Trademark Appeal Case
効能語の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2021−900018(T2021−900018/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第6310403号商標(以下「本件商標」という。)は,「注意力」の文字を標準文字で表してなり,令和元年9月30日に登録出願,第5類「薬剤,医療用試験紙,医療用油紙,医療用接着テープ,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,綿棒,歯科用材料,おむつ,おむつカバー,はえ取り紙,防虫紙,乳幼児用粉乳,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品,栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。),人工受精用精液」を指定商品として,同2年9月18日に登録査定,同年10月30日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は,その指定商品中,第5類「薬剤,医療用試験紙,サプリメント」(以下「申立商品」という。)について商標法第3条第1項第3号,同項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証(枝番号を含む。なお,特に断らない限り,証拠番号には枝番号を含み,表記にあたっては,「甲○」及び「甲〇の〇」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。)を提出した。
(1)本件商標は,「注意力」の文字を標準文字で横一連に書した構成からなるところ,「注意力」の文字は,岩波書店発行の広辞苑(第七版)によると「あることに心を集中し続ける能力」の意味合いを有する日本語であり(甲2),本件商標の登録査定日である令和2年(2020年)9月18日(起案日)時点において,我が国の医薬品業界及びサプリメント業界では,本件商標の指定商品中「薬剤,サプリメント」について「注意力」の文字が,以下のとおり商品の作用,効能を示す語として広く一般に使用されていたことが認められる(甲2〜甲3の14)。
(2)商品「薬剤」への使用
ア 商品名「ペロスピロン塩酸塩錠4mg『アメル』」(薬剤)の副作用(生活上の注意)として,「眠気,
注意力
・集中力・反射運動能力などの低下が起こることがありますので,自動車の運転や危険を伴う機械を扱わないようにしてください。」(決定注:下線は申立人による。以下同様。)の記載がある(甲3の1)。
イ 薬剤の成分「アトモキセチン塩酸塩」の説明において,概説として「
注意力
を高め,落ち着きをとりもどすお薬です。」,作用として「注意欠陥・多動性障害(AD・HD)は,学齢期の子供に多くみられる精神的な発達障害の一つです。集中力や
注意力
が欠如し,また多動性・衝動性が顕著にあらわれ,学校での集団生活や学業に支障となります。年とともによくなりますが,半数くらいは成人期にもなお持続します。このお薬は,そのような注意欠陥・多動性障害に有効です。詳しい作用機序はよく分かっていませんが,脳の神経で働いている神経伝達物質のノルアドレナリンの増加が,集中力や
注意力
を高めるなど諸症状の改善に関係していると考えられています。」の記載がある(甲3の2)。
ウ 商品名「コンサータ錠18mg」(薬剤)の作用効果として,「脳内の神経細胞の間で情報を伝える神経伝達物質(ドパミン,ノルアドレナリン)を増加させ,神経機能を活性化し,
注意力
を高めたり,衝動的で落ち着きがないなどの症状を改善します。」の記載がある(甲3の3)。
エ 商品名「エバミール錠1.0」(薬剤)の副作用(生活上の注意)として,「薬の効き目によって,眠気が起こったり,
注意力
が散漫になったり,反射運動能力が低くなることがありますので,自動車の運転,高所での作業,危険を伴う機械の操作などは絶対にしないでください。」の記載がある(甲3の4)。
オ 商品名「ワイパックス」(薬剤)の副作用(重要な基本的注意)として,「眠気,
注意力
・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので,本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。」の記載がある(甲3の5)。
カ 商品名「レキサルティ錠1mg,2mg」(薬剤)の副作用(患者さんへの指導例)として,「(3)眠気,
注意力
・集中力・反射能力などの低下が起こることがあるので,自動車の運転などの危険を伴う操作は行わないようにしてください。」の記載がある(甲3の6)。
キ 商品名「ロラゼパム錠0.5mg『サワイ』」(薬剤)の副作用(この薬の使用中に気をつけなければならないことは?)として,「眠気,
注意力
・集中力・反射運動能力などの低下が起こることがあるので,自動車の運転等危険を伴う機械の操作をしないでください。」の記載がある(甲3の7)。
ク 商品名「ゼプリオン」(薬剤)の副作用(ゼプリオン(R)(決定注:「(R)」は○の中に「R」の文字を配してなる。)を投与している間は,次のことに注意してください。)として,「眠気,
注意力
や集中力が低下する可能性があるため,自動車の運転や危険を伴う機械の操作などは避けてください。」の記載がある(甲3の8)。
ケ 「ひだまりこころクリニック」のホームページにおいて,うつ病の治療薬「エビリファイ(アリピプラゾール)」の副作用として,「眠気や
注意力
・集中力・反射能力などの低下が起こることがあります。」の記載がある(甲3の9)。
コ 独立行政法人医薬品医療機器総合機構のホームページ内の「表2.使用中は運転等をしてはいけない医療用医薬品の例」において,薬剤の副作用として,「翌朝以後にも影響,眠気,
注意力
・集中力・反射運動能力などの低下」の記載がある(甲3の10)。
サ 「医療法人須藤会 土佐病院」のホームページにおいて,薬剤の副作用として,「道路交通法では過労,病気,薬物の影響その他の理由により正常な運転ができない恐れがある状態で車両などを運転してはならないと定められています。抗精神病薬や抗不安薬には,
注意力
低下を起こす作用があるため車等の運転はさけてください。」の記載がある(甲3の11)。
シ 「みどり病院・すこやか診療所・華陽診療所・こがねだ診療所」作成の「これから抗不安薬を服用する患者さんへ」との書面において,抗不安薬(薬剤)の副作用として,「[2](決定注:「2」は丸付き数字の2。)認知機能(記憶力の低下,集中力・
注意力
など)の低下がおきる」の記載がある(甲3の12)。
ス 「国分寺イーストクリニック」のホームページ内,「注意欠如多動性障害(ADHD)の薬の種類・効果効能・副作用の解説」に係るウェブページにおいて,薬剤の効能として「
注意力
不足や衝動的な落ち着きのなさなどの症状を改善するお薬です。」の記載がある(甲3の13)。
セ 日本経済新聞の「『発達障害』の幼児に向精神薬処方,専門医の3割に」に係る記事(2011年3月10日付)において,「使用している向精神薬(複数回答)は,衝動的な行動や興奮を鎮める薬「リスペリドン」(88%),
注意力
や集中力を高めるADHD治療薬「メチルフェニデート」(67%),睡眠薬(59%)などだった。」の記載がある(甲3の14)。
(3)商品「サプリメント」等への使用
ア 本件商標の権利者である小林製薬株式会社は,2020年4月8日に「健脳ヘルプ」という名称の商品「サプリメント」を発売した。同社のホームページ,並びに当該商品の発売を紹介するウェブページにおいて,同商品の作用,効能として「記憶力の維持,
注意力
の維特」が記載されていることからすると,健康食品・サプリメント業界の取引者,需要者のみならず,本件商標の権利者自身が,「注意力」の文字を自他商品識別標識ではなく,商品の作用,効能を示す表示として記述的に使用していることが認められる(甲4の1〜3)。
イ ウェブサイト「Amazon.co.jp」における「キロン SWITCH(スウィッチ)」の名称の商品「サプリメント」の販売ページ(Amazon.co.jpでの取り扱い開始日2012年10月31日)において,商品の作用,効能として「
注意力
をサポート」の記載がある(甲4の4)。
ウ 株式会社オーガランドが販売する「ホスファチジルセリン」という名称の商品「サプリメント」に関するウェブページにおいて,商品の作用,効能として,「ひらめき以外にも,
注意力
や集中力が持続しない方へのサポートにおすすめのサプリで,あなたの『うっかり』や『ひらめき』を支えます。」の記載がある(甲4の5)。
エ アサヒグループ食品株式会社(アサヒカルピスウェルネス)が製造販売する「すらすらケア」という名称の商品「サプリメント」の発売開始を報じるウェブページにおいて,同商品の作用,効能として,「『すらすらケア』は,ラクトノナデカペプチド(NIPPLTQTPVVVPPFLQPE)を含有した機能性表示食品。ラクトノナデカペプチドには,加齢とともに低下する認知機能の一部である
注意力
(視覚性情報を一時的に記憶しながら,事務作業を速く正確に処理していく能力)の維持と,計算作業の効率維持に役立つ機能が報告されているため,ものごとを忘れやすいと感じている健常な中高年におすすめだとしている。」の記載がある(甲4の6)。
オ 「イチョウ葉エキス」という名称の商品「サプリメント」に関するウェブページにおいて,商品の作用,効能として「さらに,ヨーロッパで医薬品として使用されているイチョウ葉エキスでは痴呆症を改善する事が多くの臨床試験で報告されているのです。痴呆症には,アルツハイマー型と脳血管型の2種類がありますが,両方の型において有効であると考えられており1日120mgを6カ月〜1年続けた結果,痴呆症患者の
注意力
および記憶力の低下を改善させたという報告があります。」の記載がある(甲4の7)。
カ 日本シャクリー株式会社が販売する「マインドワークス」という名称の商品「サプリメント」のニュースリリース(ウェブページ)において,同商品の作用,効能として,「また,ガラナエキスは,原産地の南米では古くから食品や飲料として健康維持に役立てられており,薬の原料としても使われる成分。ガラナエキスを使用した臨床データでは,記憶力や集中力,
注意力
への影響に関する報告がなされています。」の記載がある(甲4の8)。
また,同商品に関するウェブページにおいて,同商品の作用,効能として,「そこでシャクリーは,集中力,判断力,
注意力
,記憶力をサポートする独自の植物混合物“マインドワークス スマートブレンド(※)”を開発。」の記載がある(甲4の9)。
キ 「BE−MAX QUINOA−B」という名称の商品「天然ビタミンBサプリメント」のニュース(ウェブページ)において,同商品の作用,効能として,「ビタミンBは,
注意力
,認識力,明晰さ,体力,エネルギー生成,代謝促進,さらに記憶力増進とアンチエイジングに欠かすことのできない成分で,現代人に必要な補酵素として,美容界でも見直されている。」の記載がある(甲4の10)。
ク 「オメガ3クリル−エス〜DHA/EPA」という名称の商品「サプリメント」に関するウェブページにおいて,同商品の作用,効能として,「本品にはDHA・EPA(クリルオイル由来)が含まれます。DHA・EPA(クリルオイル由来)には,認知機能の一部である記憶を維持する機能や,
注意力
を維持する機能があることが報告されています。」の記載がある(甲4の11)。
ケ 「拡大する健脳サプリメント市場」に関するウェブページにおいて,「健脳サプリメントが市場で盛り上がりを見せています。・・・さらに最近ではTwitterやInstagramで『脳活』『ブレインフード』などのワードが散見されるようになりました。『記憶力』,『
注意力
』を求めているのは高齢者だけではないようです。SNSを頻繁に活用する20〜30代の間にも健脳サプリメント・健脳食を意識するものが増えているのは確実です。全世代を取り込み始めた健脳市場,今後ますますの好調が見込まれます。」の記載があり,サプリメント業界で注意力向上を効能とするサプリメントの需要が増加していることが報じられている(甲4の12)。
コ 株式会社ファーマフーズのニュースリリースにおいて,サプリメントの有効成分「GABA」の作用,効能について,「また,200mgのGABAを摂取すると『記憶力』,『空間認知力』に加えて,『論理的思考力』,『作業記憶力』,『持続的
注意力
』も維持・改善されました。」の記載がある(甲4の13)。
サ アサヒ飲料株式会社が,「
注意力
の維特」と「計算作業の効率維持」に役立つ機能性表示食品を発売したことが報じられている(甲4の14,甲4の15)。
(4)そうすると,本件商標は,これをその指定商品中,「薬剤,サプリメント」並びに「薬剤」と同じく医薬品の業界に属し,類似関係にある商品「医療用試験紙」に使用するときには,これに接する取引者,需要者に,「注意力を高める商品,注意力を低下させる商品,その他注意力に作用する商品」であることを認識,理解させるにすぎないというのが相当であるから,商品の品質を直接的に表示するものであり,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
さらに,本件商標は,その構成文字の書体に特徴があるものではない。
以上の点を総合的に勘案すると,本件商標は,申立商品について使用されるときは,単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるものというのが相当であるから,商標法第3条第1項第3号に該当し,また,申立商品中,「注意力を高める商品,注意力を低下させる商品,その他注意力に作用する商品」以外の申立商品について使用するときは,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから,同法第4条第1項第16号に該当するものである。
(5)また,仮に本件商標が,単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章に該当しない場合であっても,本件商標は,上記(2)及び(3)のとおり,商品の内容を記述する語として多数使用されている語であることに鑑みれば,これを申立商品に使用しても,「注意力に何らかの関係を有する商品」であることを表示するものにすぎず,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認職することができない商標であるから,商標法第3条第1項第6号に該当するものである。
3 当審の判断
(1)「注意力」の文字について
ア 「注意力」の文字について,申立人が提出した甲各号証によれば,以下のとおりである。
(ア)商品「薬剤,サプリメント」を紹介するウェブサイトや新聞記事において,当該商品の紹介文や説明文の中で,「注意力」の文字が,他の語や記述を伴って記載されている(甲3の1〜10,甲3の14,甲4の1〜12,甲4の14,甲4の15)。
(イ)病院や診療所等のウェブサイトにおいて,商品「薬剤」の効果や副作用に関する説明文の中で,「注意力」の文字が他の語や記述を伴って記載されている(甲3の11〜13)。
(ウ)株式会社ファーマフーズのニュースリリースにおいて,商品「サプリメント」の有効成分「GABA」の作用,効能についての研究成果に関する説明文の中で,「注意力」の文字が他の語や記述を伴って記載されている(甲4の13)。
イ 以上からすると,ウェブサイトや新聞記事において,商品「薬剤,サプリメント」に関する紹介文や説明文の中で「注意力」の文字が記載されていることは確認できるものの,これらの記載例においては,「注意力」の文字は他の語や記述を伴って紹介文や説明文中で用いられているものである。
(2)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は,上記1のとおり,「注意力」の文字からなるところ,当該文字は,「あることに心を集中し続ける能力」(「広辞苑第七版」株式会社岩波書店。以下同じ。)の意味を有する語である。
そして,「注意力」の文字は,上記(1)のとおり,商品「薬剤,サプリメント」に関する紹介文や説明文の中で記載されていることは確認できるものの,これらの記載例においては他の語や記述を伴って紹介文や説明文の中で用いられているものであるから,「注意力」の文字が単独で申立商品の具体的な品質や効能を表示するとはいい難いものである。
また,当審において職権をもって調査するも,「注意力」の文字が,申立商品の品質や効能等を表示するものとして,取引上一般に使用されているという事実を見いだすことはできなかった。
してみれば,本件商標は,これを申立商品に使用しても,取引者,需要者をして,商品の品質,効能等を表示したものと認識されることはなく,自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり,かつ,商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないものである。
したがって,本件商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。
(3)商標法第3条第1項第6号該当性について
本件商標は,上記(2)のとおり,「あることに心を集中し続ける能力」の意味を有する「注意力」の文字を表してなるところ,当該文字は,申立商品の品質,効能を表示したものと認識されることはなく,また,申立商品について,当審において職権をもって調査したが,「注意力」の文字が商品の宣伝広告や企業理念・経営方針等を表示する標章として使用されているという事実も発見できない。
そうすると,本件商標は,これを申立商品について使用しても,自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものとみるのが相当であるから,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとはいえない。
したがって,本件商標は,商標法第3条第1項第6号に該当しない。
(4)まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,申立商品について,商標法第3条第1項第3号,同項第6号及び同法第4条第1項第16号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
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