Trademark Appeal Case
「置き配保険」の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2019−16083(T2019−16083/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「置き配保険」の文字を標準文字で表してなり、第20類及び第36類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成30年5月23日に登録出願され、その後、指定商品及び指定役務については、原審における同31年4月23日付けの手続補正書により、第20類「宅配ボックス,宅配受取用荷物収納ボックス,袋状の宅配受取用荷物収納具,荷物受取用ボックス(金属製又は石製のものを除く),錠(電気式及び金属製のものを除く。)」及び第36類「損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,損害保険の引受けに関する情報の提供,損害保険の再保険の引受け,損害保険業務,損害保険業務に関する助言,損害保険契約の締結の代理並びにこれに関するコンサルティング及び情報の提供,損害保険契約の締結の仲介」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『置き配保険』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の『置き配』は『配達荷物を敷地内の指定された場所に置いて帰ること』ほどの意味を有し、『保険』は、『人の死亡・火災などの偶発的事故の発生の蓋然性が統計的方法その他によってある程度まで予知できる場合、共通にその事故の脅威を受ける者が、あらかじめ一定の掛金(保険料)を互いに拠出しておき、積立金を用いてその事故(保険事故)に遇った人に一定金額(保険金)を与え、損害を填補する制度。』を意味するから、構成全体として『配達荷物を敷地内の指定された場所に置いて帰ることに関する保険』ほどの意味合いを容易に理解させる。そうすると、本願商標をその指定役務に使用した場合、これに接する需要者、取引者は、『配達荷物を敷地内の指定された場所に置いて帰ることに関する保険に係る役務』であることを認識するにとどまるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、前記1のとおり、「置き配保険」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、「置き配」の文字は、原審説示及び別掲1のとおり、「宅配便で、荷物を玄関やその周辺に置いて配達完了とすること。また、そのような配達方式。」を意味する語であり、また、「保険」の文字は、「人の死亡・火災などの偶発的事故の発生の蓋然性が統計的方法その他によってある程度まで予知できる場合、共通にその事故の脅威を受ける者が、あらかじめ一定の掛金(保険料)を互いに拠出しておき、積立金を用いてその事故(保険事故)に遇った人に一定金額(保険金)を与え、損害を填補する制度。」(「広辞苑第七版」岩波書店)を意味する語であって、一般に広く親しまれている語であるといえる。
そして、別掲2のとおり、近年、インターネット通販の拡大で宅配便の取扱数が増加し、配送事業者の人手不足と、再配達に伴うドライバーへの負担増が社会問題化したところ、在宅や不在宅にかかわらず、利用者が指定した場所等で荷物を配送・接受できることの利便性等から「置き配」が注目され、さらに、新型コロナウイルス感染拡大を受けては、非対面で荷物が受け取れること等からも、「置き配」を利用する者は増加している。また、原審説示及び別掲2のとおり、「置き配」には盗難のリスクに懸念があるところ、利用者の増加に伴って、一般消費者もそのリスクを広く認識するところとなっている。そして、指定役務を取り扱う業界において、別掲3のとおり、運送にかかる盗難による損害を填補する保険が広く一般に提供されており、別掲4のとおり、特定の事項による損害を填補する保険を表すものとして、「盗難保険」、「地震保険」、「登山保険」のように、特定の事項を冠した「○○保険」の語が広く一般に使用されていることが認められるものである。
そうすると、「置き配保険」の文字を標準文字で表してなる本願商標を、その指定役務に使用するときは、取引者、需要者をして、請求人による商標の採択の意図に拘わらず、「置き配による損害を填補(盗難を補償)する保険に関する役務」であることを認識、理解されるというのが相当であるから、本願商標は、単に役務の質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当する。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項該当性について
ア 請求人は、「『置き配保険』の使用例は、出願人以外になく、出願人が2018(平成30)年8月から大々的かつ継続的に使用することにより、需要者・取引者に浸透し、需要者・取引者に認識されるに至った」旨主張し、証拠方法として甲第5号証ないし甲第62号証を提出しているところ、以下、提出された証拠について検討する。
イ 請求人提出の証拠によれば、請求人であるYper株式会社が販売する置き配用のバッグ「OKIPPA」(請求人商品)に付随して提供される盗難補償は、東京海上日動火災保険株式会社と共同で開発され、「置き配保険」(使用商標)と称して、遅くとも2018(平成30)年から提供が開始され(甲15、他使用商標を主としたインターネット記事は甲16、甲17、甲18及び甲51の4件)、現在まで継続して提供されていること、2019(令和元)年に請求人商品がグッドデザイン賞を受賞したこと(甲22)、2019(令和元)年に日本郵便株式会社が、置き配キャンペーンとして請求人商品を全国で10万個を無料配布したこと(甲9、他甲19、甲21、甲25、甲31、甲32、甲40、甲42、甲52、甲61の9件)が認められ、また、請求人の主張によれば、取扱い開始から令和2年2月7日までに、請求人商品は約13万個販売され、使用商標に係る役務は491件提供された(甲14)ものである。
ウ しかしながら、使用商標は、本願商標と同一とは認められるものの、請求人の主張を前提としても、使用商標に係る役務の提供数はわずか491件であって、該役務単独での提供はなく、必ず請求人商品に付随して提供されており、請求人商品を手にした需要者が使用商標を認識したとしても、本願指定役務の需要者は一般消費者といえるから、日本全国の世帯数が約5900万(平成31年1月1日現在)であることを考慮すると、その請求人主張の請求人商品販売数(約13万個)をもってしても市場占有率が高いというほどの数量ともいえず、また、使用期間は約2年と短期間であり、宣伝広告も、他社が実施した、請求人商品の無料配布キャンぺーンにかかるものが多く、使用商標を主としたインターネット記事は5件しか確認できず、新聞・雑誌による広告等も確認できないことからすると、本願商標が使用された結果、一定の出所を認識させるに至っているとは認められない。
(3)請求人の主張について
請求人は、「置き配保険」は、「宅配ボックス」のように頑丈でない請求人商品において、新たに生じた盗難に遭うおそれがあるという課題を解決するために、請求人自身によって独自に考案された役務であって、請求人以外による使用はないこと、また、置き配によるトラブルは、責任の所在が明らかでなく、誰が保険に加入するのかが明らかではないから、これを保険で解消することは想定されておらず、需要者、取引者は、「置き配」に「保険」が用いられることを想起することができないことから、本願商標をその指定役務について使用しても、取引者、需要者が役務の質を示すものとして認識し得る商標ではない旨を、主張している。
しかしながら、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、本件審判の審決時において、本願商標がその指定役務との関係で役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標の需要者、取引者によって本願商標がその指定役務に使用された場合に、将来を含め、役務の質を表示したものと一般に認識されるものであれば足り、それが一般に用いられていた実情があったことまでを必要とするものではないというべきである。そして、前記(1)のとおり、「置き配」が日本国内において相当程度普及しており、本願の指定役務を取り扱う業界において、誰が保険に加入するか等の如何を問わず、運送にかかる盗難による損害を填補する保険が広く一般に提供され、特定の事項による損害を填補する保険を表すものとして、特定の事項を冠した「○○保険」の語が広く一般に使用されている実情を鑑みれば、本願商標を、その指定役務に使用したときは、「置き配による損害を填補(盗難を保障)する保険」を表したものと容易に認識されるものであって、「置き配保険」が、本願の指定役務の分野において請求人以外による使用がないからといって、本願商標の同号該当性が否定されるものではない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ同条第2項の要件を具備しないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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