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Trademark Appeal Case

ヒートの記述性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2020−900116(T2020−900116/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第6223777号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第6223777号商標(以下「本件商標」という。)は、「ヒート」の文字を標準文字で表してなり、平成30年2月2日に登録出願、第9類、第11類及び第34類に属する別掲のとおりの商品を指定商品として、令和2年1月8日に登録の審決がなされ、同年2月7日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同項第6号並びに同法第4条第1項第16号に違反してなされたものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第24号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。

1 商標法第3条第1項第3号について

(1)本件商標「ヒート」について

本件商標は、片仮名「ヒート」を標準文字で表してなり、称呼「ヒート」のみを生じ、「熱。熱する。」等の意味を有する「HEAT」に通じる、我が国で広く知られた外来語である。

また、本件商標「ヒート」は多くの場合、欧文字「HEAT」とともに用いられ、業界を問わず、「熱。熱する。」を想起させる普逼的な語であり、我が国では、多種多様な物品や現象に日常的に使用されている極めて一般的な語である。

「ヒート」及び「HEAT」は、どの辞書・事典等においても、名詞「熱」又は動詞「熱する」が冒頭に掲載されている。

さらに、片仮名「ヒート」と欧文字「HEAT」は、互いを意味するものとしても記載されている。

すなわち、本件商標「ヒート」は、「熱。熱する。」の意味合いを観念させ、英単語「HEAT」を容易に想到させる語であることが明らかである(甲2)。

(2)本件商標の指定商品について

本件商標の指定商品(以下「本件指定商品」又は「申立てに係る指定商品」という。)は、ほとんどの商品が、「加熱式たばこ」に関連する商品である。なお、第11類「蒸気発生装置」は、「加熱式たばこ」に使用する機器を包含する商品である。

ここで、「加熱式たばこ」とは、たばこ(たばこ葉)を「燃焼する」ことなく、「加熱する(熱する)」ことで、ニコチン等の有害性成分の発生を抑える、新型のたばこ製品であり(甲3〜甲5)、我が国のたばこ市場全体に占める加熱式たばこ製品の割合は2割を超える(甲6)。

加熱式たばこに必要なものは、たばことたばこを熱する加熱器であり、需要者は、たばこを加熱器に挿入し、加熱器によって熱せられたたばこを吸う。従来のたばこと大きく異なる点は、従来のたばこの場合、火によって600度ないし900度で燃焼されるのに対し、加熱式たばこの場合、電気によって300ないし350度で加熱される点である。たばこ葉は、通常600度で燃焼が始まり、問題とされる有害性成分は、燃焼するときに起こる不完全燃焼が原因で生成される。しかし、加熱式たばこでは、たばこ葉が燃焼温度に達しないため、不完全燃焼も起きず、これにより発生する有害性成分の量が抑えられる(甲7)。

たばこを熱する加熱器(以下「たばこヒーター」という。)は、「加熱式たばこ」、「加熱式たばこ本体」、「ホルダー」、「デバイス」、「スタタ」、「たばこ補助器具」、「たばこ補助器」、「加熱式電子たばこ」、「加熱式たばこ機器」及び「たばこヒーター」等、市場ではいくつかの呼び方が使われており、たばこヒーターに挿入するたばこ(以下「たばこスティック」という。)も、「たばこ」、「スティック」、「たばこスティック」、「紙巻たばこ」及び「ヒートスティック」等、様々な呼び方がある。

たばこヒーターには、それ専用のたばこスティックしか使えない商品、従来のたばこ、すなわち多様なブランドの紙巻たばこが使える商品、さらに、たばこ葉そのものを直接機器に挿入して使用する商品があり、たばこヒーターの中には、熱と共に蒸気も発生させる装置もある。

なお、本件指定商品に含まれる「電子たばこ」は、たばこ葉を使わず、代わりに「リキッド」と呼ばれる液体を電気的に熱し、発生した蒸気を吸うたばこ製品である。電気的に熱を発生する加熱器を使用する点で加熱式たばこと共通し、加熱式たばこに類似する商品であるため、以下、加熱式たばこに関連する商品に電子たばこ及びこれに関連する商品を含めて論じる。

(3)「ヒート」は、加熱式たばこの品質及び使用方法を直接的、具体的に表すこと

本件商標「ヒート」は、「熱。加熱する。」等の意味を有し、我が国で広く使用されている一般的かつ普遍的な語である。

そして、本件指定商品に係る「加熱式たばこ」の最大の特徴は、たばこスティックを「(燃焼するのではなく)加熱して」使用する点にある。

つまり、「加熱(ヒート)」は、商品の使用方法であると同時に、商品の最も特徴的な品質であるといえる。

したがって、本件商標「ヒート」は、加熱式たばこの品質及び使用方法を直接的に表す標章(商標法第3条第1項第3号)であるといわざるを得ない。

(4)「ヒート」がたばこ市場で一般的に使用されていること

「ヒート」が、加熱式たばこの品質及び使用方法を直接的、具体的に表示するものであり、市場において極めて頻繁に使用されている事実がある(甲8〜甲22)。

本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)のウェブサイトにおいても、「HEAT」が、「熱。加熱する。」との意味で頻繁に用いられ、本件商標権者の広告記事において、30回近く「heat」が用いられていることから、本件商標権者自身も、「HEAT」を識別力のない記述的な語として認識していることは明らかである(甲23)。

(5)本件商標権者の商標「HEETS (ヒーツ)」

本件商標権者は、自己のたばこヒーター専用のたばこスティックに係るプランド「HEETS」を展開している(甲24)。

本件商標「ヒート」は、この「HEETS」ブランドとの関係で出願されたのではないかと、申立人は考えている。

しかし、欧文字「HEETS」から生じる自然な称呼は、「ヒーツ」又は「ヘーツ」であり、「ヒート」の称呼が生じることはない。

さらに、片仮名「ヒーツ」は、欧文字「HEETS」と同様に辞書にない造語であり、特定の観念を生じない。

したがって、加熱式たばこについて片仮名「ヒーツ」が商標登録されることは、全く問題がないが、片仮名「ヒート」は、「熱。加熱する。」の意味を生じさせ、加熱式たばこの品質、使用方法を具体的・直接的に表示するものであるから、何人も使用を欲するものであり、これを一私人に登録させ、独占的に使用させることは断じて許されない。

(6)小括

以上説明したとおり、「ヒート」は、英語「HEAT」に通じ、普通名詞の「熱」又は動詞の「熱する」を観念させるから、たばこスティックを熱することに最大の特徴を有する加熱式たばこ関連商品の「品質」及び「使用の方法」を直接的かつ具体的に表すものといわざるを得ない。

そして、たばこ市場において、加熱式たばこに関連する商品名又はその広告において、「ヒート」及び「HEAT」が極めて頻繁に使用されている。

さらに、世界のたばこ業界において、「HEAT」は必要不可欠な普通名詞・動詞として極めて頻繁に用いられる語であり、本件商標権者自身もこれを記述的な語と認識して使用している。

したがって、本件商標「ヒート」を本件指定商品について使用しても、自他商品を識別するはたらきを一切発揮することはできず、需要者、取引者の間で、加熱式たばこに関連する商品の品質及びその使用方法を想起させるに留まることは明らかである。

また、加熱式のたばこ製品を流通過程、取引過程に置く場合には、どの事業者も「ヒート」といつ言葉は使用する必要があり、また将来的にも必ず使用する必要が出てくる。

仮に一私人に「ヒート」という言葉の独占を認めると、競業他社は「ヒート」という言葉を加熱式タバコに自由に使用することができず、もしくは、使用する都度、弁護士や弁理士等の専門家に法的意見を聞かなければならなくなるなど、著しく不合理かつ不公平な状態が作り出されることになる。

このような状況は、許容できない深刻な障害を生じさせるものであるから、商標登録させるべきものではない。

以上のとおり、本件商標は、本件指定商品の品質又は使用の方法を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(商標法第3条第1項第3号)に該当するものであることは明らかである。

2 商標法第3条第1項第6号について

上記のとおり、本件商標「ヒート」は「熱、加熱する」の意味を有し、「加熱式」であることを最大限の特徴とする「加熱式たばこ」との関係で、記述的で識別力がないだけでなく、「加熱式たばこ」の名称そのものと密接な語であり、さらに、加熱式たばこに関する技術や部品等においても必要不可欠な語である。

したがって、本件商標「ヒート」を、本件指定商品のうち加熱式たばこに関連する商品に使用しても、需要者、取引者が、何人かの業務にかかる商品であることを認識することができない商標(商標法第3条第1項第6号)に該当するものであることは明らかである。

3 商標法第4条第1項第16号について

本件指定商品には、加熱式たばこに関連しない商品、例えば葉巻たばこ、マッチ等も含まれ、これらの商品について本件商標「ヒート」が使用されるときは、加熱式たばこに関連する商品であるとの誤認を生じるおそれがある。

したがって、本件商標は、本件指定商品のうち加熱式たばこに関連しない商品との関係で、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるため、商標法第4条第1項第16号に該当する。

4 結論

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号及び同項第6号並びに同法第4条第1項第16号に違反してなされたものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。

第4 当審の判断

1 商標法第3条第1項第3号該当性について

(1)本件商標について

本件商標は、上記第1のとおり、「ヒート」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、「熱。熱気。」等の意味を有する英語「HEAT」(「広辞苑第7版」株式会社岩波書店)の表音を片仮名で表示したものと容易に認識されるものである。

(2)「ヒート」の文字の使用について

申立人の提出にかかる甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。

ア 「ヒート」の文字は、「熱。熱気。」の意味を有する語であって、英語「HEAT(heat)」は、「熱さ,暑さ,熱」、「熱する,温める」等の意味を有する語である(甲2)。

イ 本件指定商品は、そのほとんどが、「加熱式たばこ」に関連する商品であり、加熱式たばこは、葉たばこを電気で加熱させて出た蒸気を吸う仕組みであって、ニコチン等の有害性成分の発生を抑える、新型のたばこ製品であり、我が国のたばこ市場の2割を占めている(甲3〜甲7)。

ウ 「ヒート」が、たばこ市場で一般的に使用されていること

(ア)楽天市場(ECサイト)において、商品名を「C−Tec\Heat」、「Heat 1.0」、「Heat 2.0」及び「Heat ONE」とする「たばこヒーター」が掲載されている(甲8〜甲10、甲12)。

(イ)株式会社Usefulのウェブサイトにおいて、商品名を「JOINT TECH HEAT」とするたばこヒーターが掲載されている(甲11)。

(ウ)楽天市場(ECサイト)において、たばこの販売広告ページの検索キーワードの一つとして、「ヒート」と記載されている(甲13、甲14)。

(エ)PayPayモール(ECサイト)において、たばこヒーターの商品説明文中に「紙巻たばこを熱(ヒート)し、」と記載されている(甲15)。

(オ)マイナビニュース(2019年4月16日付)の広告記事において、たばこのヒーターに係る商品の説明に関し「紙巻たばこを加熱(ヒート)しながら」と記載されている(甲16)。

(カ)楽天市場(ECサイト)において、たばこヒーターの商品説明文中に「紙巻タバコを熱(ヒート) しながら」と記載されている(甲17)。

(キ)加熱式たばこに用いるたばこスティックは、「ヒートスティック」、「ヒートスティック型たばこ」等と表され、「ヒートスティック」のうち「スティック」部分は、加熱式たばこに挿入する細長い棒状のたばこを指すものとして頻繁に用いられる「スティック」や「たばこスティック」等に由来し、「ヒート」部分は、加熱式たばこの「加熱」あるいは「加熱式たばこ」そのものを指している(甲14、甲18)。

(ク)加熱式たばこ(非燃焼加熱たばこ)は、「ヒート・ノット・バーン」、「Heat−not−Burn」及び「Heated tabaco」等と表現される(甲19、甲20、甲22)。

(ケ)加熱式たばこの普通名称「Heat−not−burn」(189件)又は「Heated tobaco」(36件)の一部として用いられている「HEAT」が計225件であり、残る95件の「HEAT」は、「熱,熱する」等の普通名詞又は動詞として用いられている(甲22)。

(3)判断

上記(2)によれば、「ヒート」の文字は、本件指定商品中の「加熱式たばこ」との関係において、「熱」や「加熱」の意味合いでもって使用されていることは確認できるものの、本件商標の登録査定時に、使用されていた例は、決して多いとはいえないものである。

また、「加熱式たばこ」が、「Heat−not−Burn」(ヒート・ノット・バーン)や「Heated tobaco」等と表現されているとしても、「ヒート」の文字のみが、「加熱式たばこ」、あるいは「加熱式たばこ」の具体的な品質や使用方法を表すものとして、広く一般に使用されている事実は見いだせない。

そうすると、本件商標が、「ヒート」の文字を標準文字で表してなり、当該文字が、「熱。熱気。」等の意味を有する英語「HEAT」の表音を片仮名で表示したものと容易に認識されるものであるとしても、「ヒート」の文字が、取引者又は需要者に本件指定商品の品質や使用方法等を表すものとして一般に認識されていると認めるに足る事実も見いだせない。

また、当審において職権をもって調査するも、「ヒート」の文字が、「加熱式たばこ」を含む本件指定商品との関係において、これらの品質や使用方法等を表示するものとして、実際に使用されている事実は発見できなかった。

してみれば、本件商標は、登録査定時において、本件指定商品の品質や使用方法等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえないと判断するのが相当である。

その他に、本件商標が、本件指定商品との関係において、商品の品質等を表示すると判断するべき事情は見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。

2 商標法第3条第1項第6号該当性について

本件商標は、上記1のとおり、本件商標の登録査定時において、本件指定商品の品質や使用方法等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえず、また、本件指定商品について、当審において職権をもって調査するも、「ヒート」の文字が、本件指定商品の宣伝広告や企業理念、経営方針等を表示する標章として使用されているという事実も発見できない。

そうすると、本件商標は、その登録査定時において、自他商品を識別する機能を有するものであり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいえないと判断するのが相当である。

その他に、本件商標が、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標と判断するべき事情は見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第16号該当性について

本件商標は、上記1のとおり、本件商標の登録査定時において、本件指定商品に係る商品の品質等として需要者に認識されないものである。

そうすると、本件商標は、その登録査定時において、本件指定商品に使用しても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないと判断するのが相当である。

その他に、本件商標が、本件指定商品の品質について誤認を生じるおそれがある商標と判断するべき事情は見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。

4 むすび

以上のとおり、本件商標は、申立てに係る指定商品について、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号のいずれにも該当するものでなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

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