sokuhyo

Trademark Appeal Case

訂正後の特許維持

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023701246
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7300847号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、5について訂正することを認める。
特許第7300847号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7300847号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成31年2月22日の出願であって、令和5年6月22日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、同年11月27日に特許異議申立人鈴木多香子(以下、「申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~4)がなされ、同年12月28日に特許異議申立人西田友美(以下、「申立人B」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がなされたものである。

その後の手続の経緯は以下のとおりである。

令和6年 3月 4日付け:取消理由通知

同年 4月19日 :訂正請求書及び意見書(特許権者)

同年 同月26日付け:手続補正指令(方式)

同年 5月14日 :訂正請求書の手続補正書(方式)

同年 5月17日付け:訂正請求があった旨の通知

(特許法第120条の5第5項)

同年 6月24日 :意見書(申立人B)

同年 9月26日付け:取消理由通知(決定の予告)

同年11月27日 :訂正請求書及び意見書(特許権者)

令和7年 1月 9日付け:手続補正指令(方式)

同年 2月 5日 :訂正請求書の手続補正書(方式)

同年 同月10日付け:訂正請求があった旨の通知

(特許法第120条の5第5項)

同年 3月17日 :意見書(申立人B)

同年 5月15日付け:取消理由通知(決定の予告)

同年 7月 2日 :訂正請求書及び意見書(特許権者)

なお、令和6年5月17日付け及び令和7年2月10日付け訂正請求があった旨の通知のいずれに対しても、申立人Aからは何ら応答がなかった。

上記のとおり、特許権者から令和7年7月2日に訂正請求書が提出され、訂正の請求がされたので、特許法第120条の5第7項の規定により、令和6年4月19日に提出され、同年5月14日に提出された手続補正書(方式)により補正された訂正請求書及び令和6年11月27日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、いずれも取り下げられたものとみなす。

また、既に申立人A及びBに意見書の提出の機会が与えられており、下記第2のとおり、令和7年7月2日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第6及び第7のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したから、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときに該当し、申立人A及びBに再度の意見書の提出の機会は与えない。

以下、令和7年7月2日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。

第2 訂正請求について

1.訂正の内容

本件訂正請求の趣旨は、「特許第7300847号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものであり、本件訂正の内容は以下のとおりである。

なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。

(1)訂正事項1

請求項1について、「ガレート型カテキンを1~150ppm、フェネチルアルコールを0.4ppb以上含有し、pHが5.0~8.0である飲料。」とあるのを「紅茶抽出物を含有し、Brixが1以下である飲料であって、ガレート型カテキンを1~30ppm、フェネチルアルコールを0.4ppb以上含有し、pHが5.0~8.0である、上記飲料。」と訂正する。

請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。

(2)訂正事項2

請求項2について、「Brixが1以下である、請求項1に記載の飲料。」とあるのを「飲料のpHが5.5以上である、請求項1に記載の飲料。」と訂正する。

請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3及び4も同様に訂正する。

(3)訂正事項3

請求項3について、「茶抽出物を含有する容器詰飲料である、請求項1または2に記載の飲料。」とあるのを「容器詰飲料である、請求項1または2に記載の飲料。」と訂正する。

請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。

(4)訂正事項4

請求項4について、「ガレート型カテキンの含有量が65ppm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の飲料。」とあるのを「ガレート型カテキンの含有量が3ppm以上である、請求項1~3のいずれかに記載の飲料。」と訂正する。

(5)訂正事項5

請求項5について、「ガレート型カテキンを1~150ppm含有し、pHが5.0~8.0である飲料を製造する方法であって、フェネチルアルコールの含有量を0.4ppb以上に調整することを含む、上記方法。」とあるのを「ガレート型カテキンを1~30ppm含有し、pHが5.0~8.0であり、Brixが1以下である飲料を製造する方法であって、フェネチルアルコールの含有量を0.4ppb以上に調整することを含む、上記方法。」に訂正する。

なお、訂正事項1~4に係る訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、訂正後の請求項1~4は訂正事項1~4によって直接又は連動して訂正される。また、訂正事項5に係る訂正前の請求項5は独立形式の請求項であり、従属する請求項はなく、訂正後の請求項5に訂正される。

よって、本件訂正は、請求項1~4について一群の請求項ごとに請求されたものであり、請求項5について請求項ごとに請求されたものである。

2.訂正の適否

(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

ア 訂正事項1について

訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載されていた「飲料」という発明特定事項を、願書に添付した明細書の[0020]及び[0032]並びに[0018]等の記載に基づいて「紅茶抽出物を含有し、Brixが1以下である飲料」に訂正し、請求項の冒頭に記載すると同時に、請求項の末尾を「、上記飲料」と訂正することによって記載を整合させ、さらに、本件訂正前の請求項1に記載されていた「ガレート型カテキンを1~150ppm」を、願書に添付した明細書の[0011]等の記載に基づいて「ガレート型カテキンを1~30ppm」に訂正するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~4についても同様である。

よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

イ 訂正事項2について

訂正事項2は、本件訂正前の請求項2に「Brixが1以下である、請求項1に記載の飲料。」と記載されていたところ、上記訂正事項1によって請求項1の飲料が「Brixが1以下である」と訂正されることから、重複記載を避ける目的で、請求項2における「Brixが1以下である」という記載を削除し、さらに、本件訂正前の請求項1を引用する請求項2に係る発明が、「pHが5.0~8.0」であったものを、願書に添付した明細書の[0017]等の記載に基づいて「飲料のpHが5.5以上」という記載を付加することにより飲料のpHの範囲を狭くするものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項2が、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3及び4についても同様である。

よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び同第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

ウ 訂正事項3について

訂正事項3は、本件訂正前の請求項3に「茶抽出物を含有する容器詰飲料である、請求項1または2に記載の飲料。」と記載されていたところ、上記訂正事項1によって、請求項1の飲料が「茶抽出物」より下位概念の「紅茶抽出物」を含有する飲料に減縮されることから、それに伴って不整合が生じるのを避ける目的で、請求項3における「茶抽出物を含有する」という記載を削除し、「容器詰飲料である、請求項1または2に記載の飲料。」に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、訂正事項3が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であること、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。請求項3を引用する請求項4についても同様である。

よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

エ 訂正事項4について

訂正事項4は、本件訂正前の請求項4において、ガレート型カテキンの含有量が「65ppm以下」と特定され、本件訂正前の請求項4が引用する請求項1においては、ガレート型カテキンの含有量が「1~150ppm」と特定されていたところ、上記訂正事項1によって、請求項4が引用する請求項1におけるガレート型カテキンの含有量が「1~30ppm」と訂正されることを受け、さらに、願書に添付した明細書の[0011]等の記載に基づいて、ガレート型カテキンの含有量を「3ppm以上」に訂正するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。

よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

オ 訂正事項5について

訂正事項5は、本件訂正前の請求項5に記載されていた「ガレート型カテキンを1~150ppm含有し」を、願書に添付した明細書の[0011]等の記載に基づいて「ガレート型カテキンを1~30ppm含有し」に訂正し、さらに、願書に添付した明細書の[0018]等の記載に基づいて、「Brixが1以下」という発明特定事項を本件訂正前の請求項5の発明特定事項に直列的に付加するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。

よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(2)独立特許要件について

本件においては、訂正前のすべての請求項1~6に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1~5に係る訂正事項1~5については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3.訂正請求についてのまとめ

以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

よって、訂正後の請求項〔1~4〕、5について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「[請求項1]

紅茶抽出物を含有し、Brixが1以下である飲料であって、

ガレート型カテキンを1~30ppm、フェネチルアルコールを0.4ppb以上含有し、pHが5.0~8.0である、上記飲料。

[請求項2]

飲料のpHが5.5以上である、請求項1に記載の飲料。

[請求項3]

容器詰飲料である、請求項1または2に記載の飲料。

[請求項4]

ガレート型カテキンの含有量が3ppm以上である、請求項1~3のいずれかに記載の飲料。

[請求項5]

ガレート型カテキンを1~30ppm含有し、pHが5.0~8.0であり、Brixが1以下である飲料を製造する方法であって、フェネチルアルコールの含有量を0.4ppb以上に調整することを含む、上記方法。

[請求項6]

ガレート型カテキンを1~150ppm含有し、pHが5.0~8.0である飲料において、ガレート型カテキンに由来する苦味を軽減する方法であって、フェネチルアルコールの含有量を0.4ppb以上に調整することを含む、上記方法。」

第4 特許異議申立理由の概要

1.申立人A

申立人Aは、特許異議申立書とともに証拠方法として下記(5)に示す甲第1号証~甲第8号証(以下、申立人Aが提出した甲第1号証~甲第8号証を、それぞれ「甲1A」~「甲8A」のようにいう。)を提出し、概略、下記(1)~(4)の特許異議申立理由を主張している。申立理由の番号は当審が仮に付与した。

(1)申立理由1A-1(甲1Aに基づく進歩性欠如)

本件発明1~4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1Aに記載された発明、甲1A~甲5Aに記載された事項及び周知技術に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)申立理由1A-2(甲2Aに基づく進歩性欠如)

本件発明1~4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲2Aに記載された発明、甲1A~甲5Aに記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)申立理由2A(サポート要件違反)

本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明1~4についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである(甲6A~甲8A参照)。

本件明細書には、フェネチルアルコールを0~5ppbの範囲で含有した飲料に関する試験結果が記載されるだけであるから、本件発明1はフェネチルアルコールを0.4ppb~5ppbの範囲で含有する飲料において、ガレート型カテキン由来の苦味を軽減する効果が得られると理解できるに止まる。また、フェネチルアルコールは苦味を有する成分であるから(甲6A)、本件発明1の飲料におけるフェネチルアルコールの含有量が多い場合は、本件発明1の課題である苦味軽減効果を損ない、飲みにくくすることは自明である。そして、飲みやすい飲料を提供することは当然の課題である。よって、本件発明1においてフェネチルアルコール含有量が5ppbを超える飲料については、本件発明1の課題を解決できると当業者は認識することができない。本件発明1に従属する本件発明2~4も同様である。

(4)申立理由3A(実施可能要件違反)

本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、本件発明1~4についての特許は同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである(甲6A~甲8A参照)。

「サポート要件違反」で述べたように、本件明細書の段落[0013]には「フェネチルアルコールの含有量が5ppbを超えると、飲料自体の味が損なわれるおそれがある」と記載され、本件明細書の実施例2においてはフェネチルアルコールを最大5ppbまで含有したサンプルを用いて苦味軽減効果を確認した官能評価結果を開示するだけであって、5ppbを超える範囲では、カテキン類由来の苦味を軽減できたとしても、本件明細書の記載に基づいて、飲料の味が損なわれることのない実用的な飲料を提供できないことは明らかである。よって、本件明細書は、フェネチルアルコールの含有量の上限が規定されていない本件発明1~4を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

(5)証拠方法

甲1A:特開2018-19643号公報

甲2A:特開2014-68631号公報

甲3A:特開2016-15924号公報

甲4A:川井英雄,鷹野真二,内木美絵子,鈴木桂子,兼次忠雍,「紅茶浸出液に添加したビタミンCに及ぼす加熱殺菌の影響」,日本食品工業学会誌,社団法人日本食品科学工学会,1994年7月,第41巻,第7号,p.493-497

甲5A:特開2003-102385号公報

甲6A:米元俊一,「本格焼酎の香味成分と美味しさ」,日本醸造協会誌,公益財団法人日本醸造協会,2017年2月,第112巻,第2号,p.96-107

甲7A:特願2019-31084号に係る令和4年7月28日付け拒絶理由通知書

甲8A:特願2019-31084号に係る令和4年9月14日提出の意見書

2.申立人B

申立人Bは、特許異議申立書とともに証拠方法として下記(9)に示す甲第1号証~甲第6号証(以下、申立人Bが提出した甲第1号証~甲第6号証を、それぞれ「甲1B」~「甲6B」のようにいう。)を提出し、概略、下記(1)~(4)の特許異議申立理由を主張している。また、申立人Bは、令和6年6月24日に提出した意見書とともに甲第7号証~甲第10号証(以下、申立人Bが提出した甲第7号証~甲第10号証を、それぞれ「甲7B」~「甲10B」のようにいう。)を提出し、概略、下記(5)~(8)の理由により、本件訂正請求後の本件発明1~4についての特許は、依然として特許法第29条の規定に違反してされたものであると主張している。申立理由の番号は当審が仮に付与した。

(1)申立理由1B(甲1Bに基づく新規性欠如)

本件発明1~6は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1Bに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)申立理由2B(甲1Bに基づく進歩性欠如)

本件発明1~6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1Bに記載された発明並びに甲1B~甲3B及び甲5Bに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)申立理由3B(甲5Bに基づく進歩性欠如)

本件発明1~6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲5Bに記載された発明並びに甲3B及び甲6Bに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(4)申立理由4B(サポート要件違反)

本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明1~6についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

本件明細書の[0013]には、「飲料中のフェネチルアルコールの含有量が5ppbを超えるとフェネチルアルコールの風味が強くなりすぎて飲料自体の味が損なわれるおそれがある」との記載が認められるが、そもそも飲料の味を好適なものとすることは飲料の発明において当然の課題であるから、「飲料自体の味が損なわれるおそれがある」範囲まで本件発明の課題が解決できると認識することは困難である。また、「飲料の味が損なわれる」とは、「飲用時に感じられるガレート型カテキン由来の刺激的な苦味」が強まる方向に変化する意味も包含し得るものであるが、本件明細書の実施例には、フェネチルアルコールの含有量が5ppbを超える飲料を調製したことも苦味を評価したことも記載されていないことから、5ppbを超えた場合に本件発明の課題を解決できるか否か具体的に把握することができない。そのため、フェネチルアルコールの含有量に関し5ppbを超える場合を包含する「0.4ppb以上」の全域において、本件発明の課題を解決できると認識することはできないから、本件発明1~6は発明の詳細な説明に記載したものではない。

(5)申立理由5B(甲7Bに基づく新規性欠如)

本件発明1及び3は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲7Bに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(6)申立理由6B(甲7Bに基づく進歩性欠如)

本件発明1~3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲7Bに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(7)申立理由7B(甲10Bに基づく新規性欠如)

本件発明1、3及び4は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲10Bに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(8)申立理由8B(甲10Bに基づく進歩性欠如)

本件発明1、3及び4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲10Bに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(9)証拠方法

甲1B:特開2016-15924号公報

甲2B:倉田正治,櫻井隆郎,「ガスクロマトグラフィー/質量分析法による茶飲料中カテキン類8種の一斉分析」,BUNSEKI KAGAKU,公益社団法人日本分析化学会,2012年,vol.61,No.1,p.63-68

甲3B:金子昌二,栗林剛,桑原秀明,高波修一,「茶系飲料における耐熱性菌の消長に関する研究」,長野県工技センター研報,長野県工業技術総合センター,2006年,No.1,p.F20-F23

甲4B:寺田志保子,前田有美恵,増井俊夫,鈴木裕介,伊奈和夫,「各種茶(緑茶,半発酵茶,紅茶)浸出液およびティードリンクス中のカフェニン,カテキン組成」,日本食品工業学会誌,社団法人日本食品科学工学会,1987年,vol.34,No.1,p.20-27

甲5B:特開2013-252128号公報

甲6B:特開2018-29567号公報

甲7B:特開2012-183010号公報

甲8B:大西利幸,小埜栄一郎,「茶の香気成分の貯蔵メカニズム 茶は香りをどのように繋ぎとめるのか?」,日本家政学会誌,一般社団法人日本家政学会,2016年4月16日,Vol.67,No.4,p.238~242

甲9B:Susanne Baldermann, Ziyin Yang, Tsuyoshi Katsuno, Vo Anh Tu, Nobuyuki Mase, Yoriyuki Nakamura, Naoharu Watanabe, "Discrimination of Green, Oolong, and Black Teas by GC-MS Analysis of Characteristic Volatile Flavor Compounds", American Journal of Analytical Chemistry, Scientific Research Publishing Inc., 2014 June, vol.5., No.9, p.620-632

甲10B:特開2018-75号公報

なお、証拠の表記は当審による。

第5 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要

本件発明1~5についての特許に対して、令和7年5月15日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。

1.取消理由3(甲7Bに基づく新規性欠如)

本件発明1~3及び5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲7Bに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

2.取消理由4(甲7Bに基づく進歩性欠如)

本件発明1~3及び5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲7Bに記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

第6 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての判断

当審は、取消理由通知(決定の予告)に記載したいずれの取消理由によっても、本件発明についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおり。

●取消理由3(甲7Bに基づく新規性欠如)及び取消理由4(甲7Bに基づく進歩性欠如)について

1.甲7Bに記載された事項

甲7Bには以下の事項が記載されている。

(7B-1)「[請求項1]

紅茶葉から紅茶抽出液を抽出する際および/または抽出後にエステラーゼで処理した紅茶抽出物から製造され、ポリフェノールをタンニン量に換算して60mg/100ml以上含有し、血糖値低下作用を有する紅茶飲料。

[請求項2]

前記エステラーゼが、タンナーゼおよびクロロゲン酸エステラーゼのいずれかまたは両方を含む、請求項1に記載の紅茶飲料。

・・・

[請求項6]

請求項1乃至5いずれか1項に記載の紅茶飲料を飲料用容器に充填してなる容器詰飲料。

・・・

[請求項8]

紅茶葉から紅茶抽出液を抽出する工程と、

前記紅茶抽出液を抽出する前記工程の際および/または前記紅茶抽出液を抽出する前記工程の後に前記紅茶抽出物をエステラーゼで処理する工程と、

を含み、

ポリフェノールをタンニン量に換算して60mg/100ml以上含有し、血糖値低下作用を有する紅茶飲料を製造する方法。

[請求項9]

前記エステラーゼが、タンナーゼおよびクロロゲン酸エステラーゼのいずれか又は両方を含む、請求項8に記載の紅茶飲料を製造する方法。」

(7B-2)「[発明が解決しようとする課題]

[0007]

ところが、本発明者らは、タンナーゼ処理された紅茶抽出物が血糖値を低下させることを新たに知見した。また、このことは、タンナーゼだけでなく、クロロゲン酸エステラーゼのようなエステラーゼで処理された紅茶抽出物に共通した作用であることが予測された。

[0008]

本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、抗肥満作用の高い紅茶飲料を提供することにある。」

(7B-3)「[0018]

<紅茶抽出液>

紅茶葉の抽出液は、例えば、抽出カラムに充填した原料茶類に水または熱水を一定流量で送水し、所定量の抽出液を得る方法や、抽出釜に茶葉を仕込み、所定量の水または熱水で一定時間浸積した後、茶葉と分離して抽出液を得る方法等、通常使用される方法を適宜選択して調製することができる。抽出倍率は、3倍~50倍が好ましい。抽出倍率とは、抽出に使用する茶葉重量に対する抽出溶媒の容量の比率のことをいう。抽出条件は、例えば、水または熱水の温度を35°C以上100°C以下とすることができる。抽出の際には、抽出助剤を添加してもよい。抽出助剤としては特に限定されず、従来公知の抽出助剤を用いることができる。例えば、抗酸化剤として、L-アスコルビン酸ナトリウムやL-アスコルビン酸を用いることができ、pH調整剤として、重炭酸ナトリウムや炭酸カリウムを用いることができる。また、これらの抽出助剤を、茶葉の質量に対して0.1~10質量%を添加して用いることができる。

[0019]

本発明では、これらの紅茶葉の抽出の際および/または抽出後にエステラーゼを作用させる。本発明のエステラーゼは、縮合型タンニンを分解できる作用を有するものであればよく、具体的には、ガレート型カテキンを非ガレート型カテキンに分解できる作用、または/及び、ガレート型テアフラビンを非ガレート型テアフラビンに分解できる作用を有するものが好ましい。例えば、ぺクチナーゼ、クロロゲン酸エステラーゼ、タンナーゼが挙げられるが、タンナーゼもしくはクロロゲン酸エステラーゼのいずれかまたは両方を用いると好ましく、タンナーゼが特に好ましい。タンナーゼとしては、タンニンを分解する活性を有するものであれば任意のものを使用することができる。また、クロロゲン酸エステラーゼとしては、クロロゲン酸エステルを分解する活性を有するものであれば任意のものを使用することができる。

[0020]

紅茶葉から紅茶抽出液を抽出した後にエステラーゼを作用させる場合、紅茶抽出液にそのままエステラーゼを添加してもよいし、たとえば10倍程度濃縮した紅茶抽出液にエステラーゼを添加してもよい。紅茶抽出液をエステラーゼ処理するとき、温度は、10°C以上60°C以下、好ましくは20°C以上55°C以下、より好ましくは20°C以上40°C以下とすることができる。また、pHを2.0以上8.0以下、好ましくは、4.0以上7.0以下に調製しておいてもよい。そして、このような条件下でエステラーゼを10分以上480分以下反応させることができる。

[0021]

本発明では、紅茶抽出液をエステラーゼ処理することにより、紅茶抽出液中のガレート型カテキンおよびガレート型テアフラビンを非ガレート型にすることができる。ガレート型の含有量を減少させることで、渋みが低減され、非ガレート型のポリフェノールを含有することで、血糖値低下作用を得ることができる。本発明の紅茶飲料に含有するガレート型カテキンとガレート型テアフラビンとの総量(mg/100ml)に対する非ガレート型カテキンと非ガレート型テアフラビンとの総量(mg/100ml)の比率は、2~15とすると好ましい。」

(7B-4)「[0022]

<ポリフェノール>

本発明の「紅茶飲料」は、「単体で混入された場合には苦渋味を感じる程度」のポリフェノールを含有する。ここで「ポリフェノール」とは、紅茶の抽出物から得られる紅茶葉由来ポリフェノールのみならず、これとは別途添加される一般的な植物に含有されるポリフェノール(添加ポリフェノール)をも含む意味である。ここで、「紅茶葉由来ポリフェノール」とは、本発明の紅茶飲料に用いられる主原料の紅茶葉由来のポリフェノールであり、紅茶飲料の製造において、主原料の紅茶葉から水または熱水などにて抽出されるものである。または別途調製した紅茶エキスも含まれる。

[0023]

「紅茶葉由来ポリフェノール」としては、ガレート型カテキンとしては、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキン3ガレート、カテキンガレートが挙げられる。また、非ガレート型カテキンとしては、カテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンが挙げられる。ガレート型テアフラビンとしては、テアフラビン3ガレート、テアフラビン3'ガレート、テアフラビン3,3'ジガレートが挙げられる。非ガレート型テアフラビンとしては、テアフラビンが挙げられる。

・・・

[0027]

前述の「単体で混入された場合には苦渋味を感じる程度」とは、茶ポリフェノールを紅茶に混入した場合に、渋く、苦くて飲用できないと官能的に感じられる程度である。ポリフェノールによる苦渋味は、一般に水または熱水で抽出した紅茶、緑茶、烏龍茶など茶類を飲用する場合にも、感じられる。しかし、上記の添加茶ポリフェノールを紅茶に混入すると、紅茶の苦渋味は、嗜好品としての飲用が困難な程度になる。苦渋味は飲用する個々人の味覚によって差異があるため、苦渋味の度合いは相対的なものであるが、一例として、タンニン量に換算して60mg/100ml以上が挙げられる。」

(7B-5)「[0031]

また、前記の総ポリフェノールはタンニン量に換算して、60mg/100ml以上250mg/100ml以下含有することが特に好ましい。このように、エステラーゼ処理された紅茶抽出液に、さらに上記の添加ポリフェノールを添加して、ポリフェノールを60mg/100ml以上250mg/100ml以下含有させることにより、抗酸化作用、抗菌作用、糖分解酵素の阻害作用によるダイエット効果といった保健機能を有する紅茶飲料とすることができる。また、紅茶飲料中「紅茶葉由来ポリフェノール」の含有量がタンニン量に換算して60mg/100ml以上250mg/100ml以下含有するとより好ましい。このタンニン量は、酒石酸鉄法により測定することができる。

[0032]

<紅茶飲料>

本発明の紅茶飲料は、紅茶葉由来の紅茶葉ポリフェノールを含有し、かつ、エステラーゼで処理された紅茶抽出物に添加茶ポリフェノール及び/またはその他のポリフェノールを添加し、更に、高甘味度甘味料及び/又は糖アルコールを、添加することが好ましい。」

(7B-6)「[0038]

一方、上記の本発明の紅茶飲料によれば、エステラーゼ処理をしてガレート型のカテキンを非ガレート型のカテキンとする。そのため、渋みを低減させることができる。また、渋みが残る場合は、高甘味度甘味料と糖アルコールとを添加させればよいため、環状オリゴ糖を添加する必要がない。したがって、紅茶飲料を低熱量に抑えつつ血糖値低下作用を有する紅茶飲料を提供することができる。

・・・

[0041]

また、本発明の紅茶飲料の製造方法においては、上記のエステラーゼ処理の後に70°C以上145°C以下、より好ましくは、90°Cから142°Cで、0.02分間から60分間、より好ましくは、0.03分間から40分間加熱する高温加熱工程を実行することができる。こうした加熱工程を実行することで、通常の紅茶飲料の殺菌工程を実行するとともに、同時にエステラーゼを失活させることができる。

[0042]

このようにして得られた茶抽出液を飲用に適する濃度に濃縮あるいは水で希釈して紅茶飲料を得る。あるいは、上記の紅茶抽出液を粉末化して即席粉末茶として利用してもよい。ここで得られる粉末茶は、冷水に対する溶解性、および溶液の冷却時の透明度に優れる。

[0043]

<容器詰飲料>

本発明の容器詰飲料は、上記の紅茶飲料を、従来公知の方法で飲料用容器に充填して得られる。

[0044]

飲料用容器としては、従来公知のガラス瓶、金属缶、紙、プラスチックなどが用いられ特に限定されない。また、容器とは、金属缶、PETボトル、紙容器などが用いられるがこれらに限定されない。また、容器詰紅茶飲料は、そのまま充填されていてもよく、必要に応じて殺菌処理が施されていてもよい。上記のうち、携帯が容易であり、栓の開閉が自由で軽量である点から、PETボトルが特に好ましい。

[0045]

容器詰飲料の場合、前述の加熱工程は、缶やPETボトル等の容器に充填した紅茶飲料に対して行ってもよい。殺菌工程において、加熱温度および加熱時間は、前述のとおりである。」

(7B-7)「[0049]

(実施例1)

まず、紅茶葉40g(スリランカ産セイロン紅茶、三井農林株式会社製)から紅茶抽出液を抽出倍率20倍で抽出した。抽出条件は、85°C、7分とした。次に、この濃縮抽出により得られた紅茶抽出液をタンナーゼ0.2g(タンナーゼKTFH、キッコーマン株式会社製)により、温度25~30°Cの下で60分間処理した。このタンナーゼ処理の後に、L-アスコルビン酸ナトリウム1g、重炭酸ナトリウム0.3gでpHを調製し、全量を1000mLとなるよう純水で希釈し、想定飲用濃度の2倍となるよう調製した。さらに、135°Cで30秒加熱する超高温殺菌を行い、紅茶飲料を得た。

[0050]

(実施例2)

タンナーゼ処理の後にキシリトール20g(ダニスコジャパン社製)及びスクラロース0.08g(三栄源エフ・エフ・アイ)を加えた以外は、実施例1と同様にした。

[0051]

(実施例3)

紅茶葉36g(ケニア産、三井農林株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にした。」

(7B-8)「[0055]

1.紅茶飲料の分析

実施例1、及び、比較例1について、分析を行った。分析項目は、以下のとおり。結果は、表1に示す。なお、表1中、TF-1は、テアフラビン3-モノガレートであり、TF-1'は、テアフラビン3'-モノガレートであり、TF-2は、テアフラビン3,3'-ジガレートである。

(1)pH

pH計(製品名:pHメーターM-13、堀場製作所社製)により測定した。

(2)吸光度

褐色度(420nm)及び濁度(720nm)について、紫外・可視分光強度計(製品名:分光光度計U-1500、日立ハイテク社製)により測定した。

(3)Brix値(糖度)

糖度計(製品名:デジタル示差濃度計DD-7、アタゴ社製、またはデジタル屈折計RX-5000α、アタゴ社製)により測定した。

(4)ポリフェノール

試料の紅茶飲料を酒石酸鉄法によるタンニン値を350mg/100mlに調製した。その他分析項目については、アサヒ飲料社定法にて測定した。

[0056]

[表1]

82

153

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[0057]

分析の結果、表1及び図1で示すように、実施例1~3では、ポリフェノール組成において非ガレート型カテキンの占める割合が多くなった。また、実施例1と実施例3とを比較すると、茶葉製法の違いによるポリフェノール組成の差が現れた。」

2.甲7Bに記載された発明

甲7Bの請求項1及び2(摘記7B-1)には、「紅茶葉から紅茶抽出液を抽出する際および/または抽出後にエステラーゼで処理した紅茶抽出物から製造され、ポリフェノールをタンニン量に換算して60mg/100ml以上含有し、血糖値低下作用を有する紅茶飲料。」及び「前記エステラーゼが、タンナーゼおよびクロロゲン酸エステラーゼのいずれかまたは両方を含む、請求項1に記載の紅茶飲料。」が記載されており、[0023](摘記7B-4)には、紅茶葉由来の「ポリフェノール」について、

ガレート型カテキン

としては、「

エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキン3ガレート、カテキンガレート

」が挙げられ、非ガレート型カテキンとしては、「カテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンが挙げられる」こと、[0019](摘記7B-3)には、「エステラーゼは、縮合型タンニンを分解できる作用を有するものであればよく、具体的には、

ガレート型カテキンを非ガレート型カテキンに分解

できる作用、または/及び、ガレート型テアフラビンを非ガレート型テアフラビンに分解できる作用を有するものが好まし」く、「

タンナーゼ

が特に好ましい」ことが記載されている。

また、紅茶飲料の製造方法については、請求項8及び9(摘記7B-1)には、「紅茶葉から紅茶抽出液を抽出する工程と、前記紅茶抽出液を抽出する前記工程の際および/または前記紅茶抽出液を抽出する前記工程の後に前記紅茶抽出物をエステラーゼで処理する工程と、を含み、ポリフェノールをタンニン量に換算して60mg/100ml以上含有し、血糖値低下作用を有する紅茶飲料を製造する方法。」及び「前記エステラーゼが、タンナーゼおよびクロロゲン酸エステラーゼのいずれか又は両方を含む、請求項8に記載の紅茶飲料を製造する方法。」が記載されており、[0020](摘記7B-3)には、「紅茶葉から紅茶抽出液を抽出した後にエステラーゼを作用させる場合、紅茶抽出液にそのままエステラーゼを添加してもよいし、たとえば10倍程度

濃縮した紅茶抽出液にエステラーゼを添加

してもよい」こと、[0041]~[0045](摘記7B-6)には、「エステラーゼ処理の後に・・・

高温加熱工程

を実行することができる。こうした加熱工程を実行することで、通常の紅茶飲料の殺菌工程を実行するとともに、同時にエステラーゼを失活させることができる」こと、「このようにして

得られた茶抽出液を飲用に適する濃度に濃縮あるいは水で希釈して紅茶飲料を得る

」こと、「

容器詰飲料

は、

上記の紅茶飲料を

、従来公知の方法で飲料用

容器に充填

して得られる」こと、及び「

容器詰飲料

の場合、

前述の加熱工程は、缶やPETボトル等の容器に充填した紅茶飲料に対して

行ってもよい」ことが記載されている。

さらに、これらの実施例として、[0049]の実施例1(摘記7B-7)には、「まず、

紅茶葉40g(スリランカ産セイロン紅茶、三井農林株式会社製)から紅茶抽出液を抽出倍率20倍で抽出し

た。

抽出条件は、85°C、7分

とした。次に、

この濃縮抽出により得られた紅茶抽出液をタンナーゼ0.2g(タンナーゼKTFH、キッコーマン株式会社製)により、温度25~30°Cの下で60分間処理し

た。

このタンナーゼ処理の後に、L-アスコルビン酸ナトリウム1g、重炭酸ナトリウム0.3gでpHを調製し、全量を1000mLとなるよう純水で希釈し、想定飲用濃度の2倍となるよう調製し

た。

さらに、135°Cで30秒加熱する超高温殺菌を行い、紅茶飲料を得た

。」ことが記載され、[0051]の実施例3(摘記7B-7)には、「

紅茶葉36g(ケニア産、三井農林株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様

にした。」ことが記載され、[0055]~[0056]の表1(摘記7B-8)には、「試料の紅茶飲料を

酒石酸鉄法によるタンニン値を350mg/100mlに調製

」して紅茶飲料を分析した結果が記載されているところ、[0031](摘記7B-5)に、「紅茶飲料中「紅茶葉由来ポリフェノール」の含有量が

タンニン量に換算して60mg/100ml以上250mg/100ml以下含有するとより好ましい

。この

タンニン量は、酒石酸鉄法により測定

することができる。」と記載されていることを参酌すると、[0056]の[表1]に記載された分析結果は、「想定飲用濃度の2倍となるよう調製」された実施例1等の飲料を希釈することなく分析した結果であると理解できる。

そうすると、甲7Bには、実施例1及び3等に基づいて、以下の発明が記載されている。

「紅茶葉40g(スリランカ産セイロン紅茶、三井農林株式会社製)から紅茶抽出液を抽出倍率20倍で、抽出条件は、85°C、7分として抽出し、次に、この濃縮抽出により得られた紅茶抽出液をタンナーゼ0.2g(タンナーゼKTFH、キッコーマン株式会社製)により、温度25~30°Cの下で60分間処理し、このタンナーゼ処理の後に、L-アスコルビン酸ナトリウム1g、重炭酸ナトリウム0.3gでpHを調整し、全量を1000mLとなるよう純水で希釈し、想定飲用濃度の2倍となるよう調製し、さらに、135°Cで30秒加熱する超高温殺菌を行って得た紅茶飲料であって、pHが5.3、Brix値が1.6、ガレート型カテキンであるエピガロカテキンガレートが4.1mg/100ml、ガロカテキンガレートが3.0mg/100ml、エピカテキンガレートが2.1mg/100ml、カテキンガレートが1.6mg/100mlである、紅茶飲料。」(以下、「甲7B実施例1発明」という。)

「紅茶葉36g(ケニア産、三井農林株式会社製)から紅茶抽出液を抽出倍率20倍で、抽出条件は、85°C、7分として抽出し、次に、この濃縮抽出により得られた紅茶抽出液をタンナーゼ0.2g(タンナーゼKTFH、キッコーマン株式会社製)により、温度25~30°Cの下で60分間処理し、このタンナーゼ処理の後に、L-アスコルビン酸ナトリウム1g、重炭酸ナトリウム0.3gでpHを調整し、全量を1000mLとなるよう純水で希釈し、想定飲用濃度の2倍となるよう調製し、さらに、135°Cで30秒加熱する超高温殺菌を行って得た紅茶飲料であって、pHが5.4、Brix値が1.6、ガレート型カテキンであるエピガロカテキンガレートが4.3mg/100ml、ガロカテキンガレートが3.1mg/100ml、エピカテキンガレートが1.6mg/100ml、カテキンガレートが1.4mg/100mlである、紅茶飲料。」(以下、「甲7B実施例3発明」という。)

「甲7B実施例1発明の紅茶飲料を想定飲用濃度になるよう2倍に希釈した飲料。」(以下、「甲7B実施例1希釈飲料発明」という。)

「甲7B実施例3発明の紅茶飲料を想定飲用濃度になるよう2倍に希釈した飲料。」(以下、「甲7B実施例3希釈飲料発明」という。)

「甲7B実施例1希釈飲料発明を缶やPETボトル等の容器に充填した容器詰め飲料。」(以下、「甲7B実施例1容器詰め希釈飲料発明」という。)

「甲7B実施例3希釈飲料発明を缶やPETボトル等の容器に充填した容器詰め飲料。」(以下、「甲7B実施例3容器詰め希釈飲料発明」という。)

「紅茶葉40g(スリランカ産セイロン紅茶、三井農林株式会社製)から紅茶抽出液を抽出倍率20倍で、抽出条件は、85°C、7分として抽出する工程、次に、この濃縮抽出により得られた紅茶抽出液をタンナーゼ0.2g(タンナーゼKTFH、キッコーマン株式会社製)により、温度25~30°Cの下で60分間処理する工程、このタンナーゼ処理の後に、L-アスコルビン酸ナトリウム1g、重炭酸ナトリウム0.3gでpHを調整し、全量を1000mLとなるよう純水で希釈し、想定飲用濃度の2倍となるよう調製する工程、さらに、135°Cで30秒加熱する超高温殺菌を行う工程を含む、紅茶飲料の製造方法であって、pHが5.3、Brix値が1.6、ガレート型カテキンであるエピガロカテキンガレートが4.1mg/100ml、ガロカテキンガレートが3.0mg/100ml、エピカテキンガレートが2.1mg/100ml、カテキンガレートが1.6mg/100mlである紅茶飲料の製造方法。」(以下、「甲7B実施例1製法発明」という。)

「紅茶葉36g(ケニア産、三井農林株式会社製)から紅茶抽出液を抽出倍率20倍で、抽出条件は、85°C、7分として抽出する工程、次に、この濃縮抽出により得られた紅茶抽出液をタンナーゼ0.2g(タンナーゼKTFH、キッコーマン株式会社製)により、温度25~30°Cの下で60分間処理する工程、このタンナーゼ処理の後に、L-アスコルビン酸ナトリウム1g、重炭酸ナトリウム0.3gでpHを調整し、全量を1000mLとなるよう純水で希釈し、想定飲用濃度の2倍となるよう調製する工程、さらに、135°Cで30秒加熱する超高温殺菌を行う工程を含む、紅茶飲料の製造方法であって、pHが5.4、Brix値が1.6、ガレート型カテキンであるエピガロカテキンガレートが4.3mg/100ml、ガロカテキンガレートが3.1mg/100ml、エピカテキンガレートが1.6mg/100ml、カテキンガレートが1.4mg/100mlである紅茶飲料の製造方法。」(以下、「甲7B実施例3製法発明」という。)

「甲7B実施例1製法発明の工程に加え、紅茶飲料を想定飲用濃度になるよう2倍に希釈する工程を含む、飲料の製造方法。」(以下、「甲7B実施例1希釈飲料製法発明」という。)

「甲7B実施例3製法発明の工程に加え、紅茶飲料を想定飲用濃度になるよう2倍に希釈する工程を含む、飲料の製造方法。」(以下、「甲7B実施例3希釈飲料製法発明」という。)

以下、「甲7B実施例1希釈飲料発明」及び「甲7B実施例3希釈飲料発明」をまとめて「甲7B希釈飲料発明」といい、「甲7B実施例1容器詰め希釈飲料発明」及び「甲7B実施例3容器詰め希釈飲料発明」をまとめて「甲7B容器詰め希釈飲料発明」といい、「甲7B実施例1希釈飲料製法発明」及び「甲7B実施例3希釈飲料製法発明」をまとめて「甲7B希釈飲料製法発明」ということがある。

3.本件発明1について

(1)本件発明1と甲7B希釈飲料発明との対比、判断

本件発明1と甲7B実施例1希釈飲料発明とを対比する。

甲7B実施例1希釈飲料発明は、甲7B実施例1発明の「紅茶飲料」を2倍に希釈したものであるから、同じく「紅茶飲料」であるといえ、本件発明1における「紅茶抽出物を含有」する「飲料」に相当する。

甲7B実施例1希釈飲料発明におけるBrix及びガレート型カテキンの含有量は、希釈前の甲7B実施例1発明の各量の二分の一になることが技術的に明らかである。ここで、希釈前の甲7B実施例1発明は、「Brix値が1.6」であり、「ガレート型カテキンであるエピガロカテキンガレートが4.1mg/100ml、ガロカテキンガレートが3.0mg/100ml、エピカテキンガレートが2.1mg/100ml、カテキンガレートが1.6mg/100mlである」から、ガレート型カテキンを合計すると10.8mg/100mlであり、紅茶飲料の比重を1.0としてppmに換算すると108ppmである。そうすると、甲7B実施例1希釈飲料発明におけるBrix値は0.8と計算されるから、本件発明1における「Brixが1以下である」を満たしており、甲7B実施例1希釈飲料発明におけるガレート型カテキンは、含有量が54ppmと計算されるから、本件発明1における「1~30ppm」を満たしておらず、ガレート型カテキンを含有する限りにおいて本件発明1と一致する。

甲7B実施例1希釈飲料発明のpHは、希釈前の甲7B実施例1発明のpHが5.3であり、これよりも水希釈により中性のpHに近づくものと考えられるから、本件発明1における「pHが5.0~8.0である、」を満たすといえる。

そうすると、両者は、

「茶抽出物を含有し、Brixが1以下である飲料であって、

ガレート型カテキンを含有し、pHが5.0~8.0である、上記飲料。」

の点で一致し、

相違点甲7B-1:本件発明1は「ガレート型カテキンを1~30ppm」含有すると特定されているのに対し、甲7B実施例1希釈飲料発明における含有量は54ppmである点

相違点甲7B-2:本件発明1は「フェネチルアルコールを0.4ppb以上含有し、」と特定されているのに対し、甲7B実施例1希釈飲料発明はそのように特定されていない点

で相違する。

次に、本件発明1と甲7B実施例3希釈飲料発明とを対比する。甲7B実施例3希釈飲料発明については、希釈前の甲7B実施例3発明のBrix値が1.6であり、ガレート型カテキンの合計は4.3+3.1+1.6+1.4=10.4mg/100ml(104ppm)であり、pHが5.4であるから、本件発明1と甲7B実施例3希釈飲料発明とを対比したときの一致点及び相違点は、甲7B実施例1希釈飲料発明の場合と概ね同じである。

そこで、上記相違点について検討する。

(2)相違点甲7B-1について

甲7Bの[0021](摘記7B-3)には、甲7Bに記載された紅茶飲料について、「紅茶抽出液をエステラーゼ処理することにより、紅茶抽出液中のガレート型カテキンおよびガレート型テアフラビンを非ガレート型にすることができる。ガレート型の含有量を減少させることで、渋みが低減され、非ガレート型のポリフェノールを含有することで、血糖値低下作用を得ることができる」こと、及び「紅茶飲料に含有するガレート型カテキンとガレート型テアフラビンとの総量(mg/100ml)に対する非ガレート型カテキンと非ガレート型テアフラビンとの総量(mg/100ml)の比率は、2~15とすると好ましい」という比率については記載されているが、ガレート型カテキンの具体的な含有量は、甲7Bの実施例([0056]の[表1]、摘記7B-8)以外には記載されておらず、相違点甲7B-1に係る「1~30ppm」という含有量は甲7Bには記載されていない。よって、相違点甲7B-1は実質的な相違点である。

また、甲7B実施例1希釈飲料発明が、マウス長期投与試験([0058]~[0082]、摘記を省略した。)及びラット長期投与試験([0083]~[0115]、摘記を省略した。)に供された具体的な実施例であることに鑑みれば、当業者が[0049](摘記7B-7)に記載されたタンナーゼ処理の条件や希釈倍率を変更するなどの方法でガレート型カテキン含有量を変更することを動機付けられることはなく、仮に変更を試みることがあるとしても、相違点甲7B-1に係る「1~30ppm」という特定の含有量を採用することは、甲1の記載及び他の全ての証拠の記載を参酌しても当業者が容易に想到し得ることとはいえない。さらに、甲7B実施例3希釈飲料発明についても同様に、相違点甲7B-1に係る「1~30ppm」という特定の含有量を採用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

そして、本件発明1が「ガレート型カテキン由来の、舌を刺すような刺激的な苦味が軽減される」という効果を発揮することは、当業者が予測し得たこととはいえない。

(3)申立人Bの主張について

申立人Bは、令和7年3月17日に提出した意見書において、ガレート型カテキンの含有量が30ppm以下であることが特定されていた本件訂正前の請求項4(令和6年11月27日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項4)に対しては、何ら取消しの主張をしていなかった。本件訂正により、本件発明1は、申立人Bが取消しの主張をしていなかった請求項に対応する上記相違点甲7B-1に係る事項を含むものとなり、また、当該相違点についての判断は上記(2)に記載したとおりであるから、申立人Bの上記意見書に記載された他の主張については検討するまでもなく、申立人Bの取消しの主張は理由がなくなったといえる。

(4)本件発明1についてのまとめ

以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲7B実施例1希釈飲料発明又は甲7B実施例3希釈飲料発明、すなわち甲7Bに記載された発明ではなく、かつ、甲7Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.本件発明2及び3について

本件発明2及び3は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記3.で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3はいずれも甲7Bに記載された発明ではなく、かつ、甲7Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5.本件発明5について

(1)本件発明5と甲7B希釈飲料製法発明との対比、判断

ア 本件発明5と甲7B実施例1希釈飲料製法発明との対比

本件発明5と甲7B実施例1希釈飲料製法発明とを対比すると、甲7B実施例1希釈飲料製法発明における「飲料の製造方法」は、本件発明5における「飲料を製造する方法」に相当する。

甲7B実施例1希釈飲料製法発明によって製造される飲料のガレート型カテキンの含有量及びBrix値は、希釈工程前の甲7B実施例1製法発明によって製造される飲料の各量の二分の一になることが技術的に明らかである。ここで、希釈前の甲7B実施例1製法発明によって製造される飲料は、「Brix値が1.6」であり、「ガレート型カテキンであるエピガロカテキンガレートが4.1mg/100ml、ガロカテキンガレートが3.0mg/100ml、エピカテキンガレートが2.1mg/100ml、カテキンガレートが1.6mg/100mlである」から、ガレート型カテキンを合計すると10.8mg/100mlであり、紅茶飲料の比重を1.0としてppmに換算すると108ppmである。そうすると、甲7B実施例1希釈飲料製法発明によって製造される飲料のBrix値は0.8と計算されるから、本件発明5における「Brixが1以下である」を満たしており、甲7B実施例1希釈飲料製法発明によって製造される飲料におけるガレート型カテキンは、含有量が54ppmと計算されるから、本件発明5における「1~30ppm」を満たしておらず、ガレート型カテキンを含有する限りにおいて本件発明5と一致する。

甲7B実施例1希釈飲料製法発明によって製造される飲料のpHは、希釈工程前の甲7B実施例1製法発明によって製造される飲料のpHが5.3であり、これよりも水希釈により中性のpHに近づくものと考えられるから、本件発明5における「pHが5.0~8.0であり、」を満たすといえる。

そうすると、両者は、

「ガレート型カテキンを含有し、pHが5.0~8.0であり、Brixが1以下である飲料を製造する方法。」

の点で一致し、

相違点甲7B-3:本件発明5は「ガレート型カテキンを1~30ppm含有し、」と特定されているのに対し、甲7B実施例1希釈飲料製法発明によって製造される飲料における含有量は54ppmである点

相違点甲7B-4:本件発明5は「フェネチルアルコールの含有量を0.4ppb以上に調整することを含む、」と特定されているのに対し、甲7B実施例1希釈飲料製法発明はそのように特定されていない点

で相違する。

そこで、上記相違点について検討する。

イ 相違点甲7B-3について

相違点甲7B-3は、実質的に相違点甲7B-1と同じ内容の相違点であるから、上記3.(2)「相違点甲7B-1について」と同様のことがいえる。

よって、相違点甲7B-3は実質的な相違点であり、甲1の記載及び他の全ての証拠の記載を参酌しても当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

ウ 本件発明5と甲7B実施例3希釈飲料製法発明との対比、判断

本件発明5と甲7B実施例3希釈飲料製法発明とを対比したときの一致点及び相違点並びに相違点の判断については、上記ア及びイと同様のことがいえる。

(2)本件発明5についてのまとめ

以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は甲7B実施例1希釈飲料製法発明又は甲7B実施例3希釈飲料製法発明、すなわち甲7Bに記載された発明ではなく、かつ、甲7Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(取消理由3(甲7Bに基づく新規性欠如)及び取消理由4(甲7Bに基づく進歩性欠如))についてのまとめ

以上まとめると、本件発明1~3及び5は、いずれも甲7Bに記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~3及び5は、いずれも甲7Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

よって、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(取消理由3(甲7Bに基づく新規性欠如)及び取消理由4(甲7Bに基づく進歩性欠如))により本件発明1~3及び5についての特許を取り消すことはできない。

第7 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由についての判断

当審は、特許異議申立理由はいずれも理由がないものと判断する。理由は以下のとおり。

1.取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由の概要

上記第4の1.及び2.に記載した申立理由のうち、申立理由5B(甲7Bに基づく新規性欠如)及び申立理由6B(甲7Bに基づく進歩性欠如)は取消理由通知(決定の予告)で採用したが、その他の申立理由は採用しなかった。

以下、新規性欠如及び進歩性欠如の申立理由(申立理由1A-1、1A-2、1B、2B、3B、7B及び8B)について検討した後、サポート要件違反及び実施可能要件違反の申立理由(申立理由2A、3A及び4B)について検討する。

2.申立理由1A-1(甲1Aに基づく進歩性欠如)について

(1)甲1Aに記載された事項

甲1Aには以下の事項が記載されている。

(1A-1)「[請求項1]

(A)ショ糖、(B)麦芽糖、(C)3mg/100g以上9mg/100g以下のテアフラビン類を含み、

前記(A)ショ糖と前記(B)麦芽糖との質量比(A/B)が、0.5以上1.8以下であり、

可溶性固形分が20質量%以上である、希釈用容器詰紅茶飲料。」

(1A-2)「[背景技術]

[0002]

従来より、希釈用液体飲料には、省スペース、経済性、自在性等様々なメリットが認められているが、その中でもストレート飲料に比べ可溶性固形分を高めることで水分活性が低く保たれ、その結果微生物の増殖防止や殺菌条件の緩和等、静菌性での優位性が認められている。

・・・

[発明が解決しようとする課題]

[0004]

このような容器詰紅茶飲料においても、前述のとおり希釈用液体飲料として可溶性固形分を高めることが検討され、そのため糖等の固形原料の増量による対応がされていたが、希釈用容器詰紅茶飲料は、その内容物、特にポリフェノール類の特性から、甘味の強さ・質と、紅茶本来の風味とのバランスをとることが非常に難しいという課題があった。

[0005]

本発明は、可溶性固形分を高めながらも、紅茶本来の風味を有する希釈用容器詰紅茶飲料を提供することを目的とする。」

(1A-3)「[0024]

[エステル型カテキン]

本発明の希釈用容器詰紅茶飲料において、(D)エステル型カテキンの配合量は、好ましくは13mg/100g以上35mg/100g以下であり、より好ましくは14mg/100g以上25mg/100g以下である。エステル型カテキンは、苦味及び渋味が強いものの不快感はなく、比較的さらりとしている強い苦味及び渋味を有している。よって、エステル型カテキンの配合量が上記範囲にあると、紅茶特有の生き生きとした苦味及び渋味が得られ、紅茶本来の風味、本格感に優れる。エステル型カテキンの配合量が過小であると、紅茶本体の風味に欠ける傾向にある。エステル型カテキンの配合量が過大であると、苦味及び渋味が強過ぎる傾向にある。

[0025]

本発明において、エステル型カテキンとは、遊離型カテキンの水酸基と没食子酸のカルボキシル基とが脱水縮合し(エステル化)、結合した構造を有し、ガレート型カテキンとも称され、エステル結合した没食子酸側はガレート基と称される。具体的には、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)、カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)の総称である。」

(1A-4)「[0027]

[pH]

本発明の希釈用容器詰紅茶飲料のpHは、好ましくは2以上7未満であり、より好ましくは3以上4.0未満である。本発明の希釈用容器詰紅茶飲料は、可溶性固形分を20質量%以上とすることにより、幅広いpH範囲において、静菌性の観点で優れているため、pHを低く保つ必要はないが、酸味や苦味のバランス、果汁を加えた場合の香り立ちの良さからは、pH4.0未満がより好ましい。」

(1A-5)「[0036]

[酸味料]

本発明の希釈用容器詰紅茶飲料は、嗜好性を高めるために、酸味料が配合されていてもよい。酸味料としては、アスコルビン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、リン酸及びそれらの塩類から選ばれる1種以上が使用できる。これら酸単独でも長期の保存に対応可能なpHになるが、適度な酸味を得るには塩類との併用が好ましい。塩類としては、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩が挙げられる。無機塩基との塩としては、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)、アンモニウム塩等が挙げられる。有機塩基との塩としては、例えば、アミン塩(例えば、メチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチレンジアミン塩)、アルカノールアミン塩(例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩)等が挙げられる。これらの中で、アルカリ金属塩が好ましく、具体的には、クエン酸三ナトリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸三ナトリウム、酒石酸水素カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、フマル酸ナトリウム等が挙げられる。その他の酸味料としては、アジピン酸、天然成分から抽出した果汁類が挙げられる。

[0037]

(酸度)

本発明の希釈用容器詰紅茶飲料において、酸度は、特に限定されないが、好ましくは0.2(w/w%)以上0.7(w/w%)以下、より好ましくは0.3(w/w%)以上0.6(w/w%)以下である。本発明において「酸度」は、紅茶飲料中の酸味付与物質による酸濃度をクエン酸濃度で換算して導き出される。

・・・

[0040]

[容器]

本発明の希釈用紅茶飲料を封入する容器は、飲料業界で公知の密封容器であれば、適宜選択して用いることができ、流通形態や消費者ニーズに応じて適宜決定することができる。その具体例としては、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、紙、アルミ、スチール等の単体、又はこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器形状は、特に限定されるものではないが、例えば、缶容器、ボトル容器、カップ容器、パウチ容器、袋容器、ポーション容器等が挙げられる。さらに、本発明の希釈用容器詰紅茶飲料は、5倍程度に希釈されて飲用されることを想定しているため、容器の容量は1回分の飲用に必要な量であってもよいし、複数回の飲用に必要な量であってもよく、一般的には、20mL以上1L以下程度である。」

(1A-6)「[0042]

[実施例1~5、比較例1~7]

下記表1及び表2に示す配合に従って、飲料原料を混合して得られた紅茶飲料を65°Cで10分相当以上で加熱殺菌した後、100ml瓶にホットパック充填することで、実施例1~5、比較例1~7の希釈用容器詰紅茶飲料を作製した。

[0043]

具体的には、市販の紅茶エキス粉末である、セイロンエキスパウダー5365(佐藤食品工業社製)を水で希釈して紅茶エキスXを調製し、紅茶エキスパウダーStd652(James Finlay社製)を水で希釈して紅茶エキスYを調製した。得られた紅茶エキスX及び紅茶エキスYに、ショ糖としてグラニュー糖(ショ糖100%)、及び麦芽糖としてハイマルトース70(麦芽糖として53%、日本コーンスターチ社製)を添加混合した。次いで、得られた混合溶液に対して、無水クエン酸、クエン酸三ナトリウム、及び香料を添加し、下記表1及び表2に示す特性を示す希釈用紅茶飲料を得た。

[0044]

[表1]

71

153

0001429968000002.jpg

・・・

[0046]

このようにして得られた希釈用紅茶飲料を、5倍に希釈し(希釈用紅茶飲料:水=1:4)、専門的な訓練を受けた8名のパネルにより官能評価を行った。その結果を表3及び表4に示す。なお、表3及び表4における官能評価の評価基準は、表5に示すとおりである。

[0047]

[表3]

37

153

0001429968000003.jpg

・・・

[0049]

[表5]

37

153

0001429968000004.jpg

[0050]

表3及び表4の結果から、(A)ショ糖と(B)麦芽糖との質量比(A/B)が、0.5以上1.8以下であり、(C)3mg/100g以上9mg/100g以下のテアフラビン類を含み、可溶性固形分が20質量%以上である希釈用紅茶飲料から得られた、実施例1~5の紅茶飲料は、いずれも、甘味の好ましさ、渋みの強さ、味の強さ、後味の強さ、苦味の強さのバランスに優れ、紅茶風味の好ましさの評価が5以上であった。これに対し、(A)ショ糖と(B)麦芽糖との質量比(A/B)が、0.5未満、又は1.8超である希釈用紅茶飲料から得られた、比較例1~5の紅茶飲料は、甘味の好ましさ、渋みの強さ、味の強さ、後味の強さ、苦味の強さのバランスに欠け、紅茶風味の好ましさの評価が5未満と、満足する紅茶風味が得られなかった。また、テアフラビン類が少ない比較例6の紅茶飲料や、テアフラビン類が多くエステル型カテキンが多い比較例7の紅茶飲料では、甘味の好ましさ、渋みの強さ、味の強さ、後味の強さ、苦味の強さのバランスに欠け、紅茶風味の好ましさの評価が5未満と、満足する紅茶風味が得られなかった。」

(2)甲1Aに記載された発明

甲1Aの請求項1(摘記1A-1)には、「(A)ショ糖、(B)麦芽糖、(C)3mg/100g以上9mg/100g以下のテアフラビン類を含み、前記(A)ショ糖と前記(B)麦芽糖との質量比(A/B)が、0.5以上1.8以下であり、可溶性固形分が20質量%以上である、希釈用容器詰紅茶飲料。」が記載されており、[0042]~[0049](摘記1A-6)には実施例1~5として、

表1に示す配合

に従って、

飲料原料を混合して得られた紅茶飲料を

65°Cで10分相当以上で

加熱殺菌した後、100ml瓶にホットパック充填した希釈用容器詰紅茶飲料

を作製したこと、具体的には、市販の紅茶エキス粉末2種類をそれぞれ水で希釈して

紅茶エキスX及び紅茶エキスYを調製し、ショ糖及び麦芽糖を添加混合し、次いで、得られた混合溶液に対して、無水クエン酸、クエン酸三ナトリウム、及び香料を添加し、表1に示す特性を示す希釈用紅茶飲料

を得たことが記載されている。そして、[0044]の[表1]の特性欄には、

実施例5の「(D)エステル型カテキン」の含有量が14.1mg/100g

であり、

pHが3.31

であったことが記載されている。さらに、[0046](摘記1A-6)には、

得られた希釈用紅茶飲料を、5倍に希釈

し(希釈用紅茶飲料:水=1:4)、専門的な訓練を受けた8名のパネルにより官能評価を行ったことが記載され、[0047]の[表3]には、実施例1~5をそれぞれ

水で5倍に希釈した紅茶飲料

の官能評価結果が記載されている。

そうすると、甲1Aには[表1]に記載された実施例5及びそれを水で5倍に希釈した飲料に基づいて、以下の発明が記載されている。

「紅茶エキス、ショ糖、麦芽糖

、無水クエン酸、クエン酸三ナトリウム、及び香料

を含有し、エステル型カテキンの含有量が14.1mg/100gであり、pHが3.31である、希釈用容器詰紅茶飲料。」(以下、「甲1A実施例5発明」という。)

「甲1A実施例5発明の希釈用容器詰紅茶飲料を水で5倍に希釈した紅茶飲料。」(以下、「甲1A実施例5希釈飲料発明」という。)

(3)本件発明1について

ア 本件発明1と甲1A実施例5希釈飲料発明との対比、判断

本件発明1と甲1A実施例5希釈飲料発明とを対比する。甲1A実施例5希釈飲料発明は、甲1A実施例5発明を水で5倍に希釈した飲料であるから、甲1A実施例5発明に含まれる成分全てを5分の一の濃度で含有する。そこで、甲1A実施例5希釈飲料発明に含まれる「紅茶エキス」は、本件発明1における「紅茶抽出物」に相当し、甲1A実施例5希釈飲料発明における「甲1A実施例5発明の希釈用容器詰紅茶飲料を水で5倍に希釈した紅茶飲料」は、本件発明1における「飲料」に相当する。また、甲1Aの[0025](摘記1A-3)には、「本発明において、エステル型カテキンとは、遊離型カテキンの水酸基と没食子酸のカルボキシル基とが脱水縮合し(エステル化)、結合した構造を有し、

ガレート型カテキン

とも称され、エステル結合した没食子酸側はガレート基と称される。具体的には、

エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)、カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)の総称

である。」と記載されているから、甲1A実施例5希釈飲料発明に含まれる「エステル型カテキン」は、本件発明1における「ガレート型カテキン」に相当し、甲1A実施例5希釈飲料発明におけるエステル型カテキンの含有量は14.1mg/100gの5分の一であり、ppm単位に換算すると28.2ppmであるから、本件発明1におけるガレート型カテキンの含有量「1~30ppm」を満たしている。

そうすると、両者は、

「紅茶抽出物を含有する飲料であって、

ガレート型カテキンを1~30ppm含有する、上記飲料。」

の点で一致し、

相違点甲1A-1:本件発明1は「Brixが1以下である」と特定されているのに対し、甲1A実施例5希釈飲料発明はそのように特定されていない点

相違点甲1A-2:本件発明1は「フェネチルアルコールを0.4ppb以上含有し、」と特定されているのに対し、甲1A実施例5希釈飲料発明はそのように特定されていない点

相違点甲1A-3:本件発明1は「pHが5.0~8.0である」と特定されているのに対し、甲1A実施例5希釈飲料発明はそのように特定されていない点

で相違する。

そこで、事案に鑑み、上記相違点甲1A-3について検討する。

イ 相違点甲1A-3について

甲1Aの[0027](摘記1A-4)には、「本発明の希釈用容器詰紅茶飲料は、・・・酸味や苦味のバランス、果汁を加えた場合の香り立ちの良さからは、pH4.0未満がより好ましい。」と記載されており、[0036]~[0037](摘記1A-5)には、「本発明の希釈用容器詰紅茶飲料は、嗜好性を高めるために、酸味料が配合されていてもよい。・・・酸度は、特に限定されないが、好ましくは0.2(w/w%)以上0.7(w/w%)以下、より好ましくは0.3(w/w%)以上0.6(w/w%)以下である。本発明において「酸度」は、紅茶飲料中の酸味付与物質による酸濃度をクエン酸濃度で換算して導き出される」と記載されており、実際、甲1A実施例5発明も、無水クエン酸及びクエン酸三ナトリウムを含有し、pHは3.31である。そうすると、甲1A実施例5発明を水で5倍に希釈した甲1A実施例5希釈飲料発明のpHも、クエン酸の酸度を参酌すると5.0未満である蓋然性が高いから、相違点甲1A-3は実質的な相違点である。

また、甲1A実施例5希釈飲料発明は「可溶性固形分を高めながらも、紅茶本来の風味を有する希釈用容器詰紅茶飲料を提供すること」([0005]、摘記1A-2)を解決課題としており、上記したとおり「酸味や苦味のバランス、果汁を加えた場合の香り立ちの良さ」を求めて「pH4.0未満がより好ましい」とされているものであるから、甲1Aの記載に接した当業者が、甲1A実施例5希釈飲料発明におけるpHを、相違点甲1A-3に係る「5.0~8.0」に上げることを動機付けられることはなく、さらに、他の全ての証拠の記載を参照しても、甲1A実施例5希釈飲料発明におけるpHを5.0~8.0に変更することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。そして、本件発明1が「ガレート型カテキン由来の、舌を刺すような刺激的な苦味が軽減される」という効果を発揮することは、当業者が予測し得たこととはいえない。

ウ 申立人Aの主張について

申立人Aは、特許異議申立書25頁において、甲1Aの[0027]にpHとしては「2以上7未満」が好ましいことが記載されていること、甲2A([0025])に「本発明の容器詰め緑茶飲料は、pHが5~7・・・が好ましい。」と記載されていること、並びに甲4A及び甲5Aに記載されるようにpHが5.0以上である紅茶飲料は周知技術であることから、実施例1~5の希釈用容器詰紅茶飲料について、そのpHを高めて「5.0~8.0」の範囲に調製することは、当業者が適宜になし得る程度の設計事項」であり、水で5倍に希釈した紅茶飲料のpHがそれより高いことは自明であると主張している。

しかし、上記イに記載したとおり、甲1Aの[0027]には、「

酸味

や苦味のバランス、果汁を加えた場合の香り立ちの良さからは、pH4.0未満がより好ましい。」と記載されており、実施例5においては嗜好性を高めることも考慮して無水クエン酸及びクエン酸三ナトリウムによるpH調整が行われたものと解されるから、そのような課題を持たない甲2Aの緑茶飲料並びに甲4A及び甲5Aに記載された紅茶飲料のpHに接しても、当業者が甲1A実施例5発明及び甲1A実施例5希釈飲料発明のpHを「5.0~8.0」に上げることを動機付けられることはない。

また、申立人Aは実施例5に加え、実施例1~4を申立ての根拠としているが、[0044]の[表1]からは、実施例1~5が共通の原料の配合比率を調整して製造されたものであること、及び実施例1~4のエステル型カテキンの含有量が20.0mg/100g(5倍希釈後は40.0ppm)であり、pHが3.36であることが記載されているから、実施例1~4の5倍希釈物については、少なくともpHの点で、甲1A実施例5希釈飲料発明と同様の判断が成り立つ。

よって、申立人Aの主張を採用することはできない。

エ 本件発明1についてのまとめ

以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1A実施例5希釈飲料発明、すなわち甲1Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明2~4について

本件発明2~4は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4はいずれも甲1Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)申立理由1A-1(甲1Aに基づく進歩性欠如)についてのまとめ

以上まとめると、本件発明1~4は、いずれも甲1Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

よって、申立理由1A-1(甲1Aに基づく進歩性欠如)により本件発明1~4についての特許を取り消すことはできない。

3.申立理由1A-2(甲2Aに基づく進歩性欠如)について

(1)甲2Aに記載された事項

甲2Aには以下の事項が記載されている。

(2A-1)「[請求項1]

(A)ガレート型カテキン、(B)遊離型カテキン及び(C)モノガラクトシルジグリセリドを含有する茶飲料であって、それらの含有量が飲料1L当たり、

(イ) (A)+(B)=100~1500mg

(ロ) (B)>(A)

(ハ) (C)/(B)=0.0030~0.2000

である、容器詰め緑茶飲料。」

(2A-2)「[発明が解決しようとする課題]

[0007]

本発明の目的は、旨味・甘味・渋味・苦味がうまく調和し、バランスのとれた容器詰め緑茶飲料を提供することにある。

[課題を解決するための手段]

[0008]

緑茶飲料において、苦味・渋味をもたらす成分はカテキン類やカフェインであり、旨味・甘味をもたらす成分は、グルタミン酸やアミノ酸である。したがって、これら成分が適量となるように制御することで、緑茶飲料の旨味・甘味・渋味・苦味のバランスを取ることが可能ではないかと考えられる。しかしながら、容器詰め緑茶飲料の場合、これら成分の量を単に増減するだけでは、うまく調和したバランスのとれた味にならないことが判明した。そこで、本発明者らは、容器詰め緑茶飲料の旨味・甘味・渋味・苦味のバランスについて検討した結果、ガレート型カテキンと遊離型カテキンを特定比率で含有させ、かつモノガラクトシルジグリセリドを遊離型カテキン対して一定の割合になるように配合したときに、バランスに優れる容器詰め緑茶飲料が得られることを見出し、本発明を完成した。」

(2A-3)「[0012]

本明細書において「非重合カテキン類」とは、重合していない単量体のカテキン類((+)-カテキン(以下、「C」)、(-)-エピカテキン(以下、「EC」)、(+)-ガロカテキン(以下、「GC」)、(-)-エピガロカテキン(以下、「EGC」)、(-)-カテキンガレート(以下、「Cg」)、(-)-エピカテキンガレート(以下、「ECg」)、(-)-ガロカテキンガレート(以下、「GCg」)、(-)-エピガロカテキンガレート(以下、「EGCg」))の総称をいう。また、本発明の「ガレート型カテキン」とは、非重合カテキン類のうちガレート基を有するもの(Cg,ECg,GCg,EGCg)をいい、ガレート型カテキンの含有量をいうときは、これらガレート型カテキンの合計量を表す。本発明の「遊離型カテキン」とは、非重合カテキン類のうち、ガレート基を有しないもの(C、EC、GC、EGC)をいい、遊離型カテキンの含有量をいうときは、これら遊離型カテキンの合計量を表す。ガレート型カテキン量及び遊離型カテキン量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法によって、測定・定量される。」

(2A-4)「[0015]

本発明の容器詰め緑茶飲料は、容器詰めされた飲料中に、(C)モノガラクトシルジグリセリドと(B)遊離型カテキンとを重量比[(C)/(B)]で0.0030~0.2000含有するが、0.0040~0.1500、さらに0.0050~0.1000、特に0.0050~0.050含有することが好ましい。グリセロ糖脂質には、モノガラクトシルジグリセリド(MGDG)の他に、ジガラクトシルジグリセリド(DGDG)、スルホキノボシルジグリセリド(SQDG)等の種類があるが、容器詰め緑茶飲料の味のバランスに影響するのは、MGDGである。MGDGを遊離型カテキンに所定の比率で配合することによって、遊離型カテキンの後味の甘味を増強し、かつガレート型カテキンの瞬間的で刺激的な渋味や強い苦味を不快でない味わいにする。その結果、容器詰め緑茶飲料において、旨味や甘味の成分と苦味や渋味の成分とが互いの良さを引き出すことが可能となり、容器詰め茶飲料でありながら急須で淹れたお茶のような良好な風味バランスとなる。 尚、MGDG量は、当業者に周知の方法で測定することができる。例えば、サンプルよりグリセロ糖脂質を分離する処置を行い、分離液を逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーに供することにより測定・定量することができる。

・・・

[0018]

本発明の容器詰め緑茶飲料は、MGDG、好ましくはMGDGを高濃度に含有する茶抽出物を配合し、ガレート型カテキン量、遊離型カテキン量及びMGDG量を上記範囲に調整して得ることができる。具体的には、原料茶葉、抽出温度等の異なる複数の茶抽出物と、MGDGを含有する茶抽出物とを所定の量、割合となるように混合して製造することができる。または、複数の原料茶葉を混合し、これにMGDGを含有する茶抽出物を所定の量、割合となるように添加して製造することができる。

[0019]

ここで、茶抽出液の原料として用いる茶葉としては、煎茶、番茶、玉露、釜煎り茶、碾茶などを挙げることができる。茶の抽出は、水、温水又は熱水、中でも40~100°Cの温水が好ましく、特に60~100°Cの熱水がより好ましい。」

(2A-5)「[0025]

本発明の容器詰め緑茶飲料は、pHが5~7、更に5.5~7、特に5.5~6.5であることが好ましい。pHが上記範囲内であると、非重合体カテキン類やグリセロ糖脂質の安定性も優れるようになる。」

(2A-6)「[実施例]

[0028]

以下、実験例及び実施例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。

実施例1

(1)MGDG茶抽出物の調製

碾茶を石臼挽きした抹茶(粒度:10,000±2,000cm

2

/g)を、80倍量の50°Cの水に懸濁し、この懸濁液を高圧ホモジナイザーにより10MPaの圧力で処理し、遠心分離処理(6000rpm、2分)して粗大な粉砕茶組織や茶粒子などの固形分を除去して、MGDG茶抽出物を調製した。

[0029]

(2)茶抽出液の調製

煎茶葉の乾燥重量に対して30重量部の水を抽出溶媒として用いた。60°C、90°Cの水で5分間抽出した後、茶葉を分離し、さらに遠心分離処理(6000rpm、10分)して粗大な粉砕茶組織や茶粒子などの固形分を除去して、茶抽出液を得た。

[0030]

(3)容器詰め緑茶飲料の調製

上記(1)及び(2)で得られた茶抽出液を任意の割合で混合し、非重合カテキン類、グリセロ糖脂質の含量が異なる茶飲料(14種類)を製造した。それぞれをペットボトル容器に充填し、加熱殺菌を行った後、冷却して各成分を定量するとともに、専門パネル(5名)で官能評価を行った。測定方法を以下に示す。」

(2A-7)「[0033]

・・・

[風味評価]

口当たりの刺激の強さ、香り立ちの良さについてそれぞれ評価し、その平均点を算出した。また、味のバランス(旨味・甘味・渋味・苦味)の有無につき、パネルの合意により判断した。

[0034]

(i)口当たりの刺激の強さ

1点:ちょうど良い

2点:僅かに強く感じる

3点:やや強く感じる

4点:強く感じる

(ii)香り立ちの良さ

1点:ちょうど良い

2点:僅かに弱く感じる

3点:やや弱く感じる

4点:弱く感じる

(4)結果

表1に結果を示す。非重合カテキン類含量[(A)+(B)]が、飲料1L当たり100~1500mgとなる容器詰め茶飲料において、(B)>(A)であり、(C)モノガラクトシルジグリセリド(MGDG)を(B)遊離型カテキンに対して特定比率[(C)/(B)=0.0030~0.2000]で含有する容器詰め茶飲料が、旨味・甘味・渋味・苦味の味のバランスに優れ、口当たりの刺激も少なく、良好な香味を有する茶飲料であった。特に、MGDGを飲料1L当たり0.8~8.0mg含有する茶飲料は、香り立ちも良く、急須で入れた茶飲料のような呈味バランスで、豊かな香りと深いコクを有する飲料であった。」

(2A-8)「[0036]

[表1]

87

144

0001429968000005.jpg

87

144

0001429968000006.jpg

(2)甲2Aに記載された発明

甲2Aの請求項1(摘記2A-1)には、「

(A)ガレート型カテキン、(B)遊離型カテキン及び(C)モノガラクトシルジグリセリドを含有する茶飲料

であって、それらの

含有量が飲料1L当たり

、(イ)(A)+(B)=100~1500mg (ロ)(B)>(A) (ハ)(C)/(B)=0.0030~0.2000 である、

容器詰め緑茶飲料

。」が記載されており、[0028]~[0030](摘記2A-6)には実施例1として、(1)碾茶を石臼挽きした抹茶から調製された

MGDG茶抽出物

及び(2)煎茶葉から調製された

茶抽出液

を任意の割合で

混合

し、非重合カテキン類、グリセロ糖脂質の含量が異なる茶飲料(14種類)を製造し、それぞれを

ペットボトル容器に充填

し、加熱殺菌を行った後、冷却して各成分を定量するとともに、専門パネル(5名)で官能評価を行ったことが記載され、[0036][表1](摘記2A-8)には

本発明1

~

本発明9

及び比較例1~比較例5の14種類の茶飲料についての上記(A)~(C)成分の

定量結果

及び官能評価結果が記載されている。

そうすると、甲2Aには[表1]に記載された「本発明3」、「本発明4」及び「本発明9」に基づく以下の発明が記載されている。

「MGDG茶抽出物及び茶抽出液を混合して製造された、(A)ガレート型カテキン46mg/L、(B)遊離型カテキン64mg/L及び(C)モノガラクトシルジグリセリド7.9mg/Lを含有するペットボトル容器詰め緑茶飲料。」(以下、「甲2A-3発明」という。)

「MGDG茶抽出物及び茶抽出液を混合して製造された、(A)ガレート型カテキン46mg/L、(B)遊離型カテキン64mg/L及び(C)モノガラクトシルジグリセリド0.23mg/Lを含有するペットボトル容器詰め緑茶飲料。」(以下、「甲2A-4発明」という。)

「MGDG茶抽出物及び茶抽出液を混合して製造された、(A)ガレート型カテキン44mg/L、(B)遊離型カテキン61mg/L及び(C)モノガラクトシルジグリセリド8.5mg/Lを含有するペットボトル容器詰め緑茶飲料。」(以下、「甲2A-9発明」という。)

「甲2A-3発明」~「甲2A-9発明」をまとめて「甲2A発明」ということがある。

(3)本件発明1について

ア 本件発明1と甲2A発明との対比、判断

(ア)本件発明1と甲2A-3発明との対比

本件発明1と甲2A-3発明とを対比する。

甲2Aの[0012](摘記2A-3)には、「本発明の「ガレート型カテキン」とは、

非重合カテキン類のうちガレート基を有するもの(Cg,ECg,GCg,EGCg)

をいい、

ガレート型カテキンの含有量をいうときは、これらガレート型カテキンの合計量を表す

」と記載されているから、甲2A-3発明における「(A)ガレート型カテキン」は、本件発明1における「ガレート型カテキン」に相当する。また、甲2A-3発明における「(A)ガレート型カテキン」の含有量「46mg/L」をppm単位に換算すると46ppmであるから、甲2A-3発明における(A)ガレート型カテキンの含有量は本件発明1におけるガレート型カテキンの含有量「1~30ppm」を満たしておらず、ガレート型カテキンを含有する限りにおいて一致する。さらに、甲2A-3発明における「緑茶飲料」は、本件発明1における「飲料」に相当する。

そうすると、両者は、

「ガレート型カテキンを含有する飲料。」

の点で一致し、

相違点甲2A-1:本件発明1は「紅茶抽出物を含有し、」と特定されているのに対し、甲2A-3発明はそのように特定されていない点

相違点甲2A-2:本件発明1は「Brixが1以下である」と特定されているのに対し、甲2A-3発明はそのように特定されていない点

相違点甲2A-3:本件発明1はガレート型カテキンの含有量が「1~30ppm」と特定されているのに対し、甲2A-3発明における含有量は46ppmである点

相違点甲2A-4:本件発明1は「フェネチルアルコールを0.4ppb以上含有し、」と特定されているのに対し、甲2A-3発明はそのように特定されていない点

相違点甲2A-5:本件発明1は「pHが5.0~8.0である」と特定されているのに対し、甲2A-3発明はそのように特定されていない点

で相違する。

そこで、上記相違点について検討する。

(イ)相違点甲2A-1について

甲2Aの[0019](摘記2A-4)には、「茶抽出液の原料として用いる茶葉としては、煎茶、番茶、玉露、釜煎り茶、碾茶などを挙げることができる」と記載されており、甲2A発明の緑茶飲料に紅茶抽出物を含有させることは記載されていないから、相違点甲2A-1は実質的な相違点である。

また、甲2Aの[0007]~[0008](摘記2A-2)には、甲2に記載された発明が解決しようとする課題が「味・甘味・渋味・苦味がうまく調和し、バランスのとれた容器詰め緑茶飲料を提供すること」にあり、その解決手段が「ガレート型カテキンと遊離型カテキンを特定比率で含有させ、かつモノガラクトシルジグリセリドを遊離型カテキン対して一定の割合になるように配合」することにあることが記載されているが、甲2A及び他の全ての証拠の記載を参照しても、甲2A-3発明の緑茶飲料において、上記課題を解決する目的で紅茶抽出物を含有させることの動機となる記載は見いだせないから、相違点甲2A-1は甲2Aの記載及び他の全ての証拠の記載を合わせても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(ウ)申立人Aの主張について

上記第1に記載したとおり、申立人Aは、本件訂正後の本件発明1に対しては、甲2Aに基づく進歩性欠如の申立理由について意見を提出していないから、相違点甲2A-1についての判断は覆らない。

(エ)本件発明1と甲2A-4発明及び甲2A-9発明との対比、判断

本件発明1と甲2A-4発明及び甲2A-9発明とを対比したときの一致点及び相違点並びに相違点の判断については、上記(ア)及び(イ)と同様のことがいえる。

イ 本件発明1についてのまとめ

以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2A-3発明、甲2A-4発明又は甲2A-9発明、すなわち甲2Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明2~4について

本件発明2~4は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4はいずれも甲2Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)申立理由1A-2(甲2Aに基づく進歩性欠如)についてのまとめ

以上まとめると、本件発明1~4は、いずれも甲2Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

よって、申立理由1A-2(甲2Aに基づく進歩性欠如)により本件発明1~4についての特許を取り消すことはできない。

4.申立理由1B(甲1Bに基づく新規性欠如)及び申立理由2B(甲1Bに基づく進歩性欠如)について

(1)甲1Bに記載された事項

甲1Bには以下の事項が記載されている。

(1B-1)「[請求項1]

液体と混合して茶飲料を調製するための茶飲料用組成物であって、

原料として、可溶性茶固形分と、

液体と混合して得られる茶飲料における2-フェニルエタノール濃度が50~4000質量ppbになる量の2-フェニルエタノールと、

液体と混合して得られる茶飲料におけるリナロール濃度が5~500質量ppbになる量のリナロールと、

を含有することを特徴とする、茶飲料用組成物。

・・・

[請求項11]

請求項1~5のいずれか一項に記載の茶飲料用組成物を、液体と混合することを特徴とする、茶飲料の製造方法。

・・・

[請求項14]

茶飲料中の2-フェニルエタノール濃度を50~4000質量ppbとし、リナロール濃度を5~500質量ppbとすることにより、茶飲料の苦味又は渋味を低減させることを特徴とする、茶飲料の風味改善方法。」

(1B-2)「[発明が解決しようとする課題]

[0005]

本発明は、良好な香りを有し、かつ苦味や渋味、くせが低減されたまろやかな味の茶飲料を製造するための茶飲料用組成物及びその製造方法、並びに茶飲料の苦味や渋味、くせを改善する方法を提供することを目的とする。

[課題を解決するための手段]

[0006]

本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、茶飲料、特に烏龍茶やルイボス茶に、2-フェニルエタノール(2-Phenylethanol)とリナロール(Linalool)を特定の濃度以上に含有させることにより、香りを改善できることに加えて、苦味や渋味、くせを低減させてまろやかで飲みやすくすることができることを見出し、本発明を完成させた。」

(1B-3)「[0014]

また、茶飲料の2-フェニルエタノールとリナロールの両方の濃度を高めることにより、それぞれの濃度を単独で高めた飲料に比べて、茶の芳香が非常に高まる。また、茶飲料には、その茶原料に由来する苦味や渋味を有するものが多いが、茶飲料の2-フェニルエタノールとリナロールの両方の濃度を高めることにより、茶原料に由来する苦味や渋味、くせなどが顕著に低減され、味がまろやかになり、非常に飲みやすくなる。なお、茶飲料に充分量の2-フェニルエタノールとリナロールを含有させることにより、香りが改善されるのみならず、苦味や渋味、くせなどを低減し得ること、すなわち、2-フェニルエタノールとリナロールの併用により、茶飲料の苦味や渋味、くせに対するマスキング効果が非常に強く得られることは、本発明者らによって初めて見出された知見である。」

(1B-4)「[0021]

本発明に係る茶飲料用組成物の原料となる可溶性茶固形分としては、1種類の茶原料から調製された可溶性茶固形分であってもよく、2種類以上の茶原料からそれぞれ別個に調製された可溶性茶固形分の混合物であってもよく、2種類以上の茶原料の混合物から抽出された可溶性茶固形分であってもよい。本発明に係る茶飲料用組成物において用いられる可溶性茶固形分としては、例えば、烏龍茶、ルイボス茶、ハニーブッシュ茶、マテ茶、麦茶、はと麦茶、野菜茶(野菜を茶原料とする茶)、コーン茶、ハーブ茶、漢方茶、豆茶、きのこ茶、玄米茶、はぶ茶(ハブソウ(Senna occidentalis)又はエビスグサ(Senna obtusifolia)の種子を茶原料とする茶)、チコリー茶、アロエ茶、緑茶、又は羅布麻茶の可溶性茶固形分が挙げられる。ハーブ茶の原料となるハーブとしては、例えば、カモミール、ハイビスカス、ローズヒップ、ペパーミント、ミント、レモングラス、レモンバーム、ラベンダー、ローズマリー、タイム、シナモン等が挙げられる。漢方茶としては、どくだみ茶、杜仲茶、ビワ茶等が挙げられる。ただし、本発明に係る茶飲料の原料としては、紅茶の茶葉から抽出された可溶性茶固形分は除かれる。紅茶は元々リナロール含有量が高く、2-フェニルエタノール及びリナロールによる香りや嗜好性改善効果が得られ難いためである。」

(1B-5)「[0052]

[参考例2]

市販されているペットボトル入り茶飲料(烏龍茶が2種、ルイボス茶が1種)とインスタント粉末飲料(烏龍茶が1種)について、2-フェニルエタノールとリナロールの含有量を調べた。両成分の含有量は、参考例1と同様にして測定した。測定結果を表1に示す。なお、表中「0」は、検出限界値未満であったことを意味する。

[0053]

[表1]

34

153

0001429968000007.jpg

(2)甲1Bに記載された発明

甲1Bの請求項1及び11(摘記1B-1)には、「液体と混合して茶飲料を調製するための茶飲料用組成物であって、原料として、可溶性茶固形分と、液体と混合して得られる茶飲料における2-フェニルエタノール濃度が50~4000質量ppbになる量の2-フェニルエタノールと、液体と混合して得られる茶飲料におけるリナロール濃度が5~500質量ppbになる量のリナロールと、を含有することを特徴とする、茶飲料用組成物。」及び「請求項1・・・に記載の茶飲料用組成物を、液体と混合することを特徴とする、

茶飲料

の製造方法。」が記載されており、[0021](摘記1B-4)には「可溶性固形分としては、例えば、

烏龍茶

」が挙げられることが記載され、[0052]~[0053]の[表1](摘記1B-5)には、参考例2として、「

市販されているペットボトル入り茶飲料

(

烏龍茶が2種

、ルイボス茶が1種)とインスタント粉末飲料(烏龍茶が1種)について、2-フェニルエタノールとリナロールの含有量を調べた」ところ、

市販品A(烏龍茶)

2-フェニルエタノールとリナロールの含有量

は、それぞれ

50ppbと1ppb

であり、

市販品B(烏龍茶)

2-フェニルエタノールとリナロールの含有量

は、それぞれ

48ppbと2ppb

であったことが記載されている。

そうすると、甲1Bには参考例2に記載された市販品A及びBに基づく以下の発明が記載されている。

「2-フェニルエタノールを50ppb含有し、リナロールを1ppb含有する市販品A(烏龍茶)、又は、2-フェニルエタノールを48ppb含有し、リナロールを2ppb含有する市販品B(烏龍茶)。」(以下、「甲1B発明」という。)

「2-フェニルエタノールを50ppb含有し、リナロールを1ppb含有する市販品A(烏龍茶)を製造する方法、又は、2-フェニルエタノールを48ppb含有し、リナロールを2ppb含有する市販品B(烏龍茶)を製造する方法。」(以下、「甲1B製法発明」という。)

(3)本件発明1について

ア 本件発明1と甲1B発明との対比、判断

本件発明1と甲1B発明とを対比すると、甲1B発明における「2-フェニルエタノールを50ppb含有し、」及び「2-フェニルエタノールを48ppb含有し、」は、いずれも本件発明1における「フェネチルアルコールを0.4ppb以上含有し、」を満たしており、甲1B発明における「市販品A(烏龍茶)」及び「市販品B(烏龍茶)」は、いずれも本件発明1における「飲料」に相当する。

そうすると、両者は、

「フェネチルアルコールを0.4ppb以上含有する、飲料。」

の点で一致し、

相違点甲1B-1:本件発明1は「紅茶抽出物を含有し、」と特定されているのに対し、甲1B発明はそのように特定されていない点

相違点甲1B-2:本件発明1は「Brixが1以下である」と特定されているのに対し、甲1B発明はそのように特定されていない点

相違点甲1B-3:本件発明1は「ガレート型カテキンを1~30ppm」含有すると特定されているのに対し、甲1B発明はそのように特定されていない点

相違点甲1B-4:本件発明1は「pHが5.0~8.0である」と特定されているのに対し、甲1B発明はそのように特定されていない点

で相違する。

そこで、事案に鑑み、上記相違点1B-3について検討する。

イ 相違点甲1B-3について

甲1Bには、甲1B発明におけるガレート型カテキンの含有量の測定値は記載されていない。また、甲2B(p.63「2・1 試料及び試薬」、p.66 Fig.2)には、ガスクロマトグラフィー/質量分析法により、市販のペットボトル入りウーロン茶飲料2銘柄(OT-A(サントリーウーロン茶)及びOT-B(セブン&iプレミアムウーロン茶)を試料として、カテキン類8種類の含有量を分析したことが記載され、甲4B(p.21左下欄(3)、p.25 Table 2)には、静岡市内のデパート、スーパーマーケット等から購入した市販烏龍茶(リーフティー、ティーパック、ティードリンクス(カートン入り、缶入り))を試料として、カテキン類濃度((-)EGC、(-)EGCG、(-)ECG、(-)EC、(+)C)をHPLCにより定量したことが記載されているが、甲1B発明における「市販品A(烏龍茶)」及び「市販品B(烏龍茶)」の具体的な銘柄及び抽出条件は不明であるから、甲2B及び甲4Bに記載された市販品におけるカテキン類の含有量から甲1B発明におけるガレート型カテキンの含有量を求めることはできない。よって、相違点甲1B-3は実質的な相違点である。

また、甲1Bの[0006](摘記1B-2)には、「茶飲料、特に烏龍茶やルイボス茶に、2-フェニルエタノール(2-Phenylethanol)とリナロール(Linalool)を特定の濃度以上に含有させることにより、香りを改善できることに加えて、苦味や渋味、くせを低減させてまろやかで飲みやすくすることができることを見出し」たこと、[0014](摘記1B-3)には、「茶飲料に充分量の2-フェニルエタノールとリナロールを含有させることにより、香りが改善されるのみならず、苦味や渋味、くせなどを低減し得ること、すなわち、2-フェニルエタノールとリナロールの併用により、茶飲料の苦味や渋味、くせに対するマスキング効果が非常に強く得られることは、本発明者らによって初めて見出された」ことが記載されているが、甲1Bにおける茶飲料にはルイボスティー、カモミールティー、ローズヒッピティーなどのカテキン類を含まない飲料が含まれ、「本発明に係る茶飲料の原料としては、紅茶の茶葉から抽出された可溶性茶固形分は除かれる」とも記載され([0021](摘記1B-4)及び実施例など参照。)、上記マスキング効果が得られる機序も何ら記載されていないから、甲1Bの記載に基づいて当業者が甲1B発明におけるカテキン類の含有量に着目する動機はなく、まして、カテキン類のうち「ガレート型カテキン」の含有量を「1~30ppm」という特定の含有量とする動機もない。そして、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲1B発明において「ガレート型カテキンを1~30ppm」含有するものとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。そして、本件発明1が「ガレート型カテキン由来の、舌を刺すような刺激的な苦味が軽減される」という効果を発揮することは、当業者が予測し得たこととはいえない。

ウ 申立人Bの主張について

申立人Bは、特許異議申立書32~34頁において、甲2BのFig2をイメージデータ化し、ピクセル距離に基づきカテキン類含有量を算出したところ、OT-Aのガレート型カテキンは24.4~26.8ppm、OT-Bのガレート型カテキンは42.7~46.3ppmであることが読みとれることから、相違点1B-3は実質的な相違点ではなく、また、甲1B発明におけるガレート型カテキンの含有量を測定し所定範囲に設定することに格別の困難があったとは認められないと主張し、また、特許異議申立書36~38頁においては、甲4Bには缶入りウーロン茶6種についてEGCG及びECGの合計量が80.8~144.8ppmであったことが記載され、GCG及びCGの含有量は微量であるから「1~150ppm」の範囲内となる蓋然性が高く、甲1B発明のガレート型カテキンの含有量が本件訂正前の「1~150ppm」の範囲から外れることを推認させる内容は見当たらないと主張している。

しかし、上記イに記載したとおり、甲1Bの記載及び他の証拠の記載を合わせても、甲1B発明におけるガレート型カテキンの含有量が、本件訂正後の本件発明1に特定される「1~30ppm」を満たしている蓋然性が高いとはいえず、また、当業者が甲1B発明においてガレート型カテキンの含有量に着目する動機はなく、まして、当業者が「1~30ppm」という特定の含有量を採用する動機も見いだせない。

よって、申立人Bの主張を採用することはできない。

エ 本件発明1についてのまとめ

以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1B発明、すなわち甲1Bに記載された発明ではなく、かつ、甲1Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明2~4について

本件発明2~4は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4はいずれも甲1Bに記載された発明ではなく、かつ、甲1Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明5について

ア 本件発明5と甲1B製法発明との対比、判断

本件発明5と甲1B製法発明とを対比すると、甲1B製法発明における「市販品A(烏龍茶)を製造する方法」及び「市販品B(烏龍茶)を製造する方法」は、いずれも本件発明5における「飲料を製造する方法」に相当する。また、甲1B製法発明における「2-フェニルエタノールを50ppb含有し、」及び「2-フェニルエタノールを48ppb含有し、」は、成分組成が一定の規格を満たすように製造される市販品における含有量であることを勘案すると、いずれも本件発明5における「フェネチルアルコールの含有量を0.4ppb以上に調整することを含む」に相当する。

そうすると、両者は、

「飲料の製造方法であって、フェネチルアルコールの含有量を0.4ppb以上に調整することを含む、上記方法。」

の点で一致し、

相違点甲1B-5:本件発明5は「ガレート型カテキンを1~30ppm含有し、」と特定されているのに対し、甲1B製法発明はそのように特定されていない点

相違点甲1B-6:本件発明5は「pHが5.0~8.0であり、」と特定されているのに対し、甲1B製法発明はそのように特定されていない点

相違点甲1B-7:本件発明5は「Brixが1以下である」と特定されているのに対し、甲1B製法発明はそのように特定されていない点

で相違する。

そこで、上記相違点について検討する。

イ 相違点甲1B-5について

相違点甲1B-5は、実質的に相違点甲1B-3と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同様のことがいえる。

よって、相違点甲1B-5は実質的な相違点であり、甲1Bの記載及び他の全ての証拠の記載を参酌しても当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

ウ 本件発明5についてのまとめ

以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は甲1B製法発明、すなわち甲1Bに記載された発明ではなく、かつ、甲1Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件発明6について

ア 本件発明6と甲1B製法発明との対比、判断

本件発明5と甲1B製法発明との対比を踏まえて、本件発明6と甲1B製法発明とを対比すると、両者は、

「飲料において、フェネチルアルコールの含有量を0.4ppb以上に調整することを含む、方法。」

の点で一致し、

相違点甲1B-8:本件発明6は「ガレート型カテキンを1~150ppm含有し、」と特定されているのに対し、甲1B製法発明はそのように特定されていない点

相違点甲1B-9:本件発明6は「pHが5.0~8.0である」と特定されているのに対し、甲1B製法発明はそのように特定されていない点

相違点甲1B-10:本件発明6は「ガレート型カテキンに由来する苦味を軽減する方法」と特定されているのに対し、甲1B製法発明は「市販品A(烏龍茶)を製造する方法」及び「市販品B(烏龍茶)を製造する方法」である点

で相違する。

そこで、事案に鑑み、上記相違点甲1B-10について検討する。

イ 相違点甲1B-10について

甲1Bの[0005](摘記1B-2)には、甲1Bに記載された発明の解決しようとする課題が「良好な香りを有し、かつ苦味や渋味、くせが低減されたまろやかな味の茶飲料を製造するための茶飲料用組成物及びその製造方法、並びに茶飲料の苦味や渋味、くせを改善する方法を提供すること」にあることが記載されているが、上記(3)イに記載したとおり、[0006]、[0014]、[0021]及び実施例などの記載を参酌すると、甲1Bの茶飲料にはルイボスティー、カモミールティー、ローズヒッピティーなどのカテキン類を含まない飲料が含まれるから、上記課題における「茶飲料の苦味や渋味、くせを改善する方法」は、相違点甲1B-10に係る「ガレート型カテキンに由来する苦味を軽減する方法」とは異なるものである。また、甲1の上記段落には、上記課題を解決する手段が、茶飲料に2-フェニルエタノールとリナロールを特定の濃度以上に含有させることにあることが記載され、甲1Bの請求項14には「茶飲料中の2-フェニルエタノール濃度を50~4000質量ppbとし、リナロール濃度を5~500質量ppbとすることにより、茶飲料の苦味又は渋味を低減させることを特徴とする、茶飲料の風味改善方法。」が記載されているが、甲1B製法発明は「参考例2」に基づく発明であり、少なくともリナロールの含有量の点で上記課題を解決できないものと位置づけられていることが明らかであるから、この点からも、甲1B製法発明が相違点甲1B-10に係る「ガレート型カテキンに由来する苦味を軽減する方法」であるとはいえない。さらに、甲1B製造発明は、本件発明6に特定されるガレート型カテキンの含有量及びpHを何ら特定するものではないから(相違点甲1B-8、相違点甲1B-9)、方法の発明を構成する具体的な工程を比較しても、両者が一致するものとは認められない。よって、相違点甲1B-10は実質的な相違点である。

また、上記(3)イに記載したとおり、甲1Bの記載に基づいて当業者が甲1B製法発明におけるカテキン類の含有量に着目する動機はなく、まして、カテキン類のうち「ガレート型カテキン」の含有量を「1~150ppm」という特定の含有量とする動機もなく、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲1B製法発明において「ガレート型カテキンを1~150ppm」含有するものとすることにより「ガレート型カテキンに由来する苦味を軽減する方法」とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。そして、本件発明6が「ガレート型カテキン由来の、舌を刺すような刺激的な苦味が軽減される」という効果を発揮することは、当業者が予測し得たこととはいえない。

ウ 申立人Bの主張について

申立人Bは特許異議申立書45頁において、本件発明6では、「ガレート型カテキンに由来する苦味」はフェネチルアルコールを特定量で含有することにより軽減されるとされているのに対し(本件明細書[0013]、[0006]、実施例等)、甲1B製法発明は2-フェニルエチルアルコールを50ppb又は48ppb含有するから、甲1B製法発明においても「ガレート型カテキンに由来する苦味」は軽減されており、相違点甲1B-10は実質的な相違点ではないこと、及び、仮に実質的な相違点であるとしても、ガレート型カテキンが苦味・苦渋味等の原因成分の一つであることは周知(甲5B、甲6B)であるから、苦味を軽減することが開示されている甲1B製法発明において、軽減しようとする苦味がガレート型カテキンに由来することを特定することに格別の困難性はなく、それにより当業者が予測し得ない新たな効果が奏されるとも認められないと主張している。

しかし、本件発明6は、フェネチルアルコールの含有量だけでなく、ガレート型カテキンの含有量及びpHが特定された「ガレート型カテキンに由来する苦味を軽減する方法」であり、本件明細書の[0011]、[0017]及び実施例の記載からみても、ガレート型カテキンの含有量及びpHも「ガレート型カテキンに由来する苦味」の軽減に貢献する事項であるから、上記イに記載したとおり、ガレート型カテキンの含有量及びpHを何ら特定していない甲1B製法発明は、本件発明6と実質的に相違するものである。

また、ガレート型カテキンが苦味・苦渋味等の原因成分の一つであることが知られていたとしても、上記イに記載したとおり、甲1B製法発明における茶飲料の苦味又は渋味がガレート型カテキンに由来するものとはいえないから、甲1Bの記載に基づいて当業者が甲1B製法発明におけるガレート型カテキンの含有量に着目する動機はなく、また、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲1B製法発明に基づいて本件発明6に相当する「ガレート型カテキンに由来する苦味を軽減する方法」とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえず、本件発明6の「ガレート型カテキン由来の、舌を刺すような刺激的な苦味が軽減される」という効果も、当業者が予測し得たものとはいえない。

よって、申立人Bの主張を採用することはできない。

エ 本件発明6についてのまとめ

以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は甲1B製法発明、すなわち甲1Bに記載された発明ではなく、かつ、甲1Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)申立理由1B(甲1Bに基づく新規性欠如)及び申立理由2B(甲1Bに基づく進歩性欠如)についてのまとめ

以上まとめると、本件発明1~6は、いずれも甲1Bに記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~6は、いずれも甲1Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

よって、申立理由1B(甲1Bに基づく新規性欠如)及び申立理由2B(甲1Bに基づく進歩性欠如)により本件発明1~6についての特許を取り消すことはできない。

5.申立理由3B(甲5Bに基づく進歩性欠如)について

(1)甲5Bに記載された事項

甲5Bには以下の事項が記載されている。

(5B-1)「[請求項1]

酵素活性残存茶葉を、アスコルビン酸ナトリウム、塩化マグネシウム及び酵母エキスと共に水に合わせたものを準備し、これに低品位の茶葉を含浸し接触させて保持しその茶葉から十分に香り成分を生成させた後に、酵素失活処理を施すことを特徴とする低品位茶の品質改善方法。

・・・

[請求項4]

請求項1から3のいずれかの方法により品質改善された緑茶。」

(5B-2)「[発明が解決しようとする課題]

[0007]

それ故、本発明は、上記課題を解決するために、緑茶の低品位茶(典型的には、二番茶、三番茶、秋冬番茶)の総合的な品質改善方法を提供することを、その目的とする。

また、本発明は、低品位茶を原料とする品質改善された緑茶を提供することを、その目的とする。

[課題を解決するための手段]

[0008]

殺青処理した茶葉にも、香りの基質であるグルコシドが残存することから、生茶葉にある酵素を作用させれば香りの発現が期待できるが、生茶葉は酵素が失活していないため短時間で褐色に変質する。

本発明者は、鋭意研究した結果、特定の成分を併用することで、上記した香り、水色のいずれも改善した上に、さらに、苦渋味も低減でき、旨味を増強し、結果として品質を総合的にバランスよく改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。

本発明は、酵素活性残存茶葉を、アスコルビン酸ナトリウム、塩化マグネシウム及び酵母エキスと共に水に合わせたもの(接触液)を準備し、これに低品位の茶葉を含浸し接触させて保持しその茶葉に十分に香り成分を生成させた後に、酵素失活処理を施すことを特徴とする低品位茶の品質改善方法及び品質改善された緑茶である。

本発明では、酵素活性残存茶葉を、アスコルビン酸ナトリウム、塩化マグネシウム及び酵母エキスと共に水に合わせたものを粉砕してジュースとし、これに低品位の茶葉を含浸させることが好ましい。

上記保持は、25~50°Cにおいて、30~100分にわたって実施することで各品質を最適に改善できることが確認されている。

取り扱いの便宜等、必要があれば、最終的に茶葉を乾燥すればよい。

[発明の効果]

[0009]

本発明の品質改善方法によれば、β-プリメベロシダーゼなどを作用させてグリコシドを分解し香り成分を増強させると共に、アスコルビン酸ナトリウムと塩化マグネシウムと酵母エキスの併用により、爽やかな水色である黄緑色を呈色させ、苦渋味を低減し、旨味も増大することができる。従って、低品位茶の品質を総合的に高いバランスで改善できる。

また、本発明の品質改善された緑茶は形態が茶葉の場合には、抽出効率が改善でき、特に冷水での抽出が容易になり、冷茶を今までになく短時間で簡単に提供することができるとともに、容器詰飲料の製造工程を簡略化することができる。」

(5B-3)「[0024]

(品質改善された含水茶葉)

本発明による含水茶葉は、総じて、香り成分としてリナロール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、青葉アルコール、ネロール、β―オシメン、1-ヘキサノール、ヘキサナール、2-ヘプテナール、サリチル酸メチルが増強されている。

リナロール(ラベンダーの香り)、フェニルエチルアルコール(バラの香り)、ベンジルアルコール(アーモンドの香り)、ネロール(バラの香り)、β―オシメンは紅茶に多く含まれ、紅茶を感じさせるフローラルな香り成分である。

青葉アルコール(緑の香り)、1-ヘキサノール、ヘキサナール、2-ヘプテナールは緑茶を感じさせるグリーンな香り成分である。サリチル酸メチルは冷涼感を供する香り成分である。

低品位茶の典型である秋冬番茶には上記成分はほとんど含まれないか、含まれても極く少量である。緑茶(新茶)にはベンジルアルコール、青葉アルコール、2-ヘプテナールが少量含まれるに過ぎない。

また、色、味も改善されている。

従って、本発明による含水茶葉は、緑茶の香り・色・味が増強され、かつ紅茶の香りをも付加されたという今までにないものであり、しかも、低品位茶を原料として高品位な茶を得ることができるという画期的なものである。」

(5B-4)「[0028]

抽出処理は冷水(0~40°C)で短時間(30分以下)に設定するのが好ましい。温度は15~30°C、時間は1~10分がより好ましい。

青葉アルコール、ベンジルアルコール、リナロール等の香り成分が熱水抽出に比べ多く抽出され、一方、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、カテキンガレートなどの苦渋味を呈する成分は顕著に減少するからである。

前記抽出条件は、従来に比べて容器詰飲料の製造工程を簡略化できるという利点がある。」

(5B-5)「[0030]

さらにフェニルエチルアルコール10~500ppb、サリチル酸メチル1~20ppbとなるように調整することが好ましい。フェニルエチルアルコールが10ppb未満では、フローラル感が不足し、500ppbを越えるとやや不自然な香気となる。サリチル酸メチルが1ppb未満では、さわやかさが不足し、20ppbを越えると香気のバランスが崩れるからである。

より好ましくは、フェニルエチルアルコール15~200ppb、サリチル酸メチル1~5ppbである。

[0031]

さらに、冷茶として喫飲する場合には、ガレート基を有するカテキンの含有量が250ppm以下となるように調整することが好ましい。250ppmを越えると苦みを強く感じるからである。」

(5B-6)「[0033]

[実施例1]

凍結二番茶酵素活性残存茶葉5g(乾物として1g相当)、塩化マグネシウム(六水和物)(和光一級、和光純薬工業株式会社製)125mg、L-アスコルビン酸ナトリウム(BASFジャパン社製)125mg、酵母エキスペースト(アサヒフードアンドヘルスケア社製、商品名:ハイパーミーストHG-Ps、エキス分65%)2g、水80mlとをミキサー(岩谷産業株式会社製 MILLSER IFM-600D)に入れ撹拌し、酵素活性残存茶葉を破砕し酵素活性残存茶葉ジュースとした。

次に酵素活性残存茶葉ジュースに乾燥秋冬番茶30gを含浸混合した。前記酵素活性残存茶葉ジュースと乾燥秋冬番茶との混合物をビーカーに入れアルミ箔で覆い、恒温機(ヤマト科学株式会社製、DKM600)に入れ、品温40°Cで60分接触保持し、含水茶葉を得た。

前記含水茶葉を電子レンジ(パナソニック株式会社製、NE-EH211)にて500Wで20秒かけて酵素失活させた。

酵素失活させた含水茶葉を、アルミトレーに薄く延ばして乾燥器にて60°Cで、水分5%になるまで乾燥し本発明の乾燥茶葉とした。

前記本発明の乾燥茶葉1gに熱湯60mlを加え喫飲した。

・・・

[0036]

・・・

[実施例12] 含浸混合後、さらに粉砕した例

酵素活性残存茶葉ジュースに乾燥秋冬番茶を含浸混合後、ミキサー(岩谷産業株式会社製 MILLSER IFM-600D)に入れ撹拌し、茶葉をさらに粉砕した以外は実施例1と同様にして本発明の乾燥茶葉を得た。

乾燥茶葉1gに熱湯60mlを加え喫飲した。」

(5B-7)「 [0041]

[実施例18] 香り成分の分析

実施例12において、乾燥をしないで含水茶葉を得た。

・・・

[0044]

[実施例19] 抽出効率の確認

実施例18の含水茶葉7.2g(乾燥茶葉換算2g)及びその乾燥茶葉2gを20°Cの冷水、及び100°Cの熱水200mlで2分間抽出した。また、比較用として緑茶(喜作園社製)を同様に抽出した。

抽出液の濃度をBrix値で測定した(ATAGO社製 RX-DD7α―TEAを使用した。測定温度20°C)。飲料としての評価のために、各抽出液のBrix値を0.3Brix%に調整し、香り成分含有量を前記GC-MS法にて分析した。

測定結果を表3に示した。

表3に示すように、本発明の乾燥茶葉及び比較用緑茶はこの冷水抽出方法では0.173Brix%及び0.116Brix%までしか抽出できなかったため含水であることの効果が示された。また、乾燥茶葉同士を比較すると、本発明の乾燥茶葉の抽出効率が優れ、酵素活性残存茶葉の作用効果があることが推定された。

また、本発明の含水茶葉の抽出液のカフェイン、カテキン類を高速液体クロマトグラフ(Water社製、AcquityUPLC)を用いて測定した。

測定結果を表4に示した。

[0045]

[表3]

87

153

0001429968000008.jpg

*アスコルビン酸ナトリウム、塩化マグネシウム及び酵母エキスの所定量のイオン交換水溶液のBrix%値は、0.019であった。

[0046]

[表4]

73

153

0001429968000009.jpg

[0047]

表3に示すように、本発明の含水茶葉は冷水抽出でリナロール、ベンジルアルコール、青葉アルコール等の芳香性香り成分が多く含まれていた。

表4に示すように、本発明の含水茶葉は、冷水抽出でエピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、カテキンガレート等の苦渋味を呈する成分が熱水抽出に比べ顕著に減少し、苦渋味を抑え、かつ紅茶様香り有する冷茶を提供することが出来た。」

(2)甲5Bに記載された発明

甲5Bの請求項1及び4(摘記5B-1)には、「酵素活性残存茶葉を、アスコルビン酸ナトリウム、塩化マグネシウム及び酵母エキスと共に水に合わせたものを準備し、これに低品位の茶葉を含浸し接触させて保持しその茶葉から十分に香り成分を生成させた後に、酵素失活処理を施すことを特徴とする低品位茶の品質改善方法。」及び「請求項1から3のいずれかの方法により品質改善された緑茶。」が記載されており、[0007](摘記5B-2)には「本発明は、・・・緑茶の低品位茶(典型的には、二番茶、三番茶、秋冬番茶)の総合的な品質改善方法を提供することを、その目的とする。また、本発明は、低品位茶を原料とする品質改善された緑茶を提供することを、その目的とする」ことが記載され、[0024](摘記5B-3)には、「本発明による含水茶葉は、総じて、

香り成分としてリナロール

、フェニルエチルアルコール、

ベンジルアルコール、青葉アルコール

、ネロール、β―オシメン、1-ヘキサノール、ヘキサナール、2-ヘプテナール、サリチル酸メチルが増強されている」ことが記載され、[0028](摘記5B-4)には、「抽出処理は冷水(0~40°C)で短時間(30分以下)に設定するのが好ましい。温度は15~30°C、時間は1~10分がより好ましい」ことが記載され、[0031](摘記5B-5)には、「

冷茶として喫飲

する場合には、

ガレート基を有するカテキン

の含有量が250ppm以下となるように調整することが好ましい。250ppmを越えると苦みを強く感じるからである。」と記載されている。さらに、[0041]~[0047]には、上記の具体例として

実施例19

が記載されており、「

実施例18の含水茶葉7.2g(乾燥茶葉換算2g)

及びその乾燥茶葉2g

を20°Cの冷水

、及び100°Cの熱水200ml

で2分間抽出

」し、「抽出液の濃度をBrix値で測定」し、「

飲料として

の評価のために、各

抽出液のBrix値を0.3Brix%に調整し、香り成分含有量を前記GC-MS法にて分析

した」ところ、表3に示される含有量であったことが記載され、さらに、「含水茶葉の抽出液のカフェイン、カテキン類を高速液体クロマトグラフ・・・を用いて測定した」ところ表4に示される結果であったことが記載されている。そして、[0045]の[表3]には、

「含水茶葉」を「冷水」で抽出した抽出液のBrix値は0.324

であったことが記載され、

Brix値を0.3Brix%に調整したときの香り成分含有量

は、

リナロールが32.7ppb、ベンジルアルコールが63.4ppb、青葉アルコールが51.3ppb

であったことが記載されている。加えて、[0046]の[表4]には、

「含水茶葉」を「冷水」で抽出した抽出液

のエピガロカテキンガレートの含有量が187ppm、エピカテキンガレートの含有量が35.5ppm、ガロカテキンガレートの含有量が0.69ppm、カテキンガレートの含有量が0.26ppmであったことが記載されているから、抽出液を飲料とするためにBrix値を0.3Brix%に調整したときのそれらの含有量は、

エピガロカテキンガレートが187×(0.3/0.324)=173.15ppm、エピカテキンガレートが35.5×(0.3/0.324)=32.87ppm、ガロカテキンガレートが0.69×(0.3/0.324)=0.639ppm、カテキンガレートが0.26×(0.3/0.324)=0.241ppm

と計算できる。

そうすると、甲5Bには実施例19のうち、実施例18の含水茶葉7.2g(乾燥茶葉換算2g)を20°Cの冷水で2分間抽出した抽出液から調製された、以下の発明が記載されている。

「実施例18の含水茶葉7.2g(乾燥茶葉換算2g)を20°Cの冷水で2分間抽出し、抽出液のBrix値を0.3Brix%に調整して得られる冷茶であって、リナロールを32.7ppb、ベンジルアルコールを63.4ppb、青葉アルコールを51.3ppb、エピガロカテキンガレートを173.15ppm、エピカテキンガレートを32.87ppm、ガロカテキンガレートを0.639ppm、カテキンガレートを0.241ppm含有する、冷茶。」(以下、「甲5B発明」という。)

「実施例18の含水茶葉7.2g(乾燥茶葉換算2g)を20°Cの冷水で2分間抽出し、抽出液のBrix値を0.3Brix%に調整する工程を有する、甲5B発明の冷茶の製造方法。」(以下、「甲5B製法発明」という。)

なお、甲5B発明における「実施例18の含水茶葉」は、[0041](摘記5B-7)に記載された「実施例12において、乾燥をしないで含水茶葉を得た」ものであり、「実施例12」は、[0036](摘記5B-6)に記載された「酵素活性残存茶葉ジュースに乾燥秋冬番茶を含浸混合後、ミキサー(岩谷産業株式会社製 MILLSER IFM-600D)に入れ撹拌し、茶葉をさらに粉砕した以外は実施例1と同様にして」得た乾燥茶葉であり、「実施例1」は[0036](摘記5B-6)に記載された「凍結二番茶酵素活性残存茶葉5g(乾物として1g相当)、塩化マグネシウム(六水和物)(和光一級、和光純薬工業株式会社製)125mg、L-アスコルビン酸ナトリウム(BASFジャパン社製)125mg、酵母エキスペースト(アサヒフードアンドヘルスケア社製、商品名:ハイパーミーストHG-Ps、エキス分65%)2g、水80mlとをミキサー(岩谷産業株式会社製 MILLSER IFM-600D)に入れ撹拌し、酵素活性残存茶葉を破砕し酵素活性残存茶葉ジュースとし」、「次に酵素活性残存茶葉ジュースに乾燥秋冬番茶30gを含浸混合した。前記酵素活性残存茶葉ジュースと乾燥秋冬番茶との混合物をビーカーに入れアルミ箔で覆い、恒温機(ヤマト科学株式会社製、DKM600)に入れ、品温40°Cで60分接触保持し、含水茶葉を得」て、「前記含水茶葉を電子レンジ(パナソニック株式会社製、NE-EH211)にて500Wで20秒かけて酵素失活させ」、「酵素失活させた含水茶葉を、アルミトレーに薄く延ばして乾燥器にて60°Cで、水分5%になるまで乾燥し」た乾燥茶葉である。

(3)本件発明1について

ア 本件発明1と甲5B発明との対比、判断

本件発明1と甲5B発明とを対比すると、甲5B発明における「抽出液のBrix値を0.3Brix%に調整して得られる」は、本件発明1における「Brixが1以下である」を満たしており、甲5B発明における「冷茶」は、本件発明1における「飲料」に相当する。また、本件明細書の[0009]に「本明細書において、「ガレート型カテキン」とは、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びカテキンガレートの総称を表す。」と記載されていることを参酌すると、甲5B発明における「エピガロカテキンガレートを173.15ppm、エピカテキンガレートを32.87ppm、ガロカテキンガレートを0.639ppm、カテキンガレートを0.241ppm含有する」は、本件発明1における「ガレート型カテキン」を含有することに相当するが、甲5B発明におけるそれらの合計含有量(173.15+32.87+0.639+0.241=206.90ppm)は、本件発明1における「1~30ppm」を満たしていない。

そうすると、両者は、

「Brixが1以下である飲料。」

の点で一致し、

相違点甲5B-1:本件発明1は「紅茶抽出物を含有し、」と特定されているのに対し、甲5B発明はそのように特定されていない点

相違点甲5B-2:本件発明1はガレート型カテキンの含有量が「1~30ppm」と特定されているのに対し、甲5B発明における含有量は206.90ppmである点

相違点甲5B-3:本件発明1は「フェネチルアルコールを0.4ppb以上含有し、」と特定されているのに対し、甲5B発明はそのように特定されていない点

相違点甲5B-4:本件発明1は「pHが5.0~8.0である、」と特定されているのに対し、甲5B発明はそのように特定されていない点

で相違する。

そこで、事案に鑑み、上記相違点甲5B-2について検討する。

イ 相違点甲5B-2について

甲5Bの[0007]及び[0009](摘記5B-2)には、甲5Bに記載された発明の解決しようとする課題が「緑茶の低品位茶(典型的には、二番茶、三番茶、秋冬番茶)の総合的な品質改善方法を提供すること」にあり、「香り成分を増強させると共に、・・・爽やかな水色である黄緑色を呈色させ、苦渋味を低減し、旨味も増大すること」によって「低品位茶の品質を総合的に高いバランスで改善できる」ことが記載されている。また、「苦渋味」については、[0028](摘記5B-4)に、「抽出処理は冷水(0~40°C)で短時間(30分以下)に設定する」ことにより「エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、カテキンガレートなどの苦渋味を呈する成分は顕著に減少する」ことが記載され、[0031](摘記5B-5)には、「冷茶として喫飲する場合には、ガレート基を有するカテキンの含有量が250ppm以下となるように調整することが好ましい。250ppmを越えると苦みを強く感じるからである。」と記載されているから、甲5Bにおいては、冷水で短時間抽出された抽出物において、ガレート基を有するカテキンの含有量が250ppm以下であれば、冷茶として喫飲する場合に苦みを強く感じることがなく、したがって、「苦渋味を低減」することができ、上記課題の一端が解決されるものと認識されているといえる。

ここで、甲5Bの[0047](摘記5B-7)には、実施例18に関し、「表4に示すように、本発明の含水茶葉は、冷水抽出でエピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、カテキンガレート等の苦渋味を呈する成分が熱水抽出に比べ顕著に減少し、苦渋味を抑え、かつ紅茶様香り有する冷茶を提供することが出来た。」と記載されているから、甲5B発明(含水茶葉を冷水抽出)におけるガレート型カテキンの含有量(206.90ppm)は、[0031]に記載された「250ppm」を下回り、苦渋みを呈する成分が「顕著に減少」し、したがって、苦渋味が抑えられ、上記課題が解決されていると評価されているといえる。よって、ガレート型カテキンの含有量をさらに低減させる動機は生じない。

また、甲5Bには、相違点甲5B-2に係る「1~30ppm」というガレート型カテキンの具体的な数値範囲は記載されておらず、また、ガレート型カテキンの含有量を低減させる方法として「抽出処理は冷水(0~40°C)で短時間(30分以下)に設定する」([0028])方法は記載されているが、ガレート型カテキンの含有量及び香り成分(リナロール、ベンジルアルコール及び青葉アルコール)の含有量を確認できる具体例は「20°Cの冷水で2分間抽出した」という甲5B発明だけであるから、仮に、当業者が抽出温度及び抽出時間を変更することに思い至ることがあるとしても、甲5B発明の課題である「香り成分を増強させると共に、・・・爽やかな水色である黄緑色を呈色させ、苦渋味を低減し、旨味も増大すること」によって「低品位茶の品質を総合的に高いバランスで改善する」という制約を満たした上で、相違点甲5B-2に係る「1~30ppm」という特定の数値範囲までガレート型カテキンの含有量を低減させることは、当業者が容易に想到し得たとはいえないし、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲5B発明におけるガレート型カテキンの含有量を「1~30ppm」に変更することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。そして、本件発明1が「ガレート型カテキン由来の、舌を刺すような刺激的な苦味が軽減される」という効果を発揮することは、当業者が予測し得たこととはいえない。

ウ 申立人Bの主張について

申立人Bは特許異議申立書49~50頁において、甲5Bんの[0031]及び[0047]を引用し、「甲5Bにおいて苦渋味の原因成分として記載されているのはガレート型カテキンだけである」から、「苦渋味を低減」することを課題の一つとする甲5B発明において、苦渋味を一層低減させるため、苦渋味の原因成分であるガレート型カテキンの含有量を、甲5B発明・・・からさらに低減させることは、充分な動機付けが存在する」こと、甲5B発明において甲6Bに記載の技術を適用し、ガレート型カテキンの含有量をより一層低減させることは、充分な動機づけが存在する」こと、及び「甲6Bには、実施例1として、ガレート型カテキン類を225ppm含有する原料緑茶抽出液に、コメ由来のグルテリンを0.15重量%、0.3重量%又は0.6重量%加え、30分後の緑茶抽出液の上澄みを採取・・・したところ、ガレート型カテキンがそれぞれ107ppm、43ppmおよび10ppmに低減されていたことが記載されている([0057]~「0063」)」から、「甲5B発明に甲6Bの技術を適用すれば、ガレート型カテキン含有量を10~107ppm程度に低減することが可能である」と主張している。

しかし、上記イに記載したとおり、甲5B発明は「香り成分を増強させると共に、・・・爽やかな水色である黄緑色を呈色させ、苦渋味を低減し、旨味も増大すること」によって「低品位茶の品質を総合的に高いバランスで改善」するという発明の課題を解決できていると評価されるものであるから、甲5B発明におけるガレート型カテキンの含有量をさらに低減させることは、当業者が動機付けられることではない。また、仮に、当業者が、甲5発明において甲6Bに記載の技術を適用することに思い至ることがあるとしても、ガレート型カテキンの含有量フェネチルアルコールの含有量及びpHの特定を含む本件発明1が「ガレート型カテキン由来の、舌を刺すような刺激的な苦味が軽減される」という効果を発揮することは、当業者が予測し得たこととはいえない。

よって、申立人Bの主張を採用することはできない。

エ 本件発明1についてのまとめ

以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲5B発明、すなわち甲5Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明2~4について

本件発明2~4は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4はいずれも甲5Bに記載された発明ではなく、かつ、甲5Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明5について

ア 本件発明5と甲5B製法発明との対比、判断

本件発明5と甲5B製法発明とを対比すると、甲5B製法発明における「抽出液のBrix値を0.3Brix%に調整する工程を有する、」は、本件発明における「Brixが1以下である」を満たしており、甲5B製法発明における「冷茶の製造方法」は、本件発明5における「飲料を製造する方法」に相当する。

そうすると、両者は、

「Brixが1以下である飲料を製造する方法。」

の点で一致し、

相違点甲5B-5:本件発明5はガレート型カテキンの含有量が「1~30ppm」と特定されているのに対し、甲5B製法発明における含有量は206.90ppmである点

相違点甲5B-6:本件発明5は「pHが5.0~8.0であり、」と特定されているのに対し、甲5B製法発明はそのように特定されていない点

相違点甲5B-7:本件発明5は「フェネチルアルコールの含有量を0.4ppb以上に調整することを含む、」と特定されているのに対し、甲5B製法発明はそのように特定されていない点

で相違する。

そこで、上記相違点について検討する。

イ 相違点甲5B-5について

相違点甲5B-5は、実質的に相違点甲5B-2と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同様のことがいえる。

よって、相違点甲5B-5は、甲5Bの記載及び他の全ての証拠の記載を参酌しても当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

ウ 本件発明5についてのまとめ

以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は甲5B製法発明、すなわち甲5Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件発明6について

ア 本件発明6と甲5B製法発明との対比、判断

本件発明5と甲5B製法発明との対比を踏まえて、本件発明6と甲5B製法発明とを対比すると、両者は、

「飲料についての方法。」

の点で一致し、

相違点甲5B-8:本件発明6はガレート型カテキンの含有量が「1~150ppm」と特定されているのに対し、甲5B製法発明における含有量は206.90ppmである点

相違点甲5B-9:本件発明6は「pHが5.0~8.0である」と特定されているのに対し、甲5B製法発明はそのように特定されていない点

相違点甲5B-10:本件発明6は「ガレート型カテキンに由来する苦味を軽減する方法」と特定されているのに対し、甲5B製法発明は「冷茶の製造方法」である点

相違点甲5B-11:本件発明6は「フェネチルアルコールの含有量を0.4ppb以上に調整することを含む、」と特定されているのに対し、甲5B製法発明はそのように特定されていない点

で相違する。

そこで、上記相違点について検討する。

イ 相違点甲5B-8について

相違点甲5B-8は、実質的に相違点甲5B-2と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同様のことがいえる。

よって、相違点甲5B-8は、甲5Bの記載及び他の全ての証拠の記載を参酌しても当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

ウ 本件発明6についてのまとめ

以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は甲5B製法発明、すなわち甲5Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)申立理由3B(甲5Bに基づく進歩性欠如)についてのまとめ

以上まとめると、本件発明1~6は、いずれも甲5Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

よって、申立理由3B(甲5Bに基づく進歩性欠如)により本件発明1~6についての特許を取り消すことはできない。

6.申立理由7B(甲10Bに基づく新規性欠如)及び申立理由8B(甲10Bに基づく進歩性欠如)について

(1)甲10Bに記載された事項

甲10Bには以下の事項が記載されている。

(10B-1)「[請求項1]

容器詰茶飲料であって、

イヌリンの含有量が1~7g/100mlであり、

非重合体カテキンの含有量が1~800ppmであり、

アスコルビン酸の含有量が100~800ppmである、

前記飲料。

・・・

[請求項10]

容器詰茶飲料の製造方法であって、当該飲料中のイヌリンの含有量を1~7g/100mlに調整する工程、当該飲料中の非重合体カテキンの含有量を1~800ppmに調整する工程、及び当該飲料中のアスコルビン酸の含有量を100~800ppmに調整する工程、を含む、前記製造方法。」

(10B-2)「[発明が解決しようとする課題]

・・・

[0008]

本発明の目的は、整腸作用を有するイヌリンを高濃度に含み、かつイヌリン特有の雑味が抑制された容器詰茶飲料を提供することにある。

[課題を解決するための手段]

[0009]

本発明者らは、上記課題を解決するために、イヌリン高濃度条件においてイヌリンの雑味抑制効果を有する方法を鋭意検討し、非重合体カテキン量が一定の範囲とし、さらにアスコルビン酸を一定量範囲とすることで、イヌリン特有の雑味を抑えることができるとともに、渋みもなく、飲みやすさが増すことを見出し、本発明を完成するに至った。」

(10B-3)「[0017]

(イヌリン)

イヌリンは、種々の植物に含まれる多糖類の一群であり、グルコースにフルクトースが複数個結合した重合体である。水溶性食物繊維の一種であり、腸内において人体に有益な細菌を増やすのに貢献することが知られている(腸内有益菌増殖促進作用)。イヌリンは消化されることなく胃と十二指腸を通過し、腸内の細菌にとって有益な物質となる。

[0018]

イヌリンは、整腸作用を有することから、腸や消化管を含むお腹の調子を整える効果を有する。具体的には、腸内機能、腸の状態、大腸環境の改善、改良、向上作用を有する。

そして、腸運動を促進し、便秘の軽減や予防に効果がある。

[0019]

本発明に係る飲料に使用可能なイヌリンは、フラクトシル単位が主にβ-2,1結合によって結合され、フラクタンの鎖長が2~100の範囲であり、好ましくは2~60の範囲である。イヌリン中の結合の少なくとも90%がβ-2,1型である。例えば、チコリ由来のイヌリンとして、Frutafit(商標)またはRaftiline(商標)がある。また、多数の植物種から当業者に周知の方法により得ることができる。

[0020]

本発明の飲料に含有されるイヌリンの含有量は、1~7g/100ml、好ましくは1.5~5.0g/100ml、さらに好ましくは2.0~4.0g/100mlである。

・・・

[0023]

ここで、本明細書における非重合カテキンとは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレートおよびエピガロカテキンガレートの総称を表す。確認のために記載するが、上記の含量は、これらのカテキン類化合物の総量を意味する。

[0024]

非重合カテキンの組成は特に限定されないが、特に苦味や渋味が大きいとされるガレート型カテキン類(上記カテキン類のうち、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレートの総称)が好ましく、適度な旨みと渋味のバランスを有する茶飲料とすることができる。したがって、ガレート型カテキン類の比率が大きい茶飲料も、本発明の好ましい態様の一つとして例示できる。具体的には、カテキン中のガレート型カテキン類の割合([ガレート型カテキン類の質量]/[全カテキン類の質量]×100%)が、40~95%、好ましくは45~90%、より好ましくは46~80%程度である。」

(10B-4)「[0027]

・・・

(他の成分)

本発明の容器詰茶飲料には、酸化防止剤、乳化剤、保存量、pH調整剤、香料、調味料、甘味料、酸味料、品質安定剤等の添加剤を単独、或いは併用して配合してもよい。茶本来の香味を味わうことができるという香味の観点から、香料、調味料、甘味料、酸味料等は添加しないことが好ましく、保存安定性の観点からpHを5.0~7.0に調整することが好ましい。」

(10B-5)「[0030]

(容器詰茶飲料)

本発明の茶飲料は、容器詰の形態で提供される。容器の形態には、缶等の金属容器、ペットボトル、紙パック、瓶、パウチなどが含まれるが、これらに限定されない。例えば、本発明の飲料を容器に充填した後にレトルト殺菌等の加熱殺菌を行う方法や、飲料を殺菌して容器に充填する方法を通じて、殺菌された容器詰製品を製造することができる。

[0031]

本発明の容器詰飲料は容器から直接飲用するものだけではなく、たとえばバックインボックスなどのバルク容器、あるいはポーション容器などに充填したものを飲用時に別容器に注ぐことによって飲用に供することもできる。また、濃縮液を飲用に供する際に希釈することもできる。その場合、飲用に供する際の各種成分濃度が本発明の濃度範囲にあれば本発明の効果が得られることは言うまでもない。従って、これらの飲料も本発明の態様である。」

(10B-6)「[0046]

<紅茶飲料>

紅茶葉100gを20倍重量の熱水(95°C)で1時間抽出し、紅茶抽出物を得た。さらに活性炭処理、減圧濃縮を行って得られた紅茶抽出物濃縮液(非重合カテキン200ppm含有)を希釈して非重合カテキンを50ppmに調整し、アスコルビン酸350ppm、イヌリン2.0g/100mlとなるように配合して製造した紅茶飲料を殺菌処理した後、300ml容器に充填して容器詰紅茶飲料を製造した。官能評価の結果、得られた容器詰紅茶飲料はイヌリンの雑味を感じなかった。」

(2)甲10Bに記載された発明

甲10Bの請求項1及び10(摘記10B-1)には、容器詰茶飲料及びその製造方法に関し、「

容器詰茶飲料

であって、イヌリンの含有量が1~7g/100mlであり、

非重合体カテキンの含有量が1~800ppm

であり、アスコルビン酸の含有量が100~800ppmである、前記飲料。」及び「

容器詰茶飲料の製造方法であって

、当該飲料中のイヌリンの含有量を1~7g/100mlに調整する工程、

当該飲料中の非重合体カテキンの含有量を1~800ppmに調整する工程

、及び当該飲料中のアスコルビン酸の含有量を100~800ppmに調整する工程、

を含む、前記製造方法。

」が記載されており、[0030](摘記10B-5)には、「例えば、本発明の飲料を容器に充填した後にレトルト殺菌等の加熱殺菌を行う方法や、

飲料を殺菌して容器に充填する方法を通じて、殺菌された容器詰製品を製造する

ことができる。」ことが記載されている。

さらに、これらの実施例として、[0046](摘記10B-6)には、「

紅茶葉100gを20倍重量の熱水(95°C)で1時間抽出し、紅茶抽出物を得

た。

さらに活性炭処理、減圧濃縮を行って得られた紅茶抽出物濃縮液(非重合カテキン200ppm含有)を希釈して非重合カテキンを50ppmに調整し

アスコルビン酸350ppm、イヌリン2.0g/100mlとなるように配合して製造した紅茶飲料を殺菌処理した後、300ml容器に充填して容器詰紅茶飲料を製造

した。」ことが記載されている。

そうすると、甲10Bには、紅茶飲料の実施例等に基づいて、以下の発明が記載されている。

「紅茶葉100gを20倍重量の熱水(95°C)で1時間抽出し、紅茶抽出物を得て、さらに活性炭処理、減圧濃縮を行って紅茶抽出物濃縮液(非重合カテキン200ppm含有)を得て、これを希釈して非重合カテキンを50ppmに調整し、アスコルビン酸350ppm、イヌリン2.0g/100mlとなるように配合して紅茶飲料を得て、殺菌処理した後、300ml容器に充填して製造した容器詰紅茶飲料。」(以下、「甲10B発明」という。)

「紅茶葉100gを20倍重量の熱水(95°C)で1時間抽出し、紅茶抽出物を得る工程、さらに活性炭処理、減圧濃縮を行って紅茶抽出物濃縮液(非重合カテキン200ppm含有)を得る工程、希釈して非重合カテキンを50ppmに調整し、アスコルビン酸350ppm、イヌリン2.0g/100mlとなるように配合して紅茶飲料を製造する工程、及び殺菌処理した後、300ml容器に充填する工程を含む、容器詰紅茶飲料の製造方法。」(以下、「甲10B製法発明」という。)

(3)本件発明1について

ア 本件発明1と甲10B発明との対比、判断

本件発明1と甲10B発明とを対比すると、甲10B発明における「紅茶葉100gを20倍重量の熱水(95°C)で1時間抽出し、紅茶抽出物を得て、さらに活性炭処理、減圧濃縮を行って紅茶抽出物濃縮液(非重合カテキン200ppm含有)を得て、」は、本件発明1における「紅茶抽出物を含有し」に相当し、甲10B発明における「紅茶飲料」は、本件発明1における「飲料」に相当する。

そうすると、両者は、

「紅茶抽出物を含有する飲料。」

の点で一致し、

相違点甲10B-1:本件発明1は「Brixが1以下である」と特定されているのに対し、甲10B発明はそのように特定されていない点

相違点甲10B-2:本件発明1は「ガレート型カテキンを1~30ppm」含有すると特定されているのに対し、甲10B発明はそのように特定されていない点

相違点甲10B-3:本件発明1は「フェネチルアルコールを0.4ppb以上含有し、」と特定されているのに対し、甲10B発明はそのように特定されていない点

相違点甲10B-4:本件発明1は「pHが5.0~8.0である、」と特定されているのに対し、甲10B発明はそのように特定されていない点

で相違する。

そこで、上記相違点について検討する。

イ 相違点甲10B-1について

甲10B発明は「イヌリン2.0g/100ml」を含有するところ、「イヌリン」は、例えば甲10Bの[0017](摘記10B-3)に記載されているように、「種々の植物に含まれる多糖類の一群であり、グルコースにフルクトースが複数個結合した重合体である」から、上記濃度でイヌリンを含有する甲10B発明のBrix値は1を超えることが技術的に明らかである。よって、相違点甲10B-1は実質的な相違点である。

また、甲10Bの[0008]~[0009](摘記10B-2)には、甲10Bに記載された発明の解決しようとする課題が「整腸作用を有するイヌリンを高濃度に含み、かつイヌリン特有の雑味が抑制された容器詰茶飲料を提供することにある」こと、及び「上記課題を解決するために、イヌリン高濃度条件においてイヌリンの雑味抑制効果を有する方法を鋭意検討」したことが記載されており、具体的なイヌリンの濃度としては請求項1(摘記10B-1)及び[0020](摘記10B-3)に「1~7g/100ml」、「好ましくは1.5~5.0g/100ml」と記載されている。よって、甲10B発明の課題に照らすと、当業者が甲10B発明におけるイヌリンの含有量を減らす動機はなく、仮に減らすことに思い至ることがあるとしても1g/100ml以上を含有させるから、甲10B発明のBrix値が1以下になることはないといえる。さらに、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲10B発明におけるイヌリンの含有量を発明の課題に反して低減させ、甲10B発明のBrixを相違点甲10B-1に係る「1以下」に変更することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。そして、本件発明1が「ガレート型カテキン由来の、舌を刺すような刺激的な苦味が軽減される」という効果を発揮することは、当業者が予測し得たこととはいえない。

ウ 申立人Bの主張について

申立人Bは、令和6年6月24日に提出した意見書において、Brixが1以下であることが特定されていた本件訂正前の請求項2(令和6年4月19日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項2)に対しては、何ら取消しの主張をしておらず、令和7年3月17日に提出した意見書においても、Brixが1以下であることが特定されていた本件訂正前の請求項1(令和6年11月27日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1)に対しては、何ら取消しの主張をしていなかった。本件訂正により、本件発明1は、申立人Bが取消しの主張をしていなかった請求項に対応する上記相違点甲10B-1に係る事項を含むものとなり、また、当該相違点についての判断は上記イに記載したとおりであるから、申立人Bの上記意見書に記載された他の主張についてはいずれも検討するまでもなく、申立人Bの取消しの主張は理由がなくなったといえる。

エ 本件発明1についてのまとめ

以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲10B発明、すなわち甲10Bに記載された発明ではなく、かつ、甲10Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明3及び4について

本件発明3及び4は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明3及び4はいずれも甲10Bに記載された発明ではなく、かつ、甲10Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)申立理由7B(甲10Bに基づく新規性欠如)及び申立理由8B(甲10Bに基づく進歩性欠如)についてのまとめ

以上まとめると、本件発明1、3及び4は、いずれも甲10Bに記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1、3及び4は、いずれも甲10Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

よって、申立理由7B(甲10Bに基づく新規性欠如)及び申立理由8B(甲10Bに基づく進歩性欠如)により本件発明1、3及び4についての特許を取り消すことはできない。

7.申立理由2A及び4B(サポート要件違反)について

(1)サポート要件の判断手法

特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)本件発明の課題について

本件明細書の[0005]等の記載から見て、本件発明1~4の課題は「ガレート型カテキンを含有するpH5.0以上の飲料において、飲用時に感じられるガレート型カテキン由来の刺激的な苦味を軽減すること」にあり、本件発明5の課題は「ガレート型カテキンを含有するpH5.0以上の飲料において、飲用時に感じられるガレート型カテキン由来の刺激的な苦味を軽減すること」ができる飲料の製造方法を提供することにあり、本件発明6の課題は「ガレート型カテキンを含有するpH5.0以上の飲料において、飲用時に感じられるガレート型カテキン由来の刺激的な苦味を軽減する方法」を提供することにあるものと認められる。

(3)本件明細書の記載事項

本件明細書には、以下の事項が記載されている。

「[技術分野]

[0001]

本発明は、飲料に存在するガレート型カテキンに由来する苦味を軽減することに関する。」

「[背景技術]

[0002]

健康志向の高まりから、近年ポリフェノールの生理効果が注目され、ポリフェノールを豊富に含む飲料の需要が増大している。例えば、ポリフェノールの一種であるカテキン類は、コレステロール上昇抑制作用などの機能を有することが知られている。特にガレート型カテキンは、ヒトインフルエンザウイルスの不活化や、LDLの酸化抑制などにおいて高い生理活性を示すことが知られている。従って、ガレート型カテキンを手軽に摂取する手段として、ガレート型カテキンを含む飲料に対するニーズが存在する。しかし、ガレート型カテキンを含む飲料は、ガレート型カテキン特有の瞬間的で刺激的な苦味が強すぎて、不快感を伴うことがある。このような問題に対処するため、例えば、ガレート型カテキンを含む飲料に平均分子量20,000以上のコラーゲンペプチド及び/又はゼラチン、並びに増粘安定剤を含有させること(特許文献1)などが知られている。

[0003]

一方、香り成分によっても飲料の風味を改善し得る。フェネチルアルコールは、天然に広く存在し、バラ、カーネーション、ヒヤシンス、アレッポマツ、イランイラン、ゼラニウム、ネロリ、キンコウボクなどの精油に含まれる成分である。また、フェネチルアルコールは、清酒やワインなどの酒類にも含まれることが知られている。しかし、フェネチルアルコールによる苦味軽減効果は知られていない。」

「[発明が解決しようとする課題]

[0005]

pH5.0以上の飲料にガレート型カテキンを含有させると、pHが5.0未満の飲料と比較して、ガレート型カテキン由来の苦味が一層強く感じられることが本発明者により見いだされた。本発明は、ガレート型カテキンを含有するpH5.0以上の飲料において、飲用時に感じられるガレート型カテキン由来の刺激的な苦味を軽減することを目的とする。

[課題を解決するための手段]

[0006]

以上の事情に鑑み、本発明者は、飲料に関し、ガレート型カテキン由来の苦味の軽減に有効な成分を探索した。鋭意検討の結果、フェネチルアルコールが当該苦味の軽減に寄与し得ることを見出した。このような知見に基づいて、本発明を完成させた。

[0007]

本発明により、以下が提供される。但し、本発明の範囲はこれに限定されない。

(1)(a)ガレート型カテキンを1~250ppm含有し、(b)フェネチルアルコールを0.4ppb以上含有し、(c)pHが5.0~8.0である、飲料。

(2)Brixが1以下である、(1)の飲料。

(3)茶抽出物を含有する、(1)又は(2)の飲料。」

「[0010]

本発明で用いるガレート型カテキンは、特に限定されないが、精製品の他、粗製品であっても良く、ガレート型カテキンを含有する天然物もしくはその加工品、例えば植物の抽出物やその濃縮物であってもよい。ガレート型カテキンを含有する植物の抽出物又はその濃縮物は、紅茶、緑茶、烏龍茶、プーアル茶などのカメリア・シネンシスに属する茶葉類等を原料として用い、調製することができる。中でも、本発明の効果の側面から、紅茶葉より得られる抽出物を好適に用いることができる。

[0011]

本発明の飲料中のガレート型カテキンの濃度は、1~250ppmであり、好ましくは1~150ppm、より好ましくは3~65ppm、さらに好ましくは5~30ppmである。飲料中のガレート型カテキンの濃度が1ppm以上の場合、飲料における苦味が強く感じられるため、本発明による苦味の軽減効果を得る上で好ましい。また、飲料中のガレート型カテキンの濃度が250ppmを超える場合、本発明による苦味の軽減効果は得られるが、苦味が十分に軽減しないことがある。」

「[0013]

(フェネチルアルコール)

本発明の飲料は、2-Phenylethanol(以下、本明細書では「フェネチルアルコール」という)を特定量で含有する。これにより、ガレート型カテキン由来の苦味を軽減することができる。本発明の飲料中のフェネチルアルコールの含有量は、0.4ppb以上であり、好ましくは0.4~5ppb、好ましくは0.5~4ppb、より好ましくは0.6~3ppb、さらに好ましくは0.7~2ppbである。飲料中のフェネチルアルコールの含有量が0.4ppbより小さいとガレート型カテキン由来の苦味の軽減効果が不十分になることがある。一方、飲料中のフェネチルアルコールの含有量が5ppbを超えるとフェネチルアルコールの風味が強くなりすぎて飲料自体の味が損なわれるおそれがある。」

「[0017]

(pH)

本発明の飲料のpHは5.0~8.0であり、好ましくは5.5~7.5である。飲料のpHが5.0未満である場合は、飲料中の酸味成分により、苦味がマスキングされることがある。しかし、飲料のpHが5.0以上である場合は、マスキング成分として作用する酸味成分が少ないために苦味が顕著に知覚され得るため、本発明による苦味の軽減効果を得る上で好ましい。飲料のpH調整は、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、重曹等のpH調整剤を用いて適宜行うことができる。飲料のpHは市販のpHメーターを使用して容易に測定することができる。

[0018]

(Brix)

本発明の飲料のBrix(ブリックス)は、特に限定されないが、1以下であることが好ましい。理論に拘束されないが、Brixが1以下である場合、苦味のマスキング成分として作用する可溶性固形分が少ないために、ガレート型カテキンの苦味が顕著に感じられることが考えられるため、本発明による苦味の軽減効果を得る上で好ましい。Brixは、糖度計や屈折計などを用いて得られるBrix値によって評価することができる。ブリックス値は、20°Cで測定された屈折率を、ICUMSA(国際砂糖分析統一委員会)の換算表に基づいてショ糖溶液の質量/質量パーセントに換算した値である。単位は「°Bx」、「%」または「度」で表示される。」

「[0022]

(発明の効果)

本発明によれば、ガレート型カテキン由来の苦味が軽減されたpHが5.0以上の飲料を提供することができる。本明細書において「苦味」というときは、飲用時に瞬間的に感じる、舌を刺すような刺激的な苦味を意味する。」

「[0024]

[実施例1]pHの苦味に対する影響

ガレート型カテキンとして、チャ抽出物(サンフェノンEGC-OP;太陽化学株式会社;ガレート型カテキン含有量94%)を用いた。飲料中のガレート型カテキン濃度が5ppmとなるように水にチャ抽出物を添加し飲料を調製した。クエン酸又は水酸化ナトリウムを用いて飲料のpHを表1に示すように調整した(サンプル1~5)。また、このように調製した飲料に、さらにフェネチルアルコールを1ppbとなるように添加した飲料も調製した。Brixは全ての飲料で1以下であった。

[0025]

それぞれの飲料について、苦味の評価を行った。以下の基準に沿って、専門パネル3名が各自で苦味を評価した後、パネル全員で協議して最終的な評価を決定した。

○:苦味をほとんど感じない

△:苦味を少し感じる

×:苦味を強く感じる

結果を表1に示す。フェネチルアルコールを添加していない飲料の評価結果より、ガレート型カテキン由来の不快な苦味は、飲料のpHが5.0以上のときに知覚されることがわかった。これらの飲料にフェネチルアルコールを添加すると、不快な苦味が軽減されることが示された。

[0026]

一方、pH3.5の飲料では、ガレート型カテキン由来の不快な苦味はあまり問題にならないことがわかった。また、この飲料にフェネチルアルコールを添加しても苦味の強さは変わらないこともわかった。

[0027]

[表1]

51

122

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[0028]

[実施例2]ガレート型カテキンとフェネチルアルコールの含有量の苦味に対する影響

水にチャ抽出物とフェネチルアルコールを添加し、ガレート型カテキンとフェネチルアルコールの濃度を表2の濃度となるように調整し、各飲料を調製した。調製した飲料を500ml容量のPET容器に充填した。調製した飲料のpHは5.9であった。Brixは全ての飲料で1以下であった。

[0029]

調製した飲料の苦味の強さに関して官能評価を行った。専門パネル3名が、ガレート型カテキンを1ppm、フェネチルアルコールを添加していない飲料をコントロール(サンプル1)として、以下の基準に沿って評価を行った。3名の専門パネルの点数の平均を算出し、3.0点以下を合格とした。官能評価結果を表2に示した。

5点:コントロールと比較して苦味が強い。

4点:コントロールと同等の苦味がある。

3点:コントロールと比較して、苦味が少ない。

2点:コントロールと比較して、苦味がかなり少ない。

1点:苦味を感じない。

[0030]

[表2]

22

153

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[0031]

ガレート型カテキンを1~250ppm含有する飲料に対して、フェネチルアルコールを0.4ppb以上、0.4~5ppb添加すると、ガレート型カテキンに由来する不快な苦味が軽減され、飲みやすくなった。

[0032]

[実施例3]

紅茶抽出液に、フェネチルアルコールを飲料中の濃度が0.1ppb及び1.0ppbとなるように添加し、紅茶飲料を調製した。これを加熱殺菌した後、500ml容量のPET容器に充填した。得られた紅茶飲料は、ガレート型カテキンの濃度が5ppm、フェネチルアルコールの濃度が0.1ppb又は1.0ppb、pHが6.0、Brixが0.3であった。

[0033]

これら飲料の苦味を、実施例2に記載の方法に従って官能で評価した。フェネチルアルコールの濃度が0.1ppbである飲料は、評価が4.3点(専門パネルの平均)であり、苦味が強く飲みにくかった。一方、フェネチルアルコールの濃度が1.0ppbである飲料は、苦味がほとんど感じられず飲みやすいことが示された。」

(4)サポート要件についての判断

本件明細書の[0006]には、本件特許の発明者がガレート型カテキン由来の苦味の軽減に有効な成分を探索した結果、フェネチルアルコールが当該苦味の軽減に寄与し得ることを見出したことが記載され、[0013]には本発明の飲料がフェネチルアルコールを0.4ppb以上含有することにより、ガレート型カテキン由来の苦味を軽減することができること、及び飲料中のフェネチルアルコールの含有量が0.4ppbより小さいとガレート型カテキン類由来の苦味の軽減効果が不十分になることがあることが記載されている。

また、[0011]には本発明の飲料中のガレート型カテキンの濃度は、1~250ppmであること、飲料中のガレート型カテキンの濃度が1ppm以上の場合、飲料における苦味が強く感じられるため、本発明による苦味の軽減効果を得る上で好ましいこと、及び飲料中のガレート型カテキンの濃度が250ppmを超える場合、本発明による苦味の軽減効果は得られるが、苦味が十分に軽減しないことがあることが記載されている。

さらに、[0017]には本発明の飲料のpHは5.0~8.0であること、飲料のpHが5.0未満である場合は、飲料中の酸味成分により、苦味がマスキングされることがあるが、飲料のpHが5.0以上である場合は、マスキング成分として作用する酸味成分が少ないために苦味が顕著に知覚され得るため、本発明による苦味の軽減効果を得る上で好ましいことが記載されている。

加えて、[0022]には、本明細書において「苦味」というときは、飲用時に瞬間的に感じる、舌を刺すような刺激的な苦味を意味すると記載され、[0024]~[0027]の実施例1においては、ガレート型カテキン由来の不快な苦味は飲料のpHが5.0以上のときに知覚され、これらの飲料にフェネチルアルコールを添加すると不快な苦味が軽減されることが、苦味に関する三段階の官能評価結果として示されており、[0028]~[0031]の実施例2においては、ガレート型カテキンを1~250ppm含有する飲料に対してフェネチルアルコールを0.4ppb以上、0.4~5ppb添加すると、ガレート型カテキンに由来する不快な苦味が軽減され、飲みやすくなったことが、苦味に関する五段階の官能評価結果として示されており、[0032]~[0033]の実施例3においては、紅茶抽出液にフェネチルアルコールを添加して調製され、ガレート型カテキンの濃度が5ppm、フェネチルアルコールの濃度が1.0ppb、pHが6.0、Brixが0.3である紅茶飲料は、実施例2と同じ方法で官能評価したところ、苦味がほとんど感じられず飲みやすいことが示されているから、上記[0013]、[0011]及び[0017]の記載が具体例により裏付けられているといえる。

そうすると、当業者は、本件明細書の記載に基づいて、「(a)ガレート型カテキンを1~250ppm含有し、(b)フェネチルアルコールを0.4ppb以上含有し、(c)pHが5.0~8.0である、飲料。」の範囲で本件発明の課題が解決されるものと理解することができる。そして、本件発明1は上記範囲に包含されるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、または出願時の技術常識に照らして、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。また、上記範囲に包含される発明特定事項を備えた本件発明5及び6、並びに請求項1を直接又は間接的に引用して特定する本件発明2~4についても、本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、または出願時の技術常識に照らして、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

(5)申立人A及びBの主張について

申立人Aは、上記第4の1(3)に記載したとおり、概略、フェネチルアルコールは苦味を有する成分であるから(甲6A)、本件発明1の飲料におけるフェネチルアルコールの含有量が多い場合は、本件発明1の課題である苦味軽減効果を損ない、飲みにくくすることは自明であり、飲みやすい飲料を提供することは当然の課題であるから、本件発明1においてフェネチルアルコール含有量が5ppbを超える飲料については、本件発明1の課題を解決できると当業者は認識することができないと主張している。また、申立人Bの主張(上記第4の2(4))も同旨である。

しかし、上記(2)に記載したとおり、本件発明1の課題は「ガレート型カテキンを含有するpH5.0以上の飲料において、飲用時に感じられる

ガレート型カテキン由来の刺激的な苦味

を軽減すること」にあるから、フェネチルアルコール含有量が5ppbを超える飲料であっても、ガレート型カテキン由来の刺激的な苦味が軽減されるものは発明の課題を解決できるものである。

そして、上記(4)に記載したとおり、本件明細書の[0022]には、本明細書において「苦味」というときは、飲用時に瞬間的に感じる、舌を刺すような刺激的な苦味を意味すると記載され、[0002]にはガレート型カテキンが「特有の瞬間的で刺激的な苦味」を有することが背景技術として記載され、[0006]及び[0013]にはフェネチルアルコールが「ガレート型カテキン由来の苦味」を軽減するものであることが記載され、実施例1~3における官能評価も、「ガレート型カテキン由来の不快な苦味」を評価したものであるから、当業者は本件明細書の記載に基づいて、pHが5.0~8.0であり、ガレート型カテキンを1~250ppm含有する飲料に対してフェネチルアルコールを0.4ppb以上添加すると、ガレート型カテキンに由来する不快な苦味が低減されると認識することができ、当該範囲に包含される本件発明1は上記課題を解決できるものと認識することができる。本件発明2~6についても同様である。

よって、申立人A及びBの主張を採用することはできない。

また、申立人Aは特許異議申立書34~36頁において、本件特許に類似する特許第7296742号の審査段階における令和4年7月28日付け拒絶理由通知書(甲7A)及び令和4年9月14日付け意見書(甲8A)を引用し、飲料に添加されるフェネチルアルコール以外の成分の影響を前提とするのであれば、本件特許発明の課題を解決する手段として、構成要件1B(フェネチルアルコールを0.4ppb以上含有)を備える必要がないことになること、及び、フェネチルアルコールの含有量を高くした場合にガレート型カテキンに由来する刺激的な苦味に対する効果が消失せず、ガレート型カテキン由来の苦味を軽減できたとしても、フェネチルアルコールの味が強くなり、飲料の味が損なわれることによって飲料に係る発明の課題を解決できないことを主張している。

しかし、上記のとおり、本件発明1の課題は「ガレート型カテキンを含有するpH5.0以上の飲料において、飲用時に感じられるガレート型カテキン由来の刺激的な苦味を軽減すること」にあり、当業者はpHが5.0~8.0であり、ガレート型カテキンを1~250ppm含有する飲料に対してフェネチルアルコールを0.4ppb以上添加するとガレート型カテキンに由来する刺激的な苦味が低減すると認識することができ、フェネチルアルコールの含有量を高くした場合にも当該効果が消失する理由はないと理解するから、本件発明1は上記課題を解決できるものといえる。本件発明2~6についても同様である。

よって、申立人Aの主張を採用することはできない。

(6)申立理由2A及び4B(サポート要件違反)についてのまとめ

以上のことから、本件発明1~6は、いずれも発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。

よって、申立理由2A及び4B(サポート要件違反)により本件発明1~6についての特許を取り消すことはできない。

8.申立理由3A(実施可能要件違反)について

(1)実施可能要件の判断手法

物の発明における実施とは、物の生産、使用等の行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載があれば、実施可能要件を満たすということができる。

(2)本件明細書の記載事項

本件明細書には、上記7.(3)に記載した事項が記載されている。

(3)実施可能要件についての判断

当業者は本件明細書における飲料の原料についての記載及び実施例の記載等に基づいて、ガレート型カテキンを含有する紅茶抽出物等を原料として、本件発明1に相当する飲料を生産することができる。また、上記7.(4)における検討を踏まえると、当業者は本件発明1の飲料を、飲用時に感じられるガレート型カテキン由来の刺激的な苦味が軽減された飲料として使用することができると理解することができる。

そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1の発明特定事項に対応した説明の記載や実施例の記載があるから、当業者が本件発明1を生産し、かつ、本件発明1を使用することができる程度の記載があるといえる。請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明2~4についても、本件発明1と同様の理由により、当業者が本件発明2~4を生産し、かつ、本件発明2~4を使用することができる程度の記載があるといえる。

(4)申立人Aの主張について

申立人Aは、上記第4の1(4)に記載したとおり、概略、「上記「ウ.サポート要件違反について」で述べたように・・・フェネチルアルコールの含有量が5ppbを超える範囲では、カテキン類由来の苦味を軽減できたとしても、本件明細書の記載に基づいて、飲料の味が損なわれることのない実用的な飲料を提供できないことは明らかである」と主張している。

しかし、上記7.(4)及び(5)における検討を踏まえると、当業者は本件明細書の記載に基づいて、pHが5.0~8.0であり、ガレート型カテキンを1~250ppm含有する飲料に対してフェネチルアルコールを0.4ppb以上添加した飲料を、ガレート型カテキンに由来する不快な苦味が低減された飲料として使用できるものと認識することができ、フェネチルアルコールの含有量が5ppbを超える範囲であってもガレート型カテキンに由来する刺激的な苦味を低減する効果が消失する理由はないと理解するから、当該範囲に包含される本件発明1~4も、飲用時に感じられるガレート型カテキン由来の刺激的な苦味が軽減された飲料として使用することができるものである。

よって、申立人Aの主張を採用することはできない。

(5)申立理由3A(実施可能要件違反)についてのまとめ

以上のことから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえるから、特許法第36条第4項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。

よって、申立理由3A(実施可能要件違反)により本件発明1~4についての特許を取り消すことはできない。

第8 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても、本件発明1~6についての特許を取り消すことはできない。また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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