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Trademark Appeal Case

クールジャパンの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2020−14191(T2020−14191/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、「COOL JAPAN ACADEMY」の文字を標準文字で表してなり、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,語学講座の提供及び語学講座における知識の教授,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,インターネット・携帯電話を含む通信回線を用いて行う音楽・音声・画像・動画の提供及びこれらに関する情報の提供,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),音響・映像・静止画及び動画の制作並びに演奏又は上映,放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),音響用又は映像用のスタジオの提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,写真の撮影,カメラの貸与,光学機械器具の貸与」を指定役務として、平成31年2月14日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

1 本願商標は、「COOL JAPAN ACADEMY」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「COOL JAPAN」及びその片仮名表記の「クールジャパン」の文字は、「アニメやマンガ、ファッションなど、海外で評価されている日本文化。またそれらの日本の文化ソフト領域が国際的に評価される現象。」の意味を表すとともに、日本の魅力を国内外に発信する政府の施策(事業)を表すものとして広く使用されており、国民の間で広く認識されているものと認められる。

そうすると、「COOL JAPAN」の文字を含む本願商標は、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する著名な標章と類似する商標であるというのが相当である。

したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当する。

2 上記1のとおり、政府が「COOL JAPAN」又は「クールジャパン」の文字を使用して様々な施策(事業)を広く行っていることからすれば、「COOL JAPAN」の文字を含む本願商標は、政府による一施策(事業)を表すものかのように認識されるおそれがあるというのが相当である。

そうすると、一私人である出願人が、政府の施策(事業)を表すものと認識されるおそれがある本願商標を、自己の商標として独占的に使用することは、公正な競業秩序を害し、社会公共の利益に反するおそれがあるというのが相当である。

したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第3 当審においてした証拠調べ

審判長は、本願商標が商標法第4条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲1に示すとおりの事実を発見したので、令和3年4月6日付けで、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、上記証拠調べの結果を通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えた。

第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見

請求人は、前記第3の証拠調べ通知に対し、要旨以下のとおり、意見を申し立てた。

1 別掲1(1)アの文献は、「クールジャパン」(以下、「クール・ジャパン」や「cool japan」も含む。)の語は、日本政府が海外への文化宣伝・輸出政策で使用している用語であることも肯定する文献の一つであることは確かである。しかし、「クールジャパン」の語は、日本政府が海外への文化宣伝・輸出政策で使用する用語としてのみ用いられているわけではないことを示す証拠でもある。すなわち、海外で評価されている日本文化であったり、そのコンテンツそのものであったり、というように本来的な「クールジャパン」の語義が第一義的に多く説明されているところ、原審のように、クールジャパンの語義を一面的に捉えることは、取引の実情を見誤っている。

2 別掲1(1)エのウェブサイトでは、正確に「クールジャパン」に対して説明されており、語義が拡大解釈されていることも示している。本来の意味合いから拡大・拡張・派生されて、「日本政府が海外への文化宣伝・輸出政策で使用する用語。」という意味合いでの使用もあるが、本来の意味合いでも大いに使用されている取引の実情を明確に示している。原審は、クールジャパンの語義を拡大・拡張・派生した意味合いの一面でしか捉えていないが、その捉え方は誤りである。

3 別掲1(2)新聞記事情報及び別掲1(3)インターネット記事情報は、確かにクールジャパンという用語を用いて、政策として取り組まれている側面があることを示す証拠である。一方、請求人が検索した2019年度版日経MJ誌(電子版)において検出された6件の記事や、請求人が検索したインターネット記事12件には、クールジャパンが政府の政策であることについての言及はない。このように、クールジャパンの本来的な意味合いで報道する新聞・インターネット記事も多数存在する。

4 新聞等の記事は、報じる内容でクールジャパンの意味合いは変わるわけであり、証拠調べで見出された証拠において、我が国の政策名として報じている記事が存在する事実があるからといって、クールジャパンという語は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する著名な標章であるとの一律的な断定は妥当ではない。

第5 当審の判断

1 商標法第4条第1項第6号の趣旨

商標法第4条第1項第6号は、同号に掲げる標章を一私人に独占させることは、同号所定の団体の信用や権威を損ない、国際信義に反することから、これを不登録事由としたものと解される(知財高裁平成29年(行ケ)第10208号、平成30年4月11日判決言渡)。

2 商標法第4条第1項第6号該当性について

(1)「COOL JAPAN」の文字及びその片仮名表記である「クールジャパン」の文字が、「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章で著名」であることについて

ア 「COOL JAPAN(以下、欧文字の小文字表記や片仮名表記も含む。)」とは、海外において「cool」(かっこいい)と捉えられ、評価されている日本文化(アニメ、マンガ、ゲーム等のコンテンツ、ファッション、食、伝統工芸、デザイン、ロボットや環境技術など。)を表す語であったところ、2010年に、経済産業省が、上記日本文化を海外に発信する「クールジャパン」事業を開始し、中小企業等の販路開拓支援や訪日外国人(インバウンド)の拡大を図ってきたものである。

そして、2013年には、安倍晋三首相(当時)の下、「日本再興戦略」(同年6月14日閣議決定)において、伝統文化・地域文化など、日本の豊かな文化を背景としたコンテンツ、日本食・日本産酒類などの「日本の魅力」を効果的に発信し、産業育成や海外需要の取り込みに結実させるため、「クールジャパン」を国家戦略と位置付け、官民一体となって取り組みを強化することとなった。該クールジャパン戦略は、安倍政権の成長戦略の柱の一つとされ、担当閣僚が新たに設置された(現在に至るまで、クールジャパン戦略担当大臣が置かれているのは、当審において顕著な事実である。)ほか、経済産業省、内閣府、総務省等の日本政府や地方自治体、関係機関が連携してクールジャパン政策を推進し、様々なクールジャパン推進事業を行うようになった。

上記日本政府の取り組みにより、「COOL JAPAN」の語は、日本発の文化を積極的に世界に発信し、産業育成や海外需要の取り込みを支援するといった日本政府の施策の総称としても、我が国において広く知られるようになった。

なお、該クールジャパン戦略は、2018年頃までは、日本文化を海外に売り込む「輸出型」の施策が中心だったが、同年以降は、訪日外国人(インバウンド)を通じた「インバウンド型」クールジャパン事業を重点施策として推し進めると報道されている(以上の内容について、別掲1及び別掲2参照。)。また、日本の魅力を海外に発信する取組(個別・企業の商品・サービスの販売促進は除く。)において、「Japan.Cool Japan.」ロゴマークの使用を希望する事業者は、内閣府に申請して使用することが可能である(別掲3参照)。

イ 「COOL JAPAN」の語は、上記アのとおり、日本発の文化を積極的に世界に発信し、産業育成や海外需要の取り込みを支援するといった施策の総称として、2010年以降、日本政府や地方自治体、関係機関が行っているクールジャパン推進事業の名称を表示する際に用いられており、かつ、公益事業の名称を表示する語として、多数の新聞記事及びインターネット情報等に取り上げられている。

そうすると、「COOL JAPAN」の文字は、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であり、かつ、一般に広く知られている著名な標章と判断するのが相当である。

(2)本願商標と「COOL JAPAN」の標章(以下「引用標章」という場合がある。)の類否について

ア 判断基準

商標の類否は、同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。

複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解される商標の類否判断に当たり、構成部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合には、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、〔1〕その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、〔2〕それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。

イ 本願商標の構成中の「COOL JAPAN」の文字部分を類否判断の対象とすることの可否

本願商標は、「COOL JAPAN ACADEMY」の文字を標準文字で表してなるものである。

そして、本願商標の構成中、「ACADEMY」の文字は、「高等教育機関、学士院、中等[高等]学校」等を意味する語(「ベーシックジーニアス英和辞典」株式会社大修館書店)として一般に広く知られており、本願の指定役務に含まれる「技芸・スポーツ又は知識の教授,語学講座の提供及び語学講座における知識の教授」との関係においては、役務の質を表示したものとして看取、理解され得るものであることから、役務の出所識別標識として機能しないもの又はその機能が極めて弱いものといえる。

他方、本願商標の構成中、「COOL JAPAN」の文字は、上記(1)のとおり、「海外で評価されている日本文化」の意味合いのほか、「日本発の文化を積極的に世界に発信し、産業育成や海外需要の取り込みを支援する日本政府の施策の総称」として著名な標章である「COOL JAPAN」とその構成文字を同じくするものであるから、当該部分は、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。

そうすると、本願商標の構成中、「COOL JAPAN」の文字を要部として抽出し、当該構成部分のみを引用標章と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。

ウ 本願商標と引用標章の類否

本願商標の要部である「COOL JAPAN」の文字と引用標章とを対比すると、いずれも「COOL JAPAN」の文字からなる点で外観が同一であり、また、「クールジャパン」の称呼が生じる点で、称呼が同一である。そして、本願商標の要部及び引用標章は、「海外で評価されている日本文化」という観念だけでなく、「日本発の文化を積極的に世界に発信し、産業育成や海外需要の取り込みを支援する日本政府の施策の総称」という観念も生じる点で、観念が同一である。

したがって、本願商標と引用標章は類似するというべきである。

(3)小括

以上によれば、本願商標は、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名な「COOL JAPAN」と類似の商標である。

したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当する。

3 請求人の主張について

(1)請求人は、「クールジャパン」の語は、日本政府が海外への文化宣伝・輸出政策において使用する用語としてのみ用いられているわけではなく、海外で評価されている日本文化や、コンテンツそのもの、というように本来的な語義が第一義的に説明されているところ、クールジャパンの語義を一面的に捉えることは、取引の実情を見誤っており、該語は、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する著名な標章であるとの一律的な断定は妥当ではない旨主張する。

しかしながら、「COOL JAPAN」の文字が「海外で評価されている日本文化」の意味合いで第一義的に説明されている事実があるとしても、そのことが、「COOL JAPAN」の文字が「日本発の文化を積極的に世界に発信し、産業育成や海外需要の取り込みを支援する日本政府の施策の総称」として著名な標章であることをも否定する理由となるものではない。むしろ、上記2(1)のとおり、日本政府が国家戦略として、様々なクールジャパン事業を推進しており、それらが多数の新聞記事等において報道されていることからすれば、「COOL JAPAN」の文字は、公益事業の名称を表示する語としても、我が国において広く知られているというべきである。

そして、上記1のとおり、商標法第4条第1項第6号の趣旨は、同号の規定に該当する商標、すなわち、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業を表示する著名な標章と同一又は類似の商標に当たるものを、これに無関係な私人が商標登録をすることによって独占することは、これらの団体や事業の権威や信用を損なうものとみなして、当該商標登録を排斥するものとした規定であると解するのが相当である。

そうすると、商標法第4条第1項第6号の立法趣旨、「COOL JAPAN」の文字は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する著名な標章であること、又は同号で規定する標章を一私人に独占させることについて、国民一般に与える影響の大きさをも考慮すれば、本願商標は、本号に該当するというべきである。

したがって、請求人による上記主張は、採用することができない。

(2)請求人は、本願商標を構成する「COOL」及び「JAPAN」の語は普通名称であり、「COOL JAPAN」についても「海外で評価されている日本文化」の意味を表す普通名称であること、また、「ACADEMY」の語も周知な英単語であることから、「COOL JAPAN ACADEMY」の結合の程度は強いと述べ、本願商標は、同書、同大、等間隔でまとまりよく一体的に表されており、いずれかの文字部分が独立して、取引者、需要者に対し、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではなく、また、構成全体から生じる称呼も、「クールジャパンアカデミー」と無理なく一連に称呼し得るものであるから、本願商標は一連一体からなる商標である旨主張する。

しかしながら、本願商標の「COOL JAPAN」の構成部分が、役務の出所識別標識として強い印象を与えるのに対して、「ACADEMY」の構成部分は、役務の出所識別標識として機能しないもの又はその機能が極めて弱いものといえることから、「COOL JAPAN」の構成部分を抽出し、この部分だけを引用標章と比較して商標の類否を判断することが許されることは、上記2(2)イのとおりである。

したがって、請求人による上記主張は、採用することができない。

4 まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当するものであるから、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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