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Trademark Appeal Case

学術・地名と公序良俗

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2019−7851(T2019−7851/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、「チバニアン」の文字を標準文字により表してなるものであり、第21類、第25類、第26類、第32類、第39類、第42類及び第43類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成29年12月1日に登録出願された。

そして、願書記載の指定商品及び指定役務については、原審における同30年10月15日受付の手続補正書及び当審における令和元年6月12日受付の手続補正書の提出により、最終的に、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,キャミソール,ティーシャツ,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ナイトキャップ,帽子,仮装用衣服」、第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,道路情報の提供,自動車の運転の代行,企画旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,新聞の配達」及び第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供」となったものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、本願商標は、地球上の約77万〜12万6千年前の年代に対して「国立極地研究所を含む国立大学、国立の博物館・研究所及び県立博物館等(以下、「共同研究チーム」という。)」が命名を提唱している語として一般に認識されているものであって、当該語は、国際地質科学連合の専門部会に、上記年代の名称として申請されるなど、公益性の高いものであり、地質時代の一時代を特定する学術用語となることが十分想定されることからすると、上記「共同研究チーム」と何ら関係を有しない出願人が本願商標を採択・使用することは、社会公共の利益に反するものであって、公の秩序を害するおそれがあることから、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における審尋及び請求人の回答

本願商標の商標法第4条第1項第7号該当性について、職権に基づく証拠調べを実施し、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、令和2年7月15日付け審尋で、その結果を通知するとともに、下記第4と同旨の暫定的見解について通知したところ、上記審尋(証拠調べ結果を含む。)に対し、請求人からは、何ら回答(応答)がなかった。

第4 当審の判断

1 本願商標

本願商標は、「チバニアン」の文字を標準文字により表してなるものであり、その指定商品及び指定役務は上記第1のとおりである。

そして、「チバニアン」の文字は、別掲1のとおり、約77万〜12万9千年前までの地球における地質年代の名称を表す語である。

2 我が国における「チバニアン」の語の周知性及び使用の実情

(1)我が国における「チバニアン」の語の周知著名性

ア 「チバニアン」の語は、例えば、別掲2のとおり、遅くとも、国立極地研究所や茨城大などの研究チームが、平成29年6月7日に「チバニアン」を日本の地層として国際地質の科学連合に登録申請した(別掲2(1))頃から、該語は地質年代の一名称ないしその名称の候補として、新聞報道やウェブサイト上の記事等によって広く報じられている。

なお、別掲2(3)、(4)、(6)及び(12)とおり、チバニアンの「国際標準模式地」である千葉県市原市の「養老川流域田淵の地磁気逆転地層」は、平成30年10月15日に、国の天然記念物に指定された。

また、「チバニアン」の語は、別掲2(9)及び(10)のとおり、複数の小学校及び中学校の理科の教科書において、地質年代の一名称として記載されている。

イ さらに、別掲2(2)ないし(4)、(11)ないし(13)及び別掲3(1)ないし(13)などの記載からすれば、「チバニアン」の登録申請の際の地層及びその周辺地域が、観光地として広く一般に知られている実情が認められる。

また、そもそも、新たに世界遺産や国の天然記念物に指定された場所などが、新聞、ウェブサイト等の報道によって広く知られ、多くの者が当該地を訪れることにより、結果として著名な観光地となる実情にあることは一般的なことである。

ウ そうすると、「チバニアン」の語は、地質年代の一名称として、我が国において広く一般に認識されており、また、「チバニアン」の登録申請の際の地層は、少なくとも我が国において著名な場所であって、当該地層及びその周辺地域が観光地として、広く一般に認識されているというのが相当である。

(2)我が国における「チバニアン」の語の利用状況

「チバニアン」の語は、別掲1並びに別掲2(5)及び(7)のとおり、令和2年1月に、約77万〜12万9千年前までの地球における地質年代の区切りの規準となる「国際標準模式地」の名称として、日本の地層として初めて国際地質科学連合に認定されたところであるが、別掲3のとおり、既に請求人以外の者において、観光施設の開設、観光地への送迎及び観光ツアーといった観光に関する役務、バームクーヘン、パン、ピーナッツ及びキムチといった各種の食品、並びにTシャツ、帽子及びバッグといった商品について、該語が広く使用されていることが認められる。

また、そもそも、観光地(その所在地又は周辺地域を含む。)においては、観光施設の開設、観光地への送迎及び観光ツアーといった観光に関する多くの役務が行われている実情、及び観光名所等の名称やその地理的な名称を付した各種の土産物が販売される実情があることは、一般に知られているところである。

(3)「チバニアン」の語の利用状況と指定商品及び指定役務との関係

「チバニアン」の語は、前記(1)のとおり、地質年代の一名称であり、著名な場所を表す語として広く一般に認識されているため、強い顧客吸引力を発揮するといえる。

そして、前記(2)のとおり、該語は、観光施設の開設、観光地への送迎及び観光ツアーといった観光に関する役務、バームクーヘン、パン、ピーナッツ及びキムチといった各種の食品、並びにTシャツ、帽子及びバッグといった商品について広く使用されているものであり、本願商標の指定役務中、第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,道路情報の提供,企画旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ」及び第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供」は観光に関する役務であるといえる。

そして、「チバニアン(CHIBANIAN)」の語については、本願商標の指定商品中、第25類「洋服,ティーシャツ,帽子」において、複数の他人の使用の事実が認められる。

また、上記商品及び役務以外の本願商標の指定商品及び指定役務の分野においても、一般に観光名所等の名称やその地理的な名称を付した各種の土産物が販売される実情があること及び「チバニアン」の語が強い顧客吸引力を発揮するものであることからすると、該語について、商品又は役務への使用を欲する事業者は、少なくないものと考えられる。

(4)請求人による本願商標の出願の目的

請求人の主張及び提出された証拠によれば、市原市が作成した「市原市観光振興ビジョン 2017年度〜2026年度」には、請求人の承認の下、請求人が営む小湊鉄道の活用が盛り込まれており、小湊鉄道沿線の月崎駅近隣にある地層露頭の「チバニアン」は、請求人・市原市間での観光振興計画に中核として加えられたことにより、請求人は、地域振興の必要上、ブランド価値の毀損が生じることのないよう、本願商標を権利化することとしたものである。

3 商標法第4条第1項第7号該当性について

ア 上記2よりすれば、「チバニアン」の語は、令和2年1月に、約77万〜12万9千年前までの地球における地質年代の区切りの規準となる「国際標準模式地」の名称として、日本の地層として初めて国際地質科学連合に認定されてから数か月経過したところであるが、認定を受けるための申請の段階から、当該語に関する内容の新聞等の報道が多数行われ、そして、認定後は小中学校の複数の教科書に取り上げられるなど、地質年代の一名称である当該語は、少なくとも我が国において、著名な場所を表す語として、広く一般に認識されているため、強い顧客吸引力を発揮する語であって、「チバニアン」の登録申請の際の地層が、観光地として広く一般に認識されているものと認められる。

また、既に請求人以外の者によって、観光に関する役務、各種の食品及び被服等の商品について、「チバニアン」の語が広く使用されている実情があり、さらに、そもそも、観光地においては、観光に関する多くの役務が行われていることに加え、各種の土産物の販売が行われている実情が認められる。

そして、本願商標の指定役務には観光に関する役務が含まれていること、及び上記の実情を踏まえれば、本願商標の指定商品及び指定役務の分野において、今後更に多くの事業者が、「チバニアン」の語の使用を欲する可能性が極めて高いというのが相当である。

イ そうすると、たとえ、市原市の観光振興ビジョンや市原市・請求人間での観光振興計画により、請求人が地域振興の必要上から本願商標を出願したとしても、上記事情を総合的に勘案すれば、「チバニアン」の文字からなる本願商標が、請求人の商標としてその指定商品及び指定役務について登録された場合には、「チバニアン」と称する地層に関連した観光に関する各種の役務の提供を阻害するおそれがあり、さらに、当該観光地に関連した各種の土産物を取り扱う事業者や今後「チバニアン」の語の使用を欲するであろう多くの事業者に対して無用の混乱を招くおそれがあるものと判断するのが相当である。

してみれば、このような事情を招くおそれがある本願商標を、請求人の商標として登録を認めることは、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものというべきである。

したがって、本願商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するから、これを登録することはできない。

よって、結論のとおり、審決する。

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