結論テキスト
特許第7494602号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
特許第7494602号の請求項1、3~5に係る特許を維持する。
特許第7494602号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024701158 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件の特許第7494602号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願(特願2020-113716号。以下「本願」という。)は、令和 2年 7月 1日の出願であって、令和 6年 5月27日にその特許権の設定登録がされ、同年 6月 4日に特許掲載公報が発行され、その後、令和 6年11月29日に、その請求項1~5(全請求項)に係る特許について、特許異議申立人である橋田 奈美子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和 7年 3月28日付けで取消理由が通知され、同年 4月18日に特許権者より訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)及び意見書が提出されたものである。
なお、下記第2のとおり、本件訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)については、訂正が実質的に一部の請求項の削除のみと見なすことができる場合であって、特許法第120条の5第5項ただし書に規定する「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるとき」に該当すると認められるから、申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。
本件訂正請求に係る請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを求める、というものであり、本件訂正の内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所には、当合議体が下線を付した。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「円形度が0.80未満である粒子の数の、粒子の総数に対する比率が10%超40%以下であり、JIS Z 2502に準拠して測定した流動度が30秒/50g以下である造形用金属粉末。」と記載されているのを「円形度が0.80未満である粒子の数の、粒子の総数に対する比率が10%超40%以下であり、JIS Z 2502に準拠して測定した流動度が30秒/50g以下であ
り、流動補助剤を10質量ppm未満含む
造形用金属粉末。」に訂正する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2は訂正前の請求項1を直接引用するものであって、訂正事項1に係る請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1、2は、一群の請求項である。
そして、本件訂正請求は、当該一群の請求項ごとに訂正の請求をするものであって、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、訂正後の請求項〔1、2〕を訂正単位とする訂正を請求するものである。
(1)訂正の目的、特許請求の範囲の拡張、変更の存否、及び新規事項の有無について
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に「円形度が0.80未満である粒子の数の、粒子の総数に対する比率が10%超40%以下であり、JIS Z 2502に準拠して測定した流動度が30秒/50g以下である造形用金属粉末。」と記載されているのを「円形度が0.80未満である粒子の数の、粒子の総数に対する比率が10%超40%以下であり、JIS Z 2502に準拠して測定した流動度が30秒/50g以下であ
り、流動補助剤を10質量ppm未満含む
造形用金属粉末。」として流動補助剤を含むことを特定するとともに、その含有量を特定することにより減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(イ)特許請求の範囲の拡張、変更の存否
訂正事項1に係る訂正は、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(ウ)新規事項の有無
本願の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)の【請求項2】及び【0016】には、流動補助剤を10質量ppm未満含む造形用金属粉末についての記載があるから、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
イ 訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、本件訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、本件明細書等に記載した事項の範囲内での訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。
(2)独立特許要件について
本件は、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1、2について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
上記第2の3のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~5に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、以下において、本件特許の請求項1~5に係る発明をそれぞれ「本件発明1」~「本件発明5」といい、総称して、「本件発明」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。
「【請求項1】
円形度が0.80未満である粒子の数の、粒子の総数に対する比率が10%超40%以下であり、
JIS Z 2502に準拠して測定した流動度が30秒/50g以下であり、流動補助剤を10質量ppm未満含む造形用金属粉末。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
円形度が0.80未満である粒子の数の、粒子の総数に対する比率が10%超である金属粉末を得る分級工程と、
JIS Z 2502に準拠して測定した流動度が30秒/50gより大きい場合に、前記金属粉末に流動補助剤を添加する添加工程を実施し、
前記流動度が30秒/50g以下の場合に、造形用金属粉末の製造が終了したと判断する判断工程
を含む造形用金属粉末の製造方法。
【請求項4】
円形度が0.80未満である粒子の数の、粒子の総数に対する比率が40%以下である請求項3に記載の造形用金属粉末の製造方法。
【請求項5】
前記添加工程で、前記流動補助剤を10質量ppm未満添加する請求項3または請求項4に記載の造形用金属粉末の製造方法。」
申立人は、証拠方法として甲第1号証~甲第3号証(以下「甲1」等という。下記5参照。)を提出し、以下の理由により、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(1)申立理由2-1(甲1を主たる引用文献とするもの。取消理由として一部採用)
本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2-2(甲2を主たる引用文献とするもの。取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項3~5に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件訂正前の請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえず、特許法第36条第4項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
本件特許の訂正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
甲1:BOISVERT M. et al., “Treatment of ferrous melts for the improvement of the sphericity of water atomized powders”, Materials and Design, 116(2017), pp.644-655
甲2:特開2016-41850号公報
甲3:特開2016-102229号公報
当合議体は、上記第4の申立理由1、及び申立理由2-1の一部を採用し、令和 7年 3月28日付け取消理由通知により以下の取消理由を通知した。
本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるか、または、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができるものであって、同法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
以下に述べるとおり、当合議体は、上記第4の申立理由、及び上記第5の取消理由のいずれによっても、本件特許の請求項1、3~5に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
(1)甲1に記載された発明
本願の出願前に公知となった甲1(論文の表題:Treatment of ferrous melts for the improvement of the sphericity of water atomized powders(当合議体訳:水アトマイズ粉末の球形度を向上させるための溶融鉄の処理))の「ABSTRACT」、「2.1 Powder production and chemistry」、「Table 1」、「2.2 Characterization techniques and equipment」、「Table 2」、「3.1.1 Size distribution」、「3.1.4 Flow」、「Table 3」、「3.2 Morphology of the particles」、「Table 4」及び「Fig.3」の記載を総合勘案し、特に、マグネシウム処理した過共晶鋳鉄である合金を水アトマイズして得た粉末であって、74μm未満のサイズ分布にふるい分けされた「CI_Mg-S」の粉末に着目すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる(申立人が提出した甲1の抄訳文の記載に基づいて認定した。)。
「マグネシウム処理した過共晶鋳鉄を水アトマイズした後、大気中で乾燥され、74μm未満のサイズ分布にふるい分けして得られたCI_Mg-Sの粉末であって、
コスト効率が非常に高く、付加製造市場の発展に貢献できるものであり、
アトマイズされた粉末の公称化学組成が、重量%で、C:4.08%、Si:2.38%、Mg(溶融物に添加された量):0.22%、Mn:0.03%、S:0.006%、O:0.31%、残部Feからなり、
50gの粉末がオリフィス径2.54mmの標準漏斗を通過する時間で定義された流動度が20.5sであり、
241個の粒子のBSE顕微鏡像を使用して、Image-Jソフトウェアにて処理して得られた円形度(4π×([面積]/[周長]
2
))」の頻度分布(%)において、
0~0.3の円形度の粒子の頻度が0%、
0.3~0.4の円形度の粒子の頻度が約1%、
0.4~0.5の円形度の粒子の頻度が約2%、
0.5~0.6の円形度の粒子の頻度が約3%、
0.6~0.7の円形度の粒子の頻度が約8%、
0.7~0.8の円形度の粒子の頻度が約17%、
0.8~0.9の円形度の粒子の頻度が約66%、
0.9~1.0の円形度の粒子の頻度が約3%
である、CI_Mg-Sの粉末。」(以下「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「CI_Mg-Sの粉末」は、「マグネシウム処理した過共晶鋳鉄を水アトマイズし」て得られた、「コスト効率が非常に高く、付加製造市場の発展に貢献できるものであ」る合金粉末であるから、本件発明1の「造形用金属粉末」に相当する。
(イ)甲1発明の「241個の粒子のBSE顕微鏡像を使用して、Image-Jソフトウェアにて処理して得られた円形度(4π×([面積]/[周長]
2
))」の頻度分布(%)において、0~0.3の円形度の粒子の頻度が0%、0.3~0.4の円形度の粒子の頻度が約1%、0.4~0.5の円形度の粒子の頻度が約2%、0.5~0.6の円形度の粒子の頻度が約3%、0.6~0.7の円形度の粒子の頻度が約8%、0.7~0.8の円形度の粒子の頻度が約17%、0.8~0.9の円形度の粒子の頻度が約66%、0.9~1.0の円形度の粒子の頻度が約3%である」点から、円形度が0.80未満である粒子の数の、粒子の総数に対する比率を概算すると、(0+1+2+3+8+17)/(0+1+2+3+8+17+66+3)×100=31/100×100=約31%となることから、本件発明1の「円形度」が「4π[粒子の投影面積]/[粒子の周囲長]
2
」の数式で算出される(本件明細書【0013】)ことを踏まえると、甲1発明の上記の点は、本件発明1の「円形度が0.80未満である粒子の数の、粒子の総数に対する比率が10%超40%以下であ」る点に相当する。
(ウ)本件明細書の【0015】には、「本発明の造形用金属粉末は、JIS Z 2502に準拠して測定した流動度が30秒/50g以下である。ここで、本発明でいう流動度は、標準寸法で作製された漏斗のオリフィスを50gの金属粉末が通過する時間で定義する。」と記載されており、また、JIS Z 2502(金属粉-流動度測定方法)には、流動度を測定する際に用いられる漏斗のオリフィス径が「2.5~2.9mm」の範囲であることが規定されていることを考慮すれば、甲1発明の「50gの粉末がオリフィス径2.54mmの標準漏斗を通過する時間で定義された流動度」と本件発明1の「JIS Z 2502に準拠して測定した流動度」とは、実質同じものを意味すると解される。
そうすると、甲1発明の「50gの粉末がオリフィス径2.54mmの標準漏斗を通過する時間で定義された流動度が20.5sであ」ることは、本件発明1の「JIS Z 2502に準拠して測定した流動度が30秒/50g以下である」ことに相当する。
(エ)上記(ア)~(ウ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「円形度が0.80未満である粒子の数の、粒子の総数に対する比率が10%超40%以下であり、JIS Z 2502に準拠して測定した流動度が30秒/50g以下である造形用金属粉末。」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1の「造形用金属粉末」は、「流動補助剤を10質量ppm未満含む」のに対して、甲1発明の「CI_Mg-Sの粉末」が流動補助剤を含むか否かは不明である点。
イ 相違点についての検討
上記相違点1について検討する。
(ア)甲1には、甲1発明の「CI_Mg-Sの粉末」が流動補助剤を含むか否かについての明記はなく、また、本願出願時の技術常識を考慮しても、甲1発明の「CI_Mg-Sの粉末」が「流動補助剤を10質量ppm未満含む」か否かは不明であると言わざるを得ないから、上記相違点1は実質的な相違点である。
(イ)次に、上記相違点1の容易想到性について検討する。
a 本願の出願前に公知となった甲2(発明の名称:粉末を処理する方法および同方法によって処理された粉末)には、付加製造技術において用いられる金属粉末に対して、その流動及び/又は拡散性能の向上に役立つ物質である有効量の処理剤を乾燥混合して、粉末の粒子表面に処理剤の層を形成する工程を含む、粉末の処理方法において、上記処理剤の重量を当該処理剤の重量と粉末の重量の和に対して100ppm未満とすることが記載されている(【請求項1】、【請求項2】、【請求項7】、【0002】、【0004】及び【0020】参照。)。
b また、同じく甲2には、実施例2に関して、「各種重量百分率の処理剤(疎水性又は親水性フュームドシリカ)で処理した50gのInconel(登録商標)718粉末について、その流れ時間をホール流量計(直径0.1インチの漏斗を装備)によって記録した」(【0029】参照。)結果である以下の図5が記載されている。
「【図5】
55
100
0001430010000001.jpg
」
c ここで、甲1の「ABSTRACT」の記載によれば、甲1発明は、付加製造に用いられる鉄合金粉末の流動度の向上に資するものと認められるから、上記a、bに摘記した甲2に記載された流動性能の向上に役立つ技術を参照しつつ、甲1発明に対して、流動及び/又は拡散性能の向上に役立つ物質である処理剤(本件発明1の「流動補助剤」に相当)100ppm未満が含まれるようにする動機付けはあるといえる。
d しかしながら、上記bに摘記した甲2の図5を参照すると、処理剤として「疎水性シリカ」を用いた場合、処理剤の含有量が、0.008%(80ppm)、0.005%(50ppm)、0.002%(20ppm)と減少するにつれて、流動性を示す指標である流れ時間が長期化し、流動性が悪化する様子が見て取れる。
e そうすると、甲2の記載によれば、上記cのとおり、甲1発明に対して、流動及び/又は拡散性能の向上に役立つ物質である処理剤100ppm未満が含まれるようにする動機付けはあるといえるものの、処理剤の含有量を更に減少させて、10ppm未満が含まれるようにする動機付けがあるとまではいえない。
f したがって、甲1発明において、上記相違点1に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 取消理由1及び申立理由1、並びに取消理由2及び申立理由2-1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
また、本件発明1によって奏される効果について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、あるいは、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、取消理由1及び申立理由1、並びに取消理由2及び申立理由2-1によっては、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。
(1)甲2に記載された発明
甲2の【請求項1】及び【請求項2】に記載からすると、甲2には、次の発明が記載されていると認められる。
「金属である粉末を処理する方法であって、有効量の処理剤を粉末に乾燥混合して、粉末の粒子表面に処理剤の層を形成する工程を含み、処理剤の一次粒子径は粉末の平均粒径より小さい、方法。」(以下「甲2発明」という。)
(2)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「金属である粉末」は、本件発明3の「金属粉末」に相当する。
(イ)甲2の【0020】の「本書で用いる「処理剤」等の語は、粉末と乾燥混合することで粉末の粒子表面に散布され、粉末の流動及び/又は拡散性能の向上に役立つ物質をいう。」との記載によれば、甲2発明の「処理剤」は、本件発明3の「流動補助剤」に相当し、甲2発明の「有効量の処理剤を粉末に乾燥混合」することは、本件発明3の「金属粉末に流動補助剤を添加する添加工程を実施」することに相当する。
(ウ)甲2発明の「金属である粉末を処理する方法」は、本件発明3の「金属粉末の製造方法」に相当する。
(エ)そうすると、本件発明3と甲2発明とは、
「金属粉末に流動補助剤を添加する添加工程を実施する工程を含み得る、金属粉末の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2>
本件発明3は、「円形度が0.80未満である粒子の数の、粒子の総数に対する比率が10%超である金属粉末を得る分級工程」を含むのに対して、甲2発明は、そのような分級工程を含まない点。
<相違点3>
本件発明3は、「JIS Z 2502に準拠して測定した流動度が30秒/50gより大きい場合に、前記金属粉末に流動補助剤を添加する添加工程を実施し、前記流動度が30秒/50g以下の場合に、造形用金属粉末の製造が終了したと判断する判断工程を含む」のに対して、甲2発明は、「合金である粉末」の流動度に拘わらず、「有効量の処理剤を粉末に乾燥混合」する工程を含む点。
<相違点4>
本件発明3では、「金属粉末」が「造形用」であるのに対して、甲2発明では、「金属である粉末」が「造形用」のものか否か不明である点。
イ 相違点についての検討
事案に鑑み、上記相違点2について、まず検討する。
(ア)本願の出願前に公知となった甲3(発明の名称:造形用金属粉末)には、造形用金属粉末について、円形度が0.80未満である粒子の数の、粒子の総数に対する比率であるP1を10%以下とすることにより、粉末の流動性及び充填性が高いものが得られる旨の記載がある(【請求項1】、【0021】~【0023】参照。)。
(イ)上記(ア)の甲3の記載によれば、造形用金属粉末における円形度が0.80未満である粒子の比率を10%超とすれば、粉末の流動性や充填性が悪化する可能性があることが理解であるから、この記載によっても、甲2発明において、「円形度が0.80未満である粒子の数の、粒子の総数に対する比率が10%超である金属粉末を得る分級工程」を実施する積極的な動機付けがあるとはいえず、むしろ阻害要因があるといえる。
(ウ)したがって、甲2発明において、上記相違点2に係る発明特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 小括
よって、上記相違点3、4及び本件発明3によって奏される効果について検討するまでもなく、本件発明3は、甲2に記載された発明及び甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明4、5について
本件発明4、5は、本件発明3の発明特定事項をすべて備えたものであるから、上記(2)ウのとおり、本件発明3が甲2に記載された発明及び甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、同様に、甲2に記載された発明及び甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)申立理由2-2についてのまとめ
よって、申立理由2-2によっては、本件発明3~5に係る特許を取り消すことはできない。
(1)本件明細書の【0005】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、「粉末の集合体において、それらの円形度が低い粒子の数の、粒子の総数に対する比率が高くとも流動性に優れ、三次元積層造形法に適した造形用金属粉末を提供すること」にあると認められる。
(2)そして、本件明細書の【0006】、【0007】、【0014】~【0018】、【0025】及び【0030】の記載によれば、上記(1)の課題は、円形度が0.80未満である粒子の比率を10%超である造形用金属粉末について、流動性に優れることに対応する「粉末の流動渡を30秒/50g以下とする」(JIS Z 2502に準拠して測定したもの)ことによって解決できることを当業者であれば理解できるといえる。
(3)一方、本件発明1の「造形用金属粉末」は、「円形度が0.80未満である粒子の数の、粒子の総数に対する比率が10%超40%以下であり、JIS Z 2502に準拠して測定した流動度が30秒/50g以下であ」ることを発明特定事項として含むものであるから、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえない。
なお、特許異議申立書第18頁第1行~第19頁第2行を参照しても、申立人は、この点について、合理的な疑義が生じる程度の具体的根拠を示していない。
(4)したがって、本件特許の請求項1の記載は、本件発明1について、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
(5)また、本件明細書の実施例に係る【0025】~【0030】の記載を参照すれば、本発明例2のようにD50が比較的大きくなるように調整したり、本発明例1、3~6のように流動補助剤を添加することにより、当業者が本件発明1に係る造形用金属粉末を製造することは、過度の試行錯誤を要することなく十分可能であるといえるから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。
なお、特許異議申立書第18頁第1行~第19頁第2行を参照しても、申立人は、この点について、合理的な疑義が生じる程度の具体的根拠を示していない。
(6)申立理由3及び申立理由4についてのまとめ
よって、申立理由3及び申立理由4によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
以上のとおりであるから、令和 7年 3月28日付け取消理由通知書に記載した取消理由、及び申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1、3~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、3~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正によって特許異議の申立てがされた請求項2は削除され、特許異議の申立ての対象となる請求項2は存在しないものとなったから、請求項2に係る特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。