結論テキスト
特許第7594085号の請求項1~14に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025700588 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7594085号(以下「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)8月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2020年8月11日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、令和6年11月25日にその特許権の設定登録がされ、同年12月3日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許の請求項1~14について、令和7年6月3日に特許異議申立人 川口 結生(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
特許第7594085号の請求項1~14の特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明14」という。また、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)。
「【請求項1】
ヘアコンディショナー組成物であって、
a.水性担体と、
b.1重量%~12重量%のBVEと、
c.1重量%~12重量%の少なくとも2つの脂肪族アルコールと、
を含み、
第1の脂肪族アルコールが、C16以下の平均アルキル鎖を有し、第2の脂肪族アルコールが、C18以上の平均アルキル鎖を有し、前記組成物の最大1.0重量%が、C22の平均アルキル鎖を有する脂肪族アルコールであり、
前記第1の脂肪族アルコールの前記第2の脂肪族アルコールに対するモル比が、20:80から99:1であり、
BVEの総脂肪族アルコールに対するモル比が、20:80~45:55であり、
前記組成物が、均一なLβゲルネットワークを含み、
ラメラゲルネットワーク試験法のd-間隔(Lβ-基底間隔)に従って測定したとき、前記組成物が、15nm~40nmのd-間隔を有し、
前記組成物が、950 1/sで45Pa~800Paの剪断応力を有し、
前記ゲルネットワーク含有量が、0.01~0.06モルである
ヘアコンディショナー組成物。
【請求項2】
前記第1の脂肪族アルコールが、ラウリルアルコール(C12)、トリデシルアルコール(C13)、ミリスチルアルコール(C14)、ペンタデシルアルコール(C15)、セチルアルコール(C16)、イソセチルアルコール(C16)、パルミトレイルアルコール(C16)、ヘプタデシルアルコール(C17)、セトステアリルアルコール(C16~C18)、セテアリルアルコール(C16~C18)、セチルステアリルアルコール(C16~C18)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2の脂肪族アルコールが、ヘプタデシルアルコール(C17)、ステアリルアルコール(C18)、イソステアリルアルコール(C18)、オレイルアルコール(C18)、ノナデシルアルコール(C19)、アラキジルアルコール(C20)、ヘンエイコシルアルコール(C21)、ベヘニルアルコール(C22)、エルシルアルコール(C22)、リグノセリルアルコール(C24)、セリルアルコール(C26)、ブラシカアルコール(C18~C22)、セトステアリルアルコール(C16~C18)、セテアリルアルコール(C16~C18)、セチルステアリルアルコール(C16~C18)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1の脂肪族アルコールが、セチルアルコールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第2の脂肪族アルコールが、ブラシカアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
BVEの総脂肪族アルコールに対するモル比が、20:80~40:60である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
50Pa~700Paの剪断応力を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
本明細書に記載のpH試験法に従って測定したとき、2.5~5.5のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
i.0.1重量%~1.5重量%の第1の保存剤と、
ii.0.2重量%~2.0重量%の第2の保存剤と、
を含む、保存系を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の保存剤の前記第2の保存剤に対する重量比が、1:10~8:1である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1の保存剤が、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、及びこれらの混合物から選択され、前記第2の保存剤が、カプリル酸グリセリル、カプリン酸グリセリル、ウンデシレン酸グリセリル、及びこれらの混合物から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記保存系が、前記組成物の0.2重量%~1.5重量%の前記第2の保存剤を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
細菌及び真菌微生物感受性試験法に従って測定したとき、微生物のレベルが2日間で検出不可能になる、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
0.1重量%~0.8重量%のブラシカアルコールを含む、請求項1に記載の組成物。」
申立人は、甲第1~17号証(以下「甲1」などという。)を提出し、本件特許は、以下の理由により、取り消されるべきものである旨主張している(特許異議申立書(以下「申立書」という。)の13~14頁)。
「
230
151
0001430027000001.jpg
」
上記記載、及び申立書の記載全体から、申立理由は、以下のとおりであると認められる(申立理由の番号は、当審合議体による。)。
(1)申立理由1(新規性欠如)
ア 申立理由1-(1)
本件発明1~8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1~8に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号により、取り消されるべきものである。
イ 申立理由1-(2)
本件発明1~8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲11に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1~8に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号により、取り消されるべきものである。
ウ 申立理由1-(3)
本件発明1~8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲12に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1~8に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号により、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性欠如)
本件発明1~14は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明、並びに甲3~5、7及び13~16に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~14に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号により、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(拡大先願)
本件発明1~8は、本件特許の出願の日前の国際特許出願であって、本件特許の出願後に甲9として国際公開がされた国際特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願前の国際特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、本件特許の出願人が上記国際特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件請求項1~8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(実施可能要件違反)
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件請求項1~14に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号により、取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(サポート要件違反)
本件発明1~14は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件請求項1~14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号により、取り消されるべきものである。
甲1:米国特許出願公開第2011/0274641号明細書
甲2:特表2012―532108号公報(甲1の翻訳文として使用。)
甲3:Pease, "Understanding Biobased Cationic Amino Lipids : Effects of amino acid structure on liquid crystalline phase behavior in conditioning formulations", SCC 73rd Annual Scientific Meeting and Technology Showcase, 2019年12月17~18日, 発表スライド
甲4:米国特許出願公開第2006/0286060号明細書
甲5:米国特許出願公開第2006/0078528号明細書
甲6:特表2008-515901号公報(甲5の翻訳文として使用。)
甲7:米国特許第8828370号明細書
甲8:特表2011―525540号公報(甲7の翻訳文として使用。)
甲9:国際公開2020/181276号
甲10:特表2022―523974号公報(甲9の翻訳文として使用。)
甲11:Nourish 3 in 1 Hairmask, Record ID:8000761, Mintel GNPD [online], 2020年8月掲載
甲12:Detox Scrub Mask, Record ID:7297113, Mintel GNPD [online], 2020年3月掲載
甲13:仏国特許出願公開第2967054号明細書
甲14:欧州特許出願公開第3622946号明細書
甲15:韓国公開特許第10-2018-0012903号公報
甲16:韓国公開特許第10-2020-0058938号公報
甲17:国際公開2017/096479号
甲1、3~5、7、9、11及び12には、それぞれ以下の記載がある(下線及び四角囲みは当審合議体による。「・・・」は摘記の省略を示す。)。
(甲1a)「1.
毛髪
、皮膚、または爪
に対するパーソナルケア組成物のなじみやすさを増加させる方法
であって、該方法は:
水相、非水相、および中和アミノ酸エステルを含む組成物
を調製する工程であって、該
中和アミノ酸エステル
は、非極性側鎖を有する中性アミノ酸と長鎖脂肪アルコールとの反応産物であり、かつ式(I):
65
73
0001430027000002.jpg
によって示され、ここで
R
1
は直鎖アルキル基または
分岐アルキル基
であり;
R
2
は
直鎖炭素鎖
または分岐炭素鎖であり;そして
該アミノ酸のアミン基は、酸で中和され、かつ該組成物は、実質的に石油化学製品および/または石油化学物質の誘導体を含まず、かつ該水相および該非水相は、該中和アミノ酸エステルによって乳化される、工程;ならびに
該パーソナルケア組成物を、毛髪、皮膚、または爪の表面に適用する工程
を包含し、ここで、該組成物は、該アミノ酸エステルを含まず、かつ実質的に石油化学製品および/または石油化学物質の誘導体を含まない組成物のなじみやすさと比較して、該表面に対する増加したなじみやすさを示す、方法。
2.前記アミノ酸エステルが、LIEE、
BLIE
またはこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
・・・
6.式(I)の
R
2
が、10個~50個の炭素原子を有する
、請求項1に記載の方法。
7.前記中性アミノ酸が、L-アラニン、
L-バリン
、L-ロイシンおよび
L-イソロイシン
から選択される、請求項1に記載の方法。
・・・
10.前記長鎖脂肪アルコールが、ココナツ脂肪アルコール、カプリルアルコール(capric alcohol)、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、リグノセリルアルコール、イソステアリルアルコール、および/またはそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
・・・
12.前記アミノ酸のアミン基が、塩酸、リン酸、硫酸、ホウ酸および硝酸から選択される酸によって中和される、請求項1に記載の方法。
13.前記パーソナルケア組成物が、界面活性剤、着色料、パール光沢剤(pearlizing agent)、アクリラートポリマー、抗酸化物質、不透明化剤、マイカ、油、脂質、タンパク質、pH改変剤、ビタミン、脂肪酸、脂肪アルコール、湿潤剤およびコンディショニング剤のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の方法。
14.前記組成物が、毛髪洗浄剤、シャンプー、リンス、ヘアクリームコンディショナー、コンディショニングシャンプー、ヘアローション、ヘアトリートメント、ヘアクリーム、ヘアスプレー、ヘアリキッド、ヘアワックス、ヘアスタイリング調製物、パーマネントウェーブ液、染毛剤、酸性染毛剤、ヘアマニキュア、つや出し、スキンローション、乳液、洗顔料、化粧落とし、クレンジングローション、エモリエントローション、ナリシングクリーム、エモリエントクリーム、マッサージクリーム、クレンジングクリーム、ボディシャンプー、ハンドソープ、固形石鹸、シェービングクリーム、日焼け止め、日焼けトリートメント、デオドラント、化粧落としジェル、モイスチャージェル、モイスチャーエッセンス、UV曝露防止エッセンス、シェービングフォーム、おしろい、ファンデーション、口紅、頬紅、アイライナー、しわおよびアンチエイジングクリーム、アイシャドウ、まゆ墨、マスカラ、口腔洗浄薬、練り歯磨き、オーラルケア組成物、皮膚クレンジング組成物、布洗浄組成物、皿洗浄組成物、毛髪または毛皮洗浄組成物、デオドラントまたは発汗抑制剤、化粧品、ヘアスタイリング組成物、皮膚保湿剤、スキンコンディショナー、
ヘアコンディショナー
、およびネイルコンディショナーから選択される、請求項1に記載の方法。」(特許請求の範囲)
(甲1b)「[0010] 現在、公知の天然陽イオン性乳化剤は存在しない。多くのパーソナルケアの適用物は、陽イオン性乳化剤の使用を必要とするか、またはそれによって大きく改善される。典型的な陽イオン性乳化剤は、親水性部分に結合した長鎖(疎水性)アルキル基から構成されるという事実のために、それらは前に記載した非イオン性および陰イオン性乳化剤とほとんど同じ方法で乳化剤として作用する。しかし、陽イオン性乳化剤において、分子の親水性部分は正に荷電している。この陽イオン性部分が、毛髪および皮膚のような、負に荷電したサブストレートに静電気的に結合する(なじみやすい)。非イオン性である疎水性部分は、サブストレートへの親和性を有さず、そしてサブストレートから離れた方向を向いて、脂肪物質の保護層を作り、それが増強された感覚性の特性を提供し得る。そのなじみやすさの特性は、陽イオン性乳化剤を、陰イオン性および/または非イオン性乳化剤から区別する。最終産物の調子を整えることの利益を促進するのはなじみやすさである。従って、優れた乳化剤であることに加えて、陽イオン性乳化剤はまた、それらを含む処方物の美観を改善することの利益を提供し、そして皮膚、毛髪、または爪の調子を整え、保湿し、修復し得るパーソナルケア製品の処方を可能にする。従って、陽イオン性乳化剤は、陰イオン性および非イオン性物質と異なり、多機能である。
[0011] 陽イオン性乳化剤は、クリームコンディショナーのような、ヘアケア適用物において使用した場合、適用物の美観の改善、コンディショナーのクリーム状態(creaminess)および濃厚さ、ならびに軟化、静電気防止挙動、広がり(fly-away)、ウェットコーミング(combing)、およびドライコーミングのような、適用の特性における改善のような、すぐれた調子を整えることの利益を提供する。陽イオン性乳化剤がスキンケア調製物において使用される場合、それらは業界で「ドライ、軽い、パウダリー(powdery)」皮膚感覚として公知のようなことを提供することが公知であり、それは多くのスキンケア製品において明確な利点である。代表的な伝統的陽イオン性乳化剤は、塩化セトリモニウム、(c)塩化ベヘントリモニウムおよび塩化ジステアリルジモニウムのような四級陽イオン性乳化剤、および(b)ステアラミドプロピルジメチルアミンおよび(a)ベヘナミドプロピルジメチルアミンのようなアミドアミンを含む。
[0012]
全ての伝統的陽イオン性乳化剤は、石油化学物質由来である
;従って、全てのこれらの陽イオン性乳化剤は、天然とは考えられず、そして従って天然製品の処方において使用できない。よって、
伝統的な陽イオン性乳化剤と同様の性能および使用の特徴およびなじみやすさを有する天然陽イオン性乳化剤に対するニーズが当該分野に存在する
。
・・・
[0044] その
アミノ酸エステルのアミン基を、酸によって完全または部分的に中和
して、その陽イオン性の挙動を促進し得る。有機および無機酸を含む、あらゆる酸を使用し得る。適当な酸は、制限無しに、鉱酸、アミノ酸、塩酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、および硝酸を含む。適当な有機酸は、クエン酸、エタンスルホン酸、酢酸、ギ酸、およびシュウ酸であり得る。適当なアミノ酸は、グルタミン酸およびアスパラギン酸を含み得る。1つの実施態様において、
非GMOエタノール由来のエタンスルホン酸が好ましい
場合がある。
[0045] 代表的な
好ましい中和アミノ酸エステル
は、
Brassicyl L-イソロイシンエシレート(BLIE)またはロイシンイソステアリルエステルエシレート(LIEE)
であり得る。
Brassicyl L-イソロイシンエシレート(BLIE)は、BrassicaアルコールのL-イソロイシンエシレートとのエステル化から得ることができる
。
L-イソロイシンエシレートを、イソロイシンのアミン基をエタンスルホン酸と反応させることによって調製し得る
。Brassicaアルコールは、Brassica属の植物から得られる高エルカナタネ油の分離、続く水素付加から得られる脂肪アルコールである。Brassicaアルコールは、主にステアリル(C18)、アラキジル(C20)、およびベヘニル(C22)アルコールと、少量のより低級および高級アルキル鎖長のアルコールから成る。」(甲2の【0010】~【0012】、【0038】及び【0039】)
(甲1c)「実施例
実施例1
Brassicyl L-イソロイシナートエシレート(BLIE)の合成
[0055] 蒸気カラム、トータルコンデンサー、窒素スパージ、および撹拌器に付随した1リットルの丸底フラスコに、
508.5グラム(1.629モル)のBrassicylアルコール
および106.9グラム(0.8147モル)のL-イソロイシンを入れた。その混合物を、撹拌しながら90°Cまで加熱し、そして134.5グラム(0.8551モル)のエタンスルホン酸の70%溶液を、約20分間かけて1滴ずつ加えた。次いでその混合物を140°Cまで加熱し、そして約16時間維持した。次いでその混合物を90°Cまで冷却し、そして過剰のエタンスルホン酸を、5.6グラムの水に溶解した1.8グラムの炭酸ナトリウムで中和した。次いでその混合物を、高真空(hard vacuum)下で約1時間乾燥させた。次いでその混合物を約70°Cまで冷却し、そして剥ぎ取り、淡黄色の固体産物を得た。
[0056] その内容が本明細書中で参考として組み込まれる、ASTM(American Society of Testing and Materials、West Conshohocken、PA)公式方法番号D-972を用いて、産物の
酸価
を決定し、そして
2.67mgKOH/g
(95.9%変換)であることが見出された。最新の自動化滴定装置を用いて、塩基によるマルチエンドポイント滴定の使用によって、
アミン価
を決定した。その方法において、サンプルを秤量し、そして非中和変性エタノールに溶解する。次いでその混合物を、希釈水酸化ナトリウムで2つのエンドポイントの出現まで滴定する(最初はカルボキシレートの消費に関連し、そして2番目はアミン塩の滴定に関連する)。その見出された値は
64.3mgKOH/g
であった。ZnSe結晶を有するPike(Madison、WI)MIRacle ATR(Attenuated Total Reflectance)アクセサリーを備えた、Perkin-Elmer(Waltham、MA)Spectrum 100FT-IR分光光度計を用いて、赤外線スペクトルを決定した。そのスペクトルを図1に示し、そして1745cm-1においてエステルを示す目立ったピークを示し、そして1670~1640cm-1におけるピークの欠如は、アミドの欠如を示した。SRS(Stanford Research Systems,Inc. Sunnyvale、CA)EZMelt自動化融点装置を用いて
融点
を決定し、そして
55°C
であることが見出された。
実施例2
[0057]
BLIEのさらなるアナログ
を調製し、そして実施例1で記載した一般的な方法を用いて分析し、そしてその性質を表1にまとめる。
64
151
0001430027000003.jpg
・・・
実施例3
[0058] 本発明によって達成される乳化の挙動を示すために、
代表的なヘアコンディショニングベース処方物を調製した
。その処方物の組成を表2に示す。
・・・
実施例4
[0060] 安定なエマルジョンを作製する本発明の能力を示すために、安定性試験を行った。
44種類の処方物を、実施例3において記載された一般的な方法を用いて調製した
。
141
151
0001430027000004.jpg
179
151
0001430027000005.jpg
[0061] 25°CにおけるpHおよび粘性を、処方物のそれぞれにおいて調べ(perform)、そしてその結果を表4に示す。・・・
・・・
実施例5
[0063] 本発明の陽イオン性乳化剤の調子を整える特性を示すために、
モデルヘアコンディショニング処方物
を調製して、毛髪の広がりの減少に関して試験した。発明処方物の組成(発明処方物A)を下記の表5に示す。
116
151
0001430027000006.jpg
・・・
実施例7
[0070] 毛髪および皮膚ケア組成物の代表的な処方を、下記に示す(処方物AからM)。どれも石油化学製品および/または石油化学由来物質を含まない。
A.通常の毛髪のための日常的なコンディショナー
[0071]
81
151
0001430027000007.jpg
・・・
C.洗い流さない(leave in)ヘアコンディショナー
[0073]
88
151
0001430027000008.jpg
D.濃厚なコンディショニングトリートメント(毛髪)
[0074]
114
151
0001430027000009.jpg
・・・
J.軽い日常のコンディショナー(毛髪)
[0080]
93
151
0001430027000010.jpg
K.洗い流さないコンディショニングスプレー(毛髪)
[0081]
105
151
0001430027000011.jpg
」(甲2の【0049】~【0079】)
甲3は、発表スライドであるところ、スライド番号を付していない頁もあるので、甲3のスライドの1頁目から順に「スライド1」等という。
(甲3a)「
60
151
0001430027000012.jpg
」
(訳)バイオベースのカチオン性アミノ脂質の理解:コンディショニング製剤における液晶相挙動に対するアミノ酸構造の影響」(スライド1)
(甲3b)「
63
153
0001430027000013.jpg
」(スライド4)
(訳)アミノ脂質成分
ブラシシルイソロイシナートエシレート(BIE)
注:ブラシカアルキル=C
18
~C
22
、C
22
として示した。
ブラシシルバリネートエシレート(BVE)
(甲3c)「
89
151
0001430027000014.jpg
」(スライド7)
(訳)ネット有効パッキングパラメータ(P
net
)に影響する要因-具体例
ラメラ相形成のための脂肪族アルコールの追加(立体的反発による)
六角形からラメラ相へ移行するための電解質の追加(静電遮蔽による)
(甲3d)「
128
151
0001430027000015.jpg
」(スライド8)
(訳)ラメラ液晶(LC)の形成
ラメラ液晶
・ほかの両親媒性物質(例えば、脂肪族アルコール)とともに、アミノ脂質の自己組織化により形成
・・・
(甲3e)「
80
151
0001430027000016.jpg
」(スライド9)
(訳)ケーススタディ:BIEとBVEとの基本的な比較
・実際には、BIEとBVEのパフォーマンスに明確な違いが観察されました。
・目標:メチレン(-CH
2
-)単位の1個の違いが、頭部基の立体反発、LC相の挙動、並びにヘアケア用途における製剤の特性及び性能に与える影響を実証する。
・・・
(甲3f)「
66
151
0001430027000017.jpg
」(スライド15)
(訳)モデル製剤-サンプル調製
HCブレンド
・アミノ脂質:BVE又はBIE
・脂肪族アルコール:ブラシカアルコール(C
18
-C
22
)
・ブレンド割合=3:1 脂肪族アルコール:アミノ脂質
・pH グルコン酸カルシウムにより4.0±0.5に調整
・濃度:5、10、15、20、25%
(甲3g)「
81
151
0001430027000018.jpg
」(スライド18)
(訳)微視的相挙動-小角X線散乱
・・・
(左欄)
BVE水溶液(15%)
(図略)
・強度曲線は、内部構造(D間隔)による散乱の寸法である。
・結晶構造は、ブラッグピークを作成する。
・BVEは55°Cで構造ピーク強度を維持する。
(右欄)
BIE水溶液(15%)
(図略)
手段:
・SAXSは、モリスX線分析リミテッドで実施された。
・20~70°Cで、5°C単位で分析された。
・DI水の15%溶液、pHを4.0±0.5に調整。
(甲3h)「
85
151
0001430027000019.jpg
」(スライド19)
(訳)微視的相挙動-小角X線散乱
・・・
(左欄)
BVE HCブレンド(15%)
(図略)
・BVE HCブレンドは、60°Cで構造ピーク強度を有する。
(右欄)
・・・
(甲3i)「
109
151
0001430027000020.jpg
」(スライド23)
(訳)結論
・
頭部基の1つのメチレン基の違いは、BIEとBVEのLC相の挙動に有意な違いをもたらす
。
・BVEのよりコンパクトな頭部基によって、BIEよりも大きなCPP及びPnetの値となる。
・より広い範囲の温度及び濃度にわたってラメラLCが形成することで、ヘアコンディショニング用途において製剤の安定性が向上し、性能が改善される。
(甲3j)「概要:
ブラシシルバリネートエシレート(BVE)及びブラシシルイソロイシナートエシレート(BIE)は、それぞれアミノ酸L-バリンとL-イソロイシンによるブラシカアルコールのエステル化に由来する100%バイオベースのカチオン性アミノ脂質である。カチオン性両親媒性分子として、BVEとBIEは、脂肪族アルコールやグリセリルエステルなどの非イオン性両親媒性分子と組み合わせると、髪と皮膚のコンディショニング剤、乳化剤、及び液晶(LC)システム形成のための構造剤として機能する。
この研究の目的は、BVEとBIE分子のアミノ酸に基づく頭部基のそれぞれの構造による、BVEとBIEの当該形成の特性と性能の違いを明らかにすることである。パッキングパラメータと自己組織化挙動に対する分子構造の影響は、顕微鏡的及び巨視的なレベルで評価され、ヘアコンディショニング処方におけるカチオン性アミノ脂質の性能の機構的な理解を発展させる。」(最終頁)
(甲4a)「1.以下の重量からなる毛髪コンディショニング組成物:
(a)約0.5%から約10%のカチオン性界面活性剤、ここでカチオン性界面活性剤は、モノ長鎖アルキル四級化アンモニウムと陰イオンの塩であり、陰イオンは、C1-C4アルキル硫酸塩からなる群から選択されるか、それらの混合物である、
(b)組成物の約2.5重量%から約15%の高融点脂肪族化合物、及び
(c)水性キャリア;
ここで、カチオン性界面活性剤、高融点脂肪族化合物、及び水性キャリアは、ラメラゲルマトリックスを形成する。」(特許請求の範囲)
(甲4b)「[0002] 本発明は、モノ長鎖アルキル化アンモニウムとC1-C4アルキル硫酸塩からなるカチオン性界面活性剤、高融点脂肪族化合物、及び水性キャリアを含有する毛髪コンディショニング組成物に関する。カチオン性界面活性剤、高融点脂肪族化合物、及び水性キャリアは、ラメラゲルマトリックスを形成する。本発明の組成物は、特に濡れた髪に優れたコンディショニング効果、特に優れた滑らかさと滑りやすさを与えることができる。
・・・
[0022] 驚くべきことに、モノ長鎖アルキル四級化アンモニウム塩カチオン性界面活性剤におけるアニオンの選択により、本発明のコンディショニング組成物は、特に濡れた髪に改善された滑りやすさと滑らかさという改善されたコンディショニング効果を提供できることがわかった。これは、塩化物などのほかのアニオンと比較してイオン結合強度が高い、本発明のアニオンを使用することで、本発明のカチオン界面活性剤の水和半径が減少すると考えられている。水和半径が減少することで、ラメラゲルマトリックスがより緊密に充填され、すなわち、ラメラの1枚のシートと隣接するラメラのシート間の距離が短くなり、そのような緊密に充填されたラメラゲルマトリックスは、濡れた髪に特に滑らかな感触と滑らかさを与え、コンディショニング効果を向上させる。
・・・
[0030] 種々の高融点脂肪族化合物の中でも、脂肪族アルコールは、本発明の組成物において好ましく用いられる。ここで有用な脂肪族アルコールは、約14個から約30個の炭素原子、好ましくは約16個から約22個の炭素原子を有するものである。これらの脂肪族アルコールは飽和しており、直鎖又は分枝鎖のアルコールであることができる。好ましい脂肪族アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられる。」
(甲5a)「1.ヘアコンディショニング組成物であって:
(a)約0.1重量%~約10重量%のカチオン性界面活性剤、
(b)該組成物の約2.5重量%~約15重量%の高融点脂肪化合物、及び
(c)水性キャリア
を含み、この際、該カチオン性界面活性剤、該高融点脂肪化合物及び該水性キャリアが、層状ゲルマトリックスを形成し、該ラメラ層のd-空隙部が、33nm以下の範囲内にあり、且つ該組成物が26.7°Cにて、約30Pa以上の降伏応力を有する、ヘアコンディショニング組成物。」(特許請求の範囲)
(甲5b)「層状ゲルマトリックス
[0027] 本発明の組成物は、層状ゲルマトリックス、特に、より稠密な層状ゲルマトリックスを含むゲルマトリックスを含む。前記ゲルマトリックスは、カチオン性界面活性剤、高融点脂肪化合物、及び水性キャリアを含む。前記ゲルマトリックスは、各種コンディショニング効果、例えば、濡れた毛髪へ適用する際のつるつる感及び乾燥した毛髪へのソフト感及びしっとり感を提供するのに適している。前記ゲルマトリックスのうち、層状ゲルマトリックスは、改良された濡れた毛髪へ適用する際のつるつる感を提供することができる。前記層状ゲルマトリックスのうち、より稠密な層状ゲルマトリックスは、改良された濡れた毛髪へ適用する際のつるつる感を提供することができる。
・・・
[0030] 上述の量のゲルマトリックスを含む組成物は、950s
-1
の剪断速度での剪断応力によって特徴づけることができ、それは約150Pa~約500Pa、好ましくは約200Pa~約500Pa、より好ましくは約250Pa~500Paであり、26.7°Cにて、ティー・エイ・インスツルメント社から入手可能なモード名AR2000のレオメーターにより、0.0015m(1500μm)のギャップを有する4cm度アルミニウムコーン型形状を用いて測定される。上述の量のゲルマトリックスを含む組成物は、ある種の貯蔵弾性率G’により特徴づけることができる。貯蔵弾性率G’は、広く使用されている粘弾性パラメータの1つとして公知である。G’は、正弦波形状条件下で、剪断歪を歪みで除したものと一致する剪断応力の一部として定義される。上述の量のゲルマトリックスを含む組成物は、約2200Pa~約10000Pa、好ましくは約2500~約8000PaのG’によって特徴づけられるが、これは、26.7°C及び1Hzの周波数にて、ティー・エイ・インスツルメント社より入手可能なモード名AR2000のレオメーターを用い、0.0015m(1500μm)のギャップを有する4cm並列型形状を使用して測定される。上述の量のゲルマトリックスを含む組成物は、その希釈特性により特徴づけることができる。より多量のゲルマトリックスを含む組成物は、希釈された際、水と均質化するために、より長い時間を必要とする。上述の量のゲルマトリックスを含む組成物は、ゲルマトリックス内に組み込まれない水の量を測定することにより特徴づけることができる。
・・・
[0034] 層状ゲルマトリックスの存在も、d-空隙部によって検出される。本発明の組成物は、33nm以下、好ましくは31nm以下、より好ましくは28nm以下のd-空隙部値を有する。本発明のD-空隙部は、図1に示すように、2つのラメラ二重層間の距離に1つのラメラ二重層の幅を加えたものを意味する。このため、d-空隙部は、次式:
D-空隙部=d水+d二重層
に従って定義される。
・・・
[0036] より小さいD-空隙部(即ち、より稠密なシート状層状ゲルマトリックス)及び上述の選択された降伏応力を有するヘアコンディショニング組成物が、より大きなD-空隙部及び/又はより小さな降伏応力を有する組成物と比較して、改良されたウェットコンディショニング効果、特に改良された濡れた毛髪へ適用する際のつるつる感を送達することが明らかとなっている。このような選択されたd-空隙部及び選択された降伏応力を有する組成物は、より大きなd-空隙部及び/又はより小さな降伏応力を有する組成物と比較して、より多量のシート状層状ゲルマトリックスを含む、より多量のゲルマトリックスを含むと考えられている。選択されたd-空隙部及び選択された降伏応力の組み合わせが、他の組成物から、改善されたウェットコンディショニング効果を送達する組成物を適切に区別可能であるということが明らかとなっている。上述の選択されたD-空隙部及び選択された降伏応力に加えて、上述の好ましいゲルマトリックス総計、及び/又は好ましい層状ゲルマトリックス量が、更に本発明の組成物を他の組成物と区別する手助けをする。」(甲6の【0016】、【0020】、【0024】及び【0026】)
(甲7a)「1.(a)カチオン性界面活性剤、
(b)高融点脂肪族化合物、及び
(c)水性キャリア、を含む、ヘアコンディショニング組成物であって、
前記カチオン性界面活性剤、前記高融点脂肪族化合物、及び前記水性キャリアはゲルマトリックスを形成し、前記組成物は前記高融点脂肪族化合物から前記ゲルマトリックスへの約90%~約100%の変換率を有し、前記組成物は約33Pa以上の降伏点を有する、ヘアコンディショニング組成物。」(特許請求の範囲)
(甲7b)「面間隔D
驚くべきことに、上記の特定の変換速度及び特定の降伏点の組み合わせを特徴とする組成物は、かかる組成物が国際公開第2006/044209号の組成物よりも大きな面間隔dを有する場合でさえも、改良された湿潤性能、特にすすぎ後の湿潤性能を提供することが、本発明の発明者らにより見出された。本明細書において、このようなより大きな面間隔dとは、33nmを超える(33nmを含まない)面間隔dを意味する。本発明の面間隔dは、図1に示すように、ラメラゲルマトリックス中の2つのラメラ二重層間の距離に1つのラメラ二重層の幅を加えたものを意味する。このため、面間隔dは、次式:
面間隔D=d水+d二重層
面間隔Dは、PANalyticalより商標名SAXSessとして利用可能な高フラックス小角X線錯乱機器を使用し、小角X線錯乱(SAXS)測定の典型的な条件下で、0.06<q/nm
-1
<27(これは0.085<2θ/度<40に相当する)のq-レンジ(q=4π/λsin(θ))(式中、λは波長であり、θは散乱角の半分)で、測定できる。」(甲7の5欄50~6欄4行、甲8の【0032】)
(甲9a)「1.
AABCと、非イオン性両親媒性物質と、無水緩衝剤とを含む自己中和型のアミノ酸ベースのカチオン性組成物
。
・・・
3.前記AABCは、非極性側鎖を有し、アミン基が酸で中和されているアミノ酸と、(ii)長鎖脂肪アルコールとの反応生成物である、請求項1に記載の組成物。
4.中和する酸は、エタンスルホン酸である、請求項3に記載の組成物。
5.前記アミノ酸は、L-アラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン、及び/又はそれらの混合物から選択され、かつ前記脂肪アルコールは、ヤシ油、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ブラシシルアルコール、及びそれらの混合物から選択される、請求項3に記載の組成物。
6.前記AABCは、ブラシシルバリンエシレート、セチルバリンエシレート、セテアリルバリンエシレート、ステアリルバリンエシレート、イソステアリルバリンエシレート、ベヘニルバリンエシレート、オクチルドデシルバリンエシレート、デシルテトラデシルバリンエシレート、ブラシシルイソロイシンエシレート、セチルイソロイシンエシレート、セテアリルイソロイシンエシレート、ステアリルイソロイシンエシレート、イソステアリルイソロイシンエシレート、ベヘニルイソロイシンエシレート、オクチルドデシルイソロイシンエシレート、デシルテトラデシルイソロイシンエシレート、ブラシシルバリンエシレート、ブラシシルイソロイシンエシレート、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
7.前記非イオン性両親媒性物質は、脂肪アルコール、脂肪グリセリルエステル、脂肪グリコールエステル、ポリグリセロールの脂肪エステル、メチルグルコースの脂肪エステル、ソルビタンの脂肪エステル、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
・・・
9.前記
非イオン性両親媒性物質は、ブラシカアルコール
であり、かつ前記
AABCは、ブラシシルバリンエシレート
及びブラシシルイソロイシンエシレートから選択される、請求項1に記載の組成物。
10.前記無水緩衝剤は、グルコン酸のアルカリ金属塩、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
・・・
20.請求項1に記載の自己中和型のAABC組成物と、少なくとも1種の添加剤とを含む処方物。
21.前記添加剤は、水、エモリエント、保湿剤、コンディショニング剤、キレート化剤、pH調整剤、芳香剤、着色剤、角質除去剤、酸化防止剤、シリカ、植物抽出物、界面活性剤、及びそれらの混合物から選択される、請求項20に記載の処方物。」(特許請求の範囲)
(甲9b)
「発明の背景
[0003]
中和アミノ酸エステルである非石油化学由来のカチオン性乳化剤
は、Burgoの米国特許8,105,569号及びその関連出願に記載され、特許の保護が請求されている。Burgoのこれらの
アミノ酸ベースのカチオン性エステル(以下、「AABC」)
は、無水形態として、すなわち、それほど多量の水を含まない、例えば、水が約5重量%未満である形態として供給され得る。
・・・
[0028] 脂肪アルコール、例えば12個以上の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の脂肪アルコール等(例としては、ラウリル、ミリスチル、セチル、セテアリル、ステアリル、イソステアリル、オレイル、アラキジル、ベヘニル、オクチルドデシル、デシルテトラデシル、ヤシアルコール、パームアルコール、パーム核アルコール、ブラシカアルコール、水添ナタネアルコールが挙げられる);好ましくは16個以上の炭素原子を有する直鎖脂肪アルコール;最も好ましくはブラシカ、セチル、セテアリル、ステアリル又はベヘニルアルコール;
・・・
[0040] しかしながら、本発明の説明のために、AABCが、それぞれ組成物全体の重量に対して、約10重量%~約70重量%、約12重量%~約60重量%、約15重量%~約55重量%、又は約20重量%~約50重量%の量で組成物中に存在することが示唆される。
・・・
[0042] 多くの実施形態において、組成物の残部は、選択された非イオン性両親媒性物質(複数の場合もある)から構成され得る。本発明の組成物に他の成分が含まれる場合に、選択された非イオン性両親媒性物質(複数の場合もある)は、それぞれ組成物全体に対して、少なくとも約10重量%、約15重量%~約70重量%、幾つかの実施形態において、好ましくは約20重量%~約40重量%の量で存在し得る。
・・・
[0056] 多くの実施形態において、
本発明の自己中和型のAABC組成物を使用して作製された水性処方物は、ラメラ液晶(LC)相挙動を示す
こととなる。このようなLC相挙動は、偏光顕微鏡法、小角X線散乱(SAXS)、及びクライオ凍結割断走査型電子顕微鏡法(cryo freeze-fracture scanning electron microscopy)(クライオSEM)等の当業者によく知られる技術を使用して容易に特徴付けられる。ラメラLC系は、D間隔として知られるラメラ二重層膜の間隔によって特徴付けられ得る。本発明の組成物によって形成されるラメラLC相は、SAXSによって測定される、
約1nm~約100nmのD間隔を有し得て
、或る特定の実施形態においては、約2nm~約25nmのD間隔を有し、好ましい実施形態においては、約3nm~約15nmのD間隔を有する。
[0057] 当業者は、AABCの炭素鎖長及び/又は自己中和型のAABC組成物中の非イオン性両親媒性物質、処方物中のAABC及び非イオン性両親媒性物質のレベル、又は自己中和型のAABC組成物若しくは処方物自体のいずれかにおけるAABC対非イオン性両親媒性物質(複数の場合もある)の比を含む1つ以上の変項を変えることによって、ラメラLC相のD間隔を調節することができること、例えば、追加のAABC又は非イオン性両親媒性物質を自己中和型のAABC組成物を含む処方物に添加することで、ラメラLC相のD間隔に影響を与えることができることを認識するであろう。処方物におけるpH、イオン強度、又は分散された油相のレベルを変動させることで、ラメラD間隔に影響を与えることもできる。本発明のラメラLC相は、好ましくは、20°C~60°Cの温度範囲にわたって一定に保たれるD間隔を有する。」(甲10の【0002】、【0026】、【0038】、【0040】、【0054】及び【0055】)
(甲9c)
「実施例
[0060]
実施例1~実施例3及び比較例1~比較例3
:実施例1~実施例3及び比較例1~比較例3で使用される各成分の相対量を以下の表1に示す:
87
151
0001430027000021.jpg
・・・
[0075] 実施例4-自己中和型のAABC組成物を含む処方物の調製
[0076] 処方物を以下のように調製した:オーバーヘッド型機械式撹拌機と、プロペラブレードと、加熱用ホットプレートとを備えたビーカーに、脱イオン水(100重量%までの適量)を入れ、これを75°C~80°Cに加熱した。指定された量(表2に示される)の実施例1の自己中和型のABC組成物を、中速で混合しながら高温の水相にゆっくりと添加し、完全かつ均一に分散するまで混合した。混合物を低速ないし中速で混合しながら周囲温度まで冷ました後に、貯蔵用容器に排出した。処方物を一晩平衡化させた後に、pH計を使用してpHを測定した。自己中和型のAABC組成物を含む実施例4~実施例6の組成物を、偏光顕微鏡法を使用して特性決定したところ、特徴的なマルタ十字模様によって裏付けられるように、ラメラLC相挙動を示すことが観察された。
[0077] 図2は、実施例1の自己中和型のAABC組成物を15%含む実施例4の処方物の偏光顕微鏡写真(400倍の倍率)である。
[0078] 自己中和型のAABC組成物を15%含む実施例4及び実施例5の組成物をSAXSにより分析して、20°C~70°Cの温度範囲にわたって得られるラメラLC系のD間隔を特徴付けた。
図3
及び図4
は
、それぞれ
ブラシシルバリンエシレート
及びブラシシルイソロイシンエシレート
を含むラメラLC系についてのSAXSデータを示す
。
観察されたピークは
、それぞれの
処方物についての75Å(7.5nm)
及び77Å(7.7nm)
のD間隔を示している
。60°Cを超える温度でのピークの消失は、非ラメラ系への相変化を示している。
・・・
[0096] 実施例8-ナチュラルなリーブイン型枝毛コート剤
[0097] 表4は、毛髪枝毛コート剤の以下の例示的な処方物で使用される成分の相対量を示している。
88
151
0001430027000022.jpg
[0098] オーバーヘッド型機械式撹拌機と、プロペラブレードと、加熱用ホットプレートとを備えた適切なサイズのビーカーに、水、カプリルヒドロキサム酸(及び)ベンジルアルコール(及び)グリセリン、及びグリセリンを入れた。混合を低速ないし中速で開始し、混合物を80°Cに加熱した。別個のビーカーにおいて、セチルアルコール、コハク酸ジヘプチル(及び)カプリロイルグリセリンセバシン酸コポリマー、実施例1の自己中和型のAABC組成物、及びココス・ヌシフェラ(ヤシ)油を混ぜ合わせ、混合しながら80°Cに加熱し、均一になるまで混合した。
[0099] 中速ないし高速で混合しながら、80°Cで油相混合物を水相混合物に添加した。混合物を70°Cに冷ました後に、高速で3分間均質化した。均質化の後に、アンカー型ブレードを用いて低速で撹拌しながら混合物を45°C~50°Cまで冷ました。45°C~50°Cで、混合物を貯蔵用の適切な容器に排出した。
[00100] 得られた処方物のpHは4.27であり、ブルックフィールド粘度(RVT(D)、helipathスピンドルT-C、10rpm)は室温(約21°C)で69600cPであった。」([0060]の冒頭の下線は原文どおり。甲10の【0058】~【0088】)
(甲9d)「
110
151
0001430027000023.jpg
」(甲10の図3)
(甲11a)「ノーリッシュ3イン1ヘアマスク
・・・
サブ-カテゴリー:ヘアトリートメント
・・・
成分(標準フォーム):
アクア
、
セテアリルアルコール
、グリセリン、ジステアロイルエチルジモニウムクロリド、ジパルミトイルエチルジモニウムクロリド、
ブラシカアルコール
、ココカプリル酸/カプリン酸エステル、パルファム、ココヤシ油 (ココナッツ油由来)、シアバター、ガーデニアタイテンシス花エキス、ダイズ油、
ブラシシルバリネートエシレート
、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グルコン酸カルシウム、トコフェロール、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、クエン酸、ヘキシルシンナマル、ヒドロキシシトロネラール、リナロール、α-イソメチルイオノン」
(甲12a)「デトックス スクラブ マスク
・・・
サブ-カテゴリー:ヘアトリートメント
・・・
成分(標準フォーム):
アクア
、
セテアリルアルコール
、
セチルアルコール
、アーモンド油、グリセリン、アンズ (アプリコット)種子パウダー (粉末)、 ココヤシ油、
ブラシカアルコール
、ラウリン酸イソアミル、CI 77266、カオリン、アルテア根エキス、ケシ種子、ヒマワリ種子ロウ、ホホバエステル、ヒマワリ種子油、
ブラシシルバリネートエシレート
、ポリグリセリン-3、 トコフェロール、β-シトステロール、スクワレン、グルコン酸カルシウム、デヒドロ酢酸、ベンジルアルコール、パルファム、リモネン、リナロール、サリチル酸ベンジル 天然成分由来の*有機成分*」
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1には、陽イオン性乳化剤である中和アミノ酸エステルを含む毛髪等に対するパーソナルケア組成物が記載され(甲1aの請求項1及び甲1bの[0012])、好ましい中和アミノ酸エステルは、「Brassicyl L-イソロイシンエシレート(BLIE)」等であることが記載され(甲1bの[0045])、上記パーソナルケア組成物の具体例として、特に、実施例5には、表5に示される組成を有するヘアコンディショニング処方物が記載されている(甲1cの表5)。
以上から、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。)。
「以下の組成からなるヘアコンディショニング処方物。
94
151
0001430027000024.jpg
」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「ヘアコンディショニング処方物」は、本件発明1の「ヘアコンディショナー組成物」に相当する。
(イ)甲1発明の「脱イオン水」は、本件発明1の「水性担体」に相当する。
(ウ)甲1発明の「BLIE」(Brassicyl L-イソロイシンエシレート)は、ブラシカアルコールとL-イソロイシンとのエステルを、エタンスルホン酸で中和したものである(甲1bの[0044]及び[0045])。一方、本件発明1の「BVE」(ブラシシルバリネートエシレート)は、ブラシカアルコールとバリンのエステルを、エタンスルホン酸で中和したものである。
そうしてみれば、両者は、ブラシカアルコールと中性アミノ酸とのエステルをエタンスルホン酸で中和した中和アミノ酸エステルである点で一致する。
また、甲1発明の「BLIE」の配合量は、「3.730%w/w」であるから、本件発明1の「BVE」の配合量(1重量%~12重量%)の範囲内である。
なお、両者の化学構造式は、以下のとおりである(甲3b)。
50
151
0001430027000025.jpg
1
151
0001430027000026.jpg
(ここで、「Brassicyl Isoleucinate Esylate(BIE)」(ブラシシルイソロイシナートエシレート(BIE))は、「BLIE」(Brassicyl L-イソロイシンエシレート)と同じ化合物を意味する。)
(エ)甲1発明の「セチルアルコール」は、炭素数16の脂肪族アルコールであり、「ステアリルアルコール」は、炭素数18の脂肪族アルコールである。
そうしてみれば、甲1発明の「セチルアルコール」及び「ステアリルアルコール」は、それぞれ、本件発明1の「C16以下の平均アルキル鎖を有」する「第1の脂肪族アルコール」及び「C18以上の平均アルキル鎖を有」する「第2の脂肪族アルコール」に相当する。
また、甲1発明の「セチルアルコール」及び「ステアリルアルコール」の配合量の合計は、「4.270%w/w」(=2.135+2.135)であり、本件発明1の「少なくとも2つの脂肪族アルコール」の配合量(1重量%~12重量%)の範囲内である。
(オ)「セチルアルコール」及び「ステアリルアルコール」の分子量は、それぞれ、242.5及び270.5であるから、甲1発明の「セチルアルコール」及び「ステアリルアルコール」のモル数は、それぞれ、0.009(=2.135/242.5)及び0.008(=2.135/270.5)であり、両者のモル比は、0.009:0.008=53:47となり、本件発明1の「第1の脂肪族アルコール」の「第2の脂肪族アルコールに対するモル比」の「20:80から99:1」の範囲内である。
(カ)BLIEの分子量は、535であるから、甲1発明の「BLIE」のモル数は、0.007(=3.730/535)である。そして、BLIEの「総脂肪族アルコールに対するモル比」は、0.007:0.017(=0.009+0.008)であり、29:71である。このモル比は、本件発明1の「BVE」の「総脂肪族アルコールに対するモル比」の「20:80から45:55」の範囲内である。
なお、BLIEの分子量は、以下のように算出した。
甲1の「508.5グラム(1.629モル)のBrassicylアルコール」との記載(甲1cの[0055])に基づいて、ブラシカアルコールの分子量を算出。
ブラシカアルコールの分子量:312(=508.5/1.629)
L-イソロイシンの分子量:131
エタンスルホン酸の分子量:110
エステル化により除去される水の分子量:18
以上から、
BLIEの分子量:535
(=312+131+110-18)
(キ)本件発明1の「ゲルネットワーク含有量」は、「組成物中のカチオン性界面活性剤及び脂肪族アルコールのモル数の合計」であり(本件明細書の【0088】)、「組成物中のカチオン性界面活性剤のモル数は、カチオン性界面活性剤の重量%をその分子量で割ることによって計算され」、「組成物中の脂肪族アルコールのモル数も同様に計算され、これは、脂肪族アルコールの重量%を脂肪族アルコールの分子量で割ったものである」(本件明細書の【0087】)。
甲1発明において、「BLIE」は、陽イオン性乳化剤、すなわち、カチオン性界面活性剤であるから、甲1発明における「組成物中のカチオン性界面活性剤及び脂肪族アルコールのモル数の合計」は、0.024モル(=0.007+0.009+0.008)である。
このモル数は、「組成物中のカチオン性界面活性剤及び脂肪族アルコールのモル数の合計」として、本件発明1の範囲内(0.01~0.06モル)である。
(ク)甲1発明は、「C22の平均アルキル鎖を有する脂肪族アルコール」を含まないから、本件発明1の「組成物の最大1.0重量%が、C22の平均アルキル鎖を有する脂肪族アルコールであ」ることと一致する。
(ケ)以上によれば、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「ヘアコンディショナー組成物であって、
a.水性担体と、
b.1重量%~12重量%の「ブラシカアルコールと中性アミノ酸とのエステルをエタンスルホン酸で中和した中和アミノ酸エステル」と、
c.1重量%~12重量%の少なくとも2つの脂肪族アルコールと、
を含み、
第1の脂肪族アルコールが、C16以下の平均アルキル鎖を有し、第2の脂肪族アルコールが、C18以上の平均アルキル鎖を有し、前記組成物の最大1.0重量%が、C22の平均アルキル鎖を有する脂肪族アルコールであり、
前記第1の脂肪族アルコールの前記第2の脂肪族アルコールに対するモル比が、20:80から99:1であり、
「ブラシカアルコールと中性アミノ酸とのエステルをエタンスルホン酸で中和した中和アミノ酸エステル」の総脂肪族アルコールに対するモル比が、20:80~45:55であり、
「組成物中のカチオン性界面活性剤及び脂肪族アルコールのモル数の合計」量が、0.01~0.06モルである
ヘアコンディショナー組成物。」
<相違点>
(相違点1)
ヘアコンディショナー組成物に含まれる「ブラシカアルコールと中性アミノ酸とのエステルをエタンスルホン酸で中和した中和アミノ酸エステル」が、本件発明1では、「BVE」であるのに対し、甲1発明は、「BLIE」である点。
(相違点2)
本件発明1のヘアコンディショナー組成物が、「均一なLβゲルネットワークを含み」、「ラメラゲルネットワーク試験法のd-間隔(Lβ-基底間隔)に従って測定したとき、前記組成物が、15nm~40nmのd-間隔を有し、前記組成物が、950 1/sで45Pa~800Paの剪断応力を有し、前記ゲルネットワーク含有量が、0.01~0.06モルである」のに対し、甲1発明は、「均一なLβゲルネットワーク」であるかどうか明らかでなく、「ラメラゲルネットワーク試験法のd-間隔(Lβ-基底間隔)に従って測定したとき、前記組成物が、15nm~40nmのd-間隔を有し、前記組成物が、950 1/sで45Pa~800Paの剪断応力を有」すのどうか明らかでなく、「組成物中のカチオン性界面活性剤及び脂肪族アルコールのモル数の合計」量が、「ゲルネットワーク含有量」であるかどうか明らかでない点。
イ 判断
(ア)新規性について
a 相違点1について
(a)BVEとBLIEは、別の化合物であるから、相違点1は実質的な相違点である。
(b)申立人は、甲3の化学構造式(甲3b、上記ア(ウ))を示すと共に、BVEがBLIEのアナログであり(甲1cの表1)、両者は、「極めて類似の構造を有し、類似の内在性質を有するから」、「当業者であれば、表1に示されるBLIEのアナログを、実施例4及び5のヘアコンディショニング処方物における中和アミノ酸として交換可能に使用することができると認識するはずである。」と主張する(申立書79~80頁)。
しかしながら、甲1には、BLIEの酸価、アミン価及び融点が、それぞれ、2.67mgKOH/g、64.3mgKOH/g及び55°Cであることが記載され(甲1cの[0056])、一方、BVEの酸価、アミン価及び融点が、それぞれ、0.4mgKOH/g、67.2mgKOH/g及び60°Cであることが示されており(甲1cの表1)、両者は、異なる性質を有するといえる。また、甲3には、「頭部基の1つのメチレン基の違いは、BIEとBVEのLC相(ラメラ液晶相)の挙動に有意な違いをもたらす。」と記載されており(甲3i)、BVEとBLIE(BIE)とは、類似の構造を有するものの、ラメラゲルネットワークの形成において、異なる挙動をとるといえる。
それゆえ、BVEとBLIEは、類似の構造を有するが、異なる性質を有する化合物といえるから、甲1の実施例4及び5のヘアコンディショニング処方物において、BLIEの代わりにBVEを含んだヘアコンディショニング処方物が、甲1に記載されているに等しい事項であるとはいえない。
したがって、申立人の主張は、受け入れられない。
b 相違点2について
(a)甲1には、甲1発明がラメラゲルネットワークを形成していることは、何ら記載されていない。そして、上述のとおり、BVEとBLIEは、異なる性質を有し、ラメラゲルネットワークの形成において、異なる挙動をとるものであるから、本件発明1と異なった組成を有するヘアコンディショニング処方物である甲1発明が、本件発明1と同様のラメラゲルネットワークを形成しているとはいえない。
それゆえ、相違点2は、実質的な相違点である。
(b)申立人は、「甲1発明は、本件特許発明1の構成H、I、及びJ(合議体注:本件発明1のヘアコンディショナー組成物が、「均一なLβゲルネットワークを含み」(構成H)、「ラメラゲルネットワーク試験法のd-間隔(Lβ-基底間隔)に従って測定したとき、前記組成物が、15nm~40nmのd-間隔を有し」(構成I)、「前記組成物が、950 1/sで45Pa~800Paの剪断応力を有」すること(構成J))を有することについて具体的に特定されていないが、本件特許発明1の組成物の各々かつすべての成分に関する構成を有し、さらにゲルの形態を示し得ると示されているから、必然的に構成H、I、及びJ(機能限定)を有するため、これらが具体的に特定されていないことは相違点にはならない。」と主張する(申立書84~85頁)。
しかしながら、上述のとおり、本件発明1と甲1発明とは、含まれる中和アミノ酸エステルが、それぞれBVEとBLIEであるという違いがあり、中和アミノ酸エステル及び脂肪族アルコールの成分量や組成比が、本件発明1と同じであったとしても、甲1発明が本件発明1と同様のラメラゲルネットワークを含んでいるとはいえない。
したがって、申立人の主張は、受け入れられない。
c 以上から、本件発明1は、甲1に記載された発明とはいえない。
(イ)進歩性について
a 甲1には、BVEがBLIEのアナログであることが記載されている(甲1cの実施例2)。
しかしながら、甲1には、甲1発明がラメラゲルネットワークを形成していることは何ら記載されておらず、また、上述のとおり、甲1発明は、本件発明1と同様のラメラゲルネットワークを形成しているとはいえないから、甲1の記載から、甲1発明において、本件発明1と同様のラメラゲルネットワークを形成することを期待して、BLIEの代わりにBVEを用いることの動機付けはない。
b 甲3には、BVE及びBIE(BLIEに相当する。)が脂肪族アルコールとともにラメラゲルネットワーク(ラメラ液晶相)を形成することが記載されている(甲3c及び甲3d)。また、モデル製剤として、BVEとブラシカアルコール(C
18
-C
22
)を1:3でブレンドしたものがラメラゲルネットワーク(ラメラ液晶相)を形成し、そのD間隔が約75Å(7.5nm)であることが示されている(甲3f~甲3h)。
甲4、甲5及び甲7には、カチオン性界面活性剤、高融点脂肪族化合物(脂肪族アルコール)、及び水性キャリアを含むヘアコンディショニング組成物が、ラメラゲルマトリックスを形成することが記載されている(甲4a~甲4b、甲5a~甲5b及び甲7a~甲7b)。
しかしながら、本件発明1は、BVEを含むヘアコンディショナー組成物において、「均一なLβゲルネットワーク」を形成するために、「BVEの脂肪族アルコールに対するモル比及び短鎖(C16以下)脂肪族アルコールの長鎖(C18以上)脂肪族アルコールに対するモル比」を調整したものであるところ(本件明細書の【0021】~【0022】)、甲3には、BVEが脂肪族アルコールとともにラメラゲルネットワークを形成することは記載されているものの、配合される脂肪族アルコールは、「ブラシカアルコール(C
18
-C
22
)」だけであるし(本件発明1の長鎖(C18以上)脂肪族アルコール」に相当する。)、得られたラメラゲルネットワーク(ラメラ液晶相)のD間隔は「約75Å(7.5nm)」である。そうしてみれば、甲3には、本件発明1のように、「短鎖(C16以下)脂肪族アルコール」及び「長鎖(C18以上)脂肪族アルコール」の「少なくとも2つの脂肪族アルコール」を含み、その結果として、「15nm~40nmのd-間隔」を有する「均一なLβゲルネットワーク」を形成することは記載されていないから、甲3を参照しても、甲1発明から本件発明1には想い到らない。
また、甲4、甲5及び甲7は、従来から知られていたカチオン性界面活性剤でラメラゲルネットワークを形成できることが記載されているにとどまる(このことは、本件明細書においても、既に知られたこととして記載されている(【0017】~【0020】、【表1】)。それゆえ、甲4、甲5及び甲7は、カチオン性界面活性剤であるBLIEを含む甲1発明において、ラメラゲルネットワークを形成したいという動機付けにはなっても、甲1発明において、カチオン性界面活性剤であるBLIEを、同じくカチオン性界面活性剤であるBVEに代えることや、BVEを含むヘアコンディショナー組成物において、どのようにして「均一なLβゲルネットワーク」を形成できるかを示唆するものではないから、甲4、甲5及び甲7を参照しても、甲1発明から、相違点1及び相違点2の構成を有する本件発明1とすることは困難である。
c そして、甲1発明において、甲3~5及び甲7を参照して、BLIEの代わりにBVEを用いて、ラメラゲルネットワークを形成するように調製した組成物が得られたとしても、当該組成物が、本件発明1の相違点2に係る構成を有するものであることを当業者が想到するものではないから、本件発明1の効果(「良好なヘアコンディショニングをもたらすことができるだけでなく、良好な毛髪のボリュームを与えることができる、及び/又は清潔な感触を長続きさせることができるので、スタイリングを容易にすることができる」(本件明細書の【0024】))を奏することは、当業者の予測の範囲を超えるものといえる。
d 申立人は、以下の主張をする(申立書88~91頁)。
(i)甲3の記載から、「BVEが、BIEと同様に、セチルアルコール及びステアリルアルコールのような脂肪族アルコールと共に、本件特許発明1の構成H(合議体注:「均一なLβゲルネットワークを含」むこと)で特定されるようなLβゲルネットワークを形成することについて容易に想到することができる」。
(ii)甲3には、「BVE及び脂肪族アルコール(ブラシカアルコール)を含むヘアコンディショナー組成物が7.5nmのd-間隔を有し、60°Cのような高い温度で安定性を有することが記載されている(スライド15及び19)」。一方で、甲3には、「組成及び加工(塩濃度を含む)がd-間隔に影響し得ることも記載されている(スライド7)。したがって、塩濃度の調整等によりd-間隔を広げて本件特許発明1の構成Iで特定されるような15~40nmとすることは、当業者であれば容易になし得る」。
(iii)甲4には、「カチオン性界面活性剤としてBVEは記載されていないが、当業者であれば、BVEがカチオン性界面活性剤であると理解する」。このことは、例えば、甲17に「ブラシシルイソロイシナートエシレートのような天然カチオン性界面活性剤」と記載され、甲1にBVEがBLIEのアナログであると記載されていることから明らかである。したがって、当業者は、甲4の記載から、「BVEのようなカチオン性界面活性剤、セチルアルコール及びステアリルアルコールのような高融点脂肪族化合物、並びに水性キャリアが、本件特許発明1の構成Hで特定されるようなLβゲルネットワークを形成することについて容易に想到することができる」。
(iv)甲5及び甲7には、「カチオン性界面活性剤としてBVEは明記されていない」が、当業者であれば、甲17に記載されているように「BVEがカチオン性界面活性剤と理解し、カチオン性界面活性剤としてBVEを使用することは容易に想到し得る」。したがって、当業者は、甲5及び甲7の記載から、「BVEのようなカチオン性界面活性剤、セチルアルコール及びステアリルアルコールのような高融点脂肪族化合物、並びに水性キャリアが、本件特許発明1の構成Iで特定されるようなd-間隔を有するLβゲルネットワークを形成することについて容易に想到することができる」。
(v)「ニュートンの粘度法則によれば、剪断応力は粘度及び剪断速度に正比例し、粘度が高くなると所定の剪断速度に対して剪断応力が高くなる(逆もまた同様である)ところ、甲1発明の実施例4のヘアコンディショニング処方物において、4000(処方物9)から920000(処方物41)(合議体注:「92000」の誤記と認められる。)までの広い粘度が示されているため、所定の剪断速度に対する剪断応力を調整することは、当業者にとって自明である」。
また、甲5には、「上述のゲルマトリックスを含む組成物の950s
-1
の剪断速度での剪断応力が訳150Pa~約500Paであると記載されており・・・本件特許発明1の構成Jの「950 1/sにおける45Pa~800Paの剪断応力」と重複・・・する」。
したがって、当業者は、甲5の記載からも、「BVEのようなカチオン性界面活性剤、セチルアルコール及びステアリルアルコールのような高融点脂肪族化合物、並びに水性キャリアが、本件特許発明1の構成J・・・で特定されるような剪断応力を有する組成物を形成することについて容易に想到することができる」。
e しかしながら、以下に述べるように、上記主張は、受け入れられない。
(a)主張(i)及び(ii)について
上記aで述べたように、甲1には、BLIEを含む甲1発明がラメラゲルネットワークを形成していることは何ら記載されておらず、また、甲1の記載からは、甲1発明は、BVEを含む本件発明1と同様のラメラゲルネットワークを形成しているとはいえない。
一方、上記bで述べたように、甲3には、BVEが脂肪族アルコールとともにラメラゲルネットワークを形成することは記載されているものの、配合される脂肪族アルコールは、「ブラシカアルコール(C
18
-C
22
)」だけであるし、得られたラメラゲルネットワーク(ラメラ液晶相)のD間隔は「約75Å(7.5nm)」であるから、甲1発明において、甲3を参照して、ラメラゲルネットワークを形成しようとしても、本件発明1のように、「短鎖(C16以下)脂肪族アルコール」及び「長鎖(C18以上)脂肪族アルコール」の「少なくとも2つの脂肪族アルコール」を含むことを想起できないし、その結果として、「15nm~40nmのd-間隔」を有する「均一なLβゲルネットワーク」を形成することについても想い至らない。
よって、上記主張は、受け入れられない。
(b)主張(iii)~(v)について
上記cで述べたように、甲4、甲5及び甲7は、カチオン性界面活性剤であるBLIEを含む甲1発明において、ラメラゲルネットワークを形成したいという動機付けにはなっても、甲1発明において、カチオン性界面活性剤であるBLIEを、同じくカチオン性界面活性剤であるBVEに代えることや、BVEを含むヘアコンディショナー組成物において、どのようにして「均一なLβゲルネットワーク」を形成できるかを示唆するものではないから、甲4、甲5及び甲7を参照しても、甲1発明から、本件発明1と同様のd-間隔が「15~40nm」である「均一なLβゲルネットワーク」が形成することは容易になし得たこととはいえない。また、本件発明1は、d-間隔が「15~40nm」である「均一なLβゲルネットワーク」が形成されることにより、「消費者が好むレオロジー(剪断応力)が提供」されるものであるから(本件明細書の【0021】)、甲4、甲5及び甲7を参照しても、甲1発明から、本件発明1と同様の剪断応力とすることは、容易になし得たこととはいえない。
よって、上記主張は、受け入れられない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明とはいえない。また、本件発明1は、甲1に記載された発明、並びに甲3~5及び7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(3)本件発明2~8及び14
本件発明2~8及び14は、本件発明1を更に特定したものであるから、本件発明1について上記(2)で述べた理由と同様の理由で、甲1に基いて、新規性(本件発明2~8)及び進歩性(本件発明2~8及び14)を有さないとはいえない。
(4)本件発明9~13
本件発明9~13は、本件発明1において、「第1の保存剤」及び「第2の保存剤」を含む保存系を更に含むことを更に特定したものである。
甲13~甲16には、本件発明9の「第1の保存剤」及び「第2の保存剤」に該当する保存剤(安息香酸ナトリウムやカプリル酸グリセリル)についての記載はあるが、それらについて検討するまでもなく、本件発明1について上記(2)で述べた理由と同様の理由で、甲1に基いて、進歩性を有さないとはいえない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件発明1~8は、甲1に記載された発明ではない。また、本件発明1~14は、甲1に記載された発明、並びに甲2、3~5、7及び13~16に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、上記判断は、甲1に記載された発明を、甲1の実施例5の処方物に基づいて認定して行ったが、甲1に記載された発明を、甲1の実施例4の処方物9~44、並びに実施例7のA、C、D、J及びKのいずれかで認定しても同様の判断となる。
(1)甲11発明
甲11には、ヘアトリートメントである「ノーリッシュ3イン1ヘアマスク」がその成分とともに記載されており(甲11a)、以下の発明が記載されていると認められる(以下「甲11発明」という。)。
「以下の成分を含むヘアトリートメント。
アクア
、
セテアリルアルコール
、グリセリン、ジステアロイルエチルジモニウムクロリド、ジパルミトイルエチルジモニウムクロリド、
ブラシカアルコール
、ココカプリル酸/カプリン酸エステル、パルファム、ココヤシ油 (ココナッツ油由来)、シアバター、ガーデニアタイテンシス花エキス、ダイズ油、
ブラシシルバリネートエシレート
、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グルコン酸カルシウム、トコフェロール、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、クエン酸、ヘキシルシンナマル、ヒドロキシシトロネラール、リナロール、α-イソメチルイオノン」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲11発明とを対比する。
(ア)甲11発明の「ヘアトリートメント」は、本件発明1の「ヘアコンディショナー組成物」に相当する。
(イ)甲11発明の「アクア」は、本件発明1の「水性担体」に相当する。
(ウ)甲11発明の「ブラシシルバリネートエシレート」は、本件発明1の「BVE」に相当する。
(エ)甲11発明の「セテアリルアルコール」は、炭素数16の脂肪族アルコールであるセタノールと炭素数18の脂肪族アルコールであるステアリルアルコールの混合物であり、「ブラシカアルコール」は、炭素数18~22の脂肪族アルコールである。
そうしてみれば、甲11発明の「セテアリルアルコール」に含まれる「セタノール」は、本件発明1の「C16以下の平均アルキル鎖を有」する「第1の脂肪族アルコール」に相当し、甲11発明の「セテアリチルアルコール」に含まれる「ステアリルアルコール」及び甲11発明の「ブラシカアルコール」は、本件発明1の「C18以上の平均アルキル鎖を有」する「第2の脂肪族アルコール」に相当する。
(オ)甲1発明は、「C22の平均アルキル鎖を有する脂肪族アルコール」を含まないから、本件発明1の「組成物の最大1.0重量%が、C22の平均アルキル鎖を有する脂肪族アルコールであ」ることと一致する。
(ケ)以上によれば、本件発明1と甲11発明は、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「ヘアコンディショナー組成物であって、
a.水性担体と、
b.BVEと、
c.少なくとも2つの脂肪族アルコールと、
を含み、
第1の脂肪族アルコールが、C16以下の平均アルキル鎖を有し、第2の脂肪族アルコールが、C18以上の平均アルキル鎖を有し、前記組成物の最大1.0重量%が、C22の平均アルキル鎖を有する脂肪族アルコールである
ヘアコンディショナー組成物。」
<相違点>
(相違点3)
本願発明1は、「BVE」及び「少なくとも2つの脂肪族アルコール」の配合量が特定され、「第1の脂肪族アルコール」の「第2の脂肪族アルコール」に対するモル比及び「BVEの脂肪族アルコールに対するモル比」が特定されているのに対し、甲11発明は、それらの配合量及びモル比が明らかでない点。
(相違点4)
本件発明1のヘアコンディショナー組成物が、「均一なLβゲルネットワークを含み」、「ラメラゲルネットワーク試験法のd-間隔(Lβ-基底間隔)に従って測定したとき、前記組成物が、15nm~40nmのd-間隔を有し、前記組成物が、950 1/sで45Pa~800Paの剪断応力を有し、前記ゲルネットワーク含有量が、0.01~0.06モルである」のに対し、甲11発明は、「均一なLβゲルネットワーク」であるかどうか明らかでなく、「ラメラゲルネットワーク試験法のd-間隔(Lβ-基底間隔)に従って測定したとき、前記組成物が、15nm~40nmのd-間隔を有し、前記組成物が、950 1/sで45Pa~800Paの剪断応力を有し、前記ゲルネットワーク含有量が、0.01~0.06モルである」かどうか明らかでない点。
イ 判断
(ア)相違点3及び4は、実質的な相違点である。
(イ)申立人は、甲11には、甲11発明に含まれる成分について、「量が多い順に並んでおり、1番目の成分が水であり、2番目の成分がセテアリルアルコールであり、6番目の成分がブラシカアルコールであり、13番目の成分がBVEであることから、C16及びC18アルコールを含み、C22アルコールがC16及びC18アルコールに比べて少ない、混合脂肪族アルコールが記載されており、本件特許発明1の構成A~Kを満たす蓋然性が高い」と主張する(申立書85頁)。
しかしながら、甲11の記載からは、含まれる成分が多い順に記載されていると考えられるが、「BVE」及び「少なくとも2つの脂肪族アルコール」の配合量、「第1の脂肪族アルコール」の「第2の脂肪族アルコール」に対するモル比及び「BVEの脂肪族アルコールに対するモル比」は、全く明らかでなく、甲11発明のこれらの値が、本件発明1の値と同じであることの蓋然性は高いとはいえない。まして、甲11発明が、相違点4の構成である「均一なLβゲルネットワーク」を有しているとはいえない。
よって、上記申立人の主張は、受け入れられない。
(3)本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1を更に特定したものであるから、上記(2)で述べた理由と同様の理由で、甲11に記載された発明とはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1~8は、甲11に記載された発明とはいえない。
(1)甲12発明
甲12には、ヘアトリートメントである「デトックス スクラブ マスク」がその成分とともに記載されて(甲12a)、以下の発明が記載されていると認められる(以下「甲12発明」という。)。
「以下の成分を含むヘアトリートメント。
アクア
、
セテアリルアルコール
、
セチルアルコール
、アーモンド油、グリセリン、アンズ (アプリコット)種子パウダー (粉末)、 ココヤシ油、
ブラシカアルコール
、ラウリン酸イソアミル、CI 77266、カオリン、アルテア根エキス、ケシ種子、ヒマワリ種子ロウ、ホホバエステル、ヒマワリ種子油、
ブラシシルバリネートエシレート
、ポリグリセリン-3、 トコフェロール、β-シトステロール、スクワレン、グルコン酸カルシウム、デヒドロ酢酸、ベンジルアルコール、パルファム、リモネン、リナロール、サリチル酸ベンジル 天然成分由来の有機成分」
(2)本件発明1について
ア 対比
甲12発明は、甲11発明と同様に、「アクア」、「セテアリルアルコール」、「ブラシカアルコール」及び「ブラシシルバリネートエシレート」を含む「ヘアコンディショナー組成物」であるが、それらの配合量やモル比が明らかでない。
それゆえ、甲11発明と同じ相違点(相違点3及び4)を有する。
イ 判断
甲11発明について検討したことと同様に(上記2(2))、相違点3及び4は、実質的な相違点である。
また、申立人は、甲11発明に係る主張と同様の主張をするが(申立書85頁)、同様の理由で、受け入れられない。
(3)本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1を更に特定したものであるから、上記(2)で述べた理由と同様の理由で、甲12に記載された発明とはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1~8は、甲12に記載された発明とはいえない。
(1)甲9明細書等に記載された発明
甲9として国際公開された国際出願に係る国際出願日における明細書、請求の範囲及び図面(以下「甲9明細書等」という。)には、ブラシシルバリンエシレート(AABC(アミノ酸ベースのカチオン性エステル)と、ブラシカアルコール等の非イオン性両親媒性物質を含む組成物が記載され(甲9aの請求項1及び9)、当該組成物は、「ラメラ液晶(LC)相挙動を示す」ことが記載されている(甲9bの[0056])。また、上記組成物の具体例として、実施例8には、表4に示される組成を有するリーブイン型枝毛コート剤が記載されている(甲9cの表4)。
ここで、表4中、「ブラシカアルコール(及び)ブラシシルバリンエシレート(及び)グルコン酸カルシウム」は、「実施例1(INOLEX)」を用いているから、以下の組成となる(単位は重量%)。
ブラシカアルコール:7.91(=12.50×63.3/100)
ブラシシルバリンエシレート:3.40(=12.50×27.2/100)
グルコン酸カルシウム:1.19(=12.50×9.5/100)
以上のことから、甲9明細書等には、以下の発明が記載されていると認められる(以下「甲9発明」という。)
「以下の成分からなる、ラメラ液晶(LC)挙動を示すリーブイン型枝毛コート剤(単位は重量%)。
101
151
0001430027000027.jpg
上記表中、「ブラシカアルコール(及び)ブラシシルバリンエシレート(及び)グルコン酸カルシウム」の組成比(組成物中の重量%)は以下のとおり。
ブラシカアルコール: 7.91
ブラシシルバリンエシレート:3.40
グルコン酸カルシウム: 1.19 」
(2)本件発明1について
本件発明1と甲9発明とを対比する。
ア 対比
(ア)甲9発明の「リーブイン型枝毛コート剤」は、本件発明1の「ヘアコンディショナー組成物」に相当する。
(イ)甲9発明の「水」は、本件発明1の「水性担体」に相当する。
(ウ)甲9発明の「ブラシシルバリンエシレート」は、本件発明1の「BVE」に相当する。
また、甲9発明の「ブラシシルバリンエシレート」の配合量は、「3.40重量%」であるから、本件発明1の「BVE」の配合量(1重量%~12重量%)の範囲内である。
(エ)甲9発明の「セチルアルコール」は、炭素数16の脂肪族アルコールであり、「ブラシカアルコール」は、炭素数18~22の脂肪族アルコールである。
そうしてみれば、甲9発明の「セチルアルコール」及び「ブラシカアルコール」は、それぞれ、本件発明1の「C16以下の平均アルキル鎖を有」する「第1の脂肪族アルコール」及び「C18以上の平均アルキル鎖を有」する「第2の脂肪族アルコール」に相当する。
一方、甲9発明の「セチルアルコール」及び「ブラシカアルコール」の配合量の合計は、「12.91重量%」(=5.00+7.91)であり、本件発明1の「少なくとも2つの脂肪族アルコール」の配合量(1重量%~12重量%)の
範囲外である
。
(オ)「セチルアルコール」及び「ブラシカアルコール」の分子量は、それぞれ、242.5及び312であるから、甲1発明の「セチルアルコール」及び「ブラシカアルコール」のモル数は、それぞれ、0.021(=5.00/242.5)及び0.025(=7.91/312)であり、両者のモル比は、0.021:0.025=46:54となり、本件発明1の「第1の脂肪族アルコール」の「第2の脂肪族アルコールに対するモル比」、「20:80から99:1」の範囲内である。
なお、ブラシカアルコールの分子量は、甲1の「508.5グラム(1.629モル)のBrassicylアルコール」との記載(甲1cの[0055])に基づいて算出した(下記(カ)を参照。)。
(カ)BVEの分子量は、521であるから、甲9発明の「BVE」のモル数は、0.007(=3.40/521)であり、BVEの「総脂肪族アルコールに対するモル比」は、0.007:0.046(=0.021+0.025)であり、
13:87
である。このモル比は、本件発明1の「BVE」の「総脂肪族アルコールに対するモル比」、「20:80から45:55」の
範囲外である
。
なお、BVEの分子量は、以下のように算出した。
甲1の「508.5グラム(1.629モル)のBrassicylアルコール」との記載(甲1cの[0055])に基づいて、ブラシカアルコールの分子量を算出。
ブラシカアルコールの分子量:312(=508.5/1.629)
L-バリンの分子量:117
エタンスルホン酸の分子量:110
エステル化により除去される水の分子量:18
以上から、
BVEの分子量:521(=312+117+110-18)
(キ)甲9発明は、「ラメラ液晶(LC)挙動」を示すから、本件発明1とは、ゲルネットワークを含むことと一致する。
また、本件発明1の「ゲルネットワーク含有量」は、「組成物中のカチオン性界面活性剤及び脂肪族アルコールのモル数の合計」である(本件明細書の【0088】)。
「BVE」は、カチオン性界面活性剤であるから、甲9発明における「組成物中のカチオン性界面活性剤及び脂肪族アルコールのモル数の合計」は、0.053モル(=0.007+0.021+0.025)である。
このモル数は、「組成物中のカチオン性界面活性剤及び脂肪族アルコールのモル数の合計」として、本件発明1の範囲内(0.01~0.06モル)であり、甲9発明は、ラメラ液晶(LC)相挙動を示すから、甲9発明の「ゲルネットワーク含有量」は、本件発明1の範囲に含まれるといえる。
(ク)甲9発明は、「C22の平均アルキル鎖を有する脂肪族アルコール」を含まないから、本件発明1の「組成物の最大1.0重量%が、C22の平均アルキル鎖を有する脂肪族アルコールであ」ることと一致する。
(ケ)以上によれば、本件発明1と甲9発明は、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「ヘアコンディショナー組成物であって、
a.水性担体と、
b.1重量%~12重量%のBVEと、
c.少なくとも2つの脂肪族アルコールと、
を含み、
第1の脂肪族アルコールが、C16以下の平均アルキル鎖を有し、第2の脂肪族アルコールが、C18以上の平均アルキル鎖を有し、前記組成物の最大1.0重量%が、C22の平均アルキル鎖を有する脂肪族アルコールであり、
前記第1の脂肪族アルコールの前記第2の脂肪族アルコールに対するモル比が、20:80から99:1であり、
前記組成物が、ゲルネットワークを含み、
前記ゲルネットワーク含有量が、0.01~0.06モルである
ヘアコンディショナー組成物。」
<相違点>
(相違点5)
「少なくとも2つの脂肪族アルコール」の配合量について、本件発明1は「1重量%~12重量%」であるのに対し、甲9発明は、12.91重量%である点。
(相違点6)
「BVEの総脂肪族アルコールに対するモル比」について、本件発明1は「20:80から45:55」であるのに対し、甲9発明は、13:87である点。
(相違点7)
本件発明1のヘアコンディショナー組成物が、「均一なLβゲルネットワークを含み」、「ラメラゲルネットワーク試験法のd-間隔(Lβ-基底間隔)に従って測定したとき、前記組成物が、15nm~40nmのd-間隔を有し、前記組成物が、950 1/sで45Pa~800Paの剪断応力を有し、前記ゲルネットワーク含有量が、0.01~0.06モルである」のに対し、甲9発明は、「ゲルネットワークを含む」といえるが、ゲルネットワークが「均一なLβゲルネットワーク」であるかどうか明らかでなく、「ラメラゲルネットワーク試験法のd-間隔(Lβ-基底間隔)に従って測定したとき、前記組成物が、15nm~40nmのd-間隔を有し、前記組成物が、950 1/sで45Pa~800Paの剪断応力を有」するかどうか明らかでない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点6及び7について、順に検討する。
(ア)相違点6について
甲9発明の「BVEの総脂肪族アルコールに対するモル比」は、本件発明1で特定する「20:80から45:55」の範囲外である。
甲9には、BVE等のAABC(アミノ酸ベースのカチオン性エステル)及び脂肪族アルコール等の非イオン性両親媒性物質の量について、
「AABCが、それぞれ組成物全体の重量に対して、約10重量%~約70重量%、約12重量%~約60重量%、約15重量%~約55重量%、又は約20重量%~約50重量%の量で組成物中に存在することが示唆される。」(甲9bの[0040])、
「本発明の組成物に他の成分が含まれる場合に、選択された非イオン性両親媒性物質(複数の場合もある)は、それぞれ組成物全体に対して、少なくとも約10重量%、約15重量%~約70重量%、幾つかの実施形態において、好ましくは約20重量%~約40重量%の量で存在し得る。」
と記載されている(甲9bの[0042])。
しかしながら、上記記載は、「BVEの総脂肪族アルコールに対するモル比」を特定の範囲とすることを記載したものでない。また、本件明細書の実施例では、「BVEの総脂肪族アルコールに対するモル比」がゲルネットワークの形成に影響することが示されていることから(【表3】~【表5】)、相違点6は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)とはいえない。
(イ)相違点7について
甲9には、「実施例1の自己中和型のAABC組成物を15%含む実施例4の処方物」が、「75Å(7.5nm)」のD間隔を示していることが記載されている(甲9cの[0077]~[0078]及び甲9d)。
一方、甲9発明は、実施例1の自己中和型のAABC組成物を12.50%含む処方物であって、上記実施例4の処方物とは異なるから、甲9には、甲9発明のD間隔(本件発明1の「d-間隔」に相当する。)について記載されていない。そして、上記実施例4の処方物のD間隔は「75Å(7.5nm)」を参照したとしても、甲9発明の「d-間隔」が「15nm~40nm」であるとはいえない。
また、甲9には、ラメラLC相のD間隔について、
「本発明の組成物によって形成されるラメラLC相は、SAXSによって測定される、約1nm~約100nmのD間隔を有し得て、或る特定の実施形態においては、約2nm~約25nmのD間隔を有し、好ましい実施形態においては、約3nm~約15nmのD間隔を有する。」
と記載されているが(甲9bの[0056])、この記載から、甲9発明の「d-間隔」が「15nm~40nm」であるとはいえない。
さらに、甲9には、「D間隔を調節する」ことについて、
「当業者は、AABCの炭素鎖長及び/又は自己中和型のAABC組成物中の非イオン性両親媒性物質、処方物中のAABC及び非イオン性両親媒性物質のレベル、又は自己中和型のAABC組成物若しくは処方物自体のいずれかにおけるAABC対非イオン性両親媒性物質(複数の場合もある)の比を含む1つ以上の変項を変えることによって、ラメラLC相のD間隔を調節することができること、例えば、追加のAABC又は非イオン性両親媒性物質を自己中和型のAABC組成物を含む処方物に添加することで、ラメラLC相のD間隔に影響を与えることができることを認識するであろう。処方物におけるpH、イオン強度、又は分散された油相のレベルを変動させることで、ラメラD間隔に影響を与えることもできる。本発明のラメラLC相は、好ましくは、20°C~60°Cの温度範囲にわたって一定に保たれるD間隔を有する。」
と記載されている(甲9bの[0057])が、本件発明1は、「d-間隔」が「15nm~40nm」である「均一なLβゲルネットワーク」を含むことにより、特定の剪断応力を有し、本件発明1の効果(「良好なヘアコンディショニングをもたらすことができるだけでなく、良好な毛髪のボリュームを与えることができる、及び/又は清潔な感触を長続きさせることができるので、スタイリングを容易にすることができる」(本件明細書の【0024】))を奏するものとしたものであることを考えれば、相違点7は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)とはいえない。
ウ 小括
よって、相違点5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲9明細書等に記載された発明と同一であるとはいえないし、甲9明細書等に記載された発明と実質的に同一であるともいえない。
(3)本件発明2~8
本件発明2~8は、本件発明1を更に特定したものであるから、本件発明1について上記(2)で述べた理由と同様の理由で、本件発明2~8は、甲9明細書等に記載された発明と同一であるとはいえないし、甲9明細書等に記載された発明と実質的に同一であるともいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1~8は、甲9明細書等に記載された発明と同一であるとはいえないし、甲9明細書等に記載された発明と実質的に同一であるともいえない。
(1)申立理由4(実施可能要件違反)
ア 判断の前提
本件発明は「ヘアコンディショナー組成物」であり、物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を作り、かつ、その物を使用できることを要するものである。
イ 判断
(ア)本件明細書には、本件発明の各成分とその含有量について記載され(【0025】~【0045】、【0057】~【0083】)、「BVEの脂肪族アルコールに対するモル比及び短鎖(C16以下)脂肪族アルコールの長鎖(C18以上)脂肪族アルコールに対するモル比は、コンディショナー組成物ゲルネットワーク及び15~40nmの良好なd-間隔をもたらすことができ、これは、良好な滑り感及び濡れたもつれの解消を含む良好なコンディショニング性能を提供すると考えられる」と記載され(【0022】)、ゲルネットワークを形成するための「ゲルネットワーク含有量」(組成物中のカチオン性界面活性剤及び脂肪族アルコールのモル数の合計)等について記載されている(【0086】~【0091】)。そして、実施例においては、BVEを含むヘアコンディショナー組成物において、「BVEの脂肪族アルコールに対するモル比」、「短鎖(C16以下)脂肪族アルコールの長鎖(C18以上)脂肪族アルコールに対するモル比」及び「ゲルネットワーク含有量」を特定の範囲とすることにより、得られた組成物が「均一なLβゲルネットワークを含み、ラメラゲルネットワーク試験法のd-間隔(Lβ-基底間隔)に従って測定したとき、前記組成物が、15nm~40nmのd-間隔を有し、前記組成物が、950 1/sで45Pa~800Paの剪断応力を有」するものであり、「湿潤時の感触が良好であり、湿潤時のほぐれが良好である、良好なコンディショニングをもたらすことができる」ものであることが記載されている(【0162】~【0186】)。
(イ)そうしてみれば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者は、本件発明に係る「ヘアコンディショナー組成物」を製造し、使用することができるといえる。
よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、甲1発明が構成G(合議体注:「BVEの総脂肪族アルコールに対するモル比」)等を有しているのにもかかわらず、構成H~J(合議体注:構成H~Jは、順に「均一なLβゲルネットワークを含み」、「ラメラゲルネットワーク試験法のd-間隔(Lβ-基底間隔)に従って測定したとき、前記組成物が、15nm~40nmのd-間隔を有し、前記組成物が、950 1/sで45Pa~800Paの剪断応力を有し」、「前記ゲルネットワーク含有量が、0.01~0.06モルである」である。)を有しない場合、当業者であっても構成H~Jをもたらす具体的な手段を理解することができない旨、主張する(申立書105頁)。
(イ)しかしながら、甲1発明は、上記1(2)で述べたように、BVEとは性質の異なるBLIEを含むヘアコンディショニング処方物であり、本件発明1と異なった組成を有するヘアコンディショニング処方物であるため、甲1発明は、本件発明1と同様のラメラゲルネットワークを形成しているとはいえないのであるから、上記主張は、前提に誤りがある。
そして、上述のとおり、本件明細書には、BVEを含むヘアコンディショナー組成物において、「BVEの脂肪族アルコールに対するモル比」、「短鎖(C16以下)脂肪族アルコールの長鎖(C18以上)脂肪族アルコールに対するモル比」及び「ゲルネットワーク含有量」を特定の範囲とすることにより、得られた組成物が「均一なLβゲルネットワークを含み、ラメラゲルネットワーク試験法のd-間隔(Lβ-基底間隔)に従って測定したとき、前記組成物が、15nm~40nmのd-間隔を有し、前記組成物が、950 1/sで45Pa~800Paの剪断応力を有」するものとなることが示されているから、当業者は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載から「構成H~Jをもたらす具体的な手段を理解すること」ができる。
したがって、上記主張は、受け入れられない。
エ 小括
以上のとおりであるから、申立理由3は理由がない。
(2)申立理由5(サポート要件違反)
ア 判断の前提
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 本件特許請求の範囲は、上記第2で摘記したとおりの記載がある。
ウ 本件発明は、COSMOSナチュラル基準の認証を受けているカチオン性界面活性剤であるBVEを含むヘアコンディショナー組成物に関し(本件明細書の【0001】、【0014】)、その課題は、本件明細書の記載(【0007】)から、BVEを含むヘアコンディショナー組成物において、「コンディショニングと清潔感のトレードオフを解消することができ、重い残留物を残さず、良好な毛髪のボリュームを提供するコンディショナー」と認められる。
エ 上記課題を解決するための手段として、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明の各成分とその含有量について記載され(【0025】~【0045】、【0057】~【0083】)、「BVEの脂肪族アルコールに対するモル比及び短鎖(C16以下)脂肪族アルコールの長鎖(C18以上)脂肪族アルコールに対するモル比は、コンディショナー組成物ゲルネットワーク及び15~40nmの良好なd-間隔をもたらすことができ、これは、良好な滑り感及び濡れたもつれの解消を含む良好なコンディショニング性能を提供すると考えられる」と記載され(【0022】)、ゲルネットワークを形成するための「ゲルネットワーク含有量」(組成物中のカチオン性界面活性剤及び脂肪族アルコールのモル数の合計)等について記載されている(【0086】~【0091】)。そして、実施例においては、BVEを含むヘアコンディショナー組成物において、「BVEの脂肪族アルコールに対するモル比」、「短鎖(C16以下)脂肪族アルコールの長鎖(C18以上)脂肪族アルコールに対するモル比」及び「ゲルネットワーク含有量」を特定の範囲とすることにより、得られた組成物が「均一なLβゲルネットワークを含み、ラメラゲルネットワーク試験法のd-間隔(Lβ-基底間隔)に従って測定したとき、前記組成物が、15nm~40nmのd-間隔を有し、前記組成物が、950 1/sで45Pa~800Paの剪断応力を有」するものであり、「湿潤時の感触が良好であり、湿潤時のほぐれが良好である、良好なコンディショニングをもたらすことができる」ものであることが記載されている(【0162】~【0186】)。
そうしてみれば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載には、上記エの課題を解決するための手段が記載され、実際に、実施例で、「湿潤時の感触が良好であり、湿潤時のほぐれが良好である、良好なコンディショニングをもたらすことができる」コンディショナー組成物が製造されたことが確認されている(【0162】~【0186】)から、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者が本件発明の課題を解決できることを認識できるといえ、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているといえる。
オ 申立人は、上記(1)ウ(ア)のように述べ、本件発明はサポート要件を満たさないと主張する。
しかしながら、上記(1)ウ(イ)のとおり、当該主張は、その前提に誤りがあり、上記エのとおり、本件発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者が本件発明の課題を解決できることを認識できるといえるから、申立人の主張は、受け入れられない。
カ 以上のとおり、申立理由5は、理由がない。
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~14に係る特許を取り消すことはできない。
また、そのほかに請求項1~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
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