結論テキスト
本願商標は、登録すべきものとする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 不服2021−389(T2021−389/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本願は、平成31年4月8日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 3月 9日付け:拒絶理由通知
令和2年 5月22日 :意見書の提出
令和2年10月 5日付け:拒絶査定
令和3年 1月12日 :審判請求書の提出
令和3年 3月25日 :手続補正書の提出
本願商標は、「一遍」の文字を標準文字で表してなり、第31類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として登録出願され、その後、本願の指定商品については、前記第1の手続補正により、第31類「ねぎ」に補正されたものである。
本願商標は、「一遍」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、鎌倉中期の僧で、時宗の開祖の名称を表すものであり、また、全国の博物館では、「一遍」に関する展示が開催されているなど、一遍は、周知・著名な歴史上の人物である。そして、一般に、歴史上の著名な人物にゆかりのある地では、当該人物の氏名や略称などを用いて地域振興を図っているところ、長野県佐久市に伝わる「一遍」に由来する「跡部の踊り念仏」を構成に含む「風流踊」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産への登録を目指す国内候補として選定され、また、「一遍」の生誕地とされる愛媛県松山市では、「一遍」の生誕祭が開催され、さらに、大分県別府市では、鉄輪温泉を開発した「一遍」に感謝する「鉄輪湯あみ祭」が開催されるなど、「一遍」にゆかりのある地では、「一遍」を観光資源として地域の活性化に利用している実情がある。
そうすると、本願商標を、一私人である出願人が自己の商標として、その指定商品について採択・使用することは、そのゆかりの地における観光振興や地域おこしなどの公益的な施策の遂行を阻害することとなり、社会公共の利益に反するおそれがあるものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
商標法第4条第1項第7号は、商標登録を受けることができない商標として、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」を規定しているところ、同号には、出願商標の構成自体がきょう激な文字や卑わいな図形等である場合だけでなく、その指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれるものである。
(1)本願商標について
本願商標は、前記第2のとおり「一遍」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、当該文字は、「一遍」の見出しの下、「1度。1回。ひととおり。」等の意味を有する語として、また「一遍(人名)」の見出しの下、「鎌倉中期の僧。時宗の開祖。」の意味を有する語として一般の辞書(「広辞苑 第七版」株式会社岩波書店)に掲載されているものである。
(2)一遍(人名)について
一遍(人名)について、職権調査(別掲1及び2)によれば、次の事実が認められる。
ア 一遍は、鎌倉時代中期の1239年に現在の宝厳寺(愛媛県松山市)で生まれ、1289年に現在の真光寺(兵庫県神戸市)で死亡したとされる僧である。1274年に時宗を開いた翌年に「一遍」と改名し、全国を遊行し踊念仏を行い、また徹底的に所有物を捨てたので、遊行上人とも捨聖ともいわれており、鎌倉仏教史上に重要な地位を占める人物とされている。現在、時宗の総本山である遊行寺(正式名称:藤澤山無量光院清浄光寺)が存在する神奈川県藤沢市は、一遍が1282年に遊行の旅で訪れた地であるほか、大分県別府市には、同人が開いたとされる鉄輪温泉が存在し、現在の長野県佐久市に伝わる「跡部の踊り念仏」(重要無形民俗文化財)は、同人が1279年に当該地域を訪れた際に念仏供養を行ったことが始まりとされる等、同人ゆかりの地が日本の様々な地域に存在している。
一遍は、歴史上の人物として、辞典類に掲載されているほか、後記のとおり、同人にまつわる絵巻が博物館等で展示されたり、同人ゆかりの地域で法要や祭りが開かれるなどしている。
イ 一遍の生誕地とされる宝厳寺では、3月に生誕祭が開催され、法要や飲食販売などが行われており、同人の没地とされる真光寺では、9月に御忌法要がいとなまれ、踊念仏が奉納されている。鉄輪温泉では、温泉の開祖といわれる一遍や、温泉の恵みに感謝する「湯あみ祭り」が9月に開催され、一遍上人像を鉄輪温泉で清めた後、稚児行列等が行われている。
また、遊行寺が所蔵する絵巻「一遍聖絵」(1299年作)は、一遍の生涯を描いた国宝であるところ、遊行寺宝物館をはじめ、京都国立博物館等で度々公開されているほか、一遍の念仏供養を起源とする「跡部の踊り念仏」は、ユネスコ無形文化遺産の登録候補に選ばれており、2022年11月頃にユネスコにおいて登録の可否が審議される予定である。
(3)本願商標採択の理由等
請求人の主張及び同人提出の証拠によれば、次の事実が認められる。
ア 京都府八幡市の九条ねぎ生産法人である請求人は、根からの収穫にこだわった「一回きりの収穫」の九条ねぎを生産販売しており、「たった一度きり収穫したねぎ」であるという思いを込めて、「一遍」の文字からなる本願商標を選択した。請求人が生産販売する九条ねぎの包装袋には、「この都に千三百年の歴史をもつ九条ねぎ その中で一遍きりの収穫」「一期一会 この思いを伝えたくて」の文字とともに、請求人の名称及び「九条 一遍ねぎ」の文字が表示されている(第4号証の1、第5号証)。
イ 請求人が生産する九条ねぎは、京都府のパン教室のブログにおいて、「九条 一遍ねぎは根切りをせず一遍(1回きり)の一期一会!愛情込め大切に育てた一遍ねぎ パンとコラボレーション!させて頂きました!」「京都府産の九条ネギの知名度が出ている昨今・・・根を畑に残して何度も刈り取るネギが大半をしめて・・・いる中、野井農園は一遍きり(一回きり)の収穫を徹底しています!」などと紹介されている(第4号証の2)。
(1)上記2(1)に認定したところによれば、本願商標は、その構成自体がきょう激な文字や卑わいな図形等である場合に該当するものとはいえないものであるので、以下においては、本願商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものといえるかどうかについて検討する。
(2)上記2(2)のとおり、鎌倉時代の僧である一遍は、我が国において、周知、著名な歴史上の人物であるところ、一遍の生誕地である愛媛県松山市や国内各地のゆかりの地においては、同人の名を用いた法要や祭りの開催、あるいは同人の名を用いた美術品の展示等が行われており、「一遍」の人名は、それぞれの地域における公益的事業の遂行と密接な関係を有しているといえる。
しかしながら、本願の指定商品は、前記第2のとおり「ねぎ」であるところ、当該指定商品は、一遍の名を用いた法要や美術品の展示等とは密接な関係性を有するものとは認められないし、上記ゆかりの地における地域振興や観光振興において、ねぎがその地の特産物や土産物等として販売されている事実も発見できないことから、本願の指定商品は、当該ゆかりの地域と密接な関係性を有するものともいえない。
また、一遍が、本願の指定商品と関連の深い人物であるとの事情も見いだすことはできず、本願商標がその指定商品に使用された場合、歴史上の人物である一遍を指称するものとして理解、認識されるとみるべき事実も発見することはできなかった。
さらに、上記2(1)のとおり、「一遍」の文字は、「1度。1回。ひととおり。」等の意味を有する語であるところ、上記2(3)のとおり、請求人は「一回きりの収穫」の九条ねぎであることを表すために「一遍」の文字を使用しており、それが他人により紹介されている事実も併せ鑑みると、請求人による本願商標の出願経緯等に、社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものがあるとも認められない。
(3)上記(2)のとおり、本願商標は、その出願経緯等に社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠くものがあるとも認められないから、請求人が、本願商標をその指定商品について使用することが、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものとまでいうことはできない。
したがって、本願商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当するものではない。
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではないから、本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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