Trademark Appeal Case
涼やかの品質表示性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2019−13371(T2019−13371/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「涼やか」の文字を標準文字で表してなり、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」を指定商品として、平成30年3月27日に登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、本願の指定商品を取り扱う業界において、「通気性に優れた生地を使用した商品」を指して、「涼やか〇〇(〇〇は商品名)」と称し、実際に各メーカーが製造・販売している実情が確認できることからすると、本願商標をその指定商品中の第25類「被服,仮装用衣服,運動用特殊衣服」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、当該商品が「通気性に優れた生地を使用した商品」であると認識するにとどまるものであって、本願商標は、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものというのが相当であるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における審尋及び請求人の回答
本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について、職権に基づく証拠調べを実施し、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、令和2年7月15日付け審尋で、その結果を通知するとともに、下記第5と同旨の暫定的見解について通知したところ、請求人は、同年8月27日に意見書を提出した。
第4 審尋に対する請求人の意見の概要
1 商品等の特徴を直接的に表示するか
(1)審尋の内容は、本願商標がその商品等の特徴を直接的に表示するものであるのか、それとも間接的に表示しているものであるのか否かの判断をせずに、広辞苑第6版に掲載の語であることのみを直接的な根拠として、商標法第3条第1項第3号に該当すると断定しているから、妥当性を欠いた判断である。
(2)「涼やか」のみからなる語は、「(通気性の良い生地や、冷感のある生地を用いることなどにより、着心地が)涼しいこと 」として「普通に用いられる方法」で表してなるものではない。また、本願商標のように、形容動詞の語幹(詞)のみからなる商標は、商品等の特徴を直接的に表示するものではなく、形容動詞の語幹(詞)のみからなる用法は、本来の語法を離れた恣意的なものであるから、それ自体、創意がある。原審及び当審において示された取引の実情いずれも、本願商標のように「涼やか」単体で用いられた使用態様のものではない。
(3)過去の審決例には、通常の用法として他の語と結合して使用される語を、単独で使用される場合には、品質等を表示するものではなく、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきであると結論づけたものがある。
2 取引実情において一般に使用されているものであるか
(1)職権による証拠調べで被服類を取り扱う業界において「涼やか」の文字(語)の使用例として示されたいずれも、「涼やか」単体の出所標示として用いられた使用態様のものではないことから、「取引に際し必要適切な表示として何人も「涼やか」単独での使用を欲する」ものとは到底いえず、最高裁が述べる「独占適応性説」に従えば、本願商標の商標登録を否定する根拠は存在しない。
(2)職権による証拠調べの結果のうち、(14)の使用例は、請求人子会社の使用例であるし、当該使用態様は、説明的な文章としての使用であり、出所機能を有しないものと考えているから、請求人子会社の使用と、請求人による出所標示とした「涼やか」とは、お互いに何ら商標法上の影響を与えるものではない。
(3)仮に、請求人が、職権による証拠調べで示したような、文章中における他社の使用に対して権利行使をするようなことがあったとしても、その行為は商標法第26条第1項各号や、商標的使用の法理、商標機能論の法理によって適切に調整されるはずである。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性
(1)本願商標について
本願商標は、「涼やか」の文字を標準文字で表してなり、指定商品を第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」とするものである。
本願商標の「涼やか」の文字は、「すずしいさま」(広辞苑第6版)の意味を有する語として、広く親しまれているものと認められる。
(2)本願の指定商品を取り扱う業界における取引の実情
職権による調査によれば、別掲(1)ないし(21)のとおり、被服類を取り扱う業界においては、新聞記事、雑誌記事及びインターネット上のウェブサイトにおいて、例えば、通気性の良い生地や、冷感のある生地を用いることなどにより、着心地が涼しい商品が多く取り扱われていることが認められる。また、「涼やか」の語が、商品説明等において、「(通気性の良い生地や、冷感のある生地を用いることなどにより、着心地が)涼しいこと」ほどの意味合いを表す語として多数使用されていることが認められる。
そうすると、「涼やか」の語は、本願の指定商品中、第25類「被服,仮装用衣服,運動用特殊衣服」を取り扱う業界において、「(通気性の良い生地や、冷感のある生地を用いることなどにより、着心地が)涼しいこと」を表す語として使用され、かつ、取引者、需要者に認識されているというのが相当である。
(3)小括
以上からすれば、本願商標を上記指定商品に使用するときは、その商品が「(通気性の良い生地や、冷感のある生地を用いることなどにより、着心地が)涼しいこと」、すなわち、商品の品質を表したものと、需要者が認識するにとどまるものというのが相当である。
してみれば、本願商標は、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、本願商標がその商品等の特徴を直接的に表示するものであるのか、それとも間接的に表示しているものであるのか否かの判断をせずに、広辞苑第6版に掲載の語であることのみを直接的な根拠として、商標法第3条第1項第3号に該当すると断定するのは、妥当性を欠いた判断である旨、「涼やか」のみからなる語は、「(通気性の良い生地や、冷感のある生地を用いることなどにより、着心地が)涼しいこと」として「普通に用いられる方法」で表してなるものではなく、また、本願商標のように、形容動詞の語幹(詞)のみからなる商標は、商品等の特徴を直接的に表示するものではなく創意がある旨主張する。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである(最高裁 昭和53年(行ツ)第129号判決「ワイキキ事件」)。
この趣旨からすれば、商標登録出願にいう「商品の品質を普通に用いられる方法で表示する商標」に該当するというためには、必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する特徴を現実に品質としていることを要せず、需要者又は取引者によって、当該指定商品が当該商標の表示する特徴を品質としているであろうと一般に認識されることをもって足りるというべきである(商標法第3条第1項第3号にいう「商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」につき同旨、最高裁 昭和60年(行ツ)第68号及び第69号「ジョージア事件」)。
上記1(1)及び(2)のとおり、「涼やか」の語は、「すずしいさま」の意味を有する語として、広く親しまれているものであって、本願指定商品との関係においては、「涼やか」の語は、本願の指定商品中、第25類「被服,仮装用衣服,運動用特殊衣服」を取り扱う業界において、「(通気性の良い生地や、冷感のある生地を用いることなどにより、着心地が)涼しいこと」を表す語として使用され、かつ、取引者、需要者に認識されているというのが相当である。これらよりすれば、たとえ「涼やか」の語が形容動詞の語幹(詞)のみからなるものであったとしても、本願商標は、前記1(3)のとおり、上記指定商品に使用するときは、需要者又は取引者によって、その商品が「(通気性の良い生地や、冷感のある生地を用いることなどにより、着心地が)涼しいこと」、すなわち、商品の品質を表したものと、一般に認識されるというべきである。
(2)請求人は、原審及び当審において示された取引の実情いずれも、本願商標のように「涼やか」単体で用いられた使用態様のものではないから、取引に際し必要適切な表示として何人も「涼やか」単独での使用を欲するものとは到底いえず、最高裁が述べる「独占適応性説」に従えば、本願商標の商標登録を否定する根拠は存在しない旨、また、別掲(14)は、本願請求人子会社の使用例であるし、当該使用態様は、説明的な文章としての使用であるから、当該使用と、請求人による出所標示とした「涼やか」とは、お互いに何ら商標法上の影響を与えるものではない旨主張する。
しかしながら、たとえ「涼やか」の語が単独で使用されていないとしても、上記(1)のとおり、本願商標は、需要者又は取引者によって、「(通気性の良い生地や、冷感のある生地を用いることなどにより、着心地が)涼しいこと」、すなわち、商品の品質を表したものと、一般に認識されるというべきであるから、取引上何人もその使用を欲し独占適応性を欠くものと判断するのが相当である。
(3)請求人は、仮に請求人が、文章中における他社の使用に対して権利行使をするようなことがあったとしても、その行為は商標法第26条第1項各号や、商標的使用の法理、商標機能論の法理によって適切に調整されるはずである旨主張する。
しかしながら、商標法第26条第1項は、登録査定された商標権の効力について定めた規定であり、商標的使用や商標機能論の法理は、侵害訴訟における抗弁であるから、これらによって、商標登録の要件を定めた商標法第3条第1項第3号の該当性の判断に影響を与えるものではない。
(4)請求人は、本願商標と構成の性質が同様である過去の審決例や登録例が存在する旨主張するが、請求人の挙げる審決例等は、本願商標とは、構成文字や構成態様が異なるものであって、かつ、事案において個々に取引の実情が異なることから、単純に審決例との比較で採用できるものではないものであって、具体的事案の判断においては、過去の登録例等に拘束されることなく、当該商標登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様と取引の実情に応じて個別的に判断されるべきであるから、これらの事例の存在によって、上記1の認定判断が左右されるものではない。
(5)よって、請求人の主張は、いずれも採用できない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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