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Trademark Appeal Case

位置商標の識別力とありふれた構成

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−9104(T2018−9104/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は,別掲1(1)のとおり,標章を付する位置が特定された位置商標であって,第8類「レンチ」を指定商品とし,商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を願書に記載のとおりとして,平成27年9月28日に登録出願されたものである。

その後,「商標の詳細な説明」については,原審における平成29年9月1日受付の手続補正書により,別掲1(2)のとおりに補正された。

第2 原査定の拒絶の理由(要点)

原査定は,「本願商標を構成する図形は,単に黄色の円図形であると認められる。そして,本願の指定商品の分野において,出願人以外の者が,レンチのボックスエンド部分に黄色または黒色で着色された円図形を使用している実情がある。そうすると,単に黄色の円図形で構成される本願商標をレンチのボックスエンドに挿入されている内側の非金属部分に位置を特定して使用しても,これに接する需要者は,本願の指定商品において普通に採択される黄色の円図形であることを理解するにすぎないものであるため,本願商標は,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標と判断するのが相当である。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当する。また,本願商標は,提出された証拠を全体的に考察しても,本願商標が使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているとは認められないことから,本願商標は,商標法第3条第2項に規定する要件を具備するということはできない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における審尋

当審において,令和元年5月17日付けで通知した審尋により,別掲2及び別掲3に示すとおりの円図形及び色彩の使用例の事実を新たに示した上で,本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当する旨の見解を示し,請求人に意見を求めた。

第4 審尋に対する請求人の意見(要旨)

1 本願商標のように黄色の円形リングをレンチのボックスエンドにある嵌合歯車状部の周囲の位置に構造的デザインとして製造組立工程において取り付けるというその特殊性は,同種商品に見られない顕著な商標であるといえ,しかも本願商標は,大きさの異なるあらゆるレンチにおいて常に同じ位置に配置されており,本願位置商標の出所表示機能・自他商品識別機能は,極めて有効に機能するものである。

2 審尋において示された商品「レンチ」に関する事例のうち,「フィスコインターナショナル株式会社」のウェブサイトに掲載のレンチ(別掲2(2)),及び「TOOL COMPANY STRAIGHT」のウェブサイトに掲載のレンチ(別掲2(3))は,いずれも請求人の業務に係る商品であるため(甲18,甲19),本願商標が極めて簡単で,かつ,ありふれたものという理由を裏付ける書証ではなく,かえって請求人の業務に係る商品「レンチ」の周知性を裏付ける書証というべきである。

第5 当審の判断

1 本願商標の商標法第3条第1項第5号該当性について

(1)本願商標について

本願商標は,上記第1の「商標の詳細な説明」によれば,標章を付する位置が特定された位置商標であり,商品「レンチ」のボックスエンドに挿入されている内側の非金属部分を黄色とする図形からなるところ,当該図形は,商品「レンチ」のボックスエンドに挿入されている内側の非金属部分の位置に付された黄色のやや肉太の円図形であるといえる。

(2)本願商標を構成する位置及び図形について

指定商品「レンチ」の分野においては,別掲2のとおり,レンチのボックスエンドに挿入されている内側の非金属部分の位置に,円図形が付された商品が存在する。

そして,本願商標を構成するやや肉太の円図形は,用いられる線の態様や形状に特徴があるわけではなく,上記のものと比べて,特段の差異があるとは認められない。また,本願商標を構成するやや肉太の円図形が付された位置についても,上記のものと比べて,特異性があるとは認められない。

そうすると,本願商標は,その図形の構成が極めて簡単で,かつ,ありふれたものというのが相当であり,その位置についても,指定商品「レンチ」の分野において一般的に選択されるものと認められる。

(3)本願商標を構成する図形の色彩について

指定商品「レンチ」の分野においては,別掲2及び別掲3のとおり,商品の美感等に資する目的のため様々な色彩が用いられているところ,別掲2(1)ないし(3)及び別掲3のとおり,黄色ないしそれに近似する色彩も,一般的に使用されている。

そして,本願商標を構成する図形の黄色の色彩は,上記のものと比べて,特異性があるとは認められない。

そうすると,本願商標を構成する図形の色彩は,指定商品「レンチ」の分野において一般的に選択されるものと認められる。

(4)上記(2)及び(3)によれば,本願商標はその構成が極めて簡単,かつ,ありふれた図形である肉太の円図形を,指定商品「レンチ」の分野において一般的に用いられる黄色で着色したものであり,また,レンチのボックスエンドに挿入されている内側の非金属部分の位置に円図形を付すことは,指定商品「レンチ」の分野において一般的であることから,本願商標は,その図形,位置及び色彩を総合的に考察しても,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標であると判断するのが相当である。

したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当する。

2 商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて

請求人は,本願商標が,仮に商標法第3条第1項第5号に該当するものであるとしても,同条第2項を適用して登録が認められるべきである旨を主張し,証拠方法として,原審において,平成29年9月4日付け手続補足書に添付の甲第1号証ないし甲第5号証及び同30年2月1日付け手続補足書に添付の甲第1号証ないし甲第6号証を,当審において,同年8月30日付け手続補足書に添付の甲第1号証ないし甲第6号証,令和元年8月22日付け手続補足書に添付の甲第18号証ないし甲第21号証及び同2年4月15日付け手続補足書に添付の甲第22号証ないし甲第27号証をそれぞれ提出している。

なお,当審及び原審において提出された証拠について証拠番号が一部重複することから,原審における平成29年9月4日付け手続補足書に添付の甲第1号証ないし甲第5号証の証拠番号は,甲第7号証ないし甲第号11証と読み替え,同30年2月1日付け手続補足書に添付の甲第1号証ないし甲第6号証の証拠番号は,甲第12号証ないし甲第17号証と読み替える。また,甲各号証の表記にあたっては,「甲1」のように省略する場合がある。

そこで,請求人提出の証拠の内容に照らし,本願商標が,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているか否かについて,以下検討する。

請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば,次の事実が認められる。

(1)請求人及びトップ工業による本願商標の使用について

ア 請求人は,台湾の企業であり,「TOP」のブランドとして我が国で販売されるトップ工業株式会社(以下「トップ工業」という。)の業務に係る商品「レンチ」の製造業者であるとされる。もっとも,請求人とトップ工業との契約書の写しとされる「トップ工業株式会社仕様の製品の製造に関する協定書」(2013年(平成25年)3月18日)においては,本願商標に関する直接的な記載は確認できない(甲20)。

イ トップ工業の業務に係る商品「レンチ」に関するトップ工業のウェブサイト(甲9),トップ工業の業務に係る商品「レンチ」を取り扱う「楽天市場」,「amazon.co.jp」,「道具道楽」,「ホームメイキング」,「TAKUMI−YA」,「上田屋」及び「ズームオンラインショップ」の通信販売用ウェブサイト(甲10),トップ工業の業務に係る商品を紹介するブログ記事(甲11)によれば,黄色のやや肉太の円図形が,トップ工業の業務に係る商品「レンチ」のボックスエンドに挿入されている内側の非金属部分に付されていることが確認でき,当該円図形及びその色彩並びにそれが付された位置は,本願商標を構成する図形及びその色彩並びにそれが付された位置と,同一性を損なわないものと認められるから,トップ工業の業務に係る商品「レンチ」について,本願商標が使用されていたと認められる。

上記ウェブサイトにおいて,本願商標を使用したトップ工業の業務に係る全ての商品「レンチ」には,持ち手の中央に大きく「TOP」(「P」の文字の一部が切れたデザイン化がされている。以下同じ。)の文字が刻印され,「【TOP/トップ工業】」,「TOP トップ工業」等の文字とともに,トップ工業の業務に係る商品として紹介され又は販売されている(甲9〜甲11)。また,商品「レンチ」に刻印された上記「TOP」の文字と同一視できる「TOP」の文字は,トップ工業の業務に係る商品「レンチ」に関するトップ工業のウェブサイトの左上に黄色で着色され,表示されている(甲9の1葉目)。さらに,上記証拠において,本願商標を構成する円図形及びその色彩並びにそれが付された位置が,特定の者の業務に係る商品を表示するものである旨の記載は確認できない(甲9〜甲11)。

ウ 請求人が,トップ工業を通じて日本に輸出した本願商標を使用した商品「レンチ」の数量は,2009年(平成21年)から2018年(平成30年)までの10年間で,合計約93万本であり,その売上金額は,日本円に換算すると約3億円以上であるとされる。もっとも,それらの値を示す書類には,それぞれ,「2009年から最新までの本願商標を付して日本で販売されたレンチの数量(合計:931,010本」,「2006年から最新までの本願商標を付して日本で販売されたレンチの販売額(単位:米ドル)合計:2,900,500米ドル」の文字と棒グラフが記載されているのみであり(甲22,甲23),当該書類の作成時期や作成者等は確認できない。

(2)本願商標を使用した商品の広告宣伝について

ア 請求人は,台湾において,中国語及び英語で記載された雑誌の表紙に本願商標を使用した商品を掲載しており(甲5,甲6),これらの雑誌は,請求人が,我が国において2010年(平成22年)に行われ438社の出展があった「日本DIYホームセンターショー」(甲25)及び我が国において2012年(平成24年)に行われ208社の出展があった「第10回国際オートアフターマーケットEXPO」(甲26)に出展した際に,無料で頒布されていたとされる。もっとも,甲第25号証及び甲第26号証においては,上記「日本DIYホームセンターショー」及び「第10回国際オートアフターマーケットEXPO」の概要を示す記載が認められるものの,請求人が当該展示会に出展した事実,及び上記雑誌(甲5,甲6)が,当該展示会において無料頒布された事実を裏付ける記載は確認できない。

イ 請求人は,2020年(令和2年)に,我が国において,本願商標を使用した商品「レンチ」の画像等が掲載された「台湾手工具年鑑」(甲24)を発行したとされる。もっとも,当該「台湾手工具年鑑」は,中国語及び英語で記載されたものであり,これが我が国において発行され,頒布された事実を裏付ける証拠はない。

(3)商品「レンチ」の取引者に係る証明書について

請求人は,商品「レンチ」の取引者に係る証明書(甲1〜甲4)を提出しているところ,同証明証書4件は,その翻訳文によれば,「証明書」の見出しの下,「我々,下記署名者は,章隆工業股▲分▼有限公司(以下『章隆』)の,ボックスエンド部にはめ込まれた輪に黄色の色彩を施しているラチェットレンチを,○年より日本で販売してきたことを証する。我々の知る限り章隆は,数あるレンチ製造業者の中で,ラチェットレンチのボックスエンド部にはめ込まれた輪に黄色の色彩を施している,唯一の会社である。黄色の輪をはめ込んだラチェットレンチを見た時,我々はそのラチェットレンチが章隆により製造されたと分かる。」(「○」の部分は手書きで「2017」(甲1),「2006」(甲2〜甲4)が記入されている。)の文章が印刷され,証明者らが,「○」の部分に日本での販売開始年,末尾に会社名,代表者,住所,電話,日付を記入し,捺印する形式がとられているものである。

上記証明書の記載内容には,本願商標を用いた商品の画像等の掲載はなく,本願商標を用いたレンチが証明者らによってどのように販売されているのか等の具体的説明はない。

(4)判断

上記の認定事実によれば,当合議体は,以下のとおり判断する。

ア 上記(1)アによれば,請求人は,台湾の企業であり,「TOP」のブランドとして我が国で販売されるトップ工業の業務に係る商品「レンチ」の製造業者であるとされるが,請求人とトップ工業との契約書の写しとされる「トップ工業株式会社仕様の製品の製造に関する協定書」(2013年(平成25年)3月18日)においては,本願商標に関する直接的な記載は確認できないから,当該契約書の写しから,請求人が,本願商標を使用したトップ工業の業務に係る商品「レンチ」の製造業者であると直ちに認めることはできない。

そうすると,請求人による,トップ工業を通じた我が国における本願商標の使用の事実を認めることはできない。

イ 上記(1)イによれば,トップ工業の業務に係る商品「レンチ」について,本願商標が使用されていたと認めることができる。

しかしながら,他方で,(ア)本願商標は,上記1(4)のとおり,その構成が極めて簡単,かつ,ありふれた図形である肉太の円図形を,指定商品「レンチ」の分野において一般的に用いられる黄色で着色したものであり,また,レンチのボックスエンドに挿入されている内側の非金属部分の位置に円図形を付すことは,指定商品「レンチ」の分野において一般的であるから,商品「レンチ」との関係において,特異性があるものとはいえないこと,(イ)本願商標を使用したトップ工業の業務に係る商品「レンチ」は,その全ての商品の持ち手中央の目立つ位置に,大きく「TOP」の文字が刻印され,上記(1)イのウェブサイトにおいても,常に「【TOP/トップ工業】」,「TOP トップ工業」等の文字とともに紹介され又は販売されていること,(ウ)トップ工業の業務に係る商品「レンチ」に表示された当該「TOP」の文字は,トップ工業の名称の一部を示すものであって,当該文字と同一視できる「TOP」の文字が,トップ工業の業務に係る商品「レンチ」に関するトップ工業のウェブサイトに目立つ態様で表示されていることよりすれば,トップ工業の業務に係る商品を表示する自他商品識別標識として使用されていることは明らかであること,(エ)上記(1)イのウェブサイトのいずれにおいても,本願商標を構成する円図形及びその色彩並びにそれが付された位置が,特定の者の業務に係る商品を表示するものである旨の記載は確認できないことが認められる。

上記(ア)ないし(エ)からすると,本願商標は,トップ工業の業務に係る商品「レンチ」に顕著に表示された「TOP」の文字と合わせてトップ工業の業務に係る商品「レンチ」を表示しているというべきであって,本願商標のみが,当該「TOP」の文字から独立して,その商品の出所を表示する標識として,需要者に強く印象付けられるものということはできない。

ウ 上記(1)ウによれば,請求人が,トップ工業を通じて日本に輸出した本願商標を使用した商品「レンチ」の数量は,2009年(平成21年)から2018年(平成30年)までの10年間で,合計約93万本であり,その売上金額は,日本円に換算すると約3億円以上であるとされる。

しかしながら,それらの値を示す書類は,それぞれ,「2009年から最新までの本願商標を付して日本で販売されたレンチの数量(合計:931,010本」,「2006年から最新までの本願商標を付して日本で販売されたレンチの販売額(単位:米ドル)合計:2,900,500米ドル」の文字と棒グラフが記載されているのみのものであり,当該書類の作成時期や作成者等は確認できないから,当該書類の示す内容は,客観性に乏しく,直ちに事実と認めることはできない。

そうすると,請求人による,トップ工業を通じた我が国における本願商標の使用の事実を認めることはできないことは上記アのとおりであるところ,仮に当該使用の事実を認めることができたとしても,上記のとおり,請求人による,トップ工業を通じた我が国における本願商標の使用開始時期,本願商標の使用数量,本願商標を使用した商品の売上高は明らかではない。さらに,請求人による,トップ工業を通じた我が国における本願商標の使用数量,本願商標を使用した商品の売上高が,請求人の主張のとおりであるとしても,それらが,商品「レンチ」を取扱う市場の総使用数量及び総売上高に占める割合は明らかではない。

エ 上記(2)によれば,請求人は,台湾において,中国語及び英語で記載された雑誌の表紙に本願商標を使用した商品を掲載しており,これらの雑誌が,我が国において2010年(平成22年)に行われた「日本DIYホームセンターショー」及び我が国において2012年(平成24年)に行われた「第10回国際オートアフターマーケットEXPO」において,無料で頒布されたとされる。

しかしながら,提出された証拠からは,請求人が当該展示会に出展した事実,及び上記雑誌が,当該展示会において無料頒布された事実を裏付ける記載は確認できない。

また,請求人は,2020年(令和2年)に,我が国において,本願商標を使用した商品「レンチ」の画像等が掲載された「台湾手工具年鑑」を発行したとされる。

しかしながら,これが我が国において発行され,頒布された事実を裏付ける証拠の提出はないから,当該雑誌が,我が国の需要者により購読されたものと推認することはできない。

そうすると,請求人が,我が国において,本願商標を使用した商品の宣伝広告を行った事実を認めることができない。また,請求人が,台湾において,本願商標を使用した商品を雑誌等に掲載することにより,本願商標を使用した商品の宣伝広告を行った事実があるとしても,それが,我が国における需要者の認識に直接反映されるものとは認めがたく,本願商標の我が国における自他商品識別力の獲得に寄与するものではないというのが相当である。

オ 上記(3)によれば,請求人は,商品「レンチ」の取引者に係る4件の証明書を提出している。

しかしながら,上記証明書の記載内容には,本願商標を使用した商品の画像等の掲載はなく,本願商標を使用したレンチが証明者らによってどのように販売されているのか等の具体的説明もないから,かかる証明書のみをもって,本願商標を使用した商品が,証明者らにより,我が国において,請求人に係る商品と理解し得るものとして,2006年(平成18年)又は2017年(平成29年)から,販売されているという事実を認めることはできない。

なお,上記4件の証明書は,全てほぼ同一の文章が印刷されていることからすると,これらの証明書は,請求人において画一的に作成した文章を各証明者らに示して単に確認をとる方法で作成されたものであることが推察され,このようにして作成された証明書においては,作成を依頼した者からの誘導に沿う方向で確認が行われ,その記載の細部についてまでは吟味が行われないこともあり得ることであるから,これら証明書の記載内容に過大な証拠価値を認めることはできない。

また,証明書の作成者の関係者でない者が,このようにして作成された証明書に署名捺印するとは考え難いことからすると,証明者らは,証明書の作成者である請求人の関係者であることが推察されるから,これら証明書の記載内容は客観性に乏しく,信用性は高いものとはいえない。

そうすると,上記4件の証明書の存在により,本願商標が,請求人の出所を表示するものとして,我が国において,2006年(平成18年)から使用されているということはできないし,本願商標が,我が国の指定商品の取引者,需要者の間において全国的に周知なものとして認識されていたと認めることもできない。

カ 上記アないしオを総合すると,トップ工業の業務に係る商品「レンチ」について,本願商標が使用されていたと認められるとしても,本願商標は,商品「レンチ」との関係において,特異性があるものとはいえないこと,本願商標のみが,当該商品に顕著に表示された「TOP」の文字から独立して,その商品の出所を表示する標識として,需要者に強く印象付けられるものということはできないこと,請求人による,トップ工業を通じた我が国における本願商標の使用の事実は認められず,仮に当該使用の事実が認められるとしても,請求人による,トップ工業を通じた我が国における本願商標の使用開始時期,使用数量,本願商標を使用した商品の売上高及び市場シェアは明らかではないこと,請求人が,我が国において,本願商標を使用した商品の宣伝広告を行った事実を認めることはできないこと,商品「レンチ」の取引者に係る4件の証明書の存在により,本願商標が,請求人の出所を表示するものとして,我が国において,2006年(平成18年)から使用されているということはできないことから,本願商標が,使用をされた結果,我が国における指定商品の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。

してみれば,本願商標は,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めることはできない。

したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。

3 請求人の主張について

(1)請求人は,「本願商標のように黄色の円形リングをレンチのボックスエンドにある嵌合歯車状部の周囲の位置に構造的デザインとして製造組立工程において取り付けるというその特殊性は,同種商品に見られない顕著な商標であるといえ,しかも本願商標は,大きさの異なるあらゆるレンチにおいて常に同じ位置に配置されており,本願位置商標の出所表示機能・自他商品識別機能は,極めて有効に機能するものである。」旨主張する。

しかしながら,本願商標はその構成が極めて簡単,かつ,ありふれた図形である肉太の円図形を,指定商品「レンチ」の分野において一般的に用いられる黄色で着色したものであり,また,レンチのボックスエンドに挿入されている内側の非金属部分の位置に円図形を付すことは,指定商品「レンチ」の分野において一般的であることよりすれば,本願商標は,その図形,位置及び色彩を総合的に考察しても,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標であると判断するのが相当であることは,上記1(2)ないし(4)のとおりである。

(2)請求人は,「審尋において示された商品『レンチ』に関する事例のうち,『フィスコインターナショナル株式会社』のウェブサイトに掲載のレンチ(別掲2(2)),及び『TOOL COMPANY STRAIGHT』のウェブサイトに掲載のレンチ(別掲2(3))は,いずれも請求人の業務に係る商品であるため(甲18,甲19),本願商標が極めて簡単で,かつ,ありふれたものという理由を裏付ける書証ではなく,かえって請求人の業務に係る商品『レンチ』の周知性を裏付ける書証というべきである。」旨主張する。

しかしながら,「フィスコインターナショナル株式会社」のウェブサイトに掲載のレンチ(別掲2(2))については,甲第18号証及び甲第19号証のいずれにおいても,何らの記載も確認できない。そして,「TOOL COMPANY STRAIGHT」のウェブサイトに掲載のレンチ(別掲2(3))については,甲第18号証において,「TOOL COMPANY/STRAIGHT」の文字の記載があるとしても,それが具体的に何を意味するものであるのか明らかではなく,また,請求人の取引先を示すと認められる企業名としては「BJ Co.,Ltd.」と記載されており,当該「BJ Co.,Ltd.」と別掲2(2)の「TOOL COMPANY STRAIGHT」の関係は明らかではない。

そうすると,請求人は,「フィスコインターナショナル株式会社」のウェブサイトに掲載のレンチ(別掲2(2))及び「TOOL COMPANY STRAIGHT」のウェブサイトに掲載のレンチ(別掲2(3))のいずれについても,それが請求人の業務に係る商品であることを立証できたとはいえないから,請求人の主張は,その前提において失当である。

(3)したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。

4 まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当し,かつ,同条第2項に規定する要件を具備するものではないから,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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