Trademark Appeal Case
抽象図形商標の類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2020−900178(T2020−900178/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第6246707号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成よりなり、平成30年9月21日に登録出願、別掲2のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和2年3月23日に登録査定され、同年4月20日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する登録第5874165号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲3に示すとおりの構成よりなり、平成28年2月24日に登録出願、第31類「犬用ビスケット,犬用のごちそう,犬用噛み餌,犬用飼料,ペットフード,ペットのごちそう,飼料,動物用噛み餌,飼料用あらびき粉,ペット用飲料,飼料用たんぱく」を指定商品として、同年7月28日に登録査定され、同年8月12日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当することについて
(1)本件商標は、引用商標に類似し、かつ、本願商標の指定商品も引用商標の指定商品と同一又は類似する。
(2)本件商標と引用商標は、外観において類似する。両商標を構成する図柄は、いずれも、犬及び猫と思しき2匹の首から上の横顔を並べた光景の外郭を抽象的に描いている点で、その構図及び描写方法が非常によく似ている。
しかも、一般に、ペット(愛玩動物)商標に表される犬及び猫の図柄からなる商標は、犬と猫の顔及び体を図面・漫画として細部まで明確に描いたものが使用されているから(甲5)、引用商標のような単なる線のみからなる抽象的な図柄は極めて特徴的である。
したがって、引用商標は、特異な構成の商標として、ペット用の商品・役務の需要者に覚えられるものである。
(3)商標の類否判断における商標の観察方法の原則である「離隔的観察」により、比較する商標を時と所を違えて観察してみると、引用商標は、極めて抽象的で、簡単な線描写図形であり他に類を見ないものであるから、これと同様の構図や描写方法からなる本件商標との間では類似範囲が広いといえることもあり、時と所を違えてみれば、引用商標を先に見た需要者は、引用商標を本件商標と混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、引用商標と外観において類似する。
(4)本件商標の指定商品及び指定役務中の第5類「プロテインを主原料とする動物用の栄養補助用飼料用添加物,栄養補助食品として使用される動物用飼料のための添加物(医療用のものを除く。)」、第31類「飼料,動物用飲料,犬用ビスケット,ペットフード,犬用飼料,猫用飼料の缶詰,愛玩動物用スナック菓子,猫用飼料,猫用魚の缶詰」及び第35類「動物及びペット用栄養補助食品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ペットの餌の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、引用商標の指定商品に類似することは明らかである。
また、本件商標の指定商品である各種ペット用品は、用途・需要者・販売経路を引用商標の指定商品と共通にし、引用商標に類似する本件商標をその指定商品に使用した場合、かかる商品が引用商標権者の業務に係る商品であると混同されるおそれがあり、本件商標の主たる指定役務を提供するペットショップ(ペット商品の小売)は、今や、総合的なペット用品販売業(店)が主流であるから(甲6)、商品「ペットフード」に使用される引用商標と類似する本件商標が、その指定役務である各種ペット用品の小売等に使用された場合、ペットフードの小売のみならず、他のペット用品の小売等の役務についても、引用商標権者の業務に係る役務であると混同されるおそれがある。
したがって、本件商標の指定商品及び指定役務は、引用商標の指定役務に類似する。
(5)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することについて
(1)本件商標(決定注:引用商標の誤記と認める。)の著名性について
申立人の商品である犬のペットフードは、我が国において、アマゾン等のインターネットを介した通信販売のウェブサイト(以下「ネット販売サイト」という。)で、販売されている(甲7、甲8)。
引用商標は、当該商品の主要商品の商品パッケージの正面右下に使用されている、いわば、これらの商品のハウスマークである。
したがって、需要者が、当該商品のハウスマークとして、なじみ認識しており、本件商標(決定注:引用商標の誤記と認める。)は、当該商品の著名商標といえるものである。
(2)本件商標と引用商標の類似性及び近似性について
本件商標と引用商標の類似性及び近似性は、上述したとおりである。
(3)まとめ
以上からすると、本件商標がその指定商品及び指定役務に使用されれば、それらがペット用の商品及びペット用の役務であることともあいまって、それらの商品及び役務が申立人又はこれに関連する者の業務に係るものであると混同されるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標について
本件商標は、別掲1に示すとおり、黒塗り円図形内の左側に右向きの犬の顔をモチーフとしてデザイン化したと思しき図形(以下「本件右向き犬図形」という。)とその右側に左向きの猫の顔をモチーフとしてデザイン化したと思しき図形(以下「本件左向き猫図形」という。)を円で囲んだ図形を白抜きにしてなるところ、当該図形は、既成の具体的な事物や事象を表したものとは認識しないものであり、また、当該図形が、我が国における需要者の間に広く認識されていたものと判断すべき事情は認められないため、本件商標は特定の称呼及び観念を生じないものである。
イ 引用商標について
引用商標は、別掲3に示すとおり、その構成の左側に太字の黒線で描いた左向きの猫の顔をモチーフとしてデザイン化したと思しき図形(以下「引用左向き猫図形」という。)とその右側に太字の黒線で描いた右向きの犬の顔をモチーフとしてデザイン化したと思しき図形(以下「引用右向き犬図形」という。)を配してなるところ、当該図形は、既成の具体的な事物や事象を表したものとは認識しないものであり、また、当該図形が、我が国における需要者の間に広く認識されていたものと判断すべき事情は認められないため、引用商標は特定の称呼及び観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを比較すると、外観については、両商標ともに、右向きの犬の顔をモチーフとしてデザイン化したと思しき図形と左向きの猫の顔をモチーフとしてデザイン化したと思しき図形を描いている点においては共通するものの、本件商標は、本件右向き犬図形と本件左向き猫図形とが向かい合せに配置されているのに対し、引用商標は、引用左向き猫図形と引用右向き犬図形とが背中合わせに配置されている点において明らかに相違するものであり、また、本件商標は、黒塗りの円図形を有しているところ、引用商標は、黒塗り図形を有していないことからすると、これらの差異を鑑みると、両商標の外観は明らかに相違するものである。
また、両商標は、いずれも特定の称呼及び観念が生じないため、これを比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念は比較できないとしても、外観の印象が明らかに相違するため、両商標の外観によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、互いに別異の印象を与えるものであり、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(2)申立人の主張
申立人は、「両商標を構成する図柄は、いずれも、犬及び猫と思しき2匹の首から上の横顔を並べた光景の外郭を抽象的に描いている点で、その構図及び描写方法が非常によく似ている。商標の類否判断における商標の観察方法の原則である『離隔的観察』により、比較する商標を時と所を違えて観察してみると、引用商標は、極めて抽象的で、簡単な線描写図形であり他に類を見ないものであるから、これと同様の構図や描写方法からなる本件商標との間では類似範囲が広いといえることもあり、時と所を違えてみれば、引用商標を先に見た需要者は、引用商標を本件商標と混同するおそれがある。」旨を主張する。
しかしながら、両商標ともに、犬及び猫と思しき図形を有する点において共通しているとしても、上記(1)ウのとおり、本件商標は、犬と猫と思しき図形が向かい合わせに配置しているのに対し、引用商標は、犬と猫と思しき図形が背中合わせに配置していることから、両商標の外観において、需要者に与える印象は、明らかに異なることからすると、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって、申立人のかかる主張は、採用できない。
(3)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品及び指定商品と引用商標の指定商品とが同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
ア 申立人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、申立人の取り扱いに係るかかる商品が、犬用のペットフードである旨主張しているが、同人の提出した証拠からは、申立人が、犬用のペットフードを取り扱っていることは確認することができない。
(イ)2020年10月19日に、ネット販売サイトの「amazon」で、引用商標がパッケージに付された犬用のペットフード(以下「使用商品」という。)が販売されていることが確認できる(甲7)が、使用商品が申立人の取り扱いに係る商品であることは確認することができない。
イ 前記アで認定した事実によれば、引用商標が商品パッケージに付された使用商品が、ネット販売サイト等で販売されていることは確認できる。
しかしながら、申立人が提出した全証拠を確認しても、使用商品に付された引用商標の周知著名性の度合いを客観的に判断するための資料(使用商品の販売開始時期、売上高、市場シェア等を証明する証拠)が提出されていないため、引用商標に係る商品の販売実績等を推し量ることはできない。
また、申立人が、申立人に係る使用商品を実際に製造又は販売等を行っていることも確認することができない。
そうすると、引用商標は、申立人が提出した全証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されていたものとは認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
上記1(1)ウのとおり、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であり、別異の商標と判断できるものであるから、両商標の類似性の程度は低いものといえる。
(3)本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品との関連性について
本件商標の指定商品及び指定役務中には、愛玩動物用の商品や愛玩動物用の商品の小売り等であるところ、引用商標の指定商品は、ペットフードに関する商品等であることから、本願商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品とは、事業者、用途、販売場所と提供場所等が一致しているものであり、関連性を有するものである。
(4)出所の混同のおそれについて
上記(3)のとおり、本願商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品とは、事業者、用途、販売場所と提供場所等が一致し、関連性を有するものであるとしても、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されていたものとは認めることはできないこと及び上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、別異の商標と判断できるものであり、両商標の類似性の程度は低いものであることからすると、本件商標をその指定商品及び指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標の商標権者が、本件商標をその指定商品及指定役務に使用しても、これに接する需要者が、申立人又は引用商標を連想又は想起するとは考え難い。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品及び指定役務について使用しても、その取引者、需要者をして、当該商品及び役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認めることはできない。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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