Trademark Appeal Case
髪アートメイクの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2020−12366(T2020−12366/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は,「髪アートメイク」の文字を標準文字で表してなり,第44類「美容,理容,美容整形及び形成外科医業,皮膚科医業,医療情報の提供,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与」を指定役務として,平成31年2月4日に登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,『髪アートメイク』の文字を標準文字で表してなるところ,構成中の『髪』の文字は,『頭にはえる毛。頭髪。』を意味する語であり,『アートメイク』の文字は『植物性色素で皮膚を着色する美容法』を意味する語である。そして,本願指定役務を提供する分野においては,『頭皮に色素を着色する美容法』について,『ヘアアートメイク』の語が用いられている事実があり,『ヘア』は『髪』を意味する語であることも併せて考えると,本願商標は全体として『頭皮に色素を着色する美容法』ほどの意味合いを表すものである。そうすると,本願商標は,これをその指定役務に使用しても,これに接する取引者,需要者に『頭皮に色素を着色する美容法に係る美容整形及び形成外科医業』や『頭皮に色素を着色する美容法に係る皮膚科医業』等,頭皮に色素を着色する美容法に係る役務であることを認識させるにすぎず,単に役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記役務以外の役務に使用するときは,役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから,商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
第3 当審における審尋
原審で示した事実(別掲1)に加え,当審において,令和3年4月28日付け審尋により,別掲2に掲げる事実を記載した上で,本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとの暫定的見解を示し,期間を指定した上で請求人に対し意見を求めた。
第4 審尋に対する請求人の回答の要旨
1 「アートメイク」の使用事例はわずか5例であり,本願の指定役務の取引者,需要者に,広く認識されているとはいえない。
2 「ヘアアートメイク」の使用事例はわずかであり,しかも記載内容も「ヘアアートメイク」の文字の記載があるが,「アートメイク」の対象となる部位を示している記載内容であり,「ヘアアートメイク」の文字が,直接的に「頭皮に色素を着色する美容法」ほどの意味合いであることを示す記載はない。また,「髪アートメイク」の文字についての使用事実が存在しないから,「ヘア」は「髪」を意味する語であることは明らかであるとしても,上記意味合いを取引者,需要者が理解することはない。
3 本願商標を構成する「髪」,「アート」及び「メイク」の語は,それぞれ単独で広く一般に知られ,親しく使用されているが,「アートメイク」の語は広く一般に知られ,親しく使用されておらず,「アートメイク」,「ヘアアートメイク」の使用事実があるとしても,取引者・需要者が,「髪アートメイク」の語が「頭皮に色素を着色する美容法」ほどの意味合いであることを理解することはできない。したがって,本願商標は,「髪」と「アート」と「メイク」の文字を結合した構成であると考えるのが自然であり,全体として「髪芸術の化粧・製作」ほどの意味合いを表し,自他役務の識別機能を有することから,単に役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ではない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
(1)「アートメイク」の文字について
本願商標は,「髪アートメイク」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中,「髪」の文字は「頭部にはえる毛」等を意味し,「アート」の文字は「芸術」等を意味し,「メイク」の文字は,「化粧」等の意味を有する「メーキャップ」の略として用いられる語(いずれも「広辞苑第七版」)である。
そして,本願の指定役務を提供する分野においては,原審で示した「現代用語の基礎知識2018」及び別掲2(1)に示すとおり,「色素で皮膚を着色する美容法」を表わす語として,「アートメイク」の語が一般に用いられており,その語の使用状況は,別掲2(1)のほかにも,例えば以下の書籍,雑誌,新聞記事においても確認することができる。
ア 「現代用語の基礎知識2017」(株式会社自由国民社発行)の114頁には,「アートメイク〔art make〕」の見出しの下,「針で皮膚に色素を注入し、眉やアイラインなどを描くことを指す。化粧の手間が省けると女性に人気で、1990年代から広がり始めた。厚生労働省は2001年にアートメイクが医療行為に当たるという見解を示したが、無資格業者による健康被害が相次いでいる。(略)医療機関でつくる『日本メディカルアートメイク協会』では、施術前に医師免許を確認するようよびかけている。」の記載がある。なお,「現代用語の基礎知識」における「アートメイク」の掲載は,上記「現代用語の基礎知識2017」や同「2018」のほか,同「2016」や同「2019」等にもみられる。
イ 「an・an 2021年3月3日号」(2021年2月24日,株式会社マガジンハウス発行)の115頁には,対談部分における「石橋 私も受けようかな! あと最近、眉や唇のアートメイク入れる人も多くない?/古屋 多いね! 眉が描かれてたら、すっぴん+マスクで堂々と人に会えるからね。」の記載をはじめ,アートメイクに関する情報についての記載がある。
ウ 2019年2月27日付け日本経済新聞の夕刊5頁には,「がん治療で脱毛、アートメークで心のケア――中高年、老眼や時短で利用(ライフサポート)」の見出しの下,「皮膚の表面に色素を入れ、眉毛やアイラインなどを描く『アートメーク』をする人が増えている。抗がん剤治療などの影響で失われた眉毛などを描く人に加え、最近は化粧の手間を省くために利用する人が出てきた。働く女性が増えたことも背景にありそうだ。(略)抗がん剤治療の副作用で毛が抜けてしまった人向けの治療として始まったアートメーク。最近はがん患者の利用者が増える一方で、違う目的で活用する人も出てきた。(略)女性がアートメークをしようと決めたのは友人とのスキー旅行を考えてのことだった。おっくうだったのが入浴後の化粧。眉を入れたことで風呂上がりにも気兼ねなく友人と顔を合わせて話ができると期待する。」の記載がある。
以上よりすれば,「アートメイク」の文字は,1990年代頃から我が国で広まり,美容や医療を提供するクリニック等,本願の指定役務を提供する分野において,「色素で皮膚を着色する美容法」を表わす語として,一般に広く使用されているものと認められる。
また,別掲2(1)に示す事実によれば,芸能人等の著名人が「アートメイク」を利用したことなどをSNS等で情報発信を行い,それを見たフォロワーから反響が寄せられ,さらにそのことがインターネットニュースなどのメディアでも取り上げられている。
(2)「アートメイク」の対象となる部位について
「アートメイク」の対象は,上記(1)で見られる眉やアイライン,唇等に加え,別掲2(2)に示す事実から,頭皮(頭部)も含まれることが確認できる。さらに,別掲1及び別掲2(2)によれば,頭皮(頭部)に施すことにより,髪が生えたように見える効果を有する「アートメイク」を,「ヘアアートメイク」と称する実情があり,その語の使用状況は,別掲1及び別掲2(2)のほかにも,例えば以下のウェブサイトにおいても確認することができる。
ア 「KIREI」のウェブサイトにおいて,「ヘアアートメイクで薄毛カバー・小顔になる効果と薄毛治療と比較したメリット・デメリット」の見出しの下,「医療アートメイク(以下、アートメイク)には、眉・アイライン・リップラインなどもありますが、ヘアアートメイクは、頭皮におこない髪に見立てるアートメイクです。(略)頭部の地肌を目立たなくすることができます。また、ヘアアートメイクはこのような薄毛の対処法としてだけでなく、額の髪の毛の生え際にアートメイクを施すことで小顔効果も期待できます。」の記載がある。
https://kirei.ai/articles/269(令和3年7月29日最終閲覧)
イ 「SANSPO.COM」のウェブサイトにおいて,「1つのクリニックで、アートメイク、ヘアアートメイク・AGA治療ができちゃう! オールインワンのアートメイク新サービス『スカルプデザインクリニック』を6月24日に開始しました!」の見出しの下,「スカルプデザインクリニックを行うIBクリニック(東京都千代田区(略))は1つのクリニックで『アートメイク』と『ヘアアートメイク』と『AGA治療』の3コースからなるアートメイクの新サービス『スカルプデザインクリニック』を令和元年6月24日(月)に提供開始しました。(略)『スカルプデザインクリニック』では、アートメイクで使用している『毛を繊細に描く』技法と『ナノ単位のドット(点)を加えてメイクのようなぼかし感を表現する』パウダー技法を融合させた、新たなヘアアートメイクです。」の記載がある。
https://www.sanspo.com/geino/news/20190711/prl19071109310007-n1.html(令和3年7月29日最終確認)
(3)小括
上記(1)のとおり,「アートメイク」の語は,「色素で皮膚を着色する美容法」を表わすものとして,本願の指定役務を取り扱う分野で一般に広く使用され,メイクを施したかのような状態が長期間維持できる効果が期待されるものとして,多くの美容や医療を提供するクリニック等で実施されており,また,著名人による情報発信や種々のメディアでの掲載等がなされていることからすれば,「アートメイク」の語は,上記意味合いをもって,本願の指定役務の取引者,需要者に,広く認識されているということができる。
また,上記(2)のとおり,「アートメイク」の対象となる部位は,眉やアイライン,唇等に加えて頭皮(頭部)もあり,頭皮への着色により,髪が生えているかのように見せることができるものである。そして,頭皮(頭部)に施した「アートメイク」を「ヘアアートメイク」と称している事実が確認できる。
さらに,「ヘア」は「髪」を意味する語であることは明らかである。
以上よりすれば,「アートメイク」は「色素で皮膚を着色する美容法」を表すものとして,本願の指定役務の分野で広く認識されており,髪が生えているように見せるために,頭皮(頭部)に施した「アートメイク」を「へアアートメイク」と称している実情があるから,本願商標「髪アートメイク」の文字は,頭皮(頭部)に色素を着色する美容法であることを理解させるものであり,また,「ヘアアートメイク」の「ヘア」の部分を「髪」の文字に置き換えたものと理解することもできるものである。
してみれば,本願商標をその指定役務に使用しても,これに接する取引者,需要者は,本願商標は「頭皮に色素を着色する美容法」ほどの意味合いであること,すなわち役務の質,用途を表示したものと理解するにとどまるというのが相当である。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,「頭皮に色素を着色する美容法」を内容,目的とする役務以外の役務に使用するときは,役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから,同法第4条第1項第16号に該当する。
2 請求人の主張について
(1)請求人は,「アートメイク」の語は,広辞苑に載録がなく,「現代用語の基礎知識」は広く一般に知られたものではない,また別掲2(1)の使用事例はわずかであるから,本願の指定役務の取引者,需要者に,広く認識されているとはいえない旨主張する。
しかしながら,「現代用語の基礎知識」は,毎年改訂がなされ,掲載される情報は改訂前までに発生した新語・新事象をベースに,それに関連する基礎語・専門語を収録するもの(「現代用語の基礎知識2019」巻末の「この本の使い方」参照。)とされており,「アートメイク」の語は,上記1(1)アのとおり,「現代用語の基礎知識」に複数年掲載されている上に,例えば「大辞泉第二版」(株式会社小学館発行。「アートメーク【art make】」の項)にも掲載されていることからすれば,「アートメイク」は一般に広く認識されて定着してきた語といえる。
また,上記1のとおり,著名人による情報発信及びメディアでの掲載等により,多くの者に情報が発信されたことが確認できる他,上記1(1)の事例や別掲2(1)の事例からすると,ファッション関連の雑誌,経済紙,スポーツ紙,地域情報を発信するウェブサイト等,多様なメディア等で「アートメイク」が取り上げられ,またその記事内容に関しても,「アートメイク」は,多くの者が利用している,利用者が増えている,人気がある旨の記載が見られる。
さらに,「アートメイク」の普及当初,医療に関する資格のない者による施術によって健康被害が多く発生していたことから,2001年に厚生労働省が「アートメイク」を医療行為に当たるものとする見解を表明したり,「日本メディカルアートメイク協会」が注意喚起を発するなど,社会的話題性のある語であるともいえる。
以上よりすれば,上記1のとおり「アートメイク」は,「色素で皮膚を着色する美容法」を表わす語として,本願の指定役務の取引者,需要者に広く認識されているというべきである。
(2)請求人は,別掲2(2)に示す「ヘアアートメイク」の事例はわずかであり,また,別掲1の事例も含め,「ヘアアートメイク」の文字の記載があるとしても,「ヘアアートメイク」の文字が,直接的に「頭皮に色素を着色する美容法」ほどの意味合いであること示す記載は存在しない,さらに,「髪アートメイク」の使用事実がないから,本願商標から「頭皮に色素を着色する美容法」ほどの意味合いを取引者,需要者が理解することはない旨主張する。
しかしながら,上記1のとおり,「アートメイク」が「色素を皮膚に着色する美容法」を表すものとして広く認識され,頭皮(頭部)に施す「アートメイク」を「ヘアアートメイク」と称している実情が見られること,「ヘアアートメイク」の効果は髪が生えたように見せるものであること,「ヘア」と「髪」が同じ意味であることは明らかであることを総合的に考慮すれば,本願商標「髪アートメイク」の文字から,「頭皮に色素を着色する美容法」ほどの意味合いを自然に理解できるというべきである。
(3)請求人は,本願商標を構成する「髪」,「アート」及び「メイク」の語は,それぞれ単独で広く一般に知られているのに対し,「アートメイク」の語は広く一般に知られていないから,取引者,需要者は,本願商標が「髪」と「アート」と「メイク」の文字を結合した構成である考えるのが自然であり,全体として「髪芸術の化粧・製作」ほどの意味合いを理解する旨主張する。
しかしながら,上記1のとおり,本願の指定役務を取り扱う分野において,「アートメイク」の語が「色素で皮膚を着色する美容法」を表すものとして広く認識されているというべきである。してみれば,たとえ「アート」及び「メイク」の各語が,「アートメイク」とは異なる意味合いでもって,それぞれ単独でも使用されて広く知られた語であるとしても,そのことをもって「アートメイク」の語が広く認識されていることを否定すべき理由にはならない。そうすると,本願商標は,頭皮(頭部)に施すことによって髪が生えたように見せる「アートメイク」であると捉え,全体として,「頭皮に色素を着色する美容法」ほどの意味合いを認識させるものというべきである。
(4)請求人は,過去の商標登録例を挙げ,本願商標も登録すべき旨主張する。
しかしながら,登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号又は同法第4条第1項第16号に該当するものであるか否かの判断は,当該商標登録出願の査定時又は審決時において,当該商標の構成態様と指定役務の取引の実情等に基づいて,個別具体的に判断されるべきものであるところ,本願商標については,「アートメイク」及び「ヘアアートメイク」の使用状況等の取引の実情等に基づいて判断するものであるから,構成の異なる商標登録例があることが,本願商標に対する判断を左右するものではない。
(5)したがって,請求人の主張は,いずれも採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。