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Trademark Appeal Case

音商標の氏名該当性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2018−8451(T2018−8451/J1)
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。

理由テキスト

第1 本願商標及び手続の経緯

本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第35類及び第44類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成29年1月30日に音商標として登録出願されたものである。

本願は、平成29年9月20日付けで拒絶理由の通知がされ、同年12月1日に意見書及び手続補正書が提出され、指定役務については、別掲2のとおりに補正されたが、同30年3月16日付けで拒絶査定がされたものである。

これに対して、平成30年6月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、音楽的要素及び『マツモトキヨシ』という言語的要素からなる商標記載欄の記載、音商標である旨の記載、『マツモトキヨシ』という言語的要素を音楽的要素に乗せて発している人の声が録音されている音声ファイルから把握されるものである。そして、『マツモトキヨシ』を氏名とする者が現存することが認められるから、本願商標は、他人の氏名を含む商標といわなければならず、かつ、その他人の承諾を得ているものとも認めることができない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断

1 商標法第4条第1項第8号の趣旨

商標法第4条第1項第8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護すること、すなわち、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがないという利益を保護することにあると解される(最高裁平成15年(行ヒ)第265号同16年6月8日第三小法廷判決、最高裁平成16年(行ヒ)第343号同17年7月22日第二小法廷判決)。

この趣旨に照らせば、言語的要素を音楽的要素に乗せてなる商標が、一般に人の氏名を指し示すものとして認識される場合には、当該商標は、「他人の氏名」を含む商標として、その承諾を得ているものを除き、同号により商標登録を受けることができないと解される。

2 本願商標について

(1)本願商標の構成について

本願商標は、別掲1のとおり、音楽的要素及び「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる商標記載欄の記載、音商標である旨の記載、「マツモトキヨシ」という言語的要素を音楽的要素に乗せて発している人の声が録音されている音声ファイルから把握されるものである。

(2)請求人について

ア M氏は、昭和7年12月に、千葉県松戸市小金に請求人の前身となる「松本薬舗」を開業した(甲3)。同26年4月に、店名が「薬局マツモトキヨシ」と改称され、同29年1月に、法人組織である有限会社マツモトキヨシ薬店が設立され、同50年4月に、これが株式会社マツモトキヨシに改組された(甲3、甲41、甲42、甲45)。

イ 昭和62年7月に、上野のアメ横に、これまでの薬局のイメージを刷新し、新商品をはじめ豊富なアイテム数と、化粧品のテスターを揃えた都市型のドラッグストア「マツモトキヨシ」をオープンし、店舗を拡大していき、平成6年3月に、千葉県柏市に、郊外型ドラッグストアをオープンし、業態を拡大した(甲3、甲41、甲45)。

ウ 平成7年3月期に、売上高は1017億7800万円となり、売上高日本一のドラッグストアとなり、店舗数は216店となった(甲3)。

エ 平成19年10月に、請求人である株式会社マツモトキヨシホールディングスが設立され、請求人は、ドラッグストア・保険調剤薬局等のチェーン店経営を行う小売事業を核に、卸売事業、管理サポート事業を行っている(甲1)。

オ 平成29年3月末時点で、請求人等が運営するドラッグストア「マツモトキヨシ」は、45都道府県に1555店舗、マツモトキヨシポイントカード(メンバーズカード)の会員数は約2440万会員、「マツキヨ」アプリは約550万ダウンロード、マツモトキヨシLINE公式アカウントの友だち数は約1760万人である(甲3)。また、令和元年3月末時点で、同店舗数は、47都道府県に1717店舗、同会員数は約2900万会員、同アプリは約1350万ダウンロード、同友だち数は約2100万人に増加した(甲44、甲45)。

カ ブランドコンサルティング会社であるインターブランド社による日本発のブランドを対象としたブランド価値評価ランキング「Best Japan Brand」において、「マツモトキヨシ」は、2016年から2021年まで、日本のドラッグストアとしてナンバーワンの評価を獲得した(甲5、甲46〜51)。

(3)商標の使用状況について

原告は、「マツモトキヨシ」又は「Matsumoto Kiyoshi」をその構成に含む登録商標を、店舗の看板、店内、ウェブサイト、オンラインストア等に継続的に使用している(甲3、甲28、甲29、甲41、甲42、甲44、甲45)。

(4)テレビコマーシャルの状況

株式会社マツモトキヨシは、平成8年4月からテレビコマーシャルを開始した(甲3、甲41)。

平成8年3月から同19年12月の間に制作されたテレビコマーシャルにおいては、概ね「マツモトキヨシ」の文字からなる商標が画面に表示され、「マツモトキヨシ」又は「Matsumoto Kiyoshi」をその構成に含む商標が店舗の外観等に用いられている状況が映し出されており、テレビコマーシャルの終盤で本願商標と同一又は類似の音が、女性、男性、子ども等、様々な声で発声されているものである(甲43)。

3 商標法第4条第1項第8号該当性について

前記2(2)ないし(4)によれば、株式会社マツモトキヨシが昭和62年に上野のアメ横において都市型ドラッグストア「マツモトキヨシ」の店舗をオープンした後、店舗数を拡大し、郊外型ドラッグストアに業態を拡大していったこと、請求人等がそれらの店舗の看板、店内、ウェブサイト、オンラインストア等に「マツモトキヨシ」又は「Matsumoto Kiyoshi」を構成に含む商標を継続的に使用してきたこと、本願の出願直後である平成29年3月末時点で、ドラッグストア「マツモトキヨシ」の店舗数は、全国45都道府県で1555店舗、マツモトキヨシポイントカードの会員数は約2440万人に達しており、「マツキヨ」アプリのダウンロード数、マツモトキヨシLINE公式アカウントの友だち数も相当数あり、その後も増加していること、また、「マツモトキヨシ」のブランドは、インターブランド社による2016年度及び2017年度のブランド価値評価ランキングでドラッグストアとして日本でナンバーワンブランドの評価を獲得したこと、平成8年から開始されたドラッグストア「マツモトキヨシ」のテレビコマーシャルでは、女性、男性又は子どもの声の音色等で本願商標と同一又は類似の音が発声され、放映されたことが認められる。

以上から、本願商標を構成する言語的要素である「マツモトキヨシ」の表示は、本願商標の出願当時(出願日:平成29年1月30日)、ドラッグストア「マツモトキヨシ」の店名や株式会社マツモトキヨシ、原告又は原告のグループ会社を示すものとして需要者、取引者に認識されていたこと、「マツモトキヨシ」という言語的要素を含む本願商標と同一又は類似の音は、テレビコマーシャルにおいて使用された結果、ドラッグストア「マツモトキヨシ」のテレビコマーシャルのフレーズとして広く知られていたことが認められる。

そうすると、本願商標の登録出願当時、「マツモトキヨシ」という言語的要素と音楽的要素からなる本願商標に接した需要者、取引者は、本願商標から、ドラッグストアの店名としての「マツモトキヨシ」、企業名としての株式会社マツモトキヨシ、原告又は原告のグループ会社を連想、想起するというべきであり、「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」、「松本潔」、「松本清司」等の人の氏名を連想、想起するものと認められないから、本願商標は一般に人の氏名を指し示すものとして認識されるものとはいえない。

そして、前記1のとおり、言語的要素を音楽的要素に乗せてなる商標が一般に人の氏名を指し示すものとして認識される場合には、当該商標は、「他人の氏名」を含む商標として、その承諾を得ているものを除き、同号により商標登録を受けることができないと解されるところ、本願商標は、一般に人の氏名を指し示すものとして認識されないから、商標法第4条第1項第8号の「他人の氏名」を含む商標に該当しない。

4 まとめ

以上のとおりであるから、本願商標が商標法第4条第1項第8号に該当するものとした原査定は、取り消しを免れない。

その他、本願についての拒絶の理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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