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Trademark Appeal Case

産業カウンセリングの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2020−11226(T2020−11226/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は,「産業カウンセリング」の文字を横書きしてなり,第35類,第41類及び第44類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として,平成30年11月22日に登録出願,その後,指定役務については,原審における令和元年12月26日付け並びに当審における同2年8月12日付け,同年8月24日付け及び同3年5月7日付け手続補正書により,最終的に,第41類「産業カウンセラーとしての産業カウンセリング能力に関する資格検定試験の実施及び資格の認定・付与並びにこれらに関する情報の提供」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は,「本願商標は,『産業カウンセリング』の文字を普通に用いられる方法で横書きしてなるところ,『産業カウンセリング』の文字は,『職場内の労働者のために行われるカウンセリング』ほどの意味合いを有する語として使用されている実情があり,また,『産業カウンセリング』に関するセミナーや,『産業カウンセリング』に関するコースが大学で開講される等,本願の指定役務に関連する業界において,当該語が使用されている実情もある。そうすると,本願商標をその指定役務に使用しても,これに接する需要者は,当該役務が『職場内の労働者のために行われるカウンセリング』に関連する役務であることを認識するにとどまるから,本願商標は,単に役務の質を普通に用いられる方法で表示するものである。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,その指定役務中の前記指定役務以外の役務に使用するときは,役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから,商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における審尋

当審において,令和3年4月8日付け審尋により,原審で示した事実(別掲1)に加え,別掲2に掲げる事実を記載した上で,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとの暫定的見解を示し,期間を指定した上で請求人に対し意見を求めた。

第4 審尋に対する請求人の回答の要旨

1 請求人は,令和3年5月7日付け手続補正書により,第41類の指定役務「産業カウンセリング能力に関する資格検定試験の実施及び資格の認定・付与並びにこれらに関する情報の提供」を「産業カウンセラーとしての産業カウンセリング能力に関する資格検定試験の実施及び資格の認定・付与並びにこれらに関する情報の提供」に補正した。

2 補正後の指定役務における「資格」は,単に「産業カウンセリングをする能力を有する」資格ではなく,「『産業カウンセラー』という具体的な資格名称を標榜できる」資格であるから,本願商標は,役務の質を表示したものと理解するにとどまるということはできない。

3 「産業カウンセラー」は,本願商標の出願人が保有している第41類の登録商標である。また,審尋に示した各証拠からも,「産業カウンセラー」が請求人により付与される認定資格の名称であることは明らかである。

4 本願の拒絶査定が確定した場合,「産業カウンセラー」を標榜することが誰でも可能と誤って認識されるおそれがある。請求人が長年にわたり全国的な組織として多大な努力を費やし確立した認定資格「産業カウンセラー」が広く一般に開放された場合,「産業カウンセラー」なる資格を持つ者の産業カウンセリング能力の水準,レベルが低下するおそれがある。

第5 当審の判断

1 商標法第4条第1項第16号について

本願の指定役務は,前記第1のとおり補正された結果,本願商標をその指定役務に使用をしても,役務の質の誤認を生ずるおそれはなくなった。

したがって,本願商標が商標法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定の拒絶の理由は解消した。

2 商標法第3条第1項第3号について

(1)商標法第3条第1項第3号該当性

ア 本願商標

本願商標は,「産業カウンセリング」の文字を横書きしてなるものである。

ところで,別掲1及び別掲2(1)に示す事実からすれば,「産業カウンセリング」とは,我が国においては,1950年代以前から行われ,1954年に本格的に導入され,「職場内の労働者のために行われるカウンセリング」ほどの意味合いをもって,労働者が抱えるあらゆる問題の解決に資する,カウンセリングの一種を表す語として使用されてきたものと認められる。

そうすると,「産業カウンセリング」と同一の文字からなる本願商標は,上記意味合いをもつ,労働者が抱えるあらゆる問題の解決に資する,カウンセリングの一種を表したものというべきである。

イ 本願の指定役務

本願の指定役務は,上記第1のとおり,「産業カウンセラーとしての産業カウンセリング能力に関する資格検定試験の実施及び資格の認定・付与並びにこれらに関する情報の提供」に補正されたものである。

そして,請求人提出の証拠及び別掲2に示す事実からすれば,「産業カウンセラー」とは,請求人が認定する資格の一つであることから,本願の指定役務は,その資格を欲する者を対象とした「『産業カウンセリング能力』に関する資格検定試験の実施及び資格の認定・付与並びにこれらに関する情報の提供」である。

ウ 本願商標とその指定役務の関係について

本願商標は,上記アのとおり,「職場内の労働者のために行われるカウンセリング」ほどの意味合いをもって使用される,カウンセリングの一種を表したものというべきであり,また,本願の指定役務は,上記イのとおり,対象を特定した「産業カウンセリング能力に関する資格検定試験の実施及び資格の認定・付与並びにこれらに関する情報の提供」である。

そして,請求人以外の者による,「産業カウンセリング」を内容とする養成講座や認定が実施されている実情がある(甲7,別掲2(2)ウ)。

そうすると,本願商標をその指定役務に使用しても,これに接する取引者,需要者は,対象を特定してはいるものの,要するに「職場内の労働者のために行われるカウンセリング能力」に関する「資格検定試験の実施及び資格の認定・付与並びにこれらに関する情報の提供」(以下,「資格検定試験等」という場合がある。)であることを表わしたものであると理解するにとどまるというべきである。

エ 小括

以上よりすれば,本願商標を補正後の指定役務について使用をしても,これに接する取引者,需要者は,その役務が「職場内の労働者のために行われるカウンセリング能力」に関する資格検定試験等であること,すなわち,本願商標は役務の内容,質を表示したものと理解するにとどまるというべきであるから,本願商標は自他役務の識別力を欠くものである。

したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。

(2)請求人の主張について

ア 請求人は,本願商標を養成講座や資格認定試験等について長年使用しており,本願商標を標榜して資格検定試験等を実施している事業者等は他に存在せず,また,本願商標は,補正後の指定役務との関係で,具体的な資格名称を標榜できる資格であるから,役務の質を表示したものと理解するにとどまるものではない旨主張する。

しかしながら,提出された証拠からすれば,請求人が長年独占的に使用してきたことがうかがえる名称は,本願商標「産業カウンセリング」ではなく「産業カウンセラー」であり,また,上記(1)のとおり,請求人以外の者によって「産業カウンセリング」を内容とする養成講座や認定が実施されていることからすれば,「産業カウンセリング」の文字が請求人のみによって長年使用されてきたと認めることはできない。

そして,上記(1)のとおり,本願商標は,これに接する取引者,需要者にその指定役務の内容,質を表示したものと理解させるものであるから,本願の指定役務を請求人の業務に限定したものに補正をしたとしても,そのことによって本願商標から生じる意味合いや,取引者,需要者による本願商標の認識が変わるものではないというべきである。

また,別掲2(2)及び請求人提出の証拠によれば,「産業カウンセリング」は,「産業カウンセラー」のほかにも,「臨床心理士」,「キャリアコンサルタント」等の有資格者が行うことができる(甲3)ことからすれば,将来,請求人以外の者によってそれらの者を対象とする「産業カウンセリング能力」に関する資格検定試験等を実施することが可能であるにもかかわらず,本願商標を登録することは,それにより,請求人以外の者による本願の指定役務と類似の役務についてまで「産業カウンセリング」の使用を不当に抑制,制限することにつながるおそれがあることから,特定人による本願商標の独占使用を認めることは公益上適当でないというべきである。

イ 請求人は,「産業カウンセラー」,「産業カウンセリング」等の過去の商標登録例を挙げ,本願商標も登録すべき旨主張する。

しかしながら,上記のとおり「産業カウンセリング」と「産業カウンセラー」とは,その意味,内容及び性質が異なるものであり,また「産業カウンセリング」の商標登録例は本願の指定役務とは異なる分野におけるものであるから,これら登録例と本願商標とを同一に論じるべきものではなく,これら登録例が本願商標の判断に影響を与えるものではない。

ウ したがって,請求人の主張は,いずれも採用することができない。

(4)まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第16号に該当しないとしても,同法第3条第1項第3号に該当するから,これを登録することはできない。

よって,結論のとおり審決する。

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