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Trademark Appeal Case

「水書」の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2020−7732(T2020−7732/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、「水書」の文字と、「SUISHO」の文字を上下2段に表してなり、第16類「筆ペン,毛筆,筆記用具,筆記具用インク,筆記具用インクカートリッジ,墨,ペン,マーキングペン,筆立て,文房具入れ,文房具類」を指定商品として、平成30年8月21日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「デジタル大辞泉には『水書』の語が掲載され、その読みとして『すいしょ』、『みずがき』との記載があり、また、『水書』及び『SUISHO』の文字が出願人の造語であることを示すような書類も提出されていないことからすれば、『水書』、『SUISHO』の文字を上下2段に表してなる本願商標は、『毛筆に墨ではなく水を含ませて書くこと』の意味を表すものというべきであり、これをその指定商品中『筆ペン,毛筆,筆記用具,ペン,文房具類』に使用しても、これに接する取引者、需要者は、当該商品が『水を含ませた毛筆で書くための商品』であると認識するにとどまるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における審尋及び請求人の回答

本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について、職権に基づく証拠調べを実施し、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、令和3年3月1日付け審尋で、その結果を通知するとともに、下記第5と同旨の暫定的見解について通知したところ、請求人は、同年4月13日付け回答書を提出した。

第4 審尋に対する請求人の回答の概要

1 小学校学習指導要領とは、小学校に通う児童の学力の維持向上を図る目的で制作されており、当該目的は商標法のそれとは別異のものであるから、審尋の内容は、商取引の現実において通常考慮するとは想定し難い小学校学習指導要領において、「水書用筆」の文字に「すいしょようひつ」のルビが振られている事実を根拠として、本願商標の自他商品識別力の存在を否定することは根拠が薄弱にすぎるものといわざるを得ない。

本願商標は、「水書」及び「SUISHO」の文字を上下2段に併記して、各々同書・同大・同色・同間隔、かつ、一連一体不可分に書してなるものであるため、商取引の現実においては、本願商標に接する需要者又は取引者は、原査定において認定したような意味合いを看取するというよりは、あくまで商標全体として請求人の創出に係る造語であるものとして捉えるものと考えるのが自然である。

2 本願商標は、「水書」の文字と「SUISHO」の文字とを上下2段に配置したものであるところ、「水書」の文字部分がどのように読まれようとも、本願商標はその読み部分を平仮名や片仮名で表したものでなく欧文字で表すものであり、この点に本願商標の構成上の特異性がある。

審尋において、商品名等をローマ字で表している例をいくつか挙げているが、これらはいずれも「SUISHO」に関する例とは関連性が全く存在せず、この事実は、本願商標が自他商品の識別標識として十分に機能することの証左としてこれを認めるのが現実の取引を鑑みても通例である。

第5 当審の判断

1 商標法第3条第1項第3号該当性について

(1)本願商標について

本願商標は、「水書」の文字と、その表音のローマ字表記と認められる「SUISHO」の文字を中央揃えで上下2段に表してなるところ、その構成中、「水書」の文字は、「毛筆に墨ではなく水を含ませて書くこと」(デジタル大辞泉(小学館https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%B0%B4%E6%9B%B8/))の意味を有するものである。

そして、上記第1のとおり、本願商標は、その指定商品を、「筆ペン,毛筆,筆記用具,筆記具用インク,筆記具用インクカートリッジ,墨,ペン,マーキングペン,筆立て,文房具入れ,文房具類」とするものである。

(2)取引の実情について

ア 我が国の小学校教育における「水書」を巡る状況

平成29年7月、文部科学省は、「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編」(https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_002.pdf)を発表した。これには、「第1学年及び第2学年の〔知識及び技能〕・・・における『点画の書き方や文字の形に注意しながら』書くことの指導について,適切に運筆する能力の向上につながるよう,指導を工夫することを示している。水書用筆(合議体注:「すいしょようひつ」のルビが振られている。)等を使用した運筆指導を取り入れるなど,早い段階から硬筆書写の能力を高めるための関連的な指導を工夫することが望ましい。水書用筆(合議体注:「すいしょようひつ」のルビが振られている。)は,扱いが簡便で弾力性に富み,時間の経過とともに筆跡が消えるという特性をもっている。その特性を生かして,『点画』の始筆から,送筆,終筆(とめ,はね,はらい)までの一連の動作を繰り返し練習することは,学習活動や日常生活において,硬筆で適切に運筆する習慣の定着につながる。また,水書用筆(合議体注:「すいしょようひつ」のルビが振られている。)等を使用する指導は,第3学年から始まる毛筆を使用する書写の指導への移行を円滑にすることにもつながる。」と記載されており、小学校低学年の授業において、水書用筆(すいしょようひつ)を用いた運筆指導を取り入れるなど硬筆書写の指導を工夫することが望ましいと示された。そして、当該発表を受け、原審で挙げた証左に加え、当審における職権による調査によれば、例えば、別掲1(1)ないし(7)のとおり、新聞記事やウェブサイトにおいて、小学校の授業での書道指導における水書に関する取組、及び水書用筆等の活用に関する取組に係る記載が認められる。

イ 原審で挙げた証左に加え、職権による調査によれば、本願の指定商品を取り扱う業界においては、例えば、別掲2(1)ないし(8)のとおり、「水書用筆(すいしょようひつ)」、「水書用ペン(すいしょようペン)」、「水書用紙(すいしょようし)」、「水書板(すいしょばん)」など、水書に用いる商品が製造又は販売されている実情が認められる。

ウ 職権による調査によれば、本願の指定商品を取り扱う業界を始め、広い分野において、別掲3(1)ないし(9)のとおり、商品名等をローマ字で表すことが行われている実情が認められる。

(3)本願商標の識別性について

本願商標の構成中、「水書」の文字は、「すいしょ」の読み、及び「毛筆に墨ではなく水を含ませて書くこと」の意味を有する語である。

また、「水書」の文字は、上記(2)アのとおり、近時、文部科学省が発表した「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編」には、小学校低学年の学習指導において水書用筆(すいしょようひつ)を用いることが望ましい旨記載されており、当該発表を受けて、学校の授業における水書に関する取組、及び水書用筆の活用等に関する取組に係る新聞記事やウェブサイトにおける記載が認められる。

そして、本願の指定商品を取り扱う業界においては、上記(2)イのとおり、水書用の商品が製造又は販売されている実情が認められ、また、上記(2)ウのとおり、本願の指定商品を取り扱う業界を始め、広い分野において、商品名等をローマ字で表すことが行われている実情が認められる。

そうすると、「水書」の文字と、その表音のローマ字表記と認められる「SUISHO」の文字を中央揃えで上下2段に表してなる本願商標を、その指定商品中「筆ペン,毛筆,筆記用具,筆立て,文房具入れ,文房具類」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、本願商標をして、「水書用の商品」であると認識するにとどまるというべきであるから、本願商標は、商品の品質、用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものというのが相当である。

(4)小括

以上のとおり、本願商標は、これをその指定商品中、「筆ペン,毛筆,筆記用具,筆立て,文房具入れ,文房具類」に使用しても、前記意味合いを認識させるにとどまり、単に商品の品質、用途を表示するにすぎないというのが相当である。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

2 請求人の主張について

(1)請求人は、審尋の内容は、商取引の現実において通常考慮するとは想定し難い小学校学習指導要領において、「水書用筆」の文字に「すいしょようひつ」のルビが振られている事実を根拠として、本願商標の自他商品識別力の存在を否定することは根拠が薄弱にすぎるものといわざるを得ない旨、及び、本願商標は、「水書」及び「SUISHO」の文字を上下2段に併記して、各々同書・同大・同色・同間隔、かつ、一連一体不可分に書してなるものであるため、商取引の現実においては、本願商標に接する需要者又は取引者は、原査定において認定したような意味合いを看取するというよりは、あくまで商標全体として請求人の創出に係る造語であるものとして捉えるものと考えるのが自然である旨主張している。

しかしながら、上記1(3)のとおり、「水書」の文字は、「すいしょ」の読み、及び「毛筆に墨ではなく水を含ませて書くこと」の意味を有する語であり、また、「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編」の発表を受けて、学校の授業における水書に関する取組、及び水書用筆の活用等に関する取組に係る新聞記事やウェブサイトにおける記載が認められる。そして、本願の指定商品を取り扱う業界においては、水書用の商品が販売されている実情が認められ、さらに、本願の指定商品を取り扱う業界を始め、広い分野において、商品名等をローマ字で表すことが行われている実情が認められることからすれば、本願商標を、その指定商品中「筆ペン,毛筆,筆記用具,筆立て,文房具入れ,文房具類」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、本願商標をして、「水書用の商品」であると認識するにとどまるというべきである。

また、審尋においては、小学校学習指導要領の解説における「水書用筆」の文字に「すいしょようひつ」のルビが振られている事実のみを根拠にしているのではなく、小学校学習指導要領の解説の発表を受けた上での水書に関する取組や水書用筆の活用等に関する取組に係る事実を併せて示した上で、本願商標の自他商品識別力の存在を否定したものである。

したがって、本願商標は商標全体として請求人の創出に係る造語であるとの請求人の主張は、その前提において失当である。

(2)請求人は、本願商標は「水書」の文字と「SUISHO」の文字とを上下2段に配置したものであるところ、「水書」の文字部分がどのように読まれようとも、本願商標はその読み部分を平仮名や片仮名で表したものでなく欧文字で表すものであり、この点に本願商標の構成上の特異性がある旨、及び、審尋において挙げられた、商品名等をローマ字で表した例は、いずれも「SUISHO」とは関連せず、この事実は、本願商標が自他商品の識別標識として十分に機能することの証左としてこれを認めるのが現実の取引を鑑みても通例である旨主張している。

しかしながら、上記1(3)のとおり、本願の指定商品を取り扱う業界を始め、広い分野において、商品名等をローマ字で表すことが行われている実情が認められることからすれば、「水書」の文字と、その表音のローマ字表記と認められる「SUISHO」の文字を中央揃えで上下2段に表してなる本願商標は、その態様について、構成上の特異性を有するものということはできない。また、仮に、本願の指定商品を取り扱う業界において、商品名等をローマ字で表した事例に、「SUISHO」の語が含まれていないとしても、商品名等をローマ字で表すことが広く行われている実情が認められることは上記1(3)のとおりであるから、これら事例を一般的な取引の実情を示すものとして考慮することに特段の支障はないというべきである。

(3)よって、請求人の主張は、いずれも採用できない。

3 まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、これを登録することはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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