結論テキスト
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 異議2020−900094(T2020−900094/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第6231404号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成31年4月3日に登録出願、第30類「コーヒー,コーヒー飲料,コーヒー豆,焙煎したコーヒー豆」を始めとする第30類、第35類及び第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和2年2月3日に登録査定され、同年3月2日に設定登録されたものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
商標の態様 別掲2のとおり
指定商品 第30類「ヒマラヤ地方で生産された蜂蜜・コーヒー・コーヒー豆・茶・米」を始めとする第30類、第31類及び第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日 平成26年3月9日
設定登録日 平成27年11月13日
商標の態様 別掲3のとおり
指定商品 第30類「ヒマラヤ地方で生産されたコーヒー・コーヒー豆」
登録出願日 平成30年2月26日
設定登録日 平成31年2月22日
申立人は、本件商標はその指定商品及び指定役務中、第30類「コーヒー,コーヒー飲料,コーヒー豆,焙煎したコーヒー豆」(以下「申立商品」という。)について、商標法第8条第1項及び同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。
(1)本件商標の主要部と指定商品・役務
本件商標は図と文字が結合されてなる結合商標である。図の部分はYetiと呼ばれるヒマラヤ山脈に生存すると信じられる伝説上の雪男の図から構成されている。その図の下に英語文字(ローマ字)で「
HIMALAYAN
SPECIALTY
COFFEE
」と表記され、当該文字の称呼は「
ヒマラヤン
・スペシャルティ・
コーヒー
」である。また、本件商標の指定商品の中に「コーヒー,コーヒー飲料,コーヒー豆,焙煎したコーヒー豆」が指定されている。(甲1)
(2)引用商標の主要部と指定商品
ア 引用商標1は、別掲2のとおりの構成からなり、上下二段の箱型の枠の上部枠は横文字にて片仮名で「ヒマラヤ
・ヒマラヤン
」と表示し、その直下に英文字で「Himalaya
・Himalayan
」と表示して、上部商標主要部を構成させている。下部枠は更に縦に六枠に細分化され、左第1枠にはコーヒーを英語読み表記した「
コヒー
」と記されている。
また、指定商品に「ヒマラヤ地方で生産されたコーヒー・コーヒー豆」が指定されている。(甲2)
イ 引用商標2は、最上部にローマ字で「
HIMALAYA
Mountains Sacred Paradise
COFFEE
」と横書きされ、その下の円形に形成された商標部はその外周を円形のドーナツ枠で囲み、その中に右回りに「
HIMALAYA
Mountains
COFFEE
」、左回りに「
HIMALAYA
Sacred Paradise
COFFEE
」とローマ字表記される構成としている。最下部の「COFFEE」の上には、ヒマラヤ山脈の最高峰エベレストを「EVEREST」と英語で表記されている。
また、指定商品は上記アと同じ「ヒマラヤ地方で生産されたコーヒー・コーヒー豆」である。(甲3)
(3)小括
本件商標の主要部と指定商品は、引用商標の主要部と指定商品と同じ又は酷似しており、需要者が出所・品質の差別化をすることは不可能である。
したがって、先願登録に同じ又は類似の商標は登録できないとする商標法第8条第1項に抵触するものである。
(1)本件商標の主要部と指定商品の構成上の違法性
本件商標の主要部を構成する英語表記部「
HIMALAYAN
SPECIALTY
COFFEE
」は商標法第3条第1項第3号が規定する出所の概念を構成するものである。
また、「スペシャルティ」という称呼は、かつてコーヒーの産地・出所が曖昧模糊として、その品質低下を招いたがゆえに人々の信用を失い、結果コーヒー業界全体の売上げが低迷した反省から「出所限定・保証されている商品」という意味で使用することが決められた「コーヒー業界の慣例文言」である。(甲4)
にもかかわらず、本件指定商品は、何らの出所を明記せず、単に「コーヒー・コーヒー豆・コーヒー飲料・焙煎したコーヒー豆」を指定商品としており、この場合、論理的には「世界のどの地方・国のコーヒー・コーヒー豆をも本件商標をもって取り扱うことができる」ことになってしまう。これは正に中国の古語が言うところの「羊頭を掲げて狗肉を売る」を許容する行為に他ならない。
(2)小括
上記のとおり、本件商標は、「指定商品・役務」と相容れない原産地表示に他ならず、商標法第4条第1項第7号の〔類型8〕の原産地冒用以外の何物でもなく「公序良俗」に違反している。
また、コーヒー業界がその経験から「スペシャルティ」を業界用語としたその趣旨に「真っ向から違反した『商標とその指定商品・役務』の構成」となっており、これは法と業界慣例の両方に抵触するものであるから、本件商標は違法である。
上記1及び2のとおり、本件商標は、2重3重の法的・慣例的な違法性を具備しているのであるから、かかる登録を維持することは多方面への直接的・間接的な多大な問題を誘引することが必至で、商標制度の信頼性を失墜させるものと思慮され、取り消すべきである。
当審において、令和2年11月25日付けで商標権者に対し、期間を指定し「本件商標の登録異議の申立てに係る指定商品中、『ヒマラヤ地方で生産されたコーヒー豆を使用したコーヒーを除くコーヒー,ヒマラヤ地方で生産されたコーヒー豆を使用したコーヒー飲料を除くコーヒー飲料,ヒマラヤ地方で生産されたコーヒー豆を除くコーヒー豆,ヒマラヤ地方で生産された焙煎したコーヒー豆を除く焙煎したコーヒー豆』についての登録は、商標法第4条第1項第16号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により取り消すべきものである。」旨の取消理由を通知した。
商標権者は、上記第4の取消理由に対して、指定した期間内に意見を述べていない。
(1)本件商標を構成する文字について
本件商標は、別掲1のとおり、上段に雪男と思われる図形を、下段に「HIMALAYAN SPECIALTY COFFEE」の欧文字(以下「文字部分」という。)を配してなるものであり、文字部分を構成する各文字(語)は順に「ヒマラヤ(山脈)の」、「特別であること」、「コーヒー」といった意味を有するものである。
そして、例えば別掲4に示すように、ヒマラヤ地方でコーヒー豆が生産され、同コーヒー豆やこれを使用したコーヒー等が販売、提供されている実情がある。
そうすると、本件商標を申立商品に使用するときは、需要者は文字部分を「ヒマラヤ地方で生産された特別なコーヒー豆,同コーヒー豆を使用した商品」であることを表す語として認識するものというのが相当である。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第16号の該当性について
本件商標は、上記(1)のとおり、申立商品との関係において「ヒマラヤ地方で生産された特別なコーヒー豆,同コーヒー豆を使用した商品」であることを認識させる「HIMALAYAN SPECIALTY COFFEE」の文字をその構成中に有するから、これを申立商品中「『ヒマラヤ地方で生産されたコーヒー豆,同コーヒー豆を使用した商品』以外の商品」について使用するときは、需要者をして、その商品が「ヒマラヤ地方で生産されたコーヒー豆を使用したコーヒー,ヒマラヤ地方で生産されたコーヒー豆を使用したコーヒー飲料,ヒマラヤ地方で生産されたコーヒー豆,ヒマラヤ地方で生産された焙煎したコーヒー豆」であるかのように、商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるものである。
したがって、本件商標は、申立商品中、「『ヒマラヤ地方で生産されたコーヒー豆,同コーヒー豆を使用した商品』以外の商品」、すなわち「ヒマラヤ地方で生産されたコーヒー豆を使用したコーヒーを除くコーヒー,ヒマラヤ地方で生産されたコーヒー豆を使用したコーヒー飲料を除くコーヒー飲料,ヒマラヤ地方で生産されたコーヒー豆を除くコーヒー豆,ヒマラヤ地方で生産された焙煎したコーヒー豆を除く焙煎したコーヒー豆」について、商標法第4条第1項第16号に該当する。
申立人は、上記第2の引用商標を挙げ、本件商標は商標法第8条第1項に抵触する旨主張しているが、当該引用商標は本件商標の登録査定時において設定登録されているものであるから、当審は、かかる主張は商標法第4条第1項第11号に該当する旨の主張と判断し、以下検討する。
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、上段に雪男と思われる図形(以下「図形部分」という。)を、下段に文字部分(「HIMALAYAN SPECIALTY COFFEE」)を配してなるものである。
そして、本件商標の文字部分は、上記1のとおり、申立商品との関係において、「ヒマラヤ地方で生産された特別なコーヒー豆,同コーヒー豆を使用した商品」であるとの商品の品質を表示したものと認識させるものであるから、自他商品識別標識としての機能を有しないものである。
そうすると、本件商標の文字部分は、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえず、独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものであって、それを分離抽出し他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することはできないものといわなければならない。
してみれば、本件商標は、その文字部分から出所識別標識としての称呼及び観念を生じず、また、その構成全体、及びそれ自体独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得る図形部分からも特定の称呼及び観念を生じないものと判断するのが相当である。
(2)引用商標
引用商標1及び引用商標2は、別掲2及び別掲3のとおりの構成からなるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否
ア 本件商標と引用商標の類否を検討すると、両者の上記(1)と(2)のとおりの外観は、それらの構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。
また、称呼及び観念においては、本件商標は特定の称呼及び観念を生じないものであるから、比較することができないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観において相紛れるおそれがなく、称呼及び観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。
さらに、本件商標と引用商標とが類似するというべき事情は見いだせない。
イ なお、申立人は、本件商標の文字部分(「HIMALAYAN SPECIALTY COFFEE」)を分離抽出し、その上で本件商標と引用商標は類似する旨主張しているが、かかる主張は、上記(1)のとおり、本件商標は文字部分を分離抽出し他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することができないものであるから、その前提において理由がない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、申立商品と引用商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
(1)申立人は、本件商標と指定商品・役務との関係は原産地冒用である、「SPECIALTY(スペシャルティ)」は「出所限定・保証されている商品」に使用すると決めたコーヒー業界の慣例に反するなどとして、本件商標は、公序良俗に違反し商標法第4条第1項第7号に該当する旨主張している。
(2)しかしながら、申立人提出の証拠によれば、「(スペシャルティコーヒーとは)生産国においての栽培管理、収穫、生産処理、選別そして品質管理が適正になされ、欠点豆の混入が極めて少ない生豆であること。」「スペシャルティコーヒーの要件として、サステナビリティとトレイサビリティの観念は重要なもの」など記載した書面(甲4)は確認できるものの、「SPECIALTY(スペシャルティ)」の語がコーヒー業界で使用が決められた語であると認め得る証左は見いだせないし、何より、本件商標はその構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形ではなく、さらに、本件商標の登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合など、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当すると認めるに足りる事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものといえない。
なお、結論掲記のとおりの取消に係る指定商品以外の申立商品については、品質(産地)の誤認を生じさせるおそれのないものである。
以上のとおり、本件商標の登録異議の申立て係る指定商品についての登録は、その指定商品中結論掲記の指定商品について商標法第4条第1項第16号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
また、本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品については、本件商標の登録を取り消すべき理由がないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。