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Trademark Appeal Case

自動車形状立体商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2020−14092(T2020−14092/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲1(1)のとおりの構成よりなり、第12類、第35類、第39類、第41類、第43類、第44類及び第45類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成30年7月17日に立体商標として登録出願されたものである。

その後、原審における令和元年9月30日付けの手続補正書により、その指定商品及び指定役務は、別掲1(2)のとおりの商品及び役務に補正された。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)

(1)商標法第3条第1項柱書

本願商標は、その指定役務に係る小売等役務(商標法第2条第2項に規定する役務)は、全く業種が異なり、類似の関係にもないから、これら小売等役務のいずれにも使用されている又は近い将来使用されることについて疑義がある。

また、本願商標は、第35類、第39類及び第41類に属する指定役務において、広い範囲にわたる役務を指定しているため、それらの全ての役務について使用されている又は近い将来使用されることについて疑義がある。

さらに、本願商標は、自動車の形状を表したものと容易に認識できるから、その指定商品中「荷役用索道,カーダンパー,カープッシャー,カープラー,陸上の乗物用の動力機械器具(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,落下傘,乗物用盗難警報器,車いす,陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),船舶並びにその部品及び附属品,航空機並びにその部品及び附属品,鉄道車両並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,乳母車,人力車,そり,手押し車,荷車,馬車,リヤカー,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」については、それらの形状とは到底なり得ないばかりでなく、店頭看板などの広告としての使用も想定し難いため、これら商品との関係においては、出願人が自己の業務について使用するものとは認められない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。

(2)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号

本願商標は、自動車の形状を表したものと容易に認識させる形状からなる立体商標である。

そして、本願商標の構成中、エンジン部分と思われる箇所の側面には、何らかの模様のようなものが確認できるが、その大きさや位置からすると、商品又は役務の出所識別標識としての使用態様とは認識できない。

そうすると、本願商標は、自動車そのものの範囲を出ない形状からなる立体商標であり、それ以外に自他商品役務の識別標識としての機能を果たし得る部分を見出せない。

そのため、本願商標は、その指定商品及び指定役務中、第12類「牽引車,自動車並びにその部品及び付属品」、第39類「自動車の運転の代行,自動車の貸与」、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),娯楽施設の提供,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与」に使用しても、単に商品の品質若しくは形状又は役務の質若しくは役務の提供の用に供する物を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品又は前記役務以外の「仮装用衣服の貸与」に使用するときは、商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるため、商標法第4条第1項第16号に該当する。

(3)商標法第3条第1項第6号

本願商標は、自動車の形状を表したものと容易に認識させる形状からなる立体商標である。

そして、本願商標の構成中、エンジン部分と思われる箇所の側面には、何らかの模様のようなものが確認できるが、その大きさや位置からすると、商品又は役務の出所識別標識としての使用態様とは認識できない。

そうすると、本願商標は、自動車そのものの範囲を出ない形状からなる立体商標であり、それ以外に自他商品役務の識別標識としての機能を果たし得る部分を見出せない。

そのため、本願商標は、その指定役務中、第35類「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に使用しても、単に役務の取扱商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。

(4)商標法第4条第1項第11号

本願商標は、別掲2に掲げる登録商標を含む商標(以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。)と同一又は類似する商標であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

なお、原査定では、別掲2に掲げる商標を含め、「SMC」の文字に相当する構成要素を含む商標よりなる、23件の登録商標及び商標登録出願を拒絶の理由として引用している。

3 当審による審尋

(1)当審の暫定的見解(商標法第3条第1項第6号について)

ア(ア)本願商標は、別掲1(1)のとおり、4つの車輪と1つの座席を有する、露出した骨組みや部品(ウイング、バンパー、プロテクター、ハンドル、ライト、ウィンカー、ミラー、エンジン、エキゾーストなど)を組み合わせた車体よりなる、レーシングカーを模した乗物(立体的形状)を表してなるものである。

(イ)そして、本願商標の指定商品及び指定役務と関連して、現にレーシングカーを模した乗物が取引されている実情や、そのような乗物を役務提供手段又は広告媒体として利用したサービス提供が行われている実情がある(別掲3)。

(ウ)そうすると、本願商標は、その指定商品及び指定役務との関係において、商品の形状、役務の提供の用に供する物、取引対象物又は広告媒体を表してなると認識、理解できるもので、その形状も、レーシングカーを模したデザインとするため、また、乗物として走行する機能を確保するためのものにすぎず、客観的に見て、商品(又はレーシングカーを模した乗物)の機能又は美感に資することを目的として採用されたもの、又は機能若しくは美感に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものにすぎない。

以上を踏まえると、本願商標は、その指定商品及び指定役務に使用するときは、それに接する需要者及び取引者をして、単に商品の形状、役務の提供の用に供する物、取引対象物又は広告媒体を表してなると認識、理解されるにすぎず、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できる特徴を備えるものではない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。

イ なお、請求人は、本願商標の構成中、エンジン部分やハンドル部分にあるとされる表示を根拠に、本願商標は自他商品役務の出所識別標識としての機能を有する旨を主張するが、本願商標は、上記ア(ア)のとおり、レーシングカーを模した乗物の立体的形状を表してなると認識できるもので、請求人主張の表示は、その配置及び非常に小さく表されていることに鑑みると、本願商標の構成全体の中では埋没して印象に残らない程度の副次的な構成要素であるばかりか、商標登録出願された商標(商標見本)からはその子細の確認、把握すら極めて困難であるから、請求人主張の構成要素は、乗物の構成部品(エンジン、ハンドル)の何らかの模様と認定できる程度のものにすぎず、本願商標の識別性の有無の判断に影響しない。

(2)職権証拠調べ(商標法第3条第1項第6号について)

当審において、本願商標が、その指定商品及び指定役務との関係において、商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲3に掲げる事実(レーシングカーを模した乗物及びそれを利用したサービスの事例)を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条の規定に基づき、その結果を請求人に通知し、意見を求めた。

(3)その他

請求人が審理に必要と考える書面の提出を求めた。

4 請求人による回答

(1)本願商標は、レーシングカーやレーシングカートではなく公道用カートを模した立体的形状物であって、そもそも車両に広告物を掲示しないのが取引の実情であり、また広告として立体形状物を使用する場合、車両に広告宣伝用の表示を付さないことは明らかであるから、別掲3の事例は、取引の実情とは乖離した証拠である。

(2)公道用カートにおける取引の実情によれば、本願商標に係る立体形状物の注視する場所は、「SMC」のエンブレムが付されているハンドル部分やエンジン部分であって、これらの部分は全体としては表示が小さいとしても、取引者及び需要者が識別性を有する要部があるとの認識の上で、その商標を識別する。

(3)請求人は、手続補正書による減縮を含め、さらなる対応を行う用意がある。

5 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号及び同項第6号該当性

ア 本願商標について

(ア)本願商標は、別掲1(1)のとおり、4つの車輪と1つの座席を有する、露出した骨組みや部品(ウイング、バンパー、プロテクター、ハンドル、ライト、ウィンカー、ミラー、エンジン、エキゾーストなど)を組み合わせた車体よりなる、レーシングカーを模した乗物(立体的形状)を表してなるものである。

(イ)そして、本願商標の指定商品及び指定役務と関連して、別掲3のとおり、現にレーシングカーを模した乗物が取引されている実情や、そのような乗物を役務提供手段又は広告媒体として利用したサービス提供が行われている実情がある。

(ウ)そうすると、本願商標は、その指定商品及び指定役務との関係において、商品の形状、役務の提供の用に供する物、取引対象物又は広告媒体を表してなると認識、理解できるもので、その形状も、レーシングカーを模したデザインとするため、また、乗物として走行する機能を確保するためのものにすぎず、客観的に見て、商品(又はレーシングカーを模した乗物)の機能又は美感に資することを目的として採用されたもの、又は機能若しくは美感に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものにすぎない。

(エ)以上を踏まえると、本願商標は、その指定商品及び指定役務中、乗物と関連する商品又は乗物を利用する役務に使用するときは、単に商品の形状又は役務の提供の用に供する物を表してなると認識、理解されるにすぎないから、商標法第3条第1項第3号に該当する。

また、本願商標は、上記商品及び役務以外の指定商品及び指定役務について使用するときは、単に商品又は役務の広告媒体又は取引対象物を表してなると認識、理解されるにすぎず、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できる特徴を備えるものではないから、商標法第3条第1項第6号に該当する。

イ 請求人の主張について

(ア)請求人は、本願商標は、自動車の形状のみより構成される立体商標ではなく、エンジン部分及びハンドル部分に「SMC」と円形の図形を組み合わせた図柄が表示されているから、識別性を有する図形を有する商標であること、それは全体として小さい表示であるとしても、取引者及び需要者が識別性を有する要部があるとの認識の上で、その商標を識別すること、また、本願商標に係る公道用カートの全長は数メートルに及ぶから、出願書面から文字及び図形が認識し難いのは、出願書面に添付する画像の解像度の限界であって、特許庁の出願受理のシステム上の不手際によるものである旨を主張する。

しかしながら、本願商標は、上記ア(ア)のとおり、レーシングカーを模した乗物の立体的形状を表してなると認識できるもので、請求人主張の構成要素(エンジンカバーやハンドル部分にあるとされる表示)は、その配置及び非常に小さく表されていることに鑑みると、本願商標の構成全体の中では埋没して印象に残らない程度の副次的な構成要素であるばかりか、商標登録出願された商標(商標見本)からはその子細の確認、把握すら極めて困難であるから、請求人主張の構成要素は、乗物の構成部品(エンジン、ハンドル)の何らかの模様と認定できる程度のものにすぎず、本願商標の識別性の有無の判断に影響しない。

また、商標の登録適格性は、願書に記載された「商標登録を受けようとする商標」(商標法第5条第1項第2号)に基づき認定、判断すべきであって、請求人主張のような縮尺で、願書に記載された商標から明瞭に確認できないような表示を考慮して登録適格性を判断することは適切ではない。すなわち、登録商標の範囲は、願書に記載した商標(8cm平方)に基づいて定められ(商標法第27条第1項、商標法施行規則様式第2備考7ロ)、商標権者はその登録商標の使用をする権利を占有する(同法25条)ことになり、その商標の公衆に対する周知は、商標公報への掲載を通じて行われる(同法12条の2第2項第3号、第18条第3項第3号)から、願書の記載から子細が確認、把握すら困難な構成要素に基づき、商標全体としての登録適格性を判断することは、結果として、公衆が確認できない要素に基づき商標権の効力を発生せしめ、第三者使用を制限することにもつながりかねず、適切な判断手法とはいえないこと明らかである。

(イ)請求人は、本願商標は、レーシングカーやレーシングカートではなく公道用カートを模した立体的形状物であって、そもそも車両に広告物を掲示しないのが取引の実情であること、また、広告として立体形状物を使用する場合、車両に広告宣伝用の表示を付さないことは明らかであるから、別掲3の事例は、取引の実情とは乖離した証拠である旨を主張する。

しかしながら、請求人主張の趣旨や根拠は不明であるものの、別掲3の事例にもあるとおり、レーシングカーを模した乗物(公道用カートを含む。)やそれを利用したサービスが現に存在することをも鑑みると、本願商標は、その指定商品及び指定役務との関係において、その広告媒体とも認識、理解されるといえる。

(ウ)請求人は、手続補正書による減縮を含め、さらなる対応を行う用意がある旨を主張する。

しかしながら、提出用意があるとする手続補正書の具体的内容も不明であって、当審における審理(特に、商標法第3条第1項第3号及び同項第6号該当性)に与える影響は定かではなく、また、当審は既に、上記3(3)のとおり、審理に必要な書面の提出を求めているにもかかわらず、請求人は具体的な手続(手続補正書の提出)をしないのだから、これ以上審理を猶予し、手続を遅延させることは適切ではないと判断する。

(2)商標法第4条第1項第11号該当性

本願商標は、上記(1)ア(ア)のとおり、レーシングカーを模した乗物(立体的形状)を表してなるところ、これより特定の称呼及び観念は生じない。

なお、本願商標には、エンジン部分やハンドル部分に「SMC」を含む図形が付されていることが請求人により主張されているものの、その構成要素は、上記(1)イ(ア)のとおり、その配置及び非常に小さく表されていることに鑑みると、本願商標の構成全体の中では埋没して印象に残らない程度の副次的な構成要素であるばかりか、商標登録出願された商標(商標見本)からはその子細の確認、把握すら極めて困難であるから、乗物の構成部品(エンジン、ハンドル)の何らかの模様と認定できる程度のものにすぎないもので、当該構成要素は本願商標の構成要素の中において強く支配的な印象を与えるものではないため、当該文字部分(図形部分)を独立した出所識別標識としての機能を果たす要部として分離抽出し、他の商標と類否判断を行うことは許されない。

そうすると、本願商標について、請求人主張の図形部分(「SMC」の文字を含む。)を要部として分離抽出し、それに相当する外観、称呼及び観念を比較した上で、「SMC」の文字に相当する構成要素を含む引用商標と類似することを前提として、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとした原審の認定、判断は適切ではない。

(3)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないが、同法第3条第1項第3号及び同項第6号に該当するから、その他の拒絶理由について言及するまでもなく、登録することはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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