Trademark Appeal Case
色彩商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−1064(T2018−1064/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲1(1)のとおりの構成からなり、第35類及び第41類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成27年4月1日に色彩のみからなる商標として登録出願され、その後、原審における同28年3月7日付け手続補正書により、商標の詳細な説明については、別掲1(2)のとおりに補正され、また、指定役務については、第41類「学習塾における知識の教授」(以下「本願指定役務」という。)に補正されたものである。
第2 原査定における拒絶の理由の要点
原査定は、「役務の提供の用に供する物又は役務の広告の装飾等に使用される色彩は、多くの場合、それらの魅力向上等のために選択されるものであって、役務の出所を表示し、自他役務を識別するための標識として認識し得ないものであるところ、本願指定役務を取り扱う業界においては、別掲2のとおり、本願商標のような水色が、役務の提供の用に供する物又は役務の広告の装飾等として使用されている。そうすると、本願商標をその指定役務の提供の用に供する物や広告に使用しても、これに接する取引者、需要者は、役務の提供の用に供する物又は役務の広告に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、何人かの業務に係る役務であることを認識することができない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。また、出願人が提出した証拠からは、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものと認めることはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲3に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成31年2月21日付け証拠調べ通知書(以下「証拠調べ通知書」という。)によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。
第4 証拠調べ通知書に対する請求人の意見の要点
請求人は、証拠調べ通知書に対し、要旨以下のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとの判断の根拠とはなり得ない旨述べた。
なお、請求人は、本願商標は、全国的かつ継続的に使用されてきた結果、自他役務の識別標識として機能していることから、商標法第3条第1項第6号には該当しない旨主張し、証拠方法として、原審及び当審において、甲第1号証ないし甲第176号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 証拠調べ通知書の1に示された証拠(別掲3の1)について
(1)「創伸学塾」のウェブサイト(別掲3の1(1))に対して
ウェブサイトの背景の一部に水色系統の色が使用されているものの、創伸学塾の教室の看板の背景の色は、それぞれウェブサイトの背景等に使用されている水色系統の色とは異なる色で、濃い水色系統の色、紺色が使用されており(甲151)、特定の色が統一的に使用されていない。したがって、本ウェブサイトにおける水色の使用は、商標として使用されている事実としては認められないものである。
なお、商標として使用されていないことは、本願商標の需要者の認識度についてのアンケート調査(甲102:以下「第1次調査」という。)の純粋想起法を用いた質問への回答結果において「創伸学塾」の名称は挙がっていない点からも明らかである。
(2)「早稲田育英ゼミナール」のウェブサイト(別掲3の1(2))、「湘南ゼミナール」のウェブサイト(別掲3の1(3))に対して
ウェブサイトの背景等に水色系統の色が使用されているものの、「早稲田育英ゼミナール」のコーポレートカラーとして使用されている色は、本願商標とは明らかに異なる紫色ないしは青色である(甲152)。
また、「湘南ゼミナール」のコーポレートカラーとして使用されている色は、本願商標とは明らかに異なる青色である(甲156)。
したがって、上記(1)と同様に、水色が商標として使用されている事実は認められない。
(3)「明光キッズ」のウェブサイト(別掲3の1(4))に対して
「明光キッズ」のウェブサイトによれば、明光キッズのイメージカラーは、本願商標と同様の水色ではなく、グリーンである(甲157の1、甲157の2)。
明光キッズは、「せいかつ・あそび・たいけん そしてまなびを通じて、自立心と夢を叶える力を持った子どもを育てます。」とし、各カテゴリーに、明光キッズのグリーンを中心とした4色が当てられており、引用されている帽子とポロシャツの青系の色は、「たいけん」のカテゴリーの色に合わせているものである(甲157の2)。
したがって、ここで引用されている帽子とポロシャツへの水色の使用は、自他役務の識別標識として機能する商標としての使用ではない。
(4)「ドラゼミ×浜学園」の広告(別掲3の1(5))に対して
浜学園の広告に使用されている青系の色は、ドラゼミが採用したドラえもんのキャラクターの体の色をイメージして背景色として用いたものにすぎない。教材に商標として使用されているものは青色・黄色・赤色の3色からなるロゴであり、統一的に使用をすべき単色が使用されていない(甲158、甲159)。また、浜学園のウェブサイトは、水色を商標として使用していると認めることができない(甲160)。
したがって、ここで引用されている青系の色は、商標として使用されているものではない。なお、ドラゼミは、2019年3月末でサービスを終了している(甲161)。
(5)「ガウディア」の広告(別掲3の1(6))に対して
学習教室「ガウディア」のイメージカラーは、グリーンであり、水色ではない(甲162)。
「ガウディア」の広告に使用されている水色は、黄緑色の大地の上に広がる空の色として使用されているのであり、商標として使用されているものではない。
2 証拠調べ通知書の2に示された証拠(別掲3の2)に対して
証拠調べ通知書は、「青色ないし水色」と一括して指摘をしているが、青色と水色とは異なる色のカテゴリーとして認識されるものである(甲153〜甲155)。
(1)「はじめてWEB」のウェブサイト(別掲3の2(1))に対して
「はじめてWEB」のウェブサイトは、業種別ホームページカラーガイドの第7回として「学校・塾のホームページの配色」について紹介するコラムであり(甲164)、その色が学習や勉強の分野において自他役務の識別標識として機能する態様でよく使用されていることを示すものではない。
日本の大学のスクールカラーは、フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」を見ても、青系の色が特に多く使用されているのではなく、水色の使用は少ない(甲165)。また、大学の附属高校・中学校などでは、大学のスクールカラーがあれば、その色を使っているのがほとんどである(甲164)。学習塾・進学塾のイメージカラーについても、緑系の色、黄色、赤色、オレンジ色、茶色、紫色、複数の色の組合せ等、青系以外の色を基調としている学習塾・進学塾が多数存在している(甲166の1〜甲166の21)。
したがって、「はじめてWEB」のウェブサイトの記載は、「青色」ないし「水色」、特に「水色」のみに勉強に有利な効果があると認定し、本願指定役務と関係が深い学習や勉強の分野において一般に使用されているものと評価し、本願商標のいわゆる独占適応性を否定する根拠とはならない。
(2)その他のウェブサイトに対して
「色カラー」のウェブサイト(別掲3の2(2))、「コツをつかんで試験に勝つ!〜暗記と記録のテクニック〜」のウェブサイト(別掲3の2(3))、「飛ばない豚」のウェブサイト(別掲3の2(4))は、いずれも、青色だけでなく、その他の色も、色の特性を理解して、それぞれの色の効果を利用すべきことが記載されている(甲167〜甲170)。
したがって、これらのウェブサイトの記載は、上記(1)と同様、本願商標の独占適応性を否定する根拠とはならない。
3 アンケート調査の結果について大学教授の意見書
本願商標の需要者の認識度についての第1次調査(甲102)とは別の方法で行ったアンケート調査(甲150:以下「第2次調査」という。「第1次調査」と「第2次調査」を合わせて「アンケート調査」ということがある。)の結果について、青山学院大学経営学部マーケティング学科の教授の意見書(甲171:以下「意見書」という。)は、「学習塾は、学習者本人が子供であるため、客観的証拠をアンケート調査で導くことは困難であり、学習者の保護者である親を『需要者』とみなした調査は、一定の妥当性があると言える。」と結論付けている(甲171)。
子供の塾・通信教育の購入・利用に関して、女性が圧倒的に決定権を握っており(甲173)、他の調査においても、教育について主導権を握っているのは女性であるとの結果が出ている(甲174、甲175)ことからすると、保護者としての女性は、保護者としての男性よりも学習塾のウェブサイトやチラシ・パンフレット、教材に触れる機会が多いと考えられる。
そこで、第2次調査における本願商標の助成想起率は、女性全体では75.3%であり、長子年齢が13歳以下の女性では79.3%に上り、また、長子年齢が6歳の進学期を迎えた女性については90%以上、長子年齢が11歳から12歳の進学期を迎えた女性において約90%で、本願商標に係る水色を、請求人の業務に係る「KUMON(公文/くもん)の学習塾(学習教室)」から想起している(甲171)。
意見書は、「学習塾の選択意思決定や通塾の送り迎えに関わると思われる母親において、当該色彩の識別力は70%を超えるほど高いことから『色彩が独立して自他商品・役務の識別標識として認識』されている、という要件は満たしている。」と結論付けられている。この点については、日本全国に16,479教室も展開する(甲11、甲12)公文式教室の各種看板広告、ウィンドウ広告、シャッター広告、壁面広告や張り出しテント等(甲13)において、請求人が長年にわたり継続して本願商標を使用している結果、母親が通塾の送り迎え等の際に住宅街等において、本願役務について本願商標が使用されているのを何度となく目にする状況となっていることとも整合する。
4 むすび
上述のとおり、証拠調べ通知書に引用された事実は、本願商標について商標法第3条第1項第6号に該当することを理由に登録を拒絶する根拠とはならない。
また、アンケート調査の結果及び意見書が示すとおり、本願商標は、本願指定役務に係る需要者が請求人の業務に係る役務であることを認識することができるに至っており、商標法第3条第1項第6号に規定される商標に該当しない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号の該当性
(1)商標法第3条第1項第6号の趣旨
商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(同法第1条)、商標の本質は、自己の業務に係る商品又は役務と識別するための標識として機能することにあり、この自他商品又は役務の識別標識としての機能から、出所表示機能、品質保証機能及び広告宣伝機能等が生じるものである。同法第3条第1項第6号が、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を商標登録の要件を欠くと規定するのは、同項第1号ないし第5号に例示されるような、識別力のない商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品・役務の識別力を欠くために、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される(平成21年(行ケ)第10270号参照)。
(2)本願商標の構成
本願商標は、別掲1のとおり、水色(RGBの組合せ:R125、G205、B244)のみからなるものであり、第41類「学習塾における知識の教授」を指定役務とするものである。
(3)本願指定役務と同種の業界における水色の使用
役務の広告や、役務の提供の用に供する物に使用される色彩は、多くの場合、役務の魅力向上等に資する装飾等として採択されるものであって、文字や図形等と組み合わせるなど、具体的な形態を伴う場合はともかく、そのような形態を伴わない場合には、役務の出所を表示し、自他役務を識別するための標識としては認識し得ないものである。
水色は、特異な色彩とはいえない上、原審で示した事実(別掲2)のほか、別掲3のとおり、請求人以外の学習塾等の事業者によって、広告宣伝に資するウェブサイトや雑誌、制服、帽子等、役務の提供の用に供する物の色彩として使用されている実情にある。
(4)小括
そうすると、水色は、本願指定役務の分野において、多くの事業者によって、役務の魅力向上等に資する装飾として、広告宣伝や役務の提供の用に供する物において一般に使用されているものであり、請求人以外の者によって使用されている水色と本願商標の水色(以下「本願水色」という。)は同一又は近似する色であることからすれば、本願水色に接する取引者、需要者は、役務の魅力向上のために使用される色彩と認識するにとどまるものとみるのが相当である。
してみれば、本願水色のみが、役務の出所を表示する識別標識としての機能を発揮するものとみることはできない。
したがって、本願水色は、一般的に使用される色彩であって、自他役務の識別力を欠くために、商標としての機能を果たし得ないものであり、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものといわざるを得ない。
2 本願水色の使用による識別力獲得について
請求人は、「本願商標は、全国的かつ継続的に使用されてきた結果、自他役務の識別標識として機能していることから、商標法第3条第1項第6号には該当しない」旨主張している。
ところで、使用により自他役務の識別力を獲得したかどうかは、当該商標が使用された期間及び地域、役務の提供量及び営業規模、広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情、当該商標やこれに類似した商標を採択した他の事業者の役務の存在、役務を識別し選択する際に当該商標が果たす役割の大きさ等を総合して判断すべきであるが、輪郭のない単一の色彩それ自体が使用により自他役務の識別力を獲得したかどうかを判断するに当たっては、指定役務を提供する事業者に対して、色彩の自由な使用を不当に制限することを避けるという公益にも配慮すべきである。
そこで、上記観点から、以下検討する。
(1)請求人について
請求人である株式会社公文教育研究会は、主に、学習塾における知識の教授並びにフランチャイズ加盟塾の事業の管理及び指導・助言の営業主体であって、フランチャイズ型学習塾を展開する企業である(甲5〜甲9、甲12)。
請求人は、1950年代に請求人の創始者である公文公(とおる)が、数学教師としての経験を活かして、自学学習を軸とした学習指導法を編み出した「公文式学習法」ないしは「公文式教育法」(以下「公文式」という)を、請求人の事業に係るフランチャイジーである「公文式教室」(以下「公文式教室」という。)における指導方法及び教材に採用している(甲5〜甲9)。
請求人は、2000年よりグループ経営体制に移行し(甲5、甲9)、2014年3月時点で、全世界合計で427万人の学習者を擁するとされ(甲5)、日本国内では、2014年10月の時点で、16,479教室を展開し(甲10、甲11)、国内学習者数は、2014年3月末時点で146万人とされる(甲12)。また、2014年3月時点で資本金44億1,800万円、従業員数が4,038人(KUMONグループ全体)、連結売上高が864億4,600万円とされる(甲5、甲12)。
(2)ロゴマニュアルと本願水色の指定について
請求人のウェブサイトによれば、請求人は、2001年に、本願商標と近似する水色の背景を有し、登録第4634870号商標(甲1)及び登録第4644488号商標(甲3)と同様の構成態様で、「O」の欧文字を顔のようにデザインした「KUMON」の文字からなる標章を「新KUMONロゴ」として採用し(甲9:以下、当該標章を「KUMONロゴ」という。)、さらに、2006年12月「ロゴマニュアル/2006(広告デザインガイドを含む)」を作成し、発行した(甲13:以下「ロゴマニュアル」という。)。
ロゴマニュアルの末尾には、「2003年1月 ロゴマニュアル 初版」、「2003年3月 広告物デザインガイド 初版」、「2004年10月 ロゴマニュアル 部分改訂」との記載があり、ロゴマニュアルの初版は、2003年1月に作成され、累次改訂されていることがうかがえる。
また、ロゴマニュアルによれば、「デザイン要素の定義」として、「KUMONを象徴する代表となるロゴ」として「ブランドロゴ」が定義され、当該「ブランドロゴ」は、「KUMONロゴ」と「KUMONブルー」を合わせたものとされている。
さらに、同マニュアルにおいて、「KUMONロゴ」が定義され、また、「KUMONブルー」は、「背景のKUMONブルーは、知性、誠実さ、世界につながる空の色、ピュアな水の色表現し、・・・。このKUMONブルーが、KUMONの『コーポレートカラー』となります。」の記載と共に、本願水色と同一の「R125 G205 B244」として定義されている(甲13)。
(3)本願水色が使用された結果、自他役務の識別力を獲得したことを示す証拠について
請求人が提出した、本願商標が指定役務について使用された結果、自他役務の識別力を獲得したことを示す証拠については、次のとおりである。
ア 本願指定役務の広告における本願水色の使用について
(ア)「公文式教室」における使用
「屋外広告の製作ガイドライン」(甲15)及び「屋外広告制作ガイド(2014年11月)」(甲16)において、公文式教室の指導者はロゴマニュアルに従って看板等の屋外広告を制作する旨記載され、各公文式教室においては、本願水色を背景に用いたKUMONロゴが看板・窓広告・シャッター広告・壁面広告・張り出しテント等に掲示されている(甲17)。これらの看板への架け替えは、2003年に実施された(甲5、甲9)。
(イ)学習キャンペーンに用いられたチラシ・リーフ等における使用
a 2015年度5月の学習キャンペーンに使用されたとされる「2015年度5月無料体験学習B4チラシB(02)」(甲44)及び2015年度11月の学習キャンペーンに使用されたとされる「2015年度11月無料体験学習B4チラシA(01)・B(02)(B4サイズ)」(甲45)において、チラシの背景に本願水色が使用されているが、ピンク色、オレンジ色等の他の色も使用されている。そして、いずれもチラシの上部にKUMONロゴが黒色で顕著に表示され、チラシ中には「KUMON」、「くもん」又は「公文式」の文字が表示されている。
b 2016年度の学習キャンペーンに使用されたとされるチラシ・リーフ等とされる画像には、以下のとおり、本願水色が使用されている。
(a)B4チラシとされる画像
2016年度の学習キャンペーンに使用された「2016年度5月無料体験学習B4チラシA」とされる画像(甲125)、「2016年度夏の特別学習B4チラシ」とされる画像(甲126)及び「2016年度11月無料体験学習B4チラシB」とされる画像(甲127)(以下、これらをまとめて「B4チラシ画像」という。)において、B4チラシ画像の背景に本願水色が使用されているが、ピンク色、黄色、オレンジ色等の他の色も使用されている。そして、いずれもチラシ画像の上部にKUMONロゴが黒色で顕著に表示され、チラシ画像中には「KUMON」、「くもん、いくもん」又は「公文式」の文字が表示されている。
(b)B3ポスターとされる画像
2016年度の学習キャンペーンに使用された「2016年度5月無料体験学習B3ポスターA」とされる2枚の画像(甲128)、「2016年度夏の特別学習B3ポスター」とされる2枚の画像(甲129)及び「2016年度11月無料体験学習B3ポスターB」とされる2枚の画像(甲130)(以下、これらをまとめて「B3ポスター画像」という。)において、B3ポスター画像の背景に本願水色が使用されているが、ピンク色、黄色、オレンジ色等の他の色も使用されている。そして、各B3ポスター画像の2葉目の下部にKUMONロゴが黒色で顕著に表示され、また、「KUMON」、「くもん、いくもん」又は「公文式」の文字が表示されている。
(c)メインリーフ(PR用リーフ)とされる画像
2016年度の学習キャンペーンに使用された「2016年度5月無料体験学習メインリーフA」とされる2枚の画像(甲131)、「2016年度夏の特別学習メインリーフ」とされる2枚の画像(甲132)及び「2016年度11月無料体験学習メインリーフB」とされる2枚の画像(甲133)(以下、これらをまとめて「メインリーフ画像」という。)において、メインリーフ画像の背景に本願水色が使用されているが、ピンク色、黄色、オレンジ色等の他の色も使用されている。そして、各メインリーフ画像の1葉目の上部にKUMONロゴが黒色で顕著に表示され、「KUMON」、「くもん、いくもん」の文字が表示されている。また、各メインリーフ画像の2葉目には、「公文式」の文字が表示されている。
(d)フォルダとされる画像
2016年度の学習キャンペーンに使用された「コミュニケーションツール(フォルダ)(C.C.フォルダー)」とされる2枚の画像(甲134:以下「フォルダ画像」という。)において、フォルダ画像に本願水色が使用され、フォルダ画像の1葉目の中央部にKUMONロゴが白抜きで顕著に表示されている。
(e)コミュニケーションノートとされる画像
2016年度の学習キャンペーンに使用された「コミュニケーションツール兼パンフレット『コミュニケーションノート』(C.C.パンフ)無料体験学習用」とされる2枚の画像(甲135)及び「コミュニケーションツール兼パンフレット『コミュニケーションノート』(C.C.パンフ)夏の特別学習用」とされる2枚の画像(甲136)(以下、これらをまとめて「コミュニケーションノート画像」という。)において、各コミュニケーションノート画像の1葉目及び2葉目に本願水色が使用され、その一葉目の下部にKUMONロゴ、2葉目には、「KUMON」、「くもんいくもん」又は「公文式」の文字が表示されている。
(f)公文式説明リーフとされる画像
2016年度の学習キャンペーンに使用された「公文式説明リーフ(来会時セット用A5リーフ『ようこそ!!公文式教室』」とされる2枚の画像(甲137)(以下「公文式説明リーフ画像」という。)において、公文式説明リーフ画像の1葉目には「ようこそ!!/公文式教室へ」のタイトルの下、表紙に本願水色が使用されているが、下部右側にKUMONロゴが黒色で顕著に表示されており、2葉目には、「はじめて公文式を/学習されるみなさまヘ」の文字が顕著に表示されている。
(g)来会時セット専用封筒とされる画像
2016年度の学習キャンペーンに使用された「来会時セット専用封筒『公文式学習のご案内』」とされる画像(甲138:以下「来会時セット専用封筒画像」という。)において、隅丸四角の輪郭内に表示された「公文式学習のご案内」のタイトルの下、来会時セット専用封筒画像の背景に本願水色が使用されているが、その下部にはKUMONロゴが黒色で顕著に表示されている。
c 上記の他にも、請求人は、2008年度から2014年度にかけて、学習キャンペーンに用いたチラシ、PR用リーフや「無料体験学習」のご招待券・参加申込券等(以下「チラシ等」という。)を提出しており、これらのチラシ等においても、チラシの背景等に本願水色が使用されると共にKUMONロゴが表示され、「KUMON」、「くもんいくもん」又は「公文式」等の文字が表示されている(甲20〜甲43、甲46〜甲54)。
(ウ)テレビCMにおける使用
a 2015年度の5月無料体験学習キャンペーンのテレビCMにおいて、以下のとおり、本願水色が使用されている。
(a)「長文スラスラ」(甲69)
「長文スラスラ」と題するテレビCMのキャプチャーとされる3枚の画像において、背景等に本願水色が使用されているが、濃淡の異なる水色や、緑色等の他の色も使用されている。そして、一番下の画像にはKUMONロゴが黒色で顕著に表示され、「くもん いくもん」の文字が表示されている。
(b)「まず、ことばから」(甲70)
「まず、ことばから」と題するテレビCMのキャプチャーとされる1枚の画像において、下部の帯状の長方形に本願水色が使用されているが、濃淡の異なる水色や、緑色等の他の色も使用されている。そして、画像の下部にはKUMONロゴが黒色で顕著に表示され、「くもん いくもん」の文字が表示されている。
(c)「KUMONのヒミツ」(甲71)。
「KUMONのヒミツ」と題するテレビCMのキャプチャーとされる1枚の画像において、背景等に本願水色が使用されているが、濃淡の異なる水色や、緑色等の他の色も使用されている。そして、画像の下部右側にはKUMONロゴが黒色で顕著に表示され、「くもん いくもん」の文字が表示されている。
(d)これらのテレビCMは、2015年5月に全国的に放送されたことがうかがえる(甲63〜甲68)。
b 2017年度の11月無料体験学習キャンペーンのテレビCMにおいて、以下のとおり、本願水色が使用されている。
(a)「KUMONグループCM生徒編」(甲116)
「KUMONグループCM生徒編」と題するテレビCMのキャプチャーとされる3枚の画像において、一番下の画像の背景に本願水色が使用され、画像の中央部にはKUMONロゴが黒色で顕著に表示されている。
(b)「『子どもの成長』編」(甲117)
「『子どもの成長』編」と題するテレビCMのキャプチャーとされる3枚の画像において、上から2番目の画像の背景に本願水色が使用されているものの、画像の中央部には「くもんいくもん」の文字が表示され、一番下の画像の下部の帯状の長方形に本願水色と共にKUMONロゴが黒色で顕著に表示されている。
(c)「『高く跳ぶために』編」(甲118)及び「KUMONの英語とは編」(甲119)
「『高く跳ぶために』編」と題するテレビCMのキャプチャーとされる3枚の画像及び「『KUMONの英語とは』編」と題するテレビCMのキャプチャーとされる3枚の画像において、いずれも上から2番目の画像の背景に本願水色が使用されているが、画像の中央部には「くもんいくもん」の文字が表示され、一番下の画像の下部の帯状の長方形に本願水色と共にKUMONロゴが黒色で顕著に表示されている。また、一番上の画像には「やっててよかった、公文式!」の文字が表示されている。
(d)これらのテレビCMは、2017年11月に、全国的に放送されたことがうかがえる(甲112〜甲115)。
(エ)交通広告における使用
a 2013年度及び2014年度の「公文式学習 夏の特別学習」の交通広告とされる地下鉄(東京メトロ、都営地下鉄)や鉄道(阪急電鉄)の駅に掲示された5つの写真画像において、広告の背景に本願水色が使用されているが、同じ割合で黄色も使用されており、これらの広告中には「KUMONだ!」又は「KUMONの夏は、/・・・」等の文字が顕著に表示され、いずれもKUMONロゴが表示されている(甲73、甲74)。
また、「バスの指導者募集広告写真」とされるバス(大阪市バス)の側面に掲げられた広告の2つの写真画像において、広告の背景に本願水色が使用されているものの、これらの広告中にはピンク色も使用され、「くもんの先生になりませんか」、「Baby kumon」等の文字及びKUMONロゴが顕著に表示されている(甲75)。
b 2017年度の「2月無料体験学習」の交通広告(駅構内のデジタルサイネージ:JR大阪駅構内及びJR品川駅構内)とされる11の写真画像において、広告の背景に本願水色が使用されているが、赤色等の他の色も使用され、本願水色がグラデーション表示されているものもある。また、これらの広告中には「KUMON」の文字が表示され、いずれもの画像も下部にKUMONロゴが顕著に表示されている(甲120、甲121)。
(オ)雑誌広告における使用
雑誌「ESSE(エッセ)」、「LEE(リー)」、「オレンジページ」、「Mart(マート)」、「Hug Mug(ハグマグ)」等に2013年から2017年にかけて掲載された広告において、広告の背景に本願水色が使用されているが、広告中にはピンク色、赤色、黄色等の他の色も使用され、さらに「KUMON」、「公文式」等の文字が表示され、KUMONロゴが顕著に表示されている(甲76〜甲96、甲122、甲123)。
(カ)LINE公式アカウントにおける使用
請求人の「LINE」アカウントとされる画像において、広告の背景等に本願水色が使用されているが、広告中には「KUMON」の文字が表示され、本願水色と共にKUMONロゴが表示されている。また、広告中にはピンク色、黄色、緑色等の他の色も使用されている(甲97、甲124)。
(キ)日本公文教育研究会及び請求人の公式ウェブサイトにおける使用
「日本公文教育研究会」が2001年にリニューアルし、2015年4月より請求人に引き継がれ現在に至るとされる公式ウェブサイト(URL:http://www.kumon.ne.jp)のヘッダー部分において、本願水色と共にKUMONロゴが表示されている。また、同ウェブサイト中にはオレンジ色、ピンク色、緑色等の他の色も使用されている(甲98)。
(ク)広告のためのイベントやセミナーにおける使用
2017年に開催された公文式に関する広告のためのイベントやセミナーへの出展とされる写真画像において、タペストリーやパイプ椅子用のカバーに本願水色が使用されているが、これらにはいずれもKUMONロゴが顕著に表示されている(甲146〜甲148)。
(ケ)テレビ番組での紹介
公文式教室が紹介された、2013年5月23日に放送されたテレビ東京の番組「カンブリア宮殿」の映像抜粋とされる画像(甲100)及び、2014年6月15日に放送されたフジテレビの番組「Mr.サンデー」の映像抜粋とされる画像(甲101)において、これらの番組における紹介映像の中には、KUMONロゴが表示されているものの、前者については本願水色が使用されているかどうか不明であり、本願水色が使用されていることが確認できるのは後者のみである。
イ 本願商標の指定役務の需要者の認識度について
請求人は、本願水色は、請求人の商標登録第4634870号と重畳的に指定役務について全国的かつ継続的に使用されてきたことともあいまって、現在では需要者が本願商標のみから、請求人の業務に係る役務「学習塾における知識の教授」であることを認識することができる商標になっている旨主張し、本願商標が自他役務の識別力を有する標識としての機能を有することの証拠として、次のとおり、需要者に対するアンケート調査等を提出した。
(ア)第1次調査
請求人は、株式会社インテージに委託し、2015年8月に、本願商標の指定役務の需要者に対する第1次調査を行った(サンプル数1,032。男性89.6%、女性10.4%)。質問の内容は、需要者として「同居家族あり(子供の年齢は長子が20歳未満)」を抽出し、これらの者に対して、本願水色を示し、「Q3 以下の色彩は、学習教室・学習塾などの教育関連ビジネスの看板、パンフレット、ポスターやCMなどに使われている色彩です。この色彩を見て、どこの学習教室・学習塾などを連想しますか。その名称を1つだけお答えください。」という方法(以下「自由回答」という。)及び「Q4 以下の色彩は、学習教室・学習塾などの教育関連ビジネスの看板、パンフレット、ポスターやCMなどに使われている色彩です。この色彩を見て、どこの学習教室・学習塾などを連想しますか。その名称を1つだけお選びください。(回答は1つ)」というものであり、あらかじめ記載された学習塾(学習教室)の名称「KUMON(公文式)、学研教室、進研ゼミ、ECCジュニア、スタッド学習教室、COCO塾ジュニア、AEONKIDS(イーオンこども英会話)、こども英会話のミネルヴァ、七田チャイルドアカデミー、日能研、SAPIX、浜学園、四谷大塚、栄光ゼミナール、早稲田アカデミー、市進学院、臨海セミナー」のほか、「上記にはない、わからない/知らない」の中から回答を選ぶ方法(以下「選択式回答」という。)で行われた(甲102)。
第1次調査の結果、自由回答において、48.2%が、選択式回答において、50.2%が、請求人学習塾(学習教室)を回答したとされる。また、自由回答において、「わからない」、「思い浮かばない」等とした回答率の合計は、34.5%、選択式回答において、「上記にはない」及び「わからない/知らない」とした回答率の合計は、35.4%である(甲102)。
(イ)第2次調査
請求人は、株式会社インテージに委託し、2018年1月に、本願商標の指定役務の需要者に対する第2次調査を行った(サンプル数984。男性39.6%、女性60.4%)。質問の内容は、本願指定役務の需要者(「同居家族あり(子供の年齢は長子が20歳未満)」を抽出。第1次調査の対象者を除く。)に対し、「Q3 KUMON(公文/くもん)の学習塾(学習教室)を思い起こさせる色をひとつだけお選びください。」というものであり、学習塾(学習教室)の名称として「KUMON(公文/くもん)」の文字をあらかじめ記載した上で、本願水色を含む8色の色見本(水色、薄い緑、紫、クリーム、青、緑、赤、オレンジ)を呈示し、その色見本の中から請求人の学習塾(学習教室)を思い起こさせる色をひとつだけ選択して回答させるものである(甲150)。
第2次調査の結果、66.2%が、請求人の学習塾(学習教室)を回答したとされる。また、水色以外の色を選択した回答や「この中にはない」とした回答は、20.8%、「KUMON(公文/くもん)の色を覚えていない/わからない」及び「KUMON(公文/くもん)を知らない」とした回答は、13%である(甲150)。
(ウ)アンケート結果についての大学教授の意見書
意見書において、アンケート調査の結果について、「(1)需要者が当該色彩をもって何らかの業務に係る商品等であることを認識することができるに至っていることの客観的証拠として、第2次調査の結果を用いることは適切である。(2)学習塾は、学習者本人が子供であるため、客観的証拠をアンケート調査で導くことは困難であり、学習者の保護者である親を『需要者』としてみなした調査は、一定の妥当性があると言える。(3)学習塾という商品又は役務において、公文の『色彩』は、66%という高い水準で他の色とは独立したものとして識別されている。過半数以上の需要者が識別できるだけの機能を有していると言える。(4)特に、学習塾の選択意思決定や通塾の送り迎えに関わると思われる母親において、当該色彩の識別力は70%を超えるほど高いことから、『色彩が独立して自他商品・役務の識別標識として認識』されている、という要件は満たしている。」と述べている(甲171)。
(4)判断
ア 本願水色は、上記2(2)のとおり、ロゴマニュアルに基づき、請求人が自ら「KUMONブルー」と称するデザイン要素として定義され、2003年頃より、ブランドロゴの背景の色彩として使用が開始され、当該水色は、上記2(3)アのとおり、本願指定役務の広告として(ア)公文式教室の看板等、(イ)学習キャンペーンに用いられたチラシ・リーフ等(画像のみのものを含む。以下同じ。)、(ウ)テレビCM、(エ)交通広告、(オ)雑誌広告、(カ)LINE公式アカウント、(キ)公式ウェブサイトにおいて、全国的に継続して使用されると共に、(ク)広告のためのイベントやセミナー及び(ケ)テレビ番組での紹介においても使用されたことが認められる。
イ しかしながら、請求人は、ロゴマニュアルにおいて、本願水色を「KUMONブルー」と定義付けているものの、同時に「KUMONを象徴する代表となるロゴ」として「ブランドロゴ」が定義され、当該ブランドロゴは、「KUMONロゴ」と「KUNMONブルー」の組合せとして定義されていることからすれば、本願水色は、ブランドロゴの構成要素として、KUMONロゴと結合して使用されるものであり、本願水色のみが独立した標章として使用されているということはできないから、ブランドロゴを使用したことにより、本願水色が独立した自他役務の識別力を有する標識として認識され、その機能を果たしているとはいえない。
ウ また、本願指定役務の広告における使用態様については、(ア)公文式教室の看板等、(イ)学習キャンペーンに用いられたチラシ・リーフ等、(オ)雑誌広告及び(ク)広告のためのイベントやセミナーにおいて、本願水色が使用されているものの、水色は、多くの場合、役務の魅力向上等に資する装飾等として採択されるものであるところ、これらの広告物には、請求人の学習塾(学習教室)を表す標識として「KUMON」、「くもん」、「公文式」等の文字やKUMONロゴが顕著に表示されている。
そうすると、これらの広告物に接する需要者は、役務の出所を識別する上で重要な標識として、請求人らが使用する「KUMON」、「くもん」、「公文式」等の文字やKUMONロゴといった標識に着目するといえるものであり、これらの広告物に表示されている本願水色のみがこれらの標識と分離して観察され、需要者に強く印象付けられるとはいえないから、本願水色は、自他役務の識別力を有する標識というよりは、役務の魅力向上等に資する装飾として認識されるものというのが相当である。
したがって、本願水色が指定役務についての上記広告物に全国的かつ継続的に使用されてきたとしても、当該使用により本願水色が独立して自他役務の識別力を獲得したと認めることはできない。
エ さらに、上記の他に、(ウ)テレビCM、(エ)交通広告、(カ)LINE公式アカウント及び(キ)公式ウェブサイトにおいては、本願水色が使用されているものの、多くが、ピンク色、赤色、黄色、オレンジ色、緑色等の他の色と共に使用されている上、グラデーション表示されているものもあるから、本願水色のみが統一して使用されているとはいえない。
また、これらの広告物には、請求人の学習塾(学習教室)を表す標識として「KUMON」、「くもん」、「公文式」等の文字やKUMONロゴが顕著に表示されている。
そうすると、これらの広告宣伝に本願水色が多用されているとしても、本願水色は、独立した自他役務の識別力を有する標識として認識されるというよりは、装飾としての使用とみられるものであり、本願水色が独立して自他役務の識別力を有する標識として認識され、その機能を果たすものということはできないから、これらの使用により、本願水色が自他役務の識別力を獲得したということはできない。
オ なお、いくつかのテレビ番組において、請求人の業務が紹介され、番組の画像中に本願水色が映っていたとしても、これらの水色は、請求人の学習塾(学習教室)を表す標識としてのKUMONロゴの背景色として表示されているものであって、本願水色のみがその指定役務について自他役務の識別力を有する標識としての機能を果たすものということはできないから、上記と同様、本願水色が自他役務の識別力を獲得したということはできない。
カ 請求人は、需要者の認識度について、アンケート調査の結果及び意見書に基づいて、「請求人以外の者に係る学習塾の名称又はその略称が記載された学習塾のうち、最も割合の高いところでもわずか1.4%であり、本願商標に係る色彩を見て、請求人に係る学習塾を想起した者の割合のみが突出して高くなっている」(第1次調査)、「女性全体では75.3%、長子年齢が13歳以下の女性は79.3%、長子年齢が6歳の進学期を迎えた女性は90%以上、長子年齢が11歳から12歳の進学期を迎えた女性は約90%」の需要者が、本願水色から「KUMON(公文/くもん)の学習塾(学習教室)」を想起している(第2次調査,意見書)等と述べ、本願水色が独立して自他役務の識別力を有する標識として認識されている旨主張している。
しかしながら、アンケート調査において調査対象者を「同居家族あり(子供の年齢は長子が20歳未満)」を抽出した上で調査した結果である、「おおむね48%ないし66%の正解率(第1次調査において自由回答:48.2%、選択式回答:50.2%。第2次調査:66.2%)」は、それ程高い認識率とはいい難く、かつ、第1次調査において「分からない/知らない」等との回答も、自由回答式で34.5%、選択式回答で35.4%であり、第2次調査においても、水色以外の色を選択した回答並びに「KUMON(公文/くもん)の色を覚えていない/わからない」及び「KUMON(公文/くもん)を知らない」とした回答の合計は、33.8%であることからすれば、アンケート調査の結果は、必ずしも、本願水色が需要者の間において、請求人の業務に係る役務の出所と密接に結びつけられて認識されることを証明したものとはいい難い。
また、請求人は、第2次調査において「長子年齢が6歳の進学期を迎えた女性は90%以上、長子年齢が11歳から12歳の進学期を迎えた女性は約90%」の認識率である等と主張しているが、調査結果には、長子年齢別の属性の内訳は示されておらず(甲150)、直ちに上記数値を認めることはできない上、「学習塾における知識の教授」の需要者は、必ずしも長子年齢13歳以下の子を持つ女性に限定されるとはいえないことからすれば、当該主張及び意見書の内容に基づいて、本願水色が、請求人の業務に係る役務を表す商標として需要者の間での認識度が極めて高いとはいえない。
さらに、本願水色が自他役務の識別力を獲得したことを示す証拠とされる第1次調査の選択式回答及び第2次調査は、質問中にあらかじめ「KUMON(公文式)」及び「KUMON(公文/くもん)の学習塾(学習教室)」等が記載されており(甲102、甲150)、回答者に請求人を想起させるように予断を与えるものであることから、調査結果が公平な方法で抽出されたものとはいい難い。
したがって、アンケート調査の結果等を考慮したとしても、本願水色のみが独立して請求人ないし請求人の業務に係る役務を想起させ、自他役務の識別力を有する標識としての機能を発揮するに至っていると認めることはできない。
キ 小括
以上のとおり、本願水色が独立した自他役務の識別力を有する標識として認識され、その機能を果たしているとはいえず、また、請求人が提出したアンケート調査の結果を考慮しても、本願水色が、請求人の業務に係る役務を表示する特異な色彩として一般に認識され、あるいは需要者において独立した自他役務の識別力を有する標識として周知されているとはいえない。
さらに、本願商標は、輪郭のない単一の色彩であり、これと近似する色彩を使用する請求人以外の者が多数存在することからすれば、色彩の自由な使用を不当に制限することを避けるという公益にも配慮すべきである。
したがって、本願指定役務の提供に係る広告宣伝において、本願水色が使用されているとしても、本願水色がその指定役務について自他役務の識別力を獲得したことを認めることはできない。
3 請求人の主張について
(1)色彩のみの商標の自他役務の識別力について
請求人は、色彩のみからなる商標の登録事例を引用し(以下「引用事例」という。)、色彩のみの商標については、その色彩商標と組み合わせて使用されている文字商標やロゴ商標が需要者に広く知られるようになった結果、これらの商標と共に使用されてきた色彩も需要者に広く知られるようになり、その色彩が単独でも商標としての自他役務の識別力を発揮するようになると考えるべきである旨主張している。
しかしながら、本願水色は、上記2(4)カのとおり、需要者に対するアンケート調査の結果等を考慮したとしても、本願水色のみが独立して請求人の業務に係る役務を想起させ、自他役務の識別力を有する標識としての機能を発揮するに至っている色彩と認めることはできないから、引用事例と本願商標を同列に論ずることはできない。
(2)請求人以外の者による色彩の使用について
請求人は、拒絶理由通知書、拒絶査定及び証拠調べ通知書において引用した請求人以外の者による色彩の使用例(以下「使用例」という。)は、チラシやパンフレットなどの役務の提供に伴い提供される物に統一された態様で継続的に使用されているものではなく、単にウェブサイトの魅力向上等のために選択され使用されているものであること、また、青色と水色とは異なる色のカテゴリーとして認識されるものである(甲153〜甲155)から、使用例を引用して、本願商標の自他役務の識別力を否定した認定は失当である旨主張している。
しかしながら、使用例は、本願水色と近似する水色を含む青系統の色彩について、学習塾等の業界において、請求人以外の事業者によって、広告宣伝に資するウェブサイトや役務の提供の用に供する制服等に広く使用されていることを示す事例であり、チラシやパンフレット等に統一して使用されているといえないとしても、水色の色彩が指定役務に係る広告において装飾を目的として使用されている実情として、例示したものである。
また、使用例には、本願水色と厳密に一致する色とはいえなくても、本願水色と似通った色といい得るものが含まれている(特に、拒絶理由通知(1)、同(2)、同(5)、拒絶査定(1)、同(2)、同(4)、同(6)、証拠調べ通知(1)〜(4))ことに照らせば、これらの証拠を色彩の使用の実情として捉え、本願水色の自他役務の識別力の有無の判断を行うことが失当であるとはいえないものである。
なお、請求人は、学校における教育について、水色を使用した校章やスクールカラーは少ない(甲165)旨主張しているが、甲第165号証に示された証拠によれば、スクールカラーに「水色」を採択する大学(大阪薬科大学、滋賀県立大学、徳島大学、日本医科大学)があり、また、本願水色に近似する薄い青系の色彩をロゴマーク等に採択する大学(大阪歯科大学「ODUブルー」、長崎大学「コスミックブルー」、広島私立大学「ライトブルー」、北見工業大学「青」、東邦大学「青」)もあり、大学を含む「知識の教授」の分野において、請求人以外の者によって本願水色に近似する薄い青系統の色が使用されているという実情がある。
(3)証拠調べで提示した使用例(別掲3の2)における記載について
請求人は、証拠調べ通知で引用した別掲3の2に係るウェブサイトの記載について、「『水色』のみに勉強に有利な効果があると認定し、本願指定役務と関係が深い学習や勉強の分野において一般に使用されているものと評価し、本願商標の独占適応性を否定する根拠とはならない。」旨主張しているが、当該ウェブサイトにおいて、水色以外の色彩について学習や勉強に様々な効果をもたらし得ることが記載されていたとしても、水色について、一定の効果を有する色として記載されており、水色以外の色彩の効果が記載されていることをもって、水色が本願指定役務の分野で上記効果を有することが否定されるものではない。
(4)いわゆる独占適応性について
請求人は、本件審判の請求の理由において、商標法第25条を引用し、単色の色彩のみからなる本願商標が登録され商標権が発生しても、その商標権の効力が及ぶのは、他人が自他役務を識別可能な「商標」として単色の色彩を役務に使用した場合に限られるから、単色からなる色彩のみからなる本願商標について商標登録が認められたとしても、「商標」ではない色彩の他人による自由使用までを妨げる、独占不適応なものではない旨主張している。
しかしながら、色彩は元々自由に使用できるものである以上、色彩の自由な使用を阻害するような単一の色彩についての商品・役務表示としての保護は、公益的見地からみて容易に認容できるものではなく、単一の色彩が出所表示機能(自他識別機能)を取得したといえるかどうかを判断するに当たっては、その色彩を商標として保護することが、色彩使用の自由を阻害することにならないかどうかの点も含めて慎重に検討されなければならないというべきである(平成7年(ネ)第1518号参照)。
そうすると、本願水色と近似する青系の色彩は、上記のとおり、本願指定役務の分野において事業者によって役務の魅力の向上に資するため広く使用されている色彩であり、かかる色彩を特定の者に独占させることは、自由な色彩の使用を妨げるおそれがあるものといわざるを得ない。
(5)米国の登録事例について
請求人は、米国における色彩商標の登録例(甲149)を挙げて本願商標も登録されるべき旨主張しているが、色彩のみからなる商標が他国において商標登録されている例があるとしても、本願商標が自他役務の識別力を有するか否か、また、使用をされた結果、請求人(出願人)の業務に係るものとして、需要者間に広く認識されるに至っているか否かは、我が国の商標法、我が国の取引の実情の下で、その需要者の視点に立って判断されるべきものであって、他国における登録例をもって判断されるべきものではない。
(6)したがって、請求人の上記主張はいずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであるから、商標法第3条第1項第6号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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