結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第35670号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第3262709号商標(以下、「本件商標」という。)は、「PACO」の欧文字と「パコ」の片仮名文字を上下二段に横書きしてなり、第25類「洋服,下着,帽子,その他の被服,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成6年10月26日登録出願、同9年2月24日に設定登録されたものである。
請求人の引用する、登録第913205号商標(指定商品及び区分:第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」、以下、「引用商標1」という。)、登録第926513号商標(指定商品及び区分:第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」、以下「引用商標2」という。)、登録第1062776号商標(指定商品及び区分:第23類「眼鏡とその部品及び附属品」、以下「引用商標3」という。)、登録第1459377号商標(指定商品及び区分:第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」、以下「引用商標4」という。)、登録第1498993号商標(指定商品及び区分:第16類「織物、編物、フエルト、その他の布地」、以下「引用商標5」という。)、登録第1519490号商標(指定商品及び区分:第17類「被服、布製身回品、寝具類」、以下、「引用商標6」という。)、登録第1720669号商標(指定商品及び区分:第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品)」、以下、「引用商標7」という。)、登録第4163404号商標(指定商品及び区分:第3類「化粧品」、以下、「引用商標8」という。)、及び登録第2108875号の2商標(指定商品及び区分:第4類「化粧品」、以下、「引用商標9」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなるものである。
請求人は、「本件商標の登録は無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第102号証を提出した。
(1)デザイナー名である引用商標及びその略称の著名性について
イ)請求人であるパコ ラバンヌ バルファンは、フランスのファッションデザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)が創立したトータルファッションメーカーである。デザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)は、1965年以来、プラスチックやメタル素材のドレス、アルミのジャージ等独創的な素材によるデザインを発表した。現在ではパリ・オートクチュール界を代表する一人として世界的に広く知られているものである。また、パコ・ラバンヌのデザインする商品は、衣料品・アクセサリー・バッグ・靴・香水・オードトワレなど多岐に及んでいるものであるが、特に、1968年に香水の分野に進出して以来、現在では高い評価を受けているものである(甲第10号証ないし甲第37号証及び甲第47号証ないし甲第51号証)。
ロ)日本においては、1982年に株式会社そごうとライセンス契約を締結し(甲第15号証及び甲第38号証)、翌年以降、多数の雑誌に、パコ・ラバンヌのデザインする服飾品が広告された(甲第20号証及び甲第21号証及び甲第39号証ないし甲第46号証)。また、化粧品については、ブルーベルジャパン株式会社を通じて販売されている。
ハ)一般的にデザイナー名は、姓又は名により略称されることが多く、例えば「PIERRE CARDIN」は「CARDIN」と、「CHRISTIAN DIOR」は「DIOR」と略称されている。
これらと同様に、デザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)も、「PACO」(パコ)又は「RABANNE」(ラバンヌ)と略称され広く知られている(甲第13号証及び甲第32号証ないし甲第43号証及び甲第50号証ないし甲第52号証)。例えば、前各号証の刊行物においては、「パコって感じる」「パコってまぶしい」「パコって知ってる」といったキャッチコピーと共に広告されているだけでなく(甲第39号証ないし甲第43号証)、他にも「パコの服」等のように紹介されている(甲第50号証)。
このように、デザイナーとしての「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)及びパコ・ラバンヌのデザインする商品は、その略称である「PACO」(パコ)と共に日本国内においても、1982年以来販売され、また数々の刊行物に紹介されたことにより、著名に至っていたものである(甲第10号証ないし甲第37号証及び甲第47号証ないし甲第51号証)。
すなわち、本件商標の出願時である1994年(平成6年)以前には、すでに「PACO」(パコ)は、ファッションデザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)の略称及びパコ・ラバンヌのデザインする商品を表示するものとして、特にファッション業界の取引者及び需要者の間に広く認識されていた。
さらに、その後、本件商標の出願時以降も依然として、「PACO」(パコ)は継続して著名となっているものである。
ニ)本件商標は、「PACO/パコ」の文字からなる商標であり、「パコ」の称呼が生ずる。
一方、引用商標1ないし7は、デザイナー名である「paco rabanne」の文字より、「パコラバンヌ」の称呼が生ずる。また、引用商標8は、「paca」と「paco rabanne」の文字からなり、「パコ」又は「パコラバンヌ」の称呼が生ずる。
さらに、引用商標9は「パコ」の文字からなり、「パコ」の称呼が生ずる。
そして、デザイナー名でもある各引用商標は、本件商標の出願時以前に「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)全体としてだけでなく、「PACO」(パコ)と略称され、世界中で広く知られている。
してみれば、本件商標「PACO/パコ」はデザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)の著名な略称と同一の文字からなる商標であるということができる。
(2)商標法第4条第1項第8号、同第15号について
本件商標は、フランスのファッションデザイナー、「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)の略称及びパコ・ラバンヌのデザインする商品を表示するものとして、著名な「PACO/パコ」の文字からなる商標である。
すなわち、本件商標は他人の著名な略称を含む商標というべきものである。
そして本件商標の出願人は、「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)の略称からなる商標を出願することについて、本人の承諾を得ていない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
さらに、著名なファッションデザイナーの略称と同一の文字からなる本件商標が、本件指定商品に使用された場合、これに接する取引者・需要者は、その商品が著名なデザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)がデザインする商品、又は、請求人の製造・販売に係るものであるかの如く、あるいは請求人と何らかの経済的・組織的関連があるものと認識し、その出所について混同を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第39号証を提出した。
(1)審判請求の利益について
被請求人は、本件商標と同一の称呼を生じるローマ字の「PAKO」よりなる登録第865748号商標(乙第1号証及び乙第2号証)及び本件商標のローマ字部分と同一の構成文字「PACO」よりなる登録第1748638号商標(乙第3号証及び乙第4号証)の登録を受け、その登録は現在も有効に存続している。
本件商標は、上記商標「PACO」にその称呼を表す片仮名文字「パコ」を併記した商標にすぎないため、本件商標を無効としたとしても請求人が利益を受けることはない。
しかも、被請求人は上記商標「PACO」を昭和54年以来、本件請求外の太平洋貿易株式会社に対して使用許諾してきたものであって、商標「PACO」は太平洋貿易株式会社及びその関係会社である太平洋ミンク株式会社により使用されてきたものであるから、係る既得の利益を害してまで本件商標の無効を求めるべき利害関係を請求人は有しないというべきである。
(2)商標法第4条第1項第8号、同第15号について
イ)「PACO/パコ」の著名性
請求人の主張する、「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)がフランスのファッションデザイナーとして著名であり、我が国でも知られていることについては敢えて争わない。
しかしながら、請求人が証拠として提出した甲各号証を精査しても「PACO」(パコ)がデザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)の略称として我が国で著名であるとは認められない。すなわち、甲第10号証ないし甲第32号証として提出された国内文献では、デザイナー名やブランド名として「PACO RABANNE」、又は、「パコラバンヌ」の氏名の記載はあるが、「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)が「PACO」(パコ)と指称されている例は見あたらない。これは外国人の人名の場合、我が国ではその氏と名が一体となって識別機能を発揮するのが通常であり、氏で略称されることは希にあっても名で略称されることはないという事情によるものである。
ちなみに、甲第33号証ないし甲第37号証の刊行物ではその文章中に「PACO」の文字を用いたものがあるが、これらの刊行物は外国の新聞等で我が国では頒布されていないものであるから、我が国ではこの事実はほとんど知れられていない。
また、甲第39号証ないし甲第43号証は広告のコピー中で「パコ」の文字が使用されており、甲第50号証では「パコ」との記載があるが、これらは請求人の提携先の企業が片仮名文字の「パコ」を使用した数少ない事例であるにすぎず、我が国で「パコ」の呼び方を主観的に広めようとした意図が推測される程度で客観的に広く知られているものではない。
したがって、本件商標の出願時、登録査定時に、「PACO」(パコ)が我が国で著名であったとはいえないものである。
ロ)本件商標と各引用商標について
引用商標1ないし7は、いずれもローマ字の「PACO RABANNE」、又は、片仮名文字の「パコ ラバンヌ」を表したものであるが、これはファッションデザイナーである人名を表したものであるから、一連一体の商標として識別機能を発揮しているものであって、「パコ」とは分離・略称されないものである。これは人名を表した商標、特に、デザイナーブランドについての我が国での経験則より明らかである。
この経験則はデザイナーの氏名からなる商標について、分離しないと判断した審決でも示されているところである(乙第5号証ないし乙第9号証)。
してみれば、引用商標1ないし7は、いずれも「パコラバンヌ」の一連の称呼のみをもって取り扱われるものであるから、本件商標がその構成文字に相応して「パコ」と称呼されたとしても類似しない商標である。そして、商標が類似しない以上、出所の混同を生じるおそれもない。
(ハ)商品「化粧品」の商標「PACO」について
引用商標8及び9は、いずれも「化粧品」を指定商品とする商標であって、本件商標の指定商品とは類似しないものである。
そして、請求人は、「paco」の文字よりなる商標を商品「化粧品」について使用し、著名となっている旨主張するが、請求人の提出した甲第53号証ないし甲第102号証の記載から明らかなように、「paco」の文字を使用した請求人の「香水」は、本件商標の出願後である1996年5月頃に我が国で発売されたものである。したがって、本件商標の出願時には、「paco」(パコ)が商品「香水」について著名であったとはいえない。
ニ)以上のとおり、「PACO」(パコ)は、デザイナーの氏名である「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)の略称として我が国で知られているとはいえない。
少なくとも本件商標の出願時点で著名な略称であったとは言えない。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
また、引用商標1ないし7は、いずれもデザイナーの人名を表した商標であるから「パコ」とは略称されず、本件商標とは類似しない商標である。さらに、引用商標8及び9は、いずれも本件商標の指定商品とは類似しない「化粧品」についての商標であって、それが我が国で使用されたのは本件商標の出願後であるから、これが本件商標の出願時には広く知られていたものではない。
よって、本件商標と各引用商標とは出所の混同のおそれのない商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当しない。
(1)商標法第4条第1項第8号について
請求人の提出に係る甲各号証に徴すれば、「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)は、フランスのファッションデザイナーとして著名であり、我が国においても知られていることは認めることができる。
しかしながら、上記デザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)を「PACO」(パコ)と略称している証左は見あたらない。
この点において、請求人は、甲第10号証ないし甲第32号証、甲第33号証ないし甲第37号証及び甲第50号証を提出し「PACO」(パコ)と略称している事実を主張しているが、甲第33号証ないし甲第37号証をみると、外国で発行された刊行物の文章中に「PACO」の文字を用いて「PACO THE PLASTIC KING TURNS TO PAPER」、「Paco the Plastics Man」、「CRAZY PACO」、「Les seductrices de Paco」等記述的に記載していることは認められる。また、甲第39号証ないし甲第43号証をみると、我が国において、広告として掲載されている新聞、雑誌の中で「パコ」の文字をもって、「パコって知ってる」、「パコってまぶしい」、「パコって感じる」の如く使用し、さらに、甲第50号証をみると「パコの服」の如く使用していることは認め得るとしても、これらの証左をもって、「PACO RABANNE」が単に「PACO」と略称され、我が国において著名に至っているものということはできない。
してみれば、上記デザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)が我が国で「PACO」(パコ)と略称され、本件商標の出願時に著名であったものということはできないから、本件商標は、他人の氏名の著名な略称よりなるものということはできない。
(2)商標法第4条第1項第15について
本件商標は、前記したとおり、「PACO」と、「パコ」の文字よりなるものであるから、該文字に相応し、「パコ」の称呼を生ずるものである。
他方、引用商標1ないし7は、前記したとおり、「PACO RABANNE」「パコ ラバンヌ」若しくは「paco rabanne」の文字よりなるものである。
しかして、引用商標1ないし7は、上記(1)で述べたとおり、フランスのファッションデザイナーとして認識、理解されるものであり、「PACO」、「パコ」、「paco」の文字部分を分離観察、称呼しなければならない特段の理由はないから、これよりは「パコラバンヌ」の一連の称呼のみを生ずるものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標より生ずる称呼「パコ」と引用商標1ないし7より生ずる「パコラバンヌ」の称呼とは、称呼上相紛れるおそれのないものである。
さらに、本件商標は、フランスのファッションデザイナー「パコ ラバンヌ」を想起するものでなく、特定の意を有しない造語よりなるものと認識、理解されるものであるから、観念においては比較することができない。また、外観においても、区別し得る差異を有するものである。
そうとすれば、引用商標1ないし7は、商品「衣料品・アクセサリー・バッグ・靴・香水・オードトワレ」等に使用され著名であったとしても、本件商標とは、その称呼、観念、外観のいづれの点についても、非類似の商標であり、別異のものと認識、理解されるものというのが相当である。
次に、引用商標8は、「paco」の文字を「paco rabanne」の文字に比し大きく、上下二段に表示した構成よりなり、引用商標9は、「パコ」文字を横書きしてなるものである。
そうして、引用商標8及び9は、商品「香水」に使用しているとする、請求人の提出に係る甲第53号証ないし甲第102号証を徴するに、その証左は、いずれも本件商標の出願日(平成6年10月26日)以降のものであるから、本件商標の出願時には、「paco」(パコ)が商品「香水」について使用され著名であったということはできない。
してみれば、本件商標は、その指定商品について使用した場合、請求人若しくはデザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)がデザインする商品、又は、請求人の製造・販売に係るものであるかの如く、あるいは請求人と何らかの経済的・組織的関連があるものと認識し、その出所について混同を生ずるおそれがあるものということはできない。
(3)結論
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号に違反して登録されたものでないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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