Trademark Appeal Case
代理店による類似商標出願
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2020−900258(T2020−900258/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第6269826号商標(以下「本件商標」という。)は、「フェニックス」の片仮名と「FENIX」の欧文字を上下二段に書してなり、平成29年5月18日に登録出願された商願2017−67758号に係る商標法第10条第1項の規定による登録出願として、平成31年2月14日に登録出願、第20類「家具,つい立て,びょうぶ,家具の附属品,自立型間仕切り(家具)」を指定商品として、令和2年7月2日に登録査定、同月15日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において引用する商標は、「FENIX」の欧文字を横書きにしてなる商標(以下「引用商標1」という。)及び別掲1のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標2」という。)で、申立人が、本件商標の登録出願前から「家具および家具の部品,キッチン天板,テーブルやキャビネットなどの家具,作業台,仕切壁,床,天井,造船所の内装など複数の機能を有する水平及び垂直に設置される表面材,ポリエチレン製又はナノテク素材で作られた内装用シートおよびパネル,すなわち,家具(内装および外装用)及び家具の部品」(以下「申立人使用商品」という。)について使用し、イタリアなどの海外及び我が国において需要者等に広く認識されている旨主張するものである。
なお、「引用商標1」及び「引用商標2」をまとめていう場合は、「引用商標」という。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第7号について
(1)引用商標の概要
申立人は、イタリア国において1954年に創業され、さまざまな用途向けに高品質のHPL(高圧メラミン製造)テクノロジーを備えた表面材を設計及び製造してきた企業である(甲2)。
引用商標は、申立人使用商品に係る商標であり、申立人使用商品は、申立人により開発され、キッチン、ホスピタリティー分野、ヘルスケア、交通、輸送機関はもちろん、バスルーム、家具にいたるまでのあらゆる分野、そしてその用途へ適用するため水平面から垂直面まであらゆる角度へ対応可能なインテリアデザインのための表面材もしくはそれを使用した家具などである。当該表面材は、表面の光沢性と光反射率を極限まで減らし、しかもその非常にソフトな質感は指紋が全く付着しないという指紋付着レスという特別な性質も兼ね備えている。最も特筆すべき性能は表面上のミクロなキズであれば熱によって修復可能というまさに次世代のインテリアデザインのための知的素材といえる。
本件商標の登録出願時及び登録時において、引用商標を付した申立人使用商品は、イタリア家具業界では、高級商材として圧倒的な認知度を有している。イタリアだけでなく、ドイツ、アメリカ、マレーシアなどの各国においても数々の受賞歴がある(甲3)。
我が国においても、引用商標を付した申立人使用商品は、オーダーメイド家具の商材として広く扱われており、その品質、機能性の高さにより、当業者の間においては周知著名性を獲得している。
また、申立人は、引用商標につき、国際的な保護を図るべく日本を含めた20か国を指定国とする国際登録出願を行っている(甲4)。
(2)引用商標の周知著名性
申立人使用商品に係る引用商標が、イタリア及びその他の国々においても周知著名性を獲得していることは前述のとおりである。
我が国においても、自社の日本語サイト(甲5)を設置し、広告宣伝活動を行っている。
また、実際に、引用商品の品質、機能性の高さから、多数の流通経路により販売が行われている。
別掲2のとおりの申立人使用商品の販売を行っている業者のウェブサイト、申立人使用商品に係るウェブ記事からもその事実は明らかである。
(3)本件商標権者と申立人との関係
本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は自己の「kitchenhouse」ブランドにおいて、高級キッチン市場において事業を展開する会社である(甲16、甲17)。
当該事業において、本件商標権者は申立人の引用商品を取り扱う販売代理店である(甲18)。
(4)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標1とを比較すると、本件商標は欧文字「FENIX」とその読みである片仮名「フェニックス」を二段に書した態様であり、これはその欧文字と同ーの構成文字である引用商標1に単に読みを付しただけの商標であるから、両者は実質的に同一の商標である。
また、引用商標2は幾分デザイン化されているとはいえ、同一の構成文字からなる商標であるので本件商標と引用商標2とは類似する商標である。
なお、本件商標はその指定商品に「家具」を含み、引用商標は「家具」に包含される「家具及び家具の部品,キッチン天板,テーブルやキャビネットなどの家具,作業台,仕切壁,床,天井,造船所の内装など複数の機能を有する水平及び垂直に設置される表面材,ポリエチレン製またはナノテク素材で作られた内装用シートおよびパネル,すなわち、家具(内装および外装用)及び家具の部品」に使用されているため、本件商標の指定商品と引用商標に係る商品が同一又は類似することは疑いがない。
(5)結論
以上より、本件商標は、申立人らが本件商標の登録出願前から「家具」と同一又はそれに含まれる商品に使用した結果、我が国において需要者等に広く認識されている引用商標と実質的に同一又は類似である。
本件商標権者は、本件商標に係る申立人使用商品の日本における販売代理店の1つであり、申立人にその許諾なく本件商標の登録出願を行った。
よって、本件商標権者は、本件商標の登録出願時において、いまだ引用商標が登録されていないことを奇貨として、引用商標のもつ顧客吸引力に便乗し不正な利益を得る目的あるいは本件商標の実際の使用者に損害を与える目的をもって本件商標の登録出願を行ったものであり、本件商標は、公の秩序を害するおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
2 商標法第4条第1項第10号について
上記1のとおり、引用商標は使用されている商品分野で需要者等に広く知られている。
本件商標は、申立人らが本件商標の登録出願前から申立人使用商品に使用した結果、我が国において需要者等に広く認識されている引用商標と実質的に同一又は類似であり、かつ、申立人使用商品と同一又は類似の商品に使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号について
上記1のとおり、引用商標は使用されている商品分野で需要者等に広く知られている。
本件商標は、申立人らが本件商標の登録出願前から申立人使用商品に使用した結果、我が国において需要者等に広く認識されている。
本件商標と引用商標とは実質的に同一又は類似である。
そして、本件商標の指定商品と申立人使用商品が同一又は類似することは疑いない。
引用商標は使用されている商品分野において、申立人らの商標として広く知られているから、本件商標をその指定商品に使用するときは、これがあたかも申立人ら又はそれらの者と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号について
上記1のとおり、引用商標は使用されている商品分野で需要者等に広く知られている。
本件商標は、申立人らが本件商標の登録出願前から申立人使用商品に使用した結果、我が国だけでなく、外国において需要者等に広く認識されている引用商標とは実質的に同一又は類似である。
そして、本件商標の指定商品には引用商標の指定商品が含まれる。
本件商標権者は、本件商標に係る申立人使用商品の我が国における販売代理店の1つであり、申立人にその許諾なく本件商標の登録出願を行った。
本件商標標権者が本件商標を採択するにあたり、偶然に引用商標と酷似する結果になったとは考えにくく、むしろその周知著名性を利用して不正の利益を得る等の目的をもって使用するものと考えるのが自然である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、イタリア国において1954年に創業し、さまざまな用途向けに高品質のHPL(高圧メラミン製造)テクノロジーを備えた表面材を設計及び製造してきた企業であると主張するが、その詳細は確認できない(甲2)。
イ 申立人は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標を付した申立人使用商品は、イタリア家具業界では、高級商材として圧倒的な認知度を有している旨主張するが、これを裏付けるための証拠は提出されていない。
また、申立人は、イタリアだけでなく、ドイツ、アメリカ、マレーシアなどの各国においても数々の受賞歴があると主張するが、これらの賞は、賞の主催者や賞の内容、どのような者が受賞したのか等、これらの賞の詳細は確認でることができない(甲3)。
ウ 申立人は、引用商標について、日本を含めた20か国を指定国とする国際登録出願を行っている(甲4)。
エ 申立人は、我が国において、自社のウェブサイトを設置し、広告宣伝活動を行っている旨主張するが、当該ウェブサイトの掲載開始時や掲載期間は把握することができない(甲5)。
オ 申立人使用商品は、多数の流通経路により販売が行われている(甲6〜甲15)。
(2)上記(1)からすると、申立人は、イタリア国在の企業であること、日本を含めた20か国を指定国とする国際登録出願を行っており、申立人使用商品は、我が国において販売が行われていることは推認し得る。
しかしながら、申立人の詳細な事業内容や事業実績等は明らかではなく、
受賞歴についても、これらの賞の詳細が確認できないこと、申立人のウェブサイトに、申立人使用商品についての情報が掲載されているとしても、掲載時期や掲載期間は明らかではない。
また、引用商標を使用した申立人使用商品の売上高、市場シェアなどの販売実績や引用商標に係る広告・宣伝の費用、方法、回数及び期間などについて、その事実を客観的に把握することができる証拠は提出されていない。
そうすると、提出された証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、申立人又は申立人使用商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものとは認めることはできない。
その他、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の取引者、需要者間に広く認識されていると認めるに足る事情は見いだせない。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)本件商標と引用商標の類否及び本件商標の指定商品と引用商標を使用する申立人使用商品の類否について
ア 本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「フェニックス」の片仮名と「FENIX」の欧文字を上下二段に書してなるところ、「FENIX」の欧文字は、辞書等に載録されているものではなく、また、本願商標の構成中の「フェニックス」の片仮名は、「FENIX」の欧文字の上に配されていることから、「FENIX」の読み方を特定したものと判断するのが相当である。
よって、本件商標は、「フェニックス」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標について
(ア)引用商標1は、上記第2のとおり、「FENIX」の欧文字を横書きしてなるところ、上記アのとおり、「FENIX」の欧文字は、辞書等に載録されているものではなく、また、特定の意味を有しない欧文字は、一般的に、我が国において親しまれた英語の読みにならって称呼されるものであるから、引用商標1は、「FENIX」の欧文字を英語の読みにならった「フェニックス」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(イ)引用商標2は、別掲1のとおり、黒塗り長方形(以下「図形」という。)内に「FENIX」の欧文字を白抜きしたものであるところ、引用商標2の図形は、ありふれたものと認められ、また、図形が我が国において、何らかの特定の観念が生じると判断すべき特別な事情は存在しないことから、図形は、特定の称呼及び観念は生じないものである。
そうすると、引用商標2は、その構成中の「FENIX」の欧文字をその要部と捉え、当該文字部分のみ抽出し、これを引用商標2の出所識別標識と判断するというのが相当である。
そして、上記(ア)のとおり、「FENIX」の欧文字は、辞書等に載録されているものではなく、また、特定の意味を有しない欧文字は、一般的に、我が国において親しまれた英語の読みにならって称呼されるものであるから、引用商標2は、その構成中の「FENIX」の欧文字から、「フェニックス」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
(ア)本件商標と引用商標1の類否について
本件商標の構成中「FENIX」の欧文字と、引用商標1「FENIX」の欧文字は、そのつづりを同じくすることから、外観上、類似するといえる。
また、両商標は、いずれも、「フェニックス」の称呼を生じることから、称呼を共通にするものと認められる。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、互いに特定の観念が生じないため、観念において比較することができないとしても、これらの外観が類似し、「フェニックス」の称呼を共通にすることから、本件商標と引用商標1とは類似の商標である。
(イ)本件商標と引用商標2の類否について
本件商標の構成中「FENIX」の欧文字と、引用商標2の構成中の「FENIX」の欧文字は、そのつづりを同じくすることから、外観上、類似するといえる。
また両商標は、いずれも、「フェニックス」の称呼を生じることから、称呼を共通にするものと認められる。
そうすると、本件商標と引用商標2とは、互いに特定の観念が生じないため、観念において比較することができないとしても、これらの外観が類似し、「フェニックス」の称呼を共通にすることから、本件商標と引用商標2とは類似の商標である。
エ 本件商標の指定商品と引用商標を使用する申立人使用商品の類否について
本件商標の指定商品と引用商標を使用する申立人使用商品は、同一又は類似するものである。
オ 小括
上記ウ及びエのとおり、本件商標と引用商標は類似の商標であり、本件商標の指定商品と引用商標を使用する申立人使用商品は、同一又は類似する商品である。
(2)引用商標の周知著名性について
上記1のとおり、引用商標は、申立人又は申立人使用商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知著名性を獲得していたとは認められないものである。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標と引用商標は類似の商標であり、本件商標の指定商品と引用商標を使用する申立人使用商品は、同一又は類似する商品であるとしても、引用商標は、申立人又は申立人使用商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知著名性を獲得していたとは認められないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
上記1のとおり、引用商標は、申立人又は申立人使用商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知著名性を獲得していたとは認められないものである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
上記2(1)ウのとおり、本件商標は、引用商標と類似する商標であるから、類似性の程度は高いものである。
(3)本件商標の指定商品と申立人使用商品の関連性、需要者の共通性について
上記2(1)エのとおり、本件商標の指定商品と申立人使用商品とは、同一又は類似する商品であり、密接な関連性を有し、需要者の範囲も共通にするものである。
(4)出所混同のおそれについて
上記(2)のとおり、本件商標は引用商標と類似する商標であり、上記(3)のとおり、本件商標の指定商品と申立人使用商品とは、同一又は類似する商品であり、密接な関連性を有し、需要者の範囲も共通にするものであるとしても、上記1のとおり、引用商標は、申立人又は申立人使用商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国及び外国において、需要者の間に広く認識されているとはいえないものである。
そうすると、本件商標は、本件商標権者が、これをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないと判断するのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号及び同項第7号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、申立人又は申立人使用商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知著名性を獲得していたとは認められないことからすると、本件商標は、引用商標を連想又は想起させることのないものである。 そうすると、本件商標は、引用商標の知名度や名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
さらに、本件商標権者が、申立人使用商品の販売代理店であったとしても、本件商標権者が、本件商標をその指定商品について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するとはいえない。
加えて、申立人は、「本件商標権者は、本件商標の登録出願時において、いまだ引用商標が登録されていないことを奇貨として、引用商標のもつ顧客吸引力に便乗し不正な利益を得る目的あるいは本件商標の実際の使用者に損害を与える目的をもって本件商標の登録出願を行ったもの」と主張するのみで、これを裏付ける証拠は提出していないことから、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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