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Trademark Appeal Case

特許訂正の適否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023700403
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7163410号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7163410号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7163410号の請求項1~7の発明に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)10月31日(優先権主張 平成30年11月30日(以下「優先日」という。))を国際出願日とするものであって、令和4年10月21日にその特許権の設定登録がなされ、同年同月31日にその特許掲載公報が発行されたものであって、その後の手続の経緯は、次のとおりである。

令和5年 4月20日 特許異議申立人 小松一枝及び前田知子(以

下「申立人」という。)による全請求項に係

る特許に対する特許異議の申立て

同年11月15日付け 取消理由通知書

令和6年 1月19日 意見書及び訂正請求書(特許権者)

同年 2月14日付け 訂正請求があった旨の通知

同年 3月11日 意見書(申立人)

同年 7月30日付け 取消理由通知書(決定の予告)

同年 9月30日 意見書及び訂正請求書(特許権者)

同年10月10日付け 訂正請求があった旨の通知

同年11月11日 意見書(申立人)

令和7年 1月21日付け 取消理由通知書(決定の予告)

同年 3月28日 意見書及び訂正請求書(特許権者)

同年 5月27日付け 訂正請求があった旨の通知

なお、令和7年5月27日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、申立人からの応答はなかった。

また、令和6年1月19日提出の訂正請求書による訂正の請求、及び令和6年9月30日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否

1 訂正の内容

令和7年3月28日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、次の訂正事項1~8のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に

「前記樹脂(B)中の主たる樹脂に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比が、0.01以上2.0未満である」とあるのを、

「前記樹脂(B)中の主たる樹脂に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比が、

0.17

以上2.0未満であ

り、

前記有機溶剤(D)の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対し、0.01質量%~5.0質量%である、

インクジェットインク組成物。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~7も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項3に

「前記樹脂(B)中の主たる樹脂に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比が、0.01以上1.0以下である」とあるのを、

「前記樹脂(B)中の主たる樹脂に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比が、

0.17

以上1.0以下である」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4~7も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3

明細書の段落【0144】に

「以下のようにして、樹脂粒子の水分散液として、アクリル1の水分散液、アクリル2の水溶液、オレフィン1の水分散液、アクリルAの水分散液、ウレタン1の水分散液、及びポリエステル1の水分散液を、それぞれ準備した。ここで、各分散液中の樹脂は樹脂粒子であり、樹脂粒子(即ち、アクリル1、オレフィン1、アクリルA、ウレタン1、及びポリエステル1)は、樹脂(B)中の主たる樹脂からなる樹脂粒子である。水溶液中のアクリル2は、樹脂(B)中の主たる樹脂である。」とあるのを、

「以下のようにして、樹脂粒子の水分散液として、アクリル1の水分散液、アクリル2の水溶液、オレフィン1の水分散液

、ウ

レタン1の水分散液、及びポリエステル1の水分散液を、それぞれ準備した。ここで、各分散液中の樹脂は樹脂粒子であり、樹脂粒子(即ち、アクリル1、オレフィン1

、ウ

レタン1、及びポリエステル1)は、樹脂(B)中の主たる樹脂からなる樹脂粒子である。水溶液中のアクリル2は、樹脂(B)中の主たる樹脂である。」に訂正する。

(4)訂正事項4

明細書の段落【0148】の記載を削除する。

(5)訂正事項5

明細書の段落【0170】において、「〔比較例1~5〕」とあるのを、

「〔比較例1

、3

~5〕」に訂正する。

(6)訂正事項6

明細書の段落【0172】の【表2】において、比較例2の行を削除する。すなわち、訂正前の【表2】

182

54

0001429961000001.jpg

を次のように訂正する。

184

53

0001429961000002.jpg

(7)訂正事項7

明細書の段落【0176】において、

「その結果、インクを除去し難くなったためと考えられる。インクにおける|SP

C

-SP

B

|が10.0超である比較例2では、インク除去性は良好であったものの、画像の耐擦性が低下した。この理由は、|SP

C

-SP

B

|が10.0超であることにより、非浸透性基材上におけるインクの造膜性が不足し、その結果、画像の強度が不足したためと考えられる。窒素原子を含む有機溶剤(C)に代えて、」とあるのを、

「その結果、インクを除去し難くなったためと考えられる

。窒

素原子を含む有機溶剤(C)に代えて、」に訂正する。

2 一群の請求項、及び一群の請求項と明細書の訂正との関係について

本件訂正前の請求項1~7において、請求項2~7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。そうすると、本件訂正前の請求項1~7は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、それらに対応する本件訂正後の請求項1~7も一群の請求項である。

また、訂正事項3~7による明細書についての訂正は、一群の請求項1~7の全てに関係するものであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項で準用する同法126条4項に適合する。

3 訂正要件についての判断

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的

訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「前記樹脂(B)中の主たる樹脂に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比」について、その下限値を「0.01」から「0.17」に減縮するとともに、「有機溶剤(D)の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対し、0.01質量%~5.0質量%である」ことを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項1は、本件明細書の段落【0171】の【表1】の実施例1~6及び実施例8~17の記載に基いて、「前記樹脂(B)中の主たる樹脂に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比」について、その下限値を「0.17」とするとともに、同【0072】の「有機溶剤(D)の合計含有量は、インクの全量に対し、好ましくは0.01質量%~5.0質量%である」との記載に基づいて「有機溶剤(D)の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対し、0.01質量%~5.0質量%である」との限定を加えるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。

また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことが明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的

訂正事項2は、本件訂正前の請求項3の「前記樹脂(B)中の主たる樹脂に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比」について、その下限値を「0.01」から「0.17」に減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項2は、明細書の段落【0171】の【表1】の実施例1~6及び実施例8~17の記載に基いて、「前記樹脂(B)中の主たる樹脂に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比」について、その下限値を「0.17」とするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。

また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことが明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。

(3)訂正事項3~7について

訂正事項3~7は、特許請求の範囲の発明の範囲を不明瞭にしている「比較例2」に関係する記載を、明細書から削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。

(4)独立特許要件について

本件訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~7に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項により読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。

4 訂正の適否についての小括

以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び同第3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。

したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明

本件訂正は、前記第2のとおり認められたので、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明7」ともいう。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】

非浸透性基材上への画像の記録に用いられ、

水(A)と、

樹脂(B)と、

沸点が250°C以下であり、下記式(C1)を満足する、窒素原子及び水酸基を含む有機溶剤(C)と、

下記式(D1)を満足する、窒素原子を含まない有機溶剤(D)と、

を含有し、

前記樹脂(B)中の主たる樹脂に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比が、0.17以上2.0未満であり、

前記有機溶剤(D)の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対し、0.01質量%~5.0質量%である、

インクジェットインク組成物。

|SP

C

-SP

B

|≦10.0 ・・・ 式(C1)

式(C1)中、SP

B

は、樹脂(B)中の主たる樹脂のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、SP

C

は、前記有機溶剤(C)のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、|SP

C

-SP

B

|は、SP

C

とSP

B

との差の絶対値を表す。

|SP

D

-SP

CM

|≦5.0 ・・・ 式(D1)

式(D1)中、SP

CM

は、前記有機溶剤(C)中の主たる有機溶剤のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、SP

D

は、前記有機溶剤(D)のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、|SP

D

-SP

CM

|は、SP

D

とSP

CM

との差の絶対値を表す。

【請求項2】

前記有機溶剤(C)の沸点が、200°C以下である請求項1に記載のインクジェットインク組成物。

【請求項3】

前記樹脂(B)中の主たる樹脂に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比が、0.17以上1.0以下である請求項1又は請求項2に記載のインクジェットインク組成物。

【請求項4】

前記|SP

C

-SP

B

|が、5.0以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。

【請求項5】

前記樹脂(B)が、樹脂粒子を含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。

【請求項6】

更に、着色剤を含有する請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。

【請求項7】

請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出することにより、非浸透性基材上に前記インクジェットインク組成物を付与して画像を記録する工程と、

前記インクジェットヘッドにおける前記インクジェットインク組成物の吐出面に付着した前記インクジェットインク組成物を除去する工程と、を含む画像記録方法。」

第4 特許異議の申立て、取消理由等の概要

1 特許異議の申立て

(1)申立人は、後記(3)の証拠方法により、後記(2)を申立理由とする特許異議の申立てをした。以下、証拠として提出された甲第1号証~甲第7号証を、甲1~甲7という。

甲1~甲6は本件特許に係る出願の優先日前に公開されたものである。甲7は、優先日後にScifinderで検索した結果を表示したものであるが、その表示内容の主たる部分は、本件特許の優先日前にも表示されていたものである。

(2)申立理由

ア 申立理由1

本件発明1~6は、甲1~4の何れかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る発明の特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

イ 申立理由2

本件発明7は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る発明の特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

ウ 申立理由3

本件発明1~7は、甲1~4の何れかに記載された発明、及び甲1~7の何れかに記載された事項に基いて本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)証拠方法

甲1:特開2017-170651号公報

甲2:国際公開第2010/123064号

甲3:特許第6424413号公報

甲4:特許第6111747号公報

甲5:沖津俊直、「溶解性理論における溶解性パラメータ(SP)の役割 第1報,モル引力定数からSPの決定方法」、日本接着学会誌、1993年、vol.29、No.5、8~15頁

甲6:Robert F. Fedors、「A Method for Estimating Both the Solubility Parameters and Molar Volumes of Liquids」、POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE、1974年、vol.14、No.2、147~154頁

甲7:Scifinderの検索結果、「CAS Registry Number:25084-34-1」、作成日及び作成者は不明

2 特許権者の意見書及び証拠方法

(1)特許権者は、令和6年1月19日の意見書において、SP値を算出する根拠となる資料として、後記(2)の乙第1号証(以下「乙1」という。)を提出した。

(2)証拠方法

乙1:沖津俊直、「接着のロマンとストーリー〔34〕 -溶解性理論の展開-」、高分子刊行会、接着40巻8号、1996年、342~350頁

3 取消理由

(1)令和5年11月15日付けの取消理由通知書において、甲1~4の何れかを主引例とする新規性違反及び進歩性違反、並びに記載不備の取消理由を通知した。

(2)令和6年7月30日付けの取消理由通知書(決定の予告)において、甲1~4の何れかを主引例とする進歩性違反の取消理由を通知した。

(3)令和7年1月21日付けの取消理由通知書(決定の予告)において、甲2を主引例とする進歩性違反の取消理由を通知した。

第5 当審の判断1(記載不備の取消理由について)

当審は、前記第4の3(1)の令和5年11月15日付けの取消理由通知書において、サポート要件違反、実施可能要件違反、及び明確性違反の取消理由を通知した。

しかしながら、これらの取消理由は、いずれも、当審が、本件発明のSP値の単位とは異なるSP値の単位で検討したことによるものであるから、これらの取消理由はもともと存在しなかったものである。

また、特許権者は、サポート要件違反を指摘された本件特許の明細書の実施例に記載された「アクリルA」及び「アクリルA」を用いた「比較例2」に関連する記載について、不備ないしは不整合があることを理由に削除した。

したがって、令和5年11月15日付けの取消理由通知書において通知した、サポート要件違反、実施可能要件違反、及び明確性違反の取消理由は、理由がない。

第6 当審の判断2(新規性、進歩性について)

1 甲号証の記載事項

(1)甲1には、次の記載がある。

「【0006】

そこで本発明の課題は、印字画像の滲み防止、印字画像のひび割れ防止、及び、印字時の液寄り防止を達成できるインクジェット記録方法を提供することにある。」

「【0017】

まず、インクジェット記録方法の第一態様について、更に詳しく説明する。

【0018】

記録媒体として用いられるフィルム基材を構成する樹脂は格別限定されないが、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド等のようなプラスチックを好ましく挙げることができる。フィルム基材は、未延伸フィルム又は延伸フィルムの何れであってもよい。フィルム基材としては、インク非吸収性あるいはインク微吸収性のものを好適に用いることができる。また、フィルム基材の表面は、コロナ処理等の表面処理がなされていてもよい。」

「【0053】

酸基を有するアクリル系分散剤は、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸を含む。酸基を有するアクリル系分散剤として、(メタ)アクリル酸の重合体(即ち、ポリ(メタ)アクリル酸)、あるいは必要に応じてスチレンなどの他のモノマー成分を共重合した共重合体(即ち、(メタ)アクリル酸共重合体)を好適に用いることができる。(メタ)アクリル酸に由来するカルボキシル基は、水溶性と顔料分散性の観点から、一部を酸(酸基)として残すことができ、好ましくは、重合体あるいは共重合体の全体の酸価が60[mgKOH/g]~300[mgKOH/g]の範囲であることが好ましい。また、顔料分散性を更に向上する観点から、酸基を有するアクリル系分散剤の数平均分子量(Mn)は、3000以上であることが好ましい。」

「【0075】

水系のインクは、溶媒として、水の他に、水溶性有機溶剤を含有することができる。

【0076】

インクに含有させる水溶性有機溶剤としては、例えば、1価アルコール類、グリコール類(2価アルコール類)、3価アルコール類、グリコールエーテル類、アセテート類、アミン類、アミド類等が挙げられる。

・・・

【0082】

アミン類としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等が挙げられる。

・・・

【0085】

水溶性有機溶剤として、グリコール類又はグリコールエーテル類を少なくとも含有することが特に好ましい。これにより、インクジェット法におけるインク吐出安定性を更に向上できる。

【0086】

インク中におけるグリコール類及びグリコールエーテル類の総含有量は、該インクの総重量に対して10重量%以上40重量%以下の範囲であることが好ましい。これにより、インク吐出安定性を向上でき、更に、記録媒体上に付与された後のインクの乾燥が好適に進行し、本発明の効果が更に顕著に発揮される。」

「【0118】

(実施例1)

第1.インクの調製

1.アクリル系分散剤含有液の調製

アクリル系分散剤(BASF社製「ジョンクリル819」)20重量部に、ジメチルアミノエタノール2.9重量部と純水(残部)を合計100重量部となるように加え、ポリプロピレン容器中で、80°C、60分間撹拌して十分に溶解し、アクリル系分散剤の樹脂固形分が20%のアクリル系分散剤含有液を得た。

【0119】

2.ノニオン系分散剤の合成及びノニオン系分散剤含有液の調製

(1)ノニオン系分散剤1

滴下ロート、還流管、窒素導入管、温度計及び攪拌装置を備えたフラスコに、2-プロパノール59.5重量部を入れて、窒素バブリングしながら加熱還流した。このフラスコに、メトキシポリエチレングリコール(重合度n=9)アクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレートA130」)20重量部、アクリル酸メチル16重量部、スチレン4重量部の混合液にアゾビスイソブチロニトリル0.5重量部を溶解させた液を、滴下ロートより2時間かけて滴下した。滴下後、更に5時間加熱還流を続けた後に放冷し、減圧下で2-プロパノールを留去してノニオン系分散剤1の樹脂固形分を得た。

【0120】

ノニオン系分散剤1のモノマー構成は、メトキシポリエチレングリコールアクリレート50重量部、アクリル酸メチル40重量部、スチレン10重量部からなる。

【0121】

ノニオン系分散剤1の数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(カラム:東ソー社製「TSKgel G40000+2500+2000HXL」、40°C、溶離液:THF 1.0(ml/min RI))での測定結果と上記モノマー構成に基づいて算出した結果、約15000(Mn)であった。

【0122】

次いで、得られたノニオン系分散剤1の樹脂固形分に、60°Cの水を加えて撹拌溶解し、樹脂固形分が20%に希釈されたノニオン系分散剤1含有液を得た。」

「【0127】

3.顔料分散体の調製

<ノニオン系分散剤1を含有する顔料分散体>

(1)顔料分散体1

アクリル系分散剤含有液27重量部に、エチレングリコール5重量部、ノニオン系分散剤1含有液2.7重量部及びイオン交換水47.3重量部を加えて混合し、顔料(DIC社製「GNKA-SD」;ピグメントブルー15:3)18重量部を添加して更に混合した後、0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて6時間分散し、顔料固形分18%のシアン顔料分散体(単に顔料分散体ともいう)1を得た。」

「【0138】

表1に、顔料分散体1~11の組成を示す。

【0139】

【表1】

61

153

0001429961000003.jpg

【0140】

4.インク

<ノニオン系分散剤を含有するインク>

(1)インク1

顔料分散体1を27.8重量部、エチレングリコール18.6重量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル3重量部、イオン交換水(残部)の量により100重量部に調整し、混合撹拌した。十分に撹拌した後、5.0μmのフィルターにより濾過してインク1を得た。なお、濾過前後で実質的な組成変化はなかった(下記インク2~19の濾過も同様である。)。」

「【0152】

【表2】

60

153

0001429961000004.jpg

(2)甲2には、次の記載がある。

「[0010] 本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、環境負荷が少なく、水を主成分とする水系インクジェットインクを用いて、非吸収性記録媒体に耐擦性や接着性が高く、光沢が高く、インク混じりのない高画質な画像を形成するとともに、高い射出性とメンテナンスによる回復性に優れたインクジェットインクとそれを用いたインクジェット記録方法を提供することにある。」

「[0028] 本発明により、非吸収性記録媒体に耐擦性や接着性が高く、光沢が高くてインク混じりのない高画質な画像を形成するとともに、高い射出性とメンテナンスによる回復性に優れたインクジェットインクとそれを用いたインクジェット記録方法を提供することができた。」

「[0031] (非吸収性記録媒体)

前記非吸収性記録媒体は塩ビ、PET、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート等の水をほとんど吸収しない疎水性樹脂からなる記録媒体、またはコート紙等の印刷用本紙のようにある程度水を吸収するが、吸収速度が遅く、常温常湿環境下の通常のインクジェット印刷の印刷工程内では水系インクが乾かずに支障をきたす記録媒体である。」

「[0051] (有機溶剤)

本発明のインクには低表面張力の有機溶剤を添加することが好ましい。」

「[0062] その他に、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、等が挙げられる。」

「[0092] また、本発明に係る共重合樹脂では、酸価が50mgKOH/g以上、200mgKOH/g以下であることが特徴の1つである。共重合樹脂の酸価が50mgKOH/g以上であれば、たとえインクジェットヘッドのノズル部で乾燥を起こした場合でも、溶解除去、あるいは物理的な擦り操作により取り除くことできるため、良好なメンテナンス適性を付与することができる。また、酸価が200mgKOH/g以下であれば、良好な耐擦性、接着性、光沢を得ることができる。」

「[0116] (樹脂の中和)

特に、沸点が100°C以上、200°C以下のアミン類で中和することは、該共重合樹脂をインクに溶解したり、画像耐久性を向上させ、またインク交じり防止する上で好ましく、N,N-ジメチルアミノエタノール、2-アミノ-2-メチルプロパノールなどが射出安定性上特に好ましい。

[0117] 中和塩基の添加量としては、該共重合樹脂に含まれる酸モノマーの量にもよるが、少なすぎると該共重合樹脂の中和による効果が得られず、多すぎると画像の耐水性や変色、臭気などの課題があるため、インク中に0.2%以上、2%以下含有することが好ましい。」

「[0141] (有機溶剤)

本発明においては、インクジェットヘッドからのインク射出安定性、メンテナンス性及び形成した画像の光沢の観点から、溶剤の1つとして、水溶性アルカノールアミン類を、インク全質量の0.30質量%以上、2.0質量%以下含有することが好ましく、より好ましくは、0.3質量以上、1.8質量%以下である。本発明に好ましく適用することのできる水溶性アルカノールアミン類としては、N,N-ジメチルアミノエタノール、2-アミノ-2-メチルプロパノール、N-メチルアミノエタノールを挙げることができる。」

「[0153] 実施例1

(共重合樹脂の合成)

本発明の共重合樹脂P-1の合成

滴下ロート、還流管、窒素導入管、温度計および攪拌装置を備えたフラスコに2-プロパノールを64.8部入れて窒素バブリングしながら加熱還流した。そこへメタクリル酸メチル18.2部とアクリル酸n-ブチル12.6部、メタクリル酸4.2部の混合液に開始剤(AIBN)0.2部を溶解させた液を滴下ロートより2時間かけて滴下した。滴下後さらに5時間加熱還流を続けた後に放冷し、減圧下で2-プロパノールを留去して共重合樹脂P-1を得た。

[0154] 共重合樹脂P-2~P-19の合成

合成例1と同様にして、表1に示すモノマー組成比にて共重合樹脂P-2~P-19を合成した。なお、共重合樹脂の重量平均分子量は開始剤の量を変えることで調整した。

[0155] 上記共重合樹脂のTg、酸価、Mwを表1に示す。なお、表1ではモノマーを略称で記載したが、モノマーの略称と化合物名の関係は下記の通りである。

[0156] MMA:メタクリル酸メチル

EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル

n-BA:アクリル酸n-ブチル

i-BA:アクリル酸i-ブチル

EA:アクリル酸エチル

MAA:メタクリル酸

AA:アクリル酸

St:スチレン。

[0157]

[表1]

105

136

0001429961000005.jpg

[0158] (シアン顔料分散体の作製)

顔料分散剤としてefka4570(固形分60%、EFKA社製)12部をイオン交換水68部に加え、ここへジエチレングリコールモノブチルエーテル5部を混合した。この溶液にC.I.ピグメントブルー15:3を15部添加し、プレミックスした後、0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料固形分15%のシアン顔料分散体を得た。

[0159] (インクの作製)

インクC-1の作製

前記共重合樹脂P-1の5部をイオン交換水30部に加え、ここへN,N-ジメチルアミノエタノールを該共重合樹脂P-1の酸基の化学当量数に対して1.05倍の化学当量数相当となる量を加え、60°Cに加熱攪拌して溶解した。放冷後、これに有機溶剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを表2に記載のインク含有量となるように加え、さらにシリコーン系界面活性剤であるKF-351A(信越化学工業製)0.5部を加えて攪拌し、イオン交換水で全量が80部となるように調整した。ついでここへ前記シアン顔料分散体を20部加えて攪拌した後、0.8μmのフィルターによりろ過してシアンインクC-1を得た。」

「[0165][表2]

148

108

0001429961000006.jpg

「[0166] 上記により調製した各インクについて、下記の方法に従って評価を行った。なお、各インクについてプレート法で測定した表面張力は26~30mN/mの範囲であった。

[0167] (画像の形成)

ノズル口径28μm、駆動周波数18kHz、ノズル数512、最小液適量14pl、ノズル密度180dpiであるピエゾ型ヘッドを4列搭載したオンデマンド型インクジェットプリンタのヘッドの1つに各シアンインクを装填した。

[0168] またプリンターには接触式ヒーターによって記録媒体を裏面(ヘッドと対向する面とは反対の面)より任意に加温できるようにし、ヘッド格納ポジションにインク空打ちポジションとブレードワイプ式のメンテナンスユニットを備え、任意の頻度でヘッドクリーニングができるようにした。

[0169] 次いで、記録媒体として溶剤インクジェットプリンタ用の軟質塩化ビニルシートに印字解像度720dpi×720dpiで、10cm×10cmの100%Dutyおよび50%Dutyのベタ画像をプリントし記録画像とした。」

「[0225]

・・・

《インクの評価》

上記調製した各インクを用いて、下記の方法に従って画像形成し、各評価を行った。

[0226] 〔画像形成〕

ピエゾ型のインクジェットヘッド(解像度:720dpi(dpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す)、インク液滴量14pl)4基を並列に配置した4色のプリントが可能なインクジェットプリント装置を用いて評価を行った。インクジェットプリント装置には、記録媒体を下方より接触式ヒーターにて任意に加温できる機能を備え、インクジェットヘッドの格納ポジションには、水性インクの空打ちポジションとブレードワイプ式のメンテナンスユニットを備え、任意の頻度でヘッドクリーニングができる。

[0227] 上記インクジェットプリント装置のKインク用インクジェットヘッドに、表2に記載の各インクをそれぞれ導入し、溶剤インクジェットインクプリンタ用の軟質塩化ビニルシートに、Kインクを10%Dutyから100%Dutyまでの条件で、10%Duty刻みで10cm×50cmの長方形ベタ画像を各々プリントした。プリント時には、記録媒体の下方より、接触式ヒーターにて、軟質塩化ビニルシートの表面温度が43°Cとなる条件で加熱した。プリント後、プリント物を室温(25°C)にて24時間乾燥した後、下記の記録画像およびプリント性の評価をした。

[0228] 〔各評価条件〕

次いで、下記に示す各評価を行った。

[0229] (射出安定性の評価)

上記プリント条件により、20°C、相対湿度30%の環境下で連続5回プリントした。その後、5回目の100%Duty画像について目視観察し、下記の基準に従って射出安定性を評価した。

[0230] 3:作成画像において、画像欠陥は認められない

2:画像の書き出し部(数mm)に、極僅かのかすれが認められる

1:作成画像において、インク射出不良に起因する画像欠陥が多数認められる

(メンテナンス適性の評価)

上記プリント条件により、20°C、相対湿度30%の環境下で連続5回プリントしたのち、キャップをせずに1時間放置した。次いで、ブレードワイプ式のメンテナンスユニットでメンテナンスを行った直後に、同じく、20°C、相対湿度30%の環境下で上記と同様にしてベタ画像を1回プリントし、得られた画像を目視観察し、下記の基準に従って、メンテナンス適性を評価した。

[0231] 3:作成画像において、画像欠陥は認められない

2:作成画像において、メンテナンス不良に起因する画像欠陥が僅かに認められる

1:作成画像において、メンテナンス不良に起因する画像欠陥が多数認められる」

(3)甲3には、次の記載がある。

「【0025】

本発明により、コート紙、アート紙、微塗工紙等の難吸収性基材を用いても、白抜けのない優れた印刷画質を有し、かつ種々の塗膜耐性に優れる印刷物を得ることができ、更に、インクジェットノズルからの吐出安定性及び印刷時の乾燥性に優れる水性インクジェットインキの提供が可能となった。また、本発明により、前記水性インクジェットインキの効果を好適に発現できる印刷物の製造方法の提供が可能となった。更に、本発明により、上記に加え、更に保存安定性にも優れる水性インクジェットインキの提供が可能となった。」

「【0042】

本実施形態のインキでは、表面張力が30mN/m以上50mN/m以下であり、かつ1気圧下における沸点が180°C以上230°C以下である水溶性有機溶剤を、単独で、もしくは、複数組み合わせて使用することができる。具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール等のポリオール系溶剤;

ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル等のエチレングリコールモノエーテル系溶剤;

ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノエーテルアセテート系溶剤;

N,N-ジメチル-β-メトキシプロピオンアミド、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン等の含窒素溶剤;等が挙げられる。

・・・

【0053】

本実施形態の水性インキにおいて、特定水溶性有機溶剤の含有量は、水性インキ全量に対して、15~50重量%である。上記含有量は、好ましくは15~40重量%以下であり、更に好ましくは15~30重量%であり、最も好ましくは20~30重量%である。上記水溶性有機溶剤の含有量を15重量%以上にした場合、インクジェットヘッド上での保湿性を付与しつつ、基材上でのインキの浸透力と乾燥性のバランスをとることが可能となるため、吐出安定性を確保しながら、高速印刷においても良好な印刷画質を実現することが可能となる。また、上記含有量を50重量%以下にした場合、インキ粘度を好適な範囲に収めることができ、良好な吐出安定性を得ることが容易となる。更に詳細は不明であるが、含有量を15~40重量%とすることで、インキの保存安定性も良化する。

【0054】

また、特定水溶性有機溶剤は、特定水溶性有機溶剤以外の水溶性有機溶剤と併用してもよい。インキ中に含まれる水溶性有機溶剤全量に対する、前記特定水溶性有機溶剤の配合量は、50~100重量%であることが好ましく、60~100重量%であることがより好ましく、70~100重量%であることが特に好ましい。特定水溶性有機溶剤の配合量が上記範囲内であれば、上記で説明した、特定水溶性有機溶剤の効果を好適に発現させることが可能となる。

【0055】

加えて、上記で説明した効果を特に好適に発現させ、吐出安定性及び保存安定性に優れるインキを得る観点から、炭素数が4以上であるアルカンジオールの含有量は、水溶性有機溶剤全量に対して10~95重量%であることが好ましく、30~90重量%であることがより好ましく、50~85重量%であることが特に好ましい。なお、上記算出に用いる、「炭素数が4以上であるアルカンジオールの含有量」とは、特定水溶性有機溶剤に含まれる、炭素数が4以上であるアルカンジオールの含有量と、特定水溶性有機溶剤以外の水溶性有機溶剤に含まれる、炭素数が4以上であるアルカンジオールの含有量との合計量を意味する。」

「【0056】

(バインダー樹脂)

上記にも記載した通り、本実施形態の水性インクジェットインキはバインダー樹脂を含む。また、インクジェットインキに使用されるバインダー樹脂として、水分散性樹脂微粒子(以下、単に「樹脂微粒子」ともいう)と水溶性樹脂とが知られており、本実施形態の水性インキではどちらかを選択して用いてもよいし、両者を併用してもよい。

【0057】

(水分散性樹脂微粒子)

一般に水分散性樹脂微粒子は、水溶性樹脂よりも分子量が大きく、また分散状態でインキ中に存在するため、配合量も水溶性樹脂の場合に比べ増やすことができる。そのため、印刷物の塗膜耐性を高めるのに適している。」

「【0134】

なお、本実施形態のインクジェット用水性インキは、コート紙、アート紙、及びキャスト紙等の塗工紙基材、ポリ塩化ビニルシート、PETフィルム、PPフィルム、PEフィルム、ナイロンフィルム等のプラスチック基材に例示される、難吸収性基材への印刷に適したものである。難吸収性基材とは、水を吸収しない、もしくは吸収速度が遅い基材のことであり、そのような吸水性が低い印刷基材に従来の水性インキを使用して印刷を行った場合、色境界にじみやモットリング生じる恐れが高い。しかしながら、本実施形態の水性インクジェットインキであれば、インキ液滴界面への配向による前記現象の抑制効果により、印刷画質に優れた印刷物を得ることができる。すなわち、様々な印刷基材に対して優れた印刷画質を有するインクジェット用水性インキとなる。」

「【0147】

その他、実施例では、キャボット社製自己分散型銅フタロシアニン顔料分散液であるCabojet250C(顔料濃度10%)、キャボット社製自己分散型マゼンタ顔料分散液であるCabojet265M(顔料濃度10%)、及び、キャボット社製自己分散型イエロー顔料分散液であるCabojet270Y(顔料濃度10%)、を、それぞれシアン顔料分散液4、マゼンタ顔料分散液2、イエロー顔料分散液2として使用した。また、キャボット社製自己分散型カーボンブラック分散液であるCabojet200(顔料濃度20%)を等量の水で希釈し、ブラック顔料分散液2(顔料濃度10%)として使用した。

【0148】

(バインダー樹脂A(ランダム構造)製造例)

ガス導入管、温度計、コンデンサー、及び撹拌機を備えた反応容器に、ブタノール93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110°Cに加熱し、重合性単量体としてメタクリル酸を7.5部、メチルメタクリレートを67.5部、及びブチルメタクリレートを25部と、重合開始剤としてV-601(和光純薬製)9部との混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、更に110°Cで3時間反応させた後、V-601(和光純薬製)0.9部を添加し、更に110°Cで1時間反応を続けて、バインダー樹脂Aを得た。東ソー社製HLC-8120GPCを用いて測定した、上記バインダー樹脂Aの重量平均分子量は約10,000、分子量分布幅は2.3であった。

【0149】

更に、上記バインダー樹脂Aを室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノールを9.2部添加して中和した後、水を100部添加した。次いで、得られた溶液を、100°C以上に加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去したのち、固形分が30%になるように調整することで、バインダー樹脂Aの水性化溶液(固形分30%)を得た。バインダー樹脂Aを構成する単量体の構成から算出した酸価は48.9mgKOH/g、上記式(2)を用いて算出したガラス転移温度は81.0°Cであった。」

「【0158】

【表1】

76

140

0001429961000007.jpg

「【0165】

(評価インキ1の製造例)

シアン顔料分散液4を20.0部、バインダー樹脂Aの水性化溶液(固形分30%)を20.0部(固形分換算で6.0部)、1,2-プロパンジオールを15.0部、それぞれ、ディスパーを備えた容器に投入したのち、全体で100部になるように水を加えた。前記ディスパーを用いて、これら混合物を十分に均一になるまで撹拌したのち、得られた混合物を、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過し、ヘッドつまりの原因となる粗大粒子を除去することによって、評価インキ1を得た。

【0166】

(評価インキ2~73の製造例)

材料の種類及び量(配合割合)を、表3~6記載の条件に変更する以外は、上記評価インキ1の場合と同様にして、評価インキ2~73を製造した。

【0167】

【表3】

167

150

0001429961000008.jpg

(4)甲4には、次の記載がある。

「【0005】

以上より、白色系インクでありながら、隠蔽性と、吐出安定性と、記録媒体への密着性が良好なインクジェット記録方法を提供することを目的とする。」

「【0025】

水溶性樹脂の酸価は、50~300mgKOH/gであることが好ましく、50~130mgKOH/gであることがより好ましい。水溶性樹脂の酸価が50mgKOH/g未満であると、樹脂の水に対する溶解性が十分ではないため、水系溶媒に対して十分には溶解できないことがある。一方、水溶性樹脂の酸価が300mgKOH/g超であると、インク皮膜が柔らかくなり、耐擦性が低下する。

【0026】

水溶性樹脂の酸価とは、水溶性樹脂1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を指し、JISK 0070の酸価測定、加水分解酸価測定(全酸価測定)によって測定することができる。

【0027】

中和塩基の含有量は、水溶性樹脂の酸価および含有量にもよるが、水溶性樹脂に含まれる酸性基の化学当量数に対して0.5~5倍の化学当量数となるようにすることが好ましい。中和塩基の含有量が、水溶性樹脂に含まれる酸性基の化学当量数に対して0.5倍未満の化学当量数であると、アクリル系樹脂の分散性を高める効果が十分には得られないことがある。一方、中和塩基の含有量が水溶性樹脂に含まれる酸性基の化学当量数に対して5倍超の化学当量数であると、インク皮膜の耐水性が低下したり、変色、臭気などを生じたりすることがある。」

「【0031】

実施形態に係る(水性)インクは、インク膜の耐擦性をさらに高めるために、水系分散型ポリマー微粒子をさらに含んでもよい。

【0032】

水系分散型ポリマー微粒子は、前述と同様の水溶性樹脂で構成されうる。水系分散型ポリマー微粒子の平均粒子径は、ヘッドのノズル詰まりがなく、良好な光沢を有する画像が得られる観点などから、300nm以下であることが好ましく、130nm以下であることがより好ましい。また、ポリマー微粒子の平均粒子径は、製造安定性の観点から、30nm以上であることが好ましい。

【0033】

水系分散型ポリマー微粒子の含有量は、記録媒体への定着性とインクの長期保存安定性が得られやすい観点などから、インク全体に対して0.7質量~6質量%が好ましく、1~3質量%であることがより好ましい。」

「【0063】

本実施形態における水溶性有機溶剤は、インクの乾燥後期のように、インク皮膜に含まれる水溶性有機溶剤の割合が水に対して相対的に多くなる場合においても、水溶性樹脂や他のインク成分を均一に分散または溶解できるものを用いることが好ましい。本発明で用いることのできる水溶性有機溶剤の例には、(A)表面張力が低い水溶性有機溶剤や、(B)疎水性樹脂からなる記録媒体(塩化ビニルシートなど)を溶解、軟化または膨潤させる水溶性有機溶剤などが含まれる。

・・・

【0066】

表面張力が低い水溶性有機溶剤の含有量は、インク全体に対して1~30質量%であることが好ましい。1質量%未満であると、記録媒体上での濡れ広がりが十分ではなく、30質量%超であると、乾燥性が悪く画像が滲むからである。

・・・

【0079】

疎水性樹脂からなる記録媒体を溶解、軟化または膨潤させる水溶性有機溶剤の含有量は、インク全体に対して0.1質量%以上40質量%未満であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましい。0.1質量%未満であると、記録媒体を軟化または膨潤させる効果が十分には得られないことがあり、40質量%以上であると、プリンター部材を膨潤、劣化させることがある。」

「【0130】

(実施例1)

以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。

(試料1~10の調製)

(黒色顔料分散体の調製)

顔料分散剤としてefka4585(固形分50質量%、BASF社製)20質量部を、イオン交換水65質量部に加えた。この溶液に、カーボンブラック顔料を15質量部添加して、プレミックスした後、0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーにより分散させた。それにより、顔料固形分が15質量%であるブラック顔料分散体を得た。

【0131】

(水溶性樹脂の調製)

水溶性樹脂Aの合成例

滴下ロート、還流管、窒素導入管、温度計および攪拌装置を備えたフラスコに2-プロパノールを186部入れて窒素バブリングしながら加熱還流した。得られた2-プロパノールに、メタクリル酸メチルを50質量部、アクリル酸2-エチルヘキシルを25質量部、およびメタクリル酸を25質量部添加して混合溶液を調製した。得られた混合溶液に、開始剤(AIBN)0.5質量部を溶解させたモノマー溶液を、滴下ロートで2時間かけて滴下した。滴下後、さらに5時間加熱還流を続けた後、放冷し、減圧下で2-プロパノールを留去した。それにより、(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合モノマーとの共重合体(アクリル系共重合樹脂)を得た。

得られたアクリル系共重合樹脂20質量部に、イオン交換水67.8質量部と、中和塩基として水酸化ナトリウム水溶液とを加えて、70°Cで加熱攪拌して樹脂を溶解させた。それにより、樹脂固形分20質量%の水溶性アクリル樹脂の水溶液を得た。なお、水酸化ナトリウム水溶液の添加量は、アクリル系共重合樹脂の酸性基の化学当量数に対して1.05倍の化学当量数となるようにした。

水溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)はGPCで測定した。測定条件を以下に示す。

カラム:東ソー製TSKgel G40000+2500+2000HXL、40°C

溶離液:THF 1.0(ml/min)

注入量:100μl

検出:RI

較正曲線:標準ポリスチレン。

酸価(mgKOH/g)は、JISのK0070に規定された方法で測定した。

その結果、樹脂Aの重量平均分子量(Mw)は37000、酸価は164であった。

樹脂C~Eも同様の方法で、表1のモノマー組成と中和塩基で水溶性樹脂の水溶液を得た。樹脂Bのみ市販品であるJONDRYL 62J(固形分濃度34質量%、BASF社製)を使用した。

なお、表1中のモノマーの略語は以下の内容を示す。

MMA:メタクリル酸メチル

BA:アクリル酸n-ブチル

EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル

BMA:メタクリル酸n-ブチル

MAA:メタクリル酸

AA:アクリル酸

St:スチレン

【0132】

【表1】

190

153

0001429961000009.jpg

【0133】

(白色インク1の調製)

前記水溶性アクリル樹脂の水溶液を30質量部、イオン交換水5.2部1,2-ヘキサンジオールを5質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを10質量部、界面活性剤としてメガファックF-444(DIC株式会社製)を0.1質量部、オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)を1質量部加えて攪拌した。ついでここへ色材として市販品の中空樹脂粒子SX8782(D)(固形分濃度20.5質量%、JSR株式会社製)の48.7質量部を加えて攪拌した。得られた溶液を、3μmのフィルターでろ過して、白色インク1を得た。なお、水溶性樹脂はインク全体の質量に対して6質量%含有され、顔料はインク全体の質量に対して10質量%含有される。」

「【0136】

(試料1~10の評価)

得られた試料1~10について、白色インク、黒色インクの微振動のパルス間隔を表2に示す条件で以下の画像形成方法に従い吐出実験を行った。そして、後述の基準に基づいて、射出安定性、耐水性、密着性の各項目について評価を行った。得られた結果を表2にまとめて示す。

【0137】

【表2】

184

153

0001429961000010.jpg

<画像形成方法>

インクジェットヘッド2として、KM512MN(コニカミノルタIJ社製)駆動周波数13kHz、最小液滴量14plのものを用いた。そして、キャリッジに吐出ヘッドを4列搭載したオンデマンド型のインクジェットプリンターのインクジェットヘッドの1つに、得られた白色インク、もう1つに黒色インクを装填した。インクジェットヘッドの電極に、インク液滴の飛翔速度が6m/secとなるように調整した電圧を印加して駆動させた。また、メニスカスの微振動のパルス幅は1ALとし、微振動のパルス間隔は表2に示す通りに設定して後述の画像を印画した。

【0138】

記録媒体Pとしての溶剤インクジェットプリンター用の軟質塩化ビニルシートIJ180-10(住友スリーエム株式会社製)上に、解像度720dpi×720dpi、10cm×10cmの印字率100%および50%の白色および黒色のベタ画像を形成し、記録画像とした。

尚、記録媒体Pの記録面とインクジェットヘッドのノズル面との隙間に図10の55d、eのような送風ファンを用いて、画像形成中にわたって常時送風を行った。」

「【0143】

(実施例2)

(試料11~19の調製)

試料11を、以下の手順で調製した。

白色インクの白色顔料を市販品の二酸化チタンである「NanoTek(R) Slurry(固形分濃度15質量%、シーアイ化成株式会社製)」に変更し、水溶性樹脂Cを使用して、その他を表3に示す成分に置き換えて実施例1同様にして、白色インク11と黒色インク11を得た。

また試料12~19について、表3に示す成分に置き換えたことを除き、試料11と同様にして調製した。

【0144】

(試料11~19の評価)

得られた試料11~19について、実施例1と同様の吐出条件で、軟質塩化ビニルシート IJ180-10(住友スリーエム株式会社製)上に、解像度720dpi×720dpi、10cm×10cmの印字率100%および50%の白色および黒色のベタ画像を作成した。なお、印画中のメニスカスの微振動のあるなしは表3に示す通りで、パルス間隔はすべて6.5AL、パルス幅1ALの条件で吐出した。そして、後述の基準に基づいて、画質、光沢の各項目について評価を行った。得られた結果を表3にまとめて示す。

なお、表3中の略語は以下の内容を示す。

2)水溶性溶剤:

1,3-BDO:1,3-ブタンジオール

1,2-HDO:1,2-ヘキサンジオール

DPGPE:ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル

DPG:ジプロピレングリコール

DPGME:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル

B100:エクアミドB100(β-アルコキシプロピオンアミド類、出光興産株式会社製)

【0145】

3)界面活性剤

オルフィンE1010:アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製)

F-444:フッ素系界面活性剤(メガファックF-444,DIC株式会社製)

KF-351:シリコン系界面活性剤(信越化学社製)

【0146】

【表3】

179

143

0001429961000011.jpg

(5)甲5には、次の記載がある。なお、以下、赤線による枠及び下線は申立人が付したものである。

ア 8頁、要旨の欄「

25

87

0001429961000012.jpg

イ 9頁左欄「

154

91

0001429961000013.jpg

ウ 9頁右欄「

191

97

0001429961000014.jpg

エ 10頁「

135

88

0001429961000015.jpg

(6)甲6の152頁左欄には、次の記載がある。

198

67

0001429961000016.jpg

(抄訳)

181

121

0001429961000017.jpg

202

128

0001429961000018.jpg

(7)甲7には、次の記載がある。

178

120

0001429961000019.jpg

(8)乙1には、次の記載がある。

ア 7頁右欄下から3行~8頁左欄5行

17

85

0001429961000020.jpg

46

84

0001429961000021.jpg

イ 8頁右欄下から5行~10頁左欄7行

31

86

0001429961000022.jpg

42

87

0001429961000023.jpg

ウ 11頁表3-3

※当審注:表3-3の「>C<(Poly)」の「Δv」の値は「19.2」となっているが、前記6の表5の「C」欄の値などからみて、「-19.2」の誤記と認める。

156

153

0001429961000024.jpg

2 甲1を主引例とした新規性、進歩性

(1)甲1に記載された発明

甲1の【0152】の【表2】の「インクNo.1」に着目し、インクの用途について、同【0006】、【0018】の記載を、「顔料分散体1」について【0127】及び【0139】の記載を、「アクリル系分散剤含有液」について同【0118】の記載を、「ノニオン系分散剤1」について同【0119】~【0122】の記載を参酌すれば、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

<甲1発明>

「インク非吸収性あるいはインク微吸収性のフィルム基材を、記録媒体として用いるインクジェット記録方法に用いるインクであって、

顔料分散体1を27.8重量部、エチレングリコールを18.6重量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを3重量部、及び、イオン交換水(合計100重量部となる残部)からなり、

前記顔料分散体1は、アクリル系分散剤含有液27重量部、エチレングリコール5重量部、ノニオン系分散剤1含有液2.7重量部、イオン交換水47.3重量部、及び、顔料(DIC社製「GNKA-SD」;ピグメントブルー15:3)18重量部からなる、顔料固形分18%のシアン顔料分散体であり、

前記アクリル系分散剤含有液は、アクリル系分散剤(BASF社製「ジョンクリル819」)20重量部、ジメチルアミノエタノール2.9重量部、及び、純水(合計100重量部となる残部)からなる、アクリル系分散剤の樹脂固形分が20%のアクリル系分散剤含有液であり、

前記ノニオン系分散剤1は、モノマー構成が、メトキシポリエチレングリコールアクリレート50重量部、アクリル酸メチル40重量部、スチレン10重量部であり、分子量が約15000(Mn)であり、水に攪拌溶解された樹脂固形分が20%のノニオン系分散剤1である、

インク。」

(2)本件発明1

ア 対比

甲1発明の「インク非吸収性あるいはインク微吸収性のフィルム基材を、記録媒体として用いる」、「インクジェット記録方法に用いるインク」は、本件発明1の「非浸透性基材上への画像の記録に用いられ」る「インクジェットインク組成物」に相当する。

甲1発明の「イオン交換水」、「純水」、及び、「水」は、いずれも、本件発明1の「水(A)」に相当する。

甲1発明に含まれる樹脂成分のうち、主たる樹脂である「アクリル系分散剤(BASF社製「ジョンクリル819」)」は、本件発明1の「樹脂(B)中の主たる樹脂」に相当する。

甲1発明に含まれる有機溶剤のうち、窒素原子及び水酸基を含むものは、「ジメチルアミノエタノール」のみであり、その沸点は133°C程度であることが知られているから、甲1発明の「ジメチルアミノエタノール」は、本件発明1の「有機溶剤(C)」に相当する。

そして、「ジメチルアミノエタノール」のSP値を、乙1の手法で計算すると、その構造は「-CH

3

」2つと、「-N<」1つと、「-CH

2

-」2つと、「-OH(monoalcohol)」1つに分解できるから、SP値[(cal/cm

3

)

1/2

]=ΣΔF/ΣΔv=(205×2+61×1+132×2+395×1)/(31.8×2+(-9.0)×1+16.5×2+10×1)≒11.6[(cal/cm

3

)

1/2

]となり、この単位をMPa

1/2

に変換すると、11.6×2.0455≒23.7[MPa

1/2

]となる。

これに対して、本件発明1の「樹脂(B)」に相当する甲1発明の「ジョンクリル819」は、スチレンとアクリル酸の共重合物である(必要なら甲7参照。)から、そのSP値は、スチレンのSP値とアクリル酸のSP値の間の値と考えられる。

スチレンの重合状態でのSP値は、同様の計算により、(28.6×1+132×1+731×1)/(1.9×1+16.5×1+79×1)×2.0455≒18.7[MPa

1/2

]であり、アクリル酸の重合状態でのSP値は、(28.6×1+132×1+373×1)/(1.9×1+16.5×1+24.4×1)×2.0455≒25.5[MPa

1/2

]である。

そうすると、甲1発明の「ジメチルアミノエタノール」は、「ジョンクリル819」(樹脂(B)に相当)とのSP値の差分が(23.7-18.7)~(23.7-25.5)の間の値であって、「|SP

C

-SP

B

|≦10.0・・・ 式(C1)」を充足するから、本件発明1の「沸点が250°C以下であり、下記式(C1)を満足する、窒素原子及び水酸基を含む有機溶剤(C)

|SP

C

-SP

B

|≦10.0 ・・・ 式(C1)」に相当する。

甲1発明に含まれる窒素原子を含まない有機溶剤のうち、「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」に着目し、そのSP値を、乙1の手法で計算すると、その構造は「-CH

3

」1つと、「-CH

2

-」7つと、「-O-」2つと、「-OH(monoalcohol)」1つに分解できるから、SP値は、(205×1+132×7+120×2+395×1)/(31.8×1+16.5×7+5.1×2+10×1)×2.0455≒21.9[MPa

1/2

]である。

これに対して、甲1発明において、本件発明1の「有機溶剤(C)中の主たる有機溶剤」に対応するものは「ジメチルアミノエタノール」であるから、そのSP値は、前記計算のとおり、23.7[MPa

1/2

]である。

そうすると、甲1発明の「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」は、SP値の差分が21.9-23.7であって、「|SP

D

-SP

CM

|≦5.0 ・・・ 式(D1)」を充足するから、本件発明1の「下記式(D1)を満足する、窒素原子を含まない有機溶剤(D)」に相当する。

なお、甲1発明に含まれる窒素原子を含まない有機溶剤のうち、「エチレングリコール」のSP値を、乙1の手法で計算すると、その構造は「-CH

2

-」2つと、「-OH(Diol)」2つに分解できるから、SP値は、(132×2+270×2)/(16.5×2+12×2)×2.0455≒28.8[MPa

1/2

]であり、SP値の差分が28.8-23.7=5.1であって、「|SP

D

-SP

CM

|≦5.0 ・・・ 式(D1)」を充足しないから、甲1発明の「エチレングリコール」は、本件発明1の「下記式(D1)を満足する、窒素原子を含まない有機溶剤(D)」に相当しない。

甲1発明において、インク組成物の全量に対する「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」(有機溶剤(D)に相当。)の合計含有量は3/100×100=3質量%であるから、本件発明1の「前記有機溶剤(D)の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対し、0.01質量%~5.0質量%」を充足する。

そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>

「非浸透性基材上への画像の記録に用いられ、

水(A)と、

樹脂(B)と、

沸点が250°C以下であり、下記式(C1)を満足する、窒素原子及び水酸基を含む有機溶剤(C)と、

下記式(D1)を満足する、窒素原子を含まない有機溶剤(D)と、

を含有し、

前記樹脂(B)中の主たる樹脂に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比が、0.17以上2.0未満であり、

前記有機溶剤(D)の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対し、0.01質量%~5.0質量%である、

インクジェットインク組成物。

|SP

C

-SP

B

|≦10.0 ・・・ 式(C1)

式(C1)中、SP

B

は、樹脂(B)中の主たる樹脂のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、SP

C

は、前記有機溶剤(C)のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、|SP

C

-SP

B

|は、SP

C

とSP

B

との差の絶対値を表す。

|SP

D

-SP

CM

|≦5.0 ・・・ 式(D1)

式(D1)中、SP

CM

は、前記有機溶剤(C)中の主たる有機溶剤のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、SP

D

は、前記有機溶剤(D)のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、|SP

D

-SP

CM

|は、SP

D

とSP

CM

との差の絶対値を表す。」

<相違点1>

本件発明1は「前記樹脂(B)中の主たる樹脂に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比が、0.17以上2.0未満」であるのに対し、甲1発明は、「アクリル系分散剤(BASF社製「ジョンクリル819」)」(樹脂(B)に相当。)の含有質量に対する「ジメチルアミノエタノール」(有機溶剤(C)に相当。)の含有質量が、2.9/20≒0.15である点。

イ 判断

相違点1について検討する。甲1発明の「アクリル系分散剤」について、甲1の【0053】には「酸基を有するアクリル系分散剤は、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸を含む。・・・(メタ)アクリル酸に由来するカルボキシル基は、水溶性と顔料分散性の観点から、一部を酸(酸基)として残すことができ、好ましくは、重合体あるいは共重合体の全体の酸価が60[mgKOH/g]~300[mgKOH/g]の範囲であることが好ましい。・・・」と記載され、同「有機溶剤」について、同【0075】及び【0076】には「水系のインクは、溶媒として、水の他に、水溶性有機溶剤を含有することができる。」「インクに含有させる水溶性有機溶剤としては、例えば、1価アルコール類、グリコール類(2価アルコール類)、3価アルコール類、グリコールエーテル類、アセテート類、アミン類、アミド類等が挙げられる。」と記載され、同【0082】には「アミン類としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン・・・等が挙げられる。」と記載されているものの、主たる樹脂に対する窒素原子及び水酸基を含む有機溶剤の含有量を「0.17以上2.0未満」とすることについては、記載も示唆もない。

この点について、甲4の【0025】には、インクのバインダー樹脂を構成する水溶性樹脂について、「水溶性樹脂の酸価は、50~300mgKOH/gであることが好ましく、50~130mgKOH/gであることがより好ましい。」ことが記載され、同【0027】には、水溶性樹脂の酸価を中和するための中和塩基について、「中和塩基の含有量は、水溶性樹脂の酸価および含有量にもよるが、水溶性樹脂に含まれる酸性基の化学当量数に対して0.5~5倍の化学当量数となるようにすることが好ましい。」と記載されている。

そうすると、甲1発明において、「アクリル系分散剤(BASF社製「ジョンクリル819」)」(樹脂(B)に相当。)の含有質量に対する「ジメチルアミノエタノール」(有機溶剤(C)に相当。)「ジョンクリル」「ジメチルアミノエタノール」の量を、ジョンクリル819の酸価(75程度とされている。)に対して、化学当量の範囲で調整することは当業者が容易になし得ることといえるが、その範囲を、「0.17以上2.0未満」とする動機付けはないから、そうすることが容易とはいえない。

また、他の甲号証にも、甲1発明の「アクリル系分散剤(BASF社製「ジョンクリル819」)」(樹脂(B)に相当。)の含有質量に対する「ジメチルアミノエタノール」(有機溶剤(C)に相当。)の含有質量を、0.17以上2.0未満とすることを動機付けるような記載は見当たらない。

ウ まとめ

してみると、本件発明1は、甲1発明ではない。また、本件発明1は、甲1発明及び甲1~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明2~7

本件発明2~7は、本件発明1を引用しさらに限定を付加したものであるから、本件発明2~7は、前記(2)の本件発明1と同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

3 甲2を主引例とした新規性、進歩性

(1)甲2に記載された発明

ア 甲2の[0165]の[表2]の「インクC-1」に着目し、同[0010]、[0153]~[0164]の記載を参酌すれば、甲2には次の発明(以下「甲2A発明」という。)が記載されているものと認められる。

<甲2A発明>

「非吸収性記録媒体に用いられるインクジェットインクC-1であって、

当該インクC-1は、

共重合樹脂P-1を5部と、

中和塩基として、N,N-ジメチルアミノエタノールを、該共重合樹脂P-1の酸基の化学当量数に対して1.05倍の化学当量数相当となる量と、

有機溶剤として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを、それぞれ、5部、10部、10部と、

シリコーン系界面活性剤であるKF-351A(信越化学工業製)0.5部に、

イオン交換水を加えて80部としたものに、

シアン顔料分散体を20部加えて攪拌した後、0.8μmのフィルターによりろ過して得たものであり、

前記共重合樹脂P-1は、メタクリル酸メチル:アクリル酸n-ブチル:メタクリル酸のモノマー比が、52:36:12で、酸価が78のの共重合体であり、

前記シアン顔料分散体は、顔料分散剤としてefka4570(固形分60%、EFKA社製)12部、イオン交換水68部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル5部に、C.I.ピグメントブルー15:3を15部添加して分散した、顔料固形分15%のシアン顔料分散体である、

インクジェットインク。」

イ 甲2の[0165]の[表2]の「インクC-10」に着目し、同[0010]、[0153]~[0164]の記載を参酌すれば、甲2には次の発明(以下「甲2B発明」という。)が記載されていると認められる。

<甲2B発明>

「非吸収性記録媒体に用いられるインクジェットインクC-10であって、

当該インクC-10は、

共重合樹脂P-8を2部と、

中和塩基として、N,N-ジメチルアミノエタノールを、該共重合樹脂P-8の酸基の化学当量数に対して1.05倍の化学当量数相当となる量と、

有機溶剤として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを、それぞれ、5部、10部、10部と、

シリコーン系界面活性剤であるSi-1(KF-351A(信越化学工業製))0.5部に、

イオン交換水を加えて80部としたものに、

シアン顔料分散体を20部加えて攪拌・濾過して得たものであり、

前記共重合樹脂P-8は、メタクリル酸メチル:アクリル酸エチル:メタクリル酸のモノマー比が、58:20:22で、酸価が143の共重合体であり、

前記シアン顔料分散体は、顔料分散剤としてefka4570(固形分60%、EFKA社製)12部、イオン交換水68部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル5部に、C.I.ピグメントブルー15:3を15部添加して分散した、顔料固形分15%のシアン顔料分散体である、

インクジェットインク。」

ウ 前記「甲2A発明」と前記「甲2B発明」を総称して、「甲2発明」ともいう。

(2)本件発明1(甲2A発明を主引用発明とした場合)

ア 対比

甲2A発明の「非吸収性記録媒体に用いられるインクジェットインクC-1」は、本件発明1の「非浸透性基材上への画像の記録に用いられ」る「インクジェットインク組成物」に相当する。

甲2A発明の「イオン交換水」は、本件発明1の「水(A)」に相当する。

甲2A発明の「共重合樹脂P-1」は、本件発明1の「樹脂(B)」に相当する。

甲2A発明の「N,N-ジメチルアミノエタノール」は、窒素原子及び水酸基を含み、沸点が133°C程度の有機溶媒であって、前記2(2)アの「ジメチルアミノエタノール」と同じであるから、そのSP値は、23.7[MPa

1/2

]である。

これに対して、甲2A発明の「共重合樹脂P-1」は、メタクリル酸メチル:アクリル酸n-ブチル:メタクリル酸のモノマー比が、52:36:12の共重合体であって、乙1の方法で算出したメタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸のSP値はそれぞれ、19.5、18.3、24.0であるから、「共重合樹脂P-1」のSP値は、(19.5×52+18.3×36+24.0×12)/100≒19.6[MPa

1/2

]である。(重合状態のアクリル酸n-ブチルのSP値は、「-CH

2

-」と「>CH-(Poly)」と「-COO-(Poly)」と「-CH

2

-」と「CH

3

-」とに分解できるから、(132+28.6+330+132×3+205)/(16.5+1.9+22.0+16.5×3+31.8)×2.0455≒18.3)

そうすると、甲2A発明の「N,N-ジメチルアミノエタノール」は、「共重合樹脂P-1」とのSP値の差分が23.7-19.6=4.1であって、「|SP

C

-SP

B

|≦10.0・・・ 式(C1)」を充足するから、本件発明1の「沸点が250°C以下であり、下記式(C1)を満足する、窒素原子及び水酸基を含む有機溶剤(C)」に相当する。

甲2A発明における窒素原子を含まない有機溶剤は、「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」及び「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」である。

そして、「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」のSP値を、乙1の手法で計算すると、その構造は「-CH

3

」1つと、「-CH

2

-」7つと、「-O-」2つと、「-OH(monoalcohol)」1つに分解できるから、SP値は、(205×1+132×7+120×2+395×1)/(31.8×1+16.5×7+5.1×2+10×1)×2.0455≒21.5[MPa

1/2

]である。

また、「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」のSP値を、乙1の手法で計算すると、その構造は「-CH

3

」1つと、「-CH

2

-」5つと、「-O-」2つと、「-OH(monoalcohol)」1つに分解できるから、SP値は、(205×1+132×5+120×2+395×1)/(31.8×1+16.5×5+5.1×2+10×1)×2.0455≒22.8[MPa

1/2

]である。

これに対して、甲2A発明において、本件発明1の「有機溶剤(C)中の主たる有機溶剤」に対応するものは「N,N-ジメチルアミノエタノール」であるから、そのSP値は23.7[MPa

1/2

]である。

そうすると、甲2A発明の「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」及び「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」は、「N,N-ジメチルアミノエタノール」とのSP値の差分が、いずれも「|SP

D

-SP

CM

|≦5.0 ・・・ 式(D1)」を充足するから、本件発明1の「下記式(D1)を満足する、窒素原子を含まない有機溶剤(D)」に相当する。

そして、甲2A発明において、インクジェットインク全体に対する「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」及び「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」の含有量は、5+10+20×5/100=16質量%である。

甲2A発明において、酸価が78mgKOH/gである「共重合樹脂P-1」5部に対する「N,N-ジメチルアミノエタノール」の添加量は、「共重合樹脂P-1の酸基の化学当量数に対して1.05倍の化学当量数相当となる量」であるから、KOHとN,N-ジメチルアミノエタノールの分子量がそれぞれ、56.1、89.1であることを考慮すれば、5×89.1×78×10

-3

/56.1×1.05≒0.65部である。そうすると、「共重合樹脂P-1」に対する「N,N-ジメチルアミノエタノール」の含有質量比は0.65/5=0.13である。

してみれば、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>

「非浸透性基材上への画像の記録に用いられ、

水(A)と、

樹脂(B)と、

沸点が250°C以下であり、下記式(C1)を満足する、窒素原子及び水酸基を含む有機溶剤(C)と、

下記式(D1)を満足する、窒素原子を含まない有機溶剤(D)と、

前記有機溶剤(C)及び前記有機溶剤(D)以外の有機溶剤である有機溶剤(E)と、

を含有する、

インクジェットインク組成物。

|SP

C

-SP

B

|≦10.0 ・・・ 式(C1)

式(C1)中、SP

B

は、樹脂(B)中の主たる樹脂のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、SP

C

は、前記有機溶剤(C)のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、|SP

C

-SP

B

|は、SP

C

とSP

B

との差の絶対値を表す。

|SP

D

-SP

CM

|≦5.0 ・・・ 式(D1)

式(D1)中、SP

CM

は、前記有機溶剤(C)中の主たる有機溶剤のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、SP

D

は、前記有機溶剤(D)のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、|SP

D

-SP

CM

|は、SP

D

とSP

CM

との差の絶対値を表す。」

<相違点2-1>

本件発明1は「樹脂(B)中の主たる樹脂に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比が、0.17以上2.0未満」であるのに対し、甲2A発明は、「共重合樹脂P-1」に対する「N,N-ジメチルアミノエタノール」の含有質量比が0.13である点。

<相違点2-2>

本件発明1は「有機溶剤(D)の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対し、0.01質量%~5.0質量%」であるのに対し、甲2A発明は、インクジェットインクに対する「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」及び「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」の含有質量比が16質量%である点。

事案に鑑み、まず、相違点2-2ついて検討する。甲2A発明の有機溶剤について、甲2の[0051]に「本発明のインクには低表面張力の有機溶剤を添加することが好ましい。」と記載され、同[0062]に各種アルコール類、アミン類等が列挙されているものの、本件発明1のように、「窒素原子及び水酸基を含む有機溶剤(C)」との間で「下記式(D1)を満足する、窒素原子を含まない有機溶剤(D)」について、「有機溶剤(D)の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対し、0.01質量%~5.0質量%」となるように調整することについては記載も示唆もない。そうすると、甲2A発明において、インクジェットインクに対する「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」及び「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」の含有質量比が16質量%であったものを、0.01質量%~5.0質量%程度に調整することは、当業者が容易になし得たことではない。

また、甲1、甲3~甲7にも、前記したような記載や示唆はないから、これらの甲号証に基づいて、甲2A発明における、インクジェットインクに対する「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」及び「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」の含有質量比を、0.01質量%~5.0質量%程度に調整することは、当業者が容易になし得たことではない。

そうすると、前記相違点2-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2A発明ではない。また、本件発明1は、甲2A発明及び甲1~甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明1(甲2B発明を主引用発明とした場合)

ア 対比

本件発明1と甲2B発明を対比すると、両者は少なくとも前記(2)の相違点2-2と同じ点で相違する。

そうすると、前記(2)で検討したのと同じ理由により、本件発明1は、甲2B発明ではない。また、本件発明1は、甲2B発明及び甲1~甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)本件発明2~7

本件発明2~7は、本件発明1を引用しさらに限定を付加したものであるから、本件発明2~7は、前記(2)及び(3)と同様の理由により、甲2発明ではないし、甲2発明及び甲1~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

4 甲3を主引例とした新規性、進歩性

(1)甲3に記載された発明

甲3の【0166】の【表3】の「実施例7」に着目し、「シアン顔料分散液4」について同【0147】の記載を、「バインダー樹脂Aの水性化溶液(固形分30%)」について、同【0148】及び【0149】の記載を、また、評価インキ7の特性について同【0025】の記載を参酌すれば、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。

<甲3発明>

「コート紙、アート紙、微塗工紙等の難吸収性基材を用いても、白抜けのない優れた印刷画質を有し、かつ種々の塗膜耐性に優れる印刷物を得ることができ、更に、インクジェットノズルからの吐出安定性及び印刷時の乾燥性に優れる水性インクジェットインキであって、

シアン顔料分散液4を20.0部、バインダー樹脂Aの水性化溶液(固形分30%)を20.0部(固形分換算で6.0部)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを15.0部、及び45部の水からなり、

前記シアン顔料分散液4は、キャボット社製自己分散型銅フタロシアニン顔料分散液であるCabojet250C(顔料濃度10%)であり、

前記バインダー樹脂Aの水性化溶液(固形分30%)は、メタクリル酸を7.5部、メチルメタクリレートを67.5部、及びブチルメタクリレートを25部を重合して得たバインダー樹脂Aを、ジメチルアミノエタノールを9.2部添加して中和し、固形分が30%になるように調整したものである、

水性インクジェットインキ。」

(2)本件発明1

ア 対比

甲3発明の「コート紙、アート紙、微塗工紙等の難吸収性基材を用いても、白抜けのない優れた印刷画質を有し、かつ種々の塗膜耐性に優れる印刷物を得ることができ、更に、インクジェットノズルからの吐出安定性及び印刷時の乾燥性に優れる水性インクジェットインキ」は、本件発明1の「非浸透性基材上への画像の記録に用いられ」る「インクジェットインク組成物」に相当する。

甲3発明の「水」は、本件発明1の「水(A)」に相当する。

甲3発明の「バインダー樹脂A」は、本件発明1の「樹脂(B)中の主たる樹脂」に相当する。

甲3発明に含まれる有機溶剤のうち、窒素原子及び水酸基を含むものは、「ジメチルアミノエタノール」のみであり、前記2で検討したとおり、その沸点は133°C程度であり、SP値は23.7[MPa

1/2

]である。

これに対して、甲3発明の「バインダー樹脂A」は、「メタクリル酸7.5部」、「メチルメタクリレート67.5部」及び「ブチルメタクリレート25部」の共重合物であって、各構成単位のSP値は、特許異議申立書に記載された次の表のとおり、それぞれ、21.8、19.7及び18.6と計算できるから、バインダー樹脂AのSP値は、(19.7×67.5+18.6×25+21.8×7.5)/100≒19.6と計算できる。

69

136

0001429961000025.jpg

そうすると、甲3発明の「ジメチルアミノエタノール」は、「バインダー樹脂A」(樹脂(B)に相当)とのSP値の差分が、23.7-19.6=4.1であって、「|SP

C

-SP

B

|≦10.0・・・ 式(C1)」を充足するから、本件発明1の「沸点が250°C以下であり、下記式(C1)を満足する、窒素原子及び水酸基を含む有機溶剤(C)

|SP

C

-SP

B

|≦10.0 ・・・ 式(C1)」に相当する。

甲3発明における、窒素原子を含まない有機溶剤は、「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」であり、そのSP値は、前記3で計算したとおり、22.8[MPa

1/2

]である。

そうすると、甲3発明の「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」は、「ジメチルアミノエタノール」とのSP値の差分が23.7-22.8=0.9であって、「|SP

D

-SP

CM

|≦5.0 ・・・ 式(D1)」を充足するから、本件発明1の「下記式(D1)を満足する、窒素原子を含まない有機溶剤(D)」に相当する。

甲3発明において、インク組成物の全量に対する「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」(有機溶剤(D)に相当。)の合計含有量は15/100×100=15質量%である。

そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>

「非浸透性基材上への画像の記録に用いられ、

水(A)と、

樹脂(B)と、

沸点が250°C以下であり、下記式(C1)を満足する、窒素原子及び水酸基を含む有機溶剤(C)と、

下記式(D1)を満足する、窒素原子を含まない有機溶剤(D)と、

を含有する、

インクジェットインク組成物。

|SP

C

-SP

B

|≦10.0 ・・・ 式(C1)

式(C1)中、SP

B

は、樹脂(B)中の主たる樹脂のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、SP

C

は、前記有機溶剤(C)のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、|SP

C

-SP

B

|は、SP

C

とSP

B

との差の絶対値を表す。

|SP

D

-SP

CM

|≦5.0 ・・・ 式(D1)

式(D1)中、SP

CM

は、前記有機溶剤(C)中の主たる有機溶剤のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、SP

D

は、前記有機溶剤(D)のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、|SP

D

-SP

CM

|は、SP

D

とSP

CM

との差の絶対値を表す。」

<相違点3-1>

本件発明1は「樹脂(B)中の主たる樹脂に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比が、0.17以上2.0未満」であるのに対し、甲3発明は、「バインダー樹脂A」に対する「ジメチルアミノエタノール」の含有質量比が9.2/100=0.092である点。

<相違点3-2>

本件発明1は「有機溶剤(D)の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対し、0.01質量%~5.0質量%」であるのに対し、甲3発明は、インクジェットインクに対する「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」の含有質量比が15質量%である点。

事案に鑑み、まず、相違点3-2について検討する。甲3発明の有機溶剤の添加量について、甲3の【0053】に「本実施形態の水性インキにおいて、特定水溶性有機溶剤の含有量は、水性インキ全量に対して、15~50重量%・・・であり、最も好ましくは20~30重量%である。」と記載され、同【0055】に「炭素数が4以上であるアルカンジオールの含有量は、水溶性有機溶剤全量に対して10~95重量%であることが好ましく、・・・50~85重量%であることが特に好ましい。」と記載されているものの、本件発明1のように、「窒素原子及び水酸基を含む有機溶剤(C)」との間で「下記式(D1)を満足する、窒素原子を含まない有機溶剤(D)」について、「有機溶剤(D)の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対し、0.01質量%~5.0質量%」となるように調整することについては記載も示唆もない。そうすると、甲3発明において、インクジェットインクに対する「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」の含有質量比が15質量%であったものを、0.01質量%~5.0質量%程度に調整することは、当業者が容易になし得たことではない。

また、甲1、甲2、甲4~甲7にも、前記したような記載や示唆はないから、これらの甲号証に基づいて、甲3発明における、インクジェットインクに対する「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」の含有質量比を、0.01質量%~5.0質量%程度に調整することは、当業者が容易になし得たことではない。

そうすると、前記相違点3-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び甲1~甲7に記載された事項にもとづいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ まとめ

してみると、本件発明1は、甲3発明ではない。また、本件発明1は、甲3発明及び甲1~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明2~7

本件発明2~7は、本件発明1を引用しさらに限定を付加したものであるから、本件発明2~7は、前記(2)と同様の理由により、甲3発明ではないし、甲3発明及び甲1~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

5 甲4を主引例とした新規性、進歩性

(1)甲4に記載された発明

甲4の【0146】の【表3】の「試料13(No.13)」のインクに着目し、その製法について同【0143】及び【0133】の記載を、「水溶性樹脂C」について【0131】及び【0132】の記載を、インクの用途について同【0005】及び【0138】の記載を参酌すれば、甲4には次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものと認められる。

<甲4発明>

「記録媒体として軟質塩化ビニルシートが用いられるインクジェットプリンター用のインクであって、

水溶性樹脂Cの水溶液を30質量部、イオン交換水5.2部、1,2-ヘキサンジオールを5質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを10質量部、界面活性剤としてメガファックF-444(DIC株式会社製)を0.1質量部、オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)を1質量部、市販品の二酸化チタンである「NanoTek(R) Slurry(固形分濃度15質量%、シーアイ化成株式会社製)」の48.7質量部を攪拌して得た白色インクであって、

水溶性樹脂Cはインク全体の質量に対して6質量%含有され、顔料はインク全体の質量に対して10質量%含有され

前記水溶性樹脂Cは、メタクリル酸メチルを77質量部、アクリル酸ブチルを6質量部、アクリル酸2-エチルヘキシルを7質量部、およびメタクリル酸を10質量部を重合して得た酸価64の共重合体にDMAEを加えて中和して得たものを含む、樹脂固形分20質量%の水溶性アクリル樹脂の水溶液であって、DMAEの添加量は、水溶性樹脂Cの酸性基の化学当量数に対して1.05倍の化学当量数である、

インク。」

(2)本件発明1

ア 対比

甲4発明の「記録媒体として軟質塩化ビニルシートが用いられるインクジェットプリンター用のインク」は、本件発明1の「非浸透性基材上への画像の記録に用いられ」る「インクジェットインク組成物」に相当する。

甲4発明の「イオン交換水」は、本件発明1の「水(A)」に相当する。

甲4発明の「水溶性樹脂C」は、本件発明1の「樹脂(B)中の主たる樹脂」に相当する。

甲4発明の「DMAE」は、ジメチルアミノエタノールの略称であって、前記2で検討したとおり、その沸点は133°C程度であり、そのSP値は23.7[MPa

1/2

]である。

これに対して、甲4発明の「水溶性樹脂C」は、「MMA(メタクリル酸メチル77質量部」「BA(アクリル酸ブチル)6質量部」「EHA(アクリル酸2-エチルヘキシル)7質量部」「MAA(メタクリル酸)10質量部」の共重合物であって、その各構成単位のSP値は、特許異議申立書に記載された次の表のとおり、それぞれ、19.7、19.4、18.2及び21.8と計算できるから、水溶性樹脂CのSP値は、(19.7×77+19.4×6+18.2×7+21.8×10)/100=19.8と計算できる。

55

136

0001429961000026.jpg

そうすると、甲4発明の「DMAE」は、「水溶性樹脂C」(樹脂(B)に相当)とのSP値の差分が、23.7-19.8=3.9であって、「|SP

C

-SP

B

|≦10.0・・・ 式(C1)」を充足するから、本件発明1の「沸点が250°C以下であり、下記式(C1)を満足する、窒素原子及び水酸基を含む有機溶剤(C)

|SP

C

-SP

B

|≦10.0 ・・・ 式(C1)」に相当する。

甲4発明における、窒素原子を含まない有機溶剤は、「1,2-ヘキサンジオール」及び「ジプロピレングリコールモノメチルエーテル」である。

そして、「1,2-ヘキサンジオール」のSP値を、乙1の手法で計算すると、その構造は「-CH

3

」1つと、「-CH

2

-」3つと、「>CH-」2つと、「-OH(Diol)」2つに分解できるから、SP値は、(205×1+132×3+28.6×2+270×2)/(31.8×1+16.5×3+-1.0×2+12.0×2)×2.0455≒23.7[MPa

1/2

]である。

また、「ジプロピレングリコールモノメチルエーテル」のSP値を、乙1の手法で計算すると、その構造は「-CH

3

」1つと、「-CH

2

-」6つと、「-O-」2つと、「-OH(monoalcohol)」1つに分解できるから、SP値は、(205×1+132×6+120×2+395×1)/(31.8×1+16.5×6+5.1×2+10×1)×2.0455≒22.1[MPa

1/2

]である。

そうすると、甲4発明の「1,2-ヘキサンジオール」及び「ジプロピレングリコールモノメチルエーテル」は、「DMAE」とのSP値の差分が、いずれも「|SP

D

-SP

CM

|≦5.0 ・・・ 式(D1)」を充足するから、本件発明1の「下記式(D1)を満足する、窒素原子を含まない有機溶剤(D)」に相当する。

そして、甲4発明において、インクジェットインク全体に対する「1,2-ヘキサンジオール」及び「ジプロピレングリコールモノメチルエーテル」の含有量は、5+10=15質量%である。

甲4発明において、酸価が64mgKOH/gである「水溶性樹脂C」6質量%に対する「DMAE」の添加量は、「水溶性樹脂Cの酸基の化学当量数に対して1.05倍の化学当量数相当となる量」であるから、KOHとDMAEの分子量がそれぞれ、56.1、89.1であることを考慮すれば、6×89.1×64×10

-3

/56.1×1.05≒0.64部である。そうすると、「水溶性樹脂C」に対する「DMAE」の含有質量比は0.64/6=0.11である。

そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>

「非浸透性基材上への画像の記録に用いられ、

水(A)と、

樹脂(B)と、

沸点が250°C以下であり、下記式(C1)を満足する、窒素原子及び水酸基を含む有機溶剤(C)と、

下記式(D1)を満足する、窒素原子を含まない有機溶剤(D)と、

を含有する、

インクジェットインク組成物。

|SP

C

-SP

B

|≦10.0 ・・・ 式(C1)

式(C1)中、SP

B

は、樹脂(B)中の主たる樹脂のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、SP

C

は、前記有機溶剤(C)のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、|SP

C

-SP

B

|は、SP

C

とSP

B

との差の絶対値を表す。

|SP

D

-SP

CM

|≦5.0 ・・・ 式(D1)

式(D1)中、SP

CM

は、前記有機溶剤(C)中の主たる有機溶剤のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、SP

D

は、前記有機溶剤(D)のMPa

1/2

単位でのSP値を表し、|SP

D

-SP

CM

|は、SP

D

とSP

CM

との差の絶対値を表す。」

<相違点4-1>

本件発明1は「樹脂(B)中の主たる樹脂に対する前記有機溶剤(C)の含有質量比が、0.17以上2.0未満」であるのに対し、甲4発明は、「水溶性樹脂C」に対する「DMAE」の含有質量比が0.11である点。

<相違点4-2>

本件発明1は「有機溶剤(D)の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対し、0.01質量%~5.0質量%」であるのに対し、甲4発明は、インクジェットインクに対する「1,2-ヘキサンジオール」及び「ジプロピレングリコールモノメチルエーテル」の含有質量比が15質量%である点。

事案に鑑み、まず、相違点4-2について検討する。甲4発明の有機溶剤の添加量について、甲4の【0066】に「表面張力が低い水溶性有機溶剤の含有量は、インク全体に対して1~30質量%であることが好ましい。1質量%未満であると、記録媒体上での濡れ広がりが十分ではなく、30質量%超であると、乾燥性が悪く画像が滲むからである。」と記載され、同【0079】に「疎水性樹脂からなる記録媒体を溶解、軟化または膨潤させる水溶性有機溶剤の含有量は、インク全体に対して0.1質量%以上40質量%未満であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましい。0.1質量%未満であると、記録媒体を軟化または膨潤させる効果が十分には得られないことがあり、40質量%以上であると、プリンター部材を膨潤、劣化させることがある。」と記載されているものの、本件発明1のように、「窒素原子及び水酸基を含む有機溶剤(C)」との間で「下記式(D1)を満足する、窒素原子を含まない有機溶剤(D)」について、「有機溶剤(D)の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対し、0.01質量%~5.0質量%」となるように調整することについては記載も示唆もない。そうすると、甲4発明において、インクジェットインクに対する「1,2-ヘキサンジオール」及び「ジプロピレングリコールモノメチルエーテル」の含有質量比が15質量%であったものを、0.01質量%~5.0質量%程度に調整することは、当業者が容易になし得たことではない。

また、甲1~甲3、甲5~甲7にも、前記したような記載や示唆はないから、これらの甲号証に基づいて、甲4発明における、インクジェットインクに対する「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」の含有質量比を、0.01質量%~5.0質量%程度に調整することは、当業者が容易になし得たことではない。

そうすると、前記相違点4-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明及び甲1~甲7に記載された事項にもとづいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ まとめ

してみると、本件発明1は、甲4発明ではない。また、本件発明1は、甲4発明及び甲1~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明2~7

本件発明2~7は、本件発明1を引用しさらに限定を付加したものであるから、本件発明2~7は、前記(2)と同様の理由により、甲4発明ではないし、甲4発明及び甲1~甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第7 むすび

以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由及び取消理由通知書に記載した取消理由等によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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