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Trademark Appeal Case

立体商標の記述性と識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2020−7117(T2020−7117/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第33類「発泡性焼酎,炭酸水で割った焼酎,酎ハイ,焼酎を炭酸水で割ったスピリッツ,ハイボールカクテル」を指定商品とし,平成30年10月31日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は,「本願商標は,別掲1のとおり,側面に米粒状の凹凸状の模様を有する飲料の容器を認識させる円柱状の立体的形状及びその側面のやや上方に向かい合う形で2か所に配した二段書きの『焼酎』及び『ハイボール』の文字からなるものであるところ,その形状は,液体等を格納する容器そのものを表したものである。また,本願商標の指定商品を取り扱う飲料業界においては,その容器の側面に凹凸状の模様を有する商品が存在し,焼酎を炭酸で割った商品であることを表示する語として『焼酎ハイボール』の語を一般に使用している実情がある。以上を踏まえると,本願商標に係る立体的形状は,液体等を格納する容器であり,当該容器の側面にある模様は,商品の容器(包装)の機能又は美観に資する目的のために採用されたというべきものであり,商品を格納する容器の形状の一形態を表したものとして理解されるにとどまり,また,文字部分は,その商品が焼酎を炭酸で割ったものであることを表したものとして理解されるにとどまるものであるから,これらを結合したにすぎない本願商標に接する取引者,需要者は,本願商標を焼酎ハイボール(焼酎を炭酸で割ったもの)の容器(包装)を表示したものと理解し,これをその指定商品に使用したときは,その商品の品質及び包装の形状を表示したものと認識するにとどまるというのが相当である。したがって,本願商標は,商品の品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号該当性について

本願商標は,別掲1のとおり,側面に細かい凹凸模様を有し,底部を除き金色に着色された円柱状の立体的形状(以下「立体的形状部分」という。)及びその側面のやや上方に向かい合う形で2か所に配した2段書きの「焼酎」及び「ハイボール」の文字(以下「文字部分」という)からなるものである。

そして,本願指定商品との関係において,立体的形状部分は,アルコール飲料を収納するための容器そのものの形状を表したにすぎないものである。

また,本願の指定商品を取り扱う業界においては,原審において示した別掲2の例に加え別掲3に示す例のように,商品の魅力向上や需要者の関心を引く等の目的のため,本願商標と同様に,アルコール飲料(商品)の容器側面に凹凸模様を用いることが一般に広く行われていることが認められる。

そうすると,立体的形状部分は,商品を収納する容器を表すものであって,その側面に施された細かい凹凸模様や金色の着色は,取引者,需要者をして,その商品を収納する容器(包装)の機能又は美感上の理由による形状の変更又は装飾等と予想し得る範囲のものであるというべきであって,商品の容器(包装)の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと認められるものである。

よって,立体的形状部分は,本願商標の指定商品の容器(包装)の一形態を表したものとみるのが相当である。

一方,文字部分についてみるに,「焼酎ハイボール」の文字部分は,ややデザイン化されてはいるものの,上述の別掲3(1)及び別掲5に示す例のとおり,商品に商標等を付す際に,各種のレタリング文字が使用されるなど様々な文字のデザイン化が広く一般に行われている現状にあっては,当該文字部分が殊更特殊な態様とはいえないものである。

また,「焼酎ハイボール」の文字部分の構成中の「ハイボール」の文字は「ウィスキー・ジンなどをソーダ水などで割った飲料。」(株式会社岩波書店 広辞苑第7版)を意味する語であり,本願の指定商品を取り扱う業界においては,原審において示した別掲4の例に加え別掲5に示す例のように,「焼酎ハイボール」の語が,「焼酎を炭酸で割った飲料」の意味を表すものとして一般的に使用されている実情がある。

そうすると,「焼酎ハイボール」の文字部分は,これに接する取引者,需要者に,その商品が「焼酎を炭酸で割った飲料」であること,すなわち,商品の内容を商品の容器(包装)に付したものと理解させるにとどまるものというべきである。

以上のことからすると,本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者は,単に「焼酎を炭酸で割った飲料」及びその容器(包装)の一形態を表示するにすぎないものとして認識するにとどまり,自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。

したがって,本願商標は,商品の品質及び包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であることから,商標法第3条第1項第3号に該当する。

(2)商標法第3条第2項該当性について

請求人は,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当しない商標であるが,請求人子会社の使用によって,その識別力は更に高められており,本願商標が使用された商品に接する取引者,需要者は,当該商品が請求人子会社の業務に係る商品であると認識されて広く知られるに至っているものであることから,同条第2項に該当する旨を主張し,証拠方法として,原審において甲第1号証ないし甲第90号証を提出しているため,以下検討する。

ア 実際に使用している商標及び商品

請求人の100%子会社である宝酒造株式会社(以下「宝酒造」という。)が,商品「炭酸水で割った焼酎,酎ハイ,焼酎を炭酸水で割ったスピリッツ,ハイボールカクテル」(以下「焼酎を炭酸で割った飲料」という。)に使用している商標(以下「使用商標」という。)は,本願商標と同一視し得るものと認められる。

イ 使用開始時期及び使用期間

宝酒造は,焼酎を炭酸で割った飲料を2006年3月に発売し,それ以降現在に至るまでの14年間,焼酎を炭酸で割った飲料に使用商標を,継続して使用している(甲4〜甲29,甲31)。

ウ 使用地域

宝酒造は,使用商標を付した焼酎を炭酸で割った飲料を,日本全国で販売しているものと推認し得るものである(甲31)。

エ 販売数量及び売上高等

使用商標を付した焼酎を炭酸で割った飲料の販売数量は,250ml換算で,2013年度(平成25年度)698万箱,2014年度(平成26年度)783万箱,2015年度(平成27年度)883万箱,2016年度(平成28年度)1,098万箱,2017年度(平成29年度)1,351万箱,2018年度(平成30年度)1,579万箱である(甲53〜甲58)。

なお,使用商標を付した焼酎を炭酸で割った飲料の発売以来の販売金額は,累計で1732億7339万円に及ぶものであると主張している(甲35)。

また,「Ready to Drink」カテゴリーにおける売上シェアランキングにおいて,宝酒造の「焼酎ハイボール」が,2011年(平成23年)下半期には13位(レモン・350ml),2012年(平成24年)上半期には11位(レモン・350ml)及び18位(ドライ・350ml),並びに,2012年(平成24年)下半期には9位(レモン・350ml)及び14位(ドライ・350ml)に位置づけられているのを始め,近年において,2018年(平成30年)上半期には3位(レモン・350ml),5位(レモン・500ml),11位(ドライ・350ml)及び13位(ドライ・500ml),2018年(平成30年)下半期には,3位(レモン・500ml),4位(レモン・350ml),11位(ドライ・350ml)及び12位(ドライ・500ml),並びに,2019年(平成31年)上半期には,4位(レモン・500ml),5位(レモン・350ml),12位(ドライ・350ml),13位(ドライ・500ml)に位置づけられている(甲36〜甲52)。

オ 広告宣伝の方法,期間,地域及び規模及び商品の紹介記事

請求人は,テレビやラジオ(甲65〜甲70),新聞・雑誌(甲71〜甲76),交通広告(甲77),インターネット(甲78),販促ツール(甲79)を利用して使用商標を付した焼酎を炭酸で割った飲料に係る広告を行っており,それらは,大半が,2006年(平成18年)から2012年(平成24年)に実施されたものである。そして,当該広告に係る広告宣伝費は,2010年度(平成22年度)から2019年度(平成31年度)までの累計で47億8749万円に及ぶものであるとされる(甲64)。

また,使用商標を付した焼酎を炭酸で割った飲料は新聞及び雑誌に掲載された(甲80〜甲82)。

カ 他者による出願商標と同一又は類似の標章の使用状況

上記(1)のとおり,原審において示した別掲2の例に加え別掲3に示す例のように,商品の魅力向上や需要者の関心を引く等の目的のため,本願商標同様に,商品容器側面に凹凸模様を用いることが一般に広く行われていることが認められる。また,原審において示した別掲4の例に加え別掲5に示す例のように,「焼酎ハイボール」の語が,「焼酎を炭酸で割った飲料」の意味を表すものとして一般的に使用されている実情がある。

キ 小括

以上,上記アないしカを総合して検討すれば,請求人の子会社である宝酒造が,本願商標と同一視し得る使用商標を,焼酎を炭酸で割った飲料を発売した2006年(平成18年)から現在に至るまで,継続的に使用していることが認められる。

そして,使用商標を使用した焼酎を炭酸で割った飲料は全国的に販売されていると推認することができ,その販売数量は,250ml換算で,例えば,2016年度(平成28年度)1,098万箱,2017年度(平成29年度)1,351万箱,2018年度(平成30年度)1,579万箱のように年々増加していることはうかがえる。

また,売上シェアランキング(甲36〜甲52)において,宝酒造の商品「焼酎ハイボール」のレモン味が近年人気を博していることもうかがえる。

しかしながら,これらの販売数量及び売上シェアランキングから,宝酒造の業務に係る「焼酎を炭酸で割った飲料」がその市場全体における占有率の程度や売上額などの販売実績を客観的に推し量ることはできない。

また,使用商標を付した焼酎を炭酸で割った飲料に関する広告宣伝費は,2010年度(平成22年度)から2019年度(平成31年度)までの累計で47億8749万円に及ぶとされているが,その客観的な裏付けはなく,かつ,広告宣伝に関して提出された証拠は,大半が2006年(平成18年)から2012年(平成24年)に実施されたものであって,現在より8年以上も前のものである。近年実施されている広告宣伝としては,Youtubeにおける動画配信があるものの,その5年前から2年前と記載された動画ごとの再生数は,約1000件弱から約7000件余りでしかなく,さらに,新聞における使用商標を使用した焼酎を炭酸で割った飲料が掲載された回数は,一番多い年で2018年(平成30年)に39回掲載されているものの,その大半が地方紙における掲載であり,それ以外の年は多くても年に15回ほどであるから,決して多いとはいえない。

そうすると,提出された証拠は,本願商標の周知性を認める使用の状況を示すものとしては,不十分といわざるを得ない。

さらに,本願指定商品を扱う分野において,他者によって,本願商標同様に,商品容器側面に凹凸模様を用いることが一般に広く行われており,また,「焼酎ハイボール」の語が,「焼酎を炭酸で割った飲料」の意味を表すものとして一般的に使用されている事実が認められる。

以上のことからすれば,本願商標が特定の者の取り扱いに係る商品の出所表示として,需要者の間で全国的に認識されているものとはいい難く,本願商標が使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認めることはできない。

したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備するものということもできない。

(3)請求人の主張について

ア 請求人は,立体的形状部分は,縦長小判型凹状の細かなツブツブの陥没感により,視覚による商品の認知力の向上に加え,缶を持った時のツブツブのフィット感を視覚上の触感からも十分感得可能な特定人の商品であることが認識できる特徴的なものであることから,本願商標は単なる装飾以上の強い印象力を備えた立体商標である旨主張している。

しかしながら,上記(1)のとおり,原審において示した別掲2の例に加え別掲3に示す例のように,本願商標同様に,商品容器側面に凹凸模様を用いることが一般に広く行われていることが認められることからすれば,本願商標に接する取引者・需要者は,その立体的形状部分について,商品の容器に通常採用され得る一類型として認識するにとどまり,商品の出所を表示するための標識又は自他商品を識別する標識として認識することはないとみるのが相当であるから,ウェブサイトにおいて,本願商標中の凹凸模様に関する感想が掲載されているとしても,これらの個人の感想をもって上記判断は左右されないというべきである。

したがって,請求人の主張は採用できない。

イ 請求人は,本願商標は,登録第6076023号商標と同じ強さの外観の印象力による識別力を有する商標を,本件商標の正面及び背面に表わしてなる商標と見られるものであるから,商標全体として識別力を有する旨主張している。

しかしながら,上記登録商標は,平面商標である一方,本願商標は,立体商標として登録出願されたものであるから,平面商標における自他商品識別力の判断と立体商標におけるそれとを同一視しなければならない事情は見当たらないうえに,本願商標は,上記(1)のとおり,「焼酎を炭酸で割った飲料」及びその容器(包装)の一形態を表示するにすぎないものであることからすれば,上記登録商標が存在することをもって,本願商標が商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識され得るなどということは認めることはできない。

したがって,請求人の主張は採用できない。

(4)まとめ

以上によれば,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであって,かつ,同条第2項の要件を具備しないものであるから,これを登録することはできない。

よって,結論のとおり審決する。

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