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Trademark Appeal Case

訂正請求の有効性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024701074
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7480980号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
特許第7480980号の請求項2~13に係る特許を維持する。
特許第7480980号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7480980号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、令和元年9月30日に出願されたものであって、令和6年4月30日に特許権の設定の登録がされ、同年5月10日にその特許掲載公報が発行された。

その後、同年11月1日に、本件特許の請求項1~13に係る特許に対し、特許異議申立人 秋山 朋毅(以下「申立人A」という。)により特許異議の申立てがされ、同年11月8日に、本件特許の請求項1~13に係る特許に対し、特許異議申立人 三和 優子(以下「申立人B」という。)により、特許異議の申立てがされた。

その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は以下のとおりである(日付は、当審による起案を除き、書類の受付日である)。

令和7年4月1日付け 取消理由通知

同年6月6日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)

同年6月24日付け 訂正請求があった旨の通知

同年7月25日 意見書の提出(申立人A)

なお、令和7年6月24日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、申立人Bからの意見書の提出はなかった。

第2 訂正請求について

1 訂正の内容

令和7年6月6日受付の訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という)の「請求の趣旨」は、「特許第7480980号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求める。」というものであり、その訂正の内容は、訂正請求書の記載及び訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載からみて、以下の訂正事項1~10からなるものである。

なお、下線は訂正による記載の変更箇所を示す。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2に、「請求項1に記載の塗料組成物であって、前記η

6rpm

は0.2~50Pa・sである塗料組成物。」と、請求項1を引用して記載されているのを、独立形式に改め、

「【請求項2】

塗膜成分として、少なくとも主剤、硬化剤および脂肪酸アマイドを含み、スプレーガンまたはノズルから被塗物に対して噴出される塗料組成物であって、

B型粘度計を用いて25°C、回転数6rpmの条件で測定される塗料組成物の粘度をη

6rpm

とし、B型粘度計を用いて 25°C、回転数60rpmの条件で測定される塗料組成物の粘度をη

60rpm

としたとき、η

6rpm

60rpm

は2~7であり、

吹き付け空気圧が0.15~0.35MPaであり、被塗物と、スプレーガンまたはノズルの吐出部との距離が15~50cmであるスプレー塗装により凹凸模様を有する塗膜を形成するために用いられ、

前記η

6rpm

は0.2~50Pa・sである塗料組成物。」に訂正する(請求項2の記載を直接的または間接的に引用する請求項3~13も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3において、訂正前に「請求項1または2」と記載されているのを、「請求項

2

」に訂正する。

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4において、訂正前に「請求項1~3」と記載されているのを、「請求項

2または3

」に訂正する。

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項8において、訂正前に「請求項1~7」と記載されているのを、「請求項

2~7

」に訂正する。

(6)訂正事項6

特許請求の範囲の請求項9において、訂正前に「請求項1~8」と記載されているのを、「請求項

2~8

」に訂正する。

(7)訂正事項7

特許請求の範囲の請求項10において、訂正前に「請求項1~9」と記載されているのを、「請求項

2~9

」に訂正する。

(8)訂正事項8

特許請求の範囲の請求項11において、訂正前に「請求項1~10」と記載されているのを、「請求項

2~10

」に訂正する。

(9)訂正事項9

特許請求の範囲の請求項12において、訂正前に「請求項1~11」と記載されているのを、「請求項

2~11

」に訂正する。

(10)訂正事項10

特許請求の範囲の請求項13において、訂正前に「請求項1~11」と記載されているのを、「請求項

2~11

」に訂正する。

2 一群の請求項について

本件訂正前の請求項1~13について、請求項2~13は、請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。

したがって、訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~13に係る本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。

3 訂正事項についての訂正要件の判断

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的の適否

本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の追加の有無

本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、上記アで述べたとおり、訂正前の請求項1を削除するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否

本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、訂正前の請求項1を削除するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的の適否

本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2において訂正前の請求項1を引用するものを、訂正前の請求項1の発明特定事項の全てを変更することなく、請求項1の記載を引用しない形式(独立形式)に書き換えるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

イ 新規事項の追加の有無

本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、前記アで述べたとおり、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用するものであるところ、引用する訂正前の請求項1の発明特定事項を変更することなく独立形式の請求項2にするという、記載形式を変更するものに過ぎないから、本件明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否

本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、訂正前の請求項2を、引用する訂正前の請求項1の発明特定事項を変更することなく独立形式の請求項2にするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3~10について

ア 訂正の目的の適否

本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、訂正事項1により訂正前の請求項1が削除されることに伴い、訂正前の請求項3において、請求項3が引用する「請求項1または2」のうち、請求項1を削除するものであり、本件訂正の訂正事項4に係る訂正は、同様に、訂正前の請求項4において、請求項4が引用する「請求項1~3」のうち、請求項1を削除するものであり、本件訂正の訂正事項5に係る訂正は、同様に、訂正前の請求項8において、請求項8が引用する「請求項1~7」のうち、請求項1を削除するものであり、本件訂正の訂正事項6に係る訂正は、同様に、訂正前の請求項9において、請求項9が引用する「請求項1~8」のうち、請求項1を削除するものであり、本件訂正の訂正事項7に係る訂正は、同様に、訂正前の請求項10において、請求項10が引用する「請求項1~9」のうち、請求項1を削除するものであり、本件訂正の訂正事項8に係る訂正は、同様に、訂正前の請求項11において、請求項11が引用する「請求項1~10」のうち、請求項1を削除するものであり、本件訂正の訂正事項9に係る訂正は、同様に、訂正前の請求項12において、請求項12が引用する「請求項1~11」のうち、請求項1を削除するものであり、本件訂正の訂正事項10係る訂正は、同様に、訂正前の請求項13において、請求項13が引用する「請求項1~11」のうち、請求項1を削除するものであり、それぞれ、引用する請求項を限定するものである。

したがって、本件訂正の訂正事項3~10に係る訂正は、それぞれ、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の追加の有無

本件訂正の訂正事項3~10に係る訂正は、上記アで述べたとおり、訂正後の請求項3~4、8~13において、それぞれ、訂正前の請求項3~4、8~13が引用する請求項の一部を削除して、引用する請求項を限定するものであるから、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

したがって、本件訂正の訂正事項3~10に係る訂正は、それぞれ、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否

本件訂正の訂正事項3~10に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、訂正後の請求項3~4、8~13において、それぞれ、訂正前の請求項3~4、8~13が引用する請求項の一部を削除して、引用する請求項を限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、本件訂正の訂正事項3~10に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)独立特許要件について

本件特許異議申立事件においては、本件訂正前の全ての請求項である請求項1~13に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1~13に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。

4 本件訂正請求についてのまとめ

以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するものである。

よって、本件特許の特許請求の範囲を、令和7年6月6日受付の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正後の本件特許に係る発明

前記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~13に係る発明は、令和7年6月6日受付の訂正請求書に添付された本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~13に記載された以下の事項により特定される次のとおりのものであると認める(以下「本件発明1」~「本件発明13」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)。

「【請求項1】

(削除)

【請求項2】

塗膜成分として、少なくとも主剤、硬化剤および脂肪酸アマイドを含み、スプレーガンまたはノズルから被塗物に対して噴出される塗料組成物であって、

B型粘度計を用いて25°C、回転数6rpmの条件で測定される塗料組成物の粘度をη

6rpm

とし、B型粘度計を用いて25°C、回転数60rpmの条件で測定される塗料組成物の粘度をη

60rpm

としたとき、η

6rpm

60rpm

は2~7であり、

吹き付け空気圧が0.15~0.35MPaであり、被塗物と、スプレーガンまたはノズルの吐出部との距離が15~50cmであるスプレー塗装により凹凸模様を有する塗膜を形成するために用いられ、

前記η

6rpm

は0.2~50Pa・sである塗料組成物。」

【請求項3】

請求項2に記載の塗料組成物であって、

前記塗膜成分中の前記脂肪酸アマイドの含有量は0.5~10質量%である塗料組成物。

【請求項4】

請求項2または3に記載の塗料組成物であって、

さらに、揮発成分として、有機溶剤を含む塗料組成物。

【請求項5】

請求項4に記載の塗料組成物であって、

前記有機溶剤は、沸点が150°C以下である低沸点有機溶剤を含む塗料組成物。

【請求項6】

請求項5に記載の塗料組成物であって、

前記有機溶剤中の前記低沸点有機溶剤の比率は、25質量%以上である塗料組成物。

【請求項7】

請求項4~6のいずれか1項に記載の塗料組成物であって、

前記脂肪酸アマイドは、前記有機溶剤に溶解しているか、または、粒径10μm以下の粒子として前記有機溶剤中に分散している塗料組成物。

【請求項8】

請求項2~7のいずれか1項に記載の塗料組成物であって、

η

60rpm

は0.03~25Pa・sである塗料組成物。

【請求項9】

請求項2~8のいずれか1項に記載の塗料組成物であって、

さらに、塗膜成分として顔料を含む塗料組成物。

【請求項10】

請求項2~9のいずれか1項に記載の塗料組成物であって、

前記主剤は、(メタ)アクリル系樹脂を含む塗料組成物。

【請求項11】

請求項2~10のいずれか1項に記載の塗料組成物であって、

前記主剤は、分岐構造および/または架橋構造を有する樹脂を含む塗料組成物。

【請求項12】

被塗物に、請求項2~11のいずれか1項に記載の塗料組成物をスプレー塗装するスプレー塗装工程を含む塗装物の製造方法。

【請求項13】

請求項2~11のいずれか1項に記載の塗料組成物の塗膜を備える塗装物。」

第4 特許異議申立理由の概要

申立人A,Bが特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由(それぞれ、以下「申立理由A」「申立理由B」という。)は、以下のとおりのものと認められる。

申立人Aは申立理由Aの証拠方法として、下記2(1)の甲第1号証~甲第26号証(以下、「甲A1」等という。)を提出し、申立人Bは申立理由Bの証拠方法として下記2(2)の甲第1号証~甲第10号証(以下、「甲B1」等という。)を提出した。

なお、甲A2と甲B2、甲A3と甲B1は同じである。

1 特許異議申立理由

(1) 申立理由A

ア 申立理由A1-1(甲A1を主たる引用例とした進歩性)

本件特許発明1~13は、本件出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲A1に記載された発明、甲A1、甲A2、甲A4~甲A26に記載された技術的事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1~13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

イ 申立理由A1-2(甲A3を主たる引用例とした進歩性)

本件特許発明1~13は、本件出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲A3に記載された発明、甲A3、甲A2、甲A4~甲A26に記載された技術的事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1~13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(2) 申立理由B

ア 申立理由B1(サポート要件)

本件特許発明1~13は、スプレーガンの吹き付け空気圧や被塗物との距離を所定の範囲とすることで微粒化の度合いを調整し、凹凸模様を有する塗膜を形成するという課題を解決しているといえるが、甲B3、甲B4の記載からすると、スプレーガンの種類により吹き付け空気圧や被塗物との距離が異なるから、スプレーガンを特定していない本件特許発明1~13は、本件塗装条件ではその課題を必ずしも解決できるとは言えず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許発明1~13に係る特許は、同法第113条第4号に基づき取り消されるべきものである。

イ 申立理由B2(実施可能要件)

本件特許発明1~13は、上記アと同様であり、本件特許発明1~13はスプレーガンを特定していない以上、スプレーガンから吐出される塗料の微粒化の度合いが大きく異なるものを含むのに対し、本件明細書には、「所望の凹凸模様の大きさなどに応じて、スプレー塗装の具体的条件は適宜設定すればよい」ことが記載されているにとどまる(【0077】)から、発明の詳細な説明において、本件特許発明1~13に係る物の作り方や、どのように使用できるかについて十分に記載されているとはいえず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許発明1~13に係る特許は、同法第113条第4号に基づき取り消されるべきものである。

ウ 申立理由B3-1(甲B1を主たる引用例とした新規性)

本件特許発明1~13は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲B1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1~13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

エ 申立理由B3-2(甲B2を主たる引用例とした新規性)

本件特許発明1~13は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲B2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1~13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

オ 申立理由B4-1(甲B1を主たる引用例とした進歩性)

本件特許発明1~13は、本件出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲B1に記載された発明、甲B1、甲B3~甲B10に記載された技術的事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1~13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

カ 申立理由B4-2(甲B2を主たる引用例とした進歩性)

本件特許発明1~13は、本件出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲B2に記載された発明、甲B2、甲B3~甲B10に記載された技術的事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1~13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

2 証拠方法

(1) 申立理由Aの証拠

甲A1:特開2004-10723号公報

甲A2:特開平5-271585号公報

甲A3:特開2019-85463号公報

甲A4:特開平10-5681号公報

甲A5:特開2000-86941号公報

甲A6:特開平7-236854号公報

甲A7:特開平10-151413号公報

甲A8:特開2016-77998号公報

甲A9:特開2008-73618号公報

甲A10:特開平5-279603号公報

甲A11:特開平10-309514号公報

甲A12:特開2018-188660号公報

甲A13:特開2018-54522号公報

甲A14:特開2004-2707号公報

甲A15:特開平11-228909号公報

甲A16:国際公開第2019/054499号

甲A17:国際公開第2017/111112号

甲A18:国際公開第2017/22698号

甲A19:国際公開第2019/65961号

甲A20:特開2018-193485号公報

甲A21:特開2018-53462号公報

甲A22:「ハンドスプレーガンW-200シリーズ【旧モデル製品】」、https://www.anest-iwata.co.jp/products-and-support/coating-equipment/hand-spray-guns/old-hand-spray-guns/w-200、令和6年10月29日(出力日)(作成者)アネスト岩田株式会社

甲A22の1:「大形スプレーガンW-200シリーズ」の(平成28年(2016年)8月15日付ウェブアーカイブ、https://web.archive.org/web/20160815075821/http://www.anest-iwata.co.jp/coating/spraygun/w_200_spec.html、令和6年10月29日(出力日)(作成者)アネスト岩田株式会社

甲A23:「スプレーガン総合カタログ(アネスト岩田株式会社)」、https://www.anest-iwata.co.jp/sites/products/files/pim/assets/CT/CATALOG/Spray_Guns/CT_99920010-07_ 202404_ NP_ 0.pdf、令和5年(2023年)9月、アネスト岩田株式会社

甲A23の1:アネスト岩田株式会社「ハンドスプレーガンの資料ダウンロード」、https://www.anest-iwata.co.jp/downloads/coating-equipment/hand-spray-guns、令和6年10月29日(出力日)、アネスト岩田株式会社

甲A24:「塗装工程におけるVOC削減技術」、日本塗装機械工業会、第9回技術シンポジウム、https://www.cema-net.com/w/docs/symposium/cema_symposium_9_resume_l.pdf、平成20年10月24日(発行日)、島田哲也

甲A24の1:「日本塗装機械工業会第9回技術シンポウジウム講演要旨集」、https://www.cema-net.com/indigo/extern/n_8b9dela9cbb9f5b41b5d47703d204e10.pdf、平成20年10月24日(発行日)、日本塗装機械工業会

甲A25:「室内装飾塗料」、材料試験、1959年8巻68号、p.391-398、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsms1952/8/68/8_68_391/_pdf/-char/ja及び公開情報のスクリーンショット、昭和34年5月15日(発行日)、公益社団法人日本材料学会(発行者)

甲A26:「ミシン塗装の管理」、実務表面技術、1972年19巻5号、p.233-239

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1970/19/5/19_5_233/_pdf/-char/ja

及び公開情報のスクリーンショット、昭和47年5月1日(発行日)、一般社団法人表面技術協会(発行者)

(2) 申立理由Bの証拠

甲B1:特開2019-85463号公報(甲A3と同じ。)

甲B2:特開平5-271585号公報(甲A2と同じ。)

甲B3:材料試験(雑誌名)、昭和34年1月15日、第8巻、第64号、p.91 -105、

「塗装と塗装機器」、公益社団法人日本材料学会(発行者)

甲B4:スプレーガン総合カタログ(アネスト岩田コーティングソリューションズ株式会社製品カタログ)、平成28年12月(発行月)、アネスト岩田コーティングソリューションズ株式会社

甲B5:色材協会誌(雑誌名)、平成5年1 0月2 0日、第6 6巻、第10号、p.614-620、「スプレー塗装」、一般社団法人色材協会(発行者)

甲B6:すぐにできるVOC対策塗装で取り組むVOC削減の手引き(環境省発行カタログ)、平成19年3月(発行月)、環境省水・大気環境局大気環境課(発行者)

甲B7:職場のあんぜんサイト 安全データシート 酢酸ブチル、https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/123-86-4.html、平成27年3月31日(掲載日)、厚生労働省

甲B8:職場のあんぜんサイト 安全データシート メチルイソブチルケトン、https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/108-10-1.html、令和4年3月15日(掲載日)、厚生労働省

甲B9:職場のあんぜんサイト 安全データシート キシレン、https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0016.html、平成27年3月31日(掲載日)、厚生労働省

甲B10:職場のあんぜんサイト 安全データシート イソプロピルアルコール、https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/67-63-0.html、平成26年3月31日(掲載日)、厚生労働省

第5 取消理由について

取消理由の要旨は、甲B2を主たる引用例とした新規性である。

1 証拠方法

(1) 申立人A,Bが提出したもの

取消理由では、甲B2~甲B6を採用した。

(2)参考文献(特許権者が令和7年6月6日の意見書に添付して乙第1号証として提出したもの。)

参考文献1:粘度対照表(https://www.meijiair.co.jp/technology/gun/viscosity.htmlにて閲覧可能な粘度対照表の一部)

2 甲号証等の記載について

(1)甲B2の記載

甲B2には、以下の記載がある。(当審で下線を付与。)

「【特許請求の範囲】

【請求項1】 炭素数2~6を有する脂肪族プライマリージアミンと、前記ジアミンに対し当量の12-ヒドロキシステアリン酸及び炭素数2~10を有する脂肪族ジカルボン酸とを反応して得られる脂肪酸ポリアマイドワックスを、粉砕して平均粒子径5.0μm以下とし、有機溶媒の存在下に温熱膨潤させた非水系塗料用流動調整剤。」

「【0030】

【作用】本発明で得られた膨潤体が流動調整剤として適用しうる塗料は、主にアミノアルキッド樹脂塗料、アクリルメラミン樹脂塗料、ポリエステルメラミン樹脂塗料等の熱硬化性樹脂塗料であるが、その他にウレタン樹脂塗料、アルキッド樹脂塗料、塩化ゴム塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、等の非水系合成樹脂塗料にも適用できる。」

「【0032】すなわち、脂肪酸ポリアマイドワックスの微粒化膨潤体はお互いの粒子間で凝集による相互作用を発揮し、可逆的な結合力を持ち、それは系全体に拡がり見掛け上の増粘効果をもたらし顔料等の沈降を防止する。一方、塗装時など塗料に強い剪断力が働いた場合、それらの結合は速やかに破壊され見掛け上の粘度は低下し塗装作業性および塗膜の平滑化に寄与する。さらに塗着後、直ちに膨潤ゲル体は再結合し粘度を増大させ塗料の垂れを防止する。」

「【0040】実施例 1

12-ヒドロキシステアリン酸300.0部(1.0モル)、アゼライン酸94.0部(0.5モル)を撹拌装置、温度計、分水器を備えた1リットル4ツ口フラスコに計量し、110°C~120°Cに加温溶解させる。次にフラスコを100°Cまで冷却し、ヘキサメチレンジアミン116.0部(1.0モル)を徐々に加え、130~140°Cで30分間撹拌する。更に200°Cまでゆっくり加温し脱水反応を行なう。5~6時間反応して得られる淡黄色の脂肪酸ポリアマイドワックス(酸価4.5、全アミン価4.7)を粉砕機にて平均粒子径10.0μm以下の微粉末とする。

【0041】上記の如くして得られた脂肪酸ポリアマイドワックス100部に対し芳香族炭化水素系溶媒(ソルベッソ#100)300部を加え、140°Cまで昇温し加熱溶解する。次に撹拌下で、これに10°Cに冷却したキシレン400部を急速混合しペースト状とする。つぎに1リットルガラス瓶に上記ペースト400部を移しカウレスディゾルバーにより前分散する。その後ガラスビーズ(φ=1.5mm)を加えペイントシェーカーによる分散を行ない平均粒子径2.0μm以下とする。

【0042】上記脂肪酸ポリアマイドワックスの微粒子分散物80部に対しイソプロピルアルコール20部を加え均一に混合する。さらにこれを密閉容器に充填し60°C~65°Cで36時間膨潤を行ない目的とする流動調整剤ペーストを得た。

【0043】

実施例 2

12-ヒドロキシステアリン酸450.0部(1.5モル)、セバシン酸50.5部(0.25モル)を撹拌装置、温度計、分水器を備えた1リットル4ツ口フラスコに計量し、110°C~120°Cに加温溶解させる。次にフラスコを100°Cまで冷却し、1,4-ジアミノブタン88.0部(1.0モル)を徐々に加え、130°C~140°Cで30分間撹拌する。更に200°Cまでゆっくり加温し脱水反応を行なう。5~6時間で反応を終了し、得られる淡黄色の脂肪酸ポリアマイドワックス(酸価4.5、全アミン価4.7)を粉砕機にて平均粒子径6~7μmの微粉末とする。

【0044】

上記の如くして得られた脂肪酸ポリアマイドワックスを実施例1と同様にポリアマイドワックスのパウダー50部に対しキシレン350部を加える。つぎにカウレスディゾルバーにより前分散した後、さらにガラスビーズによる分散を行ない平均粒子径2.0μm以下とする。

【0045】

前述の脂肪酸ポリアマイドワックスの微粒子分散物80部に対し合成アルコール(工業用エチルアルコール、メチルアルコール混合物、エチルアルコール:メチルアルコール=3:1)20部を加え均一に混合する。つぎにこれを密閉容器に充填し50°C~55°Cで24時間膨・・・

【0046】実施例 3~12

上記実施例2の合成方法に従い後記の表-1の配合比率で縮合アマイド化反応を行ないそれぞれ脂肪酸ポリアマイドワックスを得た。次にそれらを粗砕および粉砕機により表-1に示す平均粒子径の微粉末とする。・・・

【0052】

【表1】

105

153

0001430005000001.jpg

「【0056】

塗料組成

(1)アルキッドメラミン樹脂塗料

・・・

【0057】

(2)アクリルメラミン樹脂塗料

アクリデック 44-179(大日本インキ製) 45.5部

スーパーベッカミン J-820-60(大日本インキ製) 16.3部

酸化チタン(石原産業 TIPEQUE CR-93) 32.5部

ソルベッソ #100 4.6部

イソブタノール 1.1部

合 計 100.0部

・・・

【0059】塗装焼き付け方法

(1)

フォードカップ#4を用い添加塗料を希釈用シンナーで20秒(25°C)に希釈する

(2)

エアースプレー塗装(付加窒素圧力3.5Kg/cm)

(3)脱脂したアルミ製塗装板(20×30cm)に幅2cmのマスキングテープを貼り付け水平位置に傾斜をつけて塗装する。

(4)塗装直後、鋭角のへらにて塗板の塗料をマスキングテープと平行に直線状に掻きとる。

(5)塗装直後にマスキングテープを剥がし垂直状態で7分間セッティングする。

(6)垂直状態で送風乾燥機で140°C×20分間焼き付け硬化を行なう。

【0060】測定項目

(1)TI値:チクソトロピックインデクスを意味し、B型粘度計を用い6rpm及び60rpmの粘度(CPS)を測定しそれらの商により算出する。

(2)粘度:フォードカップ#4にて25°Cにおける流下秒数を測定する。

(3)希釈率:フォードカップ#4を用いて流下秒数が20±1秒にするのに要するシンナー量を外掛け%で表示する。

(4)垂れ限界膜厚:傾斜塗り塗装板の垂れはじめ部分の膜厚を高周波膜厚計により測定する。

(5)光沢:村上色彩科学製光沢計(GM-3D)を用い、垂れ限界膜厚における20°鏡面反射光沢を測定する。・・・

【0063】

【表2】

134

92

0001430005000002.jpg

【0064】

アクリルメラミン樹脂塗料

に於ける性能試験結果を表-3に示す。

【0065】

【表3】

109

153

0001430005000003.jpg

(2) 甲B3の記載事項

(3) 甲B3には、スプレーガンについて複数種記載され、スプレーガンの種類によって吹付距離、吹付圧力、塗料吐出量等が異なることや(93頁左欄最下行~93頁右欄7行、94頁右欄12行~95頁左欄3行)、圧送型のように流出量が多い場合は吹付圧力が3.5~5kg/cm

2

(kg/cm

2

はkgf/cm

2

の誤記であると当審は判断した。)であることや、吹付距離は、15~25cmであるが、大型ガンのときは25~35cmくらいにすること(95頁右欄29~38行)が記載されている。

(3)甲B4の記載事項

甲B4には、スプレーガンについて、種々の用途に対応した「低圧スプレーガン」「汎用スプレーガン」等が複数種記載され、スプレーガンの種類によって吹付距離、吹付圧力、塗料吐出量等が異なることや(3~8頁)、汎用スプレーガンW-200 201G(本件特許発明の実施例で使用)の吹付圧力0.29MPa、吹付距離25cmであることが記載されている(8頁)。

(4) 甲B5の記載事項

甲B5には、エアスプレーの圧力は0.1~0.5MPaであることが記載されている(37頁)。

(5) 甲B6の記載事項

甲B6には、塗装条件のエア圧が0.2~0.3MPaであることや、スプレー距離は200~300mmであることが記載されている(7頁)。

(6) 参考文献1の記載

参考文献1には、以下の事項が記載されている。

95

153

0001430005000004.jpg

3 甲B2に記載されている発明

甲B2の表1の実施例5に記載の脂肪酸ポリアマイドワックスを含有する流動調整剤を、【0057】に記載のアクリルメラミン樹脂塗料に添加した塗料組成物について、【0059】の記載(「塗装焼き付け方法・・・(2)エアースプレー塗装」)及び、表3の実施例5に記載の性能試験結果(T.I値)を参考にして認定すると、甲B2には、次の発明(甲B2発明という。)が記載されていると認められる。

なお、ソルベッソ#100は芳香族系溶剤である。

(甲B2発明)

「アクリデック44-179(大日本インキ製)45.5部、スーパーベッカミンJ-820-60(大日本インキ製)16.3部、酸化チタン(石原産業 TIPEQUE CR-93)32.5部、ソルベッソ#100(芳香族系溶剤)4.6部、イソブタノール1.1部からなるアクリルメラミン樹脂塗料(合計100部)に流動調整剤(12-ヒドロキシステアリン酸1.50モル、セバシン酸0.25モル、ヘキサメチレンジアミン1.00モルから製造された脂肪酸ポリアマイドワックスを含有する。)を添加量1.5%となるように添加した塗料組成物であって、エアースプレー塗装した塗膜のT.I値が2.46である塗料組成物。」

4 対比・判断

(1) 本件発明2

甲B2発明の「アクリデック44-179(大日本インキ製)」はアクリルメラミン樹脂であるから本件発明2の「主剤」に相当し、甲B2発明の「スーパーベッカミンJ-820-60(大日本インキ製)」はメラミン硬化剤であるから、本件発明2の「硬化剤」に相当し、甲B2発明の「12-ヒドロキシステアリン酸1.50モル、セバシン酸0.25モル、ヘキサメチレンジアミン1.00モルから製造された脂肪酸ポリアマイドワックス」は本件発明2の「脂肪酸アマイド」に相当する。

また、甲B2発明の「T.I値」は、【0060】の「(1)TI値:チクソトロピックインデクスを意味し、B型粘度計を用い6rpm及び60rpmの粘度(CPS)を測定しそれらの商により算出する。」の記載からすると、本件発明2の「B型粘度計を用いて25°C、回転数6rpmの条件で測定される塗料組成物の粘度をη

6rpm

とし、B型粘度計を用いて25°C、回転数60rpmの条件で測定される塗料組成物の粘度をη

60rpm

としたとき、η

6rpm

60rpm

」に相当し、甲B2発明では「T.I値」が2.46であるから、本件発明2の「η

6rpm

60rpm

」の数値範囲(2~7)を充足する。さらに、甲B2発明の「エアースプレー塗装」は、本件発明1の「スプレー塗装」に相当する。

してみれば、両者は下記の点(一致点)で一致し、下記の点(相違点B2-1、B2-2、B2-3)で相違する。

<一致点>

「塗膜成分として、少なくとも主剤、硬化剤および脂肪酸アマイドを含む塗料組成物であって、B型粘度計を用いて25°C、回転数6rpmの条件で測定される塗料組成物の粘度をη

6rpm

とし、B型粘度計を用いて25°C、回転数60rpmの条件で測定される塗料組成物の粘度をη

60rpm

としたとき、η

6rpm

60rpm

は2~7であり、スプレー塗装により塗膜を形成するために用いられる塗料組成物。」

<相違点B2-1>

本件発明2は、スプレー塗装に関し「吹き付け空気圧が0.15~0.35MPaであり、被塗物と、スプレーガンまたはノズルの吐出部との距離が15~50cmである」と特定しているのに、甲B2発明ではそのように特定されていない点。

<相違点B2-2>

本件発明2は塗膜が「凹凸模様を有する」と特定されているのに対し、甲B2発明ではそのように特定されていない点。

<相違点B2-3>

本件発明2は、「前記η

6rpm

は0.2~50Pa・sである」と特定されているのに対し、甲B2発明ではそのように特定されていない点。

最初に相違点B2-2、B2-3について検討する。

甲B2発明の「塗料組成物」の粘度は、SI単位では0.04~0.05Pa・s程度と考えられる。

すなわち、甲B2の【0059】には、「塗装焼き付け方法 (1)フォードカップ#4を用い添加塗料を希釈用シンナーで20秒(25°C)に希釈する。」と記載されており、甲B2発明の塗料組成物を、スプレーガンまたはノズルから被塗物に対して噴出する際の粘度が20秒(フォードカップ#4)であると解される。ここで、参考文献1(粘度対照表)に基づくと、フォードカップ#4の流下時間が20秒となる粘度は、SI単位では0.04~0.05Pa・s程度となる。粘度対照表には、「Pa・s」が、B型粘度計で回転数6rpmの条件で測定された粘度であることの明記はないが、フォードカップ等の流下時間を測定することによる粘度測定は、通常、塗料を重力により、自然に、できるだけ静かに流下させることにより行うことを踏まえれば、対照表における「Pa・s」で記載の粘度は、B型粘度計で回転数6rpm(低回転速度)にて測定される粘度と十分近い値といえる。

これに対して、本件発明は、塗料組成物の粘度が「η

6rpm

は0.2~50Pa・sである」ことにより、所定の作用を奏するものであって、甲B2には、塗料組成物の粘度を、フォードカップ#4で測定される粘度が20秒(0.04~0.05Pa・s程度)から、0.2~50Pa・sとすることは、何ら示唆されておらず、甲B2には、塗料組成物の粘度を増加させることにより、平滑な塗膜ではなく凹凸模様を有する塗膜を形成できるようにすることが示唆されてもいない。

さらに、他の証拠方法(甲B1、甲B3~甲B10、甲A1、甲A3~甲A26)にもかかる事項は記載も示唆もない。

してみれば、上記相違点は、甲B2に記載されているとも、申立人A,Bが提示した証拠から当業者が容易に想到できたものであるともいえない。

ウ 粘度に対する申立人の主張

申立人Aは、令和7年7月25日受付の意見書において以下のように主張している。

(ア)フォードカップ♯4で測定した粘度がη

6rpm

との間に相関があるとはいえず、その理由として甲B2の表2のフォードカップ♯4で測定した粘度とη

6rpm

を、乙第1号証に基づいて換算して得られる粘度をまとめた下記表aによると、フォードカップ♯4の測定結果を換算した粘度は0.08~0.1Pa・sの範囲に収束しているのに対し、η

6rpm

において実測した粘度は0.25~1.20Pa・sの範囲にあり、これらの比(以下、「当該比」という)を取れば、η

6rpm

はフォードカップ♯4による粘度の3.1~12.1倍程度になりうる。(同意見書2~3頁)

57

92

0001430005000005.jpg

(イ)甲B2には、「脂肪酸ポリアマイドワックスの微粒化膨潤体はお互いの粒子間で疑集による相互作用を発揮し、可逆的な結合力を持ち、それは系全体に拡がり見掛け上の増粘効果をもたらし顔料等の沈降を防止する。一方、塗装時など塗料に強い剪断力が働いた場合、それらの結合は速やかに破壊され見掛け上の粘度は低下し塗装作業性および塗膜の平滑化に寄与する」と記載されている (甲B2の【0032】)。かかる記載によれば、甲B2に記載の脂肪酸ポリアマイドワックスを用いた場合、回転数6rpmでは、お互いの粒子間で疑集による相互作用が発揮され、可逆的な結合が形成されることにより見掛け上の増粘効果がもたらされる一方、フォードカップの測定の際には、上記結合が破壊されて、見掛け上の粘度が低下 したものと考えられる。そうす ると、フオードカップ♯4による測定値が20秒である塗料組成物においても、回転数6rpmでは見掛け上の増粘効果がもたらされると考えられ、これらの塗料組成物のη

6rpm

は 0.2~50Pa・s範囲内に含まれる蓋然性が高い。(同意見書4頁)

エ 申立人Aの主張に対する検討

(ア)について

甲B2の【0060】【0063】によると、表2のフォードカップ♯4には希釈後の粘度であるのに対し、η

6rpm

は希釈前の粘度であり、実施例により希釈率も変わる(前記2(1)参照。表2によると希釈率が最も高いのが実施例2であり、次に高いのが実施例5であり、これは前記表aの当該比が最も高いのが実施例2であり、次に高いのが実施例5であることと一致することから、希釈率がある程度当該比と関係していることが理解できる。)ことからすると、表aの当該比が異なるからといって、フォードカップ♯4で測定した粘度がη

6rpm

との間に全く相関がないといえるものではない。

(イ) について

フォードカップ#4の粘度測定は通常、塗料を重力により、自然に、できるだけ静かに硫化させることにより行うこと(特許権者提出の令和7年6月6日付け意見書11頁)であり、強い剪断力が働いておらず、してみれば「フォードカップの測定の際には、上記結合が破壊されて、見掛け上の粘度が低下したもの」とは考えられない。

オ 小括

以上より、本件発明2は、相違点B2-1について判断するまでもなく、甲B2に記載された発明であるとも、甲B2に記載された発明及び申立人A,Bが提示した証拠に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件発明3~13について

本件発明3~13は、本件発明2の発明特定事項を全て含む発明であるから、前記(1)で説示した理由と同様の理由により、甲B2に記載された発明であるとも、甲B2に記載された発明及び申立人A,Bが提示した証拠に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)まとめ

以上のとおりであるから、本件発明2~13は、甲B2に記載された発明ではないし、甲B2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

1 採用しなかった申立理由の内容

採用しなかった申立理由は前記第4 1に記載したうち、甲A1を主たる引用例とした進歩性、甲A3(=甲B1)を主たる引用例とした進歩性、サポート要件、実施可能要件、甲B1(=甲A3)を主たる引用例とした新規性・進歩性である。

2 証拠方法

甲A1~甲A26、甲B1、甲B3~甲B10に記載された事項は以下のとおりである。

(1) 甲A1

「【請求項1】

水酸基含有基体樹脂、ポリイソシアネート架橋剤、着色顔料及び有機溶剤を必須成分として含有し、スプレー塗装粘度が2000~20000Pa・sec、チクソトピックインデックス2.0~6.0、及びスプレー塗装固形分が55~95重量%であることを特徴とする立体模様塗膜形成用塗料組成物。」

「【0020】

また、本発明において、上記した成分以外に、必要に応じて塗料分野で公知の添加剤、例えば、体質顔料、垂れ止め剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化促進剤、消泡剤などを配合することができる。・・・

【0022】

また、本発明の塗料は、チクソトピックインデックスが2.0~6.0、好ましくは3.0~5.0 の範囲である。チクソトピックインデックスが2.0未満になると山の高さが高いはっきりとした立体模様が形成し難くなり、一方、6.0を超えると塗装作業性が悪くなる。

【0023】

本明細書において、チクソトピックインデックスは、JIS K5400 4.5.3(1990)により求めた値である。回転粘度計による非ニュ-トン性の評価に示されているTI(Thixotropy index:回転数6rpmと60rpmにおける粘度の比率)を測定した。

【0024】

本発明の塗料は、特に制限なしに従来から公知の車両関係、家電関係、建材関係、道路関係、航空機関係、掲示標識関係、計器関係、医療関係、玩具関係、事務用品関係、鋼製家具関係、機械関係等の構造物もしくはそれらを構成する素材(金属素材、プラスチック素材、無機素材等)に塗装して立体模様を形成することができる。」

「【0027】

【実施例】本発明について、実施例を掲げて以下に詳細に説明する。なお、実施例は、以下のものに制限されるものではない。

【0028】

実施例1

水酸基含有基体樹脂(アクリルポリオール樹脂、重量平均分子量2万、水酸基価80mgKOH/g、メチルメタクリレート/スチレン/N-ブチルメタクリレート/2-ヒドロキシエチルアクリレートのラジカル共重合体)100重量部、イソホロンジイソシアネート20重量部、二酸化チタン顔料100重量部及びキシレン有機溶剤60重量部を配合してなる実施例1の塗料組成物。

【0029】

実施例1の塗料組成物は、スプレー塗装粘度が7000Pa・sec、チクソトピックインデックス4.0、及びスプレー塗装固形分78重量%である。

【0030】

次に、実施例1の塗料組成物をABSプラスチック基材(黒色)にスプレー塗装機で斑になるように塗装し、20°Cで5時間放置した硬化させた。その結果、塗装時の立体模様の山の高さは0.3~1.0mmで硬化後の立体模様の山の高さは0.2~1.0mmで良好であった。立体模様塗膜表面をアセトン溶剤で往復10回指で強くラビングした結果、模様表面はラビング前後で光沢の変化が無く良好であった。

【0031】

また、同様に実施例1の塗料組成物を塗装金属基材(青色)にスプレー塗装機で斑になるように塗装し、20°Cで5時間放置した硬化させた。その結果、塗装時の立体模様の山の高さは0.3~1.0mmで硬化後の立体模様の山の高さは0.2~1.0mmで良好であった。立体模様塗膜表面をアセトン溶剤で往復10回指で強くラビングした結果、模様表面はラビング前後で光沢の変化が無く良好であった。

【0032】

実施例2

水酸基含有基体樹脂(アクリルポリオール樹脂、重量平均分子量2万、水酸基価80mgKOH/g、メチルメタクリレート/スチレン/N-ブチルメタクリレート/2-ヒドロキシエチルアクリレートのラジカル共重合体)100重量部、イソホロンジイソシアネート20重量部、二酸化チタン顔料50重量部、炭酸カルシウム100重量部及びキシレン有機溶剤100重量部を配合してなる実施例2の塗料組成物。」

(2) 甲A2

前記第6 2(1)甲B2の記載のとおりである。

(3)甲A3

「【請求項1】

主剤成分(I)と硬化剤成分(II)を混合して得られる有機溶剤型の多成分系下塗り塗料組成物であって、

主剤成分(I)が、アクリルポリオール(A1)、顔料組成物(A2)及び有機溶剤(A3)を含み、

硬化剤成分(II)がポリイソシアネート化合物を含むものであって、

主剤成分(I)に含まれる顔料組成物(A2)がその成分の一部として体質顔料を含み、

主剤成分(I)及び/又は硬化剤成分(II)がシリカ微粒子(A4)を、アクリルポリオール(A1)不揮発分100質量部を基準にして5~80質量部含む、下塗り塗料組成物。

【請求項2】

顔料組成物(A2)が、防錆顔料をさらに含む請求項1に記載の下塗り塗料組成物。

【請求項3】

アミド系粘性調整剤をさらに含む請求項1または2記載の下塗り塗料組成物。

【請求項4】

硬化触媒をさらに含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の下塗り塗料組成物。

【請求項5】

主剤成分(I)のチキソトロピックインデックスが4.0以下にある請求項1ないし4のいずれか1項に記載の下塗り塗料組成物。」

「【0011】

本発明の目的は、

塗り継ぎ部の仕上がり肌も良好な塗膜

を形成するのに適する下塗り塗料組成物を提供することにある。」

「【0056】

これらのうち粘性調整剤としては、例えば、アミド系粘性調整剤、ポリエチレン系粘性調整剤、層状粘度鉱物等を挙げることができるが、

塗り継ぎ部の塗膜外観

と貯蔵安定性の点からアミド系粘性調整剤を使用することが好ましい。」

「【0084】

本発明組成物の塗装は、従来公知の塗装方法が採用でき、特にスプレー塗装が好適である。塗装膜厚としては、乾燥平均膜厚で50~500μmの範囲内が挙げられ、薄膜は勿論厚膜塗装も可能である。」

「【実施例】

【0097】

以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記例中の「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。

【0098】

<2成分系の下塗り塗料組成物の製造>

実施例1

不揮発分55%のアクリル樹脂溶液(注1)30.5部に、酢酸ブチル7.5部、メチルイソブチルケトン2部、顔料分散剤0.3部、チタン白8部、タルク5.7部、クレー7.5部、硫酸バリウム24部、シリカ(平均粒子径6.7μm、吸油量225、密度2.0)5.7部、酸化亜鉛5.7部、ジブチル錫ジラウレート0.05部、2-エチルヘキサン酸カルシウム0.5部、アミド系増粘剤(脂肪酸アマイド、アミド系粘性調整剤)0.4部を順次配合し混合・攪拌し、30分間分散処理をし、主剤成分を得た。該主剤成分に、硬化剤としてポリイソシアネート化合物(「デュラネートTKA-100」、商品名、旭化成社製 NCO%:21.7%)を3.5部を使用直前に混合し下塗用塗料組成物(A-1)を得た。」

「【0100】

実施例2~11及び比較例1~2

上記実施例1において、表1記載の配合組成とする以外は実施例1と同様にして各下塗用塗料組成物(A-2)~(A-11)及び(A-13)~(A-14)を得た。

【0101】

<3成分系の下塗り塗料組成物の製造>

実施例12

表1記載の配合にて主剤成分、硬化剤成分、クリヤー組成物(III)を使用直前に混合して下塗り塗料組成物(A-12)を得た。

【0102】

【表1】

80

92

0001430005000006.jpg

【0107】

(*)仕上がり外観

300×100×0.8mmの軟鋼板に、「LUCポリパテ」(関西ペイント社製、不飽和ポリエステルパテ)をヘラにて厚さ約2mmとなるように盛り付け、20°Cで60分間乾燥させた後、該塗面をP120空研ぎペーパーで表面をならすように研磨してから、該塗面上に実施例及び比較例で得られた各下塗用塗料組成物をプライマーサーフェーサーとして、希釈シンナーで塗装時不揮発分50%となるように調製し、乾燥膜厚で約60μmとなるように

スプレー塗装した

後、20°Cで60分乾燥させた塗膜上に、市販の1液型有機溶剤系メタリックベース塗料を乾燥膜厚として15μmになるようにエアスプレーにて塗装した。塗装後室温にて10分間放置した未硬化の塗膜上に、市販の有機溶剤型2液ウレタン硬化型塗料を乾燥膜厚として40μmとなるようにエアスプレーにて塗装した。室温にて10分間放置後に熱風循環式乾燥炉を使用して60°Cで20分間加熱して、試験板を得た。その後各試験塗板の外観をスカシ方向(斜め方向)から観察し、下記評価基準にて評価した。

◎:ツヤ感、

塗面平滑性が非常に良好であり

、吸い込み、プラサフ跡がいずれも認められない、

○:ツヤ感、

塗面平滑性が良好であり

、吸い込み、プラサフ跡がいずれも認められない、

△:ツヤ感、塗面平滑性がやや不良であり、吸い込み、プラサフ跡がいずれも認められない、

×:ツヤ感、塗面平滑性が不良であり、吸い込み、プラサフ跡のいずれかが認められる。」

(4)甲A4

「【0045】

また、「ゾラコ-トNo.229」(関西ペイント社製、ニトロセルロ-ス系多彩模様塗料)、及び「ゾラト-ンNo.17911SU」(関西ペイント社製、ビニルトルエン樹脂系多彩模様塗料)をそれぞれ多彩模様塗料B、Cとした。

実施例及び比較例

上記製造例で得られた各多彩模様塗料を、下記性能試験用の試験板に表2に示すスプレ-ガン(※)を用いて同表に示す塗装条件で塗装した。得られた塗装板を各性能試験に供した。結果を表2に示す。

【0046】

(※)表2中のスプレ-ガン種は下記の通りである。空気供給方式はl以外は全てコンプレッサ-型である。

【0047】

a:「W-87-25W5G」、岩田塗装機社製、重力式スプレ-ガン

b:「W-90-25W5P」、 〃 、圧送式 〃

c:「W-90-30Y5S」、 〃 、吸上式 〃

d:「W-873」、 〃 、圧送式 〃

e:「W-871-1」、 〃 、加圧式 〃

f:「W-871-2」、 〃 、圧送式 〃

g:「F-200B-P20」、明治機械製作所製、圧送式 〃

h:「F-200B-P25」、 〃 、圧送式 〃

i:「F-200B-P30」、 〃 、圧送式 〃

j:「リシンガンMG-1D」、岩田塗装機社製、重力式 〃

k:「リスタガンMG-6B」、 〃 、重力式 〃

l:「No152*1」、VOLUMAIR社製、HVLP機用加圧式〃

m:「W-87-20R5S」、岩田塗装機社製、重力式 〃

n:「W-90-18N5P」、 〃 、圧送式 〃

o:「F-200B-P15」、明治機械製作所製、圧送式 〃」

76

112

0001430005000007.jpg

(5)甲A5

「【0016】

【実施例】<実施例1>アクリル樹脂を含む熱硬化型塗料(関西ペイント(株)製、マジクロン1000クリヤー)に、アクリル粘着剤(東亜合成(株)製、アロンタックS-3403)を10重量%と、白の着色顔料(テイカ(株)製、JR800)を5重量%配合し、インペラーミルで10分間分散することで模様塗装用塗料を得た。50mm×50mmの板状の真鍮材料をバフ研磨した後、溶剤脱脂した。次に、黒色の熱硬化型アクリル塗料(関西ペイント(株)製、マジクロン1000)を樹脂固形分が15重量%になるように、マジクロン1000用シンナー(関西ペイント(株)製)で希釈し、スプレー法にて塗布し、150°C、5分間の条件で乾燥し、黒色の塗膜を形成した。黒塗装した真鍮板上に、模様塗装用塗料を樹脂固形分が20重量%になるように、マジクロン1000用シンナー(関西ペイント(株)製)で希釈した後、スプレー法にてエアー圧が3kgf/cm

2

の条件で塗布し、180°C、25分間の条件で乾燥し、黒に白の点状模様を有する真鍮板を得た。

【0017】

<実施例2>実施例1の模様塗装用塗料において、アクリル粘着剤の使用量を10重量%から20重量%に変えた以外は実施例1と同様にして黒に白の点状模様を有する真鍮板を得た。

【0018】

<実施例3>実施例1の模様塗装用塗料において、アクリル粘着剤の使用量を10重量%から30重量%に変えた以外は実施例1と同様にして黒に白の点状模様を有する真鍮板を得た。

【0019】

<実施例4>実施例1の模様塗装用塗料において、アクリル粘着剤の使用量を10重量%から50重量%に変えた以外は実施例1と同様にして黒に白の点状模様を有する真鍮板を得た。

【0020】

<実施例5>実施例1の模様塗装用塗料において、アクリル粘着剤の使用量を10重量%から70重量%に変え、また、ナイロン樹脂粉体(東レ(株)製、SP-500)を5重量%加えた以外は実施例1と同様にして黒に白の糸状模様を有する真鍮板を得た。

【0021】

<実施例6>共重合ポリエステル粘着剤(東亜合成(株)製、PES-360S30)に、ナイロン樹脂粉体(東レ(株)製、SP-500)を5重量%と、白の着色顔料(テイカ(株)製、JR800)を5重量%配合し、インペラーミルで10分間分散することで模様塗装用塗料を得た。50mm×50mmの板状の真鍮材料をバフ研磨した後、溶剤脱脂した。次に、黒色の熱硬化型アクリル塗料(関西ペイント(株)製、マジクロン1000)を樹脂固形分が15重量%になるように、マジクロン1000用シンナー(関西ペイント(株)製)で希釈し、スプレー法にて塗布し、150°C、5分間の条件で乾燥し、黒色の塗膜を形成した。黒塗装した真鍮板上に、模様塗装用塗料を樹脂固形分が20重量%になるように、混合シンナー(トルエン:MEK=8:2)で希釈した後、スプレー法にてエアー圧が3kgf/cm

2

の条件で塗布し、180°C、25分間の条件で乾燥し、黒に白の糸状模様を有する真鍮板を得た。

【0022】

<実施例7>実施例6の模様塗装用塗料において、ナイロン樹脂粉体の使用量を5重量%から10重量%に変えた以外は実施例6と同様にして黒に白の糸状模様を有する真鍮板を得た。」

(6)甲A6

「【0050】

水性着色ベースの塗装条件

塗装機として、静電遠心霧化型ベル塗装機(μμベル)を用い、回転数45000rpm、シェイピングエア圧1Kg/cm

2

、印加電圧-60KV、被塗物との距離250mm、レシプロサイクル数26cycleの条件で、水性着色ベース塗料を乾燥塗膜厚が5ミクロンとなるように塗装し、60秒間セッティングした後、上記と同条件で、さらに水性着色ベース塗料を乾燥塗膜厚が5ミクロンとなるように塗装した。次いで120秒間セッティング後、塗装機として、自動エア霧化塗装機を用い、霧化エア圧3.5Kg/cm

2

、パターンエア圧3.0Kg/cm

2

、印加電圧0KV、被塗物との距離300mm、レシプロサイクル数26cycleの条件で、水性着色ベース塗料を乾燥塗膜厚が5ミクロンとなるように塗装し、180秒間セッティングした後、次の乾燥工程に送った。」

(7)甲A7

「【0075】

【実施例3、4】

<塗装>日本ワグナー・スプレーテック(株)製のジェットテクノ(GM2000EAC)を使用し、第1表に示す配合の塗料組成物(実施例3:組成3、実施例4:組成4)をスプレー角度50(度)、吐出量570ml/分、印加電圧80kv,エヤコート用の空気圧0.2kg/cm

2

、被塗物との距離30cmで塗装した。塗装は、アミン蒸気触媒の存在下でスプレーして行った。この試験では、アミン蒸気濃度3000~6000ppmで塗装を行った。」

(8)甲A8

「【0070】

また、例えば、ワイダー100(アネスト岩田社製、エアスプレーガン)を用いてエアスプレー塗装する場合において、塗装時の光輝性顔料分散体固形分が1%の場合、霧化空気圧力は0.5~4.0MPa、塗調開度は0.5~3.0回転の範囲で調整し、被塗物とワイダー100との距離は20~25cmの条件で塗装することができる。」

(9)甲A9

「【0049】

中塗り塗装の後、中塗り塗装を施した梨地鋼板に、霧化式静電塗装機を用い、霧化エア圧:3.0Kg/cm

2

、パターンエア圧:2.0Kg/cm

2

、パターン幅:30cm、印加電圧:-60KV、被塗物距離:30cmの設定条件で、日本ペイント(株)製水性メタリックベース塗料「アクアレックスAR-2100」(粘度:45”/#4FC)(シルバーメタリック色)を、ウエット・オン・ウエット方式又は第3表に記載の条件のプレヒート方式で塗布した。さらに、その上に、回転式静電塗装機を用い、回転数:35000rpm、シェービング・エア圧:1.5Kg/cm

2

、印加電圧:-90KV、被塗物距離:30cmの設定条件で、クリヤー塗料、日本ペイント(株)製「マックフローO-1820」を、ソルベッソ150(シェル化学製)/ソルベッソ100/トルエン=4/3/3(質量比)の希釈シンナーを用いて、塗装粘度:22”(/#4FC)に希釈したものを、第3表に記載の条件のプレヒート方式で塗装した。)」

(10)甲A10

「【0023】

上記で得られた各々の塗料について、フレキシブルボードの表面に、塗料ノズル口径4mmのエアースプレーガンを用いて空気圧2kg/cm

2

で吹付け塗装を行い(塗布量500g/m

2

、スプレーガンと被塗面との距離40cm)、室温で24時間乾燥して形成された塗膜の外観及び手で触れたときの感触を下記の評価基準で評価し、また、塗着効率については下記式により算出し、各々の結果を併せて下記表1に示した。

29

59

0001430005000008.jpg

評価基準

(1)塗膜外観:○;天然石にきわめて近似した外観、

△;着色骨材が少ないきらいがあるが、天然石調に近似している、

×;着色骨材が少なく、天然石調に乏しい外観、

(2)塗膜感触:○;塗膜表面は平滑性があり、ソフト感にも優れている、

△;表面ザラザラした感触があるがソフト感を有している、

×;表面ザラザラした感触があり、ソフト感にも乏しい、」

(11)甲A11

「【0014】

【表1】

54

92

0001430005000009.jpg

(12)甲A12

「【0072】

次に、上記のようにして得られたメタリックベース塗料を、後述する製造例1で得られた被塗物1に、小型スプレーガン(アネスト岩田株式会社製W-101)を用いて、ブース温度20°C、湿度75%、吐出圧力2.5kgf/cm2、ガン距離20cmの条件で、硬化塗膜として、10μmとなるように塗装した。その後、室温にて15分間放置し、ついで、これらの未硬化塗面に、トップクリヤー塗料「マジクロン7100」を小型スプレーガン(アネスト岩田株式会社製W-101)を用いて、ブース温度20°C、湿度75%、吐出圧力2.5kgf/cm2、ガン距離20cmの条件で、硬化塗膜として、35μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140°Cで30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて塗膜とした。得られた塗膜について、後述する「評価試験」に記載の方法で測色した。得られた測色値を表1に示す。」

(13)甲A13

「【0047】

(Sample4)

(6)で得られた基材に、(5)で得られた蒸着アルミニウム顔料液を、W-101-102P(エアスプレーガン、アネスト岩田社製)を使用して、塗料調節つまみを0.5回転分開放、吹き付け空気圧0.2MPa、ガン距離30cm、ガン速度10cm/sの条件で、1ステージ塗装し、塗装後、室温にて15分間放置した後に、「ルーガベーク(登録商標)クリヤー」(商品名、関西ペイント社製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)を、ミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブース温度25°C、湿度75%の条件で硬化塗膜として、膜厚30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉を使用して、140°Cで30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて、測定に供する塗板を作製した。

(14)甲A14

「【0057】

[塗装作業性]

水分散型粉体塗料をアネスト岩田社製の重力式スプレーガン「W-100」(ノズル口径;1.3mm)で塗装し、下記a)~c)を評価する。塗装条件は、吹き付け空気圧;0.3MPa、キャップ内圧力;0.2MPa、被塗物とのガンとの距離;200mm、温度;20°C、相対湿度;65%とする。」

(15)甲A15

「【0069】

なおグリッド式塗装では、30~200kV(好ましくは65~110kV)の直流高電圧を印加し、被塗物とグリッド(陰極格子枠)との間隔を10~100cm(好ましくは30~50cm程度)に保持し、エヤスプレー時は吹付空気圧0.5~5kg/cm

2

(好ましくは1.5~2.5kg/cm

2

)および塗料送り圧0.2~2kg/cm

2

、エヤレススプレー時は2次圧(塗料圧)50~300kg/cm

2

、移動速度20~200cm/秒(好ましくは40~90cm/秒)に設定すればよい。」

(16)甲A16

「【0045】

かかる場合のベース塗料(X)の固形分は10~60質量%程度であり、粘度は温度20°CにおいてB型(Brookfield type)粘度計で測定する6rpmで1分後の粘度が200~5000mPa・sである。本明細書においてB型粘度計は「LVDV-I」(商品名、BROOKFIELD社製)を使用する。」

(17)甲A17

「【0037】

着色塗料(X)の塗装は、通常の方法に従って行なうことができ、着色塗料(X)が水性塗料である場合には例えば、着色塗料(X)に脱イオン水、必要に応じ増粘剤、消泡剤などの添加剤を加えて、固形分を10~60質量%程度、粘度を200~5000cps/6rpm(B型粘度計)に調整した後、前記被塗物面に、スプレー塗装、回転霧化塗装等により行うことができる。塗装の際、必要に応じて静電印加を行うこともできる。」

(18)甲A18

「【0038】

着色塗料(X)の塗装は、通常の方法に従って行なうことができ、着色塗料(X)が水性塗料である場合には例えば、着色塗料(X)に脱イオン水、必要に応じ増粘剤、消泡剤などの添加剤を加えて、固形分を10~60質量%程度、粘度を200~5000cps/6rpm(B型粘度計)に調整した後、前記被塗物面に、スプレー塗装、回転霧化塗装等により行うことができる。塗装の際、必要に応じて静電印加を行うこともできる。」

(19)甲A19

「【0114】

光輝性顔料分散体(Y)の粘度は、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、温度20°CにおいてB型粘度計で測定する60rpmで1分後の粘度(本明細書では「B60値」ということがある)が好ましくは60~1500mPa・s、より好ましくは60~1000mPa・s、さらに好ましくは60~500mPa・sである。このとき、使用する粘度計は、LVDV-I(商品名、BROOKFIELD社製、B型粘度計)である。

【0115】

光輝性顔料分散体(Y)は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。本発明の複層塗膜形成方法においては、特に回転霧化式の静電塗装が好ましい。」

(20)甲A20

「【0069】

本硬化性組成物の粘度(mPa・s)は特に限定されるものではなく、塗装方法に応じ、組成物の配合を調整するなどを行って適宜調整すれば良いが、100mPa・s~800mPa・sの範囲であることが好ましく、200mPa・s~450mPa・sの範囲であることが特に好ましい。こうした粘度範囲であれば、スプレー塗装などの高速塗装条件下であっても本硬化性組成物を均一な厚みで基材に対して塗布することができる。なお、本明細書における硬化性組成物の粘度(mPa・s)は、B型粘度計で、23°Cで回転数60rpmの条件下で測定した値を意味する。」

(21)甲A21

「【0037】

上記塗料組成物においては、主剤と硬化剤の混合から塗装までの時間やその際の塗装手段を考慮すると、主剤と硬化剤の良好な混合性が求められる。このため、上記塗料組成物において、主剤及び硬化剤は、それぞれ60°Cにおける粘度が100cP~300cPの範囲内にあることが好ましい。主剤と硬化剤の粘度が上記特定した範囲内にあれば、塗装作業性を悪化させることなく、混合性を更に向上させることができ、特に塗装手段が衝突混合方式のスプレー塗装の場合であっても良好な混合性が得られる。本発明において粘度はB型粘度計(塗料液温60°C、回転数60rpm)によって、測定される値である。」

(22)甲A22、甲A22の1

甲A22には次の事項が記載されている。

68

72

0001430005000010.jpg

21

74

0001430005000011.jpg

甲A22の1には甲A22が2016年8月15日に存在していたことが記載されている。

(23)甲A23、甲A23の1

甲A23には、スプレーガンA-200シリーズの後継品であるWIDER2について、吹付空気圧力が0.29MPaであることが記載されている(5頁)。

甲A23の1には甲A23が2023年9月に発行されたことが記載されている。

(24)甲A24、甲A24の1

甲A24には、スプレーガンの圧力範囲が、通常0.3~0.5MPaであることが記載されている(50頁)。

甲A24の1には甲A24が平成20年10月24日に発行されたことが記載されている。

(25)甲A25

甲A25には、凹凸模様がある塗膜を形成する際に、スプレーガンの吹付圧は2~3kg/cm

2

であり、吹付距離は第1工程の場合15~20cmで、交互工程の場合20~30cmにすることが記載されている。(8頁左欄4行~7行、18行~21行)

(26)甲A26

44

73

0001430005000012.jpg

」(2頁右欄9~10行)

28

71

0001430005000013.jpg

」(5頁 第4表)

30

74

0001430005000014.jpg

」(5頁左下欄下から8行)

(27)甲B1

甲B1は甲A3と同じであるので(3)参照。

(28)甲B3

甲B3の記載については、前記第6 2(2)参照。

(29)甲B4

甲B4の記載については、前記第6 2(3)参照。

(30)甲B5

甲B5の記載については、前記第6 2(4)参照。

(31)甲B6

甲B6の記載については、前記第6 2(5)参照。

(32)甲B7

甲B7には、酢酸ブチルの沸点が126.1°Cであることが記載されている。

(33)甲B8

甲B8には、メチルイソブチルケトンの沸点が117~118°Cであることが記載されている。

(34)甲B9

甲B9には、キシレンの沸点が113.6~140°Cであることが記載されている。

(35)甲B10

甲B10には、イソプロピルアルコールの沸点が82.3°Cであることが記載されている。

3 判断

(1)申立理由A1-1(甲A1を主たる引用例とした進歩性)について

ア 甲A1に記載された発明

甲A1の請求項1の記載を参考にして実施例1に基づいて認定すると、甲A1には次の発明(甲A1発明)が記載されていると認められる。

「水酸基含有基体樹脂(アクリルポリオール樹脂、重量平均分子量2万、水酸基価80mgKOH/g、メチルメタクリレート/スチレン/N-ブチルメタクリレート/2-ヒドロキシエチルアクリレートのラジカル共重合体)100重量部、ポリイソシアネート架橋剤(イソホロンジイソシアネート)20重量部、二酸化チタン顔料100重量部及びキシレン有機溶剤60重量部を配合してなる、スプレー塗装粘度が7000Pa・secである立体模様塗膜形成用塗料組成物。」

イ 対比・判断

(ア)本件発明2

甲A1発明の「水酸基含有基体樹脂(アクリルポリオール樹脂、重量平均分子量2万、水酸基価80mgKOH/g、メチルメタクリレート/スチレン/N-ブチルメタクリレート/2-ヒドロキシエチルアクリレートのラジカル共重合体)」は、本件発明2の「主剤」に相当し、甲A1発明の「ポリイソシアネート架橋剤(イソホロンジイソシアネート)」は、本件発明2の「硬化剤」に相当し、甲A1発明の「立体模様塗膜形成用塗料組成物」は本件発明2の「凹凸模様を有する塗膜を形成するために用いられ、・・・塗料組成物」に相当し、甲A1発明の「スプレー塗装」は本件発明2の「スプレーガンまたはノズルから被塗物に対して噴出される」に相当する。

してみれば、両者は下記の点(一致点)で一致し、下記の点(相違点A1-1~A1-4)で相違する。

<一致点>

「塗膜成分として、少なくとも主剤、硬化剤を含み、スプレーガンまたはノズルから被塗物に対して噴出される塗料組成物であって、スプレー塗装により凹凸模様を有する塗膜を形成するために用いられる塗料組成物」

<相違点A1-1>

本件発明2には塗料組成物に「脂肪酸アマイド」を含むと規定されているのに、甲A1発明ではそのような記載がない点。

<相違点A1-2>

本件発明2には塗料組成物が「B型粘度計を用いて25°C、回転数6rpmの条件で測定される塗料組成物の粘度をη6rpmとし、B型粘度計を用いて25°C、回転数60rpmの条件で測定される塗料組成物の粘度をη60rpmとしたとき、η6rpm/η60rpmは2~7であり」と規定されているのに、甲A1発明ではそのような記載がない点。

<相違点A1-3>

本件発明2には「吹き付け空気圧が0.15~0.35MPaであり、被塗物と、スプレーガンまたはノズルの吐出部との距離が15~50cmであるスプレー塗装」であると規定されているのに、甲A1発明ではそのような記載がない点。

<相違点A1-4>

本件発明2には塗料組成物が「前記η6rpmは0.2~50Pa・sである」と規定されているのに、甲A1発明では「スプレー塗装粘度が7000Pa・secである」と記載されている点。

相違点A1-1について検討する。

本件発明2の塗料組成物は、「スプレー塗装により凹凸模様を有する塗膜を形成するために用いられ」るものであるが、甲A1、甲A2、甲A4~甲A26のいずれにも、また甲B1~甲B10のいずれにも脂肪酸アマイドを含有することで凹凸模様の形成に寄与することについて記載も示唆もない。

そうすると、本件発明2は、甲A1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲A1に記載された発明、甲A1、甲A2及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明3~13について

本件発明3~13は、本件発明2の発明特定事項を全て含む発明であるから、前記(ア)で説示した理由と同様の理由により、甲A1に記載された発明、甲A1、甲A2及び他の証拠に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 申立人Aの主張

申立理由Aでは、甲A1には、塗料組成物中に垂れ止め剤が配合されていてもよいことが記載されており(甲A1【0020】)、脂肪酸ジアマイドワックスは、甲A2にも記載されているように、非水系塗料用の流動調整剤として周知であり(甲A2【0002】)、しかも、甲A2の脂肪酸ジアマイドワックスを含む流動調整剤は、特に「優れた垂れ止め、沈降防止効果を与える」ものであることが知られている(甲A2【0008】)から、甲A1に接した当業者が甲A2の記載を参照することで、脂肪酸ジアマイドワックスを含有させることは当業者が想到することであると主張している。

しかしながら、甲A2【0032】には、脂肪酸ポリアマイドワックスは塗膜の平滑化に寄与する旨記載されており、これは甲A1に内在されている課題(【0003】に記載されているように、「立体感に優れた立体模様塗膜形成用塗料組成物の提供」)と相反する課題であるから、甲A1発明において、甲A2に記載された事項を組み合わせることには阻害要因がある。また、同様に、甲A3の【0056】及び【0058】にも、粘性調整剤としては、例えば、アミド系粘性調整剤を挙げることができること、及び、具体的には、脂肪酸ジアミドが挙げられることが記載されているものの、粘性調整剤によって凹凸模様を形成することについては記載も示唆もないから、甲A1発明において、脂肪酸アマイドを添加することが、当業者に容易であったとはいえない。

(2)申立理由A1-2(甲A3を主たる引用例とした進歩性)

甲A3は甲B1と同じであるので、前記第4の1(5)申立理由B3-1、同(6)申立理由B4-1も併せて検討する。

ア 甲A3に記載された発明

甲A3の請求項1、請求項3、【0056】【0107】の記載を参考にして実施例1に基づいて認定すると、甲A3には次の発明(甲A3発明)が記載されていると認められる。

「不揮発分55%のアクリル樹脂溶液30.5部に、酢酸ブチル7.5部、メチルイソブチルケトン2部、顔料分散剤0.3部、チタン白8部、タルク5.7部、クレー7.5部、硫酸バリウム24部、シリカ(平均粒子径6.7μm、吸油量225、密度2.0)5.7部、酸化亜鉛5.7部、ジブチル錫ジラウレート0.05部、2-エチルヘキサン酸カルシウム0.5部、アミド系増粘剤(脂肪酸アマイド、アミド系粘性調整剤)0.4部を順次配合し混合・攪拌して得た主剤成分に、硬化剤としてポリイソシアネート化合物(「デュラネートTKA-100」、商品名、旭化成社製 NCO%:21.7%)を3.5部を使用直前に混合して得た、スプレー塗装して塗膜を形成する下塗り塗料組成物。」

イ 対比・判断

(ア) 本件発明2

(a)甲A3発明の「不揮発分55%のアクリル樹脂溶液」は、本件発明2の「主剤」に相当し、甲A3発明の「硬化剤としてポリイソシアネート化合物(「デュラネートTKA-100」、商品名、旭化成社製 NCO%:21.7%)」は、本件発明2の「硬化剤」に相当し、甲A3発明の「アミド系増粘剤(脂肪酸アマイド、アミド系粘性調整剤)」は本件発明2の「脂肪酸アマイド」に相当し、甲A3発明の「スプレー塗装して塗膜を形成する」は本件発明2の「スプレーガンまたはノズルから被塗物に対して噴出される」に相当し、甲A3発明の「下塗り塗料組成物」は本件発明2の「塗料組成物」に相当する。

してみれば、両者は下記の点(一致点)で一致し、下記の点(相違点A3-1~A3-4)で相違する。

<一致点>

「塗膜成分として、少なくとも主剤、硬化剤および脂肪酸アマイドを含み、スプレーガンまたはノズルから被塗物に対して噴出される塗料組成物」

<相違点A3-1>

本件発明2には「凹凸模様を有する塗膜を形成するために用いられる」と規定されているのに対し、甲A3発明ではそのような記載がない点

<相違点A3-2>

本件発明2には塗料組成物の「η

6rpm

は0.2~50Pa・sである」と規定されているのに対し、甲A3発明ではそのような記載がない点

<相違点A3-3>

本件発明2には「吹き付け空気圧が0.15~0.35MPaであり、被塗物と、スプレーガンまたはノズルの吐出部との距離が15~50cmであるスプレー塗装」を行うことが規定されているのに対し、甲A3発明ではそのような記載がない点

<相違点A3-4>

本件発明2には「B型粘度計を用いて25°C、回転数6rpmの条件で測定される塗料組成物の粘度をη6rpmとし、B型粘度計を用いて25°C、回転数60rpmの条件で測定される塗料組成物の粘度をη60rpmとしたとき、η6rpm/η60rpmは2~7であり」と規定されているのに対し、甲A3発明ではそのような記載がない点

相違点A3-1について検討する。

甲A3の【0011】には、「本発明の目的は、

塗り継ぎ部の仕上がり肌も良好な塗膜

を形成するのに適する下塗り塗料組成物を提供することにある。」と記載されているし、【0102】の表1には、実施例1~12の仕上がり外観が○もしくは◎であること、【0107】には◎の場合は

塗面平滑性が非常に良好

であることが、○の場合は

塗面平滑性が良好

であることが記載されていることからすると、甲A3の「下塗り塗料組成物」は、平坦な仕上がり外観を予定したものであるからを、本件発明2のように、「凹凸模様を有する塗膜を形成するために用いられる」ものとする動機付けはない。

また、甲A2、甲A4~甲A26にも甲A3発明の下塗り塗料組成物を「凹凸模様を有する塗膜を形成するために用い」ようとする根拠や動機付けとなる記載はない。

さらに、甲B3~甲B10にも甲A3発明の下塗り塗料組成物を「凹凸模様を有する塗膜を形成するために用い」ようとする根拠や動機付けとなる記載はない。

したがって、相違点A3-3について検討するまでもなく、本件発明2は、甲A3に記載された発明、甲A3、及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(b)申立人Aの主張及びそれに対する当審の判断

申立理由Aでは「甲A3には、塗膜が凹凸模様を有することについて、具体的な記載はない。甲A3の塗料組成物は、構成[A]を備え、構成[B1]に相当する構成を有する蓋然性が高いから、所定の塗装条件を適用した場合には、塗料組成物に内在する性質として、凹凸模様を有し得ると考えられる。」と主張している。ここで構成[A]は本件発明2のうち「塗膜成分として、少なくとも主剤、硬化剤および脂肪酸アマイドを含む塗料組成物」であり、構成[B1]は「B型粘度計を用いて25°C、回転数6rpmの条件で測定される塗料組成物の粘度をη

6rpm

とし、B型粘度計を用いて25°C、回転数60rpmの条件で測定される塗料組成物の粘度をη

60rpm

としたとき、η

6rpm

60rpm

は2~7である」である。

しかしながら、前記(a)で検討したとおり、脂肪酸アマイドは、粘性調整剤として添加されるものであって、脂肪酸アマイドを添加したからといって、必ずしも凹凸模様が生じるものではないから、構成[A]を備えるからといって、構成[B1]に相当する構成を有する蓋然性が高いとはいえない。したがって、請求人Aによる前記主張は採用できない。

(c)申立人Bの主張及びそれに対する当審の判断

申立人Bは構成要件1D(空気圧と、距離)、1E(凸凹模様を有する塗膜を形成するために用いられる)、1A~1C(その他の構成要件)について次のように主張している。

「上記構成要件1Dが、スプレー塗装する際に当業者に周知の一般的な塗装条件である以上、上記構成要件1Dは、本件特許発明の作用効果である「スプレー塗装により、一度の塗装だけで凹凸模様を有する塗膜(硬化膜)を形成することが可能な塗料組成物」を提供するための特異的な数値範囲とは到底いえない。この点、上記構成要件1Eは、一見、用途限定であるかのようにも思われるが、上記構成要件1A乃至1Dが引用発明1(当審注:甲B1発明=甲A3発明に同じ。)に記載されているか、実質的に記載されているに等しいため、本件特許発明1の塗料組成物は、「スプレー塗装により、一度の塗装だけで凹凸模様を有する塗膜(硬化膜)を形成する」というその用途に特に適した物を意味していないし、その物の用途として新たな用途を提供したともいえない。したがって、上記構成要件1Eは、本件特許発明1の塗料組成物を特定するための意味を有していない。」

しかしながら、本件発明2は、甲A3発明との対比において、前記相違点A3-3に係る構成要件1Dのみならず、前記相違点A3-4に係る構成要件1C、及び、前記相違点A3-2に係る構成要件2Aにおいても相違するものであって、本件発明2の構成が引用発明1(甲B1発明=甲A3発明)に記載されているともいえないし、実質的に記載されているに等しいともいえない。したがって、請求人Bによる前記主張は採用できない。

(イ)本件発明3~13について

本件発明3~13は、本件発明2の発明特定事項を全て含む発明であるから、前記(ア)で説示した理由と同様の理由により、甲A3に記載された発明、甲A3及び他の証拠に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3) 申立理由B1(サポート要件)

ア 判断手法

特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点に立って判断する。

イ 本件発明の解決しようとする課題

本件発明の課題は「スプレー塗装により、一度の塗装だけで凹凸模様を有する塗膜(硬化膜)を形成することが可能な塗料組成物を提供すること」である(【0008】)。

ウ 検討

(ア) 本件明細書の実施例について

本件明細書の【0128】の表3~【0131】の表5の記載からすると、「脂肪酸アマイドを含」み(条件Aという)、「η

6rpm

60rpm

は2~7」(条件Bという)であり「前記η

6rpm

は0.2~50Pa・s」(条件C)である条件を全て満たす実施例ではいずれも塗膜に凹凸感に優れることが開示されており、一方、条件A~Cを満たさない比較例1、条件Cのみ満たさない比較例2、条件ACを満たさない比較例3~18はいずれも塗膜に凹凸感がなかったことが開示されている。

(イ) 本件明細書におけるメカニズム的な記載について

本件明細書には以下の記載がある。

「【0020】

本発明者らの追加の知見を参考のため述べておく。

チキソトロピック調整剤の中には、脂肪酸アマイドではないものも多くあるが、

特に脂肪酸アマイドを用いてη

6rpm

60rpm

が2~7である塗料組成物を調製し、その塗料組成物を用いることで、良好な凹凸模様を有する塗膜を形成しやすい

。詳細なメカニズムは不明であるが、η

6rpm

60rpm

が2~7であることに加え、「脂肪酸アマイド特有」の何らかのメカニズムが関係していると考えられる。

具体的には、脂肪酸アマイドは、塗料組成物中で網目状の膨潤ゲル構造を形成し、これが粘度特性を変化させていると言われている。そして、その網目構造は比較的強力であると言われている。つまり、様々な外部要因に対して強くて壊れにくい網目構造が形成されることにより、η

6rpm

60rpm

が2~7である限りは、脂肪酸アマイドの濃度や溶剤量などにさほど依存せず、良好な凹凸模様を有する塗膜を形成可能となっていると考えられる。」

【0070】

6rpm

、η

60rpm

、η

6rpm

60rpm

について)

η

6rpm

は、好ましくは0.2~50Pa・s、より好ましくは1.0~20Pa・s、さらに好ましくは5.0~15Pa・sである。

η

60rpm

は、好ましくは0.03~25Pa・s、より好ましくは0.10~10Pa・s、さらに好ましくは0.50~5Pa・sである。

η

6rpm

60rpm

を2~7とするだけでなく、η

6rpm

および/またはη

60rpm

を上記程度の値に調整することは、汎用のスプレーガンを用いる際の詰まり抑制、適度な大きさの凹凸模様の形成などの点で好ましい。

・・・

【0072】

ちなみに、本実施形態においては

、脂肪酸アマイドを用いることにより、η

6rpm

60rpm

が2~7であり、かつ、η

6rpm

が0.2~50Pa・sである塗料組成物を調製しやすい。

本発明者らの知見として、脂肪酸アマイド以外の公知のチキソトロピック剤を用いても、一応、η

6rpm

60rpm

が2~7であり、かつ、η

6rpm

が0.2~50Pa・sである塗料組成物を調製可能ではある。しかし、そのような塗料組成物は、溶剤量による粘度の変動が大きい傾向がある。この傾向は、塗装直前に塗装作業者が有機溶剤(シンナー)で塗料を希釈する場合がしばしばあるスプレー塗装において、望ましくない性質である。

脂肪酸アマイドを用いてη

6rpm

60rpm

やη

6rpm

などが所定の値の塗料組成物を調製することで、希釈による粘度変動を緩やかにすることができる。

(ウ) 結論

前記(ア)(イ)の記載から、脂肪酸アマイドを用いてη

6rpm

60rpm

やη

6rpm

が所定の値の塗料組成物を調製することで、本件発明の課題を達成することができると解される。

エ 申立人Bの主張

申立人Bは「本件特許発明では、スプレー塗装する際の微粒化の度合いを調整することにより、より具体的には、スプレーガンによる微粒化の度合いを下げることにより凹凸模様を達成し、以て、スプレー塗装により、一度の塗装だけで凹凸模様を有する塗膜(硬化膜)を形成することが可能な塗料組成物を提供するという課題を解決しているといえる。

甲第3号証の上記摘記事項(xxv)乃至(xxix)には、スプレーガンには、吸上型、重力型、圧送型等の種類があるとともに、空気キャップの形状により微粒化が影響を受けること、塗料の噴出量が多くなると微粒化が悪くなること、スプレーガンの種類によって吹付圧力が変わること、スプレーガンによって吹付距離が変わることが記載されている。そうすると、スプレーガンの種類、空気キャップ、塗料吐出量等を特定していない本件特許発明1は、スプレーガンから吐出される塗料の微粒化の度合いが大きく異なるものをその技術的範囲に含み、必ずしも本件特許発明の課題を解決できるとはいえない。換言すると、スプレーガンから吐出される塗料の微粒化の度合いが大きい場合には、本件特許発明の課題を解決できない。

また、甲第4号証の上記摘記事項(xxx)乃至(xxxiii)には、本件特許明細書に記載される上記種々の用途に対応した「低圧スプレーガン」、「汎用スプレーガン」等が複数種開示されており、スプレーガンの種類によって吹付距離、吹付圧力、塗料吐出量等が異なることが記載されている。

そうすると、スプレーガンを特定していない本件特許発明1は、スプレーガンから吐出される塗料の微粒化の度合いが大きく異なるものをその技術的範囲に含むため、本件塗装条件ではその課題を必ずしも解決できるとはいえない。」と主張している。

オ 当審の判断

凹凸模様の形成において、スプレーガンの種類による影響がないとはかぎらないが、同じスプレーガンを用いて同じ条件で塗料を塗布した場合には、前記(ア)~(ウ)で説示したように、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、脂肪酸アマイドを用いてη

6rpm

60rpm

やη

6rpm

が所定の値の塗料組成物を調製することで、本件発明の課題を解決することができることを理解できる。

したがって、請求人Bによる上記主張は採用できない。

(4) 申立理由B2(実施可能要件)

ア 判断手法

明細書の発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件に適合するか否かは、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるか否かという観点から判断すべきものである。

そして、物の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要する。

イ 本件明細書における実施例、及びそれ以外の記載

「【0077】

スプレー塗装のための装置としては、例えば、公知または市販のスプレーガン等を用いることができる。スプレー塗装の為の装置は、例えばアネスト岩田株式会社から入手可能である。

所望の凹凸模様の大きさなどに応じて、スプレー塗装の具体的条件は適宜設定すればよい。あくまで一例として、スプレー塗装の際の吹き付け空気圧は、通常0.05~1.0MPa、好ましくは0.15~0.35MPaである。また、被塗物とスプレーガンの吐出部との距離は、通常10~100cm、好ましくは15~50cm、より好ましくは20~30cmである。」

「【実施例】

・・・

【0109】

<性能評価>

(塗装作業性(スプレー塗装性))

アネスト岩田株式会社製の重力式スプレーガン「W-200-201G」(ノズル口径:2.0mm)を用い、下記条件で、各塗料組成物を、市販のリン酸亜鉛処理鋼板(日本テストパネル社製、PB-144:幅70mm×長さ150mm×厚み0.8mm)に塗装したときの、ガンノズルからの塗料の噴出状態を観察した。

【0110】

[塗装条件]

・吹き付け空気圧:0.29MPa

・キャップ内圧力:0.2MPa

・被塗物とのガンとの距離:300mm

・温度:20°C

・相対湿度:65%」

ウ 前記(3)のとおり、脂肪酸アマイドを用いてη

6rpm

60rpm

やη

6rpm

が所定の値の塗料組成物を調製することで、本件発明の課題を達成することができると解され、本件明細書には、所定の空気圧、被塗物との距離が好ましいことが記載されているし、実施例では、具体的な塗料組成物を製造し、当該と塗料組成物を用いて、一般的に使用されているスプレーガン「W-200-201G」により、所定の空気圧、所定の距離でスプレー塗装を行って凹凸模様に優れた塗膜が形成できることが具体的に開示されていることからすると、本件発明の詳細な説明には、本件発明について、当業者が作ることができ、使用することができる程度に記載されているといえ、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとまでいえるものではない。

エ 申立人Bの主張

申立人Bは申立理由Bにおいて次のように主張している。

本件発明において、脂肪酸アマイドを使用して、η

6rpm

60rpm

を適切に設計した塗料組成物を用いることで、「凹凸がありつつも、光沢感がある塗膜」を形成しやすい理由として、本件特許明細書【0021】には、『具体的には、スプレーガンから粒状に噴霧されて被塗物表面に到達した塗料組成物は、その形状を維持しつつも「ある程度はレベリングする」ため、凹凸模様がありつつも光沢感がある塗膜が得られると考えられる。』ことが記載され、また、本件特許明細書段落0 0 7 7には、本件塗装条件は、『所望の凹凸模様の大きさなどに応じて、スプレー塗装の具体的条件は適宜設定すればよい』ことが記載されている。

また、甲B3、甲B4によると、スプレーガンの種類によって吹付圧力や吹付距離が変わることは技術常識である(前記第6 2(2)、(3)参照。)。

そうすると、本件特許発明は、スプレーガンの種類を特定していない以上、スプレーガンから吐出される塗料の微粒化の度合いが大きく異なるものをその技術的範囲に含むこととなり、スプレーガンから吐出される塗料の微粒化の度合いが大きい場合には、本件特許発明の所望の作用効果を得ることができない。

ところが、本件塗装条件は、本件特許明細書【0077】に記載のとおり、『所望の凹凸模様の大きさなどに応じて、スプレー塗装の具体的条件は適宜設定すればよい』ことが記載されているにとどまる。

したがって、発明の詳細な説明において、本件発明の物をどのように作ることができ使用できるかについて具体的に記載されていない。

オ 当審の判断

しかしながら、前記ウで説示したように、本件明細書の発明の詳細な説明の実施例等の記載に基づいて、当業者は、本件発明の塗料組成物を製造することができ、製造された塗料組成物を使用することができるといえるので、当業者が本件発明を実施することができないとはいえない。

したがって、申立人Bの上記主張は採用できない。

第7 むすび

以上によれば、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項2~13に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項2~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

そして、本件訂正により請求項1は削除されたため、請求項1についての特許異議申立ては特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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