結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2022015199 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本願は、2015年(平成27年)12月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年12月11日及び2015年9月9日、いずれも中国)を国際出願日とする特願2017-530277号の一部を、2020年(令和2年)10月15日に新たな出願としたものであって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和2年10月16日 手続補正書の提出
令和3年 6月29日 刊行物提出
同年10月 8日付け 拒絶理由通知書(特許法第50条の2の通知
を伴う)
令和4年 1月13日 意見書(以下「意見書(1)」という。)
及び手続補正書の提出
同年 2月25日 刊行物提出
同年 4月25日 刊行物提出
同年 5月11日付け 補正の却下の決定及び拒絶査定
同年 9月26日 手続補正書及び審判請求書の提出
同年10月25日 刊行物提出
同年11月10日 前置報告
令和5年 3月 2日 上申書の提出
令和6年 5月27日付け 拒絶理由通知書(当審)
同年12月 3日 意見書(以下「意見書(2)」という。)
及び手続補正書の提出
令和7年 2月 3日付け 拒絶理由通知書(当審)
同年 5月12日 意見書(以下「意見書(3)」という。)の
提出
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、令和6年12月3日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)の治療において使用するための、抗VEGF剤を含む組成物であって、蛍光血管造影により測定した活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満である場合に、wAMD治療スキームにしたがって前記患者が治療され、
前記wAMD治療スキームが、前記組成物の適用を含み、
前記抗VEGF剤がアフリベルセプトを含み、
活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である、組成物。」
当審において令和7年2月3日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶理由の概要は、以下の理由を含むものである。
理由1(新規事項) 令和6年12月3日提出の手続補正書でした補正は、外国語書面の翻訳文(又は誤訳訂正書による補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
理由2(新規性) 本願発明1は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3(進歩性) 本願発明1は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由4(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
<引用文献等一覧>
B.Ophthalmology, 2012, vol.119, p.2537-2548
C.Review or Ophthalmology, 2008, Amitha Domalpally 他,https://www.reviewofophthalmology.com/article/fluorescein-angiography-in-neovascular-amd(令和6年12月3日提出の意見書に添付した参考資料2)
D.白神史雄ら編「打倒! 加齢黄斑変性」, 2005.11.10, p.36-45(株式会社メジカルビュー社(令和4年10月25日受付刊行物等提出書の刊行物4)
事案に鑑み、理由1(新規事項)、理由4(明確性)、理由2(新規性)及び理由3(進歩性)の順に当審における判断を示す。
(1) 令和6年12月3日提出の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)の内容
本件補正は、明細書の段落【0022】を変更する補正を含むものであって、当該補正は、下記(2)に示すとおり、外国語書面の翻訳文(以下「翻訳文」という。)の段落【0022】に本願発明1の実施例1として記載された、「硝子体内(IVT)投与したアフリベルセプトの有効性」を評価する「無作為化二重盲検臨床試験」における「重要な組み入れ基準」の一つである「CNVの領域は、全病変の少なくとも50%を占有しなければならなかった。」という事項を、削除するものである。
そこで、上記補正が、翻訳文に記載され事項の範囲内においてされたものであるか否かについて以下に検討する。
(2)翻訳文に記載された事項
翻訳文の発明の詳細な説明には、本願発明1の湿潤加齢黄斑変性(以下「wAMD」という。)の病変とその治療、抗VEGF剤であるアフリベルセプト及び臨床試験に関して、以下の記載がある。なお、「・・・」は記載の省略を示し、下線は合議体が付したものである。
「【技術分野】
【0001】
加齢黄斑変性(AMD)は、通常、高齢者に影響を及ぼし、網膜の損傷のために視野の中心(黄斑)の視力を失う病状である。それは「乾燥」および「湿潤」形態で生じる。乾燥形態では、ドルーゼンと呼ばれる細胞破片が網膜と脈絡膜との間に蓄積し、網膜が剥離することがある。
より重篤な湿潤形態(wAMD)では、脈絡膜新生血管(CNV)とも呼ばれる網膜の背後の脈絡膜から血管が成長する
。CNVの結果、網膜も剥離することがある。
【背景技術】
【0002】
網膜における異常な血管の増殖は、血管内皮増殖因子(VEGF)によって刺激される
。
抗血管新生剤または抗VEGF剤は、異常な血管の退行を引き起こし、硝子体内投与されたときに視力を改善し得る
。いくつかの
抗VEGF薬は眼内使用が認可されており
、以下の特許出願に記載されている:
【0003】
アフリベルセプト
(Eylea(登録商標)) WO 2000/75319
ベバシズマブ(Avastin(登録商標)) WO 9845331
ラニビズマブ(Lucentis(登録商標)) WO 9845331
ペガプタニブ(Macugen(登録商標)) WO 9818480
KH-902/conbercept(Langmu(登録商標)) WO 2007112675
【0005】
抗VEGF剤を用いて実施された臨床試験では、全病変の少なくとも50%を占めなければならないクラシック主体型活動性中心窩下CNV領域(active predominantly classic,subfoveal CNVarea)を有する患者を含める必要があった
[Rosenfeldら、N Engl J Med 2006,355:1419-1431;Brownら、N Engl J Med 2006,355:1432-1444;Heierら、Ophthalmology 2012,119:2537-2548;Regilloら、Am J Ophthalmol 2008,145:239-248]。
したがって、全病変の50%未満を占めるクラシック主体型活動性中心窩下CNV領域を有する眼の、抗VEGF療法に対する反応に関する情報は不足している
。
【0006】
CATT研究グループは、
加齢性黄斑変性症治療試験(CATT)の比較に登録した、血液で構成される病変を50%を超えて有する眼(B50群)と他のすべての眼(他の群)のベースライン特性、治療頻度、視力(VA)および形態学的予後を比較した
。試験眼の治療は、ラニビズマブまたはベバシズマブのいずれかにランダムに割り当てられ、2年間にわたって異なる3つの投与レジメンに割り当てられた。リーディングセンターのグレーダーは、カラー眼底写真、フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)および光干渉断層撮影(OCT)においてベースラインおよびフォローアップ形態を評価した。平均視力(VA)の上昇は、「B50群」および「他の群」において、1年目(+9.3対+7.2文字;P=0.22)および2年目(9.0対6.1文字;P=0.17)で同等であった。「B50群」の平均病変サイズは、1年目と2年目のいずれも1.2 DA減少(主に出血の回復による。)し、「その他の群」では1年目に0.33 DA、2年目に0.91 DA増加した(P<0.001)。著者らは、「B50群」は「他の群」と同様の視覚予後を有していると結論付けた。病変サイズは2年間で著しく減少した。50%を超える血液で構成される血管新生性AMD病変を有する、CATTに登録されたもののような眼は、血液が少ないかまたは全くないものと同様に管理することができる。[Altaweel MMら、Ophthalmology.2015 122(2):391-398]。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、
血液で構成される病変を50%を超えて有する上記の評価された亜集団は、本出願(実施例1)に記載された調査の全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変を有する患者の亜集団と同等ではない
。
【0009】
本発明によれば、次の
wAMDの2つのサブタイプが存在する
:
(I)小さい活動性CNV病変
-wAMDのタイプ、または
(II)活動性主体型(predominantly active)CNV病変
-wAMDのタイプ。病変の位置は、中心窩に影響を及ぼす中心窩下または傍中心窩であり得る。病変のタイプは、クラシック主体、最小限のクラシックまたはオカルトを含むすべてのサブタイプであり得る。
【0010】
2つのタイプのwAMDの用語は暫定的(preliminary)である。「
小さい活動性CNV病変
-wAMDのタイプ」の代替用語は以下を含んでもよい:
1)「
sCNV wAMD
」
2)「
小さい活動性CNVを有する
wAMD」
3)「活動性CNVが減少したwAMD」
4)「CNVがより少ないwAMD」
5)「非CNV関連のwAMD」
6)「wAMDタイプ1」
7)「wAMDタイプ2」
8)「wAMDタイプX」(Xは任意の数字、文字または両方の組み合わせ)。
・・・
【0012】
「
活動性主体型CNV病変
-wAMDのタイプ」の代替用語は以下を含んでもよい:
1)「
pCNV wAMD
」
2)「活動性CNVを主体とするwAMD」
3)「活動性CNVを有するwAMD」
4)「
大きな活動性CNVを有する
wAMD」
5)「CNV関連wAMD」
6)「wAMDタイプ1」
7)「wAMDタイプ2」
8)「wAMDタイプX」(Xは任意の数字、文字または両方の組み合わせ)。
・・・
【0015】
活動性CNV病変の存在およびそれによるwAMDの診断は、通常、蛍光血管造影(FA)によって確認される
が、
2つのwAMDタイプ
は、以下の通り区別することができる:
1)「sCNV wAMD」は、
全病変サイズの50%未満を占める活動性CNV病変
を特徴とする
2)「pCNV wAMD」は、
全病変サイズの少なくとも50%を占める活動性CNV病変
を特徴とする。
【0016】
病変の位置は、中心窩に影響を及ぼす中心窩下または傍中心窩であり得る。
病変のタイプは、クラシック主体、最小限のクラシックまたはオカルトを含むすべてのサブタイプであり得る
。
【0017】
活動性CNV病変のサイズならびに全病変サイズは、MPSプロトコル[Macular Photocoagulation Study Group,Arch Ophthalmol 1991,109:1242-1257]に記載の通り、蛍光血管造影(FA)を用いて測定される。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明では、
CNV病変の小さい活動性部分を有する病変(全病変サイズの50%未満;「sCNV wAMD」)が、抗VEGF治療、すなわちアフリベルセプトまたはPDTを用いる治療に良好に反応することが示されている
。この結論は、アフリベルセプトまたはV(登録商標)-PDTの硝子体内注射のいずれかで治療された、「sCNV wAMD」および「pCNV wAMD」を有する患者の臨床試験での観察に基づく。
驚くべきことに、「sCNV wAMD」患者の視力によって測定されるアフリベルセプト治療に対する反応は、「pCNV wAMD」患者の反応に対して数値的に高かった。これは、CNV病変の大きな活動性部分を有する病変が、CNV病変の小さい活動性部分を有する病変よりも、抗VEGF治療の漏出防止作用に対してより受容性があると推定されるため、予想されていなかった
。さらに、「sCNV wAMD」患者のV(登録商標)-PDT治療に対する反応は、「pCNV wAMD」患者の反応に対して数値的に高く、これも予想されていなかった。
【0019】
本発明によれば、
「sCNV wAMD」を有する患者の治療にも、wAMDの治療を用いることができる
。「sCNV wAMD」を有する患者のこのような治療は次の通りでもよい:
1)wAMDの治療と同様の硝子体内抗VEGF単独療法であるが、抗VEGF療法は、眼内の遊離VEGFを減弱させることを目的とした認可された治療および認可されていない治療すべてを指す。これには、特にアフリベルセプト、ラニビズマブ、ベバシズマブ、KH-902およびペガプタニブが含まれるが、これらの化合物に限定されない。抗VEGF治療は、以下の治療スケジュールにしたがって施すことができる:
a.毎月の硝子体内注射3回または4週間ごとの硝子体内注射3回、続いて隔月または4週間ごとに投与し、後の治療段階は、さらに治療間隔を延ばす選択肢あり、またはなしで投与する。
・・・
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】
ベースラインにおいて全病変サイズの50%以上の活動性CNV病変を有する被験者
における訪問によるETDRS BCVA文字数スコアのベースラインからの平均変化を示す図である。第1週(V3)4週(V4)、第8週(V5)、第12週(V6)、第16週(V7)、第20週(V8)、第24週(V9)、第28週(V10)、第32週(訪問11)、第36週(訪問12)、第40週(訪問13)、第44週(訪問14)、第28週(訪問15)、第52週(訪問16)における、ETDRSにより測定したBCVAスコア(文字数)のベースラインからの平均変化が、VTE2Q8群(実線と菱形)およびPDT→VTE群(点線と四角)について示されている。第28週(V10)のBCVAスコアのベースラインからの平均変化は、VTE2Q8群では12.7、PDT→VTE群では1.5である。第52週のBCVAスコアのベースラインからの平均変化は、VTE2Q8群では14.0、PDT→VTE群では6.4である。
【図2】
ベースラインにおいて全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変を有する被験者
における訪問によるETDRS BCVA文字数スコアのベースラインからの平均変化を示す図である。第1週(V3)4週(V4)、第8週(V5)、第12週(V6)、第16週(V7)、第20週(V8)、第24週(V9)、第28週(V10)、第32週(訪問11)、第36週(訪問12)、第40週(訪問13)、第44週(訪問14)、第28週(訪問15)、第52週(訪問16)における、ETDRSにより測定したBCVAスコア(文字数)のベースラインからの平均変化が、VTE2Q8群(実線と菱形)およびPDT→VTE群(点線と四角)について示されている。第28週(V10)のBCVAスコアのベースラインからの平均変化は、VTE2Q8群では16.7、PDT→VTE群では8.0である。第52週(V10)のBCVAスコアのベースラインからの平均変化は、VTE2Q8群では18.1、PDT→VTE群では13.4である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施例1
加齢性血管新生または
湿潤加齢性黄斑変性症を有する合計304人の中国人被験者を無作為化二重盲検臨床試験に登録して
、V(登録商標)-PDTと比較した
硝子体内(IVT)投与したアフリベルセプトの有効性
を、BCVA(最高矯正視力)のベースラインからの平均変化で第28週まで
評価した
。試験眼のBCVAを、加齢性眼疾患調査(Age Related Eye Disease Study)(AREDS)に適合させたETDRS(早期治療糖尿病性網膜症調査(Early Treatment Diabetic Retinopathy Study))のために開発された標準的な手順にしたがって評価した。
重要な組み入れ基準は以下の通り
であった。
署名し、日付を入れた書面によるICF。
50歳以上の男性と女性。
試験眼において
フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)によって明らかになる、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変
。
CNVの領域は、全病変の少なくとも50%を占有しなければならなかった
。
ETDRSの試験眼の最高矯正視力(BCVA)は73~25文字(試験眼のスネレン等価視力は20/40~20/320)。
【0023】
試験眼に適用される以下の重要な除外基準:
全病変サイズは、FAによって評価される12の乳頭領域(30.5mm
2
、血液、瘢痕および新生血管を含む。)より大きい。
網膜下出血は全病変領域の50%以上であるか、または血液が中心窩の下にある場合、1つまたは複数の乳頭領域のサイズである。(血液が中心窩の下にある場合、中心窩は目に見えるCNVによって270度囲まれていなければならない)
wAMD以外の起源を持つCNVの存在。糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫またはwAMD以外の何らかの網膜血管疾患の病歴または臨床的証拠。ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)を有する被験者を除外するために、特に注意が払われるべきである。
実質的に不可逆的な視力喪失を示す中心窩を含む瘢痕、線維症または萎縮症の存在。
網膜色素上皮断裂または黄斑に関与する裂け目の存在。
【0024】
適格な患者は3:1に無作為化され、アフリベルセプト(VTE)2Q8
またはV(登録商標)-PDT(228 VTE+76 PDT)
が投与された
。
50%以上の活動性CNV病変を有する患者194人
(147 VTE2Q8+47 PDT)および
50%未満の活動性CNV病変を有する患者106人
(78 VTE2Q8+28 PDT)が含まれていた。
病変サイズは、MPSプロトコル[Macular Photocoagulation Study Group,Arch Ophthalmol 1991,109:1242-1257]に基づき、セントラルリーディングセンターにより測定された
。
活動性CNVのサイズ、CNVの面積(mm
2
)ならびに全病変サイズをFAを用いて測定した
。中心網膜厚は、光干渉断層撮影により測定した。VTE2Q8群では、ベースライン、第4週、第8週、第16週、第24週、第32週、第40週および第48週に
硝子体内投与された2mg(0.05mL)のアフリベルセプトで患者を治療した
。PDT群では、第12週および第24週に、ベースラインにおいてV(登録商標)-PDTを実施し、wAMDにおけるPDT治療の利用のガイドライン[Verteporfin Roundtable Participants,Retina.2005;25(2):119-34]にしたがって、可能性のあるPDT再治療を実施した。第28週に、一次および二次エンドポイントの評価後、PDT→VEGF Trap-Eye群の被験者にはVEGF Trap-Eye 2.0mgをIVT注射し、その後、第32週、第36週、第40週および第48週にさらにVEGF Trap-Eye 2.0mgをIVT注射した。
【0025】
ベースラインからの平均変化のBCVA文字数スコアは、調査集団全体において、活動性CNV病変サイズに関わらず、第28週にVTE2Q8群が14.0(-29~59)、PDT群が3.9(-36~43)(P<0.0001)と、アフリベルセプト2mgの硝子体内注射はV(登録商標)-PDTより優れていた。
アフリベルセプト2mgの硝子体内注射は、全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変を有する患者にとって有効な治療であった
(第28週のBCVAのベースラインからの平均変化:16.7(-21~59)。図2参照。)が、これは、
全病変サイズの50%以上の活動性CNV病変を有する患者の治療結果(第28週のBCVAのベースラインからの平均変化:12.7(-29~40)。図1参照。)と同等であった
。V(登録商標)-PDTの治療有効性は、全病変サイズの50%以上の活動性CNV病変を有する患者(第28週のBCVAのベースラインからの平均変化:1.5(-36~27)。図1参照。)よりも、全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変を有する患者(第28週のBCVAのベースラインからの平均変化:8.0(-18~43)、図2参照。)において数値的に高い。
【0026】
概して、他の有効性パラメータの大部分では、VTE2Q8およびV(登録商標)-PDTで治療された両方の患者について、
全病変サイズの50%以上の活動性CNV病変を有する患者と比較して、全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変を有する患者において、より好ましい結果が観察された
(表1)。
【0027】
【表1A】
63
118
0001429216000001.jpg
【表1B】
37
129
0001429216000002.jpg
【0028】
【表2】
94
126
0001429216000003.jpg
」
【図1】
「
65
87
0001429216000004.jpg
」
【図2】
「
64
86
0001429216000005.jpg
」
(3) 判断
ア 上記(2)の記載事項に基づけば、翻訳文には以下の事項が記載されていたものと認められる。
(ア) 本願発明1において治療の対象となるwAMDは、「脈絡膜新生血管(CNV)とも呼ばれる網膜の背後の脈絡膜から血管が成長する」疾患であり(【0001】)、「網膜における異常な血管の増殖は、血管内皮増殖因子(VEGF)によって刺激される」ことから、「抗血管新生剤または抗VEGF剤は、異常な血管の退行を引き起こし、硝子体内投与されたときに視力を改善し得る」ものとして、「アフリベルセプト」を含めた「いくつかの抗VEGF薬」「が認可されて」いた(【0002】、【0003】)。
(イ)wAMDには、「(I)小さい活動性CNV病変-wAMDのタイプ、または(II)活動性主体型(predominantly active)CNV病変-wAMDのタイプ」の2つのサブタイプが存在し、「病変の位置」は、「中心窩に影響を及ぼす中心窩下または傍中心窩」であり得、また、「病変のタイプ」は、「クラシック主体、最小限のクラシックまたはオカルトを含むすべてのサブタイプ」であり得るところ(【0009】)、「活動性CNV病変のサイズならびに全病変サイズは、MPSプロトコル[Macular Photocoagulation Study Group,Arch Ophthalmol 1991,109:1242-1257]に記載の通り、蛍光血管造影(FA)を用いて測定され」(【0017】)、「全病変サイズ」の測定においては「12の乳頭領域」について「血液、瘢痕および新生血管を含」めて「評価される」(【0023】)。
(ウ) 以前に「抗VEGF剤を用いて実施された臨床試験では、全病変の少なくとも50%を占めなければならないクラシック主体型活動性中心窩下CNV領域(active predominantly classic,subfoveal CNVarea)を有する患者を含める必要が」あり、「全病変の50%未満を占めるクラシック主体型活動性中心窩下CNV領域を有する眼の、抗VEGF療法に対する反応に関する情報は不足してい」た(【0005】)。 「加齢性黄斑変性症治療試験(CATT)」で「評価され」た「亜集団」は、「血液で構成される病変を50%を超えて有する」患者群であり、全病変の50%以上が血液、すなわち出血病変が占めることから、「クラシック主体型活動性中心窩下CNV」領域は当然50%未満を占めることになるが、この「亜集団」は「本出願(実施例1)に記載された調査の全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変を有する患者の亜集団と同等ではない」(【0006】、【0008】)。
すなわち、同じ全病変に対する「クラシック主体型活動性中心窩下CNV」領域の割合が「50%未満」の被験者であっても、全病変サイズにおける50%を超える病変(以下、「主要な病変」ということがある。)の種類が、例えば、血液、瘢痕及び新生血管のいずれであるか異なれば、被験者は同等とはいえず、本願の実施例1における抗VEGF療法に対する反応に関する情報とはならない。
(エ) 本願発明1は、上述のような技術的背景のもとに実施された実施例1(【0022】~【0028】)の臨床試験での、「CNV病変の小さい活動性部分を有する病変(全病変サイズの50%未満;「sCNV wAMD」)」が、アフリベルセプトに良好に反応するという予想されていなかった観察に基づき、従来情報の不足していた「sCNV wAMD」を有する患者にも、「pCNV wAMD」の患者と同じ「wAMDの治療を用いることができる」ということを見出したことを技術思想とする発明である(【0018】~【0019】)。
(オ) そして、本願発明1の上記技術思想の裏付けとなる実施例1の臨床試験について、翻訳文には、前記(2)【0022】の「重要な組み入れ基準」及び【0023】の「除外基準」に基づき登録された「加齢性血管新生または湿潤加齢性黄斑変性症を有する合計304人の中国人被験者」において実施されたもののみが記載されている。
ここで、当該実施例1における組み入れ基準は「CNVの領域は、全病変の少なくとも50%を占有しなければならなかった。」というものであるから、wAMDの全病変において主要な病変がCNV、すなわち新生血管であることを被験者の組み入れ基準とするものである。
イ 上記アの翻訳文における記載に基づけば、本件補正により、実施例1における「CNVの領域は、全病変の少なくとも50%を占有しなければならなかった。」という「重要な組み入れ基準」の一つを削除することは、当初、主要な病変がCNVである被験者のみを対象として行われていた臨床試験が、被験者の主要な病変が何であるかに関わらず実施された臨床試験に変更されたこととなるが、翻訳文には、被験者の主要な病変の種類に関わらず臨床試験を行ったことを明示的に示す記載はない。
ウ 審判請求人は、意見書(3)(「理由1:新規事項」)において、【表1A】及び【表1B】において、「全病変サイズのうちの活動性CNV病変」が「活動性CNV<50%」である患者が記載されていることを根拠に、本件補正は新規事項ではない旨を主張している。
しかしながら、前記(2)(【0009】~【0016】)に説明されるように、「活動性CNV病変の存在およびそれによるwAMDの診断は、通常、蛍光血管造影(FA)によって確認される」ものである一方、「CNV病変」には、「活動性CNV(クラシック)」以外にも、新生血管が網膜色素上皮下に存在する結果「蛍光血管造影(FA)によって確認される」活動性CNVの領域が小さい「小さい活動性CNV(オカルト)」が含まれるのであるから、「活動性CNV病変」は「CNV病変」と同義ではない。
したがって、上記【表1A】及び【表1B】における、全病変に対して「活動性CNV病変」が50%未満の患者が含まれていたという記載は、全病変に対して「CNV病変」が50%未満の患者が含まれていた、すなわち主要な病変がCNVではない患者が含まれていたことを示す根拠にはなり得ない。
エ そして、前記ア(ウ)で指摘したように、翻訳文には、全病変における主要な病変の種類が異なれば、被験者は同等はいえず、本願の実施例1における抗VEGF療法に対する反応に関する情報とはならないことを意味する技術的背景が説明されていること、さらに「FAによって決定される病変形態」が「治療法に対する治療反応性だけでなく、自然な病歴の転帰にも影響する」(後記2(3)ア(C-1)を参照。)という本願出願時のwAMDにおける技術常識を踏まえれば、実施例1における「CNVの領域は、全病変の少なくとも50%を占有しなければならなかった。」という「重要な組み入れ基準」の一つを削除する補正は、臨床試験における対象患者群を変更するものであって、被験薬物の対象患者群に対する有効性を確認することを目的とする臨床試験そのものの意義を大きく変更し、その結果に大きく影響するものといえる。
オ さらに、前記ア(ア)で指摘した背景技術や、審判請求人が意見書(3)(「理由2及び3:新規性及び進歩性 理由4:明確性」の第6段落)において主張しているように、アフリベルセプトを含めた抗VEGF療法は、VEGFによって刺激されるCNV病変に対して治療効果を有すると考えられていた治療法であるところ、本件補正により、実施例1の被験者に、主要な病変がCNVでない患者が含まれることになれば、その試験結果は、例えば、全くCNV病変がない患者や、CNV病変が僅かにしか含まれない被験者においても治療効果を示したこととなり、従来治療活性は有さないと予想されていたと上記意見書において主張されている二次構造(線維症、瘢痕、封入された不活性血管構造)に対しても、抗VEGF療法が有効であることを示すことにもなり得るものである。
カ このように、本願発明1の技術思想の礎となる臨床試験において、「重要な組み入れ基準」として存在した「CNVの領域は、全病変の少なくとも50%を占有しなければならなかった。」という事項を削除する本件補正は、当該臨床試験の意義及び試験結果の解釈を大きく変更させるものであって、新たな技術的事項を導入するものであることは明らかである。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件補正により、補正後の特許請求の範囲、明細書及び図面には、翻訳文のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項が導入されることは明らかであるから、この補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
(1)本願発明1は「蛍光血管造影により測定した活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満である場合」であって、「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」、「患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)の治療において使用するための、抗VEGF剤を含む組成物」を発明特定事項とするものである。
そして、本願発明1における「クラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変」である「活動性CNV病変」について、本願明細書の発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)には明確な定義がなされていないことから、上記CNV病変の意味が明確であるか否かについて、以下に検討する。
(2)発明の詳細な説明の記載
本願発明1における「活動性CNV病変」に関し、発明の詳細な説明を参照すると、前記1(2)に摘記した記載(特に、【0009】~【0015】を参照。)がある。
(3)本願優先日当時及び出願時における技術常識
ア 引用文献C:Review or Ophthalmology, 2008, https://www.reviewofophthalmology.com/article/fluorescein-angiography-in-neovascular-amd
審判請求人が、令和6年12月3日提出の意見書に添付した参考資料2である上記引用文献Cは、「新生血管AMDにおける蛍光血管造影 病変の組成と特徴の詳細におけるFAの役割の詳細な考察」と題する学術論文であって、以下の事項が記載されている。なお、引用文献Cは外国語の文献であるため、合議体による翻訳文で示す。また、下線は合議体が付したものである。以下、他の文献についても同様である。
(C-1)
「蛍光血管造影は、脈絡膜新生血管病変とその関連病変からなる新生血管複合体の存在、位置、大きさを同定するための強力な画像診断法である。FAは有用な診断法であると同時に、他では得られない病変形態データを表示する重要な臨床研究ツールでもある。
AMDの多くの臨床試験は、適格性と治療エンドポイントの両方においてFAの特徴付けに依存している
。
FAによって決定される病変形態は、いくつかの治療法に対する治療反応性だけでなく、自然な病歴の転帰にも影響する
。Verteporfinを用いた光線力学的治療の臨床試験では、クラシック病変に対して最も有益であるという治療効果の乖離が示された
2
。病変の外観によるこの治療効果の差の認識は、その後、
FAの解釈に基づく患者の組み入れと除外の指定によって、新生血管AMDの多くの試験に織り込まれた
。多くの臨床試験において、適格性は臨床試験責任医師によって決定されるため、計算されたサンプルサイズで治療効果を検出するために十分標準化された患者集団を登録するためには、FAに関する臨床試験責任医師の解釈が重要となる。あまりにも多くの不適格な眼が登録されると、試験で予測されるイベント発生率(視覚と形態学的アウトカムの両方に関して)に歪みが生じ、試験が統計的に主要エンドポイントの達成を逃す可能性がある。したがって、
病変の構成とCNVの血管造影サブタイプの同定に特に言及したAMDにおけるFAの標準化された解釈は、臨床治療と臨床研究の両方にとって重要である。この論文に記載されたガイドラインは、蛍光血管造影を評価するためのMPS
及びETDRSプ
ロトコル
3
から適応されたものであり
、ウィスコンシン州マディソンにあるUW Fundus Photograph Reading Centerで臨床試験に使用されている。」(1/15頁本文1~最終行)
(C-2)
「評価手順
血管新生AMDにおけるFAの評価には、様々な段階の画像ペアを並べて比較することが必要である。正確な解釈のためには、良好な立体視が可能な高画質画像が不可欠である。評価手順は以下のステップで行う:
1. CNVの評価:
血管造影サブタイプ
。
2. 新生血管複合体を構成する非CNV病変の評価。
3. 重要な測定:
CNV総面積、病変総面積
、漏出面積。
4. 新生血管病変複合体の一部とみなされない異常の評価。
CNVの評価
CNVは脈絡膜からBruch膜の外側の断裂を介した新生血管組織の浸潤である。FA上でのCNVの同定は、血管造影の様々な段階における漏出パターンに基づいて行われる。例えば、図2に示したシリーズでは、注入前、赤なし、40秒フレーム、2分フレーム、10分フレームである。漏出が始まる最も早いフレームがCNV病変を決定する。
漏れの出現時間と漏れの強さに基づいて、CNVはクラシックとオカルトの2つの主要なカテゴリーに分けられる。それぞれのCNVのタイプは、存在、黄斑の中心への近接性、関与する領域(適切なグリッド又はデジタル平板測定ツールを使用して推定)について評価される
。漏出は時間とともに増加し、その強さはサブタイプによって異なる。漏れの面積は常に後期に評価される。」(5/15頁2~3段落)
(C-3)
「CNVの血管造影上のサブタイプ
CNVを合併した眼では、3つの血管造影サブタイプが同定される:
1.
クラシック(classic)亜型
(図2参照)は、
全病変面積の50%以上がクラシック成分である
。
2.
最小限のクラシック(Minimally classic)は、全病変面積の1~50%
(図6参照)
がクラシック亜型である
。
3.
クラシックを含まないオカルト(occult)は、クラシック成分を含まない
(図4参照)。」(9/15頁1段落)
(C-4)
「要約すると、血管造影評価は、新生血管AMDの臨床試験において、適格性を決定し、患者を追跡するために重要である。新生血管複合体は、FA上、CNVと非CNV成分に区別できる。
クラシックCNV病変は早期に明瞭に検出され、強い漏出が見られるが、オカルトCNV病変は初期~中期に、強度の低い漏出が見られ、不明瞭に検出される
。CNV以外の成分としては、ブロック蛍光の上昇、濃い血液、漿液性PEDがあり、これらはすべてCNVに連続している。
CNVの総面積とCNV以外の病変成分の面積を合計すると、総病変面積となる
。」(14/15頁2段落)
イ 引用文献D:白神史雄ら編「打倒! 加齢黄斑変性」, 2005.11.10, p.36-45(株式会社メジカルビュー社)
当審による拒絶理由通知において引用された上記引用文献D(令和4年10月25日受付刊行物等提出書の刊行物4)には以下の事項が記載されている。
(D-1)
「戦略
(1)(原文は1の○囲い文字。以下同様。)AMDを治療する場合,まずFAでCNVの位置を確認しよう。
CNVが中心窩下にあるかいなかで,治療手段が違ってくる
からである。
(2)CNVの位置が決まったら,FAによってどのように造影されるかをつぶさに観察しよう。
classic CNVは臨床的に進行が急速で視力が急激に低下しやすく,occult CNVは進行が緩慢でおとなしいことが多いので,治療適応が変わってくるのだ。
(3)CNVの基本的なFA所見がつかめたら,今度はclassic CNVが「病変」内に占める割合を考えてみよう。
欧米では,この病変タイプによってPDT(合議体注:「光線力学的療法」の略。)の有効性が異なるとされている。
どれくらい治療が効きそうなタイプであるかを治療前に見分けておくのだ。
(4)最後に,本当に通常のAMDであるかどうかを確認しておこう。
AMDの特殊病系に分類されるポリープ上脈絡膜血管症(polypoidal choroidal vasculopathy;PCV)や網膜内血管腫状増殖(retinal angiomatous proliferation;RAP)では治療方針と有効性が違ってくるのだ
。
ヒトの中心窩には網膜毛細血管のない無血管野がある。
CNVの位置は中心窩無血管野の幾何学的中心からCNVの端までの距離によって3種類に分類される
1,2,3)
。
中心窩外CNV(extrafoveal CNV)
はその距離が200μm以上あり中心窩から離れているもの,
傍中心窩CNV(juxtafoveal CNV)
はその距離が1~199μmであり,中心窩にきわめて近いが中心窩下には達しないもの,そして0μm(中心窩のど真ん中)の
中心窩下CNV(subfovealCNV)である
【図1】。・・・現在のAMDの基本的な治療方針は,中心窩外なら通常のレーザー凝固(熱凝固),中心窩下ならPDT,傍中心窩なら進行の具合によってそのどちらかが考慮されるのだ。」(36頁 本文、2段落~37頁最終行)
(D-2)
「CNVの位置は決まった。さあ次は
FAによってCNVの造影態度を分類してみよう
。この分類はCNVがどのレベルにあるか,つまり網膜色素上皮の上にあるか下にあるかを同時に読み取る,とても重要な分類だ。
classic CNVは網膜色素上皮の上(網膜下)に発育したCNV(Gass分類での2型CNV)とほぼ等しく,occult CNVは網膜色素上皮の下に発育したCNV(Gass分類での1型CNV)とほぼ等しい
と考えてよい。以下に
classic, occultの定義を述べるが,この定義は米国の黄斑光凝固スタディ(MPS)によって決められた
ものである
1)
。注意しなければならないのは,このclassic, occultという呼び名はあくまでFAの所見上の分類であるということだ。つまり先に述べたCNVと網膜色素上皮との位置関係については例外があり,例えば
classic CNVの所見を示すなかに,実は網膜色素上皮下の病変であるPCVが混じっていても一向にかまわない
のだ。
◆classic CNV
classic CNVはFAで
、
(1)造影早期から境界鮮明で均一な強い過蛍光を示す
(2)
造影早期から旺盛な蛍光漏出が始まる
(3)造影中期から後期にかけて進行性の旺盛な蛍光漏出がみられ、漏出した蛍光色素はしばしば網膜下あるいは網膜内に拡散して過蛍光が拡大するといういかにも活きのよい造影所見だ【図3】。この造影所見では、網膜下にCNVが露出していて、そこから網膜下腔というフリースペースに自由に造影剤が漏出するイメージを描いてほしい。classic CNVでは、ほかの造影所見として、
(4)CNV周辺に低蛍光輪(dark rim)が見られる【図4】
(5)新生血管の編目模様が直接造影されることがあるが,AMDでは必ずしもみられなくてもよい【図5】
などの所見がみられる。通常、
classic CNVは活動性が高く、急速に拡大しやすく,視細胞を直接傷害して視力低下を進行させやすいという性質をもつので治療を急がなければならない
。
◆ occlut CNV
一方
occult CNVはFAで
、
(1)造影早期にはCNVの存在は不明瞭で強い過蛍光はみられない(逆に低蛍光を示すこともある)
(2)
造影後1~2分,あるいはもっと遅い時期に顆粒状または点剣状の過蛍光が集合した領域がみられる
ようになる
(3)さらに時間が経過して造影後期になると,顆粒状の過蛍光が増強して沈むような緩慢な蛍光露出(oozingといわれる)や強い組織染がみられる
(4)過蛍光の境界は鮮明であることも不鮮明であることもある
などの特徴を示す。特に,
蛍光漏出所見があるかどうかは,少なくとも造影10分程度まで経過した後期像を観察したうえで判定を下す必要がある
。このようなoccult CNVの造影態度は,CNVが障害された網膜色素上皮の下にあり,その障害された網膜色素上皮を通してCNVからの漏出が徐々に起こるイメージを描いてほしい。・・・
occult CNVは網膜色素上皮下にあるため,一般に拡大はゆっくりで,病状の進行もゆっくりであることが多いので,じっくりと病状を見極めよう
。
以上のようなclassic CNV,occult CNVのFA所見が1つの病変内に混在してみられるものは混合型CNVと呼ばれる【図8】。混合型CNVには次に示すような病変タイプ分類が行われる。」(40頁1行~41頁5行)
(D-3)
「 病変タイプ分類とは,最近よく耳にするようになったpredominantlyやminimallyなどという分類である。この分類は,
欧米のPDTのガイドラインのなかに定められた分類
2,3)
で,「病変」内にclassic CNVが何%であるかで病変タイプが決まる。
classic CNVが病変の50%以上のものはpredominantly classic CNV,1~49%のものはminimally classic CNV
,
まったく認められないものはoccult with no classic CNVとよんでいる
【図9】。ただし,ここでいう「病変」という言葉にも定義があり十分な注意を要する。なぜならPDTではCNVを確実に閉塞に導くために,CNVを含む可能性のある構成要素をすべて含んで「病変」と定義しているのだ。つまり
「病変」には,(1)classic CNV,(2)occult CNVのほかに,(3)出血,(4)漿液性網膜色素上皮剥離,(5)色素沈着,線維組織,瘢痕などの蛍光ブロックをきたすもの,のすべてを含むと規定されている
【図10】。FA上,このようなCNV以外の構成要素は出血,色素沈着,瘢痕は蛍光ブロックや脈絡膜血管萎縮による低蛍光,漿液性網膜色素上皮剥離は境界鮮明,類円形で均一な過蛍光,線維組織は組織染によって過蛍光を示すので,
それらすべてをしっかり読み込んで,そのなかでのclassic CNVの存在割合を判定して
ほしい。・・・
ちなみに欧米では,PDTの効果はpredominantly classic CNVに最も高く,次がoccult with no classic CNV,最も効きにくいのがminimally classic CNVという評価が下されている。・・・」(43頁1~19行)
ウ 加齢黄斑変性(以下「AMD」という。)に関する技術常識
前記ア及びイの記載事項に基づけば、本願優先日当時及び出願時において、AMDにおける脈絡膜血管新生(以下「CNV」という。)病変に関し、以下の技術常識が存在していたものといえる。
(ア) AMDの診断では、CNV病変とその他の病変(出血、漿液性網膜色素上皮剥離、色素沈着、線維組織、瘢痕など)の存在、位置、大きさを同定するために蛍光血管造影(以下「FA」という。)が用いられ、臨床研究ではFAの標準化された解釈に基づき、病変の構成とCNVの血管造影サブタイプを同定する方法が、MPSプロトコルで定められていた((C-1)、(D-2)、(D-3))。
(イ) CNVの位置については、中心窩無血管野の幾何学的中心からCNVの端までの距離によって、中心窩外CNV(extrafoveal CNV)、傍中心窩CNV(juxtafoveal CNV)及び中心窩下CNV(subfoveal CNV)の3つに分類される((C-2)、(D-1))。
(ウ) CNVは、血管造影における漏れの出現時間と漏れの強さに基づいて分類され、造影早期から境界鮮明で、旺盛な蛍光漏出が見られる、活動性の高い「クラシック」と、造影早期には不明瞭で、造影後期に緩慢な蛍光漏出が見られる「オカルト」の2つのカテゴリーに分けられる。
クラシックCNV病変が全病変面積の何%であるかによって病変タイプが分類され、50%以上のものはクラシック亜型(predominantly classic)、1~49%のものは最小限のクラシック(minimally classic)、まったく認められないものはオカルト(occult with no classic)とよばれる((C-2)~(C-4)、(D-2)、(D-3))。
(エ) クラシックCNVは網膜色素上皮の上(網膜下)に発育したCNV(Gass分類での2型CNV)とほぼ等しく、オカルトCNVは網膜色素上皮の下に発育したCNV(Gass分類での1型CNV)とほぼ等しいが、クラシック及びオカルトという呼び名はFAの所見上の分類であって、クラシックCNVの所見を示すなかに網膜色素上皮下の病変が混じることがある(D-2)。
エ 前記アの発明の詳細な説明の記載に基づけば、本願発明1における「蛍光血管造影により測定した活動性CNV病変のサイズ」及び「全病変サイズ」とは、MPSプロトコルに従った蛍光血管造影(FA)を用いて測定されるCNV病変及び全病変のサイズであり(【0017】)、CNV病変は「(I)小さい活動性CNV病変」と「(II)活動性主体型(predominantly active)CNV病変」のwAMDの2つのタイプに分類されるところ(【0009】)、MPSプロトコルに従ったFAにおいては、蛍光の漏れの出現時間と漏れの強さに基づいて、造影早期から境界鮮明で、旺盛な蛍光漏出が見られる、活動性の高い「クラシック」と、造影早期には不明瞭で、造影後期に緩慢な蛍光漏出が見られる「オカルト」の2つのカテゴリーにCNVを分類するという本願出願時の技術常識(前記ウ(ウ))を考慮すれば、発明の詳細な説明において説明される「(I)小さい活動性CNV病変」及び「(II)活動性主体型(predominantly active)CNV病変」とは、それぞれ、AMD技術分野において通常「オカルトCNV」及び「クラシックCNV」とよばれるCNV病変に相当するものと解される。
オ また、発明の詳細な説明において「小さい活動性CNV病変-wAMDのタイプ」の代替用語として記載される「sCNV wAMD」は、「全病変サイズの50%未満を占める活動性CNV病変を特徴とする」と説明され(【0010】、【0015】)、「活動性主体型CNV病変-wAMDのタイプ」の代替用語として記載される「pCNV wAMD」は、「全病変サイズの少なくとも50%を占める活動性CNV病変を特徴とする」と説明されていること(【0012】、【0015】)、及びクラシックCNV病変が全病変面積の何%であるかによって病変タイプが分類され、50%以上のものはクラシック亜型(predominantly classic)、1~49%のものは最小限のクラシック(minimally classic)、まったく認められないものはオカルト(occult with no classic)とよばれるという本願出願時の技術常識(前記ウ(ウ))を考慮すれば、発明の詳細な説明における「小さい活動性CNV病変-wAMDのタイプ」及び「sCNV wAMD」とは、AMD技術分野において、通常「最小限のクラシック(minimally classic)」とよばれる病変タイプと「オカルト(occult with no classic)」とよばれる病変タイプとを合わせた病変タイプに相当し、発明の詳細な説明における「活動性主体型CNV病変-wAMDのタイプ」及び「pCNV wAMD」とは、AMD技術分野において、通常「クラシック亜型(predominantly classic)」とよばれるwAMDのタイプに相当するものと解される。
エ 本願発明1において特定される「クラシック主体型活動性中心窩下脈略膜新生血管(CNV)病変」という用語については、その文言から「クラシック主体型活動性」のCNV病変であって、「中心窩下」に存在するCNV病変であることは理解できるが、発明の詳細な説明には「クラシック主体型活動性」の「CNV病変」という記載はない。
そして、「クラシック主体型活動性」CNV病変の「クラシック主体型」が【0012】に説明される「活動性主体型CNV病変-wAMDのタイプ」又は【0016】に説明される「クラシック主体」の「病変タイプ」を意味する場合には、上記オで説示したとおり、これらの病変タイプはいずれも「全病変サイズの少なくとも50%を占める」活動性CNV病変を有する病変タイプ(通常の「クラシック亜型(predominantly classic)」に相当する。)を意味することになり、本願発明1において特定する「蛍光血管造影により測定した活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満である」(通常の「最小限のクラシック(minimally classic)」及び「オカルト(occult with no classic)」に相当する。)という記載と、明らかに矛盾することになる。
オ 審判請求人は、意見書(3)(理由2及び3:新規性及び進歩性 理由4:明確性の9~14段落)において、本願発明1の「蛍光血管造影により測定した活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満である場合」の「患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)」とは、「蛍光血管造影により測定した、CNV病変の
クラシック成分及びオカルト成分
の領域が、全病変サイズの50%未満である」ことを意味するものであり、「活動性CNV成分(active CNV component)のみを指し、かつ活動性CNV成分のみ」をさらに特徴づける慣用的な定義に従う血管造影サブタイプである、クラシック、クラシック亜型及びオカルトに分類するものと同一の意味ではない旨説明している(なお、審判請求人の主張する上記慣用的な分類については、「クラシック亜型(predominantly classic)、最小限のクラシック(minimally classic)、オカルト(occult with no classic)」(前記ウ(ウ)を参照。)を錯誤したものと認められる。)。
カ しかしながら、前記ウ(エ)で説示したとおり、技術常識として知られるFAによるCNV病変の分類は、網膜色素上皮の上(網膜下)に発育したクラシックCNVの所見を示すものに、オカルトCNVも含めた網膜色素上皮下の病変が混じることがあることを前提とするものであって、審判請求人が主張するような「活動性CNV成分(active CNV component)のみを指し、かつ活動性CNV成分のみ」を特徴づける分類ではない。
そうすると、本願発明1における「蛍光血管造影により測定した活動性CNV病変」が、慣用的な定義に従うクラシックCNVとどのような点で異なるものであるのかが不明であり、本願発明1における「活動性CNV病変」を明確に把握することができない。
キ さらに、本願発明1における「クラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変」がどのような病変タイプであるかについては上記意見書(3)においても説明はされておらず、審判請求人の上記主張を考慮しても、前記エにおいて指摘した、「蛍光血管造影により測定した活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満である場合」の「患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)」と矛盾しない病変タイプであるのか否かも明らかではないし、AMD分野において技術常識として知られる「クラシック亜型(predominantly classic)、最小限のクラシック(minimally classic)、オカルト(occult with no classic)」の3つの病変タイプとの関係も明らかではない。
(4) 小括
以上のとおりであるから、本願発明1において特定する「蛍光血管造影により測定した活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満である場合」であって、「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」、「患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)」がどのような患者であるかを明確に把握することができない。
よって、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1)引用文献B:Ophthalmology, 2012, vol.119, p.2537-2548
ア 引用文献Bの記載事項
当審による令和7年2月3日付け拒絶理由通知書において引用された上記引用文献Bは、「湿潤加齢黄斑変性におけるアフリベルセプト硝子体内投与(VEGF Trap-Eye)」と題する学術文献であって、以下の事項が記載されている。なお、図表については原文のまま示し、標題と脚注のみ翻訳文を付記する。
(B-1)
「目的:
血管新生加齢黄斑変性(AMD)を対象とした2つの類似デザインの第3相試験
(VEGF Trap-Eye:
湿潤AMD
における有効性と安全性の検討
[VIEW 1, VIEW 2]
)は月1回投与及び2ヵ月毎の
アフリベルセプト
硝子体内注射(VEGF Trap-Eye;Regeneron社、ニューヨーク州タリータウン、Bayer HealthCare社、ドイツ、ベルリン)を、月毎のラニビズマブの投与と比較した。
デザイン:二重盲検、多施設並行群間、実薬対照、無作為化試験。
参加者:
AMDに続発する活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変(又は中心窩に影響を及ぼす漏出を伴う傍中心窩病変)を有する患者
(n=2419)。
介入:患者は、
アフリベルセプトを硝子体内に0.5mgを月1回投与する群(0.5q4)、2mgを月1回投与する群(2q4)、2mgを月1回を3回投与後、2月毎に投与する群(2q8)、及びラニビズマブ0.5mgを月1回投与する群(Rq4)に無作為に割り付け
られた。
主要評価項目:一次評価項目は、52週目に視力を維持している患者の割合(早期治療糖尿病網膜症試験[ETDRS]チャートで15文字未満の視力低下)におけるラニビズマブに対するアフリベルセプトレジメンの非劣性(10%の限度)であった。その他の重要な評価項目は、最良矯正視力(BCVA)及び解剖学的測定値の変化であった。
結果:すべてのアフリベルセプト群は、一次評価項目において月1回投与のラニビズマブに対して非劣性であり、臨床的にも同等であった(2q4、0.5q4及び2q8レジメンは、VIEW 1ではそれぞれ95.1%、95.9%、95.1%、VIEW 2ではそれぞれ95.6%、96.3%、95.6%であったのに対し、月1回投与のラニビズマブは両試験とも94.4%であった)。2試験の事前に規定された統合解析では、
すべてのアフリベルセプトレジメンは、BCVAの平均変化量において、基準であるラニビズマブと0.5文字以内の差であり、すべてのアフリベルセプトレジメンは解剖学的指標においても同様の改善を示した
。眼および全身性の有害事象は治療群間で同様であった。
結論:
アフリベルセプト硝子体内投与は、月1回を3回の初期投与後、月毎又は2月毎に投与され、ラニビズマブの月1回投与と同様の有効性と安全性を示した
。これらの試験は、
アフリベルセプトがAMDの有効な治療法である
ことを示しており、2月毎の投与は、月毎の硝子体内投与のリスクとモニタリングの負担を軽減する可能性がある。」(2537頁 要約)
(B-2)
「参加者
組み入れ対象及び除外基準は、非劣性試験に関する規制ガイドラインに従い、対照薬ラニビズマブの主要臨床試験との整合性を保つように設定され、
(1)AMDに続発する活動性の中心窩下CNV病変(サブタイプを問わない)を有する50歳以上の患者
;
中心窩に影響を及ぼす漏出を伴う傍中心窩病変も認められた;
(2)
病変全体の50%以上を占めるCNV;(3)BCVAがETDRS(早期治療糖尿病網膜症試験チャート)の73~25文字(20/40~20/320スネレン等価視力)が組み入れられた
。試験眼に(治験薬又は抗VEGF療法を含む)AMDの治療歴がある患者は除外された。
適格性は、読影センターで蛍光眼底造影を用いて決定された
。完全な適格性基準を付録2(http://aaojournal.org)に示す。」(2540頁左欄2段落)
(B-3)
「表1: 患者の人口統計とベースライン特性
94
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0.5q4=毎月0.5mg投与;2q4=毎月2mg投与;2q8=毎月3回初期投与後、2月毎に2mg投与;BCVA=最高矯正視力;CNV=脈絡膜新生血管;ETDRS=早期治療糖尿病網膜症試験;NEI VFQ-25 = National Eye Institute 25-ltem Visual Functioning Questionnaire; SD = 標準偏差。」
(2541頁 表1;赤枠は合議体が付したもの。)
イ 引用文献Bに記載された発明
前記アの記載事項に基づけば、引用文献Bには、「血管新生加齢黄斑変性(AMD)を対象とした2つの類似デザインの第3相試験」(B-1)として、「(1)AMDに続発する活動性の中心窩下CNV病変(サブタイプを問わない)を有する50歳以上の患者;中心窩に影響を及ぼす漏出を伴う傍中心窩病変も認められた;(2)病変全体の50%以上を占めるCNV;(3)BCVAがETDRS(早期治療糖尿病網膜症試験チャート)の73~25文字(20/40~20/320スネレン等価視力)」(B-2)の組み入れ基準を満たす「湿潤AMD」患者に対し、「アフリベルセプトを硝子体内に0.5mgを月1回投与する群(0.5q4)、2mgを月1回投与する群(2q4)、2mgを月1回を3回投与後、2月毎に投与する群(2q8)、及びラニビズマブ0.5mgを月1回投与する群(Rq4)に無作為に割り付け」て臨床試験を行ったこと(B-1)、各群には、「Predominantly classic」の病変タイプが23.3~28.8%、「Minimally classic」の病変タイプが32.2~36.5%、及び「Occult」の病変タイプが35.9~40.2%の割合で含まれていたこと(B-3)が記載され、「アフリベルセプト硝子体内投与は、月1回を3回の初期投与後、月毎又は2月毎に投与され、ラニビズマブの月1回投与と同様の有効性と安全性を示し」、「AMDの有効な治療法である」ことが記載されている。
そして、アフリベルセプトは硝子体内注射に適した組成物として投与されたものであることは、技術常識からみて自明である。
そうすると、引用文献Bには、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「湿潤加齢黄斑変性症(AMD)を治療するための、アフリベルセプトを含む組成物であって、AMDに続発する活動性の中心窩下CNV病変を有し、Predominantly classic、Minimally classic又はOccultの病変タイプの50歳以上の患者であって、中心窩に影響を及ぼす漏出を伴う傍中心窩病変を含み、病変全体の50%以上を占めるCNVを有し、BCVAがETDRS(早期治療糖尿病網膜症試験チャート)の73~25文字(20/40~20/320スネレン等価視力)である患者を治療するためのものである、組成物であり、
前記治療が、アフリベルセプトの、0.5mgを月1回、2mgを月1回、又は2mgを月1回を3回投与後、2月毎の用量で硝子体内投与するものである、組成物。」
(2)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「湿潤加齢黄斑変性症(AMD)を治療するため」及び「アフリベルセプトを含む組成物」は、本願発明1における「患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)の治療において使用するため」及び「抗VEGF剤を含む組成物であって、」「前記抗VEGF剤がアフリベルセプトを含み」にそれぞれ相当する。
イ 本願発明1における「wAMD治療スキーム」とは、どのような治療スキームを意味するのか、請求項の記載のみからでは直ちに明らかとはいえないため、発明の詳細な説明(前記1(2)【0018】~【0019】)を参照すると、「本発明では、CNV病変の小さい活動性部分を有する病変(全病変サイズの50%未満;「sCNV wAMD」)が、抗VEGF治療、すなわちアフリベルセプトまたはPDTを用いる治療に良好に反応することが示されている。」、「本発明によれば、「sCNV wAMD」を有する患者の治療にも、wAMDの治療を用いることができる。「sCNV wAMD」を有する患者のこのような治療は次の通りでもよい:
1)wAMDの治療と同様の硝子体内抗VEGF単独療法であるが、抗VEGF療法は、眼内の遊離VEGFを減弱させることを目的とした認可された治療および認可されていない治療すべてを指す。これには、特にアフリベルセプト、・・・が含まれるが、これらの化合物に限定されない。抗VEGF治療は、以下の治療スケジュールにしたがって施すことができる:
a.毎月の硝子体内注射3回または4週間ごとの硝子体内注射3回、続いて隔月または4週間ごとに投与し、後の治療段階は、さらに治療間隔を延ばす選択肢あり、またはなしで投与する。・・・」と説明されている。
そうすると、引用発明における「アフリベルセプトの、0.5mgを月1回、2mgを月1回、又は2mgを月1回を3回投与後、2月毎の用量で硝子体内投与するものである」という治療は、本願発明1における「wAMD治療スキーム」の一つといえるから、本願発明1における「wAMD治療スキームにしたがって前記患者が治療され、前記wAMD治療スキームが、前記組成物の適用を含み」に相当する。
ウ 引用発明における「CNV病変」について、引用文献1(B-2)には、「適格性は、読影センターで蛍光眼底造影を用いて決定された」とのみ記載されているが、前記2(3)ウ(ア)で示したとおり、「臨床研究ではFAの標準化された解釈に基づき、病変の構成とCNVの血管造影サブタイプを同定する方法が、MPSプロトコルで定められていた」という本願優先日当時のAMD臨床研究における技術常識を考慮すれば、引用発明の「CNV病変」も当然本願発明1と同じMPSプロトコルに従ったFAにより測定されたものであると認められる。
そして、MPSプロトコルに従ったFAにより測定された活動性の高いCNVを「クラシックCNV」に分類するという本願優先日当時の技術常識(前記2(3)ウ(ウ))を踏まえれば、引用発明における「活動性の」「CNV病変」とは、「クラシックCNV」に相当するものといえる。
エ ここで、本願発明1における「蛍光血管造影により測定した活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満である場合」であって、「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」、「患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)」を明確に把握することができない点は、前記2において説示したとおりであるが、引用発明における「AMDに続発する中心窩に影響を及ぼす漏出を伴う傍中心窩病変を含」む「活動性の中心窩下CNV病変を有し、Predominantly classic、Minimally classic又はOccultの病変タイプの50歳以上の患者」と、本願発明1における「湿潤加齢黄斑変性証(wAMD)」の「患者」とは、「蛍光血管造影により測定した活動性CNV病変」を有し、「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む」、「AMDに続発する」「中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変」を有する患者である限りにおいて一致する。
オ そうすると、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
「患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)の治療において使用するための、抗VEGF剤を含む組成物であって、蛍光血管造影により測定した活動性CNV病変を有する場合に、wAMD治療スキームにしたがって前記患者が治療され、
前記wAMD治療スキームが、前記組成物の適用を含み、
前記抗VEGF剤がアフリベルセプトを含み、
活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発する中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である、組成物。」
<相違点>
患者について、本願発明1は、「活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満である場合」であって、「クラシック主体型活動性」「脈絡膜新生血管(CNV)病変」を有する患者に特定されるのに対し、引用発明では、「Predominantly classic、Minimally classic又はOccultの病変タイプ」の患者である点。
(3)判断
ア 上記相違点について検討すると、引用発明においては、wAMDのPredominantly classic、Minimally classic又はOccultの全ての病変タイプが含まれている。
そして、引用文献Bでは「アフリベルセプトが有効な治療法である」(B-1)と結論づけられており、引用文献Bの他の記載を参照しても、病変タイプによっては治療効果が異なったといったといった記述も見当たらないことから、上記結論は全ての病変タイプについて当てはまるものと理解するのが自然である。
そうすると、前記2で説示したとおり、本願発明1における「活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満である場合」であって、「クラシック主体型活動性」「脈絡膜新生血管(CNV)病変」を有する患者がどのような病変タイプの患者であるかを明確に把握することはできないとしても、引用発明の「Predominantly classic、Minimally classic又はOccultの病変タイプ」の中には、必然的に本願発明1において特定する患者が含まれ、アフリベルセプトにより有効な治療が行われていたものと認められる。
したがって、上記相違点は実質的な相違点とは認められない。
イ また、仮に上記相違点が実質的な相違点であったとしても、引用文献Bには、活動性CNV病変を含む「Predominantly classic」及び「Minimally classic」のみならず、活動性CNVを全く含まない「Occult」を含む全ての病変タイプのwAMD患者に対して、アフリベルセプトを適用した結果、これが有効であったことが示されているのであるから、当業者であれば、CNV病変を有するwAMD患者であれば、どのような病変タイプの患者であっても治療効果が得られることを理解し、本願発明1で特定するwAMD患者に対してもアフリベルセプトを使用することは容易に想到し得たものといえる。
そして、前記1で説示したとおり、本件補正により発明の詳細な説明に記載される実施例1は翻訳文に記載した事項の範囲内のものではなくなったため、本願発明1の進歩性を主張する根拠とすることはできない。
とりわけ、wAMDの主要な病変には、CNV病変以外にも二次構造(線維症、瘢痕、不活性血管構造など)が存在するところ、本願の翻訳文には、アフリベルセプトを、wAMD患者のうち、これらの主要病変の種類に関わらず「活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満であるwAMD患者」に対して適用した場合に奏される効果について、これを明らかにする臨床試験の結果は示されていなかったことは、前記第2のとおりであって、当該効果は、翻訳文に記載された範囲を超えるものであるところ、先願主義を採用し、発明の公開の代償として特許権を付与するという特許制度の趣旨からみて、当該効果に基づき、本願発明1の進歩性を認めることはできない。
ウ 審判請求人の主張について
審判請求人は、意見書(3)において、引用文献Bに記載された臨床試験では、「(2)総病変サイズの少なくとも50%を含むCNV」を有するwAMD患者のみが含まれており、本願発明1が対象とする、「活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満であるwAMD患者」におけるアフリベルセプト治療の効果についてなんら開示も示唆もしていない旨を主張する。
しかしながら、本願発明1では、引用文献Bにおいて除外された「総病変サイズ」に対してCNV病変サイズが「50%未満であるwAMD患者」であることを発明特定事項とはしていない。
そして、「活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満であるwAMD患者」が、「最小限のクラシック(Minimally classic)」及び「オカルト(Occult with no classic)」の病変タイプに分類されるという技術常識(前記2(3)ウ(ウ))を踏まえれば、引用文献Bに記載された「Minimally classic又はOccult」は、当に本願発明1における「活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満であるwAMD患者」に相当するものである。
さらに、そもそも本願発明1で特定するwAMD患者は、審判請求人の主張する「活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満であるwAMD患者」ではなく、「活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満であるwAMD患者」であって、かつ「クラシック主体型活動性」「脈絡膜新生血管(CNV)病変」を有する患者であり、従来の病変タイプとどのような違いがあるのか明確に把握することもできないような患者であるから、上記意見書(3)における審判請求人の主張は到底採用することができない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本願発明1は引用文献Bに記載された発明であるか、引用発明及び引用文献Bに記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
以上のとおり、令和6年12月3日提出の手続補正書による補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、また、本願の請求項1に係る発明について、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
さらに、本願の請求項1に係る発明は、引用文献Bに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は引用文献Bの記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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