Trademark Appeal Case
単色商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−1246(T2018−1246/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおり、赤色(RGBの組合せ:R204、G0、B51)の色彩のみからなる商標であって、第38類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成27年4月1日に登録出願され、その後、指定役務については、当審における同30年5月29日付けの手続補正書により、第38類「移動体電話による通信,移動体電話による通信ネットワークへの接続の提供」と補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、「本願の指定役務を取り扱う業界において、別掲2のとおり、本願商標のような赤色と同系色の色彩が、役務の提供の用に供する物又は役務の広告の装飾等として使用されている実情があり、本願商標をその役務の提供の用に供する物や広告に使用しても、これに接する取引者、需要者は、役務の提供の用に供する物又は役務の広告に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。また、出願人が提出した証拠からは、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものと認めることはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲3に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、その結果を請求人に対し、平成31年4月2日付け証拠調べ通知書をもって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。
第4 職権証拠調べ通知に対する請求人の意見
請求人は、前記第3の通知に対して、令和元年5月31日付け及び同年6月18日付けで提出した意見書において、要旨以下のとおり意見を述べた。
1 移動体電話通信事業者が、請求人も含めたいわゆる3大キャリアの他に、現在では、MVNO(仮想移動体電話通信事業者)である楽天モバイル株式会社、株式会社オプテージが提供しているmineo、UQコミュニケーションズ株式会社が提供しているUQモバイル等も含まれるとはいえ、移動体電話通信業界は、その全契約者数の約9割が3大キャリアで占められている寡占状態にあるという特殊な業界である。
2 鑑定意見書(資料33)における「通常のサービスブランドで、しかも単色提示のみで『純粋想起で企業名を記述させること』はハードルが高い。それを考えると、60%近い純粋想起率は十分に高い数値といえる」との法政大学の小川教授の本願商標についての鑑定意見、その他、審査段階及び審判段階で既に提出した証拠資料から、本願商標は十分に識別機能を発揮しており、証拠調べ通知で示された事実は、本願商標が識別標識としての機能を発揮しているとの主張を覆すには足りず、これらの事実には証拠価値はない。
3 証拠調べ通知書では、「スマートフォン」や「携帯電話機」が役務の提供の用に供する物に該当すると認定しているが、これらは、移動体電話通信サービスを享受する者が、同サービスの提供とは別個に購入する商品であることから、商標法第2条第3項第3号の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」には該当しない。したがって、証拠調べ通知で示した事実には証拠価値はない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
(1)商標法第3条第1項第6号の趣旨
商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(同法第1条)、商標の本質は、自己の業務に係る商品又は役務と識別するための標識として機能することにあり、この自他商品又は役務の識別標識としての機能から、出所表示機能、品質保証機能及び広告宣伝機能等が生じるものである。同法第3条第1項第6号が、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を商標登録の要件を欠くと規定するのは、同項第1号ないし第5号に例示されるような、識別力のない商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品・役務の識別力を欠くために、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される(平成21年(行ケ)第10270号参照)。
(2)本願商標について
本願商標は、前記第1のとおり、赤色(RGBの組合せ:R204、G0、B51)(「商標の詳細な説明」においては「紅色」と表記されているが、「紅色」は「赤色」の一種である。)の色彩のみからなる商標であり、第38類「移動体電話による通信,移動体電話による通信ネットワークへの接続の提供」を指定役務とするものである。
(3)取引の実情について
役務の広告の装飾等や提供の用に供する物に使用される色彩は、多くの場合、役務の魅力向上等のために採択されるものであって、一般に広く使用されているものであるから、例えば、文字や図形等と組み合わせるなど、具体的な形態を伴う場合はともかく、そのような形態を伴わない場合には、これに接する者は、通常、その色彩について、役務の出所を表示するものとして又は自他役務を識別するための標識として認識することはないとみるのが相当である。
(4)本願商標の商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は、上記(2)のとおり、赤色の色彩のみからなるところ、役務の広告の装飾等や提供の用に供する物に使用される色彩は、一般的に、役務の魅力向上等に資する装飾等と認識されるものであることを考慮すると、本願商標の赤色(以下「本願赤色」という。)は、役務の魅力向上等に資する目的で使用される色彩の一類型であると判断するのが相当である。
また、本願の指定役務である「移動体電話による通信,移動体電話による通信ネットワークへの接続の提供」を取り扱う業界において、別掲2及び別掲3に示すとおり、本願赤色と似た赤色が広告宣伝に資するカタログやウェブサイト、役務の提供の用に供するスマートフォンや携帯電話機に使用されていること、本願赤色は特殊な色彩ではないことからすると、本願商標は、その色彩自体に他の同種色彩とは異なる顕著な特徴があるものとはいえないものであって、当該分野における誰もがその使用を欲する色彩であるとみるべきである。
そうすると、本願商標をその指定役務について使用しても、これに接する需要者は、その役務の広告の装飾等や提供の用に供する物に通常使用される色彩又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、役務の出所識別標識としては認識しないというのが相当である。
したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標というべきであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
2 本願赤色の使用による識別力の獲得について
請求人は、本願赤色が単に、役務の広告の装飾等や提供の用に供する物に使用され、それらの魅力向上等のために選択されたものではなく、寡占状態にある移動体電話通信業界においては、各社がコーポレートカラーを採択し、積極的に使用していることから、本願赤色は指定役務との関係で使用による識別力を獲得している旨主張し、証拠方法として、原審において資料1ないし資料24(枝番号を含む。)を、また、当審において資料25ないし資料36(枝番号を含む。)を提出している。
(1)これらの証拠及び請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人は、2008年4月18日に、新コーポレートブランド戦略の記者発表の場で、「ドコモレッド」と名付けた赤色をコーポレートカラーとして採択したことを公表し、そのことは日経トレンディネットやITmedia等の媒体で取り上げられた(資料4)。
イ 移動体電話通信業界における請求人、KDDI株式会社及びソフトバンク株式会社(以下「3大キャリア」という。)の各社は、それぞれ、赤色、オレンジ色、シルバー(銀色)をコーポレートカラーとし、店舗の外装や展示物等に使用している(資料5〜資料7)。また、例えば「価格.com」、「iPhone Mania」等のインターネット上の3大キャリアの各種料金比較表において各社のコーポレートカラーが表示されている(資料8)。このうち、資料8の2、資料8の4及び資料8の5では、KDDI株式会社を表すためにオレンジ色ではなく、黄色が用いられており、資料8の3では請求人を表すために赤色のみではなくオレンジ色も用いられている。
ウ 雑誌「モノ・マガジン」(株式会社ワールドフォトプレス 2008年〜2013年発行)、「日経トレンディ」(株式会社日経BP 2008年〜2015年発行)及び「DIME」(株式会社小学館 2008年〜2015年発行)において、3大キャリアが各々のコーポレートカラーとされる赤色、オレンジ色、シルバー(銀色)又はこれらに似た色を用い、広告を行っているものがあり、また、各々のコーポレートカラーを用いた見出し、料金比較表、携帯端末の比較表、累計契約者数の比較表及びパケットプランの比較表等が掲載されているものがある(資料9、資料10)。そして、これらの広告、見出し、表等には、3大キャリアのコーポレートカラー又はこれらに似た色と共に、「docomo」、「au」、「SoftBank」等、各社を表す文字が用いられている。
しかしながら、これらの広告、表等には多様な色彩が使用されおり、例えば、資料10の7における「各社のスマートフォン向け新サービス&料金プランを比べてみよう!」の見出しの表においては、3大キャリアのコーポレートカラー以外に、くすんだ緑色、黄色、ピンク色が用いられている。また、資料9及び資料10の中には、請求人を示すと主張している色彩が本願赤色とは異なるものが多くあり、例えば、資料10の4では、「NTTドコモ」と白抜き文字で表示された四角囲みの中の色彩は、赤色というよりはむしろオレンジ色である。
エ 移動体電話通信業界は、2015年3月期において同市場の全契約者数のおよそ9割(請求人が38%、KDDI株式会社が24%、ソフトバンク株式会社が27%)を3大キャリアが占めている(資料11)。
オ 請求人が自身のオフィシャルウェブサイトと主張するもの(資料12)において、ページの左上の「NTT/docomo」のロゴ、サービスメニュー表示、各コンテンツのアイコン、表の見出し部分、各手続へのリンクを示すボタン、割引サービスの種類の表示等に、本願赤色と似た色が用いられている。
なお、当該ウェブサイトにおいて、「My docomo」や「ドコモ光」のロゴには黄色が用いられており、また、割引サービスの対象者は「機種変更」、「新規(追加)」及び「のりかえ」と分けられ、それぞれ水色、黄緑色及びピンク色が用いられている。さらに、「かんたんシミュレーション」の項目において、「家族でご利用の場合」と「ひとりでご利用の場合」とに場合分けされ、それぞれ黄色及び水色が用いられている。
カ CIデザインマニュアルの抜粋とされる資料(資料13)において、「コーポレートカラーは、情熱や躍動感を感じさせながら、これから生まれ変わっていくドコモの新しい方向性を表現しています。人を惹きつける色として、ひときわ目立つオリジナルカラー『ドコモレッド』をつくりました。」の記載がある。また、「コーポレートカラー」の項に、「ドコモレッド」として「RGB:R204、G0、B51」なる赤色が表示されている。
キ 請求人のスマートフォン・タブレットのパンフレット(資料14)において、表紙の左上の「NTT/docomo」のロゴ、サービス内容の説明を囲む線、その中の見出し文字及び文字の背景に本願赤色と似た色が用いられている。なお、当該パンフレットにおいて、背景色としてピンク色、黄色、水色、黄緑色、茶色、薄いオレンジ色及び灰色が用いられている。
ク ドコモ光カンタン手続きガイド(資料15)において、表紙の左上の「NTT/docomo」のロゴ、見出し文字及び背景色等に本願赤色に似た色と黄色、金色及び黄緑色が用いられている。なお、請求人は、当該カタログについて、2015年3月から同年12月までの全国のドコモショップを通じての配布実績が650万部であると主張しているが、これを裏付ける資料は提出されていない。
ケ ポスターとされる画像(資料16)において、全体の背景や一部の背景に本願赤色が用いられており、かつ、すべてのデザインにおいて、左上に「NTT/docomo」のロゴが表示されている。同様に、のぼり(資料16)において、全体の背景に本願赤色が用いられており、かつ、すべてのデザインにおいて、左上に「NTT/docomo」のロゴ及び上部に大きく白抜きで「ドコモ」の文字が表示されている。請求人は、当該ポスターについて、1回に7,500部を全国のドコモショップにて配布し、年間5枚作成することから8年間で30万部を配布したと主張し、また、当該のぼりについて、1回に9,300部を全国のドコモショップを通じて配布し、年間4枚作成することから、8年間で297,600部を配布したと主張しているが、これらの事実を裏付ける証拠は提出されていない。
コ 請求人は、ノベルティ及び店頭ツールの例として、本願赤色を全体に用いた「湯たんぽ」、「小物入れ」、「クーラーボックス」、「ティッシュ、」、「ウェットティッシュ」、「ボールペン」、「スマホスタンド」、「鍋敷き」、「スポーツエコボトル」、「ランチボックス」、「ブランドブック」及び「スイングポップ」の写真とされる画像(資料17)を提出しているが、ほとんどのノベルティには「NTT/docomo」のロゴが大小様々に表示されている。なお、これらのノベルティや店頭ツールの配布地域や配布個数は不明である。
また、ポケットティッシュとされる画像(資料22)において、開封面を横向きにした際の下半面は、背景に本願赤色が用いられ、白抜き文字で「最新機種で快適に楽しもう!!」と記載されている。そして、背景に白色が用いられた上半面は、本願赤色で「Vo」の文字が記載され、その右に、本願赤色で表された左下の角が丸みを帯びた四角形内に白抜き文字で「LTE」と記載されている。なお、請求人は、これを1回に約200万個、年に1回から2回配布していると主張しているが、これを裏付ける証拠は提出されていない。
加えて、団扇及び携帯クリーナーとされる画像(資料22)において、中央に「NTT/docomo」の文字が白抜きで表示され、本願赤色は、背景全面に用いられている。なお、これらの配布地域や配布個数は不明である。
サ 手提げ袋とされる画像(資料18)において、袋全体に本願赤色が用いられており、袋の前面やや左上に「NTT/docomo」のロゴが小さく白抜きで表示されている。なお、請求人は、当該手提げ袋は、2008年から2015年まで約6,000万枚を全国のドコモショップにて契約者へ配布したと主張しているが、これを裏付ける証拠は提出されていない。
シ 店頭POPとされる画像(資料19)において、請求人が、2014年6月及び9月に使用したと主張するものは、一つは、横長の長方形の背景に本願赤色を使用し、「カケホーダイ&パケあえる」と白抜きの文字で、「○○万契約突破しました!!」(「○○」の数字は時期によって異なる。)と大きく白で縁取って本願赤色を用いた文字で記載し、右下に配した黄色い円内に本願赤色で「好評受付中」と記載したものである。もう一つは、本願赤色を背景色とした円内に白抜き文字で「docomo」と記載したものである。
また、請求人が、2015年5月に使用したと主張するものは、横長の長方形を横に3分割し、上段と下段の背景に本願赤色を使用し、中段の背景を白色とするものであり、上段の左上に「NTT/docomo」のロゴを小さく白抜きで記載し、「2015年夏モデル新登場!!」の文字が大きく白抜きで記載されたものである。なお、請求人は、当該店頭POPについて、1回毎に11,000部をドコモショップへ配布し、年に2回配布することから、8年間で176,000部をドコモショップへ配布したと主張しているが、これを裏付ける証拠は提出されていない。
ス ドコモショップの店舗数は、2016年2月末現在で、全国2,395店舗であると主張している(資料20)。
セ 2010年及び2012年の最先端IT・エレクトロニック総合展「CEATEC」の展示ブースの写真とされる画像(資料21)において、「NTT/docomo」の社名表示、天井から吊した案内表示や、ブースを構成するパネル自体に本願赤色が用いられている。なお、当該展示会の規模、請求人展示ブースへの来客数は不明である。
ソ 請求人は、本願赤色が、請求人の役務の出所識別標識として認識されているかどうかを明らかにするために実施した2018年2月28日付けのアンケート調査の結果(資料31)を提出している。当該アンケートの調査エリアは全国であり、対象者は15歳ないし79歳の男女約3,000人である。6問から成る質問中、質問1及び質問2は性別、年齢に関するものであり、質問3が「表示されている色からイメージする携帯電話会社の社名を1つだけ書いて下さい(純粋想起)」というものである。質問4ないし質問6は、不適切回答者を除外するため質問対象の色が「赤」に見えているかを確認するため及び対象者の契約している携帯電話会社に偏りがないかを確認するための設問とした旨の記載がある。質問3の有効回答数は2,826であり、請求人を想起した割合は56.9%であった。なお、当該アンケートの調査結果に関する鑑定意見書(資料33)は、「純粋想起で『ドコモ』と回答できなかったサンプルは、全体の43.1%である。ただし、他社(『ソフトバンク』『au』など)と誤認している割合は、それよりも低く、34.1%である。それ以外は、『わからない』のカテゴリーに属する回答である(8.3%)。競争間での識別性においては、『ドコモ』の正答率56.9%と『他社』誤認率34.1%の差においても『ドコモ』の色彩の識別力は十分に高いことが見てとれる。」と述べている。
(2)判断
ア 上記(1)を総合勘案すれば、請求人は、2008年4月18日に、本願赤色をコーポレートカラーとして採用したことを公表し、同年7月1日以降、当該色彩を、マスコミュニケーション媒体やウェブサイト、ソーシャルメディア、展示会、販促ツールなどに使用していること、移動体電話通信業界は、全契約者数のおよそ9割を請求人を含む3大キャリアが占めており、3大キャリアが各々のコーポレートカラーを用いているということがうかがえる。
しかしながら、インターネットや雑誌上の広告や比較表等においては、請求人を表すために赤色のみではなくオレンジ色も用いられており、請求人が提出した資料における色彩が本願赤色とは異なるものが多く含まれるため、請求人の業務に係る役務の出所識別標識として、本願赤色が一貫して用いられているとみることはできない(資料8の2〜資料8の5、資料10の4等)。
また、請求人のオフィシャルウェブサイト(資料12)やスマートフォン・タブレットのパンフレット(資料14)では、本願赤色のみならず、例えば、料金プランのシミュレーションの見出しにおいて「家族でご利用の場合」の文字は黄色、「ひとりでご利用の場合」の文字は水色で表されていたり、割引サービスの対象者を「機種変更」、「新規(追加)」及び「のりかえ」と分けて表示し、それぞれの背景に水色、黄緑色及びピンク色を用いたり、サービス内容の説明の背景色としてピンク色、黄色、水色、黄緑色、茶色、薄いオレンジ色及び灰色を用いたりするなど、数種の色が使用されていること及びインターネットや雑誌上の広告や比較表等、請求人ウェブサイト及びスマートフォン・タブレットのパンフレットには、請求人を表す「ドコモ」や「NTT/docomo」等の文字と本願赤色が同時に使用されている例が多数あることに加え、上記1のとおり、色彩のみで識別されるのが本願指定役務に係る分野における取引実情とはいい難いことも併せて考慮すれば、請求人の業務に係る役務に接する取引者、需要者は、役務を識別する上で重要な「役務を提供する者の名称」として、顕著に表された「ドコモ」や「NTT/docomo」等の文字に着目するといえるものであり、請求人役務で使用されている赤色の色彩のみが当該文字等と分離して観察され、需要者に強く印象付けられるとはいえず、文字等を伴わない赤色のみをもって自他役務識別力を獲得したものと認めることはできない。
イ 請求人が役務の提供に当たり用いたとされる、ドコモ光カンタン手続ガイド(資料15)、ポスター・のぼり(資料16)、各種のノベルティ・店頭ツール(資料17)、手提げ袋(資料18)、店頭POP(資料19)、ポケットティッシュ(資料22)、団扇・携帯クリーナー(資料22)は、その大半において請求人を表す「ドコモ」や「NTT/docomo」等の文字が同時に使用されている上、配布地域や配布数の主張・立証がないものや主張のみで立証がないものであって、その広告宣伝の規模を把握することができないため、これらの資料から本願赤色が使用により識別力を獲得していると認めることはできない。
同様に、請求人は、我が国で開催される、最先端IT・エレクトロニック総合展である「CEATEC」の展示ブースの社名表示、案内表示、パネル等に本願赤色を使用しているといえるものの(資料21)、当該展示会の規模や請求人展示ブースへの来客数については主張も立証もされていないため、当該展示会への出展から、本願赤色に係る需要者、取引者の認識度を推し量ることはできない。
ウ 請求人は、本願赤色が、請求人の役務の出所識別標識として認識されているかどうかを明らかにするために、アンケート調査を実施しているが、請求人を含む3大キャリアのシェアが9割であるにもかかわらず、本願商標を見て請求人を想起した者が56.9%という結果は、決して高い数字とはいい難く、本願商標を提示してもなお、赤色を使用していない3大キャリアの一つであるauと回答した者が有効回答数2,826のうち577回答あり、これは約20.4%にもなること、また、役務の広告の装飾等や提供の用に供する物に実際に赤色を使用しているY!mobileと回答した者が207回答あり、これは約7.3%であることからすると、当該アンケート調査の結果をもって、これらの事業者が色彩のみで区別、認識されていると判断することはできない。
エ 以上のことからすると、請求人は、本願赤色をコーポレートカラーとして2008年から、マスコミュニケーション媒体やウェブサイト、ソーシャルメディア、展示会、販促ツールなどへ使用しているといえるものの、これらのうち、カタログ、ポスター、のぼり、ノベルティ等の各ツールを用いた宣伝広告の期間及び規模等は明確ではなく、その使用の態様に照らすと、本願赤色が、需要者において独立した出所識別標識として認識されているとまではいえない。また、広告等において、本願赤色は、「ドコモ」及び「NTT/docomo」等の文字とともに使用されており、請求人役務に接する需要者は、役務を識別する上で重要な「役務の提供者の名称」として、「ドコモ」及び「NTT/docomo」等の文字に着目するといえるものであるから、役務を識別し選択する際に、本願赤色が果たす役割は決して大きいものとはいえないこと、及び、アンケート調査において、本願商標を見て請求人を想起した割合が決して高くないことを総合すれば、本願指定役務の分野における取引者、需要者は、本願赤色のみによって、役務の出所の識別を行っているということはできず、他に、本願赤色のみが独立して、請求人の業務に係る役務を表すものとして、本願指定役務の分野における取引者、需要者に広く認識されているというべき事情も見当たらない。
オ 加えて、色彩が元々自由に使用できるものである以上、色彩の自由な使用を阻害するような単一の色彩の商品表示としての保護は、公益的見地からみて容易に認容できるものではなく、単一の色彩が出所表示機能(自他識別機能)を取得したといえるかどうかを判断するに当たっては、その色彩を商標として保護することが、色彩使用の自由を阻害することにならないかどうかの点も含めて慎重に検討されなければならないと判示されているところである(平成7年(ネ)第1518号、平成9年3月27日大阪高裁判決参照)。
そうすると、単一の色彩からなる商標の保護については、公益的見地からの慎重な検討が必要であるところ、本願の指定役務を取り扱う業界においては、別掲2及び別掲3のとおり、本願赤色と似た赤色を使用する請求人以外の者が存在している実情からすると、当該分野における誰もがその使用を欲する色彩であるとみるべきであって、単一の赤色のみからなる本願商標については自由な色彩の使用を妨げることのないように慎重に検討すべきであり、その観点からも本願商標は、役務の出所を表示するものとして又は自他役務を識別するための標識として認識されることはないと判断するのが相当である。
カ 以上を総合的に判断すると、本願商標は、使用された結果、請求人の業務に係る役務の出所を表示するものとして、又は自他役務の識別標識として認識されるに至っているということはできない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、商標審査便覧54.06の「3.商標の構成要素や商取引の実情の考慮」において考慮すべき事項の「(2)商取引の実情」として、「指定商品又は指定役務を取り扱う業界の市場特性について出願人から主張があった場合には考慮する。例えば、参入企業数(寡占業界か否か)や当該業界における色彩の使用状況(多種多様な色彩が一般的に使用される商品・役務であるか否か、等)等の事実を考慮する。」との記載に照らした場合、移動体電話通信業界は、その全契約者数の約9割が3大キャリアで占められている寡占状態にあるという特殊な業界であることが考慮されるべきであると主張している。
しかしながら、当該便覧においても、「当該業界における色彩の使用状況(多種多様な色彩が一般的に使用される商品・役務であるか否か、等)等の事実を考慮する。」と記載されているところ、本願指定役務の分野も上記1(3)のとおり、多種多様な色彩が使用されているものであって、別掲2及び別掲3のとおり、実際に3大キャリア以外の事業者が役務の提供の用に供する物や役務の広告の装飾等に赤色を使用している状況を考慮すると、赤色は当該分野における誰もがその使用を欲する色彩であるとみるべきである。そして、請求人による本願赤色の使用状況を踏まえれば、請求人を含む3大キャリアのシェアが9割であるとしても、本願赤色が請求人の業務に係る役務の出所識別標識としての機能を果たしているということはできない。
(2)請求人は、鑑定意見書(資料33)における「通常のサービスブランドで、しかも単色提示のみで『純粋想起で企業名を記述させること』はハードルが高い。それを考えると、60%近い純粋想起率は十分に高い数値といえる」との法政大学の小川教授の本願商標についての鑑定意見、その他、審査段階及び審判段階で既に提出した証拠資料から、本願商標は十分に識別機能を発揮していると主張している。
しかしながら、本願指定役務の分野は、例えば「飲食物の提供」のような競業他社の多く存在するサービス分野ではなく、請求人が述べるように、請求人を含む3大キャリアのシェアが9割である特殊な分野であるにもかかわらず、当該アンケートにおいて、本願商標を見て請求人を想起した者が56.9%という結果は、決して高い数字とはいい難い上、アンケート調査の鑑定意見書が上記のように述べているとしても、本来、色彩は役務の広告や提供の用に供する物の装飾等として役務の魅力向上のために用いられること、赤色が特殊な色ではないこと、請求人の本願赤色の使用状況、別掲2及び別掲3のとおり本願指定役務の分野において他の事業者が役務の提供の用に供する物や役務の広告の装飾等に赤色を使用している実情があることから、本願商標をその指定役務について使用しても、これに接する需要者は、その役務の広告の装飾等や提供の用に供する物に通常使用される色彩又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまるものであり、また、上記2(2)のとおり、提出された資料を総合的に考察しても、本願赤色が請求人の業務に係る役務の出所識別標識としての機能を果たしているということはできないものである。
(3)請求人は、証拠調べ通知書では、「スマートフォン」や「携帯電話機」が役務の提供の用に供する物に該当すると認定しているが、これらは、移動体電話通信サービスを享受する者が、同サービスの提供とは別個に購入する商品であることから、商標法第2条第3項第3号の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」には該当しないと主張している。 しかしながら、証拠調べ通知書において示した事例は、「移動体電話による通信,移動体電話による通信ネットワークへの接続の提供」を受けるために需要者が利用する「スマートフォン」や「携帯電話機」に赤色が用いられている事例として挙げたものであり、かかる観点からみれば、「スマートフォン」や「携帯電話機」は「移動体電話による通信,移動体電話による通信ネットワークへの接続の提供」を受ける者の利用に供する物といい得るものである。
(4)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
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類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。