sokuhyo

Trademark Appeal Case

商標使用の同一性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2019−300402(T2019−300402/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4443570号商標の指定商品中,第30類「米」についての商標登録を取り消す。
審判費用は,被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4443570号商標(以下「本件商標」という。)は,「阿蘇白川水源」の文字を標準文字で表してなり,平成11年9月14日に登録出願,第30類「米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン」を指定商品として,同13年1月5日に設定登録されたものである。

そして,本件審判の請求の登録は,令和元年6月13日であり,当該登録前3年以内の期間である平成28年6月13日ないし令和元年6月12日までの間を,以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張

請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 請求の理由

本件商標は,その指定商品中「米」(以下「請求に係る指定商品」という。)について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁

(1)乙第1号証について

ア 被請求人は,乙第1号証には「白川水源の米」と表記されており,「白川水源」の後に続く「の米」,「のお米」の付記部分は指定商品「米」に対して社会通念上「白川水源」の商標と実質的に同一ということができると述べている。

加えて,「阿蘇」は産地表示であり,「白川水源の米」の表示の横にキャッチフレーズ的に「阿蘇のおいしい水でつくりました」の表示があるから実質的に本件商標と要部を同じくする同一商標ということができると述べている。

しかし,被請求人のかかる主張は誤りであり,以下,その誤りについて詳述する。

イ 「白川水源の米」の表記について

一般的に商標の解釈として「白川水源の米」とは,白川水源という場所,あるいは白川水源という水の名所で作られた米,或いはそのような場所で売られている米等の意味を有する。

このように同じ「米」であっても特にその米の出身地や米に関連する地を付記することにより単なる普通名称の「米」から「特定の生産地等を表す米」の意味を有した特有米の意義を有することになる。

例えば,全国に数ある祭りの名称でもある「山笠」についても「博多」という地名が付記されて「博多山笠」と表記されると,「山笠」祭の中でも伝統的な祭りである「博多山笠」という独特の観念を想起させるものになり,「山笠」と「博多山笠」とは観念的に非類似の商標となる。

本件商標の「阿蘇白川水源」と「白川水源の米」とは,このような実例からみても観念上,非類似の商標であると解釈することができ,阿蘇白川水源を使用したことにはならないし,需要者にとっても両者出所混同を生起する商標ではなく,全く別異の商標である。

更には,乙第1号証の米製品の商標は,袋中央に表記された「はくすい」の文字であり,傍記された「白川水源の米」はこの「はくすい」の商標の付された米が「白川水源で収穫された米」であることを説明表示したにすぎないものであり,仮に「白川水源の米」が商標として把握されるとしてもその観念は商標「はくすい」の米が「白川水源」の地で収穫された米を説明的に表記したものであり,単なる「白川水源」を「阿蘇」の文字と共に書した本件商標の「阿蘇白川水源」とは非類似であり,「白川水源の米」の表記は,「阿蘇白川水源」を使用したことにはならない。

加えて,乙第1号証では,「阿蘇」の文字は分離されており,かつ,キャッチフレーズ的にあるいは記述的に「阿蘇のおいしい水でつくりました」の表示の分離形態で表されているのみであり,「阿蘇白川水源」の使用形態の表示は全くない。

被請求人は,社会通念上,実質的に本件商標と要部を同じくすると述べているが,本件商標の使用説明は要部の同一性で使用実績となるものではなく,本件商標そのものが使用されたか否かを検証するものであり,乙第1号証の袋に表示された「白川水源の米」は「阿蘇白川水源」とは全く異なる観念の商標である。

したがって,「白川水源の米」の表記があっても本件商標を使用したことにはならない。

(2)乙第2号証について

同号証は南阿蘇村の物産館に関するホームページの写しであるが,このホームページに表記されているのは「大自然のお土産」の表題のもとに「名水百選白川水源」の表記と共に「南阿蘇のお米はくすい米」の表記がある。

ここでも「はくすい米」が南阿蘇村生産の米を表す商標であることは理解できるが,「阿蘇白川水源」の商標を使用表示した米商品は一切開示されていない。

(3)乙第3号証について

同号証には,やはり「南阿蘇のお米」としての商標として「はくすい米」が使用されていることがわかるが,乙第1号証と同様に「はくすい」の表記の米商品包装袋に「白川水源の米」の表記が見られる。

しかし,「阿蘇」の表記と一体となった使用形態にはなっていない。実際の乙第3号証の表示では米の産地の説明を表したものであることは前述のとおりであり,本件商標のみの表示の使用実績は見られない。

本件商標は,清い水源の白川水源が阿蘇にあることからこれらを一体として表示した水源の記述的説明の観念を有したものである。

乙第3号証のホームページの写し中,「阿蘇の肥沃な土地と白川水源のミネラル豊富な美味しい湧水を使い丹精込めて育て上げた,まじりっけなしの『白水米』。」との説明文がある。

すなわち,「白川水源の米」は南阿蘇の生産米の生産地である白川水源で作られた米であることを表しており,したがって「白川水源の米」は,かかる白川水源の地で生産され米としての特定の観念を表記した標章として,単なる湧水地を表す「阿蘇白川水源」とは非類似である。

(4)乙第4号証について

ア 乙第4号証の1

ここで表されている「おすすめ商品」の欄には,乙第1号証と同様の「白川水源の米」が表記されているにすぎず,本件商標の「白川水源」が使用されている実績はない。

なお,その他の記載表記にはミネラルウォーターとしての「白川水源」の表記が多く記載されているが,これらは商品が「米」ではなく「水」であり,「白川水源」の商標が水の名所いわゆる名水地の名称として周知著名であることを表している。

換言すれば,「白川水源」とは名水地として周知著名である地名と理解することができる。

だからこそ,被請求人の主張する「白川水源の米」の使用実績は,熊本阿蘇の白川水源で収穫された特有の米を指称するものとして名水地の「阿蘇白川水源」とは非類似の商標である。

イ 乙第4号証の2

乙第4号証の1と同様に「白川水源の米」の使用実績は本件商標とは異なっており,本件商標を使用したことにはならない。

(5)乙第5号証について

同号証も使用実績は「白川水源の米」であり,「阿蘇」と一体の使用実績はなく,本件商標の使用実績にならないことは,前述のとおりである。

(6)以上,述べたように本件商標は使用された実績はなく,3年間不使用であり取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 「物産館自然庵」での使用

(1)本件商標権者の第三セクターが経営する「物産館自然庵」では「はくすい米」の名称で米を販売している。

乙第1号証の「はくすい米」の袋表面には,中央に縦書きで「はくすい」の文字が配置され,その右側に「阿蘇のおいしい水でつくりました」「白川水源の米」の文字が表示されている。

(2)乙第1号証の袋の裏面には販売者表示として、「物産館 自然庵」「熊本県阿蘇郡南阿蘇村白川2096−1」の記載がある。

ここで「物産館自然庵」とは,乙第2号証の物産館「自然庵」ホームページ写しに示すように,農林水産省の「地域食品商業活性化施設整備事業」の補助を受けて建設された物産館であり,旧白水村時代より引き継いで,地域農産物や農産加工品の販売などを行っている。そして「物産館自然庵」は南阿蘇村の第三セクター「株式会社あそ望の郷みなみあそ」(以下「あそ望の郷みなみあそ」という。)が運営しており,「あそ望の郷みなみあそ」は本件商標権者から本件商標の使用許諾を得ている。本件商標権者の使用許諾証明書に関しては追って提出する。

(3)本件商標は「阿蘇白川水源」である。一方,使用権者により使用されている使用商標は米袋の右側に黒字に白抜きで「白川水源の米」と表記され,その右横には大きい文字で「阿蘇」と記載され,その下に小さい文字で「のおいしい水でつくりました。」と記載されている。

また,後述の物産館自然庵ショップの商品説明個所やおすすめ商品の欄には「白川水源のお米」との表記が用いられている。

使用商標は「白川水源」までは本件商標と同一であるが,「の米」,「のお米」の部分が付記されている。

前記使用商標の使用商品は,お米の「こしひかり」ですから,商品の普通名称「米」を「・・・・の米」又は「・・・・のお米」として付記しているものである。

したがって,「白川水源の米」,「白川水源のお米」は,指定商品「米」に対して社会通念上,「白川水源」の商標と実質的に同一ということができる。

更に,本件の使用商標では,「阿蘇」部分が「白川水源」と分離して表記されている。「白川水源」は名水百選(昭和の名水百選)の1つに選ばれており,所在地は,熊本県阿蘇郡南阿蘇村であって,他には存在しない。

そこで,「阿蘇」は「白川水源」の所在地を示すと共に,商品「米」の産地,販売地をも示すものとして,本件商標の構成中においても自他商品識別力は弱いものと考えられる。

本件の使用商標では,「阿蘇」の文字は「白川水源」の文字と分離して表記されているが,比較的近くに併記されていること,続く他の文字に比して大きく目立つように表記されていることから「白川水源」の文字と関連づけられる。

そこで,使用商標は,社会通念上,実質的に本件商標と要部を同じくする同一の商標ということができる。

以上から,本件商標は,商品「米」について使用されているものといえる。

(4)そして「物産館自然庵」では前記「はくすい米」を販売している。乙第3号証の物産館「自然庵」ホームページ写しでは「白川水源のお米はくすい米」として,乙第1号証の米袋に詰められた米の写真が掲載され,「お求めは物産館『自然庵』店頭,またはネットショップで」の記載がある。

そして「自然庵通販サイトはこちら」「楽天サイトはこちら」の記載があり,それぞれのサイトにリンクしている。

(5)前記「自然庵通販サイトはこちら」のリンク先は「物産館自然庵ショップ」のホームページとなっており,各種商品を購入することができる。

前記ホームページにはInternetArchiveによるウェブ魚拓があり,日付の特定ができる。

乙第4号証の1は2018年3月27日付のウェブ魚拓である。

前記魚拓では,おすすめ商品の欄1段目に「【新米】平成29年産白川水源のお米はくすい2kg(コシヒカリ)1,200円(内税)」「【新米】平成29年産白川水源のお米はくすい5kg(コシヒカリ)2,700円(内税)」「【新米】平成29年産白川水源のお米はくすい10kg(コシヒカリ)4,900円(内税)」の記載があり,乙第1号証の米袋に詰められた米の写真が掲載されている。

次に,乙第4号証の2は2018年12月28日付のウェブ魚拓である。

前記魚拓では,おすすめ商品の欄1段目に「【新米】平成30年産白川水源のお米はくすい2kg(コシヒカリ)1,200円(内税)」「【新米】平成30年産白川水源のお米はくすい5kg(コシヒカリ)2,700円(内税)」「【新米】平成30年産白川水源のお米はくすい10kg(コシヒカリ)4,900円(内税)」の記載があり,乙第1号証の米袋に詰められた米の写真が掲載されている。

(6)これらより,少なくとも2018年3月27日及び同年12月28日に,本件商標を使用した米が,「物産館自然庵ショップ」のホームページに販売のために表示されていたことがわかる。

2 ふるさと納税の御礼品としての使用

乙第1号証の米袋に詰められた米は南阿蘇村へのふるさと納税に対する御礼品としても使用されている。

ふるさと納税サイト「さとふる」の熊本県南阿蘇村のお礼品ページでは南阿蘇村の農産物等が御礼品として記載されているが,これの2018年11月18日付ウェブ魚拓(乙5)では,乙第1号証の米袋に詰められた米の写真と共に「はくすい米2kg×3袋」(3段目)「はくすい村炊飯セット」(8段目)「南阿蘇村産『はくすい米』こしひかり(白米)10kg×2袋」(9段目)の記載があり,本件商標を使用した米がふるさと納税の御礼品として頒布されていたことがわかる。

第4 審尋及び被請求人の回答

1 審尋

審判長は,令和2年8月18日付け審尋において,被請求人に対し,被請求人が提出した証拠によっては,被請求人が商標法第50条第2項に規定する本件商標の使用をしている事実を証明したものとは認めることができない旨の合議体の暫定的見解及び請求人提出の令和元年10月4日付け審判事件弁駁書に対する回答を求めた。

2 被請求人の回答

被請求人は,上記1の審尋に対し,令和2年9月25日付け上申書において,「本件商標権者からの使用許諾を示す書類の取り寄せに時間を要するため,2週間程度の猶予を頂きたい。」旨上申するが,その後応答していない。

第5 当審の判断

1 被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。

(1)米袋を写した写真(乙1)には,表面に「阿蘇のおいしい水でつくりました」「白川水源の米」「はくすい」「南阿蘇村産/こしひかり」「10kg」の記載があり,裏面の「名称」の欄に「精米」,「原料玄米」の欄に「単一原料米 熊本県南阿蘇村」の表示と「平成30年産こしひかり」のシールが貼られている。また,販売者の欄に「物産館 自然庵」とその住所及び電話番号が表示されている。

(2)南阿蘇村物産館「自然庵」のウェブサイト(乙2)には,「大自然のお土産」の項に「南阿蘇のお米 はくすい米」の表示がある。同ウェブサイト(乙3)には,「白川水源のお米 はくすい米」として,上記米袋を写した写真の表面と同一と認められる米袋の写真が掲載されている。

(3)「物産館 自然庵ショップ」のウェブサイト(乙4の1,平成30年3月27日にウェイバックマシンに記録保持)には,「【新米】平成29年産 白川水源のお米 はくすい2kg(5kg,10kg)」の記載と3枚(2kg,5kg,10kg)の米袋の写真が掲載されている。また,同ウェブサイト(乙4の2,平成30年12月28日にウェイバックマシンに記録保持)には,「【新米】平成30年産 白川水源のお米 はくすい2kg(5kg,10kg)」の記載と3枚(2kg,5kg,10kg)の米袋の写真が掲載されている。

2 判断

(1)使用者について

被請求人は「『白川水源の米』の文字が表示された『はくすい米』を販売する『物産館自然庵』は本件商標権者の第三セクター『あそ望の郷みなみあそ』が運営しており,『あそ望の郷みなみあそ』は本件商標権者から本件商標の使用許諾を得ている。」旨主張している。

しかしながら,上記第4の2のとおり,本件商標権者からの使用許諾書は提出されておらず,「物産館 自然庵」を「あそ望の郷みなみあそ」が運営している証拠も提出されていない。

そうすると,あそ望の郷みなみあそは,本件商標の通常使用権者であるとは認められないから,通常使用権者が本件商標を使用しているものとは認められない。

(2)使用商品及び使用時期について

被請求人が本件商標の通常使用権者が本件商標を使用しているとする商品は,上記1(1)のとおり,商品写真には「白川水源の米」「精米」の文字があるから,本件審判請求に係る商品「米」であると認められる。また,「物産館 自然庵ショップ」のウェブサイトに商品「米」が掲載された平成30年3月27日及び同年12月28日は要証期間内である。

(3)本件商標と使用商標との社会通念上同一性について

ア 被請求人は,米袋(乙1)に表示された「白川水源の米」及び物産館自然庵ショップのウェブサイト(乙4の1・2)に掲載された商品「米」の説明欄の「白川水源のお米」の記載があり,また,本件の使用商標では,「阿蘇」の部分は「白川水源」の文字と分離して表記されているが,比較的近くに併記されていること,続く他の文字に比して大きく目立つように表記されているから「白川水源」の文字と関連付けられるから,使用商標は,社会通念上,実質的に本件商標と要部を同じくする同一の商標であると主張する。

イ 本件商標は,「阿蘇白川水源」の文字からなるところ,上記の米袋及びウェブサイトに表示された「阿蘇のおいしい水でつくりました」,「白川水源の米」及び「白川水源のお米」(以下「使用商標」という。)とは,「白川水源」の文字は共通するとしても,「阿蘇」の文字は,その下に文章が記載されていることから「白川水源の米」の文字とは独立して看取されるため「阿蘇白川水源の米」と一体に把握することができず,書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標ということはできない。

したがって,本件商標と使用商標とは,社会通念上同一の商標ということはできない。

(4)小括

以上のとおり,「あそ望の郷みなみあそ」は,本件商標の通常使用権者であると認めることはできない。

また,本件商標と使用商標とは,社会通念上同一の商標ということはできない。

したがって,被請求人が提出した証拠によっては,要証期間内に,本件商標の通常使用権者が,本件審判の請求に係る指定商品について本件商標の使用したことを認めるに足る事実を見いだせない。

3 まとめ

以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において,商標権者,専用使用権者及び通常使用権者のいずれかが,本件審判の請求に係る指定商品についての本件商標を使用していた事実を証明したものとは認められない。

また,被請求人は,本件商標を請求に係る指定商品に使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。

したがって,本件商標の登録は,その指定商品中の「結論掲記の商品」について,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。