Trademark Appeal Case
色彩商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2018−7184(T2018−7184/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第9類,第16類,第35類及び第36類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成27年5月13日に登録出願され,その後,指定商品及び指定役務については,原審における同28年10月19日受付の手続補正書により,第36類「クレジットカード利用者に代わってする支払代金の清算,クレジットカード利用明細に関する情報の提供,プリペイドカードの発行,プリペイドカードによる支払代金の電子決済,デビットカード利用者に代わってする支払代金の決済,債権の回収の代行,金銭債権の取得及び譲渡,加盟店契約に基づくクレジットカード若しくはデビットカード用精算機・カードリーダー・カードライターの貸与」に補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「役務の提供の用に供する物又は広告に使用される色彩は,様々な色彩を組み合わせたものも含め,多くの場合,それらの魅力向上等のために選択されるものであって,役務の出所を表示し自他役務を識別するための標識としては認識し得ないものである。そして,本願の指定役務を取り扱う業界においては,本願商標と同系色の色彩や複数の色彩を組み合わせたものが,別掲2のとおり,役務の提供の用に供する物又は広告に使用されている実情が認められる。そうすると,本願商標を,その指定役務の提供の用に供する物又は広告に使用しても,これに接する需要者は,役務の提供の用に供する物又は広告に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり,何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるから,商標法第3条第1項第6号に該当する。また,出願人が提出した証拠からは,本願商標のみが独立して自他役務の識別標識として認識されるに至っているということはできない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
第3 当審における証拠調べ通知
本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,別掲3に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対して,令和元年7月26日付け証拠調べ通知書によって通知し,期間を指定して,これに対する意見を求めた。
第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要旨
請求人は,証拠調べで発見された出願人以外の者による使用例は,総じて本願商標と同一又は類似の色彩ではなく,青色,赤色,緑色の使用例については,グラデーションの有無,明度,彩度,配色,構成等において差異があるものであり,かつ,本願商標の使用期間,使用規模,及び,国内需要者の認識に鑑みれば,本願商標の識別力を損なうものではない旨述べている。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
(1)本願商標について
本願商標は,上記第1のとおり,色彩のみからなる商標であって,色彩の組合せは,左から順に,濃い青色(CMYの組合せ:C100,M100,Y30)からやや薄い青色(CMYの組合せ:C100,M45,Y0)に向かうグラデーションで表した青色,白色(CMYの組合せ:C0,M0,Y0),濃い赤色(CMYの組合せ:C70,M100,Y100)からやや薄い赤色(CMYの組合せ:C0,M100,Y70)に向かうグラデーションで表した赤色,白色(CMYの組合せ:C0,M0,Y0),及び,濃い緑色(CMYの組合せ:C100,M35,Y100)からやや薄い緑色(CMYの組合せ:C65,M0,Y100)に向かうグラデーションで表した緑色からなる。また,配色は,左から順に,青色が商標の横幅の30.8パーセント,白色が3.8パーセント,赤色が30.8パーセント,白色が3.8パーセント,緑色が30.8パーセントである。
(2)本願の指定役務を提供する業界における色彩の使用状況について
ア 役務の提供の用に供する物又は広告の装飾等に使用される色彩は,様々な色彩を組み合わせたものも含め,多くの場合,それらの魅力向上等のために選択されるものであるから,役務の出所を表示し,自他役務を識別するための標識として認識し得ないものである。
イ 原審において示したとおり,本願の指定役務を提供する業界において,別掲2のとおり,複数の色彩の組合せが,役務の提供の用に供する物又は広告に使用されている事実がある。なお,別掲2及び3に掲げるウェブサイトの中には,ページの改訂等により,原審で示した当時と構成が異なると思われるものが一部存在するものの,現在のウェブサイトにおいても,当時と同様に役務の提供の用に供する物又は広告に複数の色彩が使用されていることは確認できる。
ウ 当審における証拠調べ通知において示したとおり,本願の指定役務を提供する業界において,別掲3の1及び3の2のとおり,本願商標の色彩と同様に青色,赤色,緑色の組合せ又は複数の色彩の組合せが,役務の提供の用に供する物に使用されている事実がある。
エ 当審における証拠調べ通知において示したとおり,本願の指定役務を提供する業界において,別掲3の3のとおり,グラデーションで表した色彩が,役務の提供の用に供する物に使用されている事実がある。
(3)本願商標に接する需要者の認識について
本願商標は,上記(1)のとおりの色彩よりなるところ,本願の指定役務を提供する業界において,上記(2)のとおり,本願商標の色彩と同様の青色,赤色及び緑色又は複数の色彩を組み合わせたものが,また,グラデーションで表した色彩が,役務の提供の用に供する物又は広告に使用されている事実がある。
そして,役務の提供の用に供する物又は広告に使用される色彩は,一般にそれらの魅力向上等に資する装飾等と認識されることを踏まえると,グラデーションで表した青色,赤色及び緑色並びに白色の組合せからなる本願商標は,役務の提供の用に供する物又は広告の魅力向上等に資する目的で使用される色彩の一種であるというべきである。
また,本願商標の色彩は,原色である青色及び赤色に加え,緑色及び白色といった基本的な色であるから,全体の配色が格別特異な印象を与えるものではなく,さらに,青色,赤色及び緑色に施されたグラデーションは,さほど濃淡がはっきりしたものとはいえないことからすれば,一見して特徴的な印象を与えるものとはいえない。
そうすると,本願商標をその指定役務について使用をしても,これに接する取引者,需要者は,役務の提供の用に供する物又は広告に通常使用され又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり,役務の出所を表示し,自他役務を識別するための標識として認識することはないというべきであるから,本願商標は何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であると判断するのが相当である。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。
2 使用による自他役務識別力の獲得の有無について
請求人は,本願商標は,その構成態様に加え,長期間かつ全国的な使用により,需要者が,本願商標を他の色彩と区別して,役務の出所識別標識として認識できる色彩である旨主張し,その証拠として資料1ないし資料22及び甲第1号証ないし甲第145号証を提出しているため,以下検討する。
(1)請求人提出の証拠及び同人の主張について
ア 請求人の使用する標章について
(ア)請求人は,1961年に,クレジットカードの券面に,青色,赤色,緑色を基調色とし,「JCB」の文字が記載された標章(以下,「元祖エンブレム」という。)の使用を開始し,1968年に,元祖エンブレムをアレンジした標章(以下,「旧エンブレム」という。)に改訂し使用していたものの,それらの色彩にグラデーションは施されていない。
(イ)請求人は,2007年に,旧エンブレムを,グラデーションで表した青色,赤色及び緑色よりなる,Sをモチーフにした図形(以下,「S字モチーフ図形」という。)内に,「J」「C」「B」を白抜きで表した標章(別掲4。以下,「使用標章」という。)に改訂し,それ以降,使用標章を継続して使用している(資料3,資料4,資料14,資料21ほか)。
(ウ)請求人のウェブサイトにおいて,使用標章について,「JCBエンブレム/JCBエンブレムは,′′S′′をモチーフにした青・赤・緑の3つのプレートから成り立っています。この『3つのカラー』と『3つのSのカタチ』は,JCBが達成しようとしているブランドパーソナリティを意味しています。」の記載がある(資料3)。
イ 使用標章の対象
請求人は,使用標章を,クレジットカード,デビットカード及びプリペイドカード(以下,「クレジットカード等」という。)の券面,ギフトカード又はこれらに関する広告に使用しているほか,クレジットカード等の申込書や案内書等の印刷物,クレジットカード等加盟店やATM等において請求人のクレジットカード等が使用できるものであることを表示するといった,クレジットカード等に係る業務(以下,単に「クレジットカード等に係る業務」という。)に使用している(資料5〜資料9,資料15,資料18,資料19,資料21,甲100〜甲117ほか)。
ウ 使用開始時期及び使用期間
上記アのとおり,元祖エンブレムは1961年に,旧エンブレムは1968年に,使用標章は2007年に,それぞれ使用が開始されて,その後使用標章は現在に至るまで継続して使用されている(資料3,資料4,資料14,資料15,資料21ほか)。
エ 使用地域及び使用数量
請求人は,使用標章を,全国のクレジットカード等加盟店やATM等において使用しており(資料13,資料15,資料17,資料19,資料21ほか),また,請求人の主張によれば,2017年3月時点での日本国内における請求人のクレジットカード等の会員数は,約8,161万会員,加盟店総数は3,179,763とされる(資料12,資料13)。
オ 広告宣伝の方法,期間,地域及び規模
(ア)新聞広告
請求人は,2007年から2017年にかけて,全国紙,地方紙又はスポーツ紙において,使用標章を表示したクレジットカード等に係る業務についての広告を掲載したものの,約11年間における掲載回数は25回であり,年平均にしてわずか2、3回程度でしかない(甲4〜甲14,甲72〜甲85)。
(イ)雑誌での広告
請求人は,2011年から2017年にかけて,「プレジデント」,「THE GOLD」,「Yokohama Walker」,「TVガイド関東版」,「Hanako」,「DIME」,「TVステーション関東版」等の雑誌において,使用標章を表示したクレジットカード等に係る業務の広告を掲載したものの,約8年間における掲載回数は27回であり,年平均にしてわずか3、4回程度でしかないうえに,これらの雑誌の中には頒布された地域が明らかでないものもある(甲15〜甲18,甲53〜甲71)。
(ウ)テレビCM
請求人は,少なくとも,2012年から2018年3月にかけて,使用標章を表示したクレジットカード等に係る業務についてテレビCMを実施したものの,放送期間を客観的に示すものはないうえに,CMを放送したテレビ局,時間帯等は不明である。また,いずれのCMにおいても使用標章が画面に映るのは最後の一コマ程度である(資料16,資料17,甲20,甲21,甲36〜甲40,甲97)。
(エ)屋外大型ビジョンにおけるCM
請求人は,2014年から2017年にかけて,東京都の渋谷,大阪府の道頓堀その他全国の主要都市において,大型ビジョンを利用し,使用標章を表示したクレジットカード等に係る業務の広告を実施したものの,実施した期間を客観的に示すものはないうえに,時間帯及び回数等は不明である(甲20〜甲35,甲89〜甲91)。
(オ)大型施設での広告
請求人は,京セラドーム,羽田空港,関西空港,東京ビッグサイト,キッザニア(東京及び甲子園),ユニバーサル・スタジオ・ジャパン等の大型施設において,使用標章を表示したクレジットカード等に係る業務の広告を実施したものの,その具体的な実施時期は客観的に示されていない(資料15,甲44〜甲51)。
(カ)自社ウェブサイトでの広告
請求人は,自社ウェブサイトに使用標章を掲載しているが,掲載期間等の詳細は不明である(甲92〜甲96ほか)。
(キ)その他
a 請求人は,新聞広告,雑誌広告,テレビCM等の広告において,著名な芸能人を起用している。
b 各種広告においては,使用標章のほかに,「JCB」の文字のみを併用して使用しているものがある(資料15,甲5〜甲17ほか)
カ アンケート(甲143)
(ア)請求人は,2018年8月3日から同月6日にかけて,題名「お買いものについてのアンケート」と称する19問の質問から構成されるアンケートについて,全国の20代〜60代のクレジットカード等を利用する男女を対象としてインターネットを利用して実施したものであって,質問のうち7問目ないし12問目(Q7〜Q12)において本願商標の認識度を調査した。
(イ)アンケートは,調査会社のオンライン会員から2,198人が抽出され,そこから,実験群(本願商標と同一の色彩を用いたもので調査)1,104人,対照群(本願商標と異なる色彩を用いたもので調査)1,094人のサンプルが抽出され,出所を直接尋ねない自由回答式の質問,出所を直接尋ねる自由回答式の質問,選択回答式の質問で実施されたところ,いずれの結果も7割から8割程度の認識度(請求人を想起した割合)が得られたとされる。
(ウ)アンケートの質問において,例えば,7問目の直前では「これから、とある画像をご覧いただきます。時間をかけても結構ですので、しっかりと画像をご覧ださい。」のメッセージとともに本願商標が表示されて「Q7. この画像は、クレジットカード、デビットカード、プリペイドカードなどに関して使用されている色彩を表したものです。(略)」,8問目の直前では「先ほどお見せした画像をもう一度ご覧いただきます。この画像は、クレジットカード、デビットカード、プリペイドカードなどに関して使用されている色彩を表したものです。」のメッセージとともに本願商標が表示されて「Q8. この画像の色彩について、あてはまるものを以下の選択肢の中から1つだけお選びください。 1.色彩を見て、具体的なカード名または会社名(またはブランド名、サービス名など)が思い浮かぶ(略)」,12問目の直前では,「先ほどの画像をもう一度ご覧いただきます。この画像は、クレジットカード、デビットカード、プリペイドカードなどに関して使用されている色彩を表したものです。」のメッセージともに本願商標が表示されて「Q12. この色彩をご覧になり、あなたは具体的になんというカード名または会社名(略)を思い浮かべましたか。以下の選択肢の中からあてはまるものを全てお選びください。」の質問の下に,クレジットカード等の名称が羅列しており,選択肢の一つに「4.JCB(ジェーシービー)」と表示されている。
(2)上記(1)からすれば次のとおりである。
ア 請求人は,1961年から元祖エンブレム及び旧エンブレムを順次使用しているが,それらに使用されている色彩には,グラデーションで表した色彩は使用されていない。
その後,請求人は,2007年頃から,使用標章をクレジットカード等に係る業務に,現在に至るまで継続して全国で使用してきたということができる。
しかしながら,請求人がクレジットカード等に係る業務について,新聞や雑誌における広告を実施していたことはうかがえるものの,その掲載回数は年平均2〜4回程度と決して多くはないことに加え,全ての雑誌の頒布地域が明らかにされているわけではない。
また,テレビCMにしても,放送したテレビ局や放送期間,放送時間帯等を客観的に示すものはないうえに,使用標章が画面上に映しだされるのは最後の一コマ程度であって,それが特段使用標章を構成する本願商標の色彩に強く注意を向けるような内容のものではない。
この他に請求人は,屋外大型ビジョン,大型施設及び自社ウェブサイトにおいても,クレジットカード等に係る業務についての広告を実施しているが,上記の広告媒体を含めたいずれの広告においても,使用標章が使用されていることは確認できるとしても,使用標章を構成する本願商標の色彩に焦点を当てた広告は見当たらない。
加えて,広告の中には,使用標章のほかに,「JCB」の文字のみの使用もあり,当該文字が顕著に表されているもの(甲5,甲8,甲11,甲17,甲25,甲77,甲81)や,本願商標の色彩の占める面積が小さなもの(甲8,甲11,甲15,甲18,甲27,甲33)もある。
そして,使用標章を構成する本願商標の色彩のみが,独立して使用された事実は,請求人提出の資料からは確認することができない。
そうすると,使用標章に接する取引者,需要者にとっては,使用標章を構成する本願商標の色彩を自他役務の出所表示として認識するというよりは,むしろ,使用標章全体,又は,常に共に使用される「JCB」の文字部分を出所表示として認識し,これらを頼りに役務を提供する事業者を区別してきたとみるのが自然である。しかも,「JCB」の文字は,青色,赤色,緑色の各S字モチーフ図形の中央部分に,それぞれ1文字ずつ,白抜きして表されていることから,使用標章において最も目立つ位置及び態様で表されているということができ,また,かかる態様においては,使用標章を構成する青色,赤色,緑色の色彩は,白抜きした「J」,「C」,「B」の各文字を際立たせるための背景色としての効果に資するものということができる。
以上よりすれば,請求人は,使用標章をクレジットカード等に係る業務について,13年余りにわたり継続して全国で使用してきたということができるとしても,本願商標の色彩が請求人の出所表示として取引者,需要者の間に広く認識されるような使用や広告があったとみることはできず,むしろ,取引者,需要者の最も注意を引く部分は「JCB」の文字部分にあるとみるべきである。
なお ,元祖エンブレム及び旧エンブレムには,グラデーションで表した色彩が使用されていないことから,当該エンブレムにおける色彩の使用を本願商標の使用とみることはできない。
イ 請求人が実施したアンケートにおいて,そのサンプル数は,実験群と対照群を合わせた合計で2,198人であるとされるが,請求人のクレジットカード等の会員数が約8,161万会員存在するとされるうえに,請求人以外のクレジットカード会社等から本願の指定役務の提供を受ける需要者も数多く存在することが容易に想像されることからすれば,本願の指定役務を提供する非常に大規模な市場における需要者に対して,当該サンプル数は決して大きな数とはいえない。
また,当該サンプル数に,請求人が提供するクレジットカード等の利用者数がどの程度含まれていたのか明らかではない。
さらに,アンケートにおける本願商標の認識度を調査する質問(Q7〜Q12)において,上記(1)カのとおり,本願商標と共に「この画像は、クレジットカード、デビットカード、プリペイドカードなどに関して使用されている色彩を表したものです。」との文章が,6問中,3回も表示されているうえに,Q12の質問では,(回答の)選択肢の一つとして「JCB(ジェーシービー)」も表示されていることからすれば,回答者は,本願商標がクレジットカード等に使用される色彩であることを前提に回答したにすぎないというべきである。
以上よりすると,請求人が実施したアンケートは,本願の指定役務の提供を受ける需要者の数と比較してサンプル数が決して大きな数とはいえないことに加え,そのうち請求人が提供するクレジットカード等を普段から利用し,本願商標の色彩を目に触れる機会が多い者の割合が不明であるうえに,回答はクレジットカード等に使用される色彩であることを前提に導き出されたものにすぎないことからすれば,本願商標に対する需要者の認識度を正確に反映したものと必ずしもいうことはできない。
ウ 請求人は,クレジットカード等に係る業務について使用標章を使用してきたことは認められるものの,本願の指定役務中,「債権の回収の代行,金銭債権の取得及び譲渡,加盟店契約に基づくクレジットカード若しくはデビットカード用精算機・カードリーダー・カードライターの貸与」については,本願商標の使用に関して何ら主張がなされていない。
(3)小括
以上,(2)よりすれば,請求人によって使用標章がクレジットカード等に係る業務について使用されていることから,本願の指定役務との関係においては,「クレジットカード利用者に代わってする支払代金の清算,クレジットカード利用明細に関する情報の提供,プリペイドカードの発行,プリペイドカードによる支払代金の電子決済,デビットカード利用者に代わってする支払代金の決済」について,使用されているとはいえるものの,「債権の回収の代行,金銭債権の取得及び譲渡,加盟店契約に基づくクレジットカード若しくはデビットカード用精算機・カードリーダー・カードライターの貸与」について使用されているとは認められない。
そして,使用標章は上記1(1)のとおり,本願商標の色彩のほかに,3つのS字モチーフ図形及び「JCB」の文字から構成されるところ,本願商標はその色彩のみで請求人の出所表示として取引者,需要者の間に広く認識されるような使用があったとはいえず,また,上記1のとおり,色彩は,本来,役務の提供の用に供する物又は広告に通常使用され又は使用され得るものとして認識されるものであることを踏まえれば,使用標章の構成中,取引者,需要者の最も注意を引く部分は「JCB」の文字部分にあるとみるべきであるから,本願商標の色彩が独立して自他役務を識別するための標識として取引者,需要者に認識されることはないというべきである。
さらに,本願商標がその色彩のみで,請求人の業務に係る役務を表すものとして,取引者,需要者に広く認識されていると認めるに足りる事情は見いだせない。
そうすると,本願商標は,その色彩のみが独立して,請求人の業務に係る役務を表示するものとして取引者,需要者の間に広く認識されていると認めることはできない。
したがって,本願商標は,使用をされた結果,自他役務識別力を獲得し,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っていると認めることはできない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,本願商標を,全国的に長期間,継続的に使用し,広告も大規模に行ってきたものであり,本願商標が需要者の間で識別力を獲得している旨主張する。
しかしながら,請求人による使用標章の使用や広告の実情を併せ考慮してもなお,上記2のとおり,本願商標が独立して自他役務の識別標識として使用されてきたと認めることはできず,また,本願商標が自他役務識別力を獲得したと認めることもできない。
(2)請求人は,本願商標は,グラデーションを施す等,色彩の組合せ,色調,配色を総合してみるに,単純な色彩の組合せからなるものではない旨主張する。
しかしながら,上記1のとおり,本願の指定役務を提供する業界において,青色,赤色,緑色の組合せ又は複数の色の組合せが,役務の提供の用に供する物又は広告に多数使用されている実情において,本願商標を構成する青色,赤色,緑色及び白色は基本的な色であり,これらの組合せが特異な印象を与えるものとはいえないこと,また,同業界で役務の提供の用に供する物又は広告の色彩にグラデーションが施されることもあること,青色,赤色及び緑色に施されたグラデーションの濃淡がさほどはっきりしたものではなく,一見して特徴的とはいえないことなどからすれば,本願商標の色彩の組合せが需要者に特異な印象を与えるものではないというべきである。
(3)請求人は,需要者の商標の認識度を調査したアンケートによって,回答形式に関わらず7〜8割程度の需要者が出願人を想起した旨主張する。
しかしながら,上記2のとおり,当該アンケートが需要者の認識度を正確に反映したものと必ずしもいえないことからすれば,仮に7〜8割程度の需要者が出願人を想起したとしても,当該アンケートの結果によって上記の判断が左右されるものではない。
(4)したがって,請求人の主張は,いずれも採用することはできない。
4 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当するから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
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