結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024010210 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本願は、2022年(令和4年)11月17日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 令和3年11月17日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和6年 1月31日 :手続補正書の提出
同年 2月26日付け:拒絶理由通知書
同年 3月25日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月 9日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月12日 :原査定の謄本の送達)
同年 6月19日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 8月 5日付け:前置報告書
同年 9月17日 :上申書の提出
(1) 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年6月19日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
画像光を出射する画像光出射装置と組み合わせて用いられる加飾シートであって、
基材層と、前記基材層上に積層され、前記画像光を透過する意匠層と、前記意匠層上に積層された表面保護層と、を有し、
前記表面保護層は、フィラー粒子を含有し、
前記フィラー粒子は、ミクロンシリカ又はタルクであり、
前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂によって構成される
加飾シート。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Dまでに分説する。また、参考図として、本願の【図13】及び【図4】のそれぞれに部材名を記入したものを掲載する(【図4】よりも【図13】の方が後記(3)において認定する引用発明に近いので、【図13】を先に掲載した。)。
<本願発明の分説>
X 画像光を出射する画像光出射装置と組み合わせて用いられる加飾シートであって、
A 基材層と、前記基材層上に積層され、前記画像光を透過する意匠層と、前記意匠層上に積層された表面保護層と、を有し、
B 前記表面保護層は、フィラー粒子を含有し、
C 前記フィラー粒子は、ミクロンシリカ又はタルクであり、
D 前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂によって構成される
X 加飾シート。
<参考図>
【図13】
62
153
0001429635000001.jpg
【図4】
95
153
0001429635000002.jpg
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本開示は、加飾シート及び加飾シートを有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加飾シートによって装飾された物品にさらなる意匠性を付与するために、加飾シートの背面側に画像光を表示する表示装置を配置し、その加飾シート上に画像光を表示できるようにすることが考えられている。また、加飾シート上に表示される画像光をより鮮明なものとするために、加飾シートを微細孔構造として構成された光透過部を備えるものとすることが考えられている。特許文献1は、このような加飾シート及び加飾シート付き表示装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-75371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、
意匠性及び経済性に優れた加飾シート及び表示装置
を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態による加飾シートは、画像光を出射する画像光出射装置と組み合わせて用いられる加飾シートであって、基材層と、前記基材層上に積層され、前記画像光を透過する意匠層と、前記意匠層上に積層された表面保護層と、を有し、
前記表面保護層は、フィラー粒子を含有する
。前記意匠層は、微細孔構造として形成された開口部を有し、
前記表面保護層は、前記意匠層上に前記開口部を埋めるように積層されていてもよい。前記意匠層は、遮蔽層と絵柄層が順次積層されたものであってもよい。または、前記意匠層は、透過加飾層であってもよい。
...(中略)...
【発明の効果】
【0011】
本開示の一実施形態による加飾シート及び表示装置は、意匠性及び経済性に優れたものとなる。」
「【発明を実施するための形態】
...(中略)...
【0020】
また、加飾シート20は、意匠層22上に、意匠層22の開口部22aを埋めるように、積層された表面保護層23を有する。この表面保護層23の表面は、開口部22aの形成パターンに対応する凹凸23a、23bを有する。さらに、この表面保護層23は、フィラー粒子231が添加されたものとなっている。このような表面保護層23の構成が、本実施形態の加飾シート20の特徴の1つとなっている。
...(中略)...
【0060】
(表面保護層)
表面保護層23は、加飾シート20の表面を保護するために設けられている層であり、加飾シート20の最表層に形成される。表面保護層23は、透明な材料からなる。
【0061】
表面保護層23は、好ましくは、耐摩耗性及び耐傷性を有するハードコート層として構成される。表面保護層23の材料は、そのハードコート性能及び形成の容易性などの観点から、電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。すなわち、表面保護層23の材料は、電子線硬化型樹脂又は紫外線硬化型樹脂などの電離放射線硬化型樹脂であることが好ましい。
...(中略)...
【0080】
前述のとおり、本実施形態の加飾シート20は、意匠層22上に、意匠層22の開口部22aを埋めるように積層された表面保護層23を有する。この点、従来の加飾シート20は、例えば、図8で示すように、意匠層22の開口部22aを埋めるように積層された透明樹脂層26と、その透明樹脂層26上に積層された表面保護層23と、を有するものとなっている。」
「【図8】
67
153
0001429635000003.jpg
」
「【0081】
本開示の開示者らは、研究の結果、
意匠層22上に、透明樹脂層26を積層することなく、表面保護層23を直接積層したものであっても、さらに特定の構成を付与することによって、実用に適したものとなることを見出した。
【0082】
本開示の開示者らは、
意匠層22上に表面保護層23を直接積層すると、表面保護層23の表面は、開口部22aの形成パターンに対応する凹凸23a、23bを有するものになることを確認した。
ここで、その凹部23aは、開口部22aが形成されている領域に対応する。また、その凸部23bは、その他の領域、つまり、開口部22aが形成されていない領域に対応する。
【0083】
そして、本開示の開示者らは、この凹凸23a、23bの存在によって、高い光沢度を有する加飾シート20の作製が困難になっていることを見出した。その一方で、本開示の開示者らは、表面保護層23にフィラー粒子231を添加することによって、意匠性に優れた適度なマット感を有する加飾シート20を作製できることを見出した。
つまり、
本開示の開示者らは、表面保護層23の表面の凹凸23a、23bと表面保護層23に添加されたフィラー粒子231との組み合わせによって、加飾シート20に意匠性に優れた適度なマット感を付与できることを見出した。
【0084】
さらに、本開示の開示者らは、
表面保護層23にフィラー粒子231を添加することによって、加飾シート20の背面に液晶ディスプレイなどのドットマトリックスディスプレイを配置したときのモアレの発生を低減できることを見出した。
【0085】
このように、本実施形態の加飾シート20の表面保護層23は、フィラー粒子231を有するものとなっている。フィラー粒子231の形状は、真球に近いものが好ましい。フィラー粒子231は、塗膜にした際に、均一に分布し、透過率が著しく低下することなく、着色が強くならないものが好ましい。
【0086】
フィラー粒子231としては、無機系と有機系の粒子がある。無機系粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素などの粒子が挙げられる。一方、有機系粒子としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。
【0087】
フィラー粒子231の形状としては、特に制限はないが、例えば、球状、楕円体、多面体、鱗片形などが挙げられる。フィラー粒子231の形状は、透過光の異常散乱を抑制し、視認時の異方性をなくす観点から、球状であることが好ましく、真球に近いことがより好ましい。また、真球に近い粒子を得やすいことから、有機系粒子の方が、好ましい。一方で、後述の鉛筆硬度を向上させるという観点からは、無機系粒子が好ましい。
【0088】
フィラー粒子231の粒径は、2μm以上が好ましい。フィラー粒子231の粒径が2μm以上であると、表面保護層23内においてフィラー粒子231が均一に分散できるとともに、適切なマット感を付与できる。また、フィラー粒子231の粒径は、6μm以下が好ましい。フィラー粒子231の粒径が6μm以下であると、観察者がフィラー粒子231を視認してしまうことを抑制でき、加飾シート20を透過する画像光Lと観察者に視認される加飾シート20の意匠との両方の質が向上できる。また、フィラー粒子231が表面保護層23内に適切に保持され、フィラー粒子231の脱落が抑制できるとともに、表面の平滑性が向上する。
【0089】
ここで、フィラー粒子231の粒径は、表面保護層23の凹部23aに存在するフィラー粒子231を、光学顕微鏡にて、加飾シート20に対して鉛直方向から透過観察し、そこで観測されるフィラー粒子231の長径の長さを100点計測したとき、その上下限各10点ずつ除いた80点の平均値として算出される値をいうものとする。また、実用上、フィラー粒子231の粒径にばらつきが生じるのは避けられないので、すべてのフィラー粒子231の粒径が上述の範囲にある必要はなく、その一部、例えば20%以内のフィラー粒子231が上述の範囲から外れるものであってもよい。
...(中略)...
【0100】
以上をまとめると、本実施形態の加飾シート20は、基材層21と、基材層21上に積層され、微細孔構造として形成された開口部22aを有する意匠層22と、意匠層22上に開口部22aを埋めるように積層された表面保護層23と、を有する。そして、その表面保護層23は、その表面に意匠層22の開口部22aの形成パターンに対応する凹凸23a、23bを有するとともに、フィラー粒子231を含有する。
【0101】
このような加飾シート20は、適度なマット感を有し、意匠性に優れたものとなっている。また、このような加飾シート20は、低コストで製造することができ、経済性に優れたものとなっている。また、このような加飾シート20は、背面にドットマトリックスディスプレイを配置したときのモアレの発生が抑えられたものとなっている。
【0102】
次に、本実施形態の加飾シート20の製造方法について説明する。
【0103】
図9Aから図9Eは、本実施形態の加飾シート20の作製プロセスの一例を示す縦断面図である。
【0104】
加飾シート20の製造では、まず、図9Aに示すように、転写ベースシート60を用意し、その転写ベースシート60上にプライマー層223、絵柄層222及び遮蔽層221を順次積層する。転写ベースシート60は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムである。」
「【図9A】
29
153
0001429635000004.jpg
」
「【0105】
次に、図9B及び図9Cに示すように、バッカー層25を兼ねた基材層21を構成するフィルムを用意し、転写ベースシート60上に積層された遮蔽層221、絵柄層222及びプライマー層223を、そのフィルム上に転写する。これにより、基材層21、25上に遮蔽層221、絵柄層222及びプライマー層223が積層される。ここで、意匠層22は、遮蔽層221、絵柄層222及びプライマー層223を有するものとなっている。」
「【図9B】
52
153
0001429635000005.jpg
【図9C】
43
143
0001429635000006.jpg
」
「【0106】
次に、図9Dに示すように、意匠層22に開口部22aを形成する。開口部22aは、例えば、レーザー技術を用いて形成される。レーザー技術を用いる形成方法では、意匠層22上の開口部22a24が形成されるべき位置にレーザーを照射して、レーザーが照射された位置の意匠層22を除去することによって、開口部22aを形成する。」
「【図9D】
42
141
0001429635000007.jpg
」
「【0107】
次に、図9Eに示すように、意匠層22上に、表面保護層23を、意匠層22の開口部22aを埋めるように、積層する。この表面保護層23の積層は、例えば、フィラー粒子231が添加された電離放射線硬化型樹脂のインクを意匠層22上に塗布した後、電離放射線を照射して、電離放射線硬化型樹脂を硬化させることによりなされる。」
「【図9E】
62
153
0001429635000008.jpg
」
「【0108】
この点、例えば、図8に示すような従来の加飾シート20の作製プロセスにおいては、透明樹脂層26を構成する樹脂フィルムを熱ラミネートによって積層した後、その透明樹脂層26上に表面保護層23を形成する。しかし、
この熱ラミネートの工程は、高速で処理することが困難である。一方、本実施形態の加飾シート20の作製プロセスにおける電離放射線硬化型樹脂のインクの塗布及び硬化の工程は、高速に処理することが可能である。そのため、本実施形態の加飾シート20は、経済性に優れたものとなっている。
」
「【図8】
67
153
0001429635000009.jpg
」
「【0109】
以上のプロセスにより、本実施形態の加飾シート20を製造できる。
...(中略)...
【0113】
以下、具体例を用いて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこの具体例に限定されるものではない。
...(中略)...
【0148】
最後に、加飾シート20の背面に液晶ディスプレイを配置したときのモアレの発生について評価した結果を示す。
【0149】
サンプル31~37として、それぞれ表面保護層23のフィラー粒径、P/V比及び塗工量の異なる加飾シート20を用意した。サンプル31~37のフィラー粒径、P/V比及び塗工量は、後述の表5に記載のとおりである。サンプル38として、表面保護層23を形成していない加飾シート20を用意した。サンプル39として、表面保護層23を形成することに替えて、意匠層22上にアクリル樹脂フィルム熱ラミネートした加飾シート20を用意した。サンプル31~39のその他の構成は、サンプル1~8と同様である。
【0150】
このサンプル31~39について、液晶ディスプレイの上に配置してモアレの有無を観察した。
【0151】
表5は、サンプル31~39のモアレの有無の観察結果を示したものである。モアレが全く観察されなかった場合を「A」評価とし、モアレが僅かに観察された場合を「B」評価とし、モアレが明確に観察された場合を「C」評価とし、強いモアレが観察された場合を「D」評価とした。
【0152】
【表5】
74
115
0001429635000010.jpg
【0153】
表5から、表面保護層23にフィラー粒子231を添加することによって、モアレの発生が抑えられることが確認できる。
【0154】
以上で説明したように、本実施形態の加飾シート20及び表示装置10は、意匠性及び経済性に優れたものとなる。
【0155】
次に、加飾シート20の表面保護層23の鉛筆硬度の向上のために、フィラー粒子231として、硬質フィラーを用いる例について説明する。鉛筆硬度は、JIS K5600-5-4:1999で規定される鉛筆硬度試験で測定されたときの硬度である。
【0156】
本開示の開示者は、研究の結果、フィラー粒子231として、ナノシリカ、ミクロンシリカ、サブミクロンシリカ又はタルク(滑石)を用いることによって、加飾シート20の成形性を損なうことなく、加飾シート20の表面保護層23の鉛筆硬度を向上させることができることを見出した。
【0157】
さらに、本開示の開示者は、フィラー粒子231としてナノシリカを用いることによって、加飾シート20を、鉛筆硬度が高いものとするとともに、ヘイズ値が低く、グロス値が高いものにできることを見出した。つまり、ナノシリカを用いた加飾シート20は、光沢感に優れたものになる。
【0158】
また、本開示の開示者は、フィラー粒子231としてミクロンシリカ又はタルクを用いることによって、加飾シート20を、鉛筆硬度が高いものとするとともに、ヘイズ値が高く、グロス値が低いものにできることを見出した。つまり、ミクロンシリカ又はタルクを用いた加飾シート20は、マット感に優れたものになる。
...(中略)...
【0163】
ミクロンシリカは、ミクロンオーダーの大きさを有するシリカの粒子である。ミクロンシリカは、架橋性基で修飾されたものであってもよい。架橋性基で修飾することにより、表面保護層23の硬度や耐日焼け止め性を向上させることができる。本開示のミクロンシリカの粒径は、1μm以上、10μm以下である。本開示のミクロンシリカとして、球状ミクロンシリカを用いることができる。球状ミクロンシリカは、球状の形状を有するミクロンシリカである。ミクロンシリカの粒径は、2μm以上、6μm以下が好ましい。粒径が2μm以上のものを用いることで、十分な分散性が得られるとともに、適度なマット感を付与できる。また、粒径が6μm以下のものを用いることで、フィラー粒子231が視認されにくくなると共に、表面保護層23からのフィラー粒子231の脱落の発生を抑えることができる。
...(中略)...
【0165】
タルクは、含水珪酸マグネシウムを主成分とする層状粘度鉱物である。本開示のタルクの粒径は、1μm以上、20μm以下である。タルクの粒径は、2μm以上、6μm以下が好ましい。粒径が2μm以上のものを用いることで、十分な分散性が得られるとともに、適度なマット感を付与できる。また、粒径が6μm以下のものを用いることで、フィラー粒子231が視認されにくくなると共に、表面保護層23からのフィラー粒子231の脱落の発生を抑えることができる。
...(中略)...
【0180】
【表6】
89
143
0001429635000011.jpg
【0181】
【表7】
36
145
0001429635000012.jpg
【0182】
表6から、フィラー粒子23として、球状ナノシリカ、異形ナノシリカ、鎖状ナノシリカ、ミクロンシリカ、タルクを用いることによって、成形性が損なわれることなく、鉛筆硬度が向上したものとなることが確認できる。
【0183】
表7から、フィラー粒子23として、球状ナノシリカ、異形ナノシリカ、鎖状ナノシリカを用いた加飾シート20は、ヘイズ値が低く、グロス値が高いものとなることが確認できる。つまり、表7から、球状ナノシリカ、異形ナノシリカ又は鎖状ナノシリカを用いた加飾シート20は、光沢感に優れたものになることが確認できる。また、
表7から、フィラー粒子23として、ミクロンシリカ、タルクを用いた加飾シート20は、ヘイズ値が高く、グロス値が低いものとなることが確認できる。つまり、表7から、ミクロンシリカ、タルクを用いた加飾シート20は、マット感に優れたものになることが確認できる。
【0208】
次に、
開口部22aを有する意匠層22に替えて、透過加飾層28によって構成された意匠層22を有する加飾シート20の例
について説明する。透過加飾層28は、開口部を有しないが、画像光出射装置40からの画像光Lを透過する加飾層である。図13は、このような透過加飾層28によって構成された意匠層22を有する加飾シート20を示す縦断面図である。
【0209】
本開示の開示者は、研究の結果、
意匠層22が透過加飾層28によって構成される加飾シート20であっても、加飾シート20の表面保護層23に本開示のフィラー粒子231を含有させることによって、上述の加飾シート20と同様の効果が得られることを見出した。
つまり、
本開示の開発者は、意匠層22が透過加飾層28によって構成される加飾シート20において、表面保護層23にフィラー粒子231を添加することによって、加飾シート20に意匠性に優れた適度なマット感を付与できることを見出した。
【0210】
そのため、本開示の加飾シート20は、基材層21と、基材層21上に積層された透過加飾層28と、透過加飾層28上に積層された表面保護層23と、を有し、表面保護層23がフィラー粒子231を含有するものであってもよい。
【0211】
つまり、本開示の加飾シート20は、画像光Lを出射する画像光出射装置40と組み合わせて用いられる加飾シート20であって、基材層21と、基材層21上に積層され、画像光Lを透過する意匠層22と、意匠層22上に積層された表面保護層23と、を有し、表面保護層23は、フィラー粒子231を含有するものであってもよい。好ましい表面保護層23及びフィラー粒子231の構成は、前述の加飾シート20と同様である。
【0212】
透過加飾層28は、前述の絵柄層222と同様の手法を用いて形成することができる。この際に、顔料、染料等の着色剤の濃度や、透過加飾層28の膜厚を適正化することにより、所望の透過率とすることかできる。この透過加飾層28を有する加飾シート20は、画像光出射装置40からの画像光Lを透過するものである。そのため、透過加飾層28を有する加飾シート20の全光線透過率は、5%以上であることが好ましい。また、透過加飾層28の意匠性の観点から、透過加飾層28を有する加飾シート20の全光線透過率は、40%以下であることが好ましい。
【0213】
このような加飾シート20は、適度なマット感によって、透過加飾層28の表面に意図せずに生じる凹凸による意匠性の悪化が抑えられたものとなる。また、このような加飾シート20は、適度なマット感によって、背面に配置される画像光出射装置40の画像光出射面41の境界が目立ちにくいものとなる。
【0214】
このように、本開示の加飾シート20の意匠層22は、画像光Lを透過するものであることを特徴とする。このような意匠層22の例として、前述のとおり、開口部22aを有する意匠層22と、透過加飾層28によって構成された意匠層22と、が挙げられる。前述の開口部22aを有する意匠層22の場合は、開口部22aの領域のみにおいて画像光Lを透過する。本開示の加飾シート20における「画像光を透過する意匠層」は、このように開口部22aの領域のみにおいて画像光Lを透過する意匠層も含まれる。つまり、「画像光を透過する意匠層」は、意匠層22全体で見たときに画像光Lを透過するものであればよく、局所的に画像光Lを透過しない領域を含むものであってもよい。」
原査定の拒絶の理由における、本願発明に対する理由3(進歩性の欠如)のうちの引用文献2を主たる引用文献とする拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
理由3(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献2に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
<主たる引用文献>
引用文献2.特開2018-189769号公報
<周知技術を示す文献>
引用文献3.特開2004-149782号公報
引用文献4.特開2017-154462号公報
(1) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された引用文献2(特開2018-189769号公報には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(2)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
ア 【特許請求の範囲】の【請求項1】
「【請求項1】
光源側から投射された映像光を観察側に透過して映像を表示する透過型スクリーンであって、
絵柄を有する絵柄層と、
前記絵柄層の光源側の面に配置された補色層と、
光拡散機能を有する層と
を備え、
前記補色層は、前記絵柄層の絵柄が呈する色に対して補色となる色を呈する絵柄を有し、
前記絵柄層の絵柄および前記補色層の絵柄は、平面視上重なるよう対応し、
前記絵柄層の前記補色層側の面と、前記補色層の前記絵柄層側の面との間の距離が20μm以下である透過型スクリーン
。」
イ 段落【0001】~【0019】
「【0001】
本発明は、一方の面側から投射された映像光を他方の面側に透過して映像を表示する透過型スクリーン、上記透過型スクリーンを備えた背面投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像や画像を表示する表示装置の1つとして、リアプロジェクション表示装置がある。リアプロジェクション表示装置は、背面側から投射された映像光を透過させる透過型スクリーンを備えており、背面投射型表示装置とも呼ばれる。この透過型スクリーンは、例えば特許文献1~4に開示されているように、映像光源から投射された映像光を映像光源が備えられる側とは反対側に出射させることで、観察者が視認できる映像を表示することができる。
【0003】
近年、透過型スクリーンに映像光を投射していない場合にも、観察側から所定の絵柄を表示するという技術が提案されている。当該技術により、透過型スクリーンの意匠性の向上を図ることができる。例えば、特許文献1、2には、透過型スクリーンの観察側の面に所定の絵柄を表示するための絵柄層が配置された構成が開示されている。また、透過型スクリーンの観察側に配置される絵柄層には、光源側に遮光性を有する遮光層が形成され、また、平面視上多数の開口部が形成されることが開示されている。絵柄層の平面視上多数の開口部が形成されることにより、光源側から映像光を投射した際に、当該開口部から映像光を透過して観察側に映像を表示することが可能となる。
【0004】
上述のような透過型スクリーンは、光源側から映像光を投射した際に、絵柄層に形成された開口部を介して観察側へ映像光を透過することができる。そのため、観察者は、観察側へ透過された映像光により所定の映像を視認することが可能となる。したがって、映像光により表示される映像の視認性を向上するためには、観察側へ透過される映像光の光量を増やす必要がある。観察側へ透過される映像光の光量を増やす方法としては、例えば、絵柄層に形成される開口部を大きく設計する方法が挙げられる。一方、絵柄層に形成される開口部が大きくなるに伴い、光源側から映像光を投射していないときに観察される絵柄層による絵柄の視認性が低下する場合がある。
【0005】
特許文献4では、絵柄層の光源側に、絵柄層の絵柄が呈する色に対して補色となる色を呈する補色層を設ける技術が開示されている。絵柄層の光源側に補色層を設けることで、光源側から映像光を投射した際に、絵柄層から出射される映像光が、絵柄層の絵柄が呈する色に着色され、映像光により表示される映像の視認性が低下するといった課題を解消することができる。したがって、光源側から投射される映像光を、絵柄層の全面から観察側へ透過することが可能となり、絵柄層に大きな開口部を形成しなくとも、観察側へ透過される映像光の光量を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-37818号公報
【特許文献2】特開2007-524115号公報
【特許文献3】特開2013-213883号公報
【特許文献4】特開2003-43575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4には、光源側から補色層、光拡散層および絵柄層が順に積層された透過型スクリーンが開示されている。そこで、本発明の発明者等は、上記構成を有する透過型スクリーンの視認性について検討を行った。その結果、補色層と絵柄層との間の距離が増えるに伴い、映像光により表示される映像の視認性が低下してしまうという課題を発見した。本発明の発明者等は、上記課題について検討を重ねたところ、上記課題は、補色層と絵柄層との間の距離が増えると、補色層から絵柄層へと透過する映像光が、スクリーン面に対して垂直ではなく斜め方向に入射することにより、補色層の補色パターンと絵柄層の絵柄パターンとの間で位置ずれが生じ、対応した補色層の領域と絵柄層の領域とを映像光が透過しないことに起因するという新たな知見を得た。本発明は、このような新たな知見に基づいてなされたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、絵柄層の光源側の面に補色層を有する透過型スクリーンにおいて、映像光により表示される映像の視認性を抑制することが可能な透過型スクリーンを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光源側から投射された映像光を観察側に透過して映像を表示する透過型スクリーンであって、絵柄を有する絵柄層と、上記絵柄層の光源側の面に配置された補色層と、光拡散機能を有する層とを備え、上記補色層は、上記絵柄層の絵柄が呈する色に対して補色となる色を呈する絵柄を有し、上記絵柄層の絵柄および上記補色層の絵柄は、平面視上重なるよう対応し、上記絵柄層の上記補色層側の面と、上記補色層の上記絵柄層側の面との間の距離が20μm以下である透過型スクリーンを提供する。
【0010】
本発明によれば、絵柄層の補色層側の面と、補色層の絵柄層側の面との間の距離を20μm以下とすることで、映像光により表示される映像の視認性の低下を抑制することができる。また、補色層が、絵柄層の絵柄が呈する色に対して補色となる色を呈する絵柄を有することにより、補色層および絵柄層を透過する映像光のホワイトバランスを保つことができる。
...(中略)...
発明の効果
【0019】
本発明は、絵柄層の光源側の面に補色層を有する透過型スクリーンにおいて、映像光により表示される映像の視認性を抑制することが可能な透過型スクリーンを提供することができるという効果を奏する。」
ウ 段落【0021】、【0022】
「【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の透過型スクリーンおよび背面投射型表示装置について説明する。
【0022】
A.透過型スクリーン
本発明の透過型スクリーンは、光源側から投射された映像光を観察側に透過して映像を表示する部材であって、絵柄を有する絵柄層と、上記絵柄層の光源側の面に配置された補色層と、光拡散機能を有する層とを備え、上記補色層は、上記絵柄層の絵柄が呈する色に対して補色となる色を呈する絵柄を有し、上記絵柄層の絵柄および上記補色層の絵柄は、平面視上重なるよう対応し、上記絵柄層の上記補色層側の面と、上記補色層の上記絵柄層側の面との間の距離が20μm以下である部材である。」
エ 段落【0025】~【0046】、【図1】
「【0025】
図1(a)は、本発明の透過型スクリーンを用いた背面投射型表示装置の一例を示す概略模式図である。また、図1(b)は、図1(a)に示す透過型スクリーン100の概略断面図である。本発明の透過型スクリーンは、図1(a)に例示するように、透過型スクリーン100の一方の面側から、映像光源10から投射された映像光L10を他方の面側に透過して映像を表示することができる。他方の面側から観察者20が透過型スクリーン100を観察することで、観察者20は、当該映像を視認することができる。」
「【図1】
111
75
0001429635000013.jpg
」
「【0026】
図1(a)、(b)に示すように、本発明の
透過型スクリーン100は、映像光を投射していない場合にも、観察側から所定の絵柄を表示することができる。具体的には、観察側から照射された外光L20が、透過型スクリーン100における絵柄層1に反射することで、観察者20は、絵柄層1により表示される絵柄を視認することができる
。
【0027】
本発明の透過型スクリーン100は、図1(b)に示すように、絵柄を有する絵柄層1と、絵柄層1の光源側の面に配置された補色層2とを備える。また、絵柄層1の補色層2側の面と、補色層2の絵柄層1側の面との間の距離tが20μm以下である。さらに、図1(b)に示す透過型スクリーン100は、光拡散機能を有する層6が、絵柄層1と一体として形成されている例である。なお、光拡散機能を有する層が絵柄層と一体として形成されることについては、後述するため、ここでの説明は省略する。
...(中略)...
【0042】
また、本発明においては、絵柄層の光源側の面に補色層を有し、当該補色層が、絵柄層の絵柄が呈する色に対して補色となる色を呈する絵柄を有することにより、次のような効果を奏する。すなわち、従来、透過型スクリーンに対して光源側から映像光を投射していないときに、観察者に所定の絵柄を表示するための絵柄層を設ける技術が提案されている。このとき、絵柄層には、映像光を観察側へ透過するための開口部が設けられ、また、絵柄層の光源側には遮光層を設け、映像光が絵柄層を透過しない設計となる。これは、映像光が絵柄層を透過した際に、絵柄層が有する絵柄や色合いにより、映像光が表示しようとする映像の視認性が低下してしまうといった問題の発生を抑制することを目的としている。そのため、映像光を観察側へ透過するためには、開口部として所定の大きさを確保する必要があるが、開口部が大きすぎると、絵柄層が表示しようとする絵柄の視認性が低下するという問題が生じる。一方、開口部が小さすぎると、映像光を観察側へ十分に透過することができず、映像光の利用効率が低下するという問題が生じる。
【0043】
これに対し、本発明においては、
絵柄層の光源側の面に補色層を設けて、映像光を補色層および絵柄層を透過させることで、映像光の利用効率の低下を抑制することができる。また、補色層が、絵柄層の絵柄が呈する色に対して補色となる色を呈する絵柄を有することにより、補色層および絵柄層を透過する映像光のホワイトバランスを保つことができる。したがって、
上述した従来の透過型スクリーンのように、
映像光が表示しようとする映像の視認性の低下を抑制することができる
。(後略)」
オ 段落【0048】~【0057】
「【0048】
1.補色層
本発明における補色層は、絵柄層の光源側の面に配置される部材である。また、補色層は、絵柄層の絵柄が呈する色に対して補色となる色を呈する絵柄を有する。さらに、補色層が有する絵柄は、絵柄層の絵柄と平面視上重なるように対応する。
...(中略)...
【0052】
本発明における補色層が有する絵柄は、絵柄層の絵柄と平面視上重なるように対応するため、絵柄層の絵柄と同じ絵柄となる。したがって、後述する絵柄層の絵柄に応じて適宜選択される。ここで、本発明における「絵柄」としては、例えば、パターン、線画、文字、図形、記号等が挙げられる。また、本発明においては、補色層が単色を呈している場合にも、絵柄を有することとする。
...(中略)...
【0056】
補色層の厚みは、補色層により表示される絵柄や、透過型スクリーンの用途や大きさ等に応じて、適宜調整することができる。
補色層の
具体的な
厚みとしては、
例えば、
1μm以上20μm以下の範囲内
であることが好ましく、中でも、1.5μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。
(後略)」
カ 段落【0058】~【0064】
「【0058】
2.絵柄層
本発明における絵柄層は、絵柄を有する層である。
【0059】
本発明における絵柄層の絵柄は、上述した補色層の絵柄と平面視上重なるように対応するため、補色層の絵柄と同じ絵柄となる。したがって、絵柄層の絵柄については、上記「1.補色層」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
【0060】
また、本発明における
絵柄層の
透過率、材料、
厚み
等
については、上記「1.補色層」の項に記載した内容と同様とすることができる
ため、ここでの記載は省略する。
(後略)」
キ 段落【0065】~【0080】、【図5】
「【0065】
3.光拡散機能を有する層
本発明においては、光拡散機能を有する層を有する。なお、本発明における光拡散機能を有する層は、独立した層として形成されていても良く、絵柄層や補色層等と一体として形成されていても良い。以下、光拡散機能を有する層が独立した層として形成されている場合、光拡散機能を有する層を、光拡散層と称して説明する場合がある。」
「【図5】
104
134
0001429635000014.jpg
」
「【0066】
本発明における光拡散機能を有する層には、次のような態様が挙げられる。例えば、図5(a)に示すように、独立した光拡散層6として、絵柄層1の観察側の面に配置された態様や、図5(b)に示すように、独立した光拡散層6として、透明基材4の光源側の面に配置された態様が挙げられる。さらには、図5(c)に示すように、光拡散機能を有する層6が絵柄層1と一体として形成された態様等が挙げられる。図5(c)に示す態様は、例えば、絵柄層1の観察側の面が、所定の表面粗さを有しており、絵柄層1が光拡散機能を有する態様である。具体的には、絵柄層1として擦りガラスを用いることが好ましい。
...(中略)...
【0068】
さらに、本発明においては、図5(a)に示すように、絵柄層1の観察側の面に独立した光拡散層6が配置される場合、
光拡散層6は、表面保護層としての機能を有して
いても良い。すなわち、光拡散層が、後述する表面保護層と一体して形成されていても良い。なお、表面保護層については、後述する「6.表面機能層」の項に記載するため、ここでの記載は省略する。
【0069】
以下、光拡散機能を有する層が、独立した層、すなわち光拡散層である場合について説明する。
...(中略)...
【0071】
本発明における
光拡散層は、
例えば、
粒子状の光拡散材を透明樹脂中に分散することで得ることができ
る。なお、本発明においては、透明樹脂を用いた場合について説明するが、透明樹脂の代わりに擦りガラスを含むガラスを用いても良く、さらには、固体に限らず液体や液晶等の流動体を用いることも可能である。
...(中略)...
【0075】
粒子状の光拡散材とは、例えば、球状、扁平状
、不定形状、星型形状、金平糖形状等
の形状の光拡散材を包含する
。また、粒子状の光拡散材は、例えば、中空粒子、コアシェル状粒子であっても良い。
【0076】
粒子状の光拡散材の平均粒子径は、例えば、1μm以上50μm以下の範囲内である
ことが好ましく、中でも、5μm以上30μm以下の範囲内であることが好ましい。粒子状の光拡散材の平均粒子径が上記下限を有することにより、光拡散機能を十分に発揮することができ、光拡散層を映像光が透過して視認される映像の視認性の低下を抑制することができる。また、粒子状の光拡散材の平均粒子径が上記上限を有することにより、光拡散層の光透過性の低下を抑制し、ギラツキによるコントラストの低下を抑制することができる。
...(中略)...
【0079】
光拡散層は、所定のヘイズ値を有することが好まし
い。光拡散層の具体的なヘイズ値としては、
例えば、60%以下の範囲内であ
ることが好ましい。光拡散層のヘイズ値が上記範囲内であることにより、透過型スクリーンに映像光を投射した際に表示される映像がぼやけるといった視認性の低下を抑止することができる。なお、光拡散層のヘイズ値は、例えば、JIS K7105:1981に準拠して測定することができる。
【0080】
本発明における光拡散層の形成方法としては、所望の光拡散性能を有する光拡散層を形成することができる方法であれば特に限定されず、一般的に公知の方法を採用することができる。例えば、透明基材上に、パターン状の開口部を有する金属薄膜層を形成した後、当該金属薄膜層を覆うように、粒子状の光拡散材を透明樹脂へ分散した塗料を、グラビアコート、ロールコート、ビードコート、スプレイコート、インクジェット等公知の方法を用いて塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。」
ク 段落【0082】~【0087】
「【0082】
5.光遮蔽層
本発明においては、絵柄層と補色層との間に、
半遮蔽機能を有する光遮蔽層を有し
ていても良い。光遮蔽層は、例えば、図1(b)の符号3で示す部材である。
【0083】
ここで、
「半遮蔽機能」とは、絵柄層と補色層との間に、半遮蔽機能を有する光遮蔽層を配置することで、透過型スクリーンを観察側から観察したときに、絵柄層により表示される絵柄が、補色層が呈する色の影響を受けてしまい、絵柄層の絵柄の視認性が低下するのを抑制することができるとともに、光源側から映像光を投射したときには、当該映像光を完全に遮蔽することなく、観察側へ透過することができるような機能を指
す。
【0084】
本発明における光遮蔽層は、例えば絵柄層により表示される絵柄の色合いが淡色である場合に、好適である。絵柄層により表示される絵柄の色合いが淡色である場合、絵柄が透けるのを抑制するためには、絵柄層の厚みを厚くする必要がある。一方、絵柄層の厚みが厚くなり過ぎると、透過型スクリーンの厚み自体が厚くなってしまう傾向にある。このような場合に、光遮蔽層を設けることで、例えば、絵柄層の厚みを厚くすることなく、絵柄が透けるのを抑制することが可能となる。
【0085】
半遮蔽機能を有する光遮蔽層の光透過性は、例えば、全光線透過率が、30%以上99%以下の範囲内であることが好ましく、中でも50%以上95%以下の範囲内であることが好ましく、特に70%以上90%以下の範囲内であることが好ましい。光遮蔽層の全光線透過率が上記範囲内であることにより、所望の半遮蔽機能を発揮することができ、光遮蔽層を設けることによる上述した効果を十分に得ることが可能となる。なお、光遮蔽層の全光線透過率は、例えば、JIS K7361-1:1997に準拠する方法により測定することができる。
【0086】
光遮蔽層の材料としては、補色層の影響により、絵柄層により表示される絵柄の視認性が低下するのを抑制することができるような材料であることが好ましい。光遮蔽層の材料としては、例えば、着色材を含有する樹脂材料が挙げられる。なお、光遮蔽層に用いられる着色材の色合いは、絵柄層により表示される絵柄の色合いに応じて適宜選択することができ、特に限定されない。本発明においては、中でも、光遮蔽層が白色を呈することが好ましい。絵柄層により表示される絵柄の色合いに影響を与えることなく、当該絵柄の視認性を向上させることができるからである。なお、具体的な材料については、一般的に公知の着色材であり、例えば光拡散層に用いることができる着色材を適用することができるため、ここでの記載は省略する。さらに、樹脂材料としては、例えば、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0087】
光遮蔽層の厚みは、所望の半遮蔽機能を発揮することができる程度の厚みであることが好ましい。また、光遮蔽層の厚みは、光遮蔽層が呈する色合い等に応じて適宜調整することができる。
光遮蔽層の
具体的な
厚みは、
例えば、
20μm以下である
ことが好ましく、中でも10μm以下であることが好ましく、特に5μm以下であることが好ましい。」
ケ 段落【0088】~【0095】
「【0088】
6.透明基材
本発明の透過型スクリーンは、上述した絵柄層および補色層を支持するための透明基材を有していても良い。透明基材は、透過型スクリーンの光源側に配置しても良く、あるいは観察側に配置しても良いが、通常は、例えば図1(b)に示すように、透明基材4を透過型スクリーン100の光源側に配置する。
【0089】
本発明における透明基材は、透過型スクリーンに映像光を投射した際に、映像光の透過を妨げない程度の透明性を有することが好ましい。具体的な透明基材の透明性としては、例えば、可視光透過率が80%以上であることが好ましく、中でも90%以上であることが好ましい。なお、透明基材の可視光透過率については、例えば、JIS K7361-1に準拠したプラスチック-透明基材の全光透過率の試験方法により測定することができる。
【0090】
本発明における透明基材の材料としては、上述したような所定の可視光透過率を有する材料を選択することが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリルスチレン樹脂等の樹脂フィルム、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等のガラスが挙げられる。なお、本発明における透明基材は、上述した材料の他にも、必要に応じて紫外線吸収剤、熱線吸収剤等を含んでいても良い。
【0091】
本発明における透明基材の厚みは、上述した光拡散層および光学機能層を支持することができる程度の厚みを有することが好ましい。具体的な
透明基材の厚みとしては、例えば、0.1mm以上4.0mm以下の範囲内である
ことが好ましく、中でも1.0mm以上2.0mm以下の範囲内であることが好ましい。透明基材の厚みが上記範囲であることにより、所望の支持性を得ることができ、また、透明基材の厚みが厚すぎることにより迷光が生じて二重像が生じるといった不具合の発生を抑制することができる。
(後略)」
コ 段落【0096】~【0100】、【図6】
「【0096】
7.表面機能層
本発明の透過型スクリーンは、必要に応じて表面機能層を有していても良い。本発明においては、例えば、図6(b)に示すように、表面機能層5を透過型スクリーン100の観察側の最外層に配置することができる。」
「【図6】
92
120
0001429635000015.jpg
」
「【0097】
本発明における表面機能層が有する機能としては、例えば、ハードコート機能、防眩機能、反射防止機能、帯電防止機能、紫外線吸収機能、防汚機能等の少なくとも1つの機能を指す。本発明においては、
表面機能層がハードコート機能を有する表面保護層であることが好ましい
。
【0098】
本発明における表面保護層は、所定の硬度を有することが好ましい。具体的な硬度としては、例えば、JIS K 600-5-4(1994)で規定される鉛筆硬度試験で「HB」以上の硬度であることが好ましい。表面保護層が所望のハードコート機能を発揮することができるからである。
【0099】
本発明における表面保護層の材料としては、例えば、所望のハードコート機能を発揮し、本発明の透過型スクリーンを保護することができるような材料であることが好ましい。具体的な
表面保護層の材料は、
例えば、
電離放射線硬化性樹脂
または熱硬化性樹脂
を含む
ことが好ましい。ここで、電離放射線硬化性樹脂は、少なくとも電離放射線硬化性樹脂モノマー、電離放射線硬化性樹脂オリゴマー、またはそれらの混合物を含む樹脂をいう。なお、本発明における表面保護層にその他の機能を付与する場合には、上記材料の他にも、表面保護層に適宜添加剤等を含有することができる。
【0100】
本発明における表面保護層の厚みは、例えば、所望のハードコート機能を発揮できる程度の厚みであることが好ましく、本発明の透過型スクリーンの用途等に応じて適宜調整することができる。具体的な
表面保護層の厚みとしては、例えば、0.05μm以上2μm以下の範囲内とする
ことができる。」
(2) 図面から読み取れる事項の認定
引用文献1の【0065】~【0068】、【0082】及び【0088】等の記載を参照しつつ、【図5】(a)を観察すると、次の技術事項(以下「認定事項1」という。)が見て取れる。
<認定事項1>
観察側から順に、光拡散層6、絵柄層1、光遮蔽層3、補色層2、透明基材7の順に積層されていること。
【図5】(a)
28
98
0001429635000016.jpg
(3) 引用発明の認定
前記(1)に摘記した引用文献2の記載事項及び前記(2)において認定した認定事項1を総合すると、引用文献2には、【図5】(a))に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「光源側から投射された映像光を観察側に透過して映像を表示する透過型スクリーンであって、
絵柄を有する絵柄層と、
前記絵柄層の光源側の面に配置された補色層と、
光拡散機能を有する層と
を備え、
前記補色層は、前記絵柄層の絵柄が呈する色に対して補色となる色を呈する絵柄を有し、
前記絵柄層の絵柄および前記補色層の絵柄は、平面視上重なるよう対応し、
前記絵柄層の前記補色層側の面と、前記補色層の前記絵柄層側の面との間の距離が20μm以下であり、(【請求項1】)
映像光を投射していない場合にも、観察側から所定の絵柄を表示することができるものであって、具体的には、観察側から照射された外光L20が、透過型スクリーン100における絵柄層1に反射することで、観察者20は、絵柄層1により表示される絵柄を視認することができるものであり、(【0026】)
絵柄層の光源側の面に補色層を設けて、映像光を補色層および絵柄層を透過させることで、映像光の利用効率の低下を抑制することができるものであり、また、補色層が、絵柄層の絵柄が呈する色に対して補色となる色を呈する絵柄を有することにより、補色層および絵柄層を透過する映像光のホワイトバランスを保つことができるものであり、したがって、映像光が表示しようとする映像の視認性の低下を抑制することができるものであり、(【0043】
観察側から順に、光拡散層6、絵柄層1、光遮蔽層3、補色層2、透明基材7の順に積層されており、(認定事項1)
補色層及び絵柄層の厚みは、1μm以上20μm以下の範囲内であり、(【0056】、【0060】)
光拡散層6は、ハードコート機能を有する表面保護層としての機能を有しており、(【0068】、【0097】)
表面保護層の厚みは、0.05μm以上2μm以下の範囲内であり、(【0100】)
光拡散層は、粒子状の光拡散材を透明樹脂中に分散したものであり、(【0071】)
粒子状の光拡散材は、球状又は扁平状の形状の光拡散材であり、(【0075】)
光拡散層は、60%以下の範囲内のヘイズ値を有するものであり、(【0079】)
表面保護層の材料は、電離放射線硬化性樹脂を含み、(【0099】)
光遮蔽層は半遮蔽機能を有し、(【0082】)
「半遮蔽機能」とは、絵柄層と補色層との間に、半遮蔽機能を有する光遮蔽層を配置することで、透過型スクリーンを観察側から観察したときに、絵柄層により表示される絵柄が、補色層が呈する色の影響を受けてしまい、絵柄層の絵柄の視認性が低下するのを抑制することができるとともに、光源側から映像光を投射したときには、当該映像光を完全に遮蔽することなく、観察側へ透過することができるような機能を指し、(【0083】)
光遮蔽層の厚みは、20μm以下であり、(【0087】)
透明基材は絵柄層および補色層を支持するためのものであり、(【0088】)
透明基材の厚みは、0.1mm以上4.0mm以下の範囲内である、(【0091】)
透過型スクリーン」
(1) 引用文献3、8~10の記載事項
ア 引用文献3に記載された事項
原査定において引用され、本願の優先日前に発行された文献である特開2004-149782号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「【0001】
本発明は、ガラス充填材を分散し透明性に優れしかも紫外線吸収能に由来する優れた耐光性を有する熱可塑性樹脂組成物及びそれからなる成形体に関する。本発明の熱可塑性樹脂組成物及びそれからなる成形体は従来にない優れた耐紫外線性を有するので、各種プロジェクタやディスプレイ等の光学部材用途に利用される。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
プロジェクタ
やディスプレイ等の光学部材用途の熱可塑性樹脂組成物においては、更に高 度の耐紫外線性及び透明性が望まれるが、未だ満足しうるものが達成されていないのが現状である。
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた透明性を有し、しかも紫外線吸収性や耐光性を有する熱可塑性樹脂組成物及びそれからなる成形体を提供することに存する。」
「【0050】
本発明の好ましい熱可塑性樹脂組成物は、(1)熱可塑性樹脂、及び(2)チタン、亜鉛、セリウム並びにアンチモンから選ばれる少なくとも1種の元素を含有するガラス充填材を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、空気中600°Cにて灰化させた残渣粉体の最表面が実質的に酸化珪素組成である熱可塑性樹脂組成物と表現することもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、透明性及び/又は耐光性の要求される光学用途に好適に使用されるが、光学用途の中でも、液晶表示装置(特に液晶テレビ)の光拡散板や反射板の耐光性(耐黄変性)を改善する用途にも好適に用いられる。この用途では、熱可塑性樹脂組成物のフィルムやシートが光拡散や反射の機能を有する必要がある。そのためには、
無機フィラーを含有させることにより、
熱可塑性樹脂組成物中を通過する
光を散乱させて拡散させたり、白色度(つまり反射性)を向上させるのが好ましい
。かかる用途では、例えばPET樹脂等、半結晶性だが結晶化度や延伸配向制御で実質的に透明感を有するフィルムを与えるような樹脂も好適に使用される。
【0051】
このような
無機フィラーとしては、
硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、
タルク
、カオリン、マイカ、粘土鉱物、合成マイカ、フュームドシリカ、ジルコニア等の
安定な白色粉体が使用される
。その含有量は、通常、熱可塑性樹脂組成物中に、0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%である。好ましい無機フィラーは硫酸バリウムやフュームドシリカなどの水溶性がほとんどないものである。
【0052】
反射能を向上させるには、金属光沢を有する無機フィラー(例えば金属薄片など)を添加することも可能である。また、特に光拡散性を向上させるために、熱可塑性樹脂組成物のフィルムやシートを延伸して、無機フィラーやガラス充填材と樹脂マトリクスとの界面にボイド(空隙)を生じさせることも可能である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を著しく阻害しない限りにおいて、公知の各種安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤など)、顔料、染料、蛍光増白剤、ブルーイング剤等の色調調整剤、帯電防止剤、離型剤、滑剤等の添加剤を含有してもよい。」
イ 引用文献8に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2010-250288号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の記載がある。なお、引用文献の参照番号を、前置審査を含めた審査手続と審判手続において共通のものとするため、本文献については「引用文献8」の表記とした。以下、他の文献についても同様である。
「【0015】
本発明の
透過型スクリーン
は、前方散乱性フィルム側から投影を行ってもよいし、黒色層側から投影を行ってもよい。なお、黒色層を視認者側とした場合、黒色層の表面で外光が散乱することによりコントラストが低下することから、黒色層側から投影を行い、
前方散乱性フィルムを視認者側として用いることが好ましい。
」
「【0018】
光散乱層は、少なくとも球状微粒子と透明バインダーからなるものであり、プロジェクタから投影された光を、前方の視認者側に散乱するものである。
ここで、透明バインダーとしては、透明であるとともに球状微粒子を均一に分散保持できるものであればよく、固体に限定されず液体や液晶などの流動体であってもよい。但し、光散乱層単体でスクリーンの形状を維持するためには、ガラスや高分子樹脂であることが好ましく、取り扱い性や分散安定性の観点から
高分子樹脂であることが望ましい。
」
「【0020】
高分子樹脂としては、光散乱層の光透過性が失われるものでなければ特に限定されず、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、
電離放射線硬化性樹脂などを用いることができる。
」
「【0021】
透明バインダー中に含有させる球状微粒子としては、シリカ、
アルミナ、
タルク
、ジルコニア、酸化亜鉛、二酸化チタン
などの無機系の微粒子
、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、シリコーン樹脂などの有機系の微粒子
を使用することができる。
」
「【0023】
球状微粒子の粒子径としては、平均粒径で1~10μmであることが好ましく、2~6μmであることがより好ましい。平均粒径をこのような範囲とすることにより、光散乱層に入射した光のうち後方に散乱する光を少なくすることができ、映像の輝度を十分なものとすることができる。
」
「【0042】
次に
本発明の透過型スクリーンを用いたリアプロジェクションモニタについて説明する。
リアプロジェクションモニタとは、液晶パネルやCRTなど、パーソナルコンピュータやテレビの画像を表示する表示装置の表示画像を、プロジェクタからの反射ミラーを介して透過型スクリーンに投影するようにした装置である。
本発明のリアプロジェクションモニタは、外光の散乱を抑えコントラストが良好な透過型スクリーンを用いるため、明るい場所で映像を投映する用途に適している。
」
ウ 引用文献9に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2018-169520号公報(以下「引用文献9」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「【0019】
図1は1つの形態を説明するための透過型投射システム1の斜視図である。図1には、透過型投射システム1が使用されている姿勢における向きを併せて表した。図2は、透過型投射システム1を側面から見た図で、ここに具備される
透過型加飾スクリーン10
は鉛直方向に沿った厚さ方向断面で表している。」
「【0027】
光拡散粒子を分散させる透明樹脂としては、光透過性を有するとともに光拡散粒子を保持できるものであればよく特に限定されることはない。これには例えばポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、
電離放射線硬化性樹脂などを挙げることができる。
」
「【0028】
光拡散粒子としては、
例えば
シリカ、
アルミナ、
タルク
、ジルコニア、酸化亜鉛、二酸化チタン
などの無機粒子
、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、シリコーン樹脂の有機粒子
を挙げることができる。
」
「【0029】
光拡散粒子の平均粒径は、6μm以上10μm以下であることが好ましく、より好ましくは8μm以上である。当該平均粒径を6μm以上とすることにより、充分な光拡散性を得ることができる。
」
エ 引用文献10に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2020-040279号公報(以下「引用文献10」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「【0086】
光拡散層5に含有される光拡散材は、光拡散層5に求められる光拡散性等に応じて適宜選択することができる。光拡散材としては、
例えば、プラスチックビーズ等の有機粒子、
シリカ等の無機粒子等が挙げられる。
プラスチックビーズとしては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル-スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、塩化ビニルビーズ等が挙げられるが、これらのうちアクリルビーズが好ましい。光拡散材は、気泡であってもよい。光拡散材の平均粒径は、光拡散材の光反射性、バインダー樹脂中での分散性等を考慮して適宜調整することができる。
光拡散材の平均粒径は6μm以上であることが好ましい。光拡散材の平均粒径が6μm以上であることにより、十分な光拡散性を得ることができる。
」
「【0090】
光拡散層5は着色されていないことが好ましい。光拡散層5は、第2主面S2に光が照射された際に第1主面S1側から視認される第2装飾層4の意匠の色調に影響を与えるため、光拡散層5が着色されていると、所望の意匠を表現することが難しくなる。
光拡散層5は、通常、シリカ等の微粒子を分散状態で含有し、これにより、光拡散効果を発現する。
」
「【0135】
第1光透過層7のヘイズは、第1光透過層7に求められるグロス(艶)に応じて適宜調整することができる。求められるグロスが高い場合、ヘイズはゼロに近い方が好ましい。求められるグロスが低い場合(マット感が求められる場合)、ヘイズは例えば70%以上85%以下に調整される。マット感が求められる場合、第1光透過層7のヘイズは、第1光透過層7に含まれるマット剤の量及び粒子径の選定により適宜調整される。」
「【0137】
第1光透過層7は、例えば、樹脂層である。樹脂層としては、
例えば、熱可塑性樹脂層、
硬化樹脂層等が挙げられる。
」
「【0139】
硬化樹脂層は、硬化性樹脂組成物の硬化物により形成された層である。硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂を含有する組成物である。硬化性樹脂組成物としては、例えば、熱硬化性樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物、
電離放射線硬化性樹脂を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物等が挙げられる
。」
「【0147】
第1光透過層7は光拡散性を有していてもよい。第1光透過層7に光拡散材を配合することにより、第1光透過層7に光拡散性を付与することができる。
光拡散材に関する説明は上記と同様であるので省略する。」
「【0200】
化粧部材20は、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材(例えば、表示器のディスプレイ部材、警告ランプのカバー部材、ルームランプのカバー部材、フットランプのカバー部材、イルミネーションランプのカバー部材、車幅灯のカバー部材、ヘッドライトのカバー部材、テールランプのカバー部材、ウインカーのカバー部材等);住宅用又は商業用施設の内装材又は外装材(例えば、案内板、広告、看板等のディスプレイ部材;窓、ショーウインドウ等の採光器具;壁、扉、仕切り、浴室、寝室、ドアホン等に埋め込まれる表示器のディスプレイ部材);キッチン、机、椅子、棚、間仕切り、タンス、ゲタ箱、ベッド、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ、洗濯機、テレビ、照明器具等の家具又は家電の筐体あるいはこれらの家具又は家電に埋め込まれる表示器のディスプレイ部材;避難経路表示器、火災報知機、警告灯等の表示器の筐体等の、様々な用途に使用することができる。」
(2) 技術常識の認定
ア 技術常識1の認定
前記(1)アからウに摘記した引用文献3、8、9の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。)
<技術常識1>
「プロジェクタの光拡散層に用いる樹脂に分散させ光を散乱させるための微粒子として、タルクを用いることができること。」
イ 技術常識2の認定
前記(1)イからエに摘記した引用文献8~10の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識2」という。)
<技術常識2>
「プロジェクタの光拡散層に用いる樹脂に分散させ光を散乱させるための微粒子として、粒径がミクロンオーダーのシリカを用いることができること。」
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点(加飾シート)
(ア) 構成Xは、「画像光を出射する画像光出射装置と組み合わせて用いられる加飾シート」の発明であることを特定するものである。
(イ)引用発明は「光源側から投射された映像光を観察側に透過して映像を表示する透過型スクリーン」の発明であるから(請求項1の冒頭)、引用発明が本願発明にいうところの「画像光を出射する画像光出射装置と組み合わせて用いられる」との要件を満たすことは明らかである。
(ウ) 引用発明における「透過型スクリーン」は、「映像光を投射していない場合にも、観察側から所定の絵柄を表示することができるものであって、具体的には、観察側から照射された外光L20が、透過型スクリーン100における絵柄層1に反射することで、観察者20は、絵柄層1により表示される絵柄を視認することができるものであ[る]」から(【0026】)、引用発明は本願発明にいうところの「加飾」されたものであるといえる。
(エ)a 引用発明における「透過型スクリーン」は、次の(a)から(e)までの構成を備える。
(a) 「観察側から順に、光拡散層6、絵柄層1、光遮蔽層3、補色層2、透明基材7の順に積層されて[いる]」こと。(認定事項1)
(b) 「補色層及び絵柄層の厚みは、1μm以上20μm以下の範囲内であ[る]」こと。(【0056】、【0060】)
(c) 「光遮蔽層の厚みは、20μm以下であ[る]」こと。(【0087】)
(d) 「透明基材の厚みは、0.1mm以上4.0mm以下の範囲内である」こと。(【0091】)
(e) 光拡散層6は、ハードコート機能を有する表面保護層としての機能を有しており、表面保護層の厚みは、0.05μm以上2μm以下の範囲内である」こと。(【0068】、【0097】、【0100】)
b このような引用発明が本願発明にいうところの「シート」であるといえることは明らかである。
(オ) 前記(イ)から(エ)までの検討結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「画像光を出射する画像光出射装置と組み合わせて用いられる加飾シート」の発明である点。
イ 構成Aの観点(基材層と意匠層と表面保護層を有する点)
(ア) 構成Aは、「基材層と、前記基材層上に積層され、前記画像光を透過する意匠層と、前記意匠層上に積層された表面保護層と、を有[する]」ことである。
(イ)a 引用発明における「透明基材」は、本願発明における「基材層」に相当する。
b(a) 引用発明における「絵柄層」及び「光遮蔽層」は、本願発明における「意匠層」に相当する。
(b) そして、次の点を踏まえると、引用発明における「絵柄層」及び「光遮蔽層」は、本願発明にいうところの「画像光を透過する」ものであるといえる。
引用発明は、「絵柄層の光源側の面に補色層を設けて、映像光を補色層および絵柄層を透過させることで、映像光の利用効率の低下を抑制することができるものであり、また、補色層が、絵柄層の絵柄が呈する色に対して補色となる色を呈する絵柄を有することにより、補色層および絵柄層を透過する映像光のホワイトバランスを保つことができるものであり」(【0043】)、「光遮蔽層は半遮蔽機能を有[する]」(【0082】)、すなわち「光源側から映像光を投射したときには、当該映像光を完全に遮蔽することなく、観察側へ透過することができるような機能」を有する点。
(c) また、引用発明は「観察側から順に、光拡散層6、絵柄層1、光遮蔽層3、補色層2、透明基材7の順に積層されて[いる]」から(認定事項1)、引用発明における「絵柄層」及び「光遮蔽層」は、透明基材上に積層されたたものであるといえる。
(d) そうすると、引用発明における「絵柄層」及び「光遮蔽層」は、本願発明における「前記基材層上に積層され、前記画像光を透過する意匠層」に相当する。
c 引用発明における「光拡散層」は、「ハードコート機能を有する表面保護層としての機能を有して[いる]」から(【0068】、【0097】)」、本願発明における「表面保護層」に相当する。
(ウ) 前記(イ)の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明は、構成Aの点である次の点において一致する。
「基材層と、前記基材層上に積層され、前記画像光を透過する意匠層と、前記意匠層上に積層された表面保護層と、を有[する]」点。
ウ 構成Bの観点(表面保護層がフィラー粒子を含有する点)
(ア) 構成Bは、「前記表面保護層は、フィラー粒子を含有[する]」ことである。
(イ) 引用発明における「光拡散層」は、「粒子状の光拡散材を透明樹脂中に分散したものであ[る]」ところ(【0071】)引用発明における「粒子状の光拡散材」は、本願発明における「フィラー粒子」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、構成Bの点である次の点において一致する。
「前記表面保護層は、フィラー粒子を含有[する]」点。
エ 構成Cの観点(フィラー粒子がミクロンシリカ又はタルクである点)
(ア) 構成Cは、「前記フィラー粒子は、ミクロンシリカ又はタルクであ[る]」ことである。
(イ) 引用発明においては、「粒子状の光拡散材は、球状又は扁平状の形状の光拡散材であ[る]」こと(【0075】)の特定はあるものの、具体的な材料の限定はない。
(ウ) そうすると、本願発明は引用発明と、構成Cの点である次の点において相違する。
フィラー粒子が、
本願発明においては、「ミクロンシリカ又はタルクであ[る]」のに対して、
引用発明においては、「球状又は扁平状の形状の光拡散材であ[る]」こと(【0075】)の特定はあるものの、具体的な材料の限定はない点。
オ 構成Dの観点(表面保護層は電離放射線硬化型樹脂で構成される点)
(ア) 構成Dは、「前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂によって構成される」ことである。
(イ) 引用発明においては、「表面保護層の材料は、電離放射線硬化性樹脂を含[む]」から(【0079】)、本願発明と引用発明は、構成Dの点である次の点において一致する。
「前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂によって構成される」点。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「画像光を出射する画像光出射装置と組み合わせて用いられる加飾シートであって、
基材層と、前記基材層上に積層され、前記画像光を透過する意匠層と、前記意匠層上に積層された表面保護層と、を有し、
前記表面保護層は、フィラー粒子を含有し、
前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂によって構成される
加飾シート」の発明である点。
イ 相違点
フィラー粒子が、
本願発明においては、「ミクロンシリカ又はタルクであ[る]」のに対して、
引用発明においては、「球状又は扁平状の形状の光拡散材であ[る]」こと(【0075】)の特定はあるものの、具体的な材料の限定はない点。
(1) 相違点について
前記5(2)アにおいて「技術常識1」として認定したように、「プロジェクタの光拡散層に用いる樹脂に分散させ光を散乱させるための微粒子として、タルクを用いることができること」は、技術常識である。
また、前記5(2)イにおいて「技術常識2」として認定で示したように、「プロジェクタの光拡散層に用いる樹脂に分散させ光を散乱させるための微粒子として、粒径がミクロンオーダーのシリカを用いることができること」も、技術常識である。
したがって、引用発明における「扁平状」又は「球状」の形状の「光拡散材」として、タルク又は粒径がミクロンオーダーのシリカは、当業者にとっては自明の選択肢にすぎず、いずれかを選択して前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとっては設計の域を超えるものではなく、容易に想到し得たものである。
(2) 総合評価
前記(1)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとっては設計上の事項にすぎず、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(1) 請求人の主張についてその1
ア 請求人は、審判請求書及び上申書において、本願発明が進歩性を有することの根拠として、引用文献2の段落【0099】には、表面保護層を電離放射線硬化型樹脂によって構成できることが記載されているが、ここでいう表面保護層は、光拡散層6とは別に設けられる表面保護層であって、当該記載は、表面保護層と一体して形成された光拡散層6(段落【0068】参照)を電離放射線硬化型樹脂によって構成できるといっているわけではないから、引用文献2には、表面保護層がフィラー粒子を含有し、その表面保護層が電離放射線硬化型樹脂によって構成されることは記載されていないと主張する。
イ 上記請求人の主張について検討すると、引用文献2の【0068】には「絵柄層1の観察側の面に独立した光拡散層6が配置される場合、光拡散層6は、表面保護層としての機能を有していても良い」点が記載され、かつ、「表面保護層については、後述する「6.表面機能層」の項に記載する」と記載されている。そして、「6.表面機能層」の【0099】に、表面保護層の材料として電離放射線硬化性樹脂が記載されている。
そうすると、これらの記載から、当業者は、絵柄層の観察側の面に独立した光拡散層が配置される場合、光拡散層は表面保護層としての機能を有していても良く、その表面保護層の材料として電離放射線硬化性樹脂が用いられることを認識できるのであるから、前記請求人の主張は採用できない。
(2) 請求人の主張についてその2
ア また、請求人は審判請求書及び上申書において、本願発明が進歩性を有することの根拠として、引用文献3、4では、無機フィラーの例として、多数の種類の無機材料と共に、シリカ、タルク等が挙げられているが、それは、考えられる多数の無機フィラーのうちの一つとして挙げられたものにすぎず、鉛筆硬度の観点から無機のフィラーが好ましいことや、成形性の観点から無機フィラーの中でも特にミクロンシリカ又はタルクが好ましいことを示す記載は存在しないと主張する。
イ 上記請求人の主張について検討すると、まず、シリカやタルクが樹脂よりも硬質であることは自明であるから、例えばフィラーを含有していないものやウレタンフィラーを含有するものに比較して、鉛筆硬度の評価が高くなることは、当業者にとって予測及び発見が困難な効果であるとはいえない。
また、「プロジェクタの光拡散層に用いる樹脂に分散させ光を散乱させるための微粒子として」、「タルク」や「粒径がミクロンオーダーのシリカ」を用いることができることは技術常識であるから(技術常識1、2参照)、成形性が損なわれないことは、当業者にとって予測及び発見が困難な効果であるとはいえない。
したがって、請求人の前記主張は、前記7(2)の結論を左右するものではない。
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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