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Trademark Appeal Case

容器形状の位置商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2017−10633(T2017−10633/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第30類「調味料」を指定商品として、平成27年5月20日に位置商標として登録出願、その後、本願の指定商品については、当審における同29年7月18日付け手続補正書により、第30類「焼肉のたれ」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、商品を封入した容器の胴部中央よりやや上から首部にかけて配された立体的形状からなるところ、商品の容器は、商品の魅力を向上させるため又は商品の利便性向上等のため、様々な形状、様々な模様が付された形状が採択、使用されている実情があり、本願の指定商品と需要者が関連する商品の分野においても、様々な形状、様々な模様が付された形状が採択、使用されている事実がある。そうすると、本願商標は、商品の容器としては、通常採択し得る形状の一部を認識させるもので、本願商標を、その指定商品の容器の上記位置に使用しても、これに接する需要者は、単に商品の魅力を向上させるため又は商品の利便性向上等のために採用し得る包装(容器)の一形状を普通に用いられる方法で表示したものと認識するにとどまるというのが自然である。したがって、本願商標は、商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、本願商標が使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているか否かについてみるに、出願人は、菱型をモチーフにしたラベルの使用や、菱型をモチーフにした商標を登録している旨述べているが、これらと本願商標に係る形状は、明らかに外観において異なるから、出願商標を使用しているとはいえず、これらの使用があることで、本願商標が、出願人が主張するように、『本源的に識別標識として機能し得る』とはいえない。そして、本願商標と同一性が認められ得る形状(以下『本願商標の形状』という。)の使用についてみると、昭和52年に商品(ハンバーグ用のたれ)に使用され、その後も、主として焼肉用のたれに、継続的に使用していると推認されるが、本願の指定商品は『調味料』であって、『焼肉用のたれ』以外の調味料(例えば、みそ、砂糖)についての使用は認められない。さらに、本願商標の形状は、出願人の商品(焼肉用のたれ)である『黄金の味』の210g及び400gのものに使用されているところ、みそやしょうゆ等を含めた調味料全体における本願商標の形状を使用した商品のシェア等は不明である。加えて、本願商標の形状が使用される商品は、いずれも『エバラ』『黄金の味』の文字が顕著に使用されているから、こうした使用状況、使用態様からは、出願商標部分のみで独立して識別力を有するに至っているということはできない。以上のことから、本願商標が使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識するに至っているということはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審においてした審尋

当審において、審判長は、請求人に対し、令和元年6月20日付けで、別掲2に示すとおりの用例を提示した上で、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、同法第3条第2項に規定する要件を具備するものでもない旨の見解を示した審尋を発し、期間を指定して、これに対する回答を求めた。

その後、審判長は、請求人に対し、令和元年10月7日付けで、請求人が、先に提出した回答書(上記審尋に対する回答書)において、確認を取った上で回答する旨述べている点について、回答をする意思がある場合には、具体的な回答をするよう求めた。

4 審尋に対する請求人の回答

請求人は、前記3の審尋に対し、要旨以下のとおり回答した。

(1)別掲2において例示されている他社商品の各事例は、いずれも本願商標と異なる。そのことはとりもなおさず、「この図形/形状がこの位置に付されている商品」として認識され、購買の場面、消費の場面で取引者、需要者に深く印象付けられるものである。

(2)本願商標は、その指定商品「焼肉のたれ」の包材の特定部位の形状を特定したものであるが、商品の一般的な流通形態として、包材に商品名を付さずに販売することなど通常はあり得ない。しかし、そのことが直ちに、本願商標が「それ自体が単独で商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として認識されることはない」との認定には直結しない。一の商品に複数の識別標識が付され、用いられることは、通常の取引において、極めて一般的に行われることであり、商品の名称、それを付したラベルの色調や形状、具体的な装飾態様、更には包材自体の形状が各々、あるいは複合的に取引者、需要者の記憶に残り、個々の要素が識別標識として機能することは十分あり得るところである。

(3)ダイヤカットの連続(本願商標)は、実際に小売店舗に陳列された場合に、大きな存在感をもって認識される(甲25〜甲28)。まして、請求人の商品(「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」)のうち、400ml(360g)入りのものは、大容量のため、陳列台の下段に配置されることが多く、俯瞰で見た場合に、容器中央より上から首部に設けられた本願商標は、ラベルがはっきりと視認できない角度であっても、単なる「美感の発揮」を超えて需要者に強く印象付けられるものであり、識別標識として機能している。

そして、上記のような商品の陳列は、少なくとも全国で5万店を下らない小売店舗において、日々なされており(甲45〜甲48)、ダイヤカットの連続(本願商標)は、このように多くの需要者が目にする態様で40年以上継続して使用されている。

(4)請求人が需要者に対して訴求するのは、商品としての「焼肉のたれ」であり、容器を販売しているわけではない。テレビCMにおける15秒又は30秒という限られた時間の中で商品価値を訴求するに当たっては、殊更容器の特定の部分だけを写すとか、あるいは容器に係る特徴として本願商標をうたう、などといったことが常識的な広宣活動において行われるはずがない。それでもなお、請求人が、本願商標について、それ単体で識別標識機能を発揮するものであると確信しているのは、40年以上の長きにわたり、本願商標と同一視可能な形状的特徴を変更することなく継続して使用してきたからであり、本願商標に係る要素が単独で使用されなければ、それ自体が単独で識別標識機能を発揮しないとはいえず、複数の要素が有機的に絡み合うものと解するのが常識的な感覚として妥当である。例えば、本願商標を長年付している商品の商品名「黄金の味」や請求人のハウスマークである「エバラ」の各要素は、長年の継続的な使用により、その識別標識としての機能をいかんなく発揮する状態にある。これらと全く同じく、長年継続的に使用している本願商標は、「文字的要素」ではないため、需要者間の口コミとして俎上に上がることが相対的に少ないかもしれないが、その代わりに、全国の小売店における商品陳列の場面においては、「視覚的に」存在感を誇示するものであり、たとえ、視線の高さとは異なる低位の棚に置かれても、胴体上部から首の部分にかけて付された本願商標は、間違いなく購買場面における目印、すなわち、識別標識として機能しており、その凹凸によって生じる光の反射もまた、需要者の目を惹きつけるものである。ここでポイントとなるのは、取引者、需要者との直接的接点である全国の小売店における本願商標を付した商品の陳列が、40年以上にわたり継続して行われてきたということであって、陳列時の視覚的な存在感や実際に手に取る時の感触のそれぞれが、需要者の意識下に本願商標を刷り込み続けてきたといえることであり、こうした圧倒的なプレゼンスの前では、テレビCM内で本願商標部分が写されている時間の長短などは、取るに足らないことであって、わざわざテレビCMで印象付けなくとも、需要者の意識下に刷り込まれる期間、分量としては十分に積み重ねてきている。

(5)本願商標を付した商品「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」は、テレビCMを長年大量に放映している。少なくとも、古い時期のものについては、個々のテレビCMの放映回数、地域等について必ずしも完全に把握できていない面もあるが、広宣活動に関する一連の立証の趣旨は、本願商標を付した商品について継続的に4マスを横断して広宣活動を行ってきたことにより、本願商標を付した商品の売上げが好調に推移し、その存在は、取引者、需要者に広く知られるところとなっているものであることを示すことにある。そして、殊更、本願商標について単体でフォーカスする構成のテレビCMがあるわけではないが、ダイヤ(ひし形)という特定のモチーフを基に作り上げた商品容器の形状をガラス瓶からPETボトルに刷新した以降にも「頑なに」使用し続けているのは、需要者の意識下に本願商標の識別性が刷り込まれているからである。

(6)アンケート結果(甲24)について、一般需要者が、容器を見ただけで商品そのもの(「黄金の味」「黄金のたれ」「黄金」)まで想到し得た割合がおよそ3割、出所表示という観点でいえば、エバラの商品であると認識した割合が64%にまで至っているということは、決して軽視できないものである。「位置商標」と「容器全体の形状」とでは視覚上の印象に差異があるとしているが、形状として、特に着目される部分が本願商標として特定されているダイヤカットの部分であることは明らかである。まして、一般需要者に「本願商標を付した、現状マーケットにない仮想の形状の容器」を見せて、これがどのような出所表示かという点まで問うことは、位置商標に求められる識別性の要件を超えており、一般消費者の注意力を考慮しても妥当でない。このアンケート結果は、長年にわたる使用の結果、本願商標がそれ単独で識別標識としての機能を発揮し得るに至っていることを如実に示している。

(7)本願商標を付した商品「黄金の味」は、一般の取引者、需要者のみならず、同じ飲食業者の間でも顧客吸引力を有するアイコンとして認識されており、コラボ企画の商品パッケージにも、本願商標が明確に視認できる状態で「黄金の味」の商品写真が付されている。

5 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号該当性について

本願商標は、別掲1のとおり、商品容器の胴部中央よりやや上から首部にかけての周縁の位置に、縦長ひし形の立体的形状(各々のひし形形状は中央に向かってくぼんでいる。)を連続して付してなる位置商標であり、「商標の詳細な説明」として「商標登録を受けようとする商標(以下『商標』という。)は、標章を付する位置が特定された位置商標であり、商品を封入した容器の胴部中央よりやや上から首部にかけて配された立体的形状からなる。前記立体的形状は容器周縁に連続して配された縦長の菱形形状であり、各々の菱形形状は中央に向かって窪んでいる。なお破線部分は商品容器の一例を示したものであり、商標を構成する要素ではない。」旨の記載がなされ、第30類「焼肉のたれ」を指定商品とするものである。

ところで、商品等の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえるところ、本願の指定商品を取り扱う業界においても、その商品の包装容器の表面に、例えば、長方形、平行四辺形、ひし形などといった様々な形状をモチーフとする立体的な装飾を施すことが一般に広く行われている(別掲2)。

そうすると、本願商標を構成する立体的形状及びそれを付す位置は、需要者において、その商品の包装容器について商品の機能又は美感に資することなどを目的として一般に広く行われている立体的な装飾の一類型として認識し得る範囲のものというべきであり、それ自体が単独で商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として認識されることはないとみるのが相当である。

したがって、本願商標は、商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(2)商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて

請求人は、仮に、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、本願商標は、使用をされた結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至った商標であるから、同条第2項の規定により、商標登録を受けることができるものである旨主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第21号証及び甲第24号証ないし甲第49号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出している。

そこで、請求人の主張及び同人提出の甲各号証について、以下検討する。

ア 使用期間

請求人は、昭和33年5月に設立、ソースやケチャップの製造、販売を開始した企業であって、昭和53年6月に「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」(甘口・中辛、210g)と称する商品「焼肉のたれ」を発売、同年10月にはその「辛口」を発売した(甲1、甲2、甲4、甲29)。当該商品の包装容器の表面には、本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものが見受けられる。

その後、上記「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」と称する商品(甘口・中辛・辛口)については、容量の追加又は変更(400g追加(昭和54年。平成27年に終売し、360g及び480gに変更。)、590g追加(昭和62年)、920g追加(平成6年)、150g追加(平成20年)、40ml追加(平成29年)。なお、平成15年以降、業務用のもの(1L、1,550g、4.8kg)もある。)、数度のデザイン変更(平成9年、平成23年、平成29年)が行われたことがうかがえる(甲1、甲3、甲5、甲6、甲9、甲29)ところ、当該「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」と称する商品の包装容器の表面において本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものが見受けられるのは、容量を「210g」、「400g」(平成27年以前)並びに「360g」及び「480g」(平成27年以降)とするもののみ(以下、これらの一又は複数をまとめて、「本件商品」という場合がある。)であり、その他の容量のものには見当たらない。

なお、本件商品の容器の胴部には、請求人のハウスマークである「エバラ」の文字からなる標章及び個別の商品名である「黄金の味」の文字からなる標章のほか、商品の内容を示す標章(「焼肉のたれ」の文字からなるもの。「甘口」、「中辛」又は「辛口」の文字からなるもの。)が表示されたラベルが付されている(甲1、甲3〜甲6、甲9、甲11、甲20、甲29)。

イ 売上高、市場シェア及び販売地域

請求人の売上高は、昭和54年3月に100億円を突破した後、昭和59年3月に200億円を突破、平成2年3月に300億円を突破しており、平成27年度においては、食品事業が445億6,900万円(グループ全体の507億800万円の87.9%)、そのうち、「焼肉のたれ」や「黄金の味」などと称する商品を含む肉まわり調味料群が171億300万円(食品事業全体の38.4%)となっている(甲1、甲3、甲12、甲29)。

また、請求人の製造、販売に係る「焼肉のたれ」や「黄金の味」などと称する商品が含まれる商品分野「焼肉のたれ」における平成25年(2013年)4月から平成26年(2014年)3月までの間の請求人の市場シェアは、54.2%とされる(甲11)。

さらに、本件商品は、発売当初から全国で販売していることがうかがえる(甲1、甲2、甲4、甲5、甲20、甲21、甲29)ところ、平成10年ないし平成27年の販売実績は、210gのものについては、平成10年に約55億3,000万円だったものが、その後に漸減し、平成27年に約20億円となった一方、400gのものについては、平成10年に約71億4,000万円だったものが、その後に漸増し、平成27年に約94億8,000万円となったことがうかがえる(甲14)。

そして、平成27年度には、本件商品の出荷額は、請求人の全出荷額の24%を占めるとされ、また、SRIデータ(株式会社インテージによる全国小売店パネル調査におけるPOSデータ)の「焼肉のたれ群」を対象とする金額ベースで36.2%を占めるとされ(甲13)、さらに、同年度の「黄金の味」と称する商品の出荷本数は、約4,000万本であって、焼肉のたれ市場におけるシェアは約4割とされる(甲29)。

ウ 広告宣伝

請求人は、本件商品に関し、その発売当初から全国に向けてテレビ、ラジオ、一般紙、女性誌等の様々な媒体を通じて広告宣伝を行っていると主張するところ、その主張については、次のとおりである。

(ア)テレビCM等

a 請求人は、本件商品について、その発売時(昭和53年6月)以降、断続的に、芸能人を起用するなどして、テレビCMを制作し、全国的に放映していることがうかがえる(甲1、甲4、甲5、甲16〜甲18、甲29、甲30、甲34〜甲36)。

また、上記テレビCMのうち、その全体の内容が明らかなもの(甲16、甲34)によれば、容器の胴部に請求人のハウスマークである「エバラ」の文字からなる標章及び個別の商品名である「黄金の味」の文字からなる標章のほか、商品の内容を示す標章(「焼肉のたれ」の文字からなるもの。「甘口」、「中辛」又は「辛口」の文字からなるもの。)が表示されたラベルが付された本件商品の容器は映し出されるものの、その商品容器の表面において本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものが視認できるように映し出される時間は短く、かつ、その時間のほとんどにおいて、「エバラ黄金の味」又は「エバラ焼肉のたれ黄金の味」のテロップが表示されると同時にその音声も流れている上、その商品容器の表面における本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものについて、それを商品ないしその容器に係る特徴としてうたうなど、当該テレビCMの視聴者に対し、それ自体を商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような映像又は音声は確認できない。

b 請求人が主張するラジオを通じた広告宣伝については、何らその主張を裏付ける証拠の提出がない。

なお、仮に、ラジオを通じた広告宣伝がなされたとしても、本願商標が別掲1に示すとおりの構成からなる位置商標であることに照らすと、その広告宣伝により、聴者が本件商品に係る本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものを認識することは困難というべきである。

(イ)パンフレット、チラシ

a 請求人は、「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」(甘口・中辛、210g)の昭和53年6月の発売に先立ち、その商品の特長や仕様、販売促進活動の概要等を知らせる販売店向けの「フルーツたっぷり/エバラ焼肉のたれ黄金の味/〔新発売!!〕」を見出しとするパンフレット(甲4)を制作し、また、「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」(甘口・中辛、400g)の昭和54年の追加発売に先立ち、その商品の特長や仕様、販売促進活動の概要等を知らせる販売店向けの「おいしさでっかく新発売!!/エバラ焼肉のたれ黄金の味 大型登場」を見出しとするパンフレット(甲5)を制作したことがうかがえるところ、請求人は、これらのパンフレットについて、新商品としてのPRを展開する中で全国の取引先(食品問屋、卸売業者、小売業者)に配布したものとするが、その具体的な配布先や配布数は明らかでない。

また、上記パンフレットは、いずれも表紙に商品の外観正面の写真(容器の胴部には、請求人のハウスマークである「エバラ」の文字からなる標章及び個別の商品名である「黄金の味」の文字からなる標章のほか、商品の内容を示す標章(「焼肉のたれ」の文字からなるもの。「甘口」又は「中辛」の文字からなるもの。)が表示されたラベルが付されている。)が掲載されており、その商品容器の表面において本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものが見受けられるものの、それを商品ないしその容器に係る特徴としてうたうなど、当該パンフレットを看る者に対し、それ自体を商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような記述は見当たらない。

b 請求人は、平成12年11月に、「我が家はいつでもやっぱり黄金の味!/エバラ黄金の味」を見出しとする本件商品に係るチラシ(甲6)を23,000部制作したことがうかがえるところ、請求人は、当該チラシについて、上記aのパンフレットと同様に、全国の取引先に配布したものとするが、その具体的な配布先は明らかでない。

また、上記チラシの表面には、商品の変更点として、「黄金らしさをさらに追求!! すっきりした甘さとコクのバランスがさらにおいしくなりました」及び「キラリ輝く金ラベル! 輝く新ラベルでお客様へのアピール度アップ アイキャッチ効果が抜群です」の記載とともに、商品の外観正面の写真(容器の胴部には、請求人のハウスマークである「エバラ」の文字からなる標章及び個別の商品名である「黄金の味」の文字からなる標章のほか、商品の内容を示す標章(「焼肉のたれ」の文字からなるもの。「甘口」、「中辛」又は「辛口」の文字からなるもの。)が表示されたラベルが付されている。)が掲載されており、その商品容器の表面において本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものが見受けられ、当該チラシの裏面には、商品の変更点として、エコ対応樹脂ヒンジキャップの採用に関する記載のほか、本件商品を用いた料理例(写真)や商品規格の記載はあるものの、その商品容器の表面における本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものについて、それを商品ないしその容器に係る特徴としてうたうなど、当該チラシを看る者に対し、それを商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような記述は見当たらない。

(ウ)製品案内

請求人は、自己の製品案内を平成15年7月に7,000部(甲9)、平成20年7月に5,000部(甲9の2)、平成23年7月に12,000部(甲9の3)、平成27年12月に10,100部(甲9の4)、それぞれ制作したことがうかがえるところ、請求人は、当該製品案内について、大半を頒布済みであるとするが、その具体的な頒布先は明らかでない。

また、上記製品案内は、請求人の製造、販売に係る家庭用又は業務用の各種商品ごとの概要及び規格並びに外観正面等を知らせる販売店向けのものといい得るところ、そのいずれにおいても、本件商品が味や容量ごとに区分けされ、その外観正面の写真(容器の胴部には、請求人のハウスマークである「エバラ」の文字からなる標章及び個別の商品名である「黄金の味」の文字からなる標章のほか、商品の内容を示す標章(「焼肉のたれ」の文字からなるもの。「甘口」、「中辛」又は「辛口」の文字からなるもの。)が表示されたラベルが付されている。)が掲載されており、その商品容器の表面において本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものが見受けられるものの、それを商品ないしその容器に係る特徴としてうたうなど、当該製品案内を看る者に対し、それを商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような記述は見当たらない。

(エ)各種コラボレーション企画等

a 森永製菓株式会社とのコラボレーションでは、平成21年2月3日から5月末日頃までの間、同社のスナック菓子である「おっとっと」と称する商品の新フレーバーとして「やきにく味」が全国で販売されたところ、その包装袋に、本件商品の外観正面の写真の表示がある(甲38、甲39)。

なお、上記商品の具体的な販売数は、明らかでない。

b サンヨー食品株式会社とのコラボレーションでは、平成22年5月24日に、同社のカップ焼きそばとして、「サッポロ一番 焼肉のたれ焼そば」と称する商品が発売されたところ、その包装袋に、本件商品(中辛)の外観正面の写真(容器の胴部には、請求人のハウスマークである「エバラ」の文字からなる標章及び個別の商品名である「黄金の味」の文字からなる標章のほか、商品の内容を示す標章(「焼肉のたれ」の文字からなるもの。「中辛」の文字からなるもの。)が表示されたラベルが付されている。)の表示がある(甲42、甲43)。

なお、上記商品の具体的な販売期間、販売数、販売地域は、明らかでない。

c ジャパンフリトレー株式会社とのコラボレーションでは、平成23年9月から同24年6月までの間、同社のスナック菓子である「チートス(Cheetos)」と称する商品とのコラボレーション商品が販売されたとされるところ、その包装袋に、本件商品(中辛)の外観正面の写真(容器の胴部には、請求人のハウスマークである「エバラ」の文字からなる標章及び個別の商品名である「黄金の味」の文字からなる標章のほか、商品の内容を示す標章(「焼肉のたれ」の文字からなるもの。「中辛」の文字からなるもの。)が表示されたラベルが付されている。)の表示に加え、当該ラベル部分のみの表示がある(甲40)。

なお、上記商品は、18,000ケース(12袋/ケース)が販売されたとされるが、そのことを裏付ける証拠の提出はなく、また、当該商品の具体的な販売地域も明らかでない。

d 株式会社なとりとのコラボレーションでは、平成30年6月4日から10月31日までの間、同社のビーフジャーキー製品として、「焼肉のたれ味ビーフジャーキー」と称する商品が全国で販売されたところ、その包装袋に、本件商品(中辛)の外観正面の写真(容器の胴部には、請求人のハウスマークである「エバラ」の文字からなる標章及び個別の商品名である「黄金の味」の文字からなる標章のほか、商品の内容を示す標章(「焼肉のたれ」の文字からなるもの。「中辛」の文字からなるもの。)が表示されたラベルが付されている。)の表示がある(甲41)。

なお、上記商品は、累計で170,000袋が販売されたとされるが、そのことを裏付ける証拠の提出はない。

(オ)その他

a 請求人は、平成22年4月から同23年3月までの間、請求人の関連広告会社とされる株式会社横浜エージェンシーを通じて、本件商品についての「モバイルレシピ」の提供、新聞や雑誌等への出稿、テレビCMの制作、店頭又はイベント広告用資材の制作といった広告宣伝活動を行ったことはうかがえるが、これらの広告宣伝活動については、その具体的な内容が明らかでない(甲19)。

なお、請求人は、上記広告宣伝活動のうち、メディアに乗る頻度の極めて高い球場(横浜スタジアム)に看板を掲載した旨述べるが、具体的に当該球場のどの場所に、どのような看板が掲載されたかなど、その詳細を明らかにする証拠の提出はない。

b 請求人は、「学研パブリッシング」が平成25年3月27日に「GAKKEN HIT MOOK/エバラ焼肉のたれ 黄金の味 使いきりレシピ」と題するムック(甲20)を発行するに当たり、レシピ考案及び監修で関わったことはうかがえるが、当該ムックの具体的な発行部数は不明である。

また、上記ムックの内容としては、「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」を用いた各種レシピのほか、当該商品が1978年の誕生から35年が過ぎて今では年間3,700万本(2011年実績)を出荷するロングセラー商品に成長した旨の記載、当該商品には3つの味(甘口・中辛・辛口)及び3つのサイズ(210g、400g、590g)がある旨の記載、当該商品の特長等の記載とともに、当該商品の外観正面の写真(容器の胴部には、請求人のハウスマークである「エバラ」の文字からなる標章及び個別の商品名である「黄金の味」の文字からなる標章のほか、商品の内容を示す標章(「焼肉のたれ」の文字からなるもの。「中辛」の文字からなるもの。)が表示されたラベルが付されている。)が掲載されており、その商品容器の表面において本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものが見受けられるものの、それを商品ないしその容器に係る特徴としてうたうなど、当該ムックの読者に対し、それを商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような記述は見当たらない。

エ アンケート調査

(ア)請求人は、本願商標が現に識別標識として機能している事実を示すべく、調査会社に依頼して、調査対象者を「20歳〜69歳、男女、全国、市販の焼肉用調味料を年に1本以上自分自身で購入する人」、サンプル数を「1000名」とする「『黄金の味』ボトルデザイン想起調査」(インターネットによる調査)を行ったところ、その調査結果報告書(2017年6月20日付け)(甲24)によれば、おおむね次のとおりである。

a 「純粋想起」として、本件商品を含む4種の商品の容器(文字等の平面標章が付されておらず、中身も充填されていないが、キャップ部の形状や色彩を含め、容器全体の形状(輪郭)が特定されているもの。)の写真を示した上で、それぞれについて、思い浮かんだ焼肉用調味料の商品名を答えさせる質問に対し、本件商品の容器について、「黄金の味/黄金のたれ/黄金」と回答した者は28%、「エバラ/エバラ焼肉のたれ」と回答した者は36%とされる。

b 「助成想起」として、「エバラ 黄金の味」、「モランボン ジャン」、「キッコーマン わが家は焼肉屋さん」、「叙々苑 焼肉のたれ」又は「わからない」の選択肢を示した上で、上記aで述べた4種の容器の写真のそれぞれについて、当てはまると思う商品名を答えさせる質問に対し、本件商品に係る容器の写真について、「エバラ 黄金の味」を選択した者は66%とされる。

c 「誤認/販売意向」として、「このボトルデザインで『エバラ 黄金の味』ではない別の焼肉用調味料が発売されたら、あなたは『エバラ 黄金の味』と間違えると思いますか。」との質問に対し、「間違えると思う」と回答した者は14%、「たぶん間違えると思う」と回答した者は19%、「どちらともいえない」と回答した者が36%、「たぶん間違えないと思う」と回答した者が21%、「間違えないと思う」と回答した者が11%とされる。

また、「では、あなたは、『エバラ 黄金の味』ではない別の焼肉調味料がこのボトルデザインで発売することについて、どう思いますか。」との質問に対し、「発売しないでほしい」と回答した者が9%、「どちらかというと発売しないでほしい」と回答した者が21%、「特に何も思わない」と回答した者が70%とされる。

なお、上記「発売しないでほしい」又は「どちらかというと発売しないでほしい」と回答した者において、その回答をした理由は、例えば、「エバラ焼肉のたれといえばこのボトルだというイメージが強いから。」、「ちゃんと見ずに商品を手にとって間違えて買ってしまいそうだから。」、「クリスタル部分が黄金の味のトレードマークだから」とされる。

(イ)上記(ア)によれば、回答者に示された容器の写真は、中身やラベルは外してあるものの、そのキャップ部を含め、容器全体の形状(輪郭)が特定されているものである一方、本願商標は、別掲1のとおりの構成からなる位置商標であり、その容器全体の形状(輪郭)が特定されていないものであるから、両者の間には、視覚上の印象に少なからず影響を及ぼす差異が存するとみるのが相当であることに加え、回答者が当該写真に係る容器のどの部分(全体又は一部)をもって回答したかは不明であり、これをもって、本願商標が自他商品の識別標識として機能するか否かを推し量ることはできない。

また、本件商品の容器については、「純粋想起」において、「黄金の味/黄金のたれ/黄金」と回答した者は28%にとどまる上、「エバラ 黄金の味」という具体的な選択肢が与えられた「助成想起」においても、正答率が66%にとどまる。

さらに、「誤認/販売意向」に係る「エバラ 黄金の味」と間違えるか否かの質問に対し、「間違えると思う」及び「たぶん間違えると思う」と回答した者は合計で33%にとどまる上、そのような回答をした者において、「エバラ焼肉のたれといえばこのボトルだというイメージが強いから。」、「ちゃんと見ずに商品を手にとって間違えて買ってしまいそうだから。」、「クリスタル部分が黄金の味のトレードマークだから」などといった理由を挙げた者がどの程度いるのかも明らかでないから、そのような回答が多数を占めているとはいえず、これらの回答をもって、需要者における通常の認識の程度を推し量ることはできない。

オ 小括

上記アないしエによれば、請求人は、本願の指定商品である「焼肉のたれ」について、昭和53年6月以降継続して、本件商品を販売しており、その商品容器の胴部中央よりやや上から首部にかけての周縁の位置に本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものを使用しているとはいえるが、本件商品の広告宣伝においては総じて、それを商品ないしその容器に係る特徴としてうたうなど、当該広告宣伝に接する需要者に対し、それを商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような手法は用いられていない。

また、請求人が2017年に実施した本件商品に係るアンケート調査については、回答者に示された容器の写真が、本願商標と比較した場合、視覚上の印象に少なからず影響を及ぼす差異が存するなど、本願商標が自他商品の識別標識として機能するか否かを推し量る上で必ずしも適切とはいえない点がある上、仮に、その点を差し置いてみたとしても、当該調査の結果から、本件商品の容器の胴部中央よりやや上から首部にかけての周縁の位置に付された本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものが、これに接する需要者をして、通常、商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として認識され得ると認めるに足る事実は見いだせない。

そして、本件商品の容器の胴部中央よりやや上から首部にかけての周縁の位置に付された本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものは、そもそも、上記(1)のとおり、本願の指定商品を取り扱う業界における取引の実情を踏まえれば、需要者をして、その商品の容器について商品の機能又は美感に資することなどを目的として一般に広く行われている立体的な装飾の一類型として認識され得る範囲のものであって、それ自体が単独で商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として認識されることはないというべきものであるし、また、本件商品には、常に容器の胴部に請求人のハウスマークである「エバラ」の文字からなる標章及び個別の商品名である「黄金の味」の文字からなる標章のほか、商品の内容を示す標章(「焼肉のたれ」の文字からなるもの。「甘口」、「中辛」又は「辛口」の文字からなるもの。)が表示されたラベルが付されているから、需要者による商品選択の契機としては、当該ラベルに表示された「エバラ」の文字からなる標章又は「黄金の味」の文字からなる標章が商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として機能し、商品の内容を示す標章が購入しようとする内容の商品に合致するものであることを確認するためのものとして機能するといえる。

そうすると、商品の容器の胴部中央よりやや上から首部にかけての周縁の位置に本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものが付された本件商品が、昭和53年6月以降、全国で販売され、広告宣伝もされているものであって、平成27年度の焼肉のたれ市場において3割を超えるシェアを有するものであるとしても、本件商品については、その広告宣伝等を含めて使用されている「エバラ」の文字からなる標章又は「黄金の味」の文字からなる標章が商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として需要者に認識されているといえる一方、その容器の胴部中央よりやや上から首部にかけての周縁の位置に付された本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものがそのような標識として需要者に認識されているとはいえないとみるのが相当である。

したがって、本願商標は、使用がされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。

(3)請求人の主張について

ア 請求人は、創業当初から現在に至るまで、約60年にわたり、焼肉のたれを中心とした肉まわり調味料群において、自社を象徴する記号ないし模様として、「菱型」を継続的に使用し続けているという事実及び菱型をモチーフにしたラベルや立体商標について商標登録を受けて(甲10、甲15)他社の排斥を行ってきた事実により、調味料の分野においては、菱型が請求人を想起させる標識として機能するに至っており、その前提ゆえに、菱型を連ねた構成からなる本願商標は、単なるありふれた形状にとどまることはなく、本源的に識別標識として機能し得るものである旨主張する。

しかしながら、調味料分野において、菱形が請求人を想起させる標識として機能するに至っているというためには、例えば、その分野において、菱形自体が独立した標章として認識されるような態様をもって、長年にわたり、極めて高い頻度をもって統一的に継続して使用されているなどにより、その使用の結果、需要者が菱形のみをもって請求人又は同人の製造若しくは販売する商品を想起するといった状況に至っている必要があると考えられるところ、請求人のハウスマークは、2011年(平成23年)までは4つの横長台形を組み合わせることにより生じた菱形様の空間部分に「エバラ」の文字を配してなる標章であったが、その後、「エバラ」の文字を主体とする別異の標章に変更されているし、また、1969年(昭和44年)に本格的な販売が開始された「焼肉のたれ 朝鮮風」と称する商品に付されたラベルの一部において菱形様の図形が用いられているほか、いくつかの商品のラベル等について同様の図形が用いられていることなどはうかがえるものの、それらは、請求人の製造、販売する商品の一部にとどまるものである(甲3、甲7〜甲9、甲29)から、これらをもって、需要者が菱形のみをもって請求人又は同人の製造若しくは販売する商品を想起するといった状況に至っているとは認めることができない。

さらに、請求人の主張に係る登録商標は、いずれも文字、図形又は立体的形状の結合からなる標章であって、その構成中に菱形様の図形又は立体的形状を有する標章も含まれている(甲10、甲15)が、その構成態様に照らせば、当該菱形様の図形又は立体的形状部分が独立して商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識されるとはいい難く、また、請求人は、当該登録商標により他社の排斥を行ってきた旨主張するも、具体的にどの登録商標により、どのような排斥がなされたかを明らかにしていないことからすれば、この点からみても、需要者が菱形のみをもって請求人又は同人の製造若しくは販売する商品を想起するといった状況に至っているとは認めることができない。

してみれば、上記請求人による主張は、その前提において失当であり、採用することができない。

イ 請求人は、別掲2において例示されている他社商品の各事例について、いずれも本願商標とは異なるとしつつ、商品「焼肉のたれ」の一般的な流通形態として、包材に商品名を付さずに販売することなど通常はあり得ず、一の商品に複数の識別標識が付され、用いられることが極めて一般的に行われているのであって、商品の名称、それを付したラベルの色調や形状、具体的な装飾態様、更には包材自体の形状が各々、あるいは複合的に取引者、需要者の記憶に残り、個々の要素が識別標識として機能することは十分あり得るところであり、実際に、小売店舗の陳列において、ダイヤカットの連続(本願商標)は、大きな存在感をもって認識される(甲25〜甲28)上、本件商品のうち、400ml(360g)入りのものは、大容量のため、陳列台の下段に配置されることが多く、俯瞰で見た場合に、容器中央より上から首部に設けられた本願商標は、ラベルがはっきりと視認できない角度であっても、単なる「美感の発揮」を超えて需要者に強く印象付けられるものであり、識別標識として機能している旨主張する。

確かに、取引において、一の商品に文字、図形若しくは立体的形状からなる又はそれらを結合してなる標章が複数用いられることは、一般に広く行われており、その場合に、個々の標章が識別標識として機能することがあることは否定し得ないものの、そうであるからといって、当該個々の標章の全てが識別標識として機能するものではない。

本願商標は、別掲1のとおりの構成からなる位置商標であって、商品「焼肉のたれ」について使用をするものであるところ、別掲2に示すとおり、当該商品を取り扱う業界において、商品の包装容器の表面に、例えば、長方形、平行四辺形、ひし形などといった様々な形状をモチーフとする立体的な装飾を施すことが一般に広く行われているといった取引の実情があることを鑑みれば、本願商標を構成する立体的形状及びそれを付す位置については、細部において、別掲2に示した例と異なる点があることを考慮してもなお、需要者をして、その商品の包装容器について商品の機能又は美感に資することなどを目的として一般に広く行われている立体的な装飾の一類型として認識し得る範囲のものであり、それ自体が単独で商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として認識されることはないこと、上記(1)のとおりである。

また、本件商品は、請求人の製造、販売する「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」と称する商品のうち、その容器の表面において本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものが見受けられるものであって、容量を「210g」、「400g」(平成27年以前)並びに「360g」及び「480g」(平成27年以降)とするものであり、当該容器の胴部には、常に請求人のハウスマークである「エバラ」の文字からなる標章及び個別の商品名である「黄金の味」の文字からなる標章のほか、商品の内容を示す標章(「焼肉のたれ」の文字からなるもの。「甘口」、「中辛」又は「辛口」の文字からなるもの。)が表示されたラベルが付されているから、需要者による商品選択の契機としては、店舗における商品陳列の実際においても、当該ラベルに表示された「エバラ」の文字からなる標章又は「黄金の味」の文字からなる標章が商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として機能し、商品の内容を示す標章が購入しようとする商品に合致するものであることを確認するためのものとして機能するといえる。

そうすると、本件商品について用いられている上記標章のうち、商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として機能するのは、その容器の胴部に付されたラベル上における請求人のハウスマークである「エバラ」の文字からなる標章及び個別の商品名である「黄金の味」の文字からなる標章であり、その他の標章(その容器の表面における本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るもの(標章)及び商品の内容を示す標章)については、そのような標識として機能するものではないというべきである。

なお、この点について、請求人は、商品が陳列台の下段に配置されたときは、その商品のラベルがはっきりと視認できないとするが、本件商品が食品であって、誤った商品選択により健康に影響が及ぶ場合があることからすれば、需要者が商品選択をする際には、少なくとも商品の出所を確認すべく、商品のラベル上の表示に注目するとみるのが相当であるから、商品陳列の際に、その商品のラベルが視認できない場合があるとしても、それをもって、本件商品の容器の表面における本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るもの(標章)が、自他商品を識別する標識として、強く印象付けられるとはいうことができない。

してみれば、上記請求人による主張は、採用することができない。

ウ 請求人は、本件商品について、長年継続的に使用している本願商標は、「文字的要素」ではないため、同じく長年継続的に使用している商品名である「黄金の味」の文字やハウスマークである「エバラ」の文字に比して、需要者間の口コミとして俎上に上がることが相対的に少ないかもしれないが、その代わりに、全国津々浦々の小売店における商品陳列の場面においては、「視覚的に」存在感を誇示するものであり、取引者、需要者との直接的接点である全国の小売店(少なくとも5万店)における本願商標を付した商品の陳列が多くの需要者がそれを目にする態様で40年以上にわたり継続して行われてきたことにより、陳列時の視覚的な存在感や実際に手に取る時の感触のそれぞれが、需要者の意識下に本願商標を刷り込み続けてきたといえることからすれば、わざわざテレビCMで印象付けなくとも、需要者の意識下に刷り込まれる期間、分量としては十分に積み重ねてきた旨主張する。

しかしながら、本件商品が陳列された際には、通常、その商品の容器の表面に本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るもの(標章)と同時に、その商品の容器の胴部に付されたラベル上における請求人のハウスマークである「エバラ」の文字からなる標章及び個別の商品名である「黄金の味」の文字からなる標章も視認される上、当該本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るもの(標章)は、本件商品と同種の商品を取り扱う業界における取引の実情を鑑みれば、元来、需要者をして、その商品の包装容器について商品の機能又は美感に資することなどを目的として一般に広く行われている立体的な装飾の一類型として認識し得る範囲のものであり、当該「エバラ」の文字からなる標章及び個別の商品名である「黄金の味」の文字からなる標章に比して、需要者に強く支配的な印象を与えるとはいい難いものであることからすれば、例えば、テレビCMその他の広告宣伝活動において、当該標章を商品ないしその容器に係る特徴としてうたうなど、当該広告宣伝に接する需要者に対し、それを商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような手法を長年にわたり用いているなどといった場合は格別、そうでない場合には、たとえ、長年にわたり、当該標章が本件商品について使用されていたとしても、需要者が当該標章を商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として認識することはないというべきである。

してみれば、上記請求人による主張は、採用することができない。

エ 請求人は、アンケート結果(甲24)について、需要者が容器を見ただけで商品そのもの(「黄金の味」「黄金のたれ」「黄金」)まで想到し得た割合がおよそ3割、出所表示という観点でいえば、エバラの商品であると認識した割合が64%にまで至っているということは、決して軽視できないものであるし、また、当該アンケートで需要者が見た容器が「容器全体の形状」であるとしても、形状として、特に着目される部分が本願商標として特定されているダイヤカットの部分であることは明らかである上、需要者に「本願商標を付した、現状マーケットにない仮想の形状の容器」を見せて、これがどのような出所表示かという点まで問うことは、位置商標に求められる識別性の要件を超えており、消費者の注意力を考慮しても妥当でないから、当該アンケート結果は、長年にわたる使用の結果、本願商標がそれ単独で識別標識としての機能を発揮し得るに至っていることを如実に示している旨主張する。

しかしながら、本願商標は、別掲1のとおりの構成からなる位置商標であり、その「商標の詳細な説明」に記載のとおり、商品の容器全体の形状(輪郭)は特定されておらず、「商品を封入した容器の胴部中央よりやや上から首部にかけて」という位置に、「容器周縁に連続して配された縦長の菱形形状であって、各々の菱形形状が中央に向かって窪んでいる立体的形状」が付されていることをもって、それ自体が、本願の指定商品との関係において、商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として機能し得るか否かを判断すべきものであるから、本願商標に対する需要者の認識を推し量るためのアンケートをするのであれば、少なくとも、そのアンケートの回答者が本願商標と同一のものと認識するものを示した上で実施すべきところ、請求人が実施したアンケートにおいて回答者に示された容器の写真は、中身やラベルは外してあるものの、そのキャップ部を含め、容器全体の形状(輪郭)が特定されているものであって、本願商標と比較した場合、視覚上の印象に少なからず影響を及ぼす差異が存するとみるべきものであるし、また、そのような差異がある以上、回答者が当該写真に係る容器のどの部分(全体又は一部)をもって回答したかは不明であるから、当該アンケートの結果をもって、本願商標が商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として機能し得るか否かを推し量ることはできない。

なお、請求人は、需要者が容器を見ただけで商品そのもの(「黄金の味」「黄金のたれ」「黄金」)まで想到し得た割合がおよそ3割、出所表示という観点でいえば、エバラの商品であると認識した割合が64%にまで至っているということは、決して軽視できないなどと主張するが、請求人の製造、販売する商品において、その商品の容器の表面に本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るもの(標章)が付されているのは、専ら本件商品であるところ、上記アンケートに係る「純粋想起」において、「黄金の味/黄金のたれ/黄金」と回答者は28%にとどまる上、「エバラ 黄金の味」という具体的な選択肢が与えられた「助成想起」においても、正答率が66%にとどまることに照らせば、それらの程度はいずれも高いものとはいえない。

してみれば、上記請求人による主張は、採用することができない。

(4)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、かつ、同条第2項に規定する要件を具備するものとも認められないから、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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