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Trademark Appeal Case

著名人名の商標性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2020−900171(T2020−900171/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第6245564号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第6245564号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成よりなり、平成31年2月1日に登録出願、第16類「紙製包装用容器,プラスティック製包装用袋,紙類,文房具類,印刷物,書画,写真」、第20類「額縁」、第25類「被服」、第27類「壁掛け(織物製のものを除く。),壁紙」、第35類「広告業,商品の売買契約の仲介,輸出入に関する事務の代理又は代行」、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,書籍の制作」、第42類「デザインの考案(広告に関するものを除く。)」及び第45類「著作権の利用に関する契約の代理又は媒介」を指定商品及び指定役務として、令和2年3月19日に登録査定、同年4月15日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立ての理由として引用する国際登録第958197号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2に示すとおり、「CLAUDE MONET」の欧文字を横書きしてなり、2007年(平成19年)10月4日にEUIPOにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2007年(平成19年)10月5日国際商標登録出願、第2類、第3類、第4類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類、第28類、第31類及び第41類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、2011年(平成23年)2月10日に設定登録、その後、指定商品及び指定役務については、2013年(平成25年)8月5日に国際登録簿に記録された基礎出願又は基礎登録の効力の一部終了を原因とする当該商標権の登録の一部抹消の結果、別掲3のとおりの商品及び役務となったものである。そして、2017年(平成29年)10月5日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第107号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは枝番号を省略する。)を提出した。

以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。

(1)申立人と故Claude Monet(クロード・モネ)との関係

申立人は、フランス・パリの公証人による公証文書(甲3)において示されているとおり、印象派を代表するフランスの画家として世界的に著名な故Claude Monet(クロード・モネ)の知的財産権全てを相続し、特に同人の作品全体に付随する人格権の相続人であり、同人の氏名・肖像・作品を全世界にわたって管理している。同人の作品を含む遺産として、同人の息子であり唯一の相続人であるMichel Monet氏によって、Michel Monet氏が1966年に亡くなって以降、その遺言により、申立人が所有するフランス・パリのマルモッタン・モネ美術館に故Claude Monetの多数の作品が遺贈された(甲4〜甲6)。

(2)「Monet」の文字の著名性

「Monet」の文字は、印象派を代表するフランスの画家として世界的に著名な画家である「Claude Monet」(クロード・モネ、1840年11月14日〜1926年12月5日)の著名な略称として、一般世人に理解、認識されている。

同人の作品は、油彩2,000点、デッサン500点、パステル画100点を超え、そのうち、「睡蓮」の作品群は約300点にも及び、また、代表作「印象・日の出」(1872年)は印象派の名前の由来になった。

その名声は、我が国に止まらず、世界的に広くよく知られているものである。同人の作品の多くは申立人が所有するフランス・パリのマルモッタン・モネ美術館に所蔵され、世界各国の展覧会や、フランスのオルセー美術館、オランジュリー美術館、アメリカのメトロポリタン美術館、ボストン美術館、シカゴ美術館などの美術館においても、同人の作品が展示されているので、その死亡時から本件商標の登録査定時及び今日においても、その著名性は世界規模で継続している(甲16)。

また、「Claude Monet(クロード・モネ)」について、展覧会や新聞記事等で言及する際に、同人の氏名のうち苗字の「Monet(モネ)」のみを抜き出して言及することが多く見受けられ、「Monet(モネ)」といえば、著名な画家である「Claude Monet(クロード・モネ)」のことを指しているといえるので、「モネ(Monet)」の文字は、著名な画家である「Claude Monet(クロード・モネ)」の著名な略称であるといえる。

例えば、「Claude Monet(クロード・モネ)」の近年における日本における展覧会や施設の名称においては、「モネ」の文字のみを使用している事例が多く見受けられる(甲7〜甲12)。

さらに、「広辞苑第七版」には、「モネ【Claude Monet】フランス印象派の代表的画家。『印象―日の出』と題するその作が印象主義の呼称を生んだ。同じ主題を一日の光の変化にしたがって描き分ける連作が特徴。ほかに『ルーアン大聖堂』『睡蓮』など。(−八四〇 一九二六)」の記載があり(甲14)、「Claude Monet(クロード・モネ)」に関する新聞記事において、「モネ」の文字が、同人を表すものとして使用されている(甲15〜甲20)。

加えて、「Monet(モネ)」の著名性については、特許庁の審決・審査拒絶査定例においても認定されている(甲21〜甲23)。

上記の事実によれば、故Claude Monet(クロード・モネ)は、印象派を代表するフランスの画家として世界的に著名な人物であり、1926年の死亡時から、本件商標の登録出願日(2019年2月1日)はもとより現在においても著名な存在であり、同人のことを「Monet(モネ)」と呼称することは多くの事実から見受けられ、「Monet(モネ)」といえば、著名な画家である「Claude Monet(クロード・モネ)」のことを指すことは明らかであるので、「Monet(モネ)」は同人の著名な略称であるといえる。

以上のことから、本件商標の登録出願時に、「Monet(モネ)」は日本国内外において広く知られ、著名性を獲得するに至っていたというべきである。

(3)商標法第4条第1項第11号該当性について

本件商標は、S字を組み合わせた模様の円の図形の中央部分に筆文字風の欧文字「Monet」及び「Design」を二段に書し、その下に蝶の図形を配した構成からなる商標である。

本件商標の構成文字である「Monet」及び「Design」の文字は二段に分離されて配置されており、さらに「Monet」の文字は、著名な画家である「Claude Monet(クロード・モネ)」の略称として著名である一方で、本件商標の構成中「Design」の語は、「図柄、模様」を意味する日本人に極めて馴染みの深い英単語であって、商品や役務を問わず広く一般的に使用されている語であるから、その識別力は、前半の「Monet」の部分に比して極めて弱いものといわざるを得ない。

そして、簡易迅速を旨とする取引の実際において、取引者・需要者は、著名な略称「Monet」と同一の構成からなる「Monet」の部分に強く印象付けられることから、本件商標の構成中、「Monet」の部分を抽出し、この文字部分のみを捉えて取引されることも想定される。

したがって、本件商標の要部は「Monet」の部分であるといえる。

一方、引用商標は、「CLAUDE MONET」の欧文字を一連に書してなる商標であるところ、本件商標の構成中、「MONET」の文字は、上述のとおり、著名な画家である「Claude Monet(クロード・モネ)」の略称として著名であるので、引用商標の要部は「MONET」の部分であるといえる。

以上を前提として本件商標の要部と引用商標の要部とを比較すると、同一の欧文字のつづりを有し、いずれも「モネ」の称呼が生じ、著名な画家の略称である「Monet」を想起させるものとして共通する観念を有することから、外観、称呼及び観念が類似するので、両者は類似しているといえる。

また、本件商標に係る一部の指定商品又は指定役務は、引用商標に係る一部の指定商品又は指定役務と同一又は類似している。

したがって、本件商標は、その要部を「Monet」とし、その登録出願日前の出願に係る申立人の引用商標に類似する商標であって、その引用商標に係る指定商品及び指定役務と同一又は類似の商品及び役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(4)商標法第4条第1項第15号該当性について

著名な画家である「Claude Monet(クロード・モネ)」の略称として著名な「Monet」と本件商標の要部「Monet」は同一の欧文字の構成からなるため、互いに類似することは明らかである。

また、審決・拒絶査定例でも認定されているとおり、「Monet」は、「Claude Monet(クロード・モネ)」の略称として世界的な著名性を有しており、同人の絵画も同様に世界的な著名性を獲得しているといえる。

「Monet」の文字は、著名な画家である「Claude Monet(クロード・モネ)」の略称として著名であることから、その独創性は高いといえる。

さらに、本件商標の指定商品及び指定役務は、主に絵画の分野で使用され得るものであり、「Monet」の文字が著名な画家の略称であることからすると、密接な関連性があるといい得る。つまり、本件商標の指定商品中、第20類「額縁」は、絵画を入れて飾るものとして関連性が高く、第16類「紙製包装用容器,プラスティック製包装用袋,紙類,文房具類,印刷物,書画,写真」、第25類「被服」、第27類「壁掛け(織物製のものを除く。),壁紙」は、「Monet」の文字やその作品を、これらの商品に印刷して、展覧会や美術館で販売する汎用性が高いといえるので、絵画と密接な関連性が高いといえる(甲51)。

また、第42類「デザインの考案(広告に関するものを除く。)」、第45類「著作権の利用に関する契約の代理又は媒介」についても、絵画と密接な関連性が高く、第35類「広告業,商品の売買契約の仲介,輸出入に関する事務の代理又は代行」、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,書籍の制作」については、故Claude Monet(クロード・モネ)の知的財産権を相続・管理する申立人が、同人及び同人の絵画について、実際に行っている又は行う可能性の高い役務であるといえるから、絵画と関連性が高いといえる。

したがって、本件商標と引用商標に係る商品・役務の用途や目的、取引者及び需要者は共通するといえる。

そして、申立人は、故Claude Monet(クロード・モネ)の知的財産権全てを相続し、管理し、また、同人の絵画の展覧会においては、Monetの名称及び同人の絵画をプリントした様々な商品(メモ帳、ボールペン、Tシャツ、トートバッグ、包装箱、切手シート、絵画カタログ、菓子、紅茶、カレンダー等)が販売されている(甲51)。

他方、本件商標権者は、株式会社森永紙器のウェブサイト(甲92)において、本件商標の文字部分と同じ文字である「Monet Design」のページを設け、「販売社名 Monet Design 運営統括責任者・・・(本件商標権者名)」の名義において、「Claude Monet(クロード・モネ)」の著名な略称「Monet」とその絵画に関連性があるインテリア用絵画や漫画・イラストの印刷、ポスター・ポストカード・壁掛け等を販売している蓋然性が高いといえる。

また、本件商標権者は、通信販売サイト「Yahoo!JAPAN ショッピング」において、本件商標の文字部分「Monet Design」を含む「Monet Design工房」という店名で「板目表紙 A4サイズ 縦/横」「反射ステッカー ネコ柄 10種類」を販売している蓋然性が高いといえる(甲93)。

したがって、需要者は、本件商標権者が、故Claude Monet(クロード・モネ)の知的財産権全てを相続した申立人から、あたかも上記商品の販売の許諾を受けて販売していると誤認するおそれがあるといえ、「Monet」を含む本件商標がその指定商品又は指定役務について使用された場合には、それらの商品又は役務があたかも「Monet」と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると、その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。

上述のとおり、本件商標と「Claude Monet(クロード・モネ)」の著名な略称「Monet」との類似性、「Monet」が画家の略称として著名性を獲得し、同人の絵画も著名性を獲得している事実、本件商標の指定商品及び指定役務が、著名性を獲得している「絵画」と密接に関する商品及び役務を指定している点などの事情に加え、本件商標の指定商品及び指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断した場合、本件商標に接した取引者・需要者は、あたかも「Monet」と何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく、商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(6)商標法第4条第1項第19号該当性について

ア 「Monet」の著名性

「Monet」の文字は、世界的に著名な画家「Claude Monet(クロード・モネ)」の著名な略称であり、商標法第4条第1項第19号に規定する「他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」に該当するものである。

イ 本件商標と「Monet」の類似性

上記(3)において述べたとおり、「Claude Monet(クロード・モネ)」の略称として著名な「Monet」と本件商標の要部「Monet」は同一の欧文字の構成からなるため、互いに類似することは明らかである。

ウ 本件商標権者の不正の目的

「Monet」の文字は、世界的に著名な画家「Claude Monet(クロード・モネ)」の著名な略称として、取引者・需要者間において広く知られ、高い名声・信用・評判を獲得するに至っており、本件商標の登録出願時である2019年2月1日には、「Monet」の文字は、既に故Claude Monet(クロード・モネ)の全ての知的財産権を相続・管理する申立人の業務に係る商品・役務に使用される商標として広く知られていた著名商標である。

一方、株式会社森永紙器のウェブサイト(甲92)において、本件商標の文字部分と同じ文字である「Monet Design」のページを設け、「販売社名 Monet Design 運営統括責任者・・・(本件商標権者名)」の名義において、本件商標を指す「商標登録番号(2020年4月15日公布)第6245564号」を表示して、Claude Monet(クロード・モネ)氏の著名な略称「Monet」とその絵画に関連性があるインテリア用絵画や漫画・イラストの印刷、ポスター・ポストカード・壁掛け等の販売がされていることが確認できるので、本件商標権者が、これらの行為を行っている蓋然性が高いといえる。

また、通信販売サイト「Yahoo!JAPAN ショッピング」において、「会社名(商号)Monet Design」、本件商標の文字部分「Monet Design」を含む「Monet Design工房」という店名で「お問い合わせ窓口 通販事業部・・・(本件商標権者名)」の名義において、本件商標を指す「免許・許可証 その他 商標登録番号 第6245564号」を表示して、「板目表紙 A4サイズ 縦/横」「反射ステッカー ネコ柄 10種類」を販売していることを確認した(甲93、甲94)ので、本件商標権者が、申立人の承諾等を得ることなく、これらの行為を行っている蓋然性が高いといえる。

そうすると、本件商標権者が、世界的に著名な画家「Claude Monet(クロード・モネ)」の著名な略称「Monet」の有する高い名声・信用・評判にフリーライドする目的及び不正の利益を得る目的で、本件商標を登録出願、使用しているものといえる。

エ まとめ

以上により、世界的に著名な画家「Claude Monet(クロード・モネ)」の著名な略称「Monet」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る絵画等に関連する商品及び役務として世界的に著名な商標となっており、本件商標は、「Monet」に類似するものであって、不正の利益を得る目的及び「Monet」の有する高い名声・信用・評判にフリーライドする目的で本件商標を登録出願、使用しているものといえ、本件商標権者が、本件商標を不正の目的で使用するものであることは明らかである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

(7)商標法第4条第1項第7号該当性について

「世界的に著名な死者の著名な略称を、遺族と何ら関係を有しない者が、遺族等の承諾を得ることなく、商標として登録することは、故人の名声、名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公の秩序又は善良の風俗を害するものといわざるを得ない。」と解される(甲100)。

これを本件についてみるに、本件商標は、S字を組み合わせた模様の円の図形の中央部分に筆文字風の欧文字「Monet」及び「Design」を二段に書し、その下に蝶の図形を配した構成からなる商標であり、「Monet」の文字は、世界的に著名な画家である故Claude Monet(クロード・モネ)の著名な略称である。

そこで、本件商標権者と「Monet」との関係についてみるに、両者が何らかの関係を有する者であると認め得ることはなく、また、当該略称の登録出願や登録に関して、本件商標権者が、故Claude Monet(クロード・モネ)の全ての知的財産権を相続・管理する申立人より何らかの承諾等を得た者であるともいえないものであるから、本件商標権者は、「Monet」とは何ら関係を有することのない者といわざるを得ない。

本件商標権者は、株式会社森永紙器のウェブサイト(甲92)において、本件商標の文字部分と同じ文字である「Monet Design」のページを設け、「販売社名 Monet Design 運営統括責任者・・・(本件商標権者名)」の名義において、故Claude Monet(クロード・モネ)の著名な略称「Monet」とその絵画に関連性があるインテリア用絵画や漫画・イラストの印刷ポスター・ポストカード・壁掛け等の販売している蓋然性が高いといえる。

また、本件商標権者は、通信販売サイト「Yahoo!JAPAN ショッピング」において、本件商標の文字部分「Monet Design」を含む「Monet Design工房」という店名で「板目表紙 A4サイズ 縦/横」「反射ステッカー ネコ柄 10種類」を販売している蓋然性が高いといえる(甲93)。

そうすると、本件商標権者が、世界的に著名な画家である故Claude Monet(クロード・モネ)の著名な略称「Monet」の名声に便乗し、不正の目的で使用している蓋然性が高いといえる。

してみれば、本件商標は、その指定商品及び指定役務の取引者、需要者に、故Claude Monet(クロード・モネ)の略称を表す文字よりなるものと容易に認識させるものであるから、故Claude Monet(クロード・モネ)の全ての知的財産権を相続・管理する申立人の承諾を得ることなく、本件商標を、その指定商品及び指定役務について登録することは、世界的に著名な死者の著名な略称の名声に便乗し、故人の名声、名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公の秩序又は善良の風俗を害するものといわなければならない。

したがって、本件商標権者が、故Claude Monet(クロード・モネ)の全ての知的財産権を相続・管理する申立人の承諾を得ることなく、本件商標をその指定商品及び指定役務について登録することは、世界的に著名な死者の著名な略称の名声に便乗し、故人の名声、名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公の秩序又は善良の風俗を害するものであり、本件商標権者が本件商標を不正の目的で使用するものであることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 取消理由の通知

当審において、本件商標権者に対し、「本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であって、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。」旨の取消理由を令和3年3月22日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を求めた。

第5 商標権者の意見

上記第4の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。

第6 当審の判断

1 商標法第4条第1項第7号について

商標法4条1項7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録を受けることができないと規定する。ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、<1>その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、<2>当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、<3>他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、<4>特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、<5>当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号)。

2 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について

(1)フランスの印象派の画家「Claude Monet(クロード・モネ)」の略称である「モネ((MONET、Monet)」の著名性及びその承継人について

ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権による調査によれば、次の事実が認められる。

(ア)辞書等の掲載

a 広辞苑第七版(2018年1月12日、株式会社岩波書店発行)において、「モネ」の見出し語について、「【(Claude Monet)】フランスの印象派の代表的画家。『印象−日の出』と題するその作が印象主義の呼称を生む。同じ主題を一日の光の変化に従って描き分ける連作が特徴。他に『ル−アン大聖堂』『睡蓮』など。(一八四〇〜一九二六)」との記載がある(甲14)。

b 大辞林第三版(2006年10月27日、株式会社三省堂発行)において、「モネ」の見出し語について、「(Claude Monet)1840−1926 フランスの画家。色彩分割の技法を用いて自然に及ぼす光の効果を追求し、明色を用いた風景画を描き印象派の代表的画家となる。その作品は『印象・日の出』から印象派の呼称が生まれた。」との記載がある(職権調査)。

c 大辞泉第二版(2012年11月7日、株式会社小学館発行)において、「モネ」の見出し語について、「(Claude Monet)[1840−1926]フランスの画家。印象派の代表画家。同派の呼称は、その作品『印象−日の出』に由来する。ほかに『睡蓮』など。」との記載がある(職権調査)。

d ランダムハウス英和大辞典第2版(1993年9月、株式会社小学館発行)において、「Monet」の見出し語について、「Claude、モネ(1840−1926):フランスの画家;印象主義の代表的画家.」との記載がある(職権調査)。

e 研究社新英和大辞典第5版(1980年、株式会社研究社発行)において、「Monet」の見出し語について、「Claude n.モネ(1840−1926、フランスの画家、印象派の代表者)」との記載がある(職権調査)。

(イ)「This is Media」のウェブサイトにおいて、「『光の画家』クロード・モネ」の見出しの下、「パリで生まれ、生涯を通して数多くの美しい絵画を多く残したモネ。モネが生み出した風景画は、それまでの風景を描いた作品のあり方を根底から覆し、新しい時代の世界観とその詩情を伝達する手段を創造するものでした。モネの『印象・日の出』に始まった印象派の絵画運動はとても有名で、日本人にも大人気。美術館で企画展がある度に長蛇の列ができますよね。今回はそんなクロード・モネの人生から代表作までを追い、彼の人気の秘密を明らかにしていきたいと思います。」との記載とともに、「Claude Monet(クロード・モネ)」の概要、生涯、作品等について、その略称「モネ」を用いて詳細に記載されている(職権調査 https://media.thisisgallery.com/20208280)。

(ウ)「ぶらり美術館」のウェブサイトにおいて、「世界の巨匠に出会える美術館」の見出しの下、「印象派の巨匠、モネに出会う。クロード・モネ(Claude Monet)1840〜1926/フランスの画家/印象派 印象派を代表的する画家。見たままの光や色や大気の微妙な変化を逃すまいとその一瞬の印象を陽光のもとで素早く風景画に表した。」の記載とともに、「Claude Monet(クロード・モネ)」の略称「モネ」を用いて、同人の作品を所蔵する全国28箇所の美術館を紹介している(職権調査 http://www.burari-club.com/pages/deau/deau_Monet.html)。

(エ)2018年4月25日から7月1日に名古屋市美術館において開催され、同年7月14日から9月24日に横浜美術館において開催された「モネ それからの100年」の展示会のポスターには、「モネ」の文字を大きく表示した「すべてはモネからはじまった」の文字(名古屋市美術館ポスター)が表記され、「モネ それからの100年」の文字(両美術館ポスター)、「MONET’S LEGACY」の文字(両美術館ポスター)及び「わたしがみつけるあたらしいモネ。」の文字(横浜美術館ポスター)が表記されている。また、展覧会概要の説明文においても、「Claude Monet(クロード・モネ)」を「モネ(MONET)」と略称して記載している(甲7、甲8)。

(オ)2017年7月21日から9月3日に「POLA MUSEUM ANNEX(ポーラ美術館)」において開催された「Point−Rhythm World −モネの小宇宙−」においては、Claude Monet(クロード・モネ)の「睡蓮の池」をモチーフとした展覧会が開催され、その開催概要の説明文において、「Claude Monet(クロード・モネ)」を「モネ」の略称を用いて紹介している(甲9、甲10)。

(カ)2015年9月19日から12月13日に東京都美術館において開催された「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」の展覧会のポスターには、「モネ展」の文字が大きく表示され、その展覧会概要の説明文において、「Claude Monet(クロード・モネ)」を「モネ」と略称して記載している(甲11)。

(キ)「北川村『モネの庭』マルモッタン」において、「JARDIN de MONET」と題して、クロード・モネの愛したジヴェルニーの庭と地中海の風景を再現した3つの庭のイベントが開催された(甲12)。

(ク)2018年7月24日付け朝日新聞夕刊(甲15)、2018年8月1日付け日本経済新聞朝刊(甲16)、2018年8月22日付け毎日新聞夕刊(甲17)、2017年10月16日付け西日本新聞(甲18)、2016年9月17日付け朝日新聞デジタル(甲19)及び2016年7月3日付け中日新聞(甲20)において、「Claude Monet(クロード・モネ)」の展示会、展覧会及び「Claude Monet(クロード・モネ)」に関する記事において、「Claude Monet(クロード・モネ)」を「モネ」と略称して記載している。

(ケ)2008年12月27日付け中日新聞朝刊地方版(市民総合版)において、「コーヒーと味わう 『印象 日の出』展 来月9日栄で講演」の見出しの下、「【愛知県】市美術館で開催中のモネ『印象 日の出』展(中日新聞社など主催)を記念したトークイベントが来年一月九日、中区栄三のスターバックス栄チェリープラザ店で開かれる。市美術館の深谷克典学芸課長が午後五時と七時の二回、『印象 日の出』を中心に展覧会の見どころを紹介。無料でコーヒーを飲みながら、印象派の世界の理解を深める。」との記載がある(職権調査)。

(コ)2008年11月25日付け高知新聞朝刊において、「■マルチメディア特集 『モネの愛した浮世絵展』招待券プレゼント とさあち登録で抽選20人に」の見出しの下、「印象派の巨匠、クロード・モネ(一八四〇―一九二六年)所蔵の浮世絵約二百点すべてを日本で初めて公開する『モネの愛した浮世絵展』。二十二日、高知市高須の県立美術館で開幕し、好評を得ています。この展覧会のご招待券を、携帯電話向けサイト『高知新聞 とさあち』に有料登録した方の中から抽選で二十人にプレゼントします。」との記載がある(職権調査)。

(サ)2020年12月4日付け琉球新報朝刊において、「モネ名画 県内初展示/西洋絵画展 県美、15日から」の見出しの下、「県立博物館・美術館の企画展『名画を読み解く 珠玉の東京富士美術館コレクション』(沖縄美ら島財団、沖縄テレビ主催)が那覇市の同館で15日から始まる。来年1月31日まで。フランス印象派の巨匠クロード・モネの絵画『睡蓮(すいれん)』が県内で初めて展示されるなど、16世紀のイタリア・ルネサンスから20世紀の現代絵画まで400年の西洋絵画の歴史を鑑賞できる貴重な機会となる。」との記載がある(職権調査)。

(シ)2016年1月21日付け朝日新聞朝刊において、「(イイかも!)マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展 光の画家、ピンクに見た神髄 /福岡県」の見出しの下、「印象派の巨匠、クロード・モネ(1840〜1926)の作品を集めた展覧会『マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展』が、福岡市に巡回中だ。モネ自身のコレクションなど約90点を展示。『究極のモネ展』をうたい、昨年の東京展は約76万人が詰めかけた。会場にはモネの代名詞となった『睡蓮(すいれん)』や最晩年の作品が並ぶ。」との記載がある(職権調査)。

(ス)2016年1月21日付け西部読売新聞朝刊において、「モネ展 『印象、日の出』から『睡蓮』まで 朝もやの海 写実に新風=特集」の見出しの下、「福岡市美術館で開かれている『モネ展―『印象、日の出』から『睡蓮』まで―』は、印象派絵画を代表するクロード・モネ(1840〜1926年)の創作の軌跡に迫る内容で、連日大勢の鑑賞者が訪れている。パリのマルモッタン・モネ美術館が所蔵する約90点が出展されており、2月4日からは『ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅』に代わり、『印象、日の出』が展示される。」との記載がある(職権調査)。

(セ)フランス・パリの公証人による公正文書において示されているとおり、申立人は、フランスの公益的機関である「INSTITUT DE FRANCE」を構成する5つのアカデミーの一つであって、故クロード・モネの息子であり故クロード・モネの遺産相続人の故ミシェル・モネ氏の自筆遺言により、故ミシェル・モネ氏にもたらされた世界中の故クロード・モネの遺産を継承する権限を付与されている。そして、故ミシェル・モネ氏の死後、同人の遺言により、申立人が所有するフランス・パリの「マルモッタン・モネ美術館」に同人が保有していた故Claude Monetの多数の作品が遺贈された(甲3、甲4、職権調査 https://www.facebook.com/Institut-de-France-2030197567243263/?rf=112130242136623)。

(ソ)申立人が所有する「マルモッタン・モネ美術館(Musee Marmottan Monet)」について

a 「Teestyle」のウェブサイトにおいて、「マルモッタン美術館 Musee Marmottan Monet(フランス・パリ)」の見出しの下、「世界最大のモネのコレクションを収蔵 パリ16区にある『マルモッタン美術館 Musee Marmottan Monet』は、印象派を代表するフランスの画家クロード・モネの美術品が充実していることで有名な美術館です。・・・1934年に美術館としてオープンした後、1966年にモネの息子が作品を寄贈したことにより、世間の注目を浴びました。地下に展示されているモネ作品の他には、モネと同じ時代に活躍していたモリゾ、ルノワールなど印象派の絵画の展示や、現代美術の展示もされています。印象派の名前の由来にもなったといわれるモネの名作『印象・日の出』はとても有名です。モネの絵画はもちろんのこと、ナポレオン1世の調度品や美術品なども見どころのひとつです。」との記載がある(職権調査 https://www.teestyle.jp/country/france/paris/spot/spotPAR200311.html)。

b 「JTB」のウェブサイトにおいて、「海外観光ガイド>フランス>パリ>観光地>マルモッタン美術館」のカテゴリーにある「マルモッタン美術館(Musee Marmottan)の観光情報」の見出しの下、「バルミーの公爵狩猟用別荘だった建物。・・・1932年に建物とともにその美術収集品をフランス学士院に寄贈した。モネを始めとする印象派の作品を多数所蔵し、なかでも印象派という名前のもとになった作品『印象・日の出』を所蔵することで有名。小さいながらも見応え十分の美術館。」との記載とともに、「マルモッタン・モネ美術館 Musee Marmottan Monet」との記載がある(職権調査 https://www.jtb.co.jp/kaigai_guide/western_europe/french_republic/PAR/118454/index.html)。

c 「アートアニュアルオンライン」のウェブサイトにおいて、「【レポート】2015年美術展入場者数 BEST20」の見出しの下、「大盛況の『モネ展』 70万人超は3年ぶり」の項に「展覧会名 マルモッタン・モネ美術館所蔵モネ展 会期 9/19〜12/13(75) 会場 東京都美術館 主催 東京都美術館、マルモッタン・モネ美術館・・・入場者数 763,512」との記載がある(職権調査 http://www.art-annual.jp/news-exhibition/news/56352/)。

イ 上記ア(ア)ないし(ソ)の事実からすれば、「Claude Monet(クロード・モネ)」は、印象派を代表するフランスの画家として、世界的に著名な存在であり、故人となった1926年以降、本件商標の登録出願時はもとより現在においても、印象派を代表する画家として、我が国の国民(一般需要者)の間に、広く認識されている存在であることは明らかである。そして、故クロード・モネが、上記のとおり、「広辞苑第七版」を始め、複数の辞書類において、「モネ(Monet)」の見出し語で表示され、また、上記の数多くの新聞記事の記載及び展示会のポスター等において、いずれも「モネ(MONET、Monet)」と表示されていることからすれば、「モネ(MONET、Monet)」の語は、同人の略称として、本件商標の登録出願時はもとより現在に至るまで、著名であると認めることができる。

申立人は、フランスの公益的な団体であって、モネの息子でありモネの遺産相続人の故ミシェル・モネ氏の自筆遺言により、故ミシェル・モネ氏にもたらされた世界中のモネの遺産を継承している。

そして、故ミシェル・モネ氏の死後、同人の遺言により、申立人が所有するフランス・パリの「マルモッタン・モネ美術館」に、同人が所有していたモネの作品が多数遺贈された。当該美術館は、世界最大規模の数のモネの作品を所蔵しており、フランスの観光地の一つとなっている。また、当該美術館は、フランス国外の美術館にモネの作品を貸し出す美術展の企画等を行っており、当該活動により多くの集客を行っている。

さらに、我が国には、モネの作品を所蔵している美術館が数多く存在し、当該美術館においても、モネの作品を展示し、モネに関するイベントの主催や開催等を行う活動を行っていることが確認できる。

(2)歴史上の人物名からなる商標について

上記1のとおり、商標の構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形に当たるものでなくても、商標の使用や登録が社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も商標法第4条1項第7号に該当し得るものであることから、歴史上の人物名からなる商標については、「当該歴史上の人物の周知・著名性」、「当該歴史上の人物名に対する国民又は地域住民の認識」、「当該歴史上の人物名の利用状況」、「当該歴史上の人物名の利用状況と指定商品・役務との関係」、「出願の経緯・目的・理由」及び「当該歴史上の人物と出願人との関係」に係る事情を総合的に勘案して、当該商標の使用や登録が社会公共の利益に反するか否かを判断すべきである。

(3)商標法第4条第1項第7号該当性について

ア 上記(1)イのとおり、「Claude Monet(クロード・モネ)」は、印象派を代表するフランスの画家として、世界的に著名な存在であり、故人となった1926年以降、本件商標の登録出願時はもとより現在においても、印象派を代表する画家として、我が国の国民(一般需要者)の間に、広く認識されている存在であることは明らかである。そして、上記のとおり、「モネ(MONET、Monet)」の語は、同人の略称として、本件商標の登録出願時はもとより現在に至るまで、著名であると認められ、モネの作品は、フランスの誇る重要な文化的な遺産というべきである。

イ 上記(1)イのとおり、申立人は、モネの遺産相続人の故ミシェル・モネ氏にもたらされた世界中のモネの遺産を継承しているフランスの公益的な団体である。そして、故ミシェル・モネ氏の死後、同人の遺言により、申立人が所有するフランス・パリのマルモッタン・モネ美術館に、同人が所有していたモネの作品が多数遺贈された。当該美術館は、世界最大規模の数のモネの作品を所蔵しており、フランスの観光地の一つとして、フランス内外より観光客が訪れている場所である。また、当該美術館は、フランス国外の美術館に所蔵品を貸し出す美術展の企画等を行い、当該美術展には、モネの作品を見るために、多くの入場者が訪れている。

ウ そうすると、「モネ(MONET、Monet)」の語は、フランスにおける観光事業、及びフランスの公益的機関である申立人に係る美術展の企画や開催において、大きな役割を果たしているものであって、公共的な財産的価値を有するに至っているというべきである。

エ さらに、上記(1)イのとおり、我が国には、モネの作品を所蔵している美術館が数多く存在し、当該美術館においても、モネの作品を展示し、モネに関するイベントの主催や開催等を行う活動を行っていることが確認できる。

オ 本件商標について

本件商標は、別掲1のとおり、規則的にS字を組み合わせた幾何模様図形を配した円形図形の中央部分に蝶の図形を配し(以下、これらを合わせて「図形部分」という。)、蝶の図形の上に、筆文字風で「Monet」及び「Design」の欧文字を一文字程度横にずらして二段に横書きした(以下「文字部分」という。)、図形と文字とを組み合わせた構成よりなるところ、その構成中の図形部分と文字部分とは、視覚上分離して看取されるものであり、かつ、観念上のつながりもないものであって、両者を不可分一体のものとして把握しなければならない特段の事情は見いだせないことから、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものとはいえない。

また、本件商標の文字部分中、「Design」の文字は、「設計、デザイン」などの意味を有する日常的に使用される平易な英単語であって、各種商品において、デザイン等を表す際にしばしば用いられる語でもある。

一方、本件商標の文字部分中、「Monet」の文字は、上記(1)イのとおり、我が国において、フランスの印象派の代表的な画家である故クロード・モネの著名な略称として、一般に広く知られているものであることから、当該文字に相応して、「モネ」の称呼を生じ、また、「画家である故クロード・モネ」の観念を生じるものである。

そして、本件商標の文字部分中、「Monet」と「Design」の文字は、段を分け、位置をずらして配されていることから、視覚上、分離して把握される。また、各文字部分を不可分一体のものとして把握しなければならない特段の事情は見いだせない。

そうすると、本件商標は、その構成中、各文字部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認めることはできない。

そして、その構成中、「Design」の文字は、日常的に使用される平易な英単語であって、各種商品においてデザイン等を表す際にしばしば用いられる語であるのに対し、その構成中、「Monet」の文字は、印象派を代表する世界的に著名なフランスの画家である故クロード・モネの著名な略称として、一般に広く知られているものであることから、取引者、需要者に対し、商品及び役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部であるということができる。

カ 小括

上記よりすれば、本件商標は、その要部である「Monet」の文字部分に相応して「モネ」の称呼を生じ、また、本件商標の指定商品及び指定役務の取引者、需要者に画家である故クロード・モネを想起させるものと認められるところ、同人は、生前、フランス生まれの印象派の代表的な画家として世界的に著名な存在であり、その死後、本件商標の登録査定時である令和2年3月19日当時においても、「モネ(MONET、Monet)」の語は同人の著名な略称であったことから、本件商標を、一私人が自己の商標として登録し、独占的に使用することは、前述のようなモネの作品を活用した観光振興等の公益的遂行を阻害するおそれがあり、さらに、モネの作品に関するイベントを行う多数の事業者に対して無用の混乱を招くおそれがあるものというのが相当である。

また、商標権は、専用権であるとともに、第三者に対する禁止権でもあることからすれば、前述のように、公共的な財産的価値を有するに至っているというべき「Monet」の文字を要部とする本件商標を、商標として採択し、これを、特定の者に、商標権として商標登録を認めることは、本件商標権者以外に、フランスの公益的な団体である申立人をはじめ、複数の団体が行っている活動に伴う各種商品及び役務への「モネ(MONET、Monet)」の語の使用を制限することとなる。

加えて、モネの作品は、フランスの誇る重要な文化的な遺産というべきものであり、我が国においても、広く親しまれ、我が国とフランスの友好関係に重要な役割を担ってきたというべきものであるから、本件商標の登録を認めることは、我が国とフランスの国際信義に反し、両国の公益を損なうおそれがあるというべきである。

以上からすると、本件商標をその指定商品及び指定役務について登録することは、世界的に著名な死者の著名な略称の名声に便乗し、指定商品及び指定役務についての使用の独占をもたらすことになり、故人の名声、名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公の秩序又は善良の風俗を害するものといわざるを得ない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものというべきである。

(4)まとめ

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものと認められるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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