Trademark Appeal Case
位置商標のありふれた形状
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−8765(T2018−8765/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を願書記載のとおりに記載して、第10類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年4月1日に位置商標として登録出願されたものである。
その後、原審における平成28年10月6日付け、同29年11月28日付け及び同月29日付けの手続補正書並びに当審における同30年6月26日付けの手続補正書により、「商標の詳細な説明」は別掲2のとおりの記載に、その指定商品は「内視鏡,硬性内視鏡,内視鏡用処置具,内視鏡用カメラヘッド,治療用ハンドピース,医療用超音波凝固切開装置」と補正された。
2 原査定の拒絶の理由(要旨)
(1)商標法第3条第1項第3号及び同条第2項
ア 本願商標は、医療用機械器具の操作部において、筐体部と境目寄り周縁のリング部分に青色の立体的形状を配した構成からなるところ、内視鏡の分野において出願人以外の者が内視鏡に青色円形の立体的形状を配した商品を、取引・販売している事実がある。
そうすると、本願商標を、その指定商品の特定した位置に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に商品の美感等を発揮するため又は機能の向上のために採用し得る商品の形状の一形態を表したにすぎないものと理解するにとどまり、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
イ また、提出証拠を全体的に考察したとしても、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
(2)商標法第6条第1項及び同条第2項
本願商標の指定商品中、第10類「医療用カメラヘッド」は、その内容及び範囲を明確に指定したものとは認められない。
また、前記指定商品が不明確でその内容及び範囲が把握できないことから、政令で定める商品及び役務の区分に従って、第10類の商品を指定したものとは認められない。
したがって、本願は、商標法第6条第1項及び同条第2項の要件を具備しない。
3 当審の判断
(1)商標法第6条第1項及び同条第2項
本願商標の指定商品は、当審において補正された結果、その内容及び範囲を明確に特定するものになったと認められる。
したがって、本願は、商標法第6条第1項及び同条第2項の要件を具備する。
(2)商標法第3条第1項第3号
ア 本願商標は、別掲1及び別掲2のとおり、(ア)医療用機械器具の操作部の端部(根元付近)の位置に、(イ)青色の幅広の輪(リング)の立体的形状を表してなるものである。
イ そして、本願商標は、商品の部品の一部を構成するように、外縁が当該商品と連続するようにその端部の位置に一体的に配置されていること、その形状は平滑な円形の表面(青色)を有する輪状のものであることを鑑みると、その構成全体としては、比較的シンプルな態様よりなる、彩色(青色)した輪状部品又は帯状模様と認識、理解できるものである。
ウ また、商品デザインにおいて、有色の輪状部品又は帯状模様を施すことは極めてありふれたデザイン手法であるし、複数の素材や色彩よりなる輪状部品を筒状に組み合わせた商品であれば、必然的に帯状模様のような外観を呈することになる。
エ そうすると、本願商標は、その構成要素(位置、立体的形状及び色彩)を踏まえても、彩色(青色)した輪状部品又は帯状模様と認識、理解されるもので、商品の形状(模様)又は特徴を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(3)商標法第3条第2項
請求人は、証拠(甲第1号証ないし甲第45号証)を援用し、本願商標は、請求人による継続した使用により、自他商品の出所識別標識としての機能を獲得しており、商標法第3条第2項の要件を具備する旨を主張するため、以下検討する。
ア 証拠及び請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、1919年に設立された精密機械器具メーカーで、その売上高の多くを占める医療事業として、内視鏡製品を提供しており(甲7)、HDカメラヘッド「CH−S190−08−LB」(甲22)のほか、超音波凝固切開装置「THUNDERBEAT」(以下「請求人商品」という。)などを販売している(甲4)。
(イ)請求人商品の構造は、銀色の細長いプローブ部、白色の接続部、白色のグリップ状の操作部(紫色及び青色のボタンがある)、紫色の幅細の輪状部品、黒色の長めの接続部、そしてその端に青色の幅広の輪状部品が配置されている(甲4)。
なお、請求人の取り扱う製品には、上記商品以外にも、操作部の先端側端部に青色の幅細の輪状部品を配するもの(ビデオスコープ「OLYMPUS LTF−S190−5」)、操作部の先端側端部に青色の幅細の輪状部品が配置され、その形状も商品形状に合わせて略四角形状になっているもの(HD 3CCDカメラヘッド「CH−S190−XZ−E/Q」)などもあり(甲22)、商品デザインに採択される輪状部品の態様や配置位置は多様である。
(ウ)請求人の取り扱う内視鏡関連製品の売上高は、2016年3月期に年間で約3千4百億円(甲8)あったとされる。
なお、請求人商品及び本願商標に係る特徴(立体的形状、色彩及び位置)を備える商品のみに係る売上高や市場シェアを示す証拠の提出はない。
(エ)請求人の商品カタログ(甲4、甲5、甲21、甲22)には、請求人商品及びその他の商品が、商品名や品番、構造や機能紹介などと共に掲載されてはいるが、本願商標に相当する特徴(立体的形状、色彩及び位置)について、請求人に係る独立した出所識別標識であることを積極的に言及する記述などは確認できない。
イ(ア)以上を踏まえて、まずは請求人による本願商標の使用態様について検討すると、請求人商品は、確かに本願商標に係る特徴をおおむね充足する構成要素を備えているものの、その外観構成全体における本願商標に相当する特徴が占める割合はわずかで、他の構成部品(銀色のプローブ部、白色の接続部、紫色及び青色のボタンのある白色の操作部、紫色の輪状部品など)を含めてまとまりよく一体的にデザインされていることも相まって、本願商標に係る特徴(立体的形状、色彩及び位置)が、請求人商品の外観構成において出所識別標識として独立した強い印象を与えるものではなく、むしろ、そのような構成の中では、本願商標に相当する特徴は他の構成要素の中に埋没して印象に残りにくくなる。
そうすると、請求人商品に接する需要者としても、通常は、本願商標が,その特徴を含めて単なる商品の形状又は模様と認識、理解するにすぎないというべきで、同商品の販売実績や広告実績が、本願商標に係る知名度の向上に直接寄与するとは考えにくい。
(イ)また、請求人の取り扱う内視鏡関連製品や医療機器には、本願商標の特徴を充足しない商品(形状、配置位置、幅などが異なる)も含まれる上、操作部である本願商標とは直接的な関連のない電源装置等も含まれるから、請求人の内視鏡と関連する販売実績(売上高)や広告実績のすべてが本願商標と関連するものではないため、本願商標に係る販売実績や広告実績、そしてその事業規模や宣伝規模を客観的に把握、評価することもできない。
(ウ)さらに、請求人の取り扱う超音波凝固切開装置は、接続部の端に青色の幅広の輪状部品が配置されているものの、内視鏡(ビデオスコープ)の操作部においては、帯状部品又は帯状模様の態様や配置位置が多様であるから、本願商標に係る特徴もそれら多様なデザインバリエーションの一つにすぎず、需要者の間において本願商標に係る形状や配置が記憶される印象も散漫になる。
(エ)以上を踏まえると、本願商標は、請求人による使用態様及び使用実績によっては、その特徴(立体的形状、色彩及び位置)について、需要者の間で正確に出所識別標識として記憶されるとは考え難いばかりか、その特徴の知名度の向上につながるような販売実績や広告実績も把握できないから、我が国における需要者の間において、請求人の業務に係る商品の出所識別標識として広く認識されるに至ったものとは認められない。
(4)請求人の主張に対し
ア 請求人の主張は、以下のとおり、いずれも採択できない。
(ア)請求人は、本願商標は、操作部のごく一部分に表された幅の狭い立体的形状であって、操作部の一部にワンポイント的に表示されているから、需要者をして商品の出所識別標識として認識し得るから、識別力を潜在的に有する旨を主張する。
しかしながら、本願商標は、上記(2)のとおり、その構成要素(位置、立体的形状及び色彩)を鑑みても、彩色した輪状部品又は帯状模様と認識、理解できるものであって、デザイン手法としてもありふれたものにすぎないから、自他商品の出所識別標識としての特徴を備えるものとはいえない。
(イ)請求人は、請求人商品に係る販売実績及び広告実績、色彩(オリンパスブルー)のコーポレートカラーとしての使用実績を示しつつ、本願商標の指定商品に係る需要者は、一般の需要者ではなく、医師や検査技師、看護師等の医療従事者であって、手術のたびに医療従事者の目に触れるから、単なる商品のデコレーションの域を超えて、出所識別標識としての機能を果たしており、内視鏡の製品分野においてはその操作部において筐体部との境目寄り周縁のリング部分に青色円形の立体的形状を配した構成からなる医療用機械器具といえばオリンパスが想起される程に認知されている旨を主張する。
しかしながら、本願商標は、上記(3)のとおり、請求人商品による本願商標の使用態様及び使用実績を踏まえても、その需要者の間において、請求人に係る自他商品の出所識別標識として認識されているとは認められない。
また、青色という抽象的な要素は、具体的な立体的形状よりなる本願商標の構成要素の1つにすぎないばかりか、多様な色彩(青色を含む。)が商品の装飾目的で広く採択されていることは当審においても顕著な事実であり、当該色彩自体が固有の識別力を備えるものとはいえない。
なお、本願商標の指定商品は、操作部だけではなくその他の構成部品(カメラ、画像処理装置、電源装置等)を含めて一つの医療機器として機能すると考えられるところ、それを扱う医師であっても、操作部に付された輪状部品である本願商標を独立した出所識別標識として着目して記憶することは直ちに想定し難いばかりか、購入の際に比較的慎重な検討がされる医療機器であることを踏まえると、その商品に係る取引業界において、請求人の名称やブランド名などとは独立して、本願商標のような特徴(位置、立体的形状及び色彩)が自他商品の出所識別標識として機能しているとは考え難い。
(5)まとめ
本願は、その指定商品について商標法第6条第1項及び同条第2項の要件を具備するものの、本願商標は、同法第3条第1項第3号に該当し、請求人による使用実績によっては、我が国の需要者の間において、何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものとはいえないから、同条第2項の要件を具備しない。
よって、結論のとおり審決する。
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