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Trademark Appeal Case

図形商標の要部類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35470号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1.本件商標

本件登録第3371198号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲第一商標のとおりの構成よりなり、平成7年10月13日に登録出願、「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、同11年3月5日に設定登録されたものである。

2.引用商標

請求人が引用する登録第3275418号商標(以下、「引用商標A」という。)は、別掲第二商標のとおりの構成よりなり、平成6年5月6日に登録出願、第3類「野菜・食器用洗剤,シャンプー,ヘアーリンス,ボディソープ,その他のせっけん類,化粧品,歯磨き,香料類,かつら装着用接着剤,つけづめ,つけまつ毛,つけまつ毛用接着剤,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリーム,靴墨,塗料用剥離剤」を指定商品として、平成9年4月4日に設定登録されたものであり、同じく登録第3208966号商標(以下、「引用商標B」という。)は、「ヤシノミ」と「YASHINOMI」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成5年12月29日に登録出願、第3類「野菜・食器用洗剤,シャンプ―,ヘア―リンス,ボディソ―プ,その他のせっけん類,化粧品,歯磨き,香料類,かつら装着用接着剤,つけづめ,つけまつ毛,つけまつ毛用接着剤,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリ―ム,靴墨,塗料用剥離剤」を指定商品として、平成8年10月31日に設定登録されたものであり、同じく登録第1640293号商標(以下、「引用商標C」という。)は、別掲第三商標のとおりの構成よりなり、昭和53年12月26日に登録出願、第4類「や子油を用いてなるせつけん、その他や子油を用いてなるせつけん類」を指定商品として、昭和58年12月26日に設定登録されたものであり、同じく登録第1898264号商標(以下、「引用商標D」という。)は、別掲第四商標のとおりの構成よりなり、昭和59年7月3日に登録出願、第4類「や子油を用いてなる野菜、食器用洗剤」を指定商品として、昭和61年10月28日に設定登録されたものであり、同じく登録第2552042号商標(以下、「引用商標E」という。)は、別掲第五商標のとおりの構成よりなり、平成2年3月20日に登録出願、第4類「椰子油を用いてなる野菜、食器用洗剤」を指定商品として、平成5年6月30日に設定登録されたものであり、同じく登録第2581849号商標(以下、「引用商標F」という。)は、別掲第六商標のとおりの構成よりなり、平成2年3月20日に登録出願、第4類「椰子油を用いてなる野菜、食器用洗剤」を指定商品として、平成5年9月30日に設定登録されたものであり、同じく登録第2680063号商標(以下、「引用商標G」という。)は、別掲第七商標のとおりの構成よりなり、平成3年3月25日に登録出願、第4類「椰子油を用いてなる野菜、食器用洗剤」を指定商品として、平成6年6月29日に設定登録されたものであって、いずれも現に有効に存続するものである。

3.請求の趣旨及び請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」と申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第58号証を提出した。

(1)本件商標と引用商標Aとの類否

a)外観について

本件商標は、円形の外郭の中に2本の椰子の木とそれぞれの木に2個ずつの椰子の実を描いた図形で構成され、一方、引用商標Aは、ステンドグラスを背景とし、2本の椰子の木とそれぞれの木に2個ずつの椰子の実を描いた図形で構成されている。

したがって、両商標は、大小2本の椰子の木と、それぞれの木に2個ずつの椰子の実の図形を描き、一定の枠で囲んだ図形により構成されるという点、商標全体の構成における椰子の木及び椰子の実の大きさ・位置・バランスの点においてその構成の軌を一にする。

そのため、両商標は、その特徴的な構成から需要者に同様の外観的印象を与えるものであり、時と場所とを異にして、かかる商標に接する需要者は、両商標の間で混同を生ずるものと考えられる。

確かに、両商標は、その背景が円形であるか、楕円形を二分にしたステンドグラスの形状であるかという点において相違するが、これらは商標の構成全体からみて単なる背景にすぎない比較的印象の薄い部分であり、構成中強く看者の注意を引く部分はあくまで中央に表わされた椰子の木と椰子の実を表わした図形にある。したがって、商標全体の識別性を考える上でかかる相違はさしたる意味のあるものではなく、両商標を時と場所を異にして観察した場合、外観上紛らわしいものと考えられる。

また、両商標は、椰子の葉の形状及び数の点でも相違するが、かかる相違も両者の外観上の識別性に影響を与える程のものではなく、取引の場において時と場所を異にして商標に接した需要者が両商標を識別するに足るだけの相違ではない。

したがって、両商標は、全体として、その外観において類似するものである。

なお、上記主張は、昭和42年(行ケ)第103号、昭和27年(行ナ)第33号、昭和47年審判第4422号、昭和52年審判第4281号、昭和52年審判第11422号、昭和54年審判第2661号等の過去の判決例・審決例からも明らかである。

b)称呼及び観念について

本件商標は、三重の同心円からなる外郭の中に2本の椰子の木と4個の黒く塗りつぶした椰子の実を描いた図柄で構成されているが、三重の円からなる外郭は極めてシンプルなものであるため、顕著に描かれた椰子の実又は椰子の木の図形より生ずる称呼をもって取引される場合が少なくないものと考えられ、本件商標からは、「やしのみ」「やし」又は「やしのき」の称呼及び「椰子の実」「椰子」又は「椰子の木」の観念が生ずるものと考えられる。

一方、引用商標Aは、楕円形を二分した形状のステンドグラスを背景に2個ずつ椰子の実をつけた椰子の木が2本描かれているが、ステンドグラスの部分は背景にすぎず、商標の識別力を有する部分はあくまで椰子の木及び椰子の実の図形の部分である。したがって、引用商標Aは、椰子の実又は椰子の木の図形より生ずる称呼をもって取引される場合が少なくなく、「やしのみ」「やし」又は「やしのき」の称呼、「椰子の実」「椰子」又は「椰子の木」の観念を生ずるものと考えられる。

なお、請求人は、引用商標Aを引用商標Bとともに使用しているため、実際の取引の場において、引用商標Aからは「やしのみ(椰子の実)」又は「やし(椰子)」の称呼・観念が生ずる。

よって、両商標は称呼及び観念の点においても類似するものである。

なお、このことは、昭和47年審判第600号、昭和52年審判第9873号、昭和57年審判第9998号、昭和51年審判第3630号、昭和48年審判第4567号、昭和53年審判第10545号等の審決例からも明らかである。

c)商品の類似について

本件商標の指定商品は、「せつけん類,香料類,化粧品,歯磨き」であり、引用商標Aの指定商品は「野菜・食器用洗剤,シャンプー,ヘアリンス,ボディーソープ,その他のせっけん類,化粧品,歯磨き,香料類,かつら装着用接着剤,つけづめ,つけまつ毛,つけまつ毛用接着剤,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリーム,靴墨,塗料用剥離剤」である。よって、本件商標の指定商品は、引用商標Aの指定商品と同一又は類似の商品であるといえる。

d)以上述べた如く、本件商標は、引用商標Aと外観・称呼・観念のいずれにおいても類似し、指定商品も同一又は類似であり、また、本件商標の出願日は引用商標Aの出願日よりも後願であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(2)本件商標と引用商標B乃至Gとの類否

a)引用商標B乃至Gは、「ヤシノミ」の片仮名文字若しくは「YASHINOMI」の欧文字、これらと椰子の木の図形から構成されていることから、明らかに「ヤシノミ」の称呼及び「椰子の実」の観念を生ずる。

一方、本件商標は、三重の同心円からなる外郭の中に2本の椰子の木と4個の黒く塗りつぶした椰子の実を描いた図柄で構成されているが、三重の円からなる外郭は極めてシンプルなものであり、単なる背景にすぎず、また、4個の椰子の実が黒く塗りつぶされた特徴的な態様で描かれているため、本件商標は、顕著に描かれた椰子の実の図形より生ずる称呼をもって取引される場合が少なくない。そのため、本件商標からは、「ヤシノミ」の称呼及び「椰子の実」の観念が生じ得るものである。

したがって、本件商標と引用商標B乃至Gとは、その称呼・観念において類似するものである。

本件商標から、「ヤシノミ」の称呼及び「椰子の実」の観念が生じ、これと引用商標B乃至Gが類似することは、昭和54年審判第874号、昭和57年審判第9997号、昭和61年審判第15087号、昭和50年審判第1686号、昭和52年審判第3819号等の審決例からみても明らかである。

b)商品の類似について

本件商標の指定商品は、「せつけん類,香料類,化粧品,歯磨き」であり、引用商標Bの指定商品は「野菜・食器用洗剤,シャンプー,ヘアリンス,ボディーソープ,その他のせっけん類,化粧品,歯磨き,香料類,かつら装着用接着剤,つけづめ,つけまつ毛,つけまつ毛用接着剤,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリーム,靴墨,塗料用剥離剤」である。よって、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品である。

また、引用商標Cの指定商品は「椰子油を用いてなるせつけん、その他椰子油を用いてなるせつけん類」であり、引用商標D乃至Gの指定商品は「椰子油を用いてなる野菜、食器用洗剤」であり、本件商標の指定商品の一部と同一又は類似である。

以上述べた如く、本件商標は、請求人の先登録に係る引用商標B乃至Gと称呼・観念において類似しており、指定商品も同一又は類似であることから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第15号について

a)引用商標Aの著名性

請求人は、平成5年8月に引用商標Aをヤシノミ洗剤600mlポンプボトルに採用して以来、今日まで継続してヤシノミ洗剤の商標として、引用商標Bとともに使用し続けている。この商標を付したヤシノミ洗剤の販売高は、最近5年間、年平均約24億円、合計約120億円にものぼっている。

また、この商標を使用した商品の広告・宣伝費は、最近5年間、年平均約4億円、合計約20億円にものぼっている。広告・宣伝の主なものは、全国ネット番組提供、スポット出稿、新聞・雑誌での広告、看板広告などが中心となっている。

このように、引用商標Aは、広範囲に使用された結果、本件商標の出願時及び登録時には全国的に周知・著名になっている。

b)引用商標B乃至Gの著名性

請求人は、1972年に上記商標を使用したヤシノミ洗剤を一般小売市場に上市し、以来、現在まで約28年の長きに亘って使用し、現在では、600mlボトル換算で年間約1000万個を販売する状況にある。また、既に日経POSなど流通DATAにおいても、ナショナル・ブランドとしての実績を持ち、現在も台所用洗剤シェアの4〜5%を保有している。また、引用商標Aの使用開始した年の翌年1994年に売上のピークを迎え、1995年以来シェア徴減を示していたが、1998年9月ヤシノミ洗剤コンパクトタイプ「パワーミニ」を新発売して巻き返しを図っている。

請求人の使用商標は、引用商標B乃至Gなどさまざまであるが、継続して「やしのみ」の名称を必ず使用しており、更に、引用商標Bが登録されてからは、登録商標の使用として「ヤシノミ/YASHINOMI」を使用している。勿論、引用商標Aについても、この「ヤシノミ/YASHINOMI」と共に使用している。

また、請求人は、平成6年には、石鹸液をベースにして、洗剤をブレンドした全国の生協などでお馴染みの食器洗い用ヤシノミ複合せっけんを発売している。また、昭和58年には、手肌にやさしい洗浄の技術を、フルに生かし、ヤシノミシリーズのシャンプー・リンスやボディソープを発売している。

かくのごとく長期間に亘り広範囲に「ヤシノミ」商標を使用した結果、請求人の「ヤシノミ」は、全国的に極めて周知・著名であるといえる。

c)請求人商標と本件商標の発想の共通性

引用商標Aと本件商標とは、椰子の葉の形状・背景において若干の相違はあるものの、ともに2本の椰子の木と、それぞれの椰子の木に2個ずつの椰子の実を描き、枠で囲むという特徴的な態様で描かれており、商標構成上の発想を同じくするものである。

また、本件商標は椰子および椰子の実を図案化したものであるため、本件商標の使用は、引用商標B乃至Gを想起させるものである。

したがって、本件商標をその指定商品に使用する場合、需要者は周知著名な請求人の商標を想起し、恰もその商品が同会社又は同会社と経済的・組織的に何らかの関係のある会社の製造・販売に係るものであるかの如く誤認し、ひいては商品の出所の混同を生じさせるおそれがある。このことは、昭和32年抗告審判第179号審決からも明らかである。

以上により、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当し、無効にすべきものである。

(4)答弁に対する弁駁

a)本件商標と引用商標Aはともに、2本の長さの違う椰子の木が中央に並んで描かれている。そしてその幹の上部からは、葉の数の違いこそあれ、椰子の葉が放射線上に広がっており、その葉の形状はともに半楕円形で、葉の下部の切れ目も両商標とも同様の手法で描かれている。さらに、それぞれの椰子の木に2個ずつの椰子の実が同様の形状で描かれている。これら両商標の構成上の共通点は強く看者の注意を引く部分であり、両商標の要部である。以上の共通点から、両商標がその構成の軌を一にするものであることは疑う余地がなく、両商標は外観上相紛れるおそれのある類似の商標である。

上述のように、本件商標及び引用商標Aはともに、椰子の実及び椰子の木の図形部分が要部であり、その部分をとらえて、「やしのみ」「やし」又は「やしのき」の称呼及び「椰子の実」「椰子」又は「椰子の木」の観念が生じ、両商標は称呼・観念においても類似する商標であることは、既に請求人が審判請求書において述べている通りである。

両商標における「椰子の実」及び「椰子の木」の図形部分は、需要者をしてそれらが椰子の実及び椰子の木を表していると認識せしめるのに十分具体的な図形である。ある程度抽象化(図案化)された図形であっても、そこから特定の称呼・観念が生ずることは、請求人が引用した審決例(甲第17号証乃至甲第31号証及び甲第34号証)に徴しても明らかである。

また、被請求人が引用する登録第1697890号商標は、全体がまとまりよく不可分一体に構成されており、その構成よりみて図形及び文字からなる全体が同商標の要部であるといえる。それゆえに、同商標から生ずる称呼・観念も、同商標を構成する文字及び図形全体から生ずるものであり、その一部である図形部分のみを抽出して「やしのき」(椰子の木)等の称呼・観念が生ずるとは社会通念上考えられない。従って、引用商標Aから「やしのき」(榔子の木)等の称呼・観念が生ずることと、前記登録商標が並存して登録されていることとはなんら矛盾するものではない。

したがって、本件商標と引用商標Aは、外観・称呼・観念のいずれにおいても類似の商標である。

b)引用商標B乃至Gから「やしのみ」(椰子の実)の称呼・観念が生ずることは、被請求人も認めるところである。

しかしながら、被請求人提出の乙第4号証の1乃至乙第4号証の8において、本件商標が写実的ではなく抽象的(図案的)に描かれているがゆえに特定の称呼・観念を生じないと判示している例は見当たらない。

確かに、乙第4号証の8においては、同審判に係る商標からは特定の称呼・観念が生じないものとされているが、同商標は抽象的(図案的)に描かれているがゆえに特定の称呼・観念が生じないとされているのではなく、動物が擬人化され架空のキャラクター化されているがゆえにそのモチーフとなったであろう動物の称呼・観念をはじめ特定の称呼・観念は生じないとされているのである。抽象化(図案化)と凝人化による架空のキャラクター化とは全く異なる概念である。したがって、乙第4号証の1乃至同第4号証の8のいずれの判決・審決例も被請求人の主張の証左となりうるものではない。

したがって、本件商標と引用商標B乃至Gは、称呼・観念のいずれにおいても類似の商標である。

c)請求人は、審判請求書とともに提出した引用商標の著名性に係る証拠書類に関しては、何ら信憑性に欠けるものではないと確信するが、念のため、それら証拠書類の信憑性をさらに高めるための証拠書類を後日提出する予定であり、その際に引用商標の著名性に関して弁駁する予定である。

4.答弁の趣旨及び被請求人の主張

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至同第4号証(枝番を含む。)を提出した。

(1)本件商標と引用A商標との類否

本件商標は、子持ち二重円内に示された椰子の木は、円内と一体的に描かれており、かかる抽象的(図案的)に描かれた図形からは、単なる「ヤシ」「ヤシノキ」「ヤシノミ」なる称呼、「椰子」「椰子の木」「椰子の実」なる集約して理解される観念は生ぜず、称呼、観念の特定されない抽象的(図案的)な図形として専ら視覚に映ずる外観形象をもって取引に資せられるものといわなければならない。

他方、引用商標Aは、その図形全体が要部であり、したがって、その一部のみを抽出し、これを要部として「ヤシ」「ヤシノキ」「ヤシノミ」の称呼、「椰子」「椰子の木」「椰子の実」の観念が生ずるとの判断は社会通念に反し誤りである。せいぜい「ステンドグラス」に描かれた椰子という漠然としたイメージを生じさせるにすぎない。仮に、請求人が主張する如く引用商標Aから上記の如き称呼、観念が生ずるものであれば、乙第3号証の1及び2に示す先登録の商標と称呼、観念上類似する商標として拒絶されて然るべきものである。

そうとすれば、本件商標と引用商標Aとは、両者の全体図形から特定の称呼、観念が生ずるとはいい難く、その構成の特異性をもって把握されるものというべきであるから、両者は、外観、称呼、観念のいずれの観点からみても互いに比較すべくもないものである。

(2)本件商標と引用商標B乃至Gとの類否

請求人は、本件商標と引用商標B乃至Gとは、「ヤシノミ」の称呼、「椰子の実」の観念において類似する旨述べている。

しかしながら、本件商標は、先に述べたとおり、抽象的(図案的)に描かれた図形のみの商標であるから、単なる「ヤシ」「ヤシノキ」又は「ヤシノミ」なる特定的な称呼、「椰子」「椰子の木」又は「椰子の実」なる特定的な観念は生じないものである。その証左として、乙第3号証の1、乙第4号証の1乃至同第4号証の8を提出した。

これに対して、引用商標B乃至Gは、そこに書された「ヤシノミ」「YASHINOMI」の文字とそれを表現した図形との一体性より、請求人も主張しているとおり「ヤシノミ」の称呼、「椰子の実」の観念のみを生ずるものということができる。

してみれば、特定の称呼、観念の生じ得ない本件商標と「ヤシノミ」の称呼、「椰子の実」の観念のみを生ずる引用商標B乃至Gとは、互いに比較し得ないものである。このことは、過去の審判決例(乙第3号証の1乃至乙第4号証の8)からしても首肯し得るところである。また、両者の外観については、請求人も争わないとおり、明確に相違するものである。

よって、本件商標と引用商標B乃至Gとは、外観についてはもとより、称呼、観念のいずれの観点よりみても、互いに相違するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

(3)商標法第4条第1項第15号について

本件商標と引用商標Aは、共に特定的又は集約的な称呼、観念の生じ得ない図形商標として外観のみによって判断されるものであるから、その外観において判然たる相違を有する以上、明らかに非類似の商標といわざるを得ない。また、引用商標B乃至Gは、いずれも「ヤシノミ」の称呼、「椰子の実」の観念(引用商標Fは、「ヤシノミツーワン」の称呼、特定の観念を生じない。)を有するものであるから、特定の称呼、観念を持たない本件商標とは互いに比較すべくもないものである。

また、引用商標A乃至Gの著名性を立証する甲第39号乃至44号証のパンフレットは、わずかに請求人が引用商標の一部を商品「洗剤」に使用したことが示されているだけで、その発行日が全く不明である。また、甲第45号証に示されたテレビ広告の写しにしても、何日どこのテレビ局において放映されたものかも不明であり、更に、甲第46号証に示された「アサヒグラフ3759号」の証拠も発行日が不明であるばかりでなく、雑誌名、発行所等すべてが手書きのものであり、信憑性に乏しい。甲第47号証に示された「洗剤日用粧報第2690号」についても雑誌名、発行所、発行日のすべてが手書きのものである。

証拠としての能力を有するものは甲第48号証及び同第49号証の大阪空港電照看板のみであって、この程度の証拠もってしては、取引書類、過去数年に亘る売上実績、公的機関の証明等もなく、また、何日から著名になったのかも不明であるから著名性の立証としては不完全である。

百歩譲って、引用商標A乃至Gが仮に現在著名性を取得しているとしても、先に述べたとおり、本件商標とは、外観、称呼及び観念を異にするものであるから、両者が市場で競合しても決して商品の出所について混同を生ずるおそれはない。

(4)以上に答弁したとおり、本件商標と引用商標A乃至Gとは、外観、称呼及び観念において、すべて相違するものであるから、本件商標は決して商標法第4条第1項第11号に該当するものではなく、また、商標が相違するものである以上、両者が市場に流通しても商品の出所にって混同を生ずるおそれはないものであるから、同第15号に該当するものでもない。

5.当審の判断

(1)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、別掲第一商標のとおり、子持ち二重円内に、図案化した羽状葉3枚と黒く塗りつぶした果実2個を具えた椰子の木2本をバランス良く配してなるものである。

他方、引用商標Aは、別掲第二商標のとおり、ステンドグラスを使用した教会等の窓を想起させる図形、具体的には、底部に7個の小さな二重丸を横一列に配し、内部を細線で格子状に仕切った半円アーチ型の図形内に、図案化した羽状葉7枚と果実2個を具えた椰子の木2本をバランス良く配してなるものである。

ところで、椰子の木は、熱帯・亜熱帯・温帯地域に生える常緑高木で、直立した幹の頂部に長い掌状葉又は羽状葉がまとまってつく独特の姿をしていて、観賞用として、また、その果実から得たヤシ油は、石鹸原料、食用油、マーガリン原料等として用いられていることは、一般に良く知られているところである。

そうとすれば、実のなった状態の椰子の木を描いた図形は、「せっけん類」などの商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者に、その商品の原材料を図形で表したものとして、把握、理解される場合も少なくないといい得るものである。

そこで、上記の事情を踏まえて本件商標と引用商標Aをみるに、両商標は、前記構成のとおりであるところ、全て同一の細線で表示されていて、特に椰子の木が強調して描かれているものでもないから、その図形全体を一体のものとしてみることにより、極めて特異性若しくは個性があるといえるものであって、その特異性若しくは個性の故に、自他商品の識別標識としての機能を有すると認められるものである。

そして、両商標は、これを子細にみれば、図形内に椰子の木二本を配した点に共通点を見出せるとしても、前者は、子持ち二重円と椰子の木2本を結合した単純な図形であるのに対して、後者は、ステンドグラスを使用した教会等の窓を想起させる半円アーチ型の図形内に、多数の葉を有する椰子の木二本を配したやや複雑な図形よりなるものであるから、その差異を有することにより、看者に与える全体の印象がかなり相違し、それぞれ異なったものとして記憶されると判断するのが相当である。

してみれば、本件商標と引用商標Aは、両商標を対比して観察した場合はもとより、時と処を異にして離隔的に観察するも、外観において相紛れるおそれはないものといわざるを得ない。

また、両商標の称呼及び観念については、両商標がそれぞれ一体のものとしてのみ把握すべきこと前記のとおりであって、全体としては特定の称呼・観念を生じ得ないものであるから、これを比較することができない。

したがって、本件商標と引用商標Aは、その外観・称呼・観念のいずれの点よりみても、相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

次に、本件商標と引用商標B乃至Gを比較するに、本件商標は、その構成全体をもって一体のものとしてのみ把握すべきであって、特定の称呼・観念を生じ得ないものであること前記のとおりであるから、たとえ、引用商標B乃至Gが、「ヤシノミ」「ヤシノミ洗剤」「ヤシノミツーワン」(椰子の実)の称呼・観念を生ずるものであるとしても、これと本件商標は、その称呼・観念において相紛れるおそれのあるものということはできない。

また、両商標は、その外観についても類似のものとするところがない。

したがって、本件商標と引用商標B乃至Gについても、その外観・称呼・観念のいずれの点よりみても、相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

(2)商標法第4条第1項第15号について

本件審判請求の理由及び請求人提出の証拠(甲第39号証乃至同第52号証、甲第54号証乃至同第58号証)を総合してみれば、請求人は、1972年頃から、「ヤシノミ洗剤」の標章を使用した商品「ヤシ油を原材料とする食器・野菜用洗剤」を製造・販売し、相当程度の実績を上げていることは認め得るところである。

しかしながら、該証拠によっては、引用商標A乃至Gが、本件商標の登録出願日前から、前記商品を表示する商標として著名性を獲得していたものということができないばかりでなく、本件商標は、その構成全体をもって一体のものとしてのみ把握すべきであること前記(1)の認定のとおりであって、引用商標A乃至Gとはいずれも別異のものであるから、これをその指定商品に使用しても、請求人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。

なお、請求人が挙げる審判決例(甲第9号証乃至同第38号証、同第53号証)は、いずれも本件と事案を異にするものであるから、それに基づく主張は採用の限りでない。

(3)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反してなされたものではないから、同法第46条第1項の規定により無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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