Trademark Appeal Case
賃貸住宅サービスの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2020−13952(T2020−13952/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「賃貸住宅サービス」の文字を標準文字で表してなり、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,建物又は土地の情報の提供,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介」を指定役務として、平成30年9月21日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『賃貸住宅サービス』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の『賃貸住宅』の文字は、『家賃を徴収して貸すことを目的とする住宅』等の意味を有する語であるから、本願商標は『家賃を徴収して貸すことを目的とする住宅に関するサービス』の意味合いを容易に認識することができる。そうすると、本願商標を、その指定役務中『建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物の鑑定評価,建物の情報の提供』に使用しても、これに接する需要者は、単に『家賃を徴収して貸すことを目的とする住宅に関するサービス』であること、すなわち、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示したものとして認識するというべきである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記意味合いに相応する指定役務(家賃を徴収して貸すことを目的とする住宅に関するサービス)以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨、また、「本願商標をこの商標登録出願に係る指定役務に使用しても、これに接する需要者は、『家賃を徴収して貸すことを目的とする住宅に関するサービス』であると認識するにとどまり、何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標といえる。したがって、本願商標は、何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標といえるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。また、本願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているとはいえない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は、「賃貸住宅サービス」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「賃貸住宅」の文字は「家賃を徴収して貸すことを目的とする住宅」(出典:小学館 日本大百科全書)を意味する語であり、広く一般に使用されているものである。
そうすると、本願商標は、構成文字の有する上記語意により全体として「家賃を徴収して貸すことを目的とする住宅に関するサービス」の意味合いを容易に理解、認識させるというのが相当である。
そして、原審で示した証左に加え、別掲によれば、本願指定役務のうち「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物の鑑定評価,建物の情報の提供」を取り扱う分野においては、「賃貸住宅サービス」の文字が、「家賃を徴収して貸すことを目的とする住宅に関するサービス」の意味合いで使用されている事実も見受けられる。
そうすると、本願商標は、その指定役務中の「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物の鑑定評価,建物の情報の提供」に使用した場合には、当該役務が家賃を徴収して貸すことを目的とする住宅に関するサービスであることを理解させるにとどまり、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示するものというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、また、上記役務以外の役務に使用するときは、役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)商標法第3条第2項該当性について
請求人は、本願商標は、請求人により、本願指定役務を取り扱う業界において、積極的に宣伝・広告された結果、需要者が請求人の業務に係る役務であることを認識することができるに至ったものである旨主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出している。
ところで、出願に係る商標が、商標法第3条第2項に該当し、登録が認められるかどうかは、使用に係る商標及び役務、商標の使用開始時期、使用期間及び使用地域、当該役務の取引実績等並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願に係る商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるものと認められるかどうかによって決すべきものである。
そこで、以上の観点を踏まえて、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて、請求人の提出した証拠及び主張を検討する。
ア 請求人は、「株式会社賃貸住宅サービス」の社名を使用していたが、2008年(平成20年)6月23日に「株式会社エターナル」の社名に変更し、その後2018年(平成30年)9月19日に「株式会社DAIJU」の社名に変更した(甲1)。また、株式会社エターナルは、2016年(平成28年)10月3日に株式会社グラートに対し自己の保有する商標登録第4243682号「賃貸住宅サービス」(標準文字)(指定商品:第16類「雑誌,新聞」)及び商標登録第4988011号「賃貸住宅サービス」(「賃貸住宅」の文字の横に「サービス」の文字を小さく縦書きで表し、文字の上下に横長長方形を複数配置した構成からなる商標。)(指定役務:第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」)の使用権を許諾している(甲2)。
イ 株式会社グラートは、「賃貸住宅サービス」の名称にて1989年に大阪・十三に一号店をオープンした後、2007年に東京渋谷店、2008年に博多天神店と名古屋駅前店、2013年に広島十日市店をオープンする等店舗数を増やし、2019年現在、オープンした店舗数は関西圏を中心に100店以上に拡大した(甲3、甲4)。また、株式会社oricon MEの調査によれば、2016年には「オリコン日本顧客満足度ランキング賃貸情報店舗(近畿)」で1位を受賞し(甲5)、2019年には「賃貸情報店舗(近畿)」で1位を受賞した(甲6)。
ただし、店舗の所在は主に関西圏であり(甲4)、賃貸情報店舗ランキングは近畿地域におけるものであって(甲5、甲6)、北海道から九州・沖縄までの他の地域における上位3位までには「賃貸住宅サービス」の表示は含まれていない(甲5)。
ウ 「賃貸住宅サービス」を「Yahoo」で検索した結果(甲7)及び「google」で検索した結果(甲8)によれば、主に「賃貸住宅サービスNetWork」の系列サイトと「賃貸住宅サービスFC」の系列サイトが上位から多数ヒットしている。甲第4号証の店舗一覧によれば、これらのサイトはいずれも請求人の直営店およびフランチャイズ店である。
エ 「賃貸住宅サービス」の名称を使用したサイト(https://www.cjs.ne.jp/)において、住所・駅・学校・家賃・間取り等を条件に賃貸物件を検索できる検索システムが設けられ、誰でも自由に賃貸物件を検索できるようにされており、13万件以上の物件が掲載され、3万件程度の物件の情報が日々更新されている(甲9)。
ただし、請求人の自社サイトとされる上記サイト(甲9)における、左上ヘッダー部分の表示は、「賃貸住宅」の文字の横に小さく縦書きされた「サービス」の文字及び図形を表したものである。
オ 請求人は、1996年(平成8年)11月から「賃貸住宅サービス」の名称を使用した情報誌を隔週で発行していた(甲10、甲11)。当該情報誌は、関西一円のローソン・ファミリーマート・セブンイレブン等のコンビニエンスストアやJR・私鉄の駅売店で販売され、発行部数は約15,000部(月間約30,000部)であった(甲10)。当該情報誌は2015年に廃刊となったが、1996年から2014年の19年間で総計1728万部以上、発行されたとされる(甲15)。また、請求人は、「賃貸住宅サービス」の名称を使用したパンフレットを各店舗で配布した(甲12)。当該パンフレットは、各店舗で総計1000万部以上が発行・配布されたとされる(甲15)。
ただし、各店舗で配布されたパンフレット(甲12)上の表示は、「賃貸住宅」の文字の横に「サービス」の文字を小さく縦書きで表し、その上下に横長長方形を複数配したものである。
カ 株式会社グラート及び請求人が当時株式会社グラートから広告業務を委託していたと主張する株式会社フェイディスは、「賃貸住宅サービス」の名称を使用したテレビコマーシャルをテレビ局大手の読売テレビ放送、毎日放送、朝日放送、関西テレビ放送、テレビ大阪において2014年から2020年に至るまで継続的に放送している(甲13の1〜22、甲14)。また、同じくケーブルテレビのJ:COMにおいて2015年から2020年に至るまで継続的に放送している(甲13の23、甲14)。
ただし、甲第13号証の1乃至22の「スポット放送確認書」等からは、これらテレビコマーシャルがどの地域で放送されたのか明らかでなく、甲第13号証の23の「放送確認書」によると、「放送エリア」は関西地域である。
キ 請求人は、1989年(平成元年)の事業開始以降、総計で約1120億円を売り上げ、総計で約93万件の仲介契約を行ったとされる(甲16)。
ク 以上アないしキの事実から、請求人は、1989年から「賃貸住宅サービス」の名称にて、関西中心に店舗を拡大し、賃貸住宅情報店舗として関西地域において高い顧客満足度を有していること、「Yahoo」や「google」で「賃貸住宅サービス」の文字を検索すると、請求人の直営店やフランチャイズ店が多くヒットすること、自社サイトにおいて多数の物件情報を扱っていること、1996年から19年間にわたり関西地域において「賃貸住宅サービス」の名称を使用した情報誌を相当量発行したこと、「賃貸住宅サービス」の名称を使用したパンフレットを各店舗で相当量配布したこと、関西地域において「賃貸住宅サービス」の名称を使用したテレビコマーシャルを継続的に放送したことがうかがえる。
しかしながら、請求人店舗は、主に関西地域を中心に所在するものであり、関西以外の地域において、需要者、取引者が請求人の店舗と接する機会は限られたものといわざるを得ない。また、賃貸情報店舗ランキングは、関西地域における需要者、取引者の認識度を推測させるものの、北海道から九州・沖縄までの他の地域における上位3位までには「賃貸住宅サービス」の表示は含まれていないから、関西以外の地域において認識されていると認めることはできない。さらに、「Yahoo」や「google」の検索結果において上位にヒットする店舗の多くが請求人の直営店およびフランチャイズ店であるとしても、これらは関西地域を中心に所在する店舗に係るウェブサイトであることから、これらにアクセスするのは、当該地域の物件を扱う取引者や当該地域の物件を探す需要者に限られるものであり、別掲に挙げられるような「賃貸住宅サービス」の文字の使用状況をも踏まえれば、当該検索結果をもって本願商標が、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるものに至っているということはできない。加えて、情報誌発行、パンフレット配布、テレビコマーシャル放送は、いずれもほとんど関西地域におけるものであるから、これらを用いた宣伝、広告効果は地域的に限定されたものである上、情報誌や自社サイトのヘッダーに用いられている表示は、本願商標とは異なる態様のものであるから、本願商標の構成態様をもって、需要者、取引者に認識されていたとみることもできない。
そうすると、本願商標が、本願指定役務のうち「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物の鑑定評価,建物の情報の提供」について、請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識され、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができる商標に至っていたものということができない。
してみれば、本願商標がその指定役務について使用された結果、取引者、需要者が、請求人の業務に係る役務であることを認識することができるものとは認められないから、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するということはできない。
(3)請求人の主張
ア 請求人は、本願商標は、賃貸住宅に関する何らかの役務であることを暗示的に認識させるにとどまるものであって、特定の役務を直接かつ具体的に認識させるものではなく、これを指定役務について使用しても十分に自他役務識別標識としての機能を果たし得るものであると主張している。
しかしながら、前記(1)のとおり、本願商標は、構成文字の有する語意により全体として「家賃を徴収して貸すことを目的とする住宅に関するサービス」の意味合いを容易に理解、認識させるものであり、本願指定役務のうち「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物の鑑定評価,建物の情報の提供」を取り扱う分野においては、「賃貸住宅サービス」の文字が、「家賃を徴収して貸すことを目的とする住宅に関するサービス」の意味合いで使用されている事実も見受けられるものであるから、これを上記指定役務に使用した場合、賃貸住宅に関する何らかの役務であることを暗示的に認識させるにとどまるものであるとはいい難い。
イ 請求人は、例えば、ミルクドーナツ事件(東京高裁昭和47年(行ケ)68号)、アマンド事件(東京高裁昭和57年(行ケ)147号)、黒糖ドーナツ棒事件(知財高裁平成22年(行ケ)10356号)、堂島ロール事件(不服2010−28575号)など、多くの裁判例や審決例において、全国でくまなく販売等されていることまで求められているわけではないことに鑑みても、本願商標のように少なくとも近畿地方を中心に広く認識されているものであれば十分であると主張している。
しかしながら、商標法第3条第2項における「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」とは、何人かの出所表示として、その商品又は役務の需要者の間で全国的に認識されているものをいうのであって、全国でくまなく販売等されていることが求められないとしても、その商品又は役務の需要者の間で全国的に認識されていることが求められることは明白である。請求人が挙げる事例においても、全国的に認識されていることが認定されているものであるから、当該事例は、請求人の「少なくとも近畿地方を中心に広く認識されているものであれば十分」との主張の根拠とはなり得ない。
そして、前記(2)のとおり、本願商標に係る役務の提供や広告宣伝の実績は、関西地域を中心とした限定的なものであり、賃貸住宅に係る役務は、請求人が挙げる事例における「菓子」のような商品と異なり、全国を転々流通する性質のものとは考え難いことから、提出された証拠をもって、本願商標が、「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物の鑑定評価,建物の情報の提供」について、請求人の業務に係る役務を表示するものとして取引者、需要者の間に全国的に認識されていたと判断することはできない。
したがって、請求人の主張はいずれも採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであって、かつ、同法第3条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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