Trademark Appeal Case
結合商標の類否と要部抽出
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2020−3234(T2020−3234/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は,「少林寺拳法武徳会」の文字を標準文字で表してなり,第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育・文化・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く)」を指定役務として,平成30年3月18日に登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由
原査定は,以下の1及び2のとおり,認定,判断し,本願を拒絶したものである。
1 商標法第4条第1項第15号について
本願商標構成中の「少林寺拳法」は,「宗道臣」が1947年(昭和22年)に香川県多度津町で創始した武術の名称であり,「少林寺拳法グループ」が,本願出願前より,武術の教授や普及等の役務について使用をしてきた結果,同グループに係る商標として,我が国の需要者に広く認識されるようになったものであり,出願人が本願商標をその指定役務について使用をするときには,これが同グループの業務に係る役務であるかのように,役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるから,商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 商標法第4条第1項第11号について
本願商標は,以下の登録商標と同一又は類似の商標であって,その登録商標に係る指定役務と同一又は類似の役務について使用をするものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
なお,以下の登録商標は,いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第3046613号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:少林寺拳法
登録出願日:平成4年5月31日
設定登録日:平成7年5月31日
最新更新登録日:平成27年5月26日
指定役務:技芸・スポ−ツ又は知識の教授,図書及び記録の供覧,運動施設の提供,美術品の展示,図書の貸与,娯楽施設の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏
(2)登録第3046614号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成: Shorinji Kempo
登録出願日:平成4年5月31日
設定登録日:平成7年5月31日
最新更新登録日:平成27年6月2日
指定役務:技芸・スポ−ツ又は知識の教授,図書及び記録の供覧,運動施設の提供,美術品の展示,図書の貸与,娯楽施設の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏
以下,引用商標1と引用商標2をまとめて「引用商標」という。
第3 当審における証拠調べ通知
本願商標が商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,別掲に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対して,令和2年10月29日付け証拠調べ通知書によって通知し,期間を指定して,これに対する意見を求めた。
第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要旨
1 引用商標は平成7年(1995年)に登録されたものであり,証拠調べ通知書に記載された証拠は,1件を除き,すべて1995年以降に作成されたものである。
2 1995年以降,「少林寺拳法」の名称を使用する存在が,引用商標の権利者により排除されてきたことを,容易に理解できる。
3 引用商標が登録された1995年以降に作成されたものは,引用商標の権利者又は関係者が発信した情報である。
4 引用商標の権利者の主張「創始者宗道臣が独自に命名した造語商標である」は虚偽であり,引用商標が登録されてから,記載が変更された引用商標の権利者関係団体発刊の書籍が複数ある。
第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)商標の類否について
商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最三小判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁参照)。
また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合には,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されないが,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるものと解される(最一小判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁,最二小判平成5年9月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月8日集民228号561頁参照)。
(2)引用商標について
ア 引用商標1について
引用商標1は,「少林寺拳法」の文字を横書きしてなるところ,令和2年10月29日付け証拠調べ通知に挙げた情報からすれば,「少林寺拳法」について以下の事実が認められる。
(ア)現在行われている「少林寺拳法」という名称の武術は,1947(昭和22)年に宗道臣により開始され,現在では,一般社団法人SHORINJI KEMPO UNITY,一般財団法人少林寺拳法連盟(以下「少林寺拳法連盟」という。),金剛禅総本山少林寺,学校法人禅林学園,禅林学園高等学校及び少林寺拳法世界連合(WSKO)(以下,これらの団体をまとめていうときは,「少林寺拳法グループ」という。)が武術の指導や普及等を行っている。また,その本部は香川県多度津町にある。
(イ)「はじめよう!少林寺拳法」(2009年10月30日第1版第2刷,株式会社ベースボール・マガジン社発行)によれば,2009年5月の時点で,少林寺拳法を学ぶ者は世界34か国に広まり,170万人の人が拳士として登録していた。また,「少林寺拳法公式サイト」によれば,現在において,全国各地の「道院」,「スポーツ少年団」,「健康クラブ」等が計2,800以上存在し,「少林寺拳法世界連合」のウェブサイトによれば,日本を含めた世界38の国に支部が存在する。
(ウ)少林寺拳法連盟のウェブサイトには,各都道府県の連盟に加え,実業団,自衛隊,高等学校,中学校等の連盟が下部組織として記載されており,新聞記事情報や上記「はじめよう!少林寺拳法」によれば,大人から子供まで幅広い世代,多様な職業に就く者が加入している。
(エ)新聞記事情報及びインターネット情報によれば,毎年,少林寺拳法連盟が主催する,少林寺拳法の全国大会や,全国大会に出場するための地方予選大会が全国各地で継続的に開催されており,2017年には,少林寺拳法世界連合が主催する少林寺拳法の世界大会が開催された。
(オ)大会以外にも,少林寺拳法連盟が主催又は参加する武術の普及啓発のイベントが全国各地で行われている。
(カ)2017年7月16日には,少林寺拳法連盟による少林寺拳法創始70周年等を記念した東京大会,翌年2月24日には,少林寺拳法グループによる「少林寺拳法創始70周年記念レセプション」が開催され,各業界からの参加者があった。また,新聞記事情報には,1987年,1997年,2007年が,創始(設立)から,それぞれ40周年,50周年,60周年であったことが記録されている。
以上よりすれば,「少林寺拳法」の文字は,宗道臣及び同氏から継承した少林寺拳法グループによる長年による継続的な使用の結果,少林寺拳法グループに係る武術の名称として,本願商標の登録出願の時点において,「技芸・スポーツ又は知識の教授」を含む本願指定役務の需要者の間に広く認識されていたというべきであり,その周知著名性は,現在においても継続しているというのが相当である。
そうすると,引用商標1からは,その構成文字に相応して「ショウリンジケンポウ」の称呼が生じると共に,「少林寺拳法グループに係る武術の名称としての『少林寺拳法』」の観念が生じる。
イ 引用商標2について
引用商標2は,「Shorinji Kempo」の文字を横書きしてなるところ,その構成文字に相応して,「ショウリンジケンポウ」の称呼が生じる。そして,辞書等に載録されている「ショウリンジケンポウ」と読む語が「少林寺拳法」以外にないこと,上記のとおり,「少林寺拳法」が少林寺拳法グループに係る武術の名称として周知著名であることからすれば,引用商標2からは「少林寺拳法グループに係る武術の名称としての『少林寺拳法』」の観念が生じる。
(3)本願商標について
本願商標は,「少林寺拳法武徳会」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中,「少林寺拳法」の文字部分は,上記(2)のとおり,少林寺拳法グループに係る武術の名称として周知著名な商標と同一の構成文字よりなるものである。
そうすると,本願商標の構成中,「少林寺拳法」の文字部分が,本願商標に接する取引者,需要者に対し,役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから,本願商標は,当該「少林寺拳法」の文字部分を要部として抽出し,他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
してみれば,本願商標は,その構成全体から生じる「ショウリンジケンポウブトクカイ」の称呼の他に,「少林寺拳法」の文字部分に相応して「ショウリンジケンポウ」の称呼をも生じると共に,「少林寺拳法グループに係る武術の名称としての『少林寺拳法』」の観念を生じるというべきである。
(4)本願商標と引用商標の類否
本願商標と引用商標との類否について検討するに,本願商標と引用商標は,外観については,それぞれ上記(2)及び(3)のとおりであるから,構成全体としてみたときには,差異を有するものであるが,本願商標の要部である「少林寺拳法」の文字と引用商標1との比較においては,両者は「少林寺拳法」の構成文字を共通にしており,外観上,類似するものである。また,本願商標の要部である「少林寺拳法」の文字と引用商標2との比較においては, 両者の差異は漢字とローマ字の文字種の相違にすぎず,文字種を相互に変換して使用することは商取引において一般に行われることからすると,かかる差異は,両商標が別異のものであると認識させるほどの強い印象を与えるものではない。
次に,称呼においては,本願商標全体から生じる「ショウリンジケンポウブトクカイ」の称呼と,引用商標から生じる「ショウリンジケンポウ」の称呼とは,「ブトクカイ」の音の有無において差異を有するものの,本願商標の要部である「少林寺拳法」の文字部分から生じる「ショウリンジケンポウ」の称呼と,引用商標から生じる「ショウリンジケンポウ」の称呼は,同一である。
さらに,観念においては,本願商標と引用商標は,いずれも「少林寺拳法グループに係る武術の名称としての『少林寺拳法』」の観念を生ずるものであるから,観念も同一である。
そうすると,本願商標と引用商標とは,その構成全体の比較においては異なるものであることを考慮したとしても,その称呼及び観念を同一にするものであり,これらの外観,称呼及び観念によって,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は,互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
(5)本願商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否
本願商標の指定役務中,「技芸・スポーツ又は知識の教授,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与」は,引用商標の指定役務中,「技芸・スポ−ツ又は知識の教授,図書及び記録の供覧,図書の貸与」と同一又は類似の役務である。
(6)小括
以上のとおり,本願商標は,引用商標と類似する商標であって,引用商標の指定役務と同一又は類似の役務について使用するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)商標法第4条第1項第15号の趣旨について
商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」は,当該商標をその指定商品等に使用したときに,当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ,すなわち,いわゆる広義の混同を生ずるおそれがある商標をも包含すると解される。
また,同号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきでものである(最三小判平成11年7月11日民集54巻6号1848頁参照)。
(2)引用商標の周知著名性について
上記1(2)のとおり,引用商標は,宗道臣が開始し普及させ,同氏から継承した少林寺拳法グループに係る武術の名称として,本願指定役務の需要者の間に広く認識されているものである。
(3)本願商標と引用商標の類似性の程度について
上記1(4)のとおり,本願商標と引用商標は類似するものであるから,類似性の程度は高いものである。
(4)本願商標の指定役務と少林寺拳法グループの業務に係る役務との間の関連性及び需要者の共通性について
本願商標は,その指定役務中,「技芸・スポーツ又は知識の教授,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与」について,上述のとおり,商標法第4条第1項第11号に該当するものであり,同第15号は,「第十号から前号までに掲げるものを除く。」と規定していることから,その余の指定役務である「セミナーの企画・運営又は開催,書籍の制作,教育・文化・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く)」(以下「15号対象役務」ということがある。)と少林寺拳法グループの業務に係る役務との間の関連性及び需要者の共通性について検討する。
「少林寺拳法」は,少林寺拳法グループが,武術を主とした技芸・スポーツ又は知識の教授について長年,継続的に使用をしてきた結果,同グループに係る武術の名称として需要者の間に広く認識されるに至ったものであるところ,武術を主とした技芸・スポーツ又は知識の教授の活動に関連して,セミナーの企画や書籍の発行,ビデオの制作が行われる場合が少なくないことから,同グループの業務に係る役務と15号対象役務とは関連性が高いといえ,需要者も共通するものといえる。
(5)小括
上記(2)ないし(4)のとおり,引用商標は,少林寺拳法グループに係る武術の名称を表すものとして,登録出願時及び現在において,武術を主とした技芸・スポーツ又は知識の教授に係る需要者の間に広く認識されているものと認められ,同グループに係る業務と本願商標の15号対象役務とは関連性を有し,需要者を共通にするものである。そして,本願商標は,引用商標と高い類似性を有するものである。
そうすると,本願商標を請求人がその指定役務中,「セミナーの企画・運営又は開催,書籍の制作,教育・文化・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く)」について使用をするときは,これに接する取引者,需要者は,引用商標を想起,連想し,その役務が,あたかも少林寺拳法グループ又は同グループと経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,昭和初期の書物等に「少林寺拳法」の記載があること等を挙げ,「少林寺拳法」は宗道臣が創始したことは虚偽である旨主張する。
しかしながら,商標法第4条第1項第11号は,先願に係る他人の登録商標と同一又は類似しているか否か等,同第15号は,出願された商標が他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあるか否かを検討すべきものであり,それぞれの判断時期を基準に各号に該当すべきか否かを検討すべきものである。そして,同第11号の判断においては,査定(審決)時に,同第15号の判断においては,登録出願時及び査定(審決)時を基準に,その該当性を判断すべきものであり,ある名称を誰が最初に使用したかを過去に遡って検証しなければならないものではないというべきである。
また,現在行われている「少林寺拳法」の名称を用いた武術が,宗道臣によって指導が開始され,同氏によって広められたものであることは各証拠から明らかであり,また,同氏及び同氏から承継した少林寺拳法グループが,長年にわたり,継続的に使用した結果,本願の登録出願時及び現在において,少林寺拳法グループに係る武術の名称として,需要者の間に広く認識されるに至ったと認めることについて疑義が生じるものでもない。
(2)請求人は,辞書・事典の出版社に問い合わせた結果,宗道臣が創始したとする記載の根拠について,明確な回答を得られなかった旨主張する。
しかしながら,辞書・辞典に係る情報は長年積み上げられてきたものであり,現在の担当者が経緯や根拠を明確に回答できないとしても,そのことをもって,直ちに不正確な情報と捉えるべきということはできない。また,請求人による問合せ後に,出版各社が掲載を取りやめたという事実は見当たらないことからすれば,むしろ,出版各社は誤りがあったとの認識には至っていないと考えることができる。
また,広辞苑が第六版から第七版に改訂された際に,「少林拳」の項から,「日本では宗道臣の創始した少林寺拳法が行われている」旨の記載が削除されたとしても,新設された「少林寺拳法」の項には,「本部,香川県多度津町」の記載がある。また,書籍「香川県の歴史散歩」(2013年12月20日,株式会社山川出版社発行)や「郷土資料事典37 香川県」(1998年7月1日,株式会社人文社発行)においても,「少林寺拳法」を実施している団体の本部が香川県多度津町にあることが記載されている。そして,当該地域に本部を有し,「少林寺拳法」の名称を使用している団体は,少林寺拳法グループ以外に存在を確認することはできない。そうすると,「少林寺拳法」の名称の武術を行う団体等の存在が少林寺拳法グループ以外に認められないばかりか,むしろ少林寺拳法グループが行う武術の名称として固有のものと認め得る情報とみるべきであるから,上記広辞苑の改訂や,他の辞書・事典の出版社の現在の担当者が掲載の経緯や根拠を明確に回答できないことが,直ちに「少林寺拳法」が少林寺拳法グループに係る武術の名称として需要者の間に広く認識されていると認定することを妨げるべき事情とはいい難い。
なお,例えば,「少林寺拳法世界連合」の文字よりなる登録第1962196号商標については,1984年12月18日に登録出願,1987年6月16日に設定登録がなされ,設定登録時の権利者は「宗教法人金剛禅総本山少林寺」であったが,その後,権利者は,2003年12月19日に「有限責任中間法人少林寺拳法知財保護法人」に移転し,2007年1月17日に「有限責任中間法人SHORINJI KEMPO UNITY」に表示の変更がなされ,2017年5月19日に現在の権利者名である「一般社団法人SHORINJI KEMPO UNITY」に表示の変更がされている。また,「少林寺拳法」の文字よりなる登録第2097917号商標については,1985年10月7日に登録出願,1988年11月30日に設定登録がなされ,設定登録時の権利者は「宗教法人金剛禅総本山少林寺」であったが,その後,権利者は,2003年12月19日に「有限責任中間法人少林寺拳法知財保護法人」に移転,2009年2月10日に現在の権利者名である「一般社団法人SHORINJI KEMPO UNITY」に表示の変更がされている。このように,2003年以前に「宗教法人金剛禅総本山少林寺」を権利者として設定登録がなされた商標登録は,その後,最終的に「一般社団法人SHORINJI KEMPO UNITY」へと権利移転されており,この経緯は,少林寺拳法グループや地方支部等のウェブサイトにおける少林寺拳法グループの沿革とも符合していることからしても,「少林寺拳法」の名称が少林寺拳法グループによって継続的に使用されてきたことを示すことについて,不自然な点は見当たらないというべきである。
(3)請求人は,引用商標が登録されてから,記載が変更された引用商標の権利者関係団体発刊の書籍が複数あることから,当該団体の前代表者を招へいの上,書き換えられた書籍の検証をすべき旨主張する。
しかしながら,上記(1)のとおり,本件審理は,本願商標の登録の可否を検討すべきものであって,武術の由来や歴史を検証すべきものではなく,また,たとえ,書籍の記載内容の検証をしたとしても,「少林寺拳法」の周知著名性,本願商標と引用商標の類似性の程度,他人の業務との混同のおそれの有無等の判断に影響するとはいい難いものである。
(4)請求人は,1995年以降に作成された情報は,引用商標の権利者又は関係者が発信したものである旨主張する。
しかしながら,例えば,大会の参加人数が,少林寺拳法グループによって発表されたものであったとしても,他人の商標登録を阻むことを念頭に虚偽の発表をしたものとは考え難く,また,書籍等における写真において実際に相当数の人数が大会に参加していることが確認できることからすれば,不自然な参加人数の発表がなされたものとはいえず,その他,公表された情報に疑義があると見るべき特段の事情は見当たらない。
(5)請求人は,昭和60年の最高裁判決で,「少林寺拳法」の名称は固有名称でないことが認められた旨主張する。
しかしながら,原審である昭和55年3月18日大阪地方裁判所(昭和48年(ワ)1491号)判決では,「特定の事業表示として十分に自他識別力を備えている」,「原告の前記『少林寺拳法』または『少林寺拳法道院』なる事業表示を普通名称であるという被告の主張は採用することができない。」と認定しており,その後の控訴審,上告審で当該認定が修正された形跡は見当たらない。原審判決は,その上で,原告の表示の周知性確立前の事情等を勘案して被告による継続的使用を認めたにすぎないものである。
(6)請求人は,平成26年(2014年)2月17日に英国最高裁より公表された判決文において,少林寺拳法は普通名称であると判断された旨主張する。
しかしながら,請求人提出の資料16によれば「England and Wales High Court(イングランド・ウェールズ高等法院)」において,「SHORINJI KENPO」の文字に言及した判決がなされたことが確認できるものの,本願商標が商標法第4条第1項第第11号又は同第15号に該当するか否かは,我が国における事情を基に判断すべきものであるから,英国における判決の内容によって,直ちに本願商標についての判断が拘束されるべきものではない。
(7)請求人は,「合気道」,「柔道」,「空手」等の武術の名称を含む商標が,異なる権利者によって多数登録されているから,本願商標も同様に登録すべき旨主張する。
しかしながら,本願商標は,少林寺拳法グループに係る武術の名称として需要者の間に広く認識された「少林寺拳法」の文字を含む商標であり,他の武術の一般名称というべき「合気道」,「柔道」,「空手」等の武術の名称を含む商標とは事情が異なるというべきである。
(8)したがって,請求人の主張は,いずれも採用することはできない。
4 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
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