結論テキスト
特許第7600479号の請求項1~8に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025700626 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7600479号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願(特願2024-559479号)は、2024年(令和6年)2月21日(優先権主張 2023年(令和5年)3月20日)を国際出願日とする出願であって、令和6年12月6日にその特許権の設定登録がされ、同年同月16日に特許掲載公報が発行されたものである。
そして、本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和7年6月13日に特許異議申立人 清水 誠(以下「申立人」という。)から請求項1~8に対して特許異議の申立てがされた。
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、請求項に付す番号を使って、それぞれ、「本件特許発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
支持体上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層と、感熱記録層上に保護層を設けた感熱記録体であって、該感熱記録層が下記一般式(化1)で表されるウレア化合物を少なくとも1種含有し、該保護層が2.5~11.5重量部(固形分)のリン酸エステル化合物を含有する、感熱記録体。
【化1】
30
89
0001430031000001.jpg
(式中、Xは-O-又は-NH-を表し、R
1
は、水素原子または-SO
2
-R
3
を表し、R
3
は、置換若しくは無置換のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、R
2
は、水素原子又はアルキル基を表し、mは0又は1を表す。)
【請求項2】
前記感熱記録層中のウレア化合物の含有量(固形分)が1.0~70.0重量%である、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記保護層が更にバインダーとして、鹸化度95mol以上のカルボキシ変性ポリビニルアルコールを含有する、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項4】
更に、前記支持体の感熱記録層とは反対側にバックコート層を設けた、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項5】
前記バックコート層がエチレン-ビニルアルコール共重合体及びエチレン-アクリル共重合体を含有する、請求項4に記載の感熱記録体。
【請求項6】
前記ウレア化合物が、下記(1)又は(2)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の感熱記録体。
(1)下記一般式(化2)で表される第1のウレア化合物
【化2】
35
89
0001430031000002.jpg
(式中、R
1
、R
2
、及びR
3
は、上記と同様に定義される。)
(2)下記一般式(化3)で表される第2のウレア化合物
【化3】
35
89
0001430031000003.jpg
(式中、R
2
は、上記と同様に定義され、R
4
~R
8
は、それぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、又はアリールミノ基を表す。)
【請求項7】
前記第1のウレア化合物が下記一般式(化6)で表される、請求項6に記載の感熱記録体。
【化6】
28
89
0001430031000004.jpg
(式中、R
9
は、それぞれ同じであっても異なってもよく、アルキル基又はアルコキシ基を表し、oは0~3の整数を表す。)
【請求項8】
前記第2のウレア化合物が、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミドである、請求項7に記載の感熱記録体。」
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)とともに証拠方法として、以下に示す甲第1号証~甲第12号証を提出した。
甲第1号証:国際公開第2022/196512号(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2022-102782号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2010-284830号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:特開2005-238620号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特開2003-171630号公報(以下「甲5」という。)
甲第6号証:特開2012-56184号公報(以下「甲6」という。)
甲第7号証:特開2013-169988号公報(以下「甲7」という。)
甲第8号証:特許第6865334号公報(以下「甲8」という。)
甲第9号証:特開2020-190063号公報(以下「甲9」という。)
甲第10号証:特開2014-173201号公報(以下「甲10」という。)
甲第11号証:特開2020-196259号公報(以下「甲11」という。)
甲第12号証:国際公開第2021/171983号(以下「甲12」という。)
申立人は、概略、下記(1)~(4)の特許異議申立理由を主張している。申立理由の番号は当合議体が付与したものである。
(1) 申立理由1-1(進歩性欠如)
本件特許発明1~4及び6~8は、甲1発明に甲2及び甲6に記載された技術事項を適用することにより、当業者が容易に想到できたものである(申立書25~35ページ)。
(2) 申立理由1-2(進歩性欠如)
本件特許発明5は、甲1発明に甲2、甲6、甲7~甲11に記載された技術事項を適用することにより、当業者が容易に想到できたものである(申立書32~33ページ)。
(3) 申立理由2(実施可能要件違反)
本件特許明細書の発明の詳細な説明は当業者が本件特許発明1~8を実施できるように明確かつ十分に記載されたものではない(申立書35~37ページ)。
(4) 申立理由3(サポート要件違反)
本件特許発明1~8は、発明の詳細な説明に記載したものではない(申立書37~38ページ)。
(1) 甲号証の記載事項及び甲1発明
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の記載がある。なお、下線は、合議体が認定・判断において活用した箇所を示す。
(ア) 「技術分野
[0001] この発明は、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料(以下、「ロイコ染料」ともいう。)と電子受容性顕色剤(以下、「顕色剤」ともいう。)との発色反応を利用した感熱記録体であって、高速印字性に優れ、更に印字走行性、耐油性、溶剤バリア性等に優れる感熱記録体に関する。
背景技術
[0002] 一般に、感熱記録体は通常無色ないし淡色のロイコ染料と顕色剤とを含有する塗工液を、紙、合成紙、フィルム、プラスチック等の支持体に塗工したものであり、サーマルヘッド、ホットスタンプ、熱ペン、レーザー光等の加熱による瞬時の化学反応により発色し、記録画像が得られる。感熱記録体は、ファクシミリ、コンピューターの端末プリンタ、自動券売機、計測用レコーダー、スーパーマーケットやコンビニなどのレシート等の記録媒体として広範囲に使用されている。
近年、感熱記録体は、各種チケット用、レシート用、ラベル用、銀行のATM用、ガスや電気の検針用、車馬券等の金券用など多様な用途にも拡大してきており、そのため、耐水性、画像部の耐可塑剤性、白紙部の耐熱性、耐油性、過酷な条件下における画像部及び白紙部の保存性など様々な性能が必要とされてきている。
このような要求に対して、特定の2種類の顕色剤を組み合わせて用いることにより、耐水性、画像部の耐可塑剤性、白紙部の耐熱性などを向上させた感熱記録体(特許文献1)や、感熱記録体の発色濃度、白色度、及び印字部の保存性などの要求性能を向上させるための顕色剤としてのウレア化合物(特許文献2、3)が開示されている。
また、感熱記録体の保存安定性を向上させる方法として、感熱記録層の上に保護層を設ける方法が知られている。
この感熱記録層や保護層にシラン変性アクリル樹脂を含有させることにより、印刷時のヘッド摩耗を改善したり、感熱記録体の画像保存性や耐水性を改善させることが知られている(特許文献4、5等)。
更に、保護層に、ガラス転移点(Tg)が50°Cより高く95°C以下であるアクリル系樹脂を含有させることにより、感熱記録体が十分な耐水性等を有することが知られている(特許文献6等)。
・・・(略)・・・
発明が解決しようとする課題
[0004] そこで、本発明は、感熱記録体に求められる様々な性能のうち高速印字性に優れ、更に印字走行性、耐油性、溶剤バリア性等に優れる感熱記録体を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0005] 本発明者らは鋭意検討の結果、感熱記録層に、顕色剤として、特定のウレア化合物を含有させ、感熱記録層上に設けた保護層にアクリル系樹脂を含有させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、支持体上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層及び該感熱記録層上に保護層を有する感熱記録体において、該感熱記録層が、電子受容性顕色剤として、下記一般式(化1)で表されるウレア化合物を少なくとも1種含有し、該保護層が、アクリル系樹脂を含有する、感熱記録体である。
[化1]
27
89
0001430031000005.jpg
(式中、Xは-O-又は-NH-を表し、R1は、水素原子または-SO
2
-R
3
を表し、R
3
は、置換若しくは無置換のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、R
2
は、水素原子又はアルキル基を表し、mは0~2の整数、nは0又は1を表す。)
発明の効果
[0006] 本発明によれば、発色性能を有しつつ、高速印字性が良好な感熱記録体を提供することができ、さらに、印字走行性、耐油性、溶剤バリア性等が良好な感熱記録体を提供することができる。」
(イ) 「発明を実施するための形態
[0007] 本発明の感熱記録体は、支持体上に感熱記録層及び該感熱記録層上に保護層を有し、該感熱記録層が、電子受容性顕色剤として、特定のウレア化合物を含有し、該保護層が、アクリル系樹脂を含有する。
・・・(略)・・・
[0008] このウレア化合物は、下記(1)~(3)から選択されることが好ましい。
(1)下記一般式(化2)で表される第1のウレア化合物、
[化2]
31
89
0001430031000006.jpg
(式中、R
1
、R
2
及びR
3
は、上記と同様に定義される。)
(2)下記一般式(化3)で表される第2のウレア化合物、
[化3]
25
89
0001430031000007.jpg
(式中、R
2
及びmは上記と同様に定義され、R
4
~R
8
は後述する。)
(3)下式(化4)で表される第3のウレア化合物
[化4]
32
89
0001430031000008.jpg
(式中、R
2
は上記と同様に定義され、R
4
~R
8
は後述する。)
・・・(略)・・・
[0016] 本発明の第1のウレア化合物として、下記一般式(化6)で表されるウレア化合物が更に好ましい。
[化6]
24
89
0001430031000009.jpg
一般式(化6)中、R
9
はアルキル基又はアルコキシ基、好ましくはアルキル基であり、oは0~3、好ましくは0~2、より好ましくは0~1の整数を表す。このアルキル基の炭素数は、例えば、1~12、好ましくは1~8、より好ましくは1~4である。
・・・(略)・・・
[0018] 本発明で用いる第2のウレア化合物は下式(化3)で表される。
[化3]
25
89
0001430031000010.jpg
[0019] 一般式(化3)中、R
2
、R
4
~R
8
は、上記と同様に定義される。一般式(化3)中、R
4
~R
8
は、好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基である。特に、R
4
、R
5
、R
7
、R
8
としては、水素原子が好ましく、R
6
としては、水素原子、又はアルキル基が好ましい。R
6
としては、特にアルキル基が好ましい。
・・・(略)・・・
[0020] 本発明の第2のウレア化合物として、下記一般式(化7)又は下記一般式(化8)で表されるウレア化合物が好ましい。
[化7]
34
92
0001430031000011.jpg
[化8]
26
89
0001430031000012.jpg
[0021] 本発明で用いる第3のウレア化合物は下式(化4)で表される。
[化4]
34
89
0001430031000013.jpg
一般式(化4)中、R
2
、R
4
~R
8
は上記と同様に定義される。
[0022]
この第3のウレア化合物としては、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミドが好ましく
、この化合物は下式で表され、例えば、日本曹達株式会社から商品名NKK1304として入手可能である。
[化12]
30
72
0001430031000014.jpg
・・・(略)・・・
[0035] 本発明で使用する滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪
酸金属塩、ワックス類、シリコーン樹脂類などが挙げられる。
・・・(略)・・・
[0039] 本発明の感熱記録体においては、感熱記録層上に更に保護層を設け、この保護層は、アクリル系樹脂を含有する。
本発明においては、このアクリル樹脂として、好ましくは、シラン変性アクリル系樹脂又は高Tgアクリル系樹脂を用いる。」
(ウ) 「実施例
[0066] 以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。なお、各実施例及び比較例中、特にことわらない限り「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
・・・(略)・・・
[0079] 下記配合の顕色剤分散液(A1~A4液)、ロイコ染料分散液(B液)、増感剤分散液(C液)を、それぞれ別々にサンドグラインダーで平均粒子径0.5μmになるまで湿式磨砕を行い、調製した。
[0080] 顕色剤分散液(A1液)
N,N'-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素
(以下、「ウレア化合物1」という。) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、商品名:
PVA117、固形分10%) 5.0部
水 1.5部
顕色剤分散液(A2液)
N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド
(以下、「ウレア化合物2」という。) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 1.5部
顕色剤分散液(A3液)
下記化学式(化9)で表されるウレア化合物
(以下、「ウレア化合物3」という。) 6.0部
[化9]
25
64
0001430031000015.jpg
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 1.5部
・・・(略)・・・
[0082] ロイコ染料分散液(B液)
3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン
(山本化成株式会社製、商品名:ODB-2) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 1.5部
[0083] 増感剤分散液(C液)
1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エタン
(三光社製、商品名:KS232) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 1.5部
[0084] 次いで、下記の割合で各分散液を混合して感熱記録層用塗工液を調製した。
<感熱記録層用塗工液>
顕色剤分散液(A1液) 18.0部
顕色剤分散液(A2液) 18.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 25.0部
[0085] 次いで、下記割合からなる配合物を混合して保護層用塗工液1~3を調製した。
<保護層用塗工液1>
水酸化アルミニウム分散液(マーティンスベルグ社製、
商品名:マーティフィンOL、固形分50%) 9.0部
シラン変性アクリル系樹脂1(Tg18°C、MFT22°C、
固形分40%) 10.0部
ステアリン酸亜鉛(中京油脂社製、商品名:ハイドリンZ-7-30、
固形分30%) 2.0部
[0086]<保護層用塗工液2>
水酸化アルミニウム分散液(マーティフィンOL) 9.0部
非コアシェル型アクリル系樹脂(シラン変性なし、スチレンアクリル、
Tg55°C、MFT18°C、固形分18%) 22.2部
ステアリン酸亜鉛(ハイドリンZ-7-30) 2.0部
<保護層用塗工液3>
水酸化アルミニウム分散液(マーティフィンOL) 9.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 40.0部
ステアリン酸亜鉛(ハイドリンZ-7-30) 2.0部
グリオキザール水溶液(日本合成化学社製、固形分40%) 3.0部
<保護層用塗工液4>
カルボキシ変性ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、商品名:
KL118、固形分10%<重合度:約1700、鹸化度:
95~99モル%、酢酸ナトリウム:3%以下) 40.0部
ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(星光PMC社製、商品名:
WS4020、固形分25%) 4.0部
変性ポリアミン樹脂(田岡化学社製、商品名:スミレーズレジン
SPI-102A、固形分45%) 2.2部
水酸化アルミニウム分散液(マーティフィンOL) 9.0部
ステアリン酸亜鉛(ハイドリンZ-7-30) 2.0部
[0087][実施例1]
支持体(坪量47g/m
2
の上質紙)の片面に、下塗り層用塗工液を、固形分で塗工量10.0g/m
2
となるようにベントブレード法で塗工した後、乾燥を行ない、下塗り層塗工紙を得た。
この下塗り層塗工紙の下塗り層上に、感熱記録層用塗工液を、固形分で塗工量6.0g/m
2
となるようにロッドブレード法で塗工した後、乾燥を行い、感熱記録体を得た。
次いで、この感熱記録層塗工紙の感熱記録層上に、保護層塗工液1を、固形分で塗工量3.0g/m
2
となるようにカーテン法で塗工した後、乾燥を行ない、スーパーカレンダーで平滑度が100~500秒になるように処理して感熱記録層体を得た。
[実施例2]
保護層用塗工液1において、シラン変性アクリル系樹脂1をシラン変性アクリル系樹脂2に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[0088][実施例3]
保護層用塗工液1において、シラン変性アクリル系樹脂1をシラン変性アクリル系樹脂3に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[実施例4]
感熱記録層用塗工液において、A2液をA3液に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[実施例5]
感熱記録層用塗工液において、A1液をA3液に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[実施例6]
保護層用塗工液1を保護層用塗工液2に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[実施例7]
感熱記録層用塗工液において、A1液の配合部数を9部に変更し、A4液9部を追加した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[実施例8]
感熱記録層用塗工液において、A2液を配合せず、A1液を36部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[実施例9]
感熱記録層用塗工液において、A1液を配合せず、A2液の配合部数を36部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[実施例10]
感熱記録層用塗工液において、A1液とA2液を配合せず、A3液36部を追加した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
・・・(略)・・・
[0090] 作製した感熱記録体について、下記評価を行った。
<発色性能(印字濃度)>
作製した感熱記録体について、大倉電機社製のTH-PMD(感熱記録紙印字試験機、京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印字速度50mm/secで、印加エネルギー0.41mJ/dotで市松模様を印字した。印字部の印字濃度をマクベス濃度計(RD-914、アンバーフィルター使用)で測定し、発色性能(印字濃度)を評価した。
<印字走行性(耐ヘッドカス性)>
作製した感熱記録体について、サトー社製ラベルプリンタ(レスプリR-8)にて長さ60cmの格子印字を行い、印字後のサーマルヘッドに付着したカス(ヘッドカス)を目視にて下記の基準で評価した。
優:ヘッドカスの付着がほとんど見られなかった。
可:ヘッドカスの付着が少し見られたが、形成された画像の抜け及びカスレが見られず、実用上問題のない程度であった。
不可:ヘッドカスの付着が多く見られ、形成された画像の抜け及びカスレが見られた。
[0091]<高速印字適性>
作製した感熱記録体について、ゼブラ社製ラベルプリンタ140XiIIIを用い、印字レベル+10、印字速度25.4cm/秒(10インチ/秒)で、バーコード(CODE39)を縦方向(プリンタヘッドの移動方向とバーコードが直交)に印字した。
次いで、印字されたバーコードをバーコード検証機(Honeywell社製、QCPC600、光源640nm)で読み取り試験を実施し、バーコード読み取り適性を評価した。評価結果をANSI規格のシンボルグレードで記した。
シンボルグレード:バーコードをバーと垂直方向に10分割して、各箇所1回ずつ読み取り試験を実施し、その平均値を(優)A、B、C、D、F(劣)の5段階評価で表す。
・・・(略)・・・
[0094] 結果を下表に示す。
[表2]
63
145
0001430031000016.jpg
」(当合議体注:[表2]は、便宜上、時計回りに90°回転したものである。)
(エ) 「請求の範囲
[請求項1]
支持体上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層及び該感熱記録層上に保護層を有する感熱記録体において、該感熱記録層が、電子受容性顕色剤として、下記一般式(化1)で表されるウレア化合物を少なくとも1種含有し、該保護層が、アクリル系樹脂を含有する、感熱記録体。
[化1]
40
145
0001430031000017.jpg
(式中、Xは-O-又は-NH-を表し、R
1
は、水素原子または-SO
2
-R
3
を表し、R
3
は、置換若しくは無置換のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、R
2
は、水素原子又はアルキル基を表し、mは0~2の整数、nは0又は1を表す。)
」
イ 甲1発明
上記ア(エ)によれば、甲1には、請求項1に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「支持体上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層及び該感熱記録層上に保護層を有する感熱記録体において、該感熱記録層が、電子受容性顕色剤として、下記一般式(化1)で表されるウレア化合物を少なくとも1種含有し、該保護層が、アクリル系樹脂を含有する、感熱記録体。
[化1]
40
145
0001430031000018.jpg
(式中、Xは-O-又は-NH-を表し、R
1
は、水素原子または-SO
2
-R
3
を表し、R
3
は、置換若しくは無置換のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、R
2
は、水素原子又はアルキル基を表し、mは0~2の整数、nは0又は1を表す。)」
ウ 甲2の記載事項及び甲2に記載された技術事項の認定
(ア) 甲2の記載事項
甲2には、以下の記載がある。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコ染料と呈色剤との発色反応を利用した透明感熱記録体に関するものである。
・・・(略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、
サーマルヘッドの摩耗を抑制し、耐スティッキング性にも優れる透明感熱記録体を提供することを
主な
目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、保護層中に接着剤を保護層の全固形量中60質量%以上の割合で含有させ、
滑剤としてアルキルリン酸エステル塩を配合することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を解決するに至った。
すなわち、本発明は、下記の透明感熱記録体に係る。」
b 「【0015】
本発明は、透明支持体の一方の面に、ロイコ染料及び呈色剤を含有する少なくとも1層の感熱記録層、並びに接着剤及び滑剤を含有する保護層をこの順に有する透明感熱記録体
であって、
前記接着剤の含有割合が保護層の全固形量中60質量%以上であり、
前記滑剤として少なくともアルキルリン酸エステル塩を含有する
ことを特徴とする。
・・・(略)・・・
【0022】
呈色剤の具体例としては、
・・・(略)・・・、
N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド
、・・・(略)・・・等の分子内に-SO
2
NH-結合を有する有機化合物、・・・(略)・・・
が挙げられ
る。
・・・(略)・・・
【0037】
[保護層]
本発明の感熱記録体では、感熱記録層上に接着剤及び滑剤を含有する保護層を有する。
・・・(略)・・・
【0040】
滑剤としては、少なくともアルキルリン酸エステル塩を含有する。これにより、スティッキングを効果的に抑制できる。
【0041】
アルキルリン酸エステル塩は、リン酸が有する3つのヒドロキシ基のうちの1以上における水素原子がアルキル基に置換した化合物であり、中でも、モノエステル体(モノアルキルリン酸エステル)が好ましい。アルキルリン酸エステルにおけるエステル部分のアルキル基の炭素数は、好ましくは12~36、より好ましくは12~30、更に好ましくは14~22である。当該アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキルリン酸エステル塩としては、例えば、無機塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。無機塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;アルミニウム塩;亜鉛塩等が挙げられる。有機アミン塩としては、例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。塩基性アミノ酸塩としては、例えば、アルギニン塩、リジン塩等が挙げられる。
【0042】
アルキルリン酸エステル塩の含有割合は、保護層の全固形量中
0.5~20質量%程度が好ましく、1.0~20質量%程度がより好ましく、
1.0~10質量%程度が更に好ましい。
0.5質量%以上とすることにより、耐スティッキング性を向上できる。20質量%以下とすることにより、耐可塑剤性の低下を抑えることができる。」
c 「【実施例】
【0062】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0063】
実施例1
・A液(ロイコ染料分散液)の調製
・・・(略)・・・
【0064】
・B液(呈色剤分散液)の調製
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン100部、スルホン変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセネックスL-3266、日本合成化学社製)の20%水溶液40部、天然油脂系消泡剤(商品名:ノプコ1407H、サンノプコ社製)の5%エマルジョン1部、及び水80部からなる組成物を、ウルトラビスコミルにより動的光散乱式粒径分布測定装置LB-500(堀場製作所製)によるメジアン径が0.2μmとなるまで粉砕してB液を得た。
【0065】
・感熱記録層用塗液の調製
A液36部、B液47.8部、コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスN、平均粒子径10~15nm、日産化学社製、固形分濃度20%)33.5部、スチレン-ブタジエン系ラテックス(商品名:スマーテックスPA9281、日本A&L社製、固形分濃度48%)13.9部、ジアセトン変性ポリビニルアルコール(商品名:DF-17、日本酢ビ・ポバール社製)の10%水溶液38部、ポリエステル系ポリウレタン樹脂(商品名:ハイドランAM-1、DIC社製、固形分濃度20%)35部、ポリエステル系ポリウレタン(商品名:メトローズ60SH-03、信越化学社製)の10%水溶液10部、ポリエチレンワックスエマルジョン(商品名:ノプコートPEM17、サンノプコ社製、固形分濃度40%)1部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩(商品名:SNウェットOT-70、サンノプコ社製)の10%水溶液6部、及び水18部からなる組成物を混合攪拌して感熱記録層用塗液を調製した。
【0066】
・保護層用塗液の調製
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(ゴーセネックスZ-200、日本合成化学社製、完全ケン化、重合度1100)の14%水溶液427.0部、ステアリルリン酸エステルカリウム塩エマルジョン(商品名:ウーポール1800、松本油脂社製、固形分濃度35%)0.3部、ポリエステル系ポリウレタン樹脂(商品名:ハイドランAM-1、DIC社製、固形分濃度20%)200.6部、及び水100.0部からなる組成物を混合攪拌して保護層用塗液を調製した。
【0067】
・透明感熱記録体の作製
透明なポリエチレンテレフタレートフィルムの片面上に、乾燥後の塗布量が4.0g/m
2
となるように感熱記録層用塗液を塗布及び乾燥して感熱記録層を形成した。更に感熱記録層上に乾燥後の塗布量が3.0g/m
2
となるように保護層用塗液を塗布及び乾燥して保護層を形成し、透明感熱記録体を得た。
・・・(略)・・・
【0083】
〔ヘッド磨耗性の評価〕
直径0.3175cmの真鍮球に900gの荷重をかけ、各透明感熱記録体の保護層表面を375m走行させたときの真鍮球の磨耗深さをキーエンス社製形状測定装置Profle Measurement unit VHX-S15を用いて測定した。磨耗深さが小さいほど、ヘッド磨耗性が良好であるといえる。
【0084】
〔スティッキングの評価〕
感熱プリンター(商品名:Atlantek400、Global Media Instruments社製)を用い、Pattern4、Energy MidにてDynamic Responseの印字を行い、Step2の印字上部から、Step10の印字下部までの印字長を測定した。実用上、印字長は15.0cm以上必要である。
・・・(略)・・・
【0087】
【表1】
24
144
0001430031000019.jpg
」(当合議体注:【表1】は、便宜上、時計回りに90°回転したものである。)
(イ) 甲2に記載された技術事項の認定
上記(ア)a~b(特に【0008】~【0009】、【0015】及び【0022】等)によれば、甲2には、以下の技術事項が記載されていると認められる。なお、下記における括弧内の数字は、甲2において認定根拠となった箇所を参考のために示したものである。
「サーマルヘッドの摩耗を抑制し、耐スティッキング性にも優れる透明感熱記録体を提供することを目的とし、(【0008】、【0009】)
透明支持体の一方の面に、ロイコ染料及び呈色剤を含有する少なくとも1層の感熱記録層、並びに接着剤及び滑剤を含有する保護層をこの順に有する透明感熱記録体であって、
前記呈色剤の具体例としては、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミドが挙げられ、(【0022】)
前記接着剤の含有割合が保護層の全固形量中60質量%以上であり、アルキルリン酸エステルの含有割合は、保護層の全固形量中1.0~10質量%程度が好ましい感熱記録体。(【0015】及び【0042】)」
(以下「甲2記載技術事項」という。)
エ 甲3の記載事項
甲3には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、
感熱記録体を医療診断用の記録媒体として用いた場合、正確な診断が不可欠条件であり、同一印加エネルギーで形成された画像には印画欠陥が少なく、画像の細部に至るまで明瞭な画像が形成でき、
ヘッド粕抑制にも優れる等、医療診断用に適した感熱記録体を提供することである。
・・・(略)・・・
【0066】
実施例1
・A液(複合粒子分散液)の調製
・・・(略)・・・
【0067】
・B液(呈色剤分散液)の調製
4,4’-シクロヘキシリデンジフェノール40部
、重合度300の部分鹸化ポリビニルアルコール(商品名;PVA-203、クラレ社製)の15%水溶液55部、及び水60部からなる組成物を、ウルトラビスコミルを用いて平均粒子径が0.25μmとなるまで粉砕して
呈色剤分散液を得た。
【0068】
・感熱記録層用塗液の調製
A液100部、B液140部、ポリウレタンアイオノマーを含有する水性媒体中で、スチレンオノマー及びブタジエンモノマーが重合されたラテックス(商品名;パテラコール(登録商標)H2020A、固形分濃度41%、DIC社製)75部、フッ素系化合物(商品名;メガファック(登録商標)F-444、前記一般式(1)においてm=4、最多頻度で存在するnの値=5、DIC社製)の5%水溶液1.6部、及び水60部からなる組成物を混合攪拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0070】
・
保護層用塗液の調製
アイオノマー型ウレタン系樹脂ラテックス(商品名;ハイドラン(登録商標)AM-1、固形分濃度20%、DIC社製)100部、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名;ゴーセファイマー(登録商標)Z-410、重合度:約2300、鹸化度:約98モル%、日本合成化学工業社製)の8%水溶液500部、カオリン(商品名;UW-90、エンゲルハード社製)を平均粒子径が1.6μmとなるように微粒化した60%スラリー50部、平均粒子径2.5μmの焼成カオリン(商品名;ANSILEX93(登録商標)、エンゲルハード社製)の40%スラリー3部、ステアリン酸アミド(商品名;ハイミクロンL-271、固形分濃度25%、中京油脂社製)20部、ポリエチレンワックス(商品名;SNコート287、固形分濃度40%、サンノプコ社製)10部、
ステアリルリン酸エステルカリウム塩(商品名;ウーポール(登録商標)1800
、固形分濃度35%、松本油脂製薬社製)3部、フッ素系化合物(商品名;メガファック(登録商標)F-444、前出)の10%水溶液6部、アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物界面活性剤(商品名;オルフィン(登録商標)E1010、前記一般式(2)においてm=5、n=5、前出)の10%水溶液6部、及び水365部
からなる組成物を混合攪拌して保護層用塗液を得た。
【0071】
・感熱記録体の作製
青色透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名;メリネックス(登録商標)912、厚さ175μm、ヘイズ1%、帝人デュポン社製)の片面上に、支持体側から感熱記録層用塗液、中間層用塗液、保護層用塗液の順にそれぞれ乾燥後の塗布量が20g/m
2
、2g/m
2
、1.5g/m
2
となるようにスライドビードコーターを用いて3層同時に塗布及び乾燥して感熱記録体を得た。
・・・(略)・・・
【0082】
(ヘッド粕)
記録装置として、感熱プリンターUP-DF500(ソニー社製)を用い、各感熱記録体1500枚(17inch×14inch/1枚)に対してCT画像の記録を行った後における記録装置のサーマルヘッドの状況をデジタルマイクロスコープVH-7000(キーエンス社製)を用いて観察し、以下の評価基準に従い評価した。
[評価基準]
○:サーマルヘッドへのヘッド粕付着は見られない。
△:サーマルヘッドへのヘッド粕付着がわずかに見られるが、実用上問題はない。
×:サーマルヘッドにヘッド粕が多く付着し、印字障害が起きている。
【0083】
【表1】
73
61
0001430031000020.jpg
」
オ 甲4の記載事項
甲4には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッドカス付着に関しては特に、例えばラベル用紙や配送伝票用紙等では、通常の用途に比べて数千メートルも連続印字されるなど使用条件が厳しく、アクリル系ポリマーを用いた感熱記録体の場合、通常の印字では問題がなくても連続操業になると著しくカスが発生し印字不良が起こりやすくなり、実用に適さない。
そこで、本発明は、耐水性に優れるとともに、連続印字した場合でもカス付着のない感熱記録紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に対し、本発明は、原紙上に、無色または淡色の塩基性ロイコ染料および顕色剤を主成分とする感熱記録層を設けた感熱記録紙において、該感熱記録層中にアクリル系ポリマーとコロイダルシリカを含有し、かつ原紙の湿潤強度が0.6kN/m以上であり、原紙を熱水抽出した時のpHが5以上であることを特徴とする感熱記録紙とすることにより、課題を解決するものである。特に、コロイダルシリカとして鎖状コロイダルシリカを用いることが有効である
【0028】
〔実施例〕
・・・(略)・・・
【0029】
-
感熱記録層用塗液(感熱塗液)の調製
-
染料、顕色剤の各材料は、あらかじめ以下の配合の分散液をつくり、サンドグラインダーで平均粒径が0.5μmになるまで湿式磨砕を行った。
<
顕色剤分散液
>
2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン
6.0部
・・・(略)・・・
【0030】
以下の組成物を混合し、感熱記録層塗液を得た。
顕色剤分散液 36.0部
染料分散液 13.8部
・・・(略)・・・
【0031】
[実施例1]
感熱記録層中に添加するコロイダルシリカとして、鎖状コロイダルシリカ(商品名:日産化学株式会社製:スノーテックスPS-M)5部を使用し上記に従って感熱塗液を調製した。この塗液を上記で作成した原紙に乾燥後の塗布量が5g/m
2
となるように塗布乾燥し、カレンダーでベック平滑度が200~600秒になるように処理し、感熱記録紙を得た。
・・・(略)・・・
【0037】
-評価方法-
実施例および比較例で得られた感熱記録紙について以下の評価を行い、結果を表にまとめて示す。
・・・(略)・・・
[
ヘッドカス付着
]
本発明の評価は、通常の印字条件よりもカスが発生しやすい厳しい条件で行った。具体的には、印字エネルギーの高いサトー製のレスプリT8を使用して、印字濃度レベル3、濃度指定Aで、500m連続して印字した後、ヘッドカス付着の有無について次の基準で評価した。○と△であれば実用上問題がない。
○:ヘッドカス付着が見られない
△:ヘッドカス付着がやや見られる。
×:ヘッドカス付着が見られる
・・・(略)・・・
【0041】
【表2】
72
145
0001430031000021.jpg
」
カ 甲5の記載事項
甲5には、以下の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】
・・・(略)・・・
【0006】更に、上記剥離剤層は、剥離剤層としての機能を持つだけでなく、感熱プリンターに対する走行性、スティッキング等、一般の感熱紙と同様の機能も併せ有するものが求められている。特に、高印加エネルギーでの連続的な印字では、スティッキングが発生したり、最上層の剥離剤層がサーマルヘッドで擦過され、剥離剤の粕がサーマルヘッド上に蓄積し、印字がカスレるといった印字不良が発生してしまうおそれがある。一般に、剥離性能を重視するため、剥離剤層にはシリコーン等の樹脂を用いるが、このような樹脂は一般的に脆いため、サーマルヘッド上に剥離剤の粕が蓄積し、印字不良を起こし易いといった問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、
高印加エネルギーで印字を行った際、その熱エネルギーとサーマルヘッドとの摩擦力により最上層の剥離剤層にスティッキングが発生したり、さらに著しい場合には、剥離剤層が破壊されたり、
サーマルヘッド上にヘッド粕が蓄積することによって生じる印字障害がなく
、且つ経時での剥離力も安定し、また耐熱性に優れた剥離剤層を有している、
剥離紙が不要な感熱記録用粘着ラベルを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明は、以下の各発明を包含する。
【0009】(1)支持体の片面に感熱記録層と、該感熱記録層上に剥離剤層を有し、他面に粘着剤層を有する感熱記録用粘着ラベルにおいて、該剥離剤層は、放射線硬化型オルガノポリシロキサン化合物を主成分とし、さらに、該主成分以外のオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物及びポリシロキサン化合物以外のビニルエーテル基含有化合物から選ばれる少なくとも1種を全固形分中1~50質量%含有している無溶剤型の放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物を放射線照射によって硬化させた層であることを特徴とする感熱記録用粘着ラベル。
・・・(略)・・・
【0047】実施例1
〔感熱記録用紙の製造〕
・・・(略)・・・
【0051】「感熱発色層用塗液の調製」A液30部、B液60部、C液40部、無定型シリカ(商品名:ミズカシルP-527、水沢化学工業製)6部及びポリビニルアルコールの10%水溶液10部を混合撹拌して感熱発色層用塗液を得た。
【0052】「保護層用塗液の調製」10%アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール水溶液400部、カオリン(商品名:UW-90、EMC社製)50部、30%ステアリン酸亜鉛分散液10部、及び水100部からなる組成物を混合撹拌し保護層用塗液を得た。
【0053】「感熱記録用紙の作成」中性抄紙された坪量60g/m
2
の上質紙の片面に、上記の下塗り層用塗液、感熱記録用塗液及び保護層用塗液を乾燥後の塗布量が、各8g/m
2
、5g/m
2
、3g/m
2
となるように塗布乾燥して、下塗り層、感熱記録層、保護層を順次形成しスーパーキャレンダーによる平滑化処理をして感熱記録用紙を得た。
【0054】「剥離剤層の形成」上記感熱記録用紙の保護層上に、オフセットグラビアコーターを用いて紫外線硬化型無溶剤シリコーン樹脂(エポキシ基含有ポリシロキサン、商品名:POLY200、荒川化学工業製)100部、光重合開始剤(商品名:CATA211、荒川化学工業製)4部、及びオルガノハイドロジェンポリシロキサン(商品名:XL90A、荒川化学工業製)10部からなる組成物を混合撹拌し、塗布量が1.2g/m
2
となるように塗布し、紫外線照射装置(商品名:ラピッドキュア、ウシオ電気製)を用い、照射線量を200mj/cm
2
となるように紫外線を照射して硬化を行い、剥離剤層を有する感熱記録用紙を得た。
【0055】「粘着ラベルの製造」上記剥離剤層を有する感熱記録用紙の裏面にアクリルエマルジョン粘着剤(商品名:L-145、日本カーバイド工業製)を乾燥質量で25g/m
2
となるようにリバースロールコーターで塗布乾燥し、粘着剤層を形成し、本発明の感熱記録用粘着ラベルを製造した。
・・・(略)・・・
【0070】
〔連続印字性能試験〕DATAMAX社製ライナーレスラベル用プリンターPRODIGY PLUSを用いて、記録速度3ips、印加エネルギー0.50mj/dotの条件で10kmのベタ印字を行い、10km後得られた記録像をマクベス濃度計(RD-914型、マクベス社製)のビジュアルモードにて記録濃度を測定した。
なお、実施例5で得られた2色感熱記録用粘着ラベルは印加エネルギー0.50mj/dot(赤色発色印字)、及び、0.70mj/dot(黒色発色印字)でベタ印字を行い、赤色発色印字はマクベス濃度計のレッドフィルターを用いて、また黒色発色印字はマクベス濃度計のビジュアルモードを用いて記録濃度を測定した。
【0071】〔ヘッド粕評価〕上記〔連続印字性能試験〕後、サーマルヘッドの発熱体上への粕付着状況を目視で判断した。
○粕付着なし。
△粕が付着しているが、エタノールで拭き取り可能である。
×:粕が付着していて、エタノールで拭き取り不可能である。
・・・(略)・・・
【0081】
【表2】
79
135
0001430031000022.jpg
【0082】
【表3】
46
135
0001430031000023.jpg
」
キ 甲6の記載事項
甲6には、以下の記載がある。
(ア) 「【請求項1】
支持体上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料および電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、最表層にリン酸エステル化合物を含有することを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
最表層が保護層であることを特徴とする請求項1に記載の感熱記録体。
・・・(略)・・・
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字走行性(耐スティック性、耐ヘッドカス付着性)、発色感度に優れる感熱記録体に関するものである。
・・・(略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら近年、環境に配慮したプリンターの省エネ化、プリンターの性能向上による高速印字化が進んでおり、従来よりも高い発色感度や印字走行性(耐スティック性、耐ヘッドカス付着性)が要求されている。そこで、本発明は、十分な発色感度と、印字走行性を有する感熱記録体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討の結果、支持体上に、染料及び顕色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体の最表層にリン酸エステル化合物を含有させることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、支持体上に、無色又は淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体であって、最表層にリン酸エステル化合物を含有することを特徴とする感熱記録体である。
【0006】
本発明の感熱記録体は、印字走行性(耐スティック性、耐ヘッドカス付着性)が良好で、十分な発色感度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の感熱記録体が十分な印字走行性(耐スティック性、耐ヘッドカス付着性)、発色感度を備える理由は明らかではないが、次のように推測される。リン酸エステル化合物は熱が加わり溶解すると表面に配列し、剥離性を発現する。
本感熱記録体の最表層に配合されたリン酸エステル化合物
は、プリンターヘッドの熱によって記録体表面に配列し、良好な印字走行性が得られる。また、リン酸エステル化合物は脂肪酸金属塩、具体的にはステアリン酸亜鉛やステアリン酸カルシウムに代表される滑剤と異なり、表面の平滑度を低下させないことから、プリンターヘッドとのマッチングが良好になり発色感度が向上する。
・・・(略)・・・
【0008】
本発明で使用されるリン酸エステル化合物の配合量としては、最表層の塗工層全固形分100重量部に対して、好ましくは0.2~20重量部(以下、重量部は固形分換算とする)、より好ましくは0.2~15重量部である。リン酸エステル化合物の配合量が0.2重量部未満であると良好な耐スティック性が得られず、15重量部を超えると、発色感度、耐ヘッドカス付着性が低下することがある。」
(イ) 「【実施例】
【0033】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。なお、各実施例中、特に明記しない限り「部」は「重量部」を示す。
[実施例1]
下記配合からなる配合物を攪拌分散して、下塗り層塗液を調整した。
<下塗り層塗液>
焼成カオリン(エンゲルハード社製、アンシレックス90) 100部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(固形分48%) 40部
完全鹸化ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)10%水溶液 30部
水 160部
次いで、下塗り層塗液を支持体(坪量50g/m
2
の上質紙)の片面に塗布量が8.0g/m
2
となるように塗布した後、乾燥を行い、下塗り層塗工紙を得た。
【0034】
染料、顕色剤、増感剤の各材料は、あらかじめ以下の配合の分散液をつくり、それぞれサンドグラインダーで平均粒径が0.5μmになるまで湿式磨砕を行った。
<
顕色剤分散液
>
4-ヒドロキシ-4'-イソプロポキシジフェニルスルホン(エーピーアイ コーポレーション社製)
6.0部
ポリビニルアルコール10%水溶液(日本合成化学社製、GL-03、重合度:300、ケン化度:88mol%) 18.8部
水 11.2部
<染料分散液>
3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン(山田化学社製、ODB-2) 3.0部
ポリビニルアルコール10%水溶液(GL-03) 6.9部
水 3.9部
<増感剤分散液>
1,2-ジ-(3-メチルフェノキシ)エタン(三光社製、KS232)
6.0部
ポリビニルアルコール10%水溶液(GL-03) 18.8部
水 11.2部
【0035】
上記の各分散液を下記に示す割合で混合し、感熱記録層塗液を得た。
<感熱記録層塗液>
顕色剤分散液 36.0部
染料分散液 13.8部
増感剤分散液 36.0部
シリカ(デグサジャパン社製、カープレックス101)50%分散液
13.0部
炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、ツネックスE)50%分散液
13.0部
完全鹸化ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)10%水溶液 20.0部
リン酸エステル化合物(中京油脂社製、セパールM835、固形分20%) 4.0部
次いで、感熱記録層塗液を前記下塗り層塗工紙の下塗り層上に塗布量が3.0g/m
2
となるように塗布した後、乾燥を行い、感熱記録体を得た。
【0036】
[
実施例2
]
感熱記録層にリン酸エステル化合物を配合しない以外は実施例1と同様に感熱記録体を作製した。次いで、下記割合からなる配合物を混合して保護層塗液とした。
<保護層塗液>
水酸化アルミニウム(マーティンスベルグ社製、マーティフィン)50%分散液 12.0部
完全鹸化ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)10%水溶液
25.0部
グリオキザール(日本合成社製)40%水溶液 5.0部
リン酸エステル化合物(中京油脂社製、セパールM835、固形分20%)
7.6部
上記の保護層塗液を前記感熱記録体の感熱記録層上に塗布量が2.0g/m
2
となるように塗布した後、乾燥を行い、感熱記録体を得た。
[実施例3]
保護層塗液の処方を下記の保護層塗液2に変更した以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
<保護層塗液2>
水酸化アルミニウム(マーティンスベルグ社製、マーティフィン)50%分散液 12.0部
カルボキシ変性ポリビニルアルコール(クラレ社製、KL118)12%水溶液 26.7部
ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(星光PMC社製、WS4030、固形分25%) 3.8部
変性ポリアミド樹脂(住友化学社製、スミレッズレジンSPI102、固形分45%) 2.1部
リン酸エステル化合物(中京油脂社製、セパールM835、固形分20%)
7.6部
[
実施例4
]
保護層塗液の処方を下記の保護層塗液3に変更した以外は、実施例2と同様にして感熱記
録体を得た。
<
保護層塗液3
>
水酸化アルミニウム(マーティンスベルグ社製、マーティフィン)50%分散液 12.0部
非コアシェル型アクリル系樹脂(三井化学社製、ASN1004K、Tg55°C、固形分18%) 30.0部
リン酸エステル化合物(中京油脂社製、セパールM835、固形分20%)
7.6部
・・・(略)・・・
【0038】
上記の実施例及び比較例で得られた感熱記録体について次のような評価を行った。
[発色感度]
大倉電機社製のTH-PMDを使用し、作成した感熱記録体に印加エネルギー0.34mJ/dotで印字を行った。印字後及び品質試験後の画像濃度はマクベス濃度計(RD-914、アンバーフィルター使用)で測定した。
[耐スティック性]
大倉電機社製のTH-PMDを使用し、感熱記録体に印加エネルギー0.34mJ/dot、印字速度50mm/sec、-10°Cの環境下で印字を行なった際の、スティックの具合及び記録時の騒音について次の基準で評価した。
○:白飛びの発生がなく、騒音もほとんどない
△:若干の白飛びはするが、騒音はほとんどない
×:白飛びが頻発し、騒音も大きい
[
耐ヘッドカス付着性
]
サトー社製ラベルプリンタ(プリンタ名:レスプリR-8)にて長さ30cmの格子印字を行い、印字後のサーマルヘッドに付着したヘッドカス及び印字サンプルを目視観察した。
○:サーマルヘッドにヘッドカスの付着がない
△:サーマルヘッドにヘッドカスが付着しているが、印字部はかすれない
×:サーマルヘッドにヘッドカスが付着し、印字部がかすれる
評価結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
34
75
0001430031000024.jpg
」
(2) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
(ア) 支持体、感熱記録層、保護層、感熱記録体
引用発明1の「支持体」、「無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層」、「保護層」及び「感熱記録体」は、それぞれ、本件特許発明1の「支持体」、「無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層」、「保護層」及び「感熱記録体」に相当する。そして、引用発明1の「感熱記録体」は、「支持体上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層及び該感熱記録層上に保護層を有する」から、本件特許発明1における「感熱記録体」における、「支持体上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層及び該感熱記録層上に保護層を有する」という要件を満たす。
(イ) 感熱記録層が一般式(化1)で表されるウレア化合物を含有すること
引用発明1の「
一般式(化1)で表されるウレア化合物」において、
mが0、nが1及びXが「-O-」である化合物は、本件特許発明1の「一般式(化1)で表されるウレア化合物」における、mが1及びXが「-O-」である場合に該当する。
また、引用発明1の「
一般式(化1)で表されるウレア化合物」において、
mが0、nが0及びXが「-NH-」である化合物は、本件特許発明1の「一般式(化1)で表されるウレア化合物」における、mが0及びXが「-NH-」である場合に該当する。
上記対比結果及び上記(ア)によれば、引用発明1の「感熱記録層」は、本件特許発明1の「感熱記録層」における、「該感熱記録層が下記一般式(化1)で表されるウレア化合物を少なくとも1種含有し」という要件を満たす。
イ 一致点及び相違点
上記アによれば、両者は下記(ア)の点で一致、下記(イ)の点で相違する。
(ア) 一致点
「支持体上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層と、感熱記録層上に保護層を設けた感熱記録体であって、該感熱記録層が下記一般式(化1)で表されるウレア化合物を少なくとも1種含有する、感熱記録体。
【化1】
27
89
0001430031000025.jpg
(式中、Xは-O-又は-NH-を表し、R1は、水素原子または-SO
2
-R
3
を表し、R
3
は、置換若しくは無置換のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、R
2
は、水素原子又はアルキル基を表し、mは0又は1を表す。)」
(イ) 相違点
一般式(化1)で表されるウレア化合物を少なくとも1種含有する感熱記録層上に設けられる保護層が、本件特許発明1は「2.5~11.5重量部(固形分)のリン酸エステル化合物を含有する」のに対し、引用発明1は、そのように特定されていない点。
ウ 判断
上記相違点について検討する。
(ア) 甲1には、保護層にリン酸エステル化合物を含有させることについて記載も示唆もない。
(イ) 次に、甲2技術事項について検討する。
上記(1)ウ(イ)によれば甲2には、保護層にアルキルリン酸エステル塩を含有させた甲2記載技術事項に係る感熱記録体が記載されている。しかしながら、甲2記載技術事項においては、感熱記録層に含有させる呈色剤(本件特許発明1の「(電子受容性)顕色剤」に相当)として、本件特許発明1でいう「一般式(化1)で表されるウレア化合物」に該当する「N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド」が具体例の一例として挙げられているに過ぎず(段落【0022】)、また、「アルキルリン酸エステルの含有割合は、保護層の全固形量中1.0~10質量%程度が好ましい」と特定されているにとどまる(段落【0042】)。ましてや、感熱記録層に上記「ウレア化合物」と、保護層に上記「アルキルリン酸エステル塩」とを併用する構成(以下「本件併用」という。)を示唆する記載はない。そうしてみると、甲2には、甲1発明において、相違点に係る本件特許発明1の構成を採用する動機づけとなり得る記載はない。また、甲2には甲2記載技術事項のほか、ヘッド摩耗性の評価結果(段落【0083】)も記載されているが、後記(カ)の本件特許発明1の効果(特に耐ヘッド粕付着性)との関係が明らかでないから、本件併用を示唆する記載といえない。
(ウ) さらに、甲6の記載事項について検討する。
上記(1)キによれば、甲6には、最表層である保護層中にリン酸エステル化合物を含有する感熱記録体が記載されている。しかしながら、甲6には、感熱記録層に含有させる顕色剤として、本件特許発明1でいう「一般式(化1)で表されるウレア化合物」を使用することが記載されていないし、リン酸エステル化合物の配合量についても、「最表層の塗工層全固形分100重量部に対して」、「より好ましくは0.2~15重量部である」との開示があるにとどまる(段落【0008】)。ましてや甲6には、本件併用を示唆する記載はない。そうしてみると、甲6にも、甲1発明において、相違点に係る本件特許発明1の構成を採用する動機づけとなり得る記載はない。
(エ) さらにまた、甲3~5及び甲7~12の記載(特に上記(1)エ~カ)を検討しても同様である。すなわち、上記(1)エによれば、甲3(特に【0082】)には、ヘッド粕抑制にも優れる医療診断用感熱記録体を用いた感熱記録におけるへッド粕付着に関する評価結果(【0083】)が開示されているにとどまり、本件併用を示唆する記載や示唆はない。また、上記(1)オによれば、甲4(特に【0004】、【0037】及び【0041】)には、ヘッドカス付着に関して、通常の用途に比べて数千メートルも連続印字されるなど使用条件が厳しいとされるラベル用紙や配送伝票用紙等の感熱記録紙におけるヘッドカス付着に関する評価結果(500m連続印字)が記載されているにとどまり、本件併用を示唆する記載や示唆はない。さらにまた、上記(1)カによれば、甲5(特に【0070】~【0071】及び【0081】~【0082】)には、
サーマルヘッド上にヘッド粕が蓄積することによって生じる印字障害がなく
、且つ経時での剥離力も安定し、また耐熱性に優れた剥離剤層を有している
感熱記録用粘着ラベルにおけるヘッド粕評価が記載されているにとどまり、
本件併用を示唆する記載や示唆はない。また、甲12の記載事項(上記(1)ス)をみても同様である。
そして、その他の甲号証(甲7~甲11)をみても、感熱記録体におけるバリア層の材料についての技術的事項が開示されているにとどまり、本件併用を示唆する記載や示唆がないことは明らかである。
したがって、甲3~5、甲7~12のいずれにも、甲1発明において、相違点に係る本件特許発明1の構成を採用する動機づけとなり得る記載はない。
(オ) 上記(ア)~(エ)によれば、甲1~甲12には、相違点に係る本件特許発明1の構成を採用する動機付けとなり得る記載はない。加えて、後記(カ)に示すように、各号証の記載からみても当業者が予測できない本件併用が奏する効果を踏まえると、甲1発明において、相違点に係る本件特許発明1の構成を採用することが設計事項であるともいえない。
(カ) 本件特許発明の効果について
本件特許明細書の段落【0058】【表1】には、感熱記録層の顕色剤として「一般式(化1)で表されるウレア化合物」を使用し、保護層にリン酸エステル化合物を含有させた実施例1~7が記載されている。
ここで、当該実施例1の保護層におけるリン酸エステル化合物の含有割合を計算すると、6.87%であり、同様に実施例2~7ついては、それぞれ、3.56%(実施例2)、12.9%(実施例3)、6.86%(実施例4~7)となる(当合議体注:保護層用塗工液の組成は、水酸化アルミニウム分散液(固形分50%)9.0部、カルボキシ変性ポリビニルアルコール水溶液(固形分10%)30.0部、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(固形分25%)4.0部、変性ポリアミン樹脂(固形分45%)2.2部、リン酸エステル化合物(固形分20%)3.5部であるから、作製された保護層におけるリン酸エステル化合物の固形分割合は、3.5×20%÷(9.0×50%+30.0×10%+4.0×25%+2.2×45%+3.5×20%)=6.87%となる。)。
そうしてみると、本件特許明細書に開示された実施例1、2、4~7の感熱記録体が、本件特許発明1の要件を満たす感熱記録体であるところ、本件特許明細書には、これらの感熱記録体は、いずれも、ベタ模様を200m印字した後に、サーマルヘッドヘの付着物が発生しないこと、ベタ模様を1000m印字した後でも、サーマルヘッドヘの付着物が発生しないか、付着物の堆積がわずかであることが記載されている(段落【0056】~【0058】【表1】を参照)。
一方、本件特許明細書の段落【0058】【表1】には、感熱記録層に顕色剤として「一般式(化1)で表されるウレア化合物」を使用しない比較例1、及び、保護層にリン酸エステル化合物ではなくステアリン酸亜鉛を含有させた比較例2~4(いずれも本件併用を採用していない例である。)が記載され、これらの感熱記録体は、いずれも、ベタ模様を200m印字した後に、サーマルヘッドヘわずかに付着物が堆積するか、サーマルヘッドヘの付着物が見られること、ベタ模様を1000m印字した後では、サーマルヘッドヘの付着物が見られることが記載されている(段落【0056】~【0058】【表1】を参照)。
加えて、本件特許明細書に開示された実施例2には、保護層にリン酸エステル化合物を3.56%含有させた感熱記録体(含有割合の計算方法については、上記のとおり)は、感熱記録体に印加エネルギー0.34mJ/dot、印字速度50mm/sec、-10°Cの環境下で印字を行なった際に、白飛びの発生がなく、騒音もほとんどないのに対し、比較例3には、保護層にステアリン酸亜鉛を3.56%含有させた感熱記録体は、印字を行なった際に白飛びが頻発し、騒音も大きいことが記載されている(段落【0056】~【0058】【表1】を参照)。
そうしてみると、本件特許発明1の「感熱記録層が下記一般式(化1)で表されるウレア化合物を少なくとも1種含有し」、かつ、「保護層が2.5~11.5重量部(固形分)のリン酸エステル化合物を含有する」感熱記録体は、いずれかの要件を満たさない感熱記録体に対して、印字を行なった際に白飛びの発生がなく、騒音もほとんどない点、及び、ベタ模様を1000m印字した後でも、サーマルヘッドヘの付着物が発生しない点で、顕著な効果を奏するといえる。そして、甲1~12に本件併用が記載も示唆されていない以上、上記効果は甲1~12の記載事項から、当業者が予測できた事項であるともいえない。また、他に予測できたことを認めるに足りる証拠もない。
(キ) 以上総合すると、甲1発明において、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
エ 申立人の主張について
(ア) 申立人は申立書28ページにおいて、甲1発明において、ロングラン印字の際の印字走行性の良好な感熱記録体を提供するために、保護層において従来の滑剤より印字走行性に優れるリン酸エステル化合物を使用することは当業者であれば容易に思いつく旨主張する。しかしながら、上記ウ(ア)~(オ)で述べたとおり、甲1には保護層にリン酸エステル化合物を含有させることが記載されていないし、甲2、甲6及びその他の甲号証を参酌しても、甲1発明において、相違点に係る本件特許発明1の構成を採用する動機づけとなり得る記載はない。また、この点について、申立人は、ロングラン印字が自明の課題(申立書27ページ8~16行)であって、甲2には、本件併用を示唆する記載がある旨主張するが(申立書28ページ5~9行)、上記ウ(イ)で述べたとおり、一般式(1)で表されるウレア化合物は甲2の段落【0022】において多数列挙されている化合物のうちの1つにすぎないから、当該主張は採用できない。
(イ) 申立人は申立書29ページにおいて、リン酸エステル化合物の含有量について
本件特許発明1の要件を満たす感熱記録体と、本件特許発明1の要件を満たさない感熱記録体とで、効果の違いはほとんど見られないから
、リン酸エステル化合物の含有量を2.5~11.5重量部とすることで格別顕著な効果を奏しているとは解されず、当業者が適宜調整し得た事項である旨主張する。しかしながら、上記ウ(カ)で述べたとおり、200m印字の結果と1000m印字の結果とでは差異が見られるところ、1000m印字における効果が甲1~12の記載事項から、当業者が本件特許発明1の構成(本件併用)が奏する効果として予測できたとはいえない。そうすると、本件特許明細書においては、少なくとも本件特許発明1の要件を満たす実施例1、2、4~7の感熱記録体は、本件特許発明1の要件を満たさない比較例1~4(特にリン酸エステル化合物を採用しさえすればロングラン印字に係る効果(特に1000m印字の効果)が得られるとはいえないことが理解できる比較例1参照。)の感熱記録体よりも、有利な効果を奏しているといえ、このような効果は、当業者が予測できない顕著なものと評価すべきものである。そして、各甲号証に記載された技術事項を参酌しても、上記効果が当業者にとって予測できたものといえないことは明らかである。
そうすると、上記主張は、その前提(上記下線部)に誤りがあるから採用できない。
(ウ) 申立人は申立書30ページにおいて、本件特許発明の優先日(出願時)の技術水準及び技術常識に基づけば、リン酸エステル化合物を含有する本件特許発明1の効果は、当業者が当然に予測できる程度のものである旨主張する。しかしながら、上記ウ(カ)で述べたとおり、本件特許発明1の効果は、当業者が当然に予測できる程度のものとはいえない。
オ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 本件特許発明2~8について
本件特許の特許請求の範囲の請求項2~8は、いずれも、請求項1を引用するものであって、本件特許発明2~8は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。そうすると、上記(2)のとおり、本件特許発明1が、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件特許発明2~8も、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4) 申立理由1-1及び1-2についてのまとめ
上記のとおり、本件特許発明1~8は、特許法29条の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許法113条2号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1~8に係る特許は、申立理由1-1及び1-2によって取り消すことはできない。
(1) 実施可能要件の判断基準
本件特許発明1~8は、上記第2のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号)、例えば、明細書等にその物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができるのであれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件を満たすといえる。
(2) 実施可能要件についての判断
本件特許明細書の段落【0008】~【0020】には、「「一般式(化1)で表されるウレア化合物」の具体的な材料、段落【0023】~【0028】には、ロイコ染料の具体的な材料、段落【0036】には、保護層が含有するリン酸エステル化合物の具体的な材料、段落【0031】、【0037】~【0038】には、保護層のバインダー及び架橋剤の具体的な材料、段落【0039】~【0042】には、バックコート層の具体的な材料が、それぞれ記載され、段落【0046】~【0058】【表1】には、上記材料を使用して作製した感熱記録体の実施例が開示されている。
これらの記載に接した当業者であれば、本件特許発明1~8の感熱記録体を生産することができるといえる。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1~8について、当業者が実施できる程度に明確且つ十分に記載されており、実施可能要件を満たす。
(3) 申立人の主張について
申立人は、申立書の35~37ページにおいて、甲12の記載に基づき、印字走行性の効果は保護層の有無に依らないことが理解できること、感熱記録層中の第1のウレアの含有量が印字走行性に与えること、本件特許明細書には、第1のウレア化合物の含有量が感熱記録層の全固形分100重量部に対して19.3重量部、リン酸エステル化合物の含有量が保護層の全固形分100重量部に対して6.86重量部である実施形態が記載されているのみであるため、本件特許明細書からは、
第1のウレア化合物の含有量がいずれの含有量であっても同様の良好な印字走行性が得られることは推認することができないこと
などから、本件特許発明1~8を実施できるように明確かつ十分に記載されたものではないと主張している。
しかしながら、実施可能要件については、上記(1)の判断基準に従って判断されるものであって、申立人のいずれの主張も、上記(2)の判断に影響するものではない。特に、申立人の上記下線部の主張は、要するに第1のウレア化合物の含有量にかかわらず同様の効果が奏されることを求めるものと解されるが、上記(1)の判断基準に照らせば、独自の見解というほかなく採用できない。
(4) 申立理由2についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法113条4号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1~8に係る特許は、申立理由3によって取り消すことはできない。
(1) サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
(2) サポート要件についての判断
本件特許明細書の【0004】の記載からみて、本件特許発明が解決しようとする課題(以下「発明の課題」という。)は、「ロングラン印字の際の印字走行性(特に、耐ヘッドカス付着性)が良好な感熱記録体を提供すること」と認められる。
そして、本件特許明細書の段落【0008】~【0020】、段落【0036】及び段落【0046】~【0058】【表1】に記載された実施例及び比較例の評価結果に関する記載に基づけば、当業者は、請求項1~8に記載された発明特定事項を備える本件特許発明が、「感熱記録層が下記一般式(化1)で表されるウレア化合物を少なくとも1種含有し」、「保護層が」「リン酸エステル化合物を含有する」との特定事項を満たすこと(本件併用を採用すること)により、「ロングラン印字の際の印字走行性(特に、耐ヘッドカス付着性)が良好な」、「感熱記録体」を提供する、すなわち、発明の課題を解決できるものと認識できるというべきである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
(3) 申立人の主張について
申立人は、申立書の37~38ページにおいて、本件特許明細書からは、第1のウレア化合物の含有量が、感熱記録層の全固形分100重量部に対して40重量部以上のように多くなった場合など
いずれの含有量であっても同様の良好な印字走行性が得られること
は推認することができないため、本件特許発明1で規定する発明特定事項を満たしさえすれば、本件特許発明の課題を解決できるとはいえない旨主張している。しかしながら、サポート要件については、上記(1)の判断基準に従って判断されるものであって、本件併用によって効果が奏されることは上記(2)、さらには上記1(2)ウ(カ)で述べたとおりである。特に、申立人の上記下線部の主張は、要するに第1のウレア化合物の含有量にかかわらず同様の効果が奏されることを求めるものと解されるが、本件併用の採否によって発明の課題が解決できるか否かに明らかな差が生じることが本件特許明細書の開示(特に実施例及び比較例の対比)によって明らかにされているから、同様の効果を求める上記主張は独自の見解であって採用できない。
(4) 申立理由3についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法113条4号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1~8に係る特許は、申立理由4によって取り消すことはできない。
請求項1~8に係る特許は、いずれも、申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。