結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2020−890030(T2020−890030/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第5750450号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成26年5月29日に登録出願、第3類「洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料」を指定商品として、同27年2月17日に登録査定、同年3月20日に設定登録されたものである。
登録第1873095号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「シスレー」の片仮名と「SISLEY」の欧文字を2段に書してなる
登録出願日:昭和58年9月21日
設定登録日:昭和61年6月27日
書換登録日:平成18年11月1日
指定商品 :第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を、審判請求書及び回答書において要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第20号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求人は、1976年にウベール・ドルナノが設立し、化粧品の製造販売を行っている、フランス国の法人である。そして、請求人は、全世界において、引用商標1を使用している。「sisley」は、わずか四半世紀の間に、美容とラグジュアリーブランドの業界で最もプレステージのあるブランドの一つに成長し、高級化粧品という分野でリーダー的役割を担っている。sisley商品は、カウンセリングが行われる超高級販売店のみ、すなわち、大手百貨店、化粧品専門店等で販売されている。各国市場において、sisleyは、しばしば最もよく売れるブランドであり、常にトップブランドとして名乗りを上げている。現在世界80か国以上で、sisleyブランドの化粧品が販売されている(甲3)。
(2)「英和商品名辞典」において、「sisley」は、「フランスSisley製の基礎化粧品(クリーム・乳液など)。Phytocosmetology(植物美容学)の研究に基づき、朝鮮人参・西洋サンザシ・カミツレ・ハマメリスなど、肌に医学的効果のある54種の植物のエッセンシャルオイルを原料としており、アレルギー体質の人も使用可能という。フランス皮膚医学協会推薦。ロゴはすべて小文字。近年メーキャップ用品も手がけ始めた。」と説明されており(甲4)、フランスにおいて著名な商標であることがうかがえる。そして、財務省貿易統計によると、我が国の化粧品輸入先の中で、フランスは、遅くとも1998年以来、ずっと第1位である(甲5)から、我が国内の化粧品の需要者は、フランスの化粧品業界の動向には関心を持っており、「sisley」がフランスにおいて著名であることも認識しているといえる。
(3)我が国では、子会社のシスレージャパン有限会社が、sisleyブランドの化粧品の輸入・販売を事業内容として、平成5年に設立され、平成8年(1996年)に日本橋高島屋に第1号店を出店した(甲6)後、平成12年に株式会社に組織変更された。本件商標が登録出願されるより前の平成27年(2015年)8月27日には、北海道から九州に至るまで約40の店舗を展開しており(甲7)、売り場では、引用商標1を使用している(甲3)。また、平成27年(2015年)9月14日には、伊勢丹及び阪急百貨店において、オンラインでも販売している(甲8、甲9)。
現在は、我が国有数の百貨店に出店する等、全国49の店舗を展開し、また、百貨店等のウェブサイトで、通信販売を行っている(甲10)。
以上のとおり、請求人は、そのハウスマークとして、引用商標1を本件商標の登録出願より前から現在に至るまで、継続的、集中的に使用してきた。
(4)化粧品の取引者・需要者に広く購読されている、主要美容雑誌の1つ(甲11〜甲13)である「VoCE」誌上のランキングで、引用商標1を使用した商品は、2013年下半期には、アイケア部門で3位、2014年上半期には、ボディオイル部門で2位、フレグランス部門で3位、2015年上半期には、化粧水部門で3位と、上位に入っている(甲14)。
また、雑誌で紹介されている化粧品をデータベース化した「COSME at MAG」において、本件商標の出願直前の、2014年5月1日から31日までに発売された美容雑誌に基づくランキングでは、引用商標1を使用した商品が3位に、また、2014年11月期(ベストコスメ・下半期&年間ランキング)では、引用商標1を使用した商品が7位に入っている(甲15)。
さらに、化粧品の通販サイトにおいては、「シスレー(SISLEY)は、ヨーロッパ発祥の高級化粧品ブランド。女性にとって一度は使ってみたい、憧れのブランドですよね。」との説明があり、引用商標(審決注:「引用商標」とは、引用商標1及び引用商標2を指すものと解される。以下同じ。)から生ずる信用及び高級感が我が国において定着していることがうかがえる(甲16)。
(5)日本のデパートで、2011年から2014年にかけて、「Sisley」ブランドの売上げは15位前後、市場占有率は1%前後である(甲17)。我が国の化粧品市場では、多くの会社が乱立しており、市場の寡占化が進んでいないので、上記の数字は、引用商標を使用した商品が需要者に浸透していることを示すのに十分である。
(6)本件商標の登録出願前、「VoCE」、「Precious」、「美的」等の雑誌において、引用商標を使用した商品の広告が掲載されている(甲18)。引用商標を使用した商品について、請求人が、大規模に広告宣伝を行った結果、引用商標には、高品質、高級感等の信用が形成されている。
(7)引用商標は、本件商標の登録出願の時には既に、請求人の業務に係る商品である化粧品を表示するものとして、我が国においてはもちろんのこと、世界的に極めて高い信用が形成され著名に至っており、それは登録査定時においても継続していたということができる。
(1)本件商標と引用商標1との類否
本件商標は、「ISLEY」の文字と、その末尾の「Y」の文字の右肩に「*」(アスタリスク)を配置してなるところ、「ISLEY」の文字部分から、「イスレー」の称呼を生ずるものである。また、該文字は、一般の辞書等に掲載されておらず、特定の意味合いを有しない造語よりなるものであるから、特定の観念を生じないものである。
引用商標1は、「sisley」の文字の下に、小さく「PARIS」の文字を書してなるものである。下段の「PARIS」の文字は、商品の産地又は販売地と解される著名な都市「パリ」を表すものであり、自他商品の識別標識としての称呼及び観念が生じるといえない。他方、上段の「sisley」の文字部分は、特定の観念を生じない一種の造語である。
したがって、「sisley」の文字部分は、「PARIS」に比して非常に大きいこととあいまって、取引者、需要者に対し、商品の出所を識別する標識として強く支配的な印象を与えるものである。
以上のことから、引用商標1は、その構成中、要部である「sisley」の文字部分から「シスレー」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
そこで、本件商標から生ずる「イスレー」の称呼と引用商標1から生ずる「シスレー」の称呼とを比較すると、両者はともに第2音以下の「スレー」の音を同じくし、異なるところは、第1音における「イ」と「シ」の音のみである。そして、「イ」音は、有声の強母音であり、「シ」音は、その「イ」音に無声の摩擦子音の結合した音節であるところから、母音「イ」が強く聴取される音である。したがって、両音は、非常に近似した音であり、他の音を同じくする「イスレー」と「シスレー」は、全体として聴き誤るおそれのある類似性の高い称呼と言い得るものである。
また、外観についてみると、本件商標と引用商標2(審決注:引用商標1」の誤記と認められる。)の欧文字部分は、いずれも、短いとはいえない6文字(記号を含む。)からなり、「ISLEY」の5文字を共通とすることから近似した印象を与えるものである。
さらに、両商標は、いずれも特定の意味合いを有しない造語よりなるものと認められるから、観念上の明瞭な差異により区別されるとはいえない。
したがって、本件商標と引用商標1は、看者に近似した印象を与えるものである。
(2)本件商標の指定商品と引用商標1の使用に係る商品の関連性の程度
引用商標1は、スキンケア用・ボディケア用・ヘアケア用化粧品、シャンプー、香水等について使用されている。
他方、本件商標の指定商品には、引用商標1に係る商品が含まれているほか、これら以外の指定商品も、当該使用に係る商品とは目的、用途、需要者等を共通にする場合が少なくないものといえる。
したがって、本件商標の指定商品と引用商標1の使用に係る商品とは、同一又は類似のものを含め、関連性が高いというのが相当である。
(3)混同を生ずるおそれ
以上を総合勘案すると、本件商標を指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、引用商標1を使用している請求人を連想、想起し、該商品が請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
本件商標は、上記2(1)のとおり、「イスレー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
他方、引用商標2は、「シスレー」及び「SISLEY」の各文字を二段書してなるものであり、その構成文字に相応して、「シスレー」の称呼を生ずるものである。また、いずれの文字も特定の意味合いを有しない造語よりなるものであるから、引用商標2は、特定の観念を生じないものである。
本件商標から生ずる「イスレー」の称呼と引用商標2から生ずる「シスレー」の称呼とを比較すると、上記2(1)と同様に、全体として、語調・語感が近似したものとなり、称呼上互いに相紛れるおそれがある。
また、外観についてみると、本件商標と引用商標2の欧文字部分は、いずれも、短いとはいえない6文字(記号を含む。)よりなり、「ISLEY」の5文字を共通とすることから近似した印象を与えるものである。
さらに、両商標は、いずれも特定の意味合いを有しない造語よりなるものであるから、観念において比較することはできない。
以上のとおり、本件商標と引用商標2とは、観念において比較することができないものの、呼称及び外観において類似するから、互いに類似する商標である。また、本件商標の指定商品中、「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料」は、引用商標2の指定商品と同一である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
上記2(1)のとおり、本件商標と引用商標1とは、観念において比較することができないものの、称呼及び外観において類似するから、互いに類似する商標である。
また、本件商標の指定商品中、「せっけん類,化粧品」は、引用商標1が使用された結果、周知著名となった請求人の業務に係る商品「化粧品、シャンプー」と同一又は類似である。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品「化粧品、シャンプー」を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標1と類似する商標であって、その商品と同一又は類似する商品について使用する商標であるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
被請求人は、請求人の上記主張に対し、何ら答弁及び回答していない。
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについて、被請求人は争っておらず、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。以下、本案に入って審理し、判断する。
(1)引用商標1の周知性について
請求人の主張及び同人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。
ア 請求人は、1976年にウベール・ドルナノ氏が設立したフランスの化粧品会社であり、世界80か国以上で、「sisley」の文字を使用した化粧品を製造販売している。請求人は、「sisley」に係る化粧品、香水、せっけん(以下「請求人商品」という。)を、各国の大手百貨店、化粧品専門店等で取り扱っており、請求人商品は、引用商標1と同一態様の商標が表示された販売カウンターにおいて陳列、販売されている(甲3、甲8)。
イ 請求人は、1993年(平成5年)には、子会社であるシスレージャパン有限会社を設立(平成12年に株式会社に組織変更。)し、1996年(平成8年)に日本橋高島屋に第1号店を出店した(請求人の主張、甲6)。その後、日本における「sisley」の店舗は、2015年(平成27年)に40店舗となり(甲7)、2020年(令和2年)には、全国に49店舗が存在している(甲10)。また、請求人は、遅くとも2015年(平成27年)には、伊勢丹及び阪急百貨店のウェブサイトにおいて、引用商標1と同一態様の商標が付された請求人商品を販売しており(甲8、甲9)、2020年(令和2年)には、三越伊勢丹、大丸松坂屋、高島屋、京王百貨店のウェブサイトや、Amazon、楽天市場等のECサイトにおいても、請求人商品を販売している(甲10)。
ウ 2011年(平成23年)ないし2014年(平成26年)の我が国の百貨店における、請求人商品の売上は、香水及び化粧品のカテゴリーにおいて17位、スキンケアのカテゴリーにおいて15位である(甲17)。
また、請求人は、2012年(平成24年)ないし2014年(平成26年)に、「VoCE」、「Precious」、「25ans」、「家庭画報」、「美的」等の雑誌において、引用商標1と同一態様の商標が付された請求人商品を大きく表示した1ページ又は複数ページによる広告を19回行った(甲18)。
エ 請求人商品は、美容雑誌「VoCE」の2013年下半期ベストコスメのアイケア部門で3位、2014年上半期ベストコスメのボディオイル部門で2位、フレグランス部門で3位、2015年上半期ベストコスメの化粧水部門で3位と、上位にランキングされている(甲14)。なお、「VoCE」の印刷部数は、1号あたり約7万部ないし10万部である(甲12、甲13)。また、雑誌で紹介されている化粧品をデータベース化した「COSME at MAG」において、請求人商品は、2014年7月7日号で3位にランキングされている(甲15)。
オ 「英和商品名辞典」(株式会社研究社発行、1990年初版)には、「Sisley」の項目に「フランスSisley製の基礎化粧品(クリーム・乳液など)・・・フランス皮膚医学協会推薦。ロゴはすべて小文字。近年メーキャップ用品も手がけ始めた。」の記載がある(甲4)。
カ 上記アないしオによれば、請求人は、我が国において、1996年(平成8年)に請求人商品の販売を開始し、現在では全国の百貨店の店舗において一定程度の売上があること、遅くとも2012年(平成24年)には引用商標1と同一態様の商標を付した請求人商品を販売しており、雑誌において引用商標1と同一態様の商標を付した請求人商品の宣伝広告を行ってきたこと等が認められるから、引用商標1は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時(平成26年5月29日)には既に、我が国の化粧品を取り扱う分野の取引者、需要者の間に一定程度の周知性を有するものであったということができ、その周知性は、本件商標の登録査定時(平成27年2月17日)においても継続していたものといえる。
(2)本件商標と引用商標1との類似性の程度
本件商標は、別掲1のとおり、「ISLEY」の文字とその末尾の「Y」の文字の右肩に「*」(アスタリスク)を配置してなるものである。
これに対して、引用商標1は、別掲2のとおり、「sisley」の文字と「PARIS」の文字とを二段に表してなるものである。そして、下段に小さく表された「PARIS」の文字部分は、指定商品の産地又は販売地と解される都市「パリ」を表すことから、自他商品の識別標識として機能しないもの又はその機能が極めて弱いものといえる一方、上段の「sisley」の文字は、一般の辞典類に載録されている既成の語ではないことに加え、下段の「PARIS」の文字に比して4倍ほどの大きさで、かつ、かなり太い線で表されていることから、引用商標1の要部といえるところ、該構成文字中に、本件商標の文字部分とつづりを共通にする「isley」の文字を含むものである。
そうすると、引用商標1は、その要部に本件商標の文字部分とつづりを共通にする文字を含むものであるから、両者は、ある程度の類似性を有するものである。
(3)引用商標1の独創性の程度について
上記(2)のとおり、引用商標1の構成中、「PARIS」の文字は、「パリ」を表す語であるが、「sisley」の文字は、一般の辞典類に載録されている既成の語ではないことから、引用商標1全体としては、独創性が高いものといえる。
(4)商品の関連性及び、取引者、需要者の共通性について
本件商標の指定商品と、請求人商品とは、共に容貌、容姿を美しくすることを目的とする商品、身だしなみを整える商品、及びこれら商品に関連する商品であって、商品の生産、販売部門、用途、流通経路、販売場所を共通にする関連性の程度が高いものが含まれる。そして、両商品の需要者は一般消費者であるから、需要者を共通にすることが少なくないものといえる。
(5)出所の混同のおそれについて
上記(1)ないし(4)によれば、引用商標1は、請求人の業務に係る商品を表すものとして一定程度知られており、本件商標と引用商標1とはある程度の類似性があり、引用商標1の独創性及び本件商標の指定商品と請求人商品の関連性の高さ、需要者の共通性の程度を考慮すれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用した場合、その需要者において、これを請求人又は請求人と経済的若しくは組織的関係を有する者の業務に係る商品と混同するおそれがあるというべきである。
(6)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
付言するに、当審は、本件商標の登録は、請求人が主張する商標法第4条第1項第10号及び同項第11号には該当しないものと判断する。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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