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Trademark Appeal Case

周知商標の悪意登録

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2020−900001(T2020−900001/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第6187925号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第6187925号商標(以下「本件商標」という。)は、「素万」及び「SUVARN」の文字を2段に別掲のとおりの態様で表してなり、平成30年10月5日に登録出願、第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス,寝具類(リネン製品を除く。),きゃたつ及びはしご(金属製のものを除く。),帽子掛けかぎ(金属製のものを除く。),工具箱(金属製のものを除く。),タオル用ディスペンサー(金属製のものを除く。),家具,屋内用ブラインド,木製又はプラスチック製の立て看板,机,椅子」を指定商品として、令和元年9月25日に登録査定され、同年10月11日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、「素万」と「Suvarn」の文字を2段に書してなる商標である。なお、申立人の主張によれば、引用する商標は「素万」「SUVARN」としても使用されているとのことから、これらも併せて、以下「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。

以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。

1 引用商標について(甲3)

中国知識産権局が提供する商標検索画面の検索結果(第20類における「素万」を含む登録商標の検索結果リスト)によれば、例えば、甲3の2頁目の商標「素万」(登録第17533648号(出願日:2015年07月28日、登録日:2017年01月14日))及び3頁目の商標「素万/SUVARN LATEX」(登録第18105644(出願日:2015年10月20日、登録日:2018年03月28日))は、本件商標の登録出願日(2018年10月5日)よりも前に登録されている。

「SUVARN(素万)」のブランドのウェブサイトにおいて、当該ブランドについて、及び当該ブランドにおける取扱商品について、「まくら、マットレス、子供用まくら」(以下「使用商品」という。)が紹介されている。当該ウェブサイトにおいては、購入者の評価コメントの画面において、本件商標の登録出願日(2018年10月5日)よりも前の2018年8月1日時点で投稿がされている。

中国最大級のインターネット通販モールである「Tmall(天猫)」及び「京東(JDMall)」においては、「素万(SUVAURN)」が商標として表示され、まくら等が販売されており、「京東(JDMall)」においては、本件商標の登録出願日(2018年10月5日)よりも前の2018年9月12日時点で公開されている。

また、我が国最大級のインターネット通販サイトである「AMAZON」においても、「SUVARN」ブランドの「まくら」が販売されており、本件商標の登録出願日(2018年10月5日)よりも前の2017年2月2日時点で取り扱いが開始されている。

2 本件商標登録における不正の目的について

(1)本件商標と引用商標の類似性

本件商標は、「素万」及び「SUVARN」を2段に併記して表示するものであり、分離して観察されるものである。

引用商標は、「素万」「SUVARN」として使用されており、本件商標の上段の「素万」、下段の「SUVARN」とは、字体が若干相違するものの、その他においては同一である。また、「素万」「SUVARN」は、それぞれ、辞書等に掲載されていない造語であり、その独創性は高いものといえる。

したがって、本件商標と引用商標は類似する商標である。

また、本件商標の指定商品と使用商品とは、まくら、マットレスにおいて同一である。

以上を総合して考察すると、本件商標と引用商標とは、類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品と使用商品は同一又は類似するものである。

(2)本件商標権者について

本件商標権者である「杭州言富貿易有限公司」は、ポータルサイトの「YAHOO! JAPAN」による検索では、具体的な情報が得られず、日本国内において具体的な営業活動を行っていない可能性が極めて高いものである。

また、社名からして中国に関係性のある企業であることは明らかであるが、中国のポータルサイトの「百度」による検索においても、具体的な情報が得られない。

このことからすると、我が国及び中国において営業実績のない会社である可能性が極めて高い。

また、後述する悪意の可能性を考慮すると、中国で著名な商標を先取り的に我が国で登録し、他人への譲渡、あるいは、ライセンスにより利益を得ようとする、いわゆるトロールである可能性が極めて高いといえる。

(3)本件商標権者の一貫的な悪意性について

申立人が調べるところでは、本件商標権者は、常習的に他人のブランドを先駆けて出願しており、かかる行為からも不正の目的が明白である(甲2)。

しかるに、本件商標は、本件商標権者において全く使用されていない。

中国で登録された商標と完全に一致する商標を登録し、また、指定商品も共通することからみると、本件商標権者においてこれらの商標を偶然の一致をもって採択し、創作したものであることはあり得ず、本件商標権者のかかる行為からは、他人の著名商標を我が国において先取り、あるいは、商品を市場から排除する等の何らかの不正な意図をもっていたことが容易に推認でき、本件商標が本件商標権者によって剽窃的に登録出願されたものであることは明らかである。

(4)本件商標権者の商標権について

本件商標権者によって登録された我が国における登録商標と、中国において正当な権利者によって登録された商標は、甲2に示すとおりである。

(5)引用商標の周知性・著名性について

引用商標の周知性・著名性を証明するための資料(甲3)によれば、引用商標が本件商標の登録出願前の時点で中国において相当の著名性を獲得していたことは明らかである。

3 商標法第4条1項各号への該当性

(1)商標法第4条第1項第7号について

本件商標は、引用商標が中国で相当の著名性が存在していた後に、我が国に登録出願したものであることは明らかである。そして、本件商標と引用商標は、辞書等に掲載されていない造語であり、その独創性は高いものといえることから、本件商標権者が偶然に引用商標と同じつづりからなる商標を採択したとは想定できず、むしろ、本件商標の出願は、中国や我が国での引用商標の存在を認識し、引用商標が我が国において登録されていないことを知った上で、正規の製造者、販売者、あるいは正規代理店の事業の阻害等を目的に剽窃して採択したものと推認できる。

そして、本件商標権者は、甲2のとおり、他にも、先に存在する外国における他人の登録商標と、その構成文字のつづりを同じくする商標を、その後、我が国に複数登録出願し、登録していることからも、さきの推認の蓋然性は高いものといえる。

してみれば、本件商標の登録出願の経緯には、正規の製造者、販売者、あるいは正規代理店の引用商標を剽窃するという不正な目的をもって登録出願されたものとして、社会的妥当性を欠くものがあり、その登録を認めることは、健全な商取引の遂行を阻害し、公正な競業秩序を害するものであるから、公序良俗に反するものである。

したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認められるから、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。

(2)商標法第4条第1項第10号について

本件商標と引用商標とは、上記のとおり、英語の部分において同一のつづりを有するものであり、字体が相違するものの、称呼・観念が一致するものであり、互いに類似する商標である。

次に、本件商標の指定商品と使用商品とは、少なくともまくらやマットレスの「寝具」において用途、需要者の範囲が一致する。

したがって、本件商標の指定商品は、引用商標が使用される商品と同一又は類似するものである。

よって、本件商標は、周知である引用商標と同一又は類似する商標であって、その指定商品も同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第15号について

引用商標は、使用商品について高い著名性を獲得しているのであって、使用商品の分野の取引者・需要者において広く知られるに至っている。

本件商標の指定商品のうち、とりわけ、まくらやマットレスの「寝具」とは、同じオンライン通販サイトで販売されることが一般的に行われることが想定され、需要者の範囲が一致し得るものであり、非常に関連性が高いものである。

そうすると、引用商標の周知性や本件商標と引用商標との類似性は高く、本件商標権者によって本件商標が使用された場合には、その商品に接する需要者が、その商品が正規の製造者、販売者、あるいは正規代理店の商品であるとか、正規の製造者、販売者、あるいは正規代理店と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずる可能性は十分に予想され、需要者がその出所について混同を生じることは明らかである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(4)商標法第4条第1項第19号について

引用商標は、まくらやマットレスの「寝具」について、外国である中国において取引者・需要者の間で周知・著名であることは明らかである。

そして、本件商標権者に不正な目的があることは上記のとおりである。

以上によれば、本件商標権者は、外国(中国)における使用商品の製造事業者・取引者及び需要者の間において、広く認識されていた引用商標を知った上で、引用商標が我が国において登録出願・登録されていないことを奇貨として、これを我が国で独占使用することで不当な利益を得るため、かつ、正規の製造者、販売者、あるいは正規代理店の我が国への参入を阻止するために登録出願し、権利を得たというのが相当であり、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものというべきである。

そして、本件商標権者によって本件商標が使用された場合には、引用商標が有する信用や名声、顧客吸引力を毀損するおそれがあることも明らかである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 取消理由の通知

当審において、本件商標権者に対し、「本件商標は、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当するものというべきであるから、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であって、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。」旨の取消理由を令和2年10月28日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を求めた。

第5 商標権者の意見

上記第4の取消理由に対し、本件商標権者は、何ら意見を述べるところがない。

第6 当審の判断

1 本件商標の商標権者による商標登録出願について

申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(J−PlatPat、商標登録原簿など)によれば、次の事実を認めることができる。

(1)申立人提出の甲3によれば、本件商標と同一又は類似すると認められる商標(以下「本件類似商標」という。)が、我が国における本件商標の登録出願(以下「本件登録出願」という。)の日(2018年(平成30年)10月5日)よりも前に、中国において複数登録出願され、中国商標登録第17533648号などとして商標登録されていることが認められる。そして、上記中国商標登録の権利者名は、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)とは、その名称が異なるものである。

また、本件類似商標が、中国及び我が国の各種インターネットサイトにおいて、商品「まくら」について使用されていることがうかがえる。

(2)さらに、中国において商標登録出願又は登録されている商標と同一又は類似する商標について、本件商標権者が我が国において以下のとおり多数出願・登録している(甲2、職権調査)。

ア 商願2018−124323(商標登録第6182806号)と中国商標登録第19065175号

イ 商願2018−142180(商標登録第6182881号)と中国商標登録第27816884号

ウ 商願2018−142181(商標登録第6182882号)と中国商標登録第31430233号など

エ 商願2018−142182(商標登録第6182883号)と中国商標登録第16483146号など

オ 商願2018−142183(商標登録第6182884号)と中国商標登録第11936980号など

カ 商願2018−142185(商標登録第6182885号)と中国商標登録第11856455号

キ 商願2018−119994(商標登録第6185937号)と中国商標登録第3543254号など

ク 商願2018−119991と中国商標登録第17650724号など(なお、商標権者出願に係る商願2018−119991は、拒絶査定されている。)

ケ 商願2018−142184(商標登録第6218486号)と中国商標登録第4041153号など

コ 商願2018−142186と中国商標登録第3424524号など(なお、商標権者出願に係る商願2018−142186は、拒絶査定されている。)

サ 商願2018−142187と中国商標登録第1046758号(なお、商標権者出願に係る商願2018−142187は、拒絶査定されている。)

シ 商願2018−143613(商標登録第6222408号)と中国商標登録第16571786号など(なお、商標権者出願に係る商願2018−143613(商標登録第6222408号)は、登録査定後に第三者に名義変更されている。)

ス 商願2019−006450(商標登録第6210433号)と中国商標登録第28413122号

セ 商願2019−023306(商標登録第6216790号)と中国商標登録第9119300号

ソ 商願2019−055802(商標登録第6247079号)と中国商標登録第27180218号

タ 商願2018−119992(商標登録第6187906号)と中国商標登録第5154872号など

チ 商願2018−119995(商標登録第6185938号)と中国商標登録第17324071号

ツ 商願2018−119996(商標登録第6185939号)と中国商標登録第23219771号

テ 商願2019−023307(商標登録第6205329号)と中国商標登録第26328004号

ト 商願2018−119993(商標登録第6174161号)と中国商標登録第25519443号など

(3)同じく甲2によれば、上記(2)の本件商標権者による出願は、中国商標登録の出願日よりも後になされたものであり、また、上記中国商標登録の権利者と本件商標権者と名称が異なるものである。

(4)職権調査によるも、本件商標権者が、我が国において、商品の製造又は販売、及び役務の提供等の商取引を行っている事実をうかがわせる証拠は、何ら発見することはできなかった。

2 商標法第4条第1項第7号について

(1)商標法第4条第1項第7号の解釈

本号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(ア)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(イ)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(ウ)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(エ)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(オ)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれると解すべきである(知財高裁 平成17(行ケ)第10349号)。

(2)本件商標について

本件商標は、上記第1のとおり、「素万」及び「SUVARN」の文字からなるものである。

(3)本件商標の登録出願の経緯等について

上記1(1)のとおり、本件類似商標が中国において、本件登録出願の日よりも前に登録出願され商標登録されていること、及び商品「まくら」について使用されていることがうかがえることに加え、本件商標の構成文字である「素万」及び「SUVARN」はいずれも我が国で親しまれた語とは認められないこと、本件商標権者は上記1(2)のとおり、中国で商標登録されている商標と同一又は類似すると認められる商標を我が国において多数登録出願していること、並びに本件商標権者が我が国において商取引を行っている事実をうかがわせる証拠を何ら発見することはできなかったことを併せ考慮すれば、本件商標は、本件商標権者が偶然に本件商標を採択したというよりは、むしろ、中国において本件商標と同一又は類似すると認められる商標が商標登録され又は商品「まくら」について使用されていることをあらかじめ知った上で、我が国において商標登録されていないことを奇貨として高額で買い取らせたり、中国の権利者の国内参入を阻止したりするなど不正の目的で先取り的に出願したものとみるのが自然である。

そうすると、本件商標は、上記2(1)の(オ)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当するものというべきである。

したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。

(4)むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであり、その登録は、同第1項の規定に違反してされたものと認められるから、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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