結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024007683 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本願は、2020年(令和2年)10月20日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2019年10月25日、2020年6月30日 (DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする国際特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 4年 4月21日 :国内書面及び翻訳文の提出
令和 5年 4月27日付け:拒絶理由通知書による拒絶の理由の通知
同年11月 9日 :意見書及び手続補正書の提出
同年12月19日付け:拒絶をすべき旨の査定
(拒絶査定、以下「原査定」という。)
令和 6年 5月 9日 :本件審判(拒絶査定不服審判)の請求
本件審判の請求と同時:手続補正書の提出
[補正の却下の決定の結論]
令和6年5月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
本件補正は、明細書の段落番号0051と特許請求の範囲の全文とを補正の対象とするものであって、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正がされた。(下線は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
切削工具を製造する方法であって、
a)複数の材料層における付加製造方法で使用するための
出発
材料を用意する工程と、
b)
前記出発
材料の各材料層を結合してインデックス可能インサートの形状にする工程であって、このとき、工具本体の支持面に平行な工具基準面で切削工具を固定するために、固定手段で切削工具を工具本体に固定するための凹部が切削工具に形成されるように、材料層が配置される、工程と、
を含
み、
前記凹部はねじ頭部を少なくとも部分的に受け入れ
、
前記付加製造方法は、レーザー焼結(SLS)、ステレオリソグラフィー(SLA)、ポリグラフィー、溶融堆積モデリング(FDM)、選択的レーザー溶融(SLM)および3D印刷(3DP)の何れかを含み、
前記切削工具はインデックス可能インサートである、
方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1~2
本件補正前の(すなわち、令和5年11月9日提出の手続補正書により補正がされた)特許請求の範囲の請求項1~2の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
切削工具を製造する方法であって、
a)複数の材料層における付加製造方法で使用するための材料を用意する工程と、
b)材料の各材料層を結合してインデックス可能インサートの形状にする工程であって、このとき、工具本体の支持面に平行な工具基準面で切削工具を固定するために、固定手段で切削工具を工具本体に固定するための凹部が切削工具に形成されるように、材料層が配置される、工程と、
を含み、
前記凹部はねじ頭部を少なくとも部分的に受け入れる、方法。
【請求項2】
前記切削工具は、インデックス可能インサートである、請求項1に記載の方法。」
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「材料」、「付加製造方法」、及び、「切削工具」について、「出発材料」、「レーザー焼結(SLS)、ステレオリソグラフィー(SLA)、ポリグラフィー、溶融堆積モデリング(FDM)、選択的レーザー溶融(SLM)および3D印刷(3DP)の何れかを含」むこと、及び、本件補正前の請求項2に特定される「インデックス可能インサートである」ことを、それぞれ具体的に限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的に含む(なお、本件補正は、上記目的のほか、同項第1号に掲げる「請求項の削除」を目的に含む。)ものに該当する。
上記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものを含むことから、本件補正が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下、検討する。
(1)検討する特許の要件
特許法第29条第2項(進歩性)
・引用する文献(いずれも、原査定の拒絶の理由で引用された文献)
ア 引用文献1
特表2019-513900号公報(公表日:令和元年5月30日)
イ 引用文献2
特開2006-263856号公報
(2)本件補正発明の認定
本件補正発明は、上記1(1)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
(3)引用文献1に記載された発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、次の記載がある。(下線及び表の枠囲いは、当審で付した。以下同様。)
「【請求項9】
サーメット又は超硬合金物体を製造する方法
であって、
-
メジアン粒径(D50)が5-35μmの多孔質サーメット及び/又は超硬合金粒子の粉末
を、
メジアン粒径(D50)が3-15μmの稠密サーメット及び/又は超硬合金粒子の粉末と混合することにより
、65-85wt%の多孔質粒子と15-35wt%の稠密粒子を含む
粉末混合物を形成する工程
、
-
前記粉末混合物と印刷バインダーを用いて物体を3D印刷することにより、3D印刷されたサーメット又は超硬合金グリーン体を形成する工程
、
-
前記グリーン体を焼結することにより、サーメット又は超硬合金物体を形成する工程
を含む、方法
。」
「【請求項12】
物体が金属切削用の切削工具
、又は鉱業用途用の切削工具、又は摩耗部品
である、請求項9
から11の何れか一項
に記載の方法
。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、
サーメット又は超硬合金物体の三次元印刷方法
に関する。本発明はまた、
三次元印刷に使用すべき粉末混合物
に関する。
粉末混合物は、サーメット及び/又は超硬合金の稠密粉末と多孔質粉末との混合物
を含む。
【背景技術】
【0002】
三次元(3D)印刷又は積層造形は、粉末から三次元物体を印刷することを可能にする有望な製造技術である
。物体のモデルは、典型的にはコンピュータプログラムにおいて創出され、次いで、このモデルは三次元印刷機又は装置において印刷される。
三次元印刷は、従来の製造プロセスでは達成できない複雑な構造物及び物体の製造を可能とする
ため、有望な製造技術である。
【0003】
三次元印刷の1つのタイプは、バインダージェッティングに基づくものであり、
インクジェットタイプのプリンタヘッドを使用してバインダーを粉末の薄層に噴霧
し、これが、
硬化され
ると、
対象物の所定の層のための一体に接着された粉末のシートを形成
する。バインダーが硬化された後、
次の粉末の薄層が元の層の上に広げられ、バインダーの印刷噴射がその層のパターンで繰り返される
。バインダーを用いて印刷されなかった粉末は、元の堆積させた場所に留まり、印刷された構造物の基礎及び支持体として機能する。対象物の印刷が完了すると、バインダーをより高い温度で硬化させ、続いてバインダーを用いて印刷されなかった粉末が、例えば気流又はブラッシングにより除去される。
【0004】
サーメット及び超硬合金材料は、例えばCoの金属結合相中の炭化物及び/又は窒化物の硬質成分、例えばWC又はTiCからなる
。
これらの材料は、高靱性と組み合わさったその高硬度及び高摩耗耐性から、要求の厳しい用途に有用
である
。適用分野の例は、金属切削用の切削工具
、削岩用のドリルビット、及び摩耗部品
である
。」
「【0008】
本発明の更なる目的は、
均質な組成及び最小限の気孔を有する、三次元(3D)印刷されたサーメット又は超硬合金を製造する方法
を提供することである。」
「【0012】
更に、
粉末混合物が稠密サーメット又は超硬合金粒子を含む場合、印刷されたグリーン体のグリーン強度を十分なレベルにまで高められる
ことが見出されている。粉末混合物が35wt%を超える稠密粒子を含む場合、印刷時の粉末混合物の流動性が不十分となる。稠密粒子の量が15wt%未満の場合、印刷されたグリーン体の生強度が不十分となる。
稠密微粒子の添加も焼結活性に寄与し、それにより残留気孔率の低下に寄与する
。稠密粒子は、印刷時に印刷バインダー(接着剤)による粉末混合物の固定を強化することに寄与し、従って生強度が十分となる。」
「【0014】
サーメット又は超硬合金物体の三次元印刷は、その目的に適する任意の形状の物体をもたらす
ものであってもよい。
サーメット及び超硬合金は何れも、金属結合相中に硬質成分を含む
。
超硬合金の場合、硬質成分の少なくとも一部がWCからなる
。本発明の一実施態様において、三次元印刷され焼結されたサーメット又は超硬合金物体の気孔の数及びサイズは、ISO4505-1978に定義されるA06及び/又はB06未満であり、好ましくはA04及び/又はB04未満、より好ましくはA02及び/又はB02未満である。本発明の一実施態様において、三次元印刷され焼結されたサーメット又は超硬合金物体の気孔の数及びサイズは、A02B00C00、A00B02C00、又はA02B02C00未満である。本発明の一実施態様において、三次元印刷され焼結されたサーメット又は超硬合金物体に気孔は存在しない。」
「【0025】
本発明はまた、
サーメット又は超硬合金物体を製造する方法
であって、
-
メジアン粒径(D50)が5-35μmの多孔質サーメット及び/又は超硬合金粒子の粉末を、メジアン粒径(D50)が3-15μmの稠密サーメット及び/又は超硬合金粒子の粉末と混合する
ことにより、65-85wt%、好ましくは65-75wt%の多孔質粒子と、15-35wt%、好ましくは25-35wt%の稠密粒子を含む
粉末混合物を形成する工程
、
-
前記粉末混合物と印刷バインダーを用いて物体を3D印刷することにより、3D印刷されたサーメット又は超硬合金グリーン体を形成する工程
、
-
前記グリーン体を焼結することにより、サーメット又は超硬合金物体を形成する工程を含む
、方法に関する。
【0026】
印刷バインダーは、印刷時に部分的に蒸発する溶媒を含む。印刷バインダーは、水ベースとすることができる。
【0027】
硬化は通常、印刷する工程の一部として行われる。印刷バインダーが硬化され、それによってグリーン体は十分なグリーン強度を得る。硬化は、過剰な粉末を除去する前に、印刷されたグリーン体をより高い温度、例えば150-250°Cに曝すことによって行うことができる。一実施態様において、硬化は、非酸化環境において、例えばAr中で行われる。
【0028】
一実施態様において、
三次元印刷は、三次元印刷機、例えばバインダージェット三次元印刷機において行われる
。
【0029】
一実施態様において、
焼結は、焼結炉において行われる
。」
「【0033】
本発明はまた、
インサート、
ドリル若しくはエンドミル
などの金属切削用の切削工具
、又はドリルビットなどの鉱業用途用の切削工具、又は摩耗部品
の三次元印刷における前記粉末混合物の使用に関する
。」
「【0037】
一実施態様において、
焼結されたサーメット又は超硬合金物体は、金属切削用の切削工具である
。」
「【発明を実施するための形態】
【0040】
定義
「サーメット」という用語は、本明細書において、金属結合相中に硬質成分を含む材料を意味する
ことを意図しており、
硬質成分は、Ta、Ti、Nb、Cr、Hf、V、Mo及びZrのうちの一又は複数の炭化物又は炭窒化物、例えばTiN、TiC及び/又はTiCNを含む
。
【0041】
「超硬合金」という用語は、本明細書において、金属結合相中に硬質成分を含む材料を意味する
ことを意図しており、
硬質成分はWC結晶粒を含む
。
硬質成分は、Ta、Ti、Nb、Cr、Hf、V、Mo及びZrのうちの一又は複数の炭化物又は炭窒化物、例えばTiN、TiC及び/又はTiCNを更に含む
こともできる。
【0042】
サーメット又は超硬合金における金属結合相は、金属又は金属合金であり、金属は、例えばCr、Mo、Fe、Co若しくはNiから単独で、又は任意の組み合わせで選択することができる
。好ましくは、金属結合相は、Co、Ni及びFeの組み合わせ、CoとNiの組み合わせ、又はCoのみを含む。金属結合相は、当業者に公知の他の適切な金属を含むことができる。」
「【実施例】
【0044】
本発明の実施態様を下記の実施例に関連してより詳細に開示する。実施例は、例示的であって
実施態様を限定するものではない
とみなすべきである。
【0045】
稠密粉末DP1は、Tikomet Oyからの製品コードGrade F(微細)のリサイクルされたWC-Co粉末である。
稠密粉末DP2も、Tikomet OyによりGrade Fとして製造されたリサイクルされたWC-Co粉末であるが、わずかにより微細な粒度に粉砕されている
。粉末DP2の断面を図5に示す。
【0046】
DP3は、WC、Co及びPEGの顆粒を噴霧乾燥し、噴霧乾燥した顆粒を焼結することにより製造した粉末である。焼結は、PEGを除去し、気孔率も除去するために行われ、これにより球形の超硬合金稠密粒子が得られる。DP3粉末を製造する方法は、国際公開第2015/162206号に更に詳細に開示されている。粉末DP3の断面を図6に示す。焼結する工程で気孔率を調節することができ、これに続く篩い分け工程又は空気分級機工程で粒度分布を適合させることができる。
【0047】
DP4は、最終超硬合金物体のコバルト含有率を調節するために使用されるコバルト粉末である
。DP4粉末は、Freeport Cobaltからの材料20060のR-125コバルト粉末d25/450である。
【0048】
多孔質粉末PP1及びPP2は、H.C.Starckからのいわゆる「Amperit 519」WC-Co88/12である
。PP1は、焼結した45/15μmのAmperit519.074を凝集させたものであり、PP2は、焼結した30/5μmのAmperit519.059を凝集させたものである。PP1及びPP2の断面をそれぞれ図3及び図4に示す。
【0049】
PP3は、WC、Co及びPEGの顆粒を噴霧乾燥し、噴霧乾燥した顆粒を部分焼結することにより製造した多孔質粉末である。部分焼結は、PEGを除去するために行われ、これにより球形の超硬合金多孔質粒子が得られる。
【0050】
気孔率の測定は、切削面を調査すること、及びImageJ.(オープンソースソフトウェアhttps://imagej.nih.gov/ij/index.html)を用いた画像分析により行った。
【0051】
粒子の形状は、SEM(走査型電子顕微鏡)及びLOM(光学顕微鏡)で調査した。粒度分布(D10、D50及びD90)は、レーザー回折とRHODOS乾燥分散システムを備えたSympatec HELOS/BR粒径分析を用いて分析した。各粉末においてほとんどの粒子が有する形状を表1に提示する。
【0052】
Co含有率及びCr含有率は、ICP-MS又はXRFで調査した。結果を表1に提示する。超硬合金粉末は、表1のCo及び/又はCr値から合計で100%となる量のWCも含む。
25
73
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【0053】
表2に示すように
稠密粉末と多孔質粉末を混合して粉末混合物とする
ことにより、粉末混合物を製造した。
【0054】
バインダージェット印刷機「ExOne X1-lab」において、印刷時の層厚100μmで印刷を行った
。印刷時の飽和度は、表2に示すように、80%と110%の間であった。印刷バインダーの飽和度は、特定の粉末充填密度(ここでは、粉末充填密度は60%に設定されている)のときに印刷バインダーで満たされる空隙の体積のパーセントとして定義される。多孔質粒子の割合が低い場合と比較して、高い割合の多孔質粒子を含む粉末混合物を用いて印刷を行う場合、より高い飽和度が必要である。水ベースの印刷用インクX1-Lab(商標)水性バインダー(7110001CL)を印刷バインダーとして使用した。印刷時、各層の配列は下記の通りであった:
粉末混合物の層を床上に広げ、印刷バインダーをCADモデルにおいて定義されたパターンに広げた後、印刷バインダーを乾燥させて印刷バインダーの溶媒を除去した
。これを、
物体の全高が印刷されるまで繰り返した
。その後、
アルゴン雰囲気中195°Cで8時間硬化を行った
。脱粉を小型ブラシと加圧空気を用いて手作業で行った。
【0055】
続いて、
印刷され硬化させたグリーン体を焼結し、焼結された超硬合金物体を得た
。焼結は、DMK80焼結炉においてYでコーティングしたグラファイトトレーで行った。第1の焼結プロセスにおいて、500l/時間のH2が流れる焼結チャンバにおいて温度を室温から480°Cまで上昇させた脱バインダー工程を物体に施した。この後、温度を480°Cから1380°Cに上昇させ、30分間保持した真空工程を行った。その後、温度を1410°Cに上昇させ、1時間保持した。その後、チャンバを冷却し、焼結体をチャンバから取り出した。
【0056】
次いで、焼結体(試料A-F、試料Gは除く)に、温度を1410°Cに30分間保持する工程と、その後のチャンバに圧力が55barに到達するまでArを約13分間導入し、その後この圧力を15分間保持する加圧工程とを含むHIP焼結プロセスを施した。その後チャンバを冷却し、焼結されHIP焼結された物体をチャンバから取り出した。
【0057】
各試料の線収縮は、グリーン体から焼結されHIP焼結された物体までで、約25-30%であった。焼結されHIP焼結された各試料の断面を調査し、注釈を表2に記載した。気孔率は、ISO4505-1978による超硬合金のABC判定及びImageJを用いた画像分析の両方で調べた。
48
73
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」
イ 引用文献1に記載されているといえる事項
上記アから、引用文献1には、次の事項が記載されているといえる。
(ア)引用文献1の、【請求項9】の記載を引用する【請求項12】の記載、並びに、段落【0004】、【0033】及び【0037】の記載から、引用文献1には、サーメット又は超硬合金物体として、インサートなどの金属切削用の切削工具を製造する方法についての発明が開示されている、といえる。
(イ)引用文献1の、【請求項9】の記載、並びに、段落【0002】~【0004】、【0008】及び【0025】の記載から、上記アの、サーメット又は超硬合金物体である金属切削用の切削工具を製造する方法は、
A)メジアン粒径(D50)が5-35μmの多孔質サーメット及び/又は超硬合金粒子の粉末を、メジアン粒径(D50)が3-15μmの稠密サーメット及び/又は超硬合金粒子の粉末と混合して、粉末混合物を形成する工程と、
B)粉末混合物と印刷バインダーを用いて物体を3D印刷することにより、3D印刷されたサーメット又は超硬合金グリーン体を形成する工程、及び、グリーン体を焼結することにより、サーメット又は超硬合金物体を形成する工程と、
を含む、といえる。
(ウ)引用文献1の、段落【0002】の「三次元(3D)印刷又は積層造形は、粉末から三次元物体を印刷することを可能にする有望な製造技術である。」との記載、段落【0003】の「インクジェットタイプのプリンタヘッドを使用してバインダーを粉末の薄層に噴霧し、これが、硬化されると、対象物の所定の層のための一体に接着された粉末のシートを形成する。バインダーが硬化された後、次の粉末の薄層が元の層の上に広げられ、バインダーの印刷噴射がその層のパターンで繰り返される」との記載、及び、段落【0054】の「粉末混合物の層を床上に広げ、印刷バインダーをCADモデルにおいて定義されたパターンに広げた後、印刷バインダーを乾燥させて印刷バインダーの溶媒を除去した。これを、物体の全高が印刷されるまで繰り返した。その後、アルゴン雰囲気中195°Cで8時間硬化を行った。」との記載から、上記(イ)のB)の、粉末混合物と印刷バインダーを用いて物体を3D印刷することは、粉末混合物により形成された薄層の上に、粉末混合物を印刷バインダーとともに噴霧して、次の粉末混合物の薄層を積層し、物体の全高が印刷されるまで繰り返すことで、粉末混合物の複数の薄層を積層する製造方法であるといえる。
してみると、当該B)の前に行われる、上記(イ)のA)の粉末混合物を形成する工程は、複数の粉末混合物の薄層を積層する3D印刷で使用するために、メジアン粒径(D50)が5-35μmの多孔質サーメット及び/又は超硬合金粒子の粉末を、メジアン粒径(D50)が3-15μmの稠密サーメット及び/又は超硬合金粒子の粉末と混合して、粉末混合物を形成するものといえる。
(エ)上記(イ)のB)の工程のうち、粉末混合物と印刷バインダーを用いて物体を3D印刷することにより、3D印刷されたサーメット又は超硬合金グリーン体を形成する工程は、上記(ウ)のとおり、物体の全高が印刷されるまで粉末混合物の薄層を積層することを繰り返し、硬化する工程であり、また、同B)の工程のうち、グリーン体を焼結することにより、サーメット又は超硬合金物体を形成する工程では、複数の粉末混合物の薄層が焼結により結合する工程といえる。
してみると、上記(ア)も踏まえれば、上記(イ)のB)の工程は、粉末混合物の各薄層を硬化・焼結してインサートの形状にする工程であって、薄層が配置される工程、であるといえる。
ウ 引用文献1に記載された発明
上記ア、イから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「サーメット又は超硬合金物体である金属切削用の切削工具を製造する方法であって、
A)複数の薄層における3D印刷で使用するための、メジアン粒径が5-35μmの多孔質サーメット及び/又は超硬合金粒子の粉末を、メジアン粒径が3-15μmの稠密サーメット及び/又は超硬合金粒子の粉末と混合して、粉末混合物を形成する工程と、
B)前記粉末混合物の各薄層を硬化・焼結してインサートの形状にする工程であって、薄層が配置される、工程と、
を含み、
前記切削工具はインサートである、
方法。」
(4)引用文献2に記載された技術的事項の認定
ア 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。
「【0017】
本スローアウェイ式正面フライス(1)の工具本体(2)は、例えば炭素鋼、合金鋼等の鋼材からなり、図1に示すように軸心(CL)を中心とする略円盤状をなし
、前記軸心(CL)に沿ってフライス穴(3)が先端面(2b)と後端面(2c)とを貫通して設けられ、後端面(2c)はアーバ等の保持具(図示しない)への取付け面となる。さらに、工具本体(2)の先端外周部には、外周面(2a)に沿って略等間隔に5つの切屑排出溝(4)が切欠き形成されるとともに、
これら切屑排出溝(4)の回転方向(K)後方側を向く各々の壁面には、チップ座(5)が切欠き形成されている
。
チップ座(5)の底面が着座面(5a)となり、この着座面(5a)から切り上がり互いに略直角に交差する2つの壁面がスローアウェイチップ(10)を位置決めするための拘束面(5b、5c)となる
。
前記着座面(5a)には敷板固定ねじ(40)に螺合する雌ねじ穴(5d)が設けられる
。」
「【図1】
79
89
0001429572000003.jpg
」
「【0018】
チップ座(5)には敷板(20)が装着される
が、この敷板(20)は、工具本体(2)と同一材質の鋼材、又は、工具本体(2)よりも硬質の材料、例えばHSS(高速度鋼)、工具鋼、超硬合金等のいずれかからなり、略正方形板状に成形され、
その上面(20a)中央部には下面(20b)を貫通するザグリ穴(21)が設けられている
。図5の断面図からわかるように
敷板(20)は、その下面(20b)をチップ座(5)の着座面(5a)に当接載置されて、前記ザグリ穴(21)に挿通した敷板固定ねじ(40)をチップ座(5)の着座面(5a)に設けた雌ねじ穴(5d)にねじ込むことにより、チップ座(5)の着座面(5a)側に押圧され固定される
。」
「【図5】
65
78
0001429572000004.jpg
」
「【0019】
図2および図3に示すようにスローアウェイチップ(10)は、略正方形板状をなすポジチップであり
、
その上面(10a)がすくい面となり前記上面(10a)の4つのコーナー部(11)と、隣り合うコーナー部(11)の間に延びる4つの辺稜部が主切刃(12)となる、4コーナー使用可能なものである
。
少なくとも前記コーナー部(11)および主切刃(12)は超硬合金、サーメット、
セラミックス、もしくは、ダイヤモンドおよび/又はCBN焼結体
等の硬質材料のいずれかからなる
。さらに、
図3からわかるように上面(10a)中央部には当該スローアウェイチップ(10)の軸心(CLt)に沿って下面(10b)を貫通する取付け穴(13)が形成されている
。
この取付け穴(13)の内壁面には、前記軸心(CLt)直角断面で前記軸心(CLt)側に向かって凸をなす湾曲面で構成された被押圧面(14)が形成されている
。」
「【図2】
76
81
0001429572000005.jpg
【図3】
89
67
0001429572000006.jpg
」
「【0020】
一方、
スローアウェイチップ(10)を固定するクランプねじ(30)は、図4に例示するようにおよそ円錐角を60°とした円錐台形状をなす頭部(31)と、雄ねじ部(32)と、前記頭部(31)と前記雄ねじ部(32)との間にあり双方に連なる円筒部(33)とからなる
。
頭部(31)のテーパ周面には押圧面(34)が形成される
。」
「【図4】
58
78
0001429572000007.jpg
」
「【0021】
図5に例示するようにスローアウェイチップ(10)は、その下面(10b)をチップ座(5)の着座面(5a)に当接載置されて
(当審注:段落【0018】の記載及び図5から、敷板(20)を介して、敷板(20)の上面(20a)に当接載置される、と認める。なお、段落【0022】には、敷板(20)を省略することが可能な旨も記載される。)、
その取付け穴(13)に挿通したクランプねじ(30)を敷板固定ねじ(40)の軸心に沿って設けられた雌ねじ穴(41)にねじ込むことによってチップ座(5)に螺着される
。ここで、敷板固定ねじ(40)の軸心は、取付け穴(13)の軸心、すなわちスローアウェイチップ(10)の軸心(CLt)に対して、チップ座(5)の2つの拘束面(5b、5c)の交差部のほぼ2等分線方向に前記交差部寄り若干量(スローアウェイチップの形状やサイズによるが例えば0mmを超え1.0mm未満の範囲の量)だけ芯ずらししてあるので、
クランプねじ(30)の前記芯ずらしの方向に位置する押圧面(34)がスローアウェイチップ(10)の取付け穴(13)の被押圧面(14)を強く押圧することになり、当該スローアウェイチップ(10)はチップ座(5)の着座面(5a)および2つの拘束面(5b、5c)側に押圧固定される
。ここで、
スローアウェイチップ(10)は、すくい面となる上面(10a)が当該スローアウェイ式正面フライス(1)の回転方向(K)を向き、主切刃(12)となる辺稜部が工具本体(2)の外周面(2a)よりも外周側に突出するとともに前記工具本体(2)の軸心(CL)に略平行に延びるような姿勢でチップ座(5)に固定される
。
【0022】
本スローアウェイ式正面フライス(1)においては、
スローアウェイチップ(10)は
敷板(20)を介してチップ座(5)に取付けられているが、
敷板(20)を省略してチップ座(5)に直に取付けられてもよい
。
【0023】
次に、本スローアウェイ式正面フライス(1)の特徴的な構成について説明する。
図2に例示するようにスローアウェイチップ(10)の軸心(CLt)方向視において、取付け穴(13)の内壁面には、外側に向かって凹みを有する曲線状の凹部(15a、15b)からなる2つのぬすみ部(15A、15B)が形成される
。それぞれのぬすみ部(15A、15B)は前記軸心(CLt)を挟むようにして対向する一対の凹部(15a、15b)から構成され、本スローアウェイ式正面フライス(1)では、それぞれのぬすみ部(15A、15B)の対をなす凹部(15a、15b)の対向する方向(図2中の矢印Aおよび矢印Bの方向)がスローアウェイチップ(10)の辺稜部にほぼ平行になるように配置してあり、互いの前記対向する方向が略直角な関係にある。一方、
スローアウェイチップ(10)の軸心(CLt)直角方向視で、ぬすみ部(15A、15B)、すなわち、それぞれの凹部(15a、15b)は、前記軸心(CLt)に対して略平行に延び、取付け穴(13)の内壁面を当該スローアウェイチップ(10)の上面(10a)および下面(10b)側に開口するように形成されている
。
【0024】
スローアウェイチップ(10)の軸心(CLt)方向視において、
ぬすみ部(15A、15B)を構成する対をなす凹部(15a、15b)は、図4の(c)に示すようにクランプねじ(30)の軸心(CLc)に対して傾斜角(α)が30°で傾斜する方向(矢印X方向)でみたときの前記クランプねじ(30)の頭部(31)の輪郭形状である略楕円形状(図2中の2点鎖線で示す形状)よりも一回り大きく成形されている
。
【0025】
以上に説明した本スローアウェイ式正面フライスにおいて、スローアウェイチップ(10)をチップ座(5)から取外す方法について以下に説明する。チップ座(5)にスローアウェイチップ(10)を取付けた状態(図5参照)からクランプねじ(30)を所定量だけ緩める(図6参照)。その後、当該スローウェイチップ(10)をチップ座(5)の上方へ若干持上げながら、前記クランプねじ(30)の軸心(CLc)に対して当該スローアウェイチップ(10)の軸心(CLt)の傾斜角度(α)がおよそ30°になるまで傾斜させる(図7~図10参照)。このとき、当該スローアウェイチップ(10)の取付け穴(13)に形成した二つのぬすみ部(15A、15B)のうちいずれか一方のぬすみ部(15A)を構成する一対の凹部(15a)の対向する方向(図11中の手前-奧方向)がチップ座(5)の着座面(5a)に対してほぼ平行な関係を保つように当該スローアウェイチップ(10)を傾斜させる。また、クランプねじ(30)を緩める量は、スローアウェイチップ(10)を上記の傾斜角度(α)まで傾斜させたとき、取付け穴(13)の内壁面がクランプねじ(30)の頭部(31)に干渉しない程度の量であり、且つ、雌ねじ穴(41)から抜取れない程度の量である。
【0026】
上述のように
スローアウェイチップ(10)を傾斜させると、図2に示すように、前記一方のぬすみ部(15A)は前記傾斜方向視でクランプねじ(30)の頭部(31)(図2中の2点鎖線で示す)を挿脱し得る程度に一回り大きく形成されていることから、当該スローアウェイチップ(10)を前記傾斜方向に持上げることにより前記頭部(31)が前記ぬすみ部(15A)を通り抜け、当該スローアウェイチップ(10)をチップ座(5)から取外すことができる(図11参照)
。一方、スローアウェイチップ(10)のチップ座(5)への取付け方法は、上記の取外す方法と逆の要領で行えばよい。」
「【図11】
71
90
0001429572000008.jpg
」
「【0027】
上述したとおり、
本発明を適用したスローアウェイ式正面フライス(1)によれば、クランプねじ(30)を工具本体(2)から抜取ることなく所定量緩めることによりスローアウェイチップ(10)をチップ座(5)に着脱することができるので、この着脱作業の作業性向上および迅速化がはかれる
。
【0028】
クランプねじ(30)を工具本体(2)から抜取らずにスローアウェイチップ(10)のコーナーチェンジ
および交換
作業が行える
ことから、クランプねじ(30)の操作を片手作業で行うことが非常に容易になるのにくわえ、前記作業中にクランプねじ(30)を紛失する問題が解消する。
【0029】
本スローアウェイ式正面フライス(1)は、図17に示す従来スローアウェイ式切削工具に比較して以下のような利点がある。すなわち、
本発明のスローアウェイ式正面フライス(1)では、スローアウェイチップ(10)をチップ座(5)から完全に取外してコーナーチェンジするため、前記スローアウェイチップ(10)および前記チップ座(5)に付着した切屑、切削油、異物等を完全に除去でき、再び前記チップ座(5)に取付けたとき、前記スローアウェイチップ(10)の破損や前記チップ座(18)の変形が解消できる
。さらに、前記従来スローアウェイ式切削工具の、チップ(20)のコーナー部(23)を通過させるために形成した工具本体(11)内周側に凹む凹所(19)が不要なので工具本体(11)の強度低下がない。」
「【0033】
図3に例示するようにスローアウェイチップ(10)の下面(10b)中央部に開口する取付け穴(13)の開口部周縁には面取り(16)が形成されてもよい
。そうすれば、前記開口部が拡大し、スローアウェイチップ(10)をクランプねじ(30)に対して傾けるとき、取付け穴(13)とクランプねじ(30)の頭部(31)、円筒部(33)および雄ねじ部(32)との干渉が避けられて当該スローアウェイチップ(10)の着脱作業が容易になる。面取り(16)は、図3に示す角度面取りに限らず曲線状面取りでもよい。面取り(16)の具体的な形状については、取付け穴(13)の内壁面に少なくとも被押圧面(14)およびぬすみ部(15A、15B)が残存するように形成されるとともに、面取りの角度(β)は幾何学的な制約からスローアウェイチップ(10)の軸心(CLt)に対して0°より大きく且つ90°未満の範囲とする。曲線状面取りの場合、前記下面(10b)の開口部周縁における接線と前記軸心(CLt)とのなす角度についても上記の範囲に設定されるのが好ましい。」
【0034】
図示しないが、
スローアウェイチップ(10)の軸心(CLt)直角方向視において、ぬすみ部(15A、15B)の凹部(15a、15b)を、スローアウェイチップ(10)の下面(10b)側に近づくにしたがって外方へ向かって直線状又は曲線状に傾斜させた場合にも上記の効果とほぼ同一の効果を奏する
。その場合、取付け穴(13)の被押圧面(14)の強度を保つために、前記軸心(CLt)に対する凹部(15a、15b)の傾斜角度(曲線状に傾斜させた場合には当該曲線の両端部を結んだ直線の傾斜角度)は0°よりも大きく且つ75°以下の範囲に設定すべきである。
【0035】
本スローアウェイ式正面フライス(1)では、
クランプねじ(30)の頭部(31)の円錐台形状部の円錐角が60°であることから、スローアウェイチップ(10)の着脱作業におけるクランプねじ(30)の軸心(CLc)に対する当該スローアウェイチップ(10)の軸心(CLt)の傾斜角度(α)は、およそ30°としているが、前記頭部(31)の円錐台形状部の円錐角や前記頭部(31)自体の形状の変更に応じて適宜変更可能である
。前記傾斜角度(α)が過小になると、スローアウェイチップ(10)の取付け穴(13)に設けたぬすみ部(15A、15B)の形状が大きくなるため当該スローアウェイチップ(10)の強度が低下するか、もしくは、被押圧面(14)を確保することができなくなるおそれがあり、逆に前記傾斜角度(α)が過大になると、スローアウェイチップ(10)と、クランプねじ(30)の円筒部(33)および雄ねじ部(32)とが干渉するおそれがあることから、前記傾斜角度(α)は15°~75°の範囲の角度とするのが好ましい。
【0036】
ぬすみ部(15A、15B)の形状は、当該スローアウェイチップ(10)をクランプねじ(30)の軸線(CLc)に対して所定の傾斜角度(α)で傾斜した方向で、前記クランプねじ(30)の頭部(31)を挿脱可能とする形状であれば、曲線状、円弧状に限らず
、図13~図16に例示した
コ字状又はU字状のように変更可能である
。
【0037】
以上の実施の形態では、略正方形平板状をなすスローアウェイチップ(10)を用いたスローアウェイ式正面フライス(1)について説明したが、スローアウェイチップ(10)の形状は本実施の形態に限定されず、
クランプねじ(30)を用いてチップ座(5)に固定されるものであれば、例えば多角形平板状又は略円形平板状等の多様な形状のものに広く適用可能である
。また、
切削工具においても、スローアウェイ式正面フライスに限定されず、スローアウェイチップをねじ止めするものであれば、例えば、スローアウェイ式バイト、エンドミル、ドリル、サイドカッタ、ボーリングカッタ、リーマ、ピンミラーカッタ等、あらゆる切削工具に適用可能である
。」
イ 引用文献2に記載されているといえる事項
上記アから、引用文献2には、次の事項が記載されているといえる。
(ア)引用文献2の、段落【0017】、【0019】及び【0021】~【0022】の記載、並びに、図2~3及び図5の図示内容から、引用文献2には、スローアウェイ式正面フライス(1)の工具本体(2)のチップ座(5)に直に取付けられる、スローアウェイチップ(10)についての技術的事項が記載されているといえる。
(イ)引用文献2の、段落【0019】の記載、及び、図2~3の図示内容から、上記(ア)のスローアウェイチップ(10)は、略正方形板状をなすポジチップであり、その上面(10a)がすくい面となり前記上面(10a)の4つのコーナー部(11)と、隣り合うコーナー部(11)の間に延びる4つの辺稜部が主切刃(12)となる、4コーナー使用可能なものであって、少なくともコーナー部(11)及び主切刃(12)は、超硬合金、サーメット等の硬質材料からなることがわかる。
(ウ)引用文献2の、段落【0017】、【0019】~【0022】の記載、並びに、図1~5の図示内容から、上記(ア)のスローアウェイチップ(10)は、工具本体(2)のチップ座(5)の着座面(5a)に、その下面(10b)を当接載置されて、その取付け穴(13)に挿通したクランプねじ(30)をねじ込むことによってチップ座(5)に螺着されることで固定されることが理解され、また、図5の図示内容から、着座面(5a)と下面(10b)とは、平行であるといえる。
したがって、上記(ア)のスローアウェイチップ(10)は、工具本体(2)のチップ座(5)の着座面(5a)に平行な下面(10b)でスローアウェイチップ(10)を固定するために、クランプねじ(30)でスローアウェイチップ(10)を工具本体(2)に固定するための取付け穴(13)が形成されているといえる。
(エ)引用文献2の、段落【0026】の「スローアウェイチップ(10)を傾斜させると、図2に示すように、前記一方のぬすみ部(15A)は前記傾斜方向視で
クランプねじ(30)の頭部(31)
(図2中の2点鎖線で示す)
を挿脱し得る
程度に一回り大きく形成されている」との記載、及び、図5の図示内容から、上記(エ)のスローアウェイチップ(10)の取付け穴(13)は、クランプねじ(30)の頭部(31)を少なくとも部分的に受け入れているといえる。
ウ 引用文献2に記載された技術的事項
上記ア、イから、引用文献2には、スローアウェイチップ(10)に関する、次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「スローアウェイチップ(10)であって、
略正方形板状をなすポジチップであり、その上面(10a)がすくい面となり前記上面(10a)の4つのコーナー部(11)と、隣り合うコーナー部(11)の間に延びる4つの辺稜部が主切刃(12)となる、超硬合金、サーメット等の硬質材料からなる、4コーナー使用可能な形状を有し、
工具本体(2)のチップ座(5)の着座面(5a)に平行な下面(10b)でスローアウェイチップ(10)を固定するために、クランプねじ(30)でスローアウェイチップ(10)を工具本体(2)に固定するための取付け穴(13)が形成され、
前記取付け穴(13)はクランプねじ(30)の頭部(31)を少なくとも部分的に受け入れること。」
(5)本件補正発明と引用発明1との対比
ア 本件補正発明と引用発明1とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明1における「サーメット又は超硬合金物体である金属切削用の切削工具を製造する方法」は、本件補正発明における「切削工具を製造する方法」に相当する。
(イ)引用発明1における「3D印刷」は、本件補正発明における「3D印刷(3DP)」に相当し、また、本件補正発明は、
「前記付加製造方法は、レーザー焼結(SLS)、ステレオリソグラフィー(SLA)、ポリグラフィー、溶融堆積モデリング(FDM)、選択的レーザー溶融(SLM)および3D印刷(3DP)の何れかを含み、」
と、選択肢を含む形式で発明を特定しているから、引用発明1における「3D印刷」は、本件補正発明における上記選択肢から「3D印刷(3DP)」を選択して認定した場合の「付加製造方法」にも相当する。
(ウ)引用発明1では、上記(3)イ(ア)~(ウ)のとおり、メジアン粒径が5-35μmの多孔質サーメット及び/又は超硬合金粒子の粉末とメジアン粒径が3-15μmの稠密サーメット及び/又は超硬合金粒子の粉末とを混合した「粉末混合物」を「形成」して、3D印刷に使用することで、複数の「薄層」を積層するから、引用発明1における「薄層」、「粉末混合物」及び「形成する」は、その構造・機能からみて、本願補正発明における「材料層」、「出発材料」及び「用意する」のそれぞれに相当する。
(エ)引用発明1では、上記(3)イ(エ)のとおり、粉末混合物の薄層を、硬化・焼結することにより、複数の粉末混合物の薄層を結合して、サーメット又は超硬合金物体である金属切削用の切削工具を形成するから、引用発明1における「硬化・焼結して」は、本願補正発明における「結合して」に相当する。
(オ)引用発明1における「インサート」は、金属切削用の切削工具の一種であって、「インサート」の限りにおいて、本願補正発明における「インデックス可能インサート」と一致する。
イ 一致点
上記アから、本件補正発明と引用発明1とは、次の点で一致する。
「切削工具を製造する方法であって、
a)複数の材料層における付加製造方法で使用するための出発材料を用意する工程と、
b)前記出発材料の各材料層を結合してインサートの形状にする工程であって、材料層が配置される、工程と、
を含み、
前記付加製造方法は、レーザー焼結(SLS)、ステレオリソグラフィー(SLA)、ポリグラフィー、溶融堆積モデリング(FDM)、選択的レーザー溶融(SLM)および3D印刷(3DP)の何れかを含み、
前記切削工具はインサートである、
方法。」
ウ 相違点
他方、本件補正発明と引用発明1とは、次の点で相違する(以下「相違点」という。)。
製造される切削工具に関し、
本件補正発明においては、「インデックス可能インサート」であって、「工具本体の支持面に平行な工具基準面で切削工具を固定するために、固定手段で切削工具を工具本体に固定するための凹部が切削工具に形成され」、その「凹部はねじ頭部を少なくとも部分的に受け入れ」る構造を有しているのに対し、
引用発明1においては、「インサート」であって、インデックス可能か不明であり、また、本件補正発明における「凹部」と同様の構造・機能を備える部位が形成されているか不明である点。
(6)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
ア 引用文献2に記載された技術的事項の整理
(ア)引用文献2には、上記(4)ウに示した、次の引用文献2記載の技術的事項が記載されている(再掲)。
「スローアウェイチップ(10)であって、
略正方形板状をなすポジチップであり、その上面(10a)がすくい面となり前記上面(10a)の4つのコーナー部(11)と、隣り合うコーナー部(11)の間に延びる4つの辺稜部が主切刃(12)となる、超硬合金、サーメット等の硬質材料からなる、4コーナー使用可能な形状を有し、
工具本体(2)のチップ座(5)の着座面(5a)に平行な下面(10b)でスローアウェイチップ(10)を固定するために、クランプねじ(30)でスローアウェイチップ(10)を工具本体(2)に固定するための取付け穴(13)が形成され、
前記取付け穴(13)はクランプねじ(30)の頭部(31)を少なくとも部分的に受け入れること。」
(イ)ここで、引用文献2記載の技術的事項における「スローアウェイチップ(10)」は、工具本体(2)のチップ座(5)の着座面(5a)に固定されるものであって、上記(4)アに摘記した事項を踏まえれば、本件補正発明における「切削工具」に相当することは明らかである。
また、当該「スローアウェイチップ(10)」は、「上面(10a)の4つのコーナー部(11)と、隣り合うコーナー部(11)の間に延びる4つの辺稜部が主切刃(12)となる」「4コーナー使用可能な形状を有し」ていることから、本件補正発明における「インデックス可能インサート」に相当する機能・構造を有するものであるといえる。
さらに、引用文献2記載の技術的事項における「工具本体(2)」、「チップ座(5)の着座面(5a)」、「下面(10b)」、「クランプねじ(30)」、及び、「頭部(31)」は、それぞれ、本件補正発明における「工具本体」、「支持面」、「工具基準面」、「固定手段」、及び、「ねじ頭部」に相当するといえる。してみると、「スローアウェイチップ(10)」に形成された「取付け穴(13)」は、「工具本体(2)のチップ座(5)の着座面(5a)に平行な下面(10b)でスローアウェイチップ(10)を固定するために、クランプねじ(30)でスローアウェイチップ(10)を工具本体(2)に固定する」ためのものであって、「クランプねじ(30)の頭部(31)を少なくとも部分的に受け入れる」構造を有しているから、本件補正発明における「凹部」に相当する機能・構造を備えるものといえる。
イ 引用発明1に引用文献2記載の技術的事項を適用することの容易想到性について
(ア)引用発明1と引用文献2記載の技術的事項とは、いずれも、サーメット及び/又は超硬合金からなる「切削工具」に関する技術である点で技術分野が関連する。
(イ)また、引用発明1における「3D印刷」に関して、引用文献1の段落【0002】には、「三次元(3D)印刷又は積層造形は、粉末から三次元物体を印刷することを可能にする有望な製造技術である。」及び「三次元印刷は、従来の製造プロセスでは達成できない複雑な構造物及び物体の製造を可能とするため、有望な製造技術である。」と記載されるとともに、段落【0004】には、サーメット及び超硬合金材料は、高靱性と組み合わさったその高硬度及び高摩耗耐性から、要求の厳しい金属切削用の切削工具等に有用である旨が記載され、さらに、段落【0014】には、「サーメット又は超硬合金物体の三次元印刷は、その目的に適する任意の形状の物体をもたらす」ことが記載され、段落【0054】には、「粉末混合物の層を床上に広げ、印刷バインダーをCADモデルにおいて定義されたパターンに広げた後、印刷バインダーを乾燥させて印刷バインダーの溶媒を除去した。これを、物体の全高が印刷されるまで繰り返した」と記載される(上記(3)ア参照)。
(ウ)そして、引用文献2記載の技術的事項における「スローアウェイチップ(10)」に形成された「取付け穴(13)」は、上記(4)アの段落【0023】~【0026】、図2~3、図5、図11に示されるように、クランプねじ(30)の頭部(31)の挿脱との関係で、複雑な形状を有しているといえる。(エ)してみると、上記(イ)の、引用文献1に記載された、三次元印刷により複雑な構造物及び物体の製造を可能とし、目的に適する任意の形状の物体をもたらすとの具体的な示唆を踏まえれば、引用発明1に係る切削工具を製造する方法により製造するインサートにおいて、引用文献2記載の技術的事項におけるスローアウェイチップ(10)の、インデックス可能とし、さらに凹部を備えたことによる機能と構造を採用することによって、上記相違点に係る本件補正発明を想到することは、当業者であれば容易になし得たことである。
ウ 審判請求書での主張について
(ア)請求人は、審判請求書において、概略、次の点を主張する。
a クランプねじの頭部を少なくとも部分的に受け入れる凹部を有するインデックス可能インサートを、レーザー焼結(SLS)、ステレオリソグラフィー(SLA)、ポリグラフィー、溶融堆積モデリング(FDM)、選択的レーザー溶融(SLM)又は3D印刷(3DP)などの付加製造方法で製造することは、引用文献1~7には開示されていない(審判請求書7ページ)。
b 引用文献1には、本件補正発明における「前記凹部はねじ頭部を少なくとも部分的に受け入れる」との構成、及び、「前記切削工具はインデックス可能インサートである」との構成を開示していない(同8ページ)。
c 引用文献2には、インデックス可能インサート(スローアウェイチップ)を開示するが、付加製造方法でインサートを成形すること、インサートに固定ねじを取り付けるための中心孔を付加製造方法で形成することは開示していない(同8~9ページ)。
d 本件補正発明は、付加製造方法によりインデックス可能インサートを成形することによって、クランプねじの頭部を少なくとも部分的に受け入れる凹部を有する複雑な3次元形状を有するインデックス可能インサートを、経済的に低コストで、容易かつ高精度に成形可能とし、また焼結クラックなどの欠陥の発生を防止できるようにしたものである(同8ページ)。
(イ)しかしながら、当審は、次のとおり、上記(ア)の主張には首肯できない。
a 上記(ア)a~cに関し、本件補正発明と引用発明1とは、上記(ア)bと同旨の「相違点」(上記(5)ウ)で相違すると判断したうえで、上記(6)ア~イのとおり、引用発明1に引用文献2記載の技術的事項を適用することで、相違点に係る本件補正発明を想到することは、当業者であれば容易になし得たことであると判断するものである。特に、上記(6)イに説示したとおり、引用発明1に引用文献2記載の技術的事項を適用することについては、十分な動機付けが存在する。
b また、上記(ア)dに関しても、本件補正発明の奏する作用・効果は、引用発明1及び引用文献2記載の技術的事項により奏する作用・効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
請求人は、本件補正発明により奏する作用・効果に関する具体的な主張として、ねじ頭部を少なくとも部分的に受け入れる凹部は、平底パンヘッドねじ、円錐底皿ねじ、又は隆起皿ねじの頭部の下面に対応して形成された複雑な形状部分を有しており、この部分はプレス成形されたインサートの焼結後に焼結クラックなどの欠陥が発生しやすい部分であり、このような焼結後の欠陥を防止するために付加製造方法を採用することは、従来の技術に基づいて容易に成し得る事項ではない旨を主張する(同9ページ)。
しかしながら、凹部が、平底パンヘッドねじ、円錐底皿ねじ、又は隆起皿ねじの頭部の下面に対応して形成された複雑な形状部分を有する点は、本件補正後の請求項6に対応する構成であって、本件補正発明において特定される事項であるとは認められない。また、引用発明1における「3D印刷」は、上記イ(イ)~(ウ)のとおり、複雑な構造物及び物体の製造を可能とし、目的に適する任意の形状の物体をもたらすものであり、引用文献2記載の技術的事項に係るスローアウェイチップを、引用発明1に係る製造方法にて製造すれば、必然的に、本件補正発明と同程度の作用・効果を奏すると解するのが相当である。
(7)本件補正の適否(独立特許要件)の小括
したがって、本件補正発明は、引用発明1、引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
上記3のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本件出願の請求項1~17に係る発明は、令和5年11月9日提出の手続補正書により補正がされた特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、それぞれ、その請求項1及び2に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
原査定の拒絶の理由のうち、本件発明1~2に対する拒絶の理由は、原査定に示される令和5年4月27日付け拒絶理由通知書を踏まえると、概略、次のとおりである。
(1)理由1(特許法第29条第2項:進歩性)
本件発明1~2は、本件出願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2又は引用文献3に記載された技術的事項、並びに、例えば引用文献7に記載された周知の技術的事項に基づいて、本件出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)引用文献
ア 引用文献1
特表2019-513900号公報(公表日:令和元年5月30日)
イ 引用文献2
特開2006-263856号公報
ウ 引用文献3
特表2002-539958号公報
エ 引用文献7
特開2019-18294号公報(公開日:平成31年2月7日)
(なお、引用文献1~2は、上記第2[理由]3(1)ア~イに示した文献と同じである。)
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献のうち、引用文献1~2に記載された事項、並びに、引用文献1に記載された発明(引用発明1)、引用文献2に記載された技術的事項(引用文献2記載の技術的事項)は、前記第2の[理由]3(3)~(4)に示したとおりである。
本件発明2は、前記第2の[理由]3で検討した本件補正発明から、「出発(材料)」及び「前記付加製造方法は、レーザー焼結(SLS)、ステレオリソグラフィー(SLA)、ポリグラフィー、溶融堆積モデリング(FDM)、選択的レーザー溶融(SLM)および3D印刷(3DP)の何れかを含み」との限定事項を削除したものであり、本件発明1は、さらに「前記切削工具はインデックス可能インサートである」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本件発明1~2の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]3に記載したとおり、引用発明1、及び、引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~2も、引用発明1、及び、引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
以上のとおり、本件発明1~2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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