書の使用例に,色彩が補足的で目立つように使用されている例がないとか,役務の広告宣伝媒体及びその提供の用に供する物に共通かつ一貫して赤色を用いている例はないと,直ちに評価することはできないし,また,本願赤色と近似する赤色について,本願指定役務と関係の深い信書便事業の業界において,請求人以外の事業者によって,広告宣伝に資するウェブサイトや,役務の提供の用に供する車両や従業員の制服等に広く使用されている事例であり,一般に「赤色」が装飾を目的として使用されている実情として,本件に係る判断において考慮すべきである。
(2)請求人は,「本願指定役務に係る市場は,請求人らにより事実上独占されてきたという特殊な市場特性と取引の実情が存在する。かかる特殊な市場特性と取引の実情及び役務の性質にかんがみれば,特定信書便事業は一般信書便事業と似かよった関係にはあるものの,本願指定役務との関係での商標の識別力の判断において,同一範囲として考慮するべき市場ではない」と述べ,「特定信書便事業者に関する引用例は,本願指定役務を取り扱う一般信書便事業の業界において赤色が,役務の魅力向上等を目的として一般的に使用されている事実を示すものではないから,本願の審査において考慮されるべき色彩の使用状況ではない。」旨主張している。
しかしながら,郵便と同様の一般信書便事業(信書便法第2条第4項等)と特定信書便事業(同条第7項等)は,信書の送達事業を行う地理的範囲が全国か限定地域のみかの差異や,送達する対象の重量や大きさの制限,全国均一料金か否かの点において,その提供内容は異なるものの,「信書の送達」という目的,手段が共通し,提供の用に供する物品(配達車両,封筒,制服,ヘルメット等)も共通する上,配達の地理的範囲が限定されるとしても,日本国内で配達地域が重複する場合もあり,両者の需要者,取引者の範囲が共通する場合も決して少なくないものである
してみれば,一般信書便事業と特定信書便事業は,全く別異の事業とみるよりは,その提供内容により,互いに比較,検討又は評価されることが容易に想定し得るものであり,互いに影響を及ぼす可能性をもった関連性のある事業というべきであり,需要者,取引者の認識は,両者の業務の分野では共通する部分が多いといえることから,色彩のみからなる本願商標の識別力の判断に当たり,一般信書便事業における色彩の使用状況は,本願赤色の商標登録において考慮されるべき色彩の使用状況であるというのが相当である。
(3)請求人は,「商標法第26条第1項第6号では,『需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標(他の商標の一部となっているものも含む。)』には商標権の効力は及ばないとされており,色彩のみからなる商標が登録されたとしても,当該商標の商標権の効力が及ぶのは,他者が,自己の商品又は役務の出所表示(商標)として当該色彩を使用した場合に限られ,他者による装飾的な色彩の使用には及ばない。よって,他者による色彩の装飾的な使用を広く考慮し,色彩のみからなる商標の独占適応性を殊更厳格に判断する必要はない」旨述べ,本願商標が独占不適応ではない旨主張している。
しかしながら,色彩が元々自由に使用できるものである以上,色彩の自由な使用を阻害するような単一の色彩の商品・役務表示としての保護は,公益的見地からみて容易に認容できるものではなく,単一の色彩が出所表示機能(自他識別機能)を取得したといえるかどうかを判断するに当たっては,その色彩を商標として保護することが,色彩使用の自由を阻害することにならないかどうかの点も含めて慎重に検討されなければならないというべきである(平成7年(ネ)第1518号参照)。
そうすると,単一の色彩からなる本願商標については,自由な色彩の使用を妨げることのないように公益的見地から慎重に検討すべきであるところ,本願赤色と近似する赤色は,上記1(3)のとおり,本願指定役務と関係の深い信書便送達の分野において多くの事業者によって役務の魅力の向上に資するため広く使用されている色彩であり,かかる色彩を特定の者に独占させることは,自由な色彩の使用を妨げるおそれがあるものといわざるを得ない。
してみれば,本願商標は,公益上の観点からも,特定人によるその独占使用を認めることはできないと判断するのが妥当である。
また,商標法第26条第1項の立法趣旨は,「過誤登録に対する第三者の救済」や「後発的に本条に定めるものとなった場合に商標権の効力を制限し,一般人がそのものを使うことを保証するため」などとされ,同第6号も「いわゆる『商標的使用』ではない商標の使用については商標権侵害を構成しないものとする裁判例の積重ねを明文化するため」の規定であるところ(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説第21版」),本願商標は,上記2(4)のとおり,その色彩自体に自他役務の識別標識としての特異性や出所識別標識として顕著な特徴はなく,請求人の使用を勘案しても,その色彩(赤色)のみが,自他役務の識別標識としての機能を獲得するに至っているとはいえないものであり,同法第3条第1項第6号に基づき登録を認めるべきではないのだから,同法第26条第1項の規定を理由に,本願商標の登録が許されるものではない。
(4)請求人は,立体商標の識別力についての裁判例(甲219)を引用し,「たとえ本願商標が他の文字や図形などと結合した態様で使用されてきた例があるとしても,色彩が構成の主として使用され,その結果,色彩が需要者の目につきやすく強い印象を与えるものであるのであれば,色彩単独で自他役務識別機能を発揮する」旨主張している。
しかしながら,赤色は特異な色彩ではなく,信書便の送達事業の分野において,広告宣伝,役務提供の用に供する物の魅力を向上するための色彩として広く一般に使用されているという取引の実情の下,本願赤色は,甲各号証に示された使用態様において,請求人の業務に係る役務の出所標識の文字や図形等と結合した一体不可分のものとして使用されてきたものか,役務の提供の用に供する物等の装飾と認識されるものであって,当該赤色のみが構成の主として使用され,本願赤色のみが需要者の目につきやすい強い印象を与えているということはできないこと,また,本アンケート調査の結果をみても,本願赤色のみが請求人の業務に係る役務の出所識別標識として,需要者の間に強い印象をもって広く知られているとはいえないことに加え,色彩使用の自由を阻害するような単一の色彩の商標としての保護は公益的見地からみて容易に認容できるものではないことも考慮し,本願赤色が単独で自他役務識別機能を発揮するものと認めることはできないと判断したものであり,本願商標について,文字や図形に色彩が結合されていたという事情のみによって直ちに使用による識別力の獲得を否定するものではない。
(5)請求人は,色彩商標の登録制度が導入されている欧州において,単色(オレンジ色)の色彩の登録性について争われた事件(甲1)や,米国における色彩商標の登録例(甲216〜甲218)を挙げて本願商標も登録されるべき旨主張しているが,色彩のみからなる商標が他国において商標登録されている例があるとしても,本願商標が識別力を有するか否か,また,使用をされた結果,請求人(出願人)の業務に係るものとして,需要者間に広く認識されるに至っているか否かは,我が国の商標法,我が国の取引の実情の下で,その需要者の視点に立って判断されるべきものであって,他国における登録例をもって判断されるべきものではなく,本願商標については上述のとおり判断するのが相当である。
(6)したがって,請求人の上記主張はいずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであるから,商標法第3条第1項第6号に該当し,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
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