Trademark Appeal Case
宣伝文句の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2020−3718(T2020−3718/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「やさしい帽子」の文字を標準文字で表してなり、第25類「帽子」を指定商品として、平成30年10月31日に登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、本願の指定商品を取り扱う業界において、「やさしい帽子」の文字が「肌や環境等にやさしい帽子」の意味合いを表した宣伝文句(キャッチフレーズ)の一種として使用されていることから、本願商標の「やさしい帽子」の文字は、自他商品の識別標識としての機能を有していないので、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する旨認定判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審においてした審尋
当審は、本願商標の商標法第3条第1項第6号該当性について、職権に基づく証拠調べを実施し、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、令和2年10月30日付け審尋で、別掲1ないし4のとおり、その結果を通知するとともに、本願商標は、これが使用をされた結果、全国的に周知であるとはいい難く、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものとは認められない旨の見解を示した上で、本願商標をその指定商品について使用した場合、これに接した取引者、需要者は、本願商標を、その商品が「帽子に接する肌ないし頭皮に悪い影響を及ぼさない帽子」程の特性を持つことを説明した宣伝広告としてのみ認識、理解するにとどまり、よって、本願商標は、自他商品の識別標識としての機能を持たない、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標というべきである旨の見解を示し、相当の期間を指定して、これに対する回答を求めた。
第4 審尋に対する請求人の意見
前記第3の審尋に対して、請求人から何ら意見は提出されなかった。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
(1)本願商標について
本願商標は、前記第1のとおり、「やさしい帽子」の文字を標準文字で表してなるものであり、指定商品は、第25類「帽子」である。
(2)本願の指定商品を取り扱う業界等における取引の実情
ア 別掲1のとおり、本願の指定商品の「帽子」等を取り扱う業界において、「やさ(優)しい」の文字と商品名(帽子・キャップ)とを組み合わせた文字が、その商品に接する身体の部位に悪い影響を及ぼさない特性を持つことを表す文言と一緒に使用されている。
イ 別掲2のとおり、本願の指定商品の「帽子」等を取り扱う業界において、「やさ(優)しい(く)」の文字が、帽子に接する肌ないし頭皮にやさしいという意味合いを表すものとして、広く使用されている。
ウ 別掲3のとおり、本願の指定商品を取り扱う被服業界において、「やさ(優)しい」の文字と身体に接する商品等の一般名称である「○○」の文字とを組み合わせた「やさ(優)しい○○」の文字が、「やさしいショーツ」、「やさしいトランクス」、「優しいトランクス」、「やさしい下着」、「やさしいインナー」、「やさしい肌着」、「やさしいバスローブ」、「やさしいパジャマ」及び「やさしい靴下」のように、その商品等に接する身体の部位に悪い影響を及ぼさない特性を持つことを表す文字と一緒に、広く使用されている実情が認められる。
(3)判断
ア 本願商標の構成中の「やさしい」の文字は、別掲4のとおり、「身も痩せるように感じる。恥ずかしい。」、「周囲や相手に気をつかって控えめである。つつましい。」、「悪い影響を及ぼさない。」等を意味する多義的な語であるが、前記(2)で認定した実情に照らせば、本願の指定商品の「帽子」及び関連する商品等との関係において、「やさ(優)しい」の文字は、その商品等に接する身体の部位に悪い影響を及ぼさないという意味合いを持つものとして使用されているといえる。
また、本願商標は標準文字で表してなるから、その態様上顕著な特徴は認められない。
以上を踏まえると、本願商標をその指定商品の「帽子」について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、本願商標を、その商品が「帽子に接する肌ないし頭皮に悪い影響を及ぼさない帽子」程の特性を持つことを説明した宣伝広告としてのみ認識、理解するというべきである。
イ 請求人は、本願商標が指定商品に使用をされた結果、自他商品識別力を獲得するに至っている旨主張するので、この点について以下のとおり検討する。
(ア)請求人が提出した証左(甲第7号証ないし甲第19号証。以下、「第」及び「号証」を省略して表記する。)及び請求人の主張の全趣旨によれば、請求人が本願商標を平成30年11月1日より使用していること(甲12及び甲13)、並びに、請求人が、本願商標を使用した帽子(以下「本件帽子」という。)を、少なくとも、請求人のウェブサイト(甲14)及びリーフレット(甲17ないし甲19)により広告宣伝していることが認められる。
しかしながら、本願商標の使用期間は未だ2年程度にすぎない。そして、本願商標を使用した商品の販売数等を立証する客観的な証左は提出されておらず、本願商標の使用に係る商品の業界シェア等の統計資料による客観的状況を示す資料の提出もなされていない。加えて、上記の広告宣伝の定量的な実績を示す資料の提出もなされていないし、請求人以外の者による紹介記事等を示す証左も提出されていない。なお、請求人は、本件帽子を、上記ウェブサイト及び請求人が全国各地で経営する48店舗のサロン(甲15)で販売している旨主張し、さらに、本件帽子の卸先が少なくとも304店舗以上である旨主張の上、当該卸先の例として18店舗の名称及び住所(甲16)を示しているが、これらのウェブサイトや店舗等で本件帽子が販売ないし取引されていることを示す客観的な証左は提出されていない。
そうすると、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるほど広く認識されていたとまではいい得ないものであり、その他、この認定を覆すに足りる証左は提出されていない。
(イ)よって、本願商標は、これが使用をされた結果、全国的に周知であるとはいい難く、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものとは認められない。
ウ したがって、本願商標は、自他商品の識別標識としての機能を持たない、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標というべきであるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、本願商標の「やさしい帽子」の文字について、「やさしい」という文字単体が使用された場合、取引者、需要者は「やさしい」が意図する正確な意味合いを認識することができないから、「やさしい帽子」は、特定の語義を生ずる既成の語とはいえず、造語といえる旨、また、本願商標に接する取引者、需要者は、本願商標全体の一体感のある構成に印象付けられることで、これを「ヤサシイボウシ」と称呼する一連一体の造語として認識する旨主張する。
しかしながら、別掲2のとおり、本願の指定商品の「帽子」等を取り扱う業界において、「やさ(優)しい(く)」の文字が、帽子に接する肌ないし頭皮にやさしいという意味合いを表すものとして、広く使用されているという事実等に照らせば、本願商標の構成中の「やさしい」の文字は、その前後に言葉を補わないとしても、帽子に接する肌ないし頭皮にやさしいという意味合いを持つものとして、取引者、需要者に認識、理解されるといえる。
そして、本願商標をその指定商品の「帽子」について使用するときは、これに接する取引者、需要者が、本願商標を、その商品が「帽子に接する肌ないし頭皮に悪い影響を及ぼさない帽子」程の特性を持つことを説明した宣伝広告としてのみ認識、理解することは、前記1(3)アで説示したとおりである。
(2)請求人は、原査定が提示した証左に基づき、本願の指定商品を取り扱う業界において、本願商標の「やさしい帽子」の文字が、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないといえるほどに、取引上一般に使用されている事実を見いだせない旨主張するが、本願の指定商品を取り扱う業界における実情は別掲1ないし3のとおりであるから、この事実に基づいてした前記1(3)の判断を左右するものではない。
(3)請求人は、過去の登録例に基づき本願商標は商標法第3条第1項第6号に該当しない旨主張するが、これらの登録例は、本願商標とは、構成文字や構成態様が異なるものであって、かつ、具体的事案の判断においては、過去の登録例等に拘束されることなく、当該商標登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様と取引の実情に応じて個別的に判断されるべきであるから、これらの事例の存在によって、前記1の認定判断が左右されるものではない。
(4)したがって、請求人の主張は、いずれも採用できない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。