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Trademark Appeal Case

特許訂正の適否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024700187
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7351360号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
特許第7351360号の請求項1、3~9に係る特許を維持する。
特許第7351360号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由テキスト

理 由

第1 手続等の経緯

特許第7351360号の請求項1~9に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2022-2656号)は、令和4年1月11日(優先権主張 令和3年3月31日)の出願であって、令和5年9月19日に特許権の設定の登録がされたものである。

その後、本件特許について、令和5年9月27日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である令和6年2月29日に、本件特許の全請求項に係る特許に対して、特許異議申立人 三嶋 眞弘(以下「申立人A」という。)から、同年3月27日に、本件特許のうち請求項1及び2に係る特許に対して、特許異議申立人 角田 朗(以下「申立人B」という。)から特許異議の申立てがされた。

その後の手続等の概要は、以下のとおりである。

令和6年 9月 3日付け:取消理由通知書

令和6年11月 1日付け:訂正請求書、意見書(特許権者)

令和6年12月10日付け:意見書(申立人A)

令和6年12月13日付け:意見書(申立人B)

令和7年 3月 7日付け:取消理由通知書(決定の予告)

令和7年 4月30日付け:訂正請求書、意見書(特許権者)

令和7年 6月27日付け:意見書(申立人B)、申立人Aは応答なし

第2 本件訂正請求について

1 訂正請求の趣旨

令和7年4月30日付け訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)の趣旨は、特許第7351360号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める、というものである。

なお、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」、本件訂正前又は本件訂正後を、単に「訂正前」又は「訂正後」ということがある。また、下線は訂正箇所を示す。

2 訂正の内容

(1) 訂正事項

ア 訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1の「当該保護フィルムは、その結晶化度が10%以上75%以下であり、かつ、JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪が300%以下である」を、「当該保護フィルムは、その結晶化度が10%以上75%以下であり

JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪が

146%以上217%以下

であ

り、かつ、145°Cで30分加熱し、その後、25°Cの条件下で30分冷却した後に、JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪が110%以上160%以下であ

る」と訂正する。

イ 訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ 訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3の「請求項1または2」を、「

請求項1

」と訂正する。

エ 訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4の「請求項1ないし3のいずれか1項」を、「請求項1

または3

」と訂正する。

オ 訂正事項5

特許請求の範囲の請求項6の「請求項1ないし5」を、「請求項1

、3、4および

5」と訂正する。

カ 訂正事項6

特許請求の範囲の請求項7の「請求項1ないし6」を、「請求項1

、3、4、5および

6」と訂正する。

キ 訂正事項7

特許請求の範囲の請求項8の「請求項1ないし7」を、「請求項1

、3、4、5、6および

7」と訂正する。

ク 訂正事項8

特許請求の範囲の請求項9の「請求項1ないし8」を、「請求項1

、3、4、5、6、7および

8」と訂正する。

(2) 一群の請求項について

訂正前の請求項2~9は、訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用しており、訂正事項1に係る訂正によって連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項1~9は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

3 訂正の適否についての判断

(1) 訂正事項1について

ア 訂正の目的の適否

訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1において、「保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪」が「300%以下」であったものを、「146%以上217%以下」に限定することを含む。また、訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1において、「145°Cで30分加熱し、その後、25°Cの条件下で30分冷却したあとに、JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪」が限定されていなかったものを、「110%以上160%以下」に限定することを含む。

したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号(特許請求の範囲を減縮)に掲げる事項を目的とするものである。

イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項1に係る「保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪」を「146%以上217%以下」とする訂正は、本件出願の願書に添付した明細書の段落【0126】の記載における、トラウザー破断伸び歪の最小値である「146」との値を下限として、最大値である「217」との値を上限値として採用し、その範囲を特定したものであると認められる。

また、訂正事項1に係る「145°Cで30分加熱し、その後、25°Cの条件下で30分冷却したあとに、JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪」を「110%以上160%以下」とする訂正は、本件出願の願書に添付した明細書の段落【0080】における、「また、この保護フィルム10は、145°Cで30分加熱し、その後、25°Cの条件下で30分冷却した後に、JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪Bが・・・110%以上160%以下であることがより好ましく」という記載に基づくものである。

したがって、訂正事項1に係る訂正は、新規事項の追加に該当せず、本件出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

そうしてみると、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(2) 訂正事項2について

ア 訂正の目的の適否

訂正事項2に係る訂正は、それぞれ訂正前の請求項2を削除するものである。

したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号(特許請求の範囲を減縮)に掲げる事項を目的とするものである。

イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項2に係る訂正が、新規事項の追加に該当せず、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(3) 訂正事項3~8について

ア 訂正の目的の適否

訂正事項3~8に係る訂正は、訂正事項2による請求項2の削除にともなって、訂正前に引用していた複数の請求項から請求項2を除外し、請求項2の記載を引用しないものにする訂正である。

したがって、訂正事項3~8に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号(特許請求の範囲の減縮)及び第4号(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)に掲げる事項を目的とするものである。

イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項3~8による訂正が、新規事項の追加に該当せず、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

したがって、訂正事項3~8による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

4 本件訂正請求についてのまとめ

上記3によれば、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同条第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合する。

よって、結論に記載のとおり、特許第7351360号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9のとおり訂正することを認める。

第3 本件特許発明

上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。

そうしてみると、特許異議の申立ての対象となっている、請求項1~9に係る発明は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。

なお、各請求項に係る訂正後の特許発明をその請求項の番号に基づいて、「本件特許発明1」などといい、全ての請求項に係る特許発明を総称して、「本件特許発明」ということがある。

「【請求項1】

樹脂基板を、加熱下で熱曲げ加工を施す際に、前記樹脂基板に貼付して用いられる保護フィルムであって、

基材層と、

該基材層と前記樹脂基板との間に位置して、前記樹脂基板に粘着する粘着層とを有し、

前記基材層は、前記粘着層の反対側に位置する第1の層と、前記粘着層側に位置する第2の層とを有する積層体で構成されており、

当該保護フィルムは、その結晶化度が10%以上75%以下であり、JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪が146%以上217%以下であり、かつ、145°Cで30分加熱し、その後、25°Cの条件下で30分冷却した後に、JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪が110%以上160%以下であることを特徴とする保護フィルム。

【請求項2】

(削除)

【請求項3】

当該保護フィルムは、JIS K 7127に従い、当該保護フィルムから採取した試験片(1号ダンベル)を23°C・60%RHの雰囲気下、島津製作所製オートグラフ(引張速度:500mm/分)にて測定される引張破壊呼び歪が400%以上650%以下である請求項1に記載の保護フィルム。

【請求項4】

前記第1の層は、熱可塑性樹脂を主材料として含有する融点が150°C以上のものであり、前記第2の層は、熱可塑性樹脂を主材料として含有する融点が120°C以上のものである請求項1または3に記載の保護フィルム。

【請求項5】

前記第1の層が含有する前記熱可塑性樹脂と、前記第2の層が含有する前記熱可塑性樹脂とは、ともにポリオレフィンである請求項4に記載の保護フィルム。

【請求項6】

前記樹脂基板の両面に貼付される請求項1、3、4および5のいずれか1項に記載の保護フィルム。

【請求項7】

前記樹脂基板は、平面視において、その縁部を構成する少なくとも1辺が湾曲凸状の曲線をなしている請求項1、3、4、5および6のいずれか1項に記載の保護フィルム。

【請求項8】

前記樹脂基板は、両面、一方の面または他方の面に、ポリカーボネート樹脂層、ポリアミド樹脂層およびセルロース樹脂層のうちの少なくとも1層を有する単層体または積層体で構成される被覆層を備える請求項1、3、4、5、6および7のいずれか1項に記載の保護フィルム。

【請求項9】

前記樹脂基板は、プレス成形または真空成形により、前記熱曲げ加工が施される請求項1、3、4、5、6、7および8のいずれか1項に記載の保護フィルム。」

第4 申立ての理由及び証拠方法

1 申立ての理由の概要

(1) 申立人A

ア 甲第1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性欠如について

本件訂正前特許発明1~9は、甲第1号証に記載の発明である。また、本件訂正前特許発明1~9は、甲第1号証~甲第7号証の2の記載に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものである。

なお、甲第4号証、甲第5号証の2、甲第5号証の3、甲第6号証、甲第7号証の1および甲第7号証の2は、参考資料である。

イ 甲第5号証の1を主たる証拠とする新規性・進歩性欠如について

本件訂正前特許発明1~9は、甲第5号証の1に記載の発明である。また、本件訂正前特許発明1~9は、甲第1号証~甲第9号証の記載に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものである。

なお、甲第4号証、甲第5号証の2、甲第5号証の3、甲第6号証、甲第7号証の1、甲第7号証の2は、甲第5号証に記載された表面保護フィルムの物性に関する実験報告書、甲第8号証および甲第9号証は、技術常識を示す参考資料である。

(2) 申立人B

本件訂正前特許発明1および2は、甲第1号証に係る公然実施された発明と同一である。また、本件訂正前特許発明1および2は、甲第1号証に係る公然実施された発明及び甲第2号証~甲第10号証の記載に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものである。

なお、甲第2号証~甲第4号証は、甲第1号証に係る公然実施された表面保護フィルムの物性に関する実験報告書、甲第5号証~甲第10号証は、技術常識を示す参考資料である。

2 証拠方法

異議申立人らが提出した証拠方法は以下のとおりである。便宜上、申立人Aによる特許異議の申立て(以下「特許異議申立01」という。)及び申立人Bによる特許異議の申立て(以下「特許異議申立02」という。)において提出された各甲号証を、甲A●及び甲B●(●は甲号証の番号)などという。また、枝番に関しては甲A5-1などという。

甲A1:国際公開第2019/182047号(特許異議申立01の甲1)

甲A2:特開2009-102629号公報(特許異議申立01の甲2)

甲A3:特開2016-11131号公報(特許異議申立01の甲3)

甲A4:特公昭62-10816号公報(特許異議申立01の甲4)

甲A5-1:「表面保護フィルム トレテック(R)」の商品カタログ、東レフィルム加工株式会社、2020年、2023年11月22日検索、インターネット<URL:https://web.archive.org/we

b/20201024090653/https://www.toray-taf.co.jp/products/toretec.html>(当合議体注:「(R)」は、○にRを代用した。以下同様である。)(特許異議申立01の甲5の1)

甲A6:(株)三井化学分析センター、フィルムサンプル(♯50-7H52、♯50-7A62)の結晶化度測定に関する報告書、2023年12月26日(特許異議申立01の甲6)

甲A7-1:(株)ケミトックス山梨試験センターKAI、フィルムサンプル(♯50-7H52(Lot.No.31116093)、♯50-7A62(Lot.No.31015178))のトラウザー破断伸び歪に関する報告書(引き裂き強さ試験報告書)、2024年1月11日(特許異議申立01の甲7の1)

甲A7-2:(株)京浜ケミトックスによる作業報告書、2023年12月22日(特許異議申立01の甲7-2)

甲A8:株式会社DJK、フィルムの打ち抜き試験に関する結果報告書、2024年11月29日(特許異議申立01の甲8)

甲A9:東レフィルム加工株式会社、引張破壊呼び歪評価結果に関する報告書、2024年12月2日(特許異議申立01の甲9)

甲B1:トレテック(登録商標)7832Cの見本、見本作成日2024年3月27日

甲B2:独立行政法人京都市産業技術研究所技術開発本部研究所、報告書「トレテック(登録商標)7832Cの結晶化度測定」、令和6年2月7日(特許異議申立02の甲2)

甲B3:日本マタイ株式会社管理部品質管理課、報告書「トレテック(登録商標)7832Cのトラウザー破断伸び歪測定」、令和6年2月26日(特許異議申立02の甲3)

甲B4:日本マタイ株式会社管理部品質管理課、報告書「加熱冷却後のトレテック(登録商標)7832Cのトラウザー破断伸び歪測定」、令和6年2月26日(特許異議申立02の甲4)

甲B5:特開2017-173427号公報(特許異議申立02の甲5)

甲B6:特開2018-83327号公報(特許異議申立02の甲6)

甲B7:日本マタイ株式会社管理部品質管理課、報告書「トレテック(登録商標)7832Cの引張破壊呼び歪測定」、令和6年11月22日(特許異議申立02の甲7)

甲B8:日本マタイ株式会社管理部品質管理課、報告書「トレテック(登録商標)7832Cの元素分析結果」、令和6年11月22日(特許異議申立02の甲8)

甲B9:(社)日本化学会・(社)高分子学会編、「高分子添加剤の新展開」、初版、日刊工業新聞社、1998年9月30日、26ページ(特許異議申立02の甲9)

甲B10:「フィルム成形・加工とハンドリングのトラブル実例と解決方法」、第1刷、株式会社技術情報協会、2002年9月20日、169ページ(特許異議申立02の甲10)

(当合議体注:甲A5-1、甲B5及び甲B6は、主引例である資料又は文献であり、甲A2~甲A4、甲A6、甲A7-1、甲A7-2、甲A8、甲A9、甲B2、甲B3、甲B4及び甲B7~甲B10は、参考資料である。)

第5 当合議体が決定の予告にて通知した取消しの理由

令和7年3月7日付け取消理由通知書(決定の予告)により通知した取消しの理由は、以下のとおりである。

●理由1(新規性)および理由2(進歩性)

本件特許発明1~2及び4~9は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を介して公衆に利用可能となった甲A5-1、甲A5-2、甲A5-3、甲B5及び甲B6に記載された発明であるか、あるいは、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を介して公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本件特許のうち、請求項1~2及び4~9に係る特許は、特許法29条の規定に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。

第6 当合議体の判断

1 理由1(新規性)について

(1) 甲号証の記載

ア 甲A1の記載

甲A1には、以下の事項が記載されている。

(ア) 「[0104] 次いで、温度50°C、時間12hrの条件で積層体を保管した後に、この積層体、すなわち、両面に保護フィルムが貼付された樹脂基板を、その厚さ方向に打ち抜いた。これにより、積層体を平面視で円形状をなす形態とした。」

(イ) 「 請求の範囲

[請求項1] 樹脂基板に対して、加熱下で熱曲げ加工を施す際に、前記樹脂基板に貼付して用いられる保護フィルムであって、

基材層と、

該基材層と前記樹脂基板との間に位置して、前記樹脂基板に粘着する粘着層とを有し、

前記粘着層は、融点が125°C未満のポリオレフィンを主材料として含み、

前記基材層は、前記粘着層の反対側に位置し、融点が150°C以上のポリオレフィンを主材料として含む第1の層と、前記粘着層側に位置し、接着性樹脂を主材料として含有する第2の層とを有する積層体で構成されており、

当該保護フィルムを、ポリカーボネートで構成される、縦30cm×横30cm×厚さ2.0mmの2枚の貼付基板の間に挾持した状態で、145°Cで30分加熱した後に、25°Cにおいて、剥離角90°で、かつ引っ張り速度1,000mm/minで、前記粘着層側の一方の貼付基板を引き剥がし、前記一方の貼付基板の表面を平面視で見たときに、前記粘着層が残存している領域の残存率が5%以下であることを特徴とする保護フィルム。

[請求項2] 前記粘着層が含有する前記ポリオレフィンは、そのJIS K7210に準拠して加熱温度230°C、荷重2.16kgfの条件下において測定されるメルトフローレートが0.5g/10min以上10.0g/10min以下である請求項1に記載の保護フィルム。

[請求項3] 前記粘着層は、さらに、エラストマーを含有する請求項1または2に記載の保護フィルム。

[請求項4] 前記粘着層が含有する前記エラストマーは、スチレン-オレフィン-スチレンブロック共重合体を含む請求項3に記載の保護フィルム。

[請求項5] 前記第2の層は、前記接着性樹脂としてのエラストマーと、融点が150°C以上のポリオレフィンとを含有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の保護フィルム。

[請求項6] 前記第2の層が含有する前記エラストマーは、スチレン-オレフィン-スチレンブロック共重合体を含む請求項5に記載の保護フィルム。

[請求項7] 前記樹脂基板の両面に貼付される請求項1ないし6のいずれか1項に記載の保護フィルム。

[請求項8] 前記樹脂基板の両面、一方の面または他方の面に、ポリカーボネート樹脂層、ポリアミド樹脂層およびセルロース樹脂層のうちの少なくとも1層を有する単層体または積層体で構成される被覆層が、設けられる請求項1ないし7のいずれか1項に記載の保護フィルム。

[請求項9] 前記樹脂基板は、プレス成形または真空成形により、前記熱曲げ加工される請求項1ないし8のいずれか1項に記載の保護フィルム。」

イ 本件特許明細書に記載された特許文献1(特開2003-145616号公報)(以下「特許文献1」という。)の記載

特許文献1には、以下の事項が記載されている。

「【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、ポリカーボネート板、あるいはポリカーボネート板を外層に持ち、偏光特性やフォトクロミック特性などの機能性を有した積層体を、加熱下にて加圧および/または減圧しながら予め所望の形状にかたどられた型に密着させて賦形させる熱曲げ加工を施す際に、該ポリカーボネート板の表面を保護するために貼られている保護フィルムを装着したままの状態で、ポリカーボネート板あるいはその積層体を熱曲げ加工する際に用いられる保護フィルムに関する。

【0002】

【従来の技術】合成樹脂基板、例えばポリカーボネートやアクリルなどのシートを取り扱う際に、キズや汚れおよび異物がつきやすいことから表面を保護する為に、ポリオレフィン系フィルム、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの保護フィルムが貼られている。」

ウ 甲A5-1の記載

甲A5-1には、以下の事項が記載されている。

(ア) 「

17

81

0001429974000001.jpg

」(1/7頁)

(イ) 「

83

78

0001429974000002.jpg

」(2/7頁)

(ウ) 「

27

63

0001429974000003.jpg

」(3/7頁)

(エ) 「

59

86

0001429974000004.jpg

」(6/7頁)

エ 甲A6の記載

甲A6には、以下の事項が記載されている。

20

37

0001429974000005.jpg

オ 甲A7-1の記載

甲A7-1には、以下の事項が記載されている。

17

62

0001429974000006.jpg

カ 甲A9の記載

甲A9には、以下の事項が記載されている。

39

60

0001429974000007.jpg

キ 甲B2の記載

甲B2には、以下の事項が記載されている。

22

74

0001429974000008.jpg

ク 甲B3の記載

甲B3には、以下の事項が記載されている。

21

71

0001429974000009.jpg

ケ 甲B5の記載

甲B5には、以下の事項が記載されている。

「【0062】

なお、表面保護フィルム(B)6には、基材フィルム4における粘着剤層5を設けた面の反対面に、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の低接着性材料により、剥離処理層を設けることができる。

【0063】

前記表面保護フィルム(B)としては、市販のものも好適に使用することができ、例えば、東レフィルム加工(株)製のトレテック7832C #30等を好適に使用することができる。」

コ 甲B6の記載

甲B6には、以下の事項が記載されている。

「【0047】

<比較例1>

ポリカーボネート系フィルム(厚み:20μm、剛軟性:35mm)の一方の面に、保護シートDを積層した。保護シートDとしては、ポリエチレン基材(表面粗さRa:0.2μm)の片面に粘着剤層(厚み:3μm)を備える保護シートD(東レ社製、商品名「トレテック7832C-30」、厚み:28μm)を用いた。保護シートDの剛軟性は、30mmであった。

未延伸ポリカーボネートフィルムの他方の面に、実施例1と同様にして、ハードコート層を形成した。なお、当該工程においては、フィルムの折れが確認された(破断はなし)。

得られたコーティング層付きフィルムを上記評価(3)に供した。結果を表1に示す。」

サ 甲B7の記載

甲B7には、以下の事項が記載されている。

28

87

0001429974000010.jpg

シ 甲B8の記載

甲B8には、以下の事項が記載されている。

36

72

0001429974000011.jpg

69

72

0001429974000012.jpg

ス 甲B9の記載

甲B9には、以下の事項が記載されている。

7

77

0001429974000013.jpg

セ 甲B10の記載

甲B10には、以下の事項が記載されている。

11

83

0001429974000014.jpg

(2)甲号証に記載された発明

ア 甲A5-1発明

甲A5-1の2/7及び6/7頁の図から、「トレテック」タイプ名「7A62」である表面保護フィルムは、背面層、基材層及び粘着層をこの積層順に有することが看取できる。

そうしてみると、甲A5-1には、「トレテック」タイプ名「7A62」である表面保護フィルムの発明として、次の発明(以下「甲A5-1発明」という。)が記載されていると認められる。

「背面層、基材層及び粘着層をこの積層順に有するトレテックのタイプ名7A62である表面保護フィルム。」

イ 甲A5-2発明

甲A5-1の2/7及び6/7頁の図から、「トレテック」タイプ名「7H52」である表面保護フィルムは、背面層、基材層及び粘着層をこの積層順に有することが看取できる。

そうしてみると、甲A5-1には、「トレテック」タイプ名「7H52」である表面保護フィルムの発明として、次 の発明(以下「甲A5-2発明」という。)が記載されていると認められる。

「背面層、基材層及び粘着層をこの積層順に有するトレテックのタイプ名7H52である表面保護フィルム。」

ウ 甲A5-3発明

甲A5-1の2/7頁の図から、「トレテック」タイプ名「7832C」である表面保護フィルムは、背面層、基材層及び粘着層をこの積層順に有することが看取できる。

そうしてみると、甲A5-1には、「トレテック」タイプ名「7832C」である表面保護フィルムの次の発明(以下「甲A5-3発明」という。)が記載されていると認められる。

「背面層、基材層及び粘着層をこの積層順に有するトレテックのタイプ名7832Cである表面保護フィルム。」

エ 甲B5発明

甲A5-1の2/7頁の図から、「トレテック」タイプ名「7832C」である表面保護フィルムは、背面層、基材層及び粘着層をこの積層順に有することが看取できる。

そうしてみると、甲B5には、「トレテック」タイプ名「7832C」である表面保護フィルムの次の発明(以下「甲B5発明」という。)が記載されていると認められる。

「背面層、基材層及び粘着層をこの積層順に有するトレテックのタイプ名7832Cである表面保護フィルム。」

オ 甲B6発明

甲A5-1の2/7頁の図から、「トレテック」タイプ名「7832C」である表面保護フィルムは、背面層、基材層及び粘着層をこの積層順に有することが看取できる。

そうしてみると、甲B6には、「トレテック」タイプ名「7832C」である表面保護フィルムの次の発明(以下「甲B6発明」という。)が記載されていると認められる。

「背面層、基材層及び粘着層をこの積層順に有するトレテックのタイプ名7832Cである表面保護フィルム。」

(3) 甲A5-1発明を主引用発明とした場合

ア 本件特許発明1について

(ア) 対比

本件特許発明1と甲A5-1発明とを対比する。

i 基材層

甲A5-1発明の「表面保護フィルム」は、「背面層、基材層及び粘着層をこの積層順に有する」ものである。

上記構成からみて、甲A5-1発明の「表面保護フィルム」は、「背面層」と「基材層」とを有する積層体(以下、「背面層」と「基材層」とを有する積層体「積層板A」という。)を有するといえる。また、甲A5-1発明の「積層体A」は、「粘着層」の反対側に位置する「背面層」と、「粘着層」側に位置する「基材層」とを有するといえる。

そうしてみると、甲A5-1発明の「積層体A」、「背面層」及び「基材層」は、それぞれ、本件特許発明1の「基材層」、「第1の層」及び「第2の層」に相当する。また、甲A5-1発明の「積層体A」は、本件特許発明1の「基材層」の「前記粘着層の反対側に位置する第1の層と、前記粘着層側に位置する第2の層とを有する積層体で構成されて」いるとの要件を満たす。

ii 粘着層

甲A5-1発明の「粘着層」は、その文言どおり、本件特許発明1の「粘着層」に相当する。

iii 保護フィルム

上記i及びiiを総合すると、甲A5-1発明の「表面保護フィルム」は、本件特許発明1の「保護フィルム」に相当する。また、甲A5-1発明の「表面保護フィルム」は、本件特許発明1の「保護フィルム」の「基材層」と、「粘着層とを有し」との要件を満たす。

iv 結晶化度

甲A5-1発明の結晶化度は、甲A6の結晶化度に関する報告書から、本件特許発明1に係る結晶化度の数値範囲内にあると認められる。

したがって、甲A5-1発明は、本件特許発明1の「その結晶化度が10%以上75%以下であり」との要件を満たす。

(イ) 一致点

上記(ア)によると、本件特許発明1と甲A5-1発明は次の点で一致する。

「 保護フィルムであって、

基材層と、

該基材層と粘着層とを有し、

前記基材層は、前記粘着層の反対側に位置する第1の層と、前記粘着層側に位置する第2の層とを有する積層体で構成されており、

当該保護フィルムは、その結晶化度が10%以上75%以下である、

保護フィルム。」

(ウ) 相違点

本件特許発明1と甲A5-1発明は次の点で相違する。

i 相違点A5-1-1

「JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪」が、本件特許発明1は、「146%以上217%以下」であるのに対し、甲A5-1発明は、それが一応明らかでない点。

ii 相違点A5-1-2

「145°Cで30分加熱し、その後、25°Cの条件下で30分冷却した後に、JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪」が、本件特許発明1は、「110%以上160%以下」であるのに対し、甲A5-1発明は、それが一応明らかでない点。

(エ) 判断

事案に鑑み、上記相違点A5-1-1について検討する。

甲A5-1発明のトラウザー破断伸び歪は、甲A7-1のトラウザー破断伸び歪に関する報告書から、243.1%と認められる。したがって、甲A5-1発明は、本件特許発明1の「JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪が146%以上217%以下であり」との要件を満たさない。

そして、他の証拠をみても、甲A5-1発明の「表面保護フィルム」のトラウザー破断伸び歪みが、相違点A5-1-1の数値範囲内であることを推認するに足りる証拠はない。

(オ) そうしてみると、上記相違点A5-1-2を検討するまでもなく、本件特許発明1は甲A5-1発明であるとはいえない。

イ 本件特許発明3~9について

本件特許発明3~9は、本件特許発明1を引用する発明であるから、本件特許発明3~9は甲A5-1発明であるとはいえない。

(4) 甲A5-2発明を主引用発明とした場合

甲A5-2発明は、甲A6及び甲A7-1の記載から、甲A5-1発明と同様のことがいえる。したがって、本件特許発明1、3~9は甲A5-2発明であるとはいえない。

(5) 甲A5-3発明を主引用発明とした場合

ア 本件特許発明1について

(ア) 対比

本件特許発明1と甲A5-3発明とを対比する。

i 基材層

甲A5-3発明の「表面保護フィルム」は、「背面層、基材層及び粘着層をこの積層順に有する」ものである。

上記構成からみて、甲A5-3発明の「表面保護フィルム」は、「背面層」と「基材層」とを有する積層体(以下、「背面層」と「基材層」とを有する積層体を「積層板B」という。)を有するといえる。また、甲A5-3発明の「積層体B」は、「粘着層」の反対側に位置する「背面層」と、「粘着層」側に位置する「基材層」とを有するといえる。

そうしてみると、甲A5-3発明の「積層体B」、「背面層」及び「基材層」は、それぞれ、本件特許発明1の「基材層」、「第1の層」及び「第2の層」に相当する。また、甲A5-3発明の「積層体B」は、本件特許発明1の「基材層」の「前記粘着層の反対側に位置する第1の層と、前記粘着層側に位置する第2の層とを有する積層体で構成されて」いるとの要件を満たす。

ii 粘着層

甲A5-3発明の「粘着層」は、その文言どおり、本件特許発明1の「粘着層」に相当する。

iii 保護フィルム

上記(ア)及び(イ)を総合すると、甲A5-3発明の「表面保護フィルム」は、本件特許発明1の「保護フィルム」に相当する。また、甲A5-3発明の「表面保護フィルム」は、本件特許発明1の「保護フィルム」の「基材層」と、「粘着層とを有し」との要件を満たす。

iv 結晶化度

甲A5-3発明の結晶化度は、甲B2の結晶化度に関する報告書から、本件特許発明1に係る結晶化度の数値範囲内にあると認められる。

したがって、甲A5-3発明は、本件特許発明1の「その結晶化度が10%以上75%以下であり」との要件を満たす。

(イ) 一致点

上記アによると、本件特許発明1と甲A5-3発明は次の点で一致する。

「 保護フィルムであって、

基材層と、

該基材層と粘着層とを有し、

前記基材層は、前記粘着層の反対側に位置する第1の層と、前記粘着層側に位置する第2の層とを有する積層体で構成されており、

当該保護フィルムは、その結晶化度が10%以上75%以下である、

保護フィルム。」

(ウ) 相違点

本件特許発明1と甲A5-3発明は次の点で相違する。

i 相違点A5-3-1

「JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪」が、本件特許発明1は、「146%以上217%以下」であるのに対し、甲A5-3発明は、それが一応明らかでない点。

ii 相違点A5-3-2

「145°Cで30分加熱し、その後、25°Cの条件下で30分冷却したあとに、JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪」が、本件特許発明1は、「110%以上160%以下」であるのに対し、甲A5-3発明は、それが一応明らかでない点。

(エ) 判断

事案に鑑み、上記相違点A5-3-1について検討する。

甲A5-3発明のトラウザー破断伸び歪は、甲B3のトラウザー破断伸び歪に関する報告書から、127.5~130.5%と認められる。したがって、甲A5-3発明は、本件特許発明1の「JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪が146%以上217%以下であり」との要件を満たさない。

そして、他の証拠をみても、甲A5-3発明の「表面保護フィルム」のトラウザー破断伸び歪みが、相違点A5-3-1の数値範囲内であることを推認するに足りる証拠はない。

(オ) そうしてみると、上記相違点A5-3-2を検討するまでもなく、本件特許発明1は甲A5-3発明であるとはいえない。

イ 本件特許発明3~9について

本件特許発明3~9は、本件特許発明1を引用する発明であるから、本件特許発明3~9は甲A5-3発明であるとはいえない。

(6) 甲B5発明または甲B6発明を主引用発明とした場合

甲B5発明および甲B6発明は、いずれも甲A5-3発明と同一であるから、甲A5-3発明と同様のことがいえる。

したがって、本件特許発明1、3~9は甲B5発明または甲B6発明であるとはいえない。

2 理由2(進歩性)について

(1) 甲A5-1発明を主引用発明とした場合

事案に鑑み、上記相違点5-1-1について検討する。

ア 甲A5には、「JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪」を「146%以上217%以下」とすることについて記載がない。また、その他の甲号証にも、当該事項は記載されておらず、甲A5-1発明において、「JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪」を「146%以上217%以下」とする動機付けがない。

イ 本件明細書の段落【0126】【表1】には、「JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪」を「146%以上217%以下」とすることにより、「打ち抜き面におけるヒゲの付着」および「剥離面におけるオレンジピールの形成」が抑制されることが示されている。そうしてみると、「JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪」を「146%以上217%以下」とした保護フィルムは、他の条件に設定した保護フィルムと比べ、格別の効果を奏するものと認められる。

ウ したがって、本件特許発明1は、甲A5-1発明および周知技術から、当業者が容易に発明できたとはいえない。本件特許発明3~9についても同様である。

(2) 甲A5-2、甲A5-3、甲B5および甲B6を主引用発明とした場合

甲A5-2、甲A5-3、甲B5および甲B6を主引用発明とした場合とした場合であっても、上記(1)と同様のことがいえる。したがって、本件特許発明1は、甲A5-2、甲A5-3、甲B5または甲B6および周知技術から、当業者が容易に発明できたとはいえない。

第7 取消理由通知書(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立ての理由について

申立人Bが申し立てた甲第1号証(以下、「甲B1」という。)に係る発明(以下「甲B1発明」という。)が公然実施された発明といえるか否かはともかく、仮にいえたとしても、以下に示す理由により、本件特許発明は、甲B1発明ではないし、また、甲B1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

すなわち、甲B1発明の「トレテック(登録商標)7832C」で示される表面保護フィルムは、「JIS K 7128-1(1998)に準拠して測定される、当該保護フィルムのMDとTDとに対してともに45°傾斜した方向におけるトラウザー破断伸び歪が146%以上217%以下であり」との要件を満たさない。そして、この要件(相違点)を甲B1発明において採用する動機付けは、いずれの証拠をみてもない。

したがって、本件特許発明1は甲B1に係る発明ではない。また、本件特許発明1は、当業者が甲B1に係る発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。本件特許発明3~9についても同様である。

第8 まとめ

本件特許1、3~9は、決定の予告に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては、取り消すことができない。そして、他に本件特許1、3~9を取り消すべき理由を発見しない。

また、本件特許2は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

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