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Trademark Appeal Case

色彩商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−1247(T2018−1247/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、別掲1のとおり、赤色(RGBの組合せ:R204、G0、B51)の色彩のみからなる商標であって、第9類及び第35類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成27年4月1日に登録出願され、その後、指定商品及び指定役務については、原審における同28年8月2日付けの手続補正書及び当審における同30年5月29日付けの手続補正書により、最終的に、第35類「携帯電話機の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,スマートフォンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,タブレット型携帯情報端末の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由(要点)

原査定は、「本願の指定役務を取り扱う業界において、別掲2のとおり、本願商標のような赤色と同系色の色彩が、役務の提供の用に供する物又は役務の広告の装飾等として使用されている実情があり、本願商標をその役務の提供の用に供する物や広告に使用しても、これに接する取引者、需要者は、役務の提供の用に供する物又は役務の広告に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。また、出願人が提出した証拠からは、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものと認めることはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知

当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲3に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、その結果を請求人に対し、平成31年4月2日付け証拠調べ通知書をもって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。

第4 職権証拠調べ通知に対する請求人の意見

請求人は、前記第3の通知に対して、令和元年5月31日付け及び同年6月18日付けで提出した意見書において、要旨以下のとおり意見を述べた。 1 本願の指定役務「携帯電話機の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等は、第38類「移動体電話通信サービス」に依拠しており、商願2015−030294号で請求人が主張、立証しているように、かかるサービスが属する移動体電話通信サービス業界において本願商標が十分に識別機能を発揮していることから、本願の指定役務との関係においても本願商標は十分に識別機能を発揮している。

2 本願の指定役務「スマートフォン等の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」においては、いかなる機種のスマートフォン等をそろえるかが重要であり、「スマートフォン等」にいかなる色彩が施されているかということは、本願の指定役務の提供とは何らの関連性を有するものではなく、証拠調べで示した事実は、本願商標が識別力を獲得しているとの主張を覆すに足りる証拠価値はない。

第5 当審の判断

1 商標法第3条第1項第6号該当性について

(1)商標法第3条第1項第6号の趣旨

商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(同法第1条)、商標の本質は、自己の業務に係る商品又は役務と識別するための標識として機能することにあり、この自他商品又は役務の識別標識としての機能から、出所表示機能、品質保証機能及び広告宣伝機能等が生じるものである。同法第3条第1項第6号が、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を商標登録の要件を欠くと規定するのは、同項第1号ないし第5号に例示されるような、識別力のない商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品・役務の識別力を欠くために、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される(平成21年(行ケ)第10270号参照)。

(2)本願商標について

本願商標は、前記第1のとおり赤色(RGBの組合せ:R204、G0、B51)(「商標の詳細な説明」においては「紅色」と表記されているが、「紅色」は「赤色」の一種である。)の色彩のみからなる商標であり、第35類「携帯電話機の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,スマートフォンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,タブレット型携帯情報端末の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務とするものである。

(3)取引の実情について

役務の広告の装飾等や提供の用に供する物に使用される色彩は、多くの場合、役務の魅力向上等のために採択されるものであって、小売等役務との関係においては、その取扱いに係る商品の色彩として、一般に広く使用されているものであるから、例えば、文字や図形等と組み合わせるなど、具体的な形態を伴う場合はともかく、そのような形態を伴わない場合には、これに接する者は、通常、その色彩について、役務の出所を表示するものとして又は自他役務を識別するための標識として認識することはないとみるのが相当である。

(4)本願商標の商標法第3条第1項第6号該当性について

本願商標は、上記(2)のとおり、赤色の色彩のみからなるところ、役務の広告の装飾等や提供の用に供する物に使用される色彩は、一般的に、役務の魅力向上等に資する装飾等と認識されるものであることを考慮すると、本願商標の赤色(以下「本願赤色」という。)は、役務の魅力向上等に資する目的で使用される色彩の一類型であると判断するのが相当である。

また、本願の指定役務である「携帯電話機の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,スマートフォンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,タブレット型携帯情報端末の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の分野において、別掲2及び別掲3に示すとおり、本願赤色と似た色彩が広告宣伝に資するカタログやウェブサイト、小売等役務の取扱いに係るスマートフォン、携帯電話機及びタブレット型携帯情報端末に使用されていること、本願赤色は特殊な色彩ではないことからすると、本願商標は、その色彩自体に他の同種色彩とは異なる顕著な特徴があるものとはいえないものであって、当該分野における誰もがその使用を欲する色彩であるとみるべきである。

そうすると、本願商標をその指定役務について使用しても、これに接する需要者は、その役務の広告の装飾等や提供の用に供する物及び当該役務の取扱商品に通常使用される色彩又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、役務の出所識別標識としては認識しないというのが相当である。

したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標というべきであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。

2 本願赤色の使用による識別力の獲得について

請求人は、本願赤色が単に、役務の広告の装飾等や提供の用に供する物に使用され、それらの魅力向上等のために選択されたものではなく、寡占状態にある移動体電話通信業界においては、各社がコーポレートカラーを採択し、積極的に使用していることから、本願赤色は本願指定役務との関係においても使用による識別力を獲得している旨主張し、証拠方法として、原審において資料1ないし資料20(枝番号を含む。)を、また、当審において資料21ないし資料133(枝番号を含む。)を提出している。

(1)これらの証拠及び請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。

ア 請求人は、2008年4月18日に、新コーポレートブランド戦略の記者発表の場で、「ドコモレッド」と名付けた赤色をコーポレートカラーとして採択したことを公表し、そのことは、日経トレンディネットやITmedia等の媒体で取り上げられた(資料4)。

イ 平成27年10月19日付けの総務省作成の資料(資料9)において、「携帯電話端末のほとんどは、端末メーカーから大手携帯電話事業者に卸され、16,000店以上の販売店等を通して販売されている。」、「いわゆる『キャリアショップ』等は、契約代理店として携帯電話事業者と携帯電話端末購入者との通信契約の締結の媒介を行うとともに、端末販売店として端末を販売する。」及び「携帯電話端末購入者からは、この2つの機能が特に意識されず、一体として見られていると考えられる。」と記載されている。

ウ 総務省の報道資料によれば、移動体電話通信業界は、平成31年3月29日時点において同市場の全契約者数のおよそ9割を、請求人、KDDIグループ及びソフトバンクグループ(以下「3大キャリア」という。)が占めている(資料133)。

エ 請求人は、本願赤色が、本願指定役務を提供している店舗の外観において、常にベースカラー、アクセントカラー等として使用されていることを示すために、検索エンジンGoogleで「ドコモショップ 外観」をキーワードに文字検索をした結果(資料10)、画像検索をした結果(資料12)及びドコモショップのウェブサイトの写しと主張するもの(資料12)を提出している。なお、これらのすべての店舗の外観においては、本願赤色と共に「NTT/docomo」のロゴや「ドコモショップ」の文字が用いられている。

オ ドコモショップの店舗数は、2016年2月末時点において、全国に2,395店舗であると主張し(資料13)、2018年時点においては、全国に2,428店舗存在した(資料27)。

カ 請求人は、本願赤色の移動体電話通信サービスの分野における訴求活動は、本願指定役務の訴求活動として捉えることができるとして、請求人のオフィシャルウェブサイトの写しと主張する資料(資料14)を提出しているが、当該ウェブサイトでは、ページの左上の「NTT/docomo」のロゴ、サービスメニュー表示、各コンテンツのアイコン、表の見出し部分、各手続へのリンクを示すボタン、割引サービスの種類の表示等に、本願赤色と似た色が用いられている。

なお、当該ウェブサイトにおいて、「My docomo」や「ドコモ光」のロゴには黄色が用いられており、また、割引サービスの対象者は「新規(追加)」、「機種変更」及び「のりかえ」と分けられ、それぞれ黄緑色、水色及びピンク色が用いられている。さらに、「かんたんシミュレーション」の項目において、「家族でご利用の場合」と「ひとりでご利用の場合」とに場合分けされ、それぞれ黄色及び水色が用いられている。

キ CIデザインマニュアルの抜粋とされる資料(資料15)において、「コーポレートカラーは、情熱や躍動感を感じさせながら、これから生まれ変わっていくドコモの新しい方向性を表現しています。人を惹きつける色として、ひときわ目立つオリジナルカラー『ドコモレッド』をつくりました。」の記載がある。また、「コーポレートカラー」の項に、「ドコモレッド」として「RGB:R204、G0、B51」なる赤色が表示されている。

ク ポスターとされる画像(資料16)において、全体の背景や一部の背景に本願赤色が用いられており、かつ、すべてのデザインにおいて、左上に「NTT/docomo」のロゴが表示されている。同様に、のぼりとされる画像(資料16)において、全体の背景に本願赤色が用いられており、かつ、すべてのデザインにおいて、左上に「NTT/docomo」のロゴ及び上部に大きく白抜きで「ドコモ」の文字が表示されている。請求人は、当該ポスターについて、1回に7,500部を全国のドコモショップにて配布し、年間5枚作成することから8年間で30万部を配布したと主張し、また、当該のぼりについて、1回に9,300部を全国のドコモショップを通じて配布し、年間4枚作成することから、8年間で297,600部を配布したと主張しているが、これらの事実を裏付ける証拠は提出されていない。

ケ 請求人は、ノベルティ及び店頭ツールの例として、本願赤色を全体に用いた「湯たんぽ」、「小物入れ」、「クーラーボックス」、「ティッシュ」、「ウェットティッシュ」、「ボールペン」、「スマホスタンド」、「鍋敷き」、「スポーツエコボトル」、「ランチボックス」、「ブランドブック」及び「スイングポップ」の写真とされる画像(資料17)を提出しているが、ほとんどのノベルティには「NTT/docomo」のロゴが大小様々に表示されている。なお、これらのノベルティや店頭ツールの配布地域や配布個数は不明である。

また、ポケットティッシュとされる画像(資料20)において、開封面を横向きにした際の下半面は、背景に本願赤色が用いられ、白抜き文字で「最新機種で快適に楽しもう!!」と記載されている。そして、背景に白色が用いられた上半面は、本願赤色で「Vo」の文字が記載され、その右に、本願赤色で表された左下の角が丸みを帯びた四角形内に白抜き文字で「LTE」と記載されている。なお、請求人は、これを1回に約200万個、年に1回から2回配布していると主張しているが、これを裏付ける証拠は提出されていない。

コ 手提げ袋とされる画像(資料18)において、袋全体に本願赤色が用いられており、袋の前面やや左上に「NTT/docomo」のロゴが小さく白抜きで表示されている。なお、請求人は、当該手提げ袋は、2008年から2015年まで約6,000万枚を全国のドコモショップにて契約者へ配布したと主張しているが、これを裏付ける証拠は提出されていない。

また、端末個装箱とされる画像(同)において、箱の側面を白く縁取った上で、その余の部分に本願赤色が背景色として用いられており、箱の上面に機種の商品番号等の情報が白抜き文字で記載されており、箱の上面左下に「NTT/docomo」のロゴが小さく白抜きで表示されている。

さらに、什器とされる画像(同)において、ポスターを貼る部分を除き、全体に本願赤色が用いられており、上部に白抜きで「NTT/docomo」のロゴが大きく表示され、フロアマットとされる画像(同)は、円形で、本願赤色が全面に用いられており、中央に白抜きで「NTT/docomo」のロゴが大きく表示されている。

加えて、コスチュームとされる画像(同)のうち、シャツは全面に本願赤色が用いられており、左胸に「NTT/docomo」のロゴを配した白い円がデザインされている。キャップは全面に本願赤色が用いられており、左側面に「NTT/docomo」のロゴを配した白い円がデザインされている。なお、個装箱、什器、フロアマット及びコスチュームについては、作成の事実、作成数、使用状況を裏付ける証拠は提出されていない。

サ 店頭POPとされる画像(資料19)において、請求人が、2014年6月及び9月に使用したと主張するものは、一つは、横長の長方形の背景に本願赤色を使用し、「カケホーダイ&パケあえる」と白抜きの文字で、「○○万契約突破しました!!」(「○○」の数字は時期によって異なる。)と大きく白で縁取って本願赤色を用いた文字で記載し、右下に配した黄色い円内に本願赤色で「好評受付中」と記載したものである。もう一つは、本願赤色を背景色とした円内に白抜き文字で「docomo」と記載したものである。

また、請求人が、2015年5月に使用したと主張するものは、横長の長方形を横に3分割し、上段と下段の背景に本願赤色を使用し、中段の背景を白色とするものであり、上段の左上に「NTT/docomo」のロゴを小さく白抜きで記載し、「2015年夏モデル新登場!!」等の文字が大きく白抜きで記載されたものである。

さらに、請求人が、2015年8月に使用したと主張するものは、縦長の長方形の上部の10分の1程の背景と、下部の細い帯状部分に本願赤色を使用し、その中に「他社からドコモにお乗換えの方へ!!」や「Xiスマホは今がおトク!」等の白抜き文字を配し、POPのその余の部分は、部分的に本願赤色の長方形の中に白抜き文字を配し、大半の白地部分には黒色及び本願赤色で、「対象機種の購入代金をその場で」や「最大10,800円(税込)引」等の文字を配したものである。

なお、請求人は、当該店頭POPについて、1回に11,000部をドコモショップへ配布し、年に2回配布することから、8年間で176,000部を配布したと主張しているが、これを裏付ける証拠は提出されていない。

シ 請求人は、本願赤色が、請求人の役務の出所識別標識として認識されているかどうかを明らかにするために実施した2018年2月28日付けのアンケート調査の結果(資料28)を提出している。当該アンケートの調査エリアは全国であり、対象者は15歳ないし79歳の男女3,000人である。6問から成る質問中、質問1及び質問2は性別、年齢に関するものであり、質問3が「表示されている色からイメージする携帯電話会社の社名を1つだけ書いて下さい(純粋想起)」というものである。質問4ないし質問6は、不適切回答者を除外するため質問、対象の色が「赤」に見えているかを確認するため及び対象者の契約している携帯電話会社に偏りがないかを確認するための設問とした旨の記載がある。質問3の有効回答数は2,865であり、請求人を想起した割合は58.4%であった。なお、当該アンケートの調査結果に関する鑑定意見書(資料30)は、「『ドコモ』と回答できなかったサンプルは、全体の41.9%である。そして、他の携帯会社と色彩を誤認している割合は、32.2%である。・・・その差においても『ドコモ』の色彩の識別力は十分に高いといえる。」と述べている。

(2)判断

ア 上記(1)を総合勘案すれば、請求人は、2008年4月18日に、本願赤色をコーポレートカラーとして採用したことを公表し、同年7月1日以降、当該色彩を、マスコミュニケーション媒体やウェブサイト、店舗の外観や店舗で用いる什器及びフロアマット、販促ツール、取扱商品の包装、コスチュームなどに使用していること、移動体電話通信業界は3大キャリアによる寡占状態にあることがうかがえる(資料4、資料10、資料12、資料14、資料16〜資料20、資料133)。

また、資料32ないし資料132からは、請求人が、移動体電話通信サービスの分野において本願赤色を用いて広告宣伝活動を行っていることがうかがえる。

しかしながら、請求人のオフィシャルウェブサイトと主張する資料(資料14)では、本願赤色のみならず、例えば、料金プランのシミュレーションの見出しにおいて「家族でご利用の場合」の文字は黄色、「ひとりでご利用の場合」の文字は水色で表されていたり、割引サービスの対象者を「機種変更」、「新規(追加)」及び「のりかえ」と分けて表示し、それぞれの背景に水色、黄緑色及びピンク色を用いたり、サービス内容の説明の背景色としてピンク色、黄色、水色、黄緑色、茶色、薄いオレンジ色及び灰色を用いたりするなど、数種の色が使用されている。

イ 請求人が役務の提供に当たり用いたとされる、ポスター・のぼり(資料16)、各種のノベルティ・店頭ツール(資料17)、手提げ袋・端末個装箱・什器・フロアマット・コスチューム(資料18)、店頭POP(資料19)、ポケットティッシュ(資料20)は、その大半において請求人を表す「ドコモ」や「NTT/docomo」等の文字が同時に使用されている上、配布地域や配布数の主張・立証がないものや主張のみで立証がないものであって、その広告宣伝の規模を把握することができないため、これらの資料から本願赤色が使用により識別力を獲得していると認めることはできない。

ウ 請求人は、本願赤色が、請求人の役務の出所識別標識として認識されているかどうかを明らかにするために、アンケート調査結果(資料28)を提出しているが、質問3「この色からイメージする携帯電話会社の社名を1つだけお答えください。」との記載からは、その直下に小さく「携帯電話会社とは、携帯電話やスマートフォン、タブレットなどを販売している会社のことです。」との記載があるとしても、「携帯電話会社の社名」を回答させる形式となっているため、移動体電話通信サービスを提供する会社名を想起しやすいものとなっており、携帯電話端末を商品として取り扱う家電量販店等を含む小売店を想起するとは考えにくく、小売等役務の分野における識別力を調査するのに適した質問であるとはいい難い。よって、当該アンケート調査の結果をもって、本願指定役務の分野において、本願商標が請求人の提供する役務を表示するものとして認識されていると判断することはできない。

なお、当該アンケート調査の結果について検討するに、本願指定役務の分野が移動体電話通信サービスの分野に依拠するという請求人の主張を前提としたとしても、当該移動体電話通信サービスの分野において、請求人を含む3大キャリアのシェアが9割であるにもかかわらず、本願商標を見て請求人を想起した者が58.4%という数値は、決して高い数字とはいい難く、本願商標を提示してもなお、赤色を使用していない3大キャリアの一つであるauと回答した者が有効回答数2,865のうち476回答あり、これは約16.6%にもなること、また、(証拠調べ通知で示した)役務の広告の装飾等や提供の用に供する物に実際に赤色を使用しているY!mobileと回答した者が有効回答数2,865のうち163回答あり、これは約5.6%であることからすると、当該アンケート調査の結果をもって、これらの事業者が色彩のみで区別、認識されていると判断することはできない。

エ 以上のことからすると、請求人は、本願赤色をコーポレートカラーとして2008年から、マスコミュニケーション媒体やウェブサイト、店舗の外観や店舗で用いる什器及びフロアマット、販促ツール、取扱商品の包装、コスチュームなどへ使用しているといえるものの、これらの各ツールを用いた宣伝広告の期間及び規模等は明確ではなく、その使用の態様に照らすと、本願赤色が、需要者において独立した出所識別標識として認識されているとまではいえない。また、広告等において、本願赤色は、「ドコモ」や「NTT/docomo」等の文字と共に使用されており、請求人役務に接する需要者は、役務を識別する上で重要な「役務の提供者の名称」として、「ドコモ」及び「NTT/docomo」等の文字に着目するといえるものであるから、役務を識別し選択する際に、本願赤色が果たす役割は決して大きいものとはいえないこと、及び、アンケート調査は誘導的な質問を含む上、本願商標を見て請求人を想起した割合は決して高くないことを総合すれば、本願指定役務の分野における取引者、需要者は、本願赤色のみによって、役務の出所の識別を行っているということはできず、他に、本願赤色のみが独立して、請求人の業務に係る役務を表すものとして、本願指定役務の分野における取引者、需要者に広く認識されているというべき事情も見当たらない。

オ 加えて、色彩が元々自由に使用できるものである以上、色彩の自由な使用を阻害するような単一の色彩の商品表示としての保護は、公益的見地からみて容易に認容できるものではなく、単一の色彩が出所表示機能(自他識別機能)を取得したといえるかどうかを判断するに当たっては、その色彩を商標として保護することが、色彩使用の自由を阻害することにならないかどうかの点も含めて慎重に検討されなければならないと判示されているところである(平成7年(ネ)第1518号、平成9年3月27日大阪高裁判決参照)。

そうすると、単一の色彩からなる商標の保護については、公益的見地からの慎重な検討が必要であるところ、本願の指定役務を取り扱う業界においては、別掲2及び別掲3のとおり、本願赤色と似た赤色を使用する請求人以外の者が存在している実情からすると、当該分野における誰もがその使用を欲する色彩であるとみるべきであって、単一の赤色のみからなる本願商標については自由な色彩の使用を妨げることのないように慎重に検討すべきであり、その観点からも本願商標は、役務の出所を表示するものとして又は自他役務を識別するための標識として認識されることはないと判断するのが相当である。

カ 以上を総合的に判断すると、本願商標は、使用された結果、請求人の業務に係る役務の出所を表示するものとして、又は自他役務の識別標識として認識されるに至っているということはできない。

3 請求人の主張について

(1)請求人は、本願の指定役務である「携帯電話機の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等は、第38類の「移動体電話通信サービス」に依拠しており、商願2015−030294号で本願出願人が主張、立証しているように、かかるサービスが属する移動体電話通信サービス業界において本願商標が十分に識別機能を発揮していることから、本願の指定役務との関係においても本願商標は十分に識別機能を発揮している旨主張している。

しかしながら、商標の識別力は指定役務との関係において個別に判断されるべきものであるから、商標が移動体電話通信サービスの分野で識別力を発揮したとしても、それをもって当然に「スマートフォン等の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の分野でも当該商標が識別力を発揮するものということはできない。

(2)また、請求人は、本願の指定役務「スマートフォン等の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」においては、いかなる機種のスマートフォン等をそろえるかが重要であり、「スマートフォン等」にいかなる色彩が施されているかということは、本願の指定役務の提供とは何らの関連性を有するものではなく、証拠調べで示した事実は、本願商標が識別力を獲得しているとの主張を覆すに足りる証拠価値はない旨主張している。

しかしながら、当審の証拠調べ通知で示した内容は、別掲2の内容も含め、本願指定役務の分野において、請求人以外の事業者が、小売等役務の取扱いに係るスマートフォンのみならず、ウェブサイトや店舗の外装において赤色を用いている事実を示したものであり、当該役務の分野において、本願赤色が特殊な色ではなく、広く一般的に用いられる色彩であって、何人もその使用を欲する色彩であることを示すものであり、本願商標の識別力の有無の判断の基礎となるものであるから、スマートフォンの機種が重要であるとしても、本願商標の登録の可否の判断において、当該証拠調べで示した事実に証拠価値がないということはできない。

(3)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。

4 まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するから、これを登録することはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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