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Trademark Appeal Case

特許異議申立の進歩性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025700868
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7641090号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7641090号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし15に係る特許についての出願は、令和2年4月3日の出願であって、令和7年2月26日にその特許権の設定登録(請求項の数15)がされ、同年3月6日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年9月4日に特許異議申立人 高山 さち子(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし15)がされたものである。

第2 本件特許発明

本件特許の請求項1ないし15に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】

アントシアニン含有果汁含有飲料であって、

エンジュ由来の抽出物と、

アントシアニン含有混濁果汁と、

を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

【請求項2】

アスコルビン酸の含有量が60ppm以下である、請求項1に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

【請求項3】

アントシアニンの含有量が0.5~10ppmである、請求項1または2に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

【請求項4】

透過率が93.0~99.5である、請求項1~3のいずれか1項に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

【請求項5】

前記エンジュ由来の抽出物の含有量が0.005~0.1質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

【請求項6】

前記アントシアニン含有混濁果汁の含有量が0.1~5質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

【請求項7】

前記アントシアニン含有果汁の含有量が0.1~10質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

【請求項8】

pHが2.0~5.0である、請求項1~7のいずれか1項に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

【請求項9】

糖度が2.0~15.0である、請求項1~8のいずれか1項に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

【請求項10】

酸度が0.05~0.5である、請求項1~9のいずれか1項に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

【請求項11】

糖酸比が4~300である、請求項1~10のいずれか1項に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

【請求項12】

ポリフェノールの含有量が5.0~40.0ppmである、請求項1~11のいずれか1項に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

【請求項13】

前記ポリフェノールの含有量に対するアントシアニンの含有量の比率が0.05~0.3である、請求項12に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

【請求項14】

容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の製造方法であって、

エンジュ由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を配合する工程を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の製造方法。

【請求項15】

容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色抑制方法であって、

エンジュ由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を配合する工程を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色抑制方法。」

第3 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要等

令和7年9月4日に特許異議申立人から提出された特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。

1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性)

本件特許発明1ないし15は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいてその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 申立理由2(実施可能要件)及び申立理由3(サポート要件)

本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(1)アントシアニン混濁果汁について

ア 本件特許発明1には、「アントシアニン含有混濁果汁」との記載がある。また本件特許明細書の[0016]には、「アントシアニン含有混濁果汁とは、アントシアニンを含有する果汁の清澄化処理していないものをいい、果実に由来する混濁成分や不溶成分などの固形物を含んだ果汁である。」と定義されているに留まり、混濁の定義になり得る記載として、例えば、[0019]には、「アントシアニン含有混濁果汁の透過率はストレート果汁で、上限が20以下であることが好ましく、15以下であることがさらに好ましく、10以下であることが特に好ましい」との記載がある。しかし、実施例で用いた赤ブドウ混濁果汁については、「赤ブドウ混濁果汁(糖度11%、日本果実加工社製)」との記載があるに留まり、その混濁の程度については、何ら記載がない。このような明細書の記載からは、混濁の程度がどの程度の果汁を用いれば本件特許発明の課題が解決できるのか分からないし、いかなる濁度の混濁果汁を用いても本件特許発明の課題が解決されるとは理解できない。よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が過度の試行錯誤なく、実施できるように記載されたものであるとは言えない。また、本件特許発明1の全範囲において、本件特許の課題が解決されるとは理解できない。本件特許2~15についても同様である。

従って、本件特許発明1~15は、実施可能要件及びサポート要件を充足しない。

イ 本件特許の実施例には、アントシアニン含有混濁果汁の含有量が0.11~2.70質量%である処方が示されているに過ぎず(試験区2及び11)、本件特許発明1の全範囲において、本件特許の課題が解決されるとは理解できない。

また、本件特許発明6には、「アントシアニン含有混濁果汁の含有量が0.1~5質量%である」との記載があるが、これについても同様である。

従って、本件特許発明1~15は、サポート要件を充足しない。

(2)エンジュ由来の抽出物について

ア 本件特許発明1には、「エンジュ由来の抽出物」との記載があるところ、本件特許明細書[0027]には、「抽出物とは、マメ科植物を抽出、搾汁、酵素処理等をした結果得られるものであって、エキス或いはピューレなどを含むものであり、市販品を使用しても良い。」との記載があるに留まる。また、実施例においても使用したエンジュエキスについては、「エンジュエキス(エンジュHJK-4507、東洋精糖社製)」との記載があるに留まり、その詳細は不明である。

抽出溶媒によって抽出される成分が異なること、抽出工程(例えば、温度、時間、pH等)の違いや精製工程の有無によっても抽出される成分が異なることは当該技術分野における技術常識であり、いかなるエンジュ由来の抽出物であっても、本件特許の課題が解決されるとは理解できない。よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が過度の試行錯誤なく、実施できるように記載されたものであるとは言えない。また、本件特許発明1の全範囲において、本件特許の課題が解決されるとは理解できない。本件特許2~15についても同様である。

従って、本件特許発明1~15は、実施可能要件及びサポート要件を充足しない。

イ 本件特許発明1には、「エンジュ由来の抽出物」の含有量については何ら記載がない。

しかしながら、本件特許の実施例には、エンジュ由来の抽出物の含有量が0.01~0.05質量%である処方が示されているに過ぎず(試験区8及び9)、本件特許発明1の全範囲において、本件特許の課題が解決されるとは理解できない。

また、本件特許発明5には、「エンジュ由来の抽出物の含有量が0.005~0.1質量%である」との記載があるが、これについても同様である。

さらに、上記したとおり、実施例において使用したエンジュエキスについては、「エンジュエキス(エンジュHJK-4507、東洋精糖社製)」との記載があるに留まるところ、エキスの形状によっては(水分を含む液体状のものであるのか、乾燥した固体状のものであるのか等)、必要となる添加量は異なると推測されるものの、実施例において使用したエンジュエキスの詳細は不明であるから、いかなるエンジュ由来の抽出物であっても、本件特許発明5に記載の数値範囲において、本件特許発明の課題が解決されるとは理解できない。

従って、本件特許発明1~15は、サポート要件を充足しない。

(3)両成分の含有量や比率について

本件特許発明1は、「エンジュ由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁とを含む」ことが特定されているのみであって、両成分の含有量や比率については何ら特定されておらず、あらゆる含有量及び比率の飲料が包含される。実施例においては、エンジュ由来の抽出物及びアントシアニン含有混濁果汁の含有量について、それぞれ0.02質量%及び1.02質量%(試験区1)、0.02質量%及び2.07質量%(試験区2)、0.02質量%及び0.45質量%(試験区3)、0.02質量%及び1.13質量%(試験区7)、0.02質量%及び0.23質量%(試験区8)、0.05質量%及び1.02質量%(試験区9)、0.01質量%及び1.02質量%(試験区10)、0.02質量%及び1.02質量%(試験区11)、並びに0.02質量%及び0.11質量%(試験区12)含む飲料が開示されているのみであるから、両成分の含有量及び比率がいかなる場合であっても、本件特許発明の課題が解決されるとは理解できない。本件特許2~15についても同様である。

従って、本件特許発明1~15は、サポート要件を充足しない。

(4)試験区11について

本件特許の実施例には、試験区11について、光照射後の果実のフレッシュ感が1(比較対照のサンプルと比べ、果実のフレッシュ感が感じられない。問題あり。)であったことが示されている。

本件特許明細書[0017]には、「本明細書において「アントシアニン含有果汁の自然な味わい」とは、上記の果汁の自然な味わいを意味し、例えば、「果汁の持つ甘みと酸味のバランス」や「果汁のフレッシュ感」等を含む。」との記載がある。本件特許の課題は、[0007]にも記載されているとおり、「アントシアニン含有果汁の自然な味わいを十分に有しながら、内容液の光への曝露や経時による劣化に起因する退色を抑制した容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料およびその製造方法、並びに容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料における退色抑制方法を提供すること」であるから、試験区11は、本件特許発明の課題が解決されておらず、本件特許発明1~15は、本件特許発明の課題が解決されない態様を包含している。

従って、本件特許発明1~15は、サポート要件を充足しない。

3 証拠方法

甲第1号証:再公表特許2010/110328号公報

甲第2号証:最新・ソフトドリンクス、平成15年9月30日公開

甲第3号証:日本食品工業学会誌、1989年36巻1号p.71-77、ブドウ果汁の品質と製造に関する研究 構成色素の安定性、品質管理と製造技術の改善、1989年1月15日公開

甲第4号証:Journal of Food Science Volume50, Issue4, July 1985, Pages 901-904, Stabilization of Anthocyanins of Blood Orange Fruit Juice、1985年7月公開

甲第5号証:Journal of Food Quality 35 (2012)272-282, Effects of Clarification and Storage on Anthocyanins and Color of Pomegranate Juice Concentrates、2012年7月10日公開

証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

第4 申立理由1(甲1に基づく進歩性)について

1 証拠に記載された事項等

(1)甲1に記載された事項等

ア 甲1に記載された事項

甲1には、「水易溶性イソクエルシトリン組成物」に関しておおむね次の事項が記載されている。下線は予め付されたものと当審で付したものである。他の証拠についても同様。

・「【背景技術】

【0003】

ルチンやイソクエルシトリンなどのフラボノール誘導体は、一般に抗酸化作用およびラジカル消去活性がある。このことから、フラボノール誘導体は、酸化防止剤、退色防止剤または香味劣化防止剤などの食品添加物として使用される。また、フラボノール誘導体は、フリーラジカルや活性酸素等が関与する疾病予防に有効であることが報告されている。

【0004】

しかしながら、

一般的に、ルチンを始めとするフラボノール誘導体は水への溶解性が悪く、また水溶液中での安定性が悪いという問題がある。フラボノール誘導体は、酸性水溶液中、あるいは、フラボノール誘導体の溶解性が高くなるアルカリ性水溶液中においても、高濃度液では経時的には不溶物となり沈殿を生じることがある。フラボノール誘導体の溶解安定性が悪いことより、食品としての外観が悪くなり、食品として摂取することが困難となる。

・「【発明が解決しようとする課題】

【0008】

上記のように、ルチン等の水難溶性のフラボノール誘導体をシクロデキストリンで包接化することによって水溶性向上に一定の効果があることが知られている。しかしながら、この包接化方法によって増加する水溶性は、ルチンの場合せいぜい10~15倍程度であり、さらに水溶性を向上させるための工夫が必要と考えられる。

【0009】

本発明は、

水難溶性イソクエルシトリンについて、その水溶性を格段に向上させるための方法を提供するとともに、当該水溶性が格段に向上されてなる水易溶性イソクエルシトリン組成物を提供することを目的とする。

さらに、当該水易溶性イソクエルシトリン組成物の各種用途を提供することを目的とする。

【0010】

本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討したところ、イソクエルシトリン1molに対してγ-シクロデキストリンを2~10molの割合で包接化させて得られたイソクエルシトリン組成物の水溶性が、包接前のイソクエルシトリンに比べて、イソクエルシトリン換算で120倍以上も向上することを見出した。また、この水易溶性イソクエルシトリン組成物は、イソクエルシトリンに比べて酸性飲料中での耐光性(分解抵抗性)に優れており、しかもこの組成物を配合した飲料は、酸性~アルカリ性の別に関わらず、低温~60°Cの条件で保存しても沈殿や

濁りなどの不都合を生じることない

こと、つまり、水易溶性イソクエルシトリン組成物を用いることにより、イソクエルシトリンの保存安定性に優れた水性食品を調製することができることを確認した。さらに、本発明者らは、この水易溶性イソクエルシトリン組成物は、イソクエルシトリンそのものよりも体内吸収性に優れていることを確認した。」

・「【発明の効果】

【0065】

イソクエルシトリン1molに対してγ-シクロデキストリンを2~10mol、好ましくは3~8molの割合で包接化した本発明のイソクエルシトリン組成物は、包接前のイソクエルシトリンに比べて、水溶性を120倍以上、好ましくは140倍以上にも向上させることができる。また、この水易溶性イソクエルシトリン組成物は、イソクエルシトリンに比べて酸性飲料中での耐光性(分解抵抗性)に優れており、しかもこの組成物を配合した飲料は、酸性~アルカリ性の別に関わらず、低温~60°Cの条件で保存しても沈殿や

濁りなどの不都合を生じることなく

、保存安定性に優れた水性食品を調製することができる。さらに、この水易溶性イソクエルシトリン組成物は、イソクエルシトリンそのものよりも退色抑制作用、香味劣化抑制作用および体内吸収性に優れている。」

・「【0095】

本発明が対象とする可食性組成物としては、経口医薬品(ドリンク、シロップなど)、医薬部外品(例えば、口内清涼剤など)、健康食品(ドリンク、タブレットなど)、保健機能食品(栄養機能食品、特定保健用食品など)および飲食物を挙げることができる。例えば飲食物としては、制限されないものの、乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、アルコール飲料、粉末飲料、水希釈して飲用する濃縮飲料、コーヒー飲料、しるこ飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、麦茶飲料、ウーロン茶飲料、ハト麦茶飲料、ソバ茶飲料、プーアール茶飲料などの飲料類;・・・(略)・・・を挙げることができる。」

・「【0109】

本発明の退色抑制剤が対象とする色素には、合成色素及び天然色素の別を問わず、広範囲の色素が含まれる。

合成色素には、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号、青色2号、緑色3号等のタール色素;三二酸化鉄や二酸化チタンなどの無機顔料;ノルビキシンNa・K、銅クロロフィル、銅クロロフィリンNa・K等の天然色素誘導体;並びにβ-カロチン、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル及びリボフラビン5‘-リン酸エステルNa等の合成天然色素などの合成着色料が含まれる。

【0110】

天然色素には、

アナトー色素、クチナシ黄色素、デュナリエラカロチン、ニンジンカロチン、パーム油カロチン、マリーゴールド色素、トマト色素及びパプリカ色素等のカロチノイド系色素;

赤キャベツ色素、赤ダイコン色素、シソ色素、ハイビスカス色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、紫イモ色素、紫コーン色素、エルダーベリー色素及びボイセンベリー色素等のアントシアニン系色素

;カカオ色素、コウリャン色素、シタン色素、タマネギ色素、タマリンド色素、カキ色素、カロブ色素、カンゾウ色素、スオウ色素、ベニバナ赤色素及びベニバナ黄色素等のフラボノイド系色素;アカネ色素、コチニール色素、シコン色素及びラック色素等のキノン系色素;クロロフィリン、クロロフィル及びスピルリナ色素等のポルフィリン系色素;ウコン色素等のジケトン系色素;赤ビート色素等のベタシアニン系色素;紅麹色素等のアザフィロン系色素;その他、紅麹黄色素、カラメル、クチナシ青色素、クチナシ赤色素、金、銀、アルミニウム系色素が含まれる。本発明の退色抑制剤は、好ましくは天然色素を対象とすることができ、より好ましくは上に掲げる各種の天然色素、特にカロチノイド系色素、アントシアニン系色素、フラボノイド系色素、キノン系色素、アザフィロン系色素およびクチナシ青色素

などの天然色素を含有するものに広く適用することができ、これらの色素の退色を抑制若しくは防止するのに有用である。

【0111】

本発明の退色抑制剤が適用される具体的な製品(着色製品)としては、上記色素を含有するものであれば特に制限されないが、例えば色素製剤、飲食物(食品)、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料等を挙げることができる。

好ましくは色素製剤及び飲食物(食品)である。これらの製品(着色製品)に対する発明の退色抑制剤の用法については、下記(4-2)において詳述する。」

・「【実施例】

【0172】

以下、本発明の内容を以下の実験例および実施例を用いて具体的に説明する。但し、これらの実施例などは本発明の一態様に過ぎず、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。なお、特に記載のない限り「%」は「質量%」意味するものとする。また、

IQCはイソクエルシトリン

、γ-CDはγ-シクロデキストリン、IQC-CDは、イソクエルシトリンのシクロデキストリン包接化物を意味するものとする。また、

文中の「*」印を付した製品は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品であることを、文中の「※」印を付した名称は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。

【0173】

調製例1 IQCの調製

マメ科植物であるエンジュのつぼみ250g

を2500mlの熱水(95°C以上)に2時間浸漬した後、濾別した濾液を「第一抽出液」として取得した。一方、濾別した残渣を更に熱水に浸漬して抽出し、「第二抽出液」を得た。これらの第一および第二抽出液を合わせ、30°C以下に冷却して沈殿した成分を濾別し、沈殿部を水洗、再結晶、および乾燥することにより、純度95%以上の

ルチン22.8gを得た。

【0174】

このルチン20gを水400mlに分散し、pH調整剤を用いてpH4.9に調整した。これにナリンギナーゼ(天野エンザイム(株)、商品名「ナリンギナーゼ“アマノ”」、3,000U/g)を0.12g添加して反応を開始し、これを72°Cで24時間保持した。その後、反応液を20°Cに冷却し、冷却によって生じた沈殿物を濾別した。得られた沈殿物(固形分)を水洗した後、乾燥し、

IQC13.4gを回収した。

【0175】

実施例1 水易溶性IQC組成物の調製

IQC(調製例1のものを使用、以下同じ)とγ-CD(WACKER CHEMICAl社製、以下同じ)を1:5のmol比で混合し(合算質量15g)、これに水道水200mlを添加して、約90°Cに加温して15分間撹拌し、固形成分を溶解した。これを、濾紙を用いて濾過した後、エバポレーターで濃縮乾燥した。得られた乾燥固形物をミキサーで粉末化して、粉末状のIQC組成物(14g)を調製した。」

・「【0198】

実験例4 退色抑制効果の評価

下記表5に記載する各種の色素を用いて、IQCおよびIQC組成物の退色抑制効果を評価した。

【0199】

具体的には、下記処方の色素含有酸性飲料を調製し、これに調製例1のIQC

、実施例1で調製したIQC/γ-CD包接物製剤(IQC:γ-CD=1:5)

それぞれ

IQCの最終濃度が0.01%となるように添加した。

また同様にγ-CD(WACKER CHEMICAL社製)の最終濃度が0.14%となるように添加した飲料を調整した。

【0200】

<色素含有酸性飲料の処方>

1.砂糖 5.5 (%)

2.果糖ブドウ糖液糖 5.5

3.クエン酸(無水) 0.08

4.クエン酸3ナトリウム pH調整(pH3.1)

5.色素 表5

水にて合計100%とした。

【0201】

【表5】

75

144

0001430046000001.jpg

【0202】

これに、蛍光灯(BIOTRON LH 300、NK System製)または紫外線フェードメーター(紫外線ロングライフフェードメーター FAL-3、スガ試験機株式会社製)を、それぞれ表6に記載する時間照射し、照射前と照射後の吸光度を測定し、照射後の色素残存率(%)を算出した。また対照試験として、色素含有酸性飲料に何も添加せずに(無添加)、上記と同様に、紫外線フェードメーターまたは蛍光灯で照射して、照射後の色素残存率(%)を算出した。

【0203】

【表6】

76

139

0001430046000002.jpg

【0204】

蛍光灯照射による結果を表7に、紫外線フェードメーター照射による結果を表8にそれぞれ示す。

【0205】

【表7】

87

138

0001430046000003.jpg

【0206】

【表8】

81

138

0001430046000004.jpg

【0207】

この結果からわかるように、

IQCは単独で退色抑制効果がある

が、これをγ-CDの包接物とすることにより、その退色抑制効果を向上させることができることが確認された。」

イ 甲1に記載された発明

甲1に記載された事項を、特に【0110】及び【0198】ないし【0207】に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1物発明」、「甲1製法発明」及び「甲1方法発明」という。)が記載されていると認める。

<甲1物発明>

「表5に記載する赤キャベツ色素、ブドウ果汁色素、紫トウモロコシ色素、エルダーベリー色素又は紫イモ色素等のアントシアニン系色素を用いて、下記処方の色素含有酸性飲料を調整し、これにマメ科植物であるエンジュのつぼみから得たルチンを酵素処理して得られたIQC(イソクエルシトリン)を最終濃度が0.01%となるように添加した色素含有酸性飲料。

<色素含有酸性飲料の処方>

1.砂糖 5.5 (%)

2.果糖ブドウ糖液糖 5.5

3.クエン酸(無水) 0.08

4.クエン酸3ナトリウム pH調整(pH3.1)

5.色素 表5

水にて合計100%とした。」(当審注:「表5」については、上記ア参照。以下、同様。)

<甲1製法発明>

「表5に記載する赤キャベツ色素、ブドウ果汁色素、紫トウモロコシ色素、エルダーベリー色素又は紫イモ色素等のアントシアニン系色素を用いて、下記処方の色素含有酸性飲料を調整し、これにマメ科植物であるエンジュのつぼみから得たルチンを酵素処理して得られたIQC(イソクエルシトリン)を最終濃度が0.01%となるように添加する色素含有酸性飲料の製造方法。

<色素含有酸性飲料の処方>

1.砂糖 5.5 (%)

2.果糖ブドウ糖液糖 5.5

3.クエン酸(無水) 0.08

4.クエン酸3ナトリウム pH調整(pH3.1)

5.色素 表5

水にて合計100%とした。」

<甲1方法発明>

「表5に記載する赤キャベツ色素、ブドウ果汁色素、紫トウモロコシ色素、エルダーベリー色素又は紫イモ色素等のアントシアニン系色素を用いて、下記処方の色素含有酸性飲料を調整し、これにマメ科植物であるエンジュのつぼみから得たルチンを酵素処理して得られたIQC(イソクエルシトリン)を最終濃度が0.01%となるように添加する色素含有酸性飲料の退色抑制方法。

<色素含有酸性飲料の処方>

1.砂糖 5.5 (%)

2.果糖ブドウ糖液糖 5.5

3.クエン酸(無水) 0.08

4.クエン酸3ナトリウム pH調整(pH3.1)

5.色素 表5

水にて合計100%とした。」

(2)甲2に記載された事項

甲2にはおおむね次の事項が記載されている。

・「ブドウ果汁については、一部の国産果汁を除いて透明果汁で取引されている。

ブドウに含まれる酸の主体である酒石酸は果汁中でカリウムと結合して、酒石(酒石酸モノカリウム)と呼ばれる結晶が析出することで、濁りを生じることがある。

このため、濃縮果汁を数ヶ月低温で貯蔵し、

酒石を析出させてから濾過によりこれを除去する

工程がとられる。」(第235ページ第3ないし7行)

(3)甲3に記載された事項

甲3にはおおむね次の事項が記載されている。

・「2. ブドウ果汁の酒石安定化に基づく品質管理

1) 果汁入り清涼飲料の色調変化

・・・(略)・・・酒石析出による濁度付与の複合効果であることを明らかにした.

2) ブドウ果汁の酒石安定化条件

前項のように

ブドウ果汁特有の問題として,他の果実加工製品には見られない酒石,すなわち酒石酸水素カリウムの析出・沈降が挙げられる.

酒石はそれ自体無害の白色結晶物であるが,

アントシアニン色素などポリフェノール物質を吸着して沈降する

ため,酒石の生成した製品は消費者から忌避され,しばしば苦情の対象となっている.このため

ブドウ果汁製造工程における酒石除去工程は不可欠であり,冷蔵による酒石沈降の促進,数回にわたる珪藻土濾過の実施

など多大な労力と時間を要している.」(第74ページ左欄第6ないし26行)

(4)甲4に記載された事項

甲4にはおおむね次の事項が記載されている。甲4は外国語文献のため特許異議申立人による訳文を摘記する。

・「

着色オレンジ果汁の赤色の安定性は

、マイクロ波殺菌、並びにそれぞれ弱酸性及び抗酸化剤である

酒石酸

及びグルタチオン

の添加により、やや改善された。

アントシアニン、並びにルチン及びカフェ酸などのフェノール化合物の複合体の形成により、最高の安定性が得られた。」(第901ページ左欄ABSTRACT欄)

・「

198

129

0001430046000005.jpg

a

ジュースを無水エタノールで希釈後(15→50mL)。吸光度は重複測定の平均値である。

b

B,安息香酸ナトリウム(40mg/100mL);T,酒石酸.G:グルタチオン(10mg/100mL);A,アスコルビン酸(100mg/100mL);R,ルチン(50mg/100mL);C,カフェ酸(50mg/100mL)」(第902ページ上欄)

・「図4-酒石酸(T)の濃度の違いによる、グルタチオンとの併用でのオレンジジュースの色の安定性への影響:○,T=150mg/100mL;●,T=250mg/100mL;■,T=500mg/100mL;------,基準ジュース」(第903ページ左上のFig.4の下)

・「300mgの酒石酸、100mgのグルタチオン、及び100mgのアスコルビン酸を100mLのジュース中に添加した予備試験(表2、シリーズ番号5、6、及び7)の結果、

酒石酸

及びグルタチオン

は色を部分的に安定化させた

が、アスコルビン酸による変化は無視できる程度に小さかった。」(第903ページ左欄末行ないし右欄第5行)

・「

酒石酸の効果は

、初期の色増加、すなわちpHによる色の変化(表2)によるものもあるが、

吸光度値(図4)からは、実際の安定化も認められた。

」(第903ページ右欄下から2行ないし第904ページ左欄第2行)

・「

ルチン(50mg/100mL)

又はカフェ酸(50mg/100mL)

の存在下では、t

1/2

値はそれぞれ75日及び90日であった(図5)。これらのジュースの色安定性の向上

は、アントシアニンが水又は他の剤との求核的反応にさらされる可能性が低下したためと考えられ、これはより安定した分子間複合体の形成(Sweeny et al., 1981)によるものと考えられる(図6参照)」(第904ページ左欄第16ないし23行)

・「

酒石酸

及びグルタチオン

を添加した

、又はアントシアニン複合体を形成させた殺菌

ジュースに関する結果は、モロオレンジジュースの赤色の商業的安定性を改善する方法について、いくつかの知見をもたらした。

複合体化が最も有効であったが、pH、酸素、及び抗酸化物質も考慮すべきである。」(第904ページ左欄CONCLUSION欄)

(5)甲5に記載された事項

甲5にはおおむね次の事項が記載されている。甲5は外国語文献のため特許異議申立人による訳文を摘記する。

・「果皮付きのザクロを丸ごとジュースに加工し、濃縮した。低温清澄化及び保存温度(-23°C、5°C、12°C、及び20°C)が

アントシアニン(ACN)

、ACN組成、色に及ぼす影響を測定した。

ザクロ濃縮果汁(PJC)

中の主なACNは、シアニジン-3,5-ジグルコシド(47.9%)、デルフィニジン-3,5-ジグルコシド(23.2%)、及びシアニジン-3-グルコシド(18.5%)であった。ジグルコシドはモノグルコシドよりも保存中に安定であった。ACNの分解及び重合体色素の形成は一次反応モデルに当てはまった。保存温度が高いほど、PJCのACN分解速度及び重合体色素の形成速度は増加した。保存中のACN分解及び重合体色素の形成の間に良好な相関(r=-0.988)が見られた。

未清澄果汁から得られたPJCは、清澄果汁から得られたPJCよりも、保存中のACN分解速度及び重合体の色素形成速度が遅かった。

」(第272ページAbstract欄)

・「

すべての保存温度において、未清澄PJCのACN分解速度は、清澄PJCのそれよりも遅かった

(表2)。」(第278ページ左欄最終段落)

・「ゼラチンで清澄化するとポリフェノールが大幅に失われるため、

ゼラチンで清澄化したPJCの保存中の色安定性は、清澄化していないPJCの保存中の色安定性よりもはるかに低かった。

」(第278ページ右欄第2段落)

2 本件特許発明1について

(1)対比

本件特許発明1と甲1物発明を対比する。

甲1物発明における「マメ科植物であるエンジュのつぼみから得たルチンを酵素処理して得られたIQC(イソクエルシトリン)」は本件特許発明1における「エンジュ由来の抽出物」に相当する。

甲1物発明における「表5に記載する赤キャベツ色素、ブドウ果汁色素、紫トウモロコシ色素、エルダーベリー色素又は紫イモ色素等のアントシアニン系色素を用いて、下記処方の色素含有酸性飲料を調整し」た「色素含有酸性飲料」は本件特許発明1における「アントシアニン含有果汁飲料であって」「アントシアニン含有混濁果汁」「を含む容器詰めアントシアニン含有果汁含有飲料」と、「アントシアニン含有飲料」という限りにおいて一致する。

そうすると、両者は次の点で一致する。

<一致点>

「アントシアニン含有飲料であって、

エンジュ由来の抽出物、

を含む、アントシアニン含有飲料。」

そして、両者は次の点で相違する。

<相違点1>

「アントシアニン含有飲料」に関して、本件特許発明1においては「アントシアニン含有果汁飲料であって」「アントシアニン含有混濁果汁」「を含む容器詰めアントシアニン含有果汁含有飲料」と特定されているのに対し、甲1物発明においては「表5に記載する赤キャベツ色素、ブドウ果汁色素、紫トウモロコシ色素、エルダーベリー色素又は紫イモ色素等のアントシアニン系色素を用いて、下記処方の色素含有酸性飲料を調整し」た「色素含有酸性飲料」と特定されている点。

(2)判断

相違点1について検討する。

甲1物発明における「赤キャベツ色素、ブドウ果汁色素、紫トウモロコシ色素、エルダーベリー色素又は紫イモ色素等のアントシアニン系色素」は、甲1の【0172】及び【0201】によると、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品であり、「混濁果汁」に含有されているものではない。

また、甲1の【0111】には「本発明の退色抑制剤が適用される具体的な製品(着色製品)としては、上記色素を含有するものであれば特に制限されないが、例えば色素製剤、飲食物(食品)、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料等を挙げることができる。」と記載されているものの、該箇所には、色素を含有するものとして、「混濁果汁」は記載されていない。

さらに、甲1の他の箇所及びいずれの証拠にも、甲1物発明における「赤キャベツ色素、ブドウ果汁色素、紫トウモロコシ色素、エルダーベリー色素又は紫イモ色素等のアントシアニン系色素」を「混濁果汁」に含有させたものとすることは記載も示唆もされていないし、「赤キャベツ色素、ブドウ果汁色素、紫トウモロコシ色素、エルダーベリー色素又は紫イモ色素等のアントシアニン系色素」を含有させた「混濁果汁」を甲1物発明に添加することも記載も示唆もされていない。

むしろ、甲1の【0004】及び【0010】の記載によると、濁りは不都合であり、食品としての外観を悪くするものであるから、甲1物発明においては、「混濁果汁」を用いることに対して阻害要因があるともいえる。

したがって、甲1物発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

そして、本件特許発明1は「アントシアニン含有果汁の自然な味わいを有し、且つ内容液の光への曝露や経時による劣化に起因する退色を抑制されたものとなる。」(本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0010】)という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

(3)特許異議申立人の主張について

ア 特許異議申立人の主張の概要

特許異議申立人は、特許異議申立書において、おおむね次のとおり主張する。摘記に際し、空白行は省略した。以下、同様。

「本件特許発明1、5、及び8と甲第1号証に記載された発明とは、前者が「アントシアニン含有混濁果汁を含む」一方、後者にはそのような記載がない点で異なり、その他の点で一致する。

しかし、上記のとおり、濾過等の清澄化処理がなされていないブドウ混濁果汁中に酒石酸が含まれることはよく知られたことであり(甲第2及び3号証)、また酒石酸がアントシアニンを含む果汁の色の安定化に寄与することも既に知られていたことである(甲第4号証)。さらにザクロの未清澄果汁は、ザクロの清澄果汁と比較して、アントシアニンの安定性及び色安定性が高いことも既に知られていた(甲第5号証)。

そうすると、甲第1号証に記載された発明において、果汁の色の安定化効果を期待して、さらに酒石酸を含むアントシアニン含有混濁果汁を用いることは、当業者が容易になし得たことであり、アントシアニン混濁果汁を用いることにより、より退色抑制効果が高まることは当業者であれば、容易に予測し得たことである。

従って、本件特許発明1、5、及び8は、甲第1~5号証に記載された発明から、容易に想到できた発明である。」(特許異議申立書第26ページ)

イ 特許異議申立人の主張についての判断

上記主張について検討する。

甲2ないし4に記載された事項は、上記1(2)ないし(4)のとおりであり、甲2ないし4に記載された事項から、「濾過等の清澄化処理がなされていないブドウ混濁果汁中に酒石酸が含まれること」及び「酒石酸がアントシアニンを含む果汁の色の安定化に寄与すること」が「既に知られていた」といえるとしても、発明の詳細な説明の【0016】の「アントシアニン含有混濁果汁とは、アントシアニンを含有する果汁の清澄化処理していないものをいい、果実に由来する混濁成分や不溶成分などの固形物を含んだ果汁である。」という記載によると、本件特許発明1における「アントシアニン含有混濁果汁」の「混濁」は「果実に由来する混濁成分や不溶成分などの固形物」により生じるものであり、「酒石酸」により生じる「混濁」ではないから、甲2ないし4に記載された事項は、甲1物発明において、「アントシアニン含有混濁果汁」を用いる動機付けとはならない。

また、甲5に記載された事項は、上記1(5)のとおりであり、甲5に記載された事項から、「ザクロの未清澄果汁は、ザクロの清澄果汁と比較して、アントシアニンの安定性及び色安定性が高いこと」が「既に知られていた」といえるとしても、甲1は、「一般的に、ルチンを始めとするフラボノール誘導体は水への溶解性が悪く、また水溶液中での安定性が悪いという問題がある。フラボノール誘導体は、酸性水溶液中、あるいは、フラボノール誘導体の溶解性が高くなるアルカリ性水溶液中においても、高濃度液では経時的には不溶物となり沈殿を生じることがある。フラボノール誘導体の溶解安定性が悪いことより、食品としての外観が悪くなり、食品として摂取することが困難となる。」(甲1の【0004】)ことを背景技術とし、「水難溶性イソクエルシトリンについて、その水溶性を格段に向上させるための方法を提供するとともに、当該水溶性が格段に向上されてなる水易溶性イソクエルシトリン組成物を提供すること」(甲1の【0009】)を目的とする発明が開示された文献であるから、甲1に記載された事項から認定した甲1物発明において、食品としての外観を悪くするような「未清澄果汁」をあえて採用することは、甲5に記載された事項からは動機付けられない。

したがって、上記主張は採用できない。

(4)本件特許発明1についてのまとめ

したがって、本件特許発明1は甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本件特許発明2ないし13について

本件特許発明2ないし13はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本件特許発明14について

(1)対比

本件特許発明14と甲1製法発明を対比する。

本件特許発明14と甲1製法発明の間には、本件特許発明1と甲1物発明の間と同様の相当関係が成り立つ。

甲1製法発明における「IQC(イソクエルシトリン)を最終濃度が0.01%となるように添加する」は本件特許発明14における「エンジュ由来の抽出物と、を配合する工程」に相当する。

甲1製法発明における「表5に記載する赤キャベツ色素、ブドウ果汁色素、紫トウモロコシ色素、エルダーベリー色素又は紫イモ色素等のアントシアニン系色素を用いて、下記処方の色素含有酸性飲料を調整し」た「色素含有酸性飲料の製造方法」は本件特許発明14における「容器詰アントシアニン含有果汁飲料の製造方法であって」「アントシアニン含有混濁果汁」「を配合する工程を含む、容器詰めアントシアニン含有果汁含有飲料の製造方法」と、「アントシアニン含有飲料の製造方法」という限りにおいて一致する。

そうすると、両者は次の点で一致する。

<一致点>

「アントシアニン含有飲料の製造方法であって、

エンジュ由来の抽出物、を配合する工程を含む、アントシアニン含有飲料の製造方法。」

そして、両者は次の点で相違する。

<相違点2>

「アントシアニン含有飲料の製造方法」に関して、本件特許発明14においては「容器詰アントシアニン含有果汁飲料の製造方法であって」「アントシアニン含有混濁果汁」「を、配合する工程を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の製造方法」と特定されているのに対し、甲1製法発明においては「表5に記載する赤キャベツ色素、ブドウ果汁色素、紫トウモロコシ色素、エルダーベリー色素又は紫イモ色素等のアントシアニン系色素を用いて、下記処方の色素含有酸性飲料を調整し」た「色素含有酸性飲料の製造方法」と特定されている点。

(2)判断

相違点2について検討する。

相違点2は相違点1と実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、甲1製法発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2に係る本件特許発明14の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

そして、本件特許発明14は「アントシアニン含有果汁の自然な味わいを有し、且つ内容液の光への曝露や経時による劣化に起因する退色が抑制された容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料を製造することができる。」(発明の詳細な説明の【0010】)という本件特許発明14の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

(3)特許異議申立人の主張について

ア 特許異議申立人の主張の概要

特許異議申立人は、特許異議申立書において、おおむね次のとおり主張する。

「本件特許発明14と甲第1号証に記載された発明とは、前者が「アントシアニン含有混濁果汁を配合する」一方、後者にはそのような記載がない点で異なり、その他の点で一致する。

しかし、上記のとおり、濾過等の清澄化処理がなされていないブドウ混濁果汁中に酒石酸が含まれることはよく知られたことであり(甲第2及び3号証)、また酒石酸がアントシアニンを含む果汁の色の安定化に寄与することも既に知られていたことである(甲第4号証)。さらにザクロの未清澄果汁は、ザクロの清澄果汁と比較して、アントシアニンの安定性及び色安定性が高いことも既に知られていた(甲第5号証)。

そうすると、甲第1号証に記載された発明において、果汁の色の安定化効果を期待して、さらに酒石酸を含むアントシアニン含有混濁果汁を配合することは、当業者が容易になし得たことであり、アントシアニン混濁果汁を配合することにより、より退色抑制効果が高まることは当業者であれば、容易に予測し得たことである。

従って、本件特許発明14は、甲第1~5号証に記載された発明から、容易に想到できた発明である。」(特許異議申立書第31及び32ページ)

イ 特許異議申立人の主張についての判断

上記主張について検討する。

上記主張は、上記2(3)アの主張とおおむね同旨であるから、それについての判断も上記2(3)イと同じである。すなわち、上記主張は採用できない。

(4)本件特許発明14についてのまとめ

したがって、本件特許発明14は甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本件特許発明15について

(1)対比

本件特許発明15と甲1方法発明を対比する。

本件特許発明15と甲1方法発明の間には、本件特許発明14と甲1製法発明の間と同様の相当関係が成り立つ。

甲1方法発明における「表5に記載する赤キャベツ色素、ブドウ果汁色素、紫トウモロコシ色素、エルダーベリー色素又は紫イモ色素等のアントシアニン系色素を用いて、下記処方の色素含有酸性飲料を調整し」た「色素含有酸性飲料の退色抑制方法」は本件特許発明15における「容器詰アントシアニン含有果汁飲料の退色抑制方法であって」「アントシアニン含有混濁果汁」「を配合する工程を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色抑制方法」と、「アントシアニン含有飲料の退色抑制方法」という限りにおいて一致する。

そうすると、両者は次の点で一致する。

<一致点>

「アントシアニン含有飲料の退色抑制方法であって、

エンジュ由来の抽出物、を配合する工程を含む、アントシアニン含有飲料の退色抑制方法。」

そして、両者は次の点で相違する。

<相違点3>

「アントシアニン含有飲料の退色抑制方法」に関して、本件特許発明15においては「容器詰アントシアニン含有果汁飲料の退色抑制方法であって」「アントシアニン含有混濁果汁」「を配合する工程を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色抑制方法」と特定されているのに対し、甲1方法発明においては「表5に記載する赤キャベツ色素、ブドウ果汁色素、紫トウモロコシ色素、エルダーベリー色素又は紫イモ色素等のアントシアニン系色素を用いて、下記処方の色素含有酸性飲料を調整し」た「色素含有酸性飲料の退色抑制方法」と特定されている点。

(2)判断

相違点3について検討する。

相違点3は相違点1と実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、甲1方法発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点3に係る本件特許発明15の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

そして、本件特許発明15は「容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の内容液の光への曝露や経時による劣化に起因した退色を抑制することができる。」(発明の詳細な説明の【0010】)という本件特許発明15の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

(3)特許異議申立人の主張について

ア 特許異議申立人の主張の概要

特許異議申立人は、特許異議申立書において、おおむね次のとおり主張する。

「本件特許発明15と甲第1号証に記載された発明とは、前者が「アントシアニン含有混濁果汁を配合する」一方、後者にはそのような記載がない点で異なり、その他の点で一致する。

しかし、上記のとおり、濾過等の清澄化処理がなされていないブドウ混濁果汁中に酒石酸が含まれることはよく知られたことであり(甲第2及び3号証)、また酒石酸がアントシアニンを含む果汁の色の安定化に寄与することも既に知られていたことである(甲第4号証)。さらにザクロの未清澄果汁は、ザクロの清澄果汁と比較して、アントシアニンの安定性及び色安定性が高いことも既に知られていた(甲第5号証)。

そうすると、甲第1号証に記載された発明において、果汁の色の安定化効果を期待して、さらに酒石酸を含むアントシアニン含有混濁果汁を配合することは、当業者が容易になし得たことであり、アントシアニン混濁果汁を配合することにより、より退色抑制効果が高まることは当業者であれば、容易に予測し得たことである。

従って、本件特許発明15は、甲第1~5号証に記載された発明から、容易に想到できた発明である。」(特許異議申立書第32ページ)

イ 特許異議申立人の主張についての判断

上記主張について検討する。

上記主張は、上記2(3)アの主張とおおむね同旨であるから、それについての判断も上記2(3)イと同じである。すなわち、上記主張は採用できない。

(4)本件特許発明15についてのまとめ

したがって、本件特許発明15は甲1方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

6 申立理由1についてのむすび

したがって、本件特許発明1ないし15は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし15に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。

第5 申立理由2(実施可能要件)及び申立理由3(サポート要件)について

1 判断基準

(1)実施可能要件の判断基準

上記第2のとおり、本件特許発明1ないし13は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。

本件特許発明14は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、その方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。

本件特許発明15は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要する。

(2)サポート要件の判断基準

特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

そこで、検討する。

2 発明の詳細な説明の記載

発明の詳細な説明には、おおむね次のとおり記載されている。下線は当審で付したものである。

・「【技術分野】

【0001】

本発明は、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料およびその製造方法に関するものである。また、本発明は、当該容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色抑制方法にも関する。

【背景技術】

【0002】

近年、飲料に関する嗜好の多様化や健康志向の高まりから、単に嗜好を満たすのみならず、健康の維持に対し一定の効果が期待される機能を持った、種々の容器詰飲料が多数上市されている。その中でも、アントシアニンを含有した果汁含有飲料が年代や性別を問わず広く消費者に受け入れられている。現代社会では、パソコンやスマートフォンの普及から眼精疲労が大きな社会問題となっており、この眼精疲労に有効な成分としてアントシアニンが注目されているからである。

【0003】

他方で、最近は、容器詰果汁含有飲料のマーケットにおける消費者のニーズが、高果汁含有飲料から低果汁含有飲料へシフトしている。このニーズに呼応して、液色が透明に近く且つ低果汁である、いわゆるニアウォーターのジャンルに属する容器詰低果汁含有飲料が販売されており、アントシアニンを含有する容器詰低果汁含有飲料に対するニーズも高まっている。

【0004】

ところで、これらの容器詰低果汁含有飲料は、果汁率が低いことから、果汁感や甘味と酸味のバランスといった、果汁の自然な味わいが十分に感じられないという問題が一般的に知られている。このような問題を解決するために、例えば特許文献1に記載されている、低果汁含有飲料の果汁感を向上させるための技術が公開されている。」

・「【発明が解決しようとする課題】

【0006】

容器詰果汁含有飲料、特にアントシアニン含有果汁含有飲料は、視覚的に果汁感を得るために液色が重要であるが、退色しやすいという問題がある。中でも、容器詰低果汁含有飲料は液色が薄いことから、光が透過しやすいため劣化による退色が進みやすいといった問題があった。容器詰飲料は販売される際に照明下で保存されることが多く、特に近年は、LEDライトの普及により従来よりも多くの光量が容器詰低果汁含有飲料に当たるため、光劣化による退色が避けられない状況にある。

【0007】

そこで、

本発明は、アントシアニン含有果汁の自然な味わいを十分に有しながら、内容液の光への曝露や経時による劣化に起因する退色を抑制した容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料およびその製造方法、並びに容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料における退色抑制方法を提供することを目的とする。

・「【課題を解決するための手段】

【0008】

本発明者は、上記問題を解決すべく研究を行った結果、マメ科植物由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を含む容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料が、アントシアニン含有果汁の自然な味わいを十分に有しながら、内容液の光への曝露や経時による劣化に起因する退色が抑制されたものとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。

・「【0009】

具体的には、本発明は以下のとおりである。

〔1〕

アントシアニン含有果汁含有飲料であって、

マメ科植物由来の抽出物と、

アントシアニン含有混濁果汁と、

を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔2〕 アスコルビン酸の含有量が60ppm以下である、〔1〕に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔3〕

前記マメ科植物が、エンジュ

、ダイズより成る群より選ばれる1種以上のマメ科植物

である、〔1〕または〔2〕に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔4〕 アントシアニンの含有量が0.5~10ppmである、〔1〕~〔3〕に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔5〕 透過率が93.0~99.5である、〔1〕~〔4〕に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔6〕 前記マメ科植物由来の抽出物の含有量が0.005~0.1質量%である、〔1〕~〔5〕に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔7〕 前記アントシアニン含有混濁果汁の含有量が0.1~5質量%である、〔1〕~〔6〕に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔8〕 前記アントシアニン含有果汁の含有量が0.1~10質量%である、〔1〕~〔7〕に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔9〕 pHが2.0~5.0である、〔1〕~〔8〕に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔10〕 糖度が2.0~15.0である、〔1〕~〔9〕に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔11〕 酸度が0.05~0.5である、〔1〕~〔10〕に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔12〕 糖酸比が4~300である、〔1〕~〔11〕に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔13〕 ポリフェノールの含有量が5.0~40.0ppmである、〔1〕~〔12〕に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔14〕 前記ポリフェノールの含有量に対するアントシアニンの含有量の比率が0.05~0.3である、〔13〕に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔15〕

容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の製造方法であって、

マメ科植物由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を配合する工程を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の製造方法。

〔16〕

容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色抑制方法であって、

マメ科植物由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を配合する工程を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色抑制方法。

・「【発明の効果】

【0010】

本発明の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料は、アントシアニン含有果汁の自然な味わいを有し、且つ内容液の光への曝露や経時による劣化に起因する退色を抑制されたものとなる。また、本発明の製造方法によれば、アントシアニン含有果汁の自然な味わいを有し、且つ内容液の光への曝露や経時による劣化に起因する退色が抑制された容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料を製造することができる。また、本発明の退色抑制方法は、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の内容液の光への曝露や経時による劣化に起因した退色を抑制することができる。」

・「【0011】

容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料

本発明の一実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料は、マメ科植物由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を含むものである。

【0012】

ここで本明細書において、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料とは、アントシアニン含有果汁を含んだ飲料が容器に充填された製品のことを言う。本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料は、好ましくは非アルコール性飲料であり、さらに好ましくは非炭酸飲料である。」

・「【0013】

(

アントシアニン

)

本実施形態においてアントシアニンとは、ポリフェノールの一種である一群の化合物群であって、アントシアニジンをアグリコンとする配糖体の総称である。・・・(略)・・・

【0014】

本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料において、アントシアニンの含有量は0.5ppm以上であることが好ましく、・・・(略)・・・

また、本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料において、アントシアニンの含有量は10ppm以下であることが好ましく」

・「【0016】

(

アントシアニン含有混濁果汁

)

本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料は、アントシアニン含有混濁果汁を含有する。アントシアニン含有混濁果汁とは、アントシアニンを含有する果汁の清澄化処理していないものをいい、果実に由来する混濁成分や不溶成分などの固形物を含んだ果汁である。

混濁果汁を含有させることで容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色、特に光による退色を効果的に抑制することができる。また、混濁果汁は味がよく、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の味を自然な味わいとすることができる。果汁感、濃厚感、ボディ感、奥行き等の味わいを高めたいのであれば、混濁果汁の比率を高めにすることも可能である。

・・・(略)・・・

【0020】

本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料において、アントシアニン含有混濁果汁の含有量は0.1質量%以上であることが好ましく、・・・(略)・・・

また、本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料において、アントシアニン含有混濁果汁の含有量は5質量%以下であることが好ましく」

・「【0021】

(

アントシアニン含有果汁

)

アントシアニン含有果汁とは、アントシアニンを含む果実の果汁、果実抽出物あるいはそれらを濃縮したエキス等の加工物のことをいうが、好ましくは果汁及び/又は濃縮果汁である。果汁及び/又は濃縮果汁を配合することによって、より自然な香味および色調を得やすくなる。

・・・(略)・・・

【0023】

アントシアニン含有果汁は、アントシアニン含有透明果汁と、前述のアントシアニン含有混濁果汁と、の双方を含み得る。ここで、アントシアニン含有透明果汁とは、アントシアニン含有果実の搾汁を清澄化処理した果汁をいい、半透明果汁もこれに含まれる。・・・(略)・・・

【0025】

本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料において、アントシアニン含有果汁の含有量は0.1質量%以上であることが好ましく、・・・(略)・・・

また、本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料において、アントシアニン含有果汁の含有量は10質量%以下であることが好ましく」

・「【0027】

(

マメ科植物由来の抽出物

)

本実施形態の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料は、マメ科植物由来の抽出物を含有する。抽出物とは、マメ科植物を抽出、搾汁、酵素処理等をした結果得られるものであって、エキス或いはピューレなどを含むものであり、市販品を使用しても良い。

マメ科植物由来の抽出物を含有することで、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色、特に経時による退色を抑制することができる。

【0028】

マメ科植物としては、エンジュ

、ダイズ、カンゾウ、エンドウ、インゲンマメ、ヒヨコマメ、ソラマメ、ルイボス

などが挙げられるが、エンジュの抽出物およびダイズの抽出物は、他のマメ科植物の抽出物と比べ、抽出物自体の味やにおいが少なく、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の香味に与える影響が少ないことから、エンジュ、ダイズが好ましい。また、エンジュの抽出物は果実のフレッシュ感に寄与するため、エンジュが特に好ましい。

また、マメ科植物の部位としては、花、蕾、葉、根、茎などが挙げられるが、花、蕾が好ましい。」

・「【0030】

(

アスコルビン酸

)

本実施形態におけるアスコルビン酸(ビタミンC)とは、L-アスコルビン酸のほか、ナトリウム、カリウムやカルシウムとの塩、脂肪酸とのエステル体、糖等とのエーテル体といったL-アスコルビン酸の誘導体などが含まれる。

【0031】

本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料において、マメ科植物由来のアスコルビン酸の含有量は60ppm以下であることが好ましく」

・「【0032】

(

ポリフェノール

)

本実施形態においてポリフェノールとは、植物に由来する物質(フィトケミカル:phytochemical)の1種であり、1分子中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物の総称である。・・・(略)・・・

【0033】

本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料は、ポリフェノールの含有量が5.0ppm以上であることが好ましく、・・・(略)・・・

また、本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料は、ポリフェノールの含有量が40.0ppm以下であることが好ましく」

・「【0034】

(

アントシアニン含有量とポリフェノール含有量との比率

)

本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料におけるアントシアニン含有量とポリフェノール含有量との比率(アントシアニン含有量/ポリフェノール含有量)は0.05以上であることが好ましく、・・・(略)・・・

また、本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料におけるアントシアニン含有量とポリフェノール含有量との比率(アントシアニン含有量/ポリフェノール含有量)は0.3以下であることが好ましく」

・「【0039】

(

容器

)

本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料は、容器に充填された形で提供されること、すなわち容器詰飲料であることが好ましい。」

・「【0041】

(

pH

)

本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料のpHの下限は2.0以上であることが好ましく、・・・(略)・・・また、pHの上限は5.0以下であることが好ましく」

・「【0042】

(

糖度(Brix)

)

本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の糖度(Brix)は2.0以上であることが好ましく、・・・(略)・・・

また、本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の糖度(Brix)は15.0以下であることが好ましく」

・「【0043】

(

酸度

)

本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の酸度の下限は0.05以上であることが好ましく、・・・(略)・・・また、酸度の上限は0.5以下であることが好ましく」

・「【0044】

(

糖酸比

)

本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の糖酸比の下限は4以上であることが好ましく、・・・(略)・・・また、糖酸比の上限は300以下であることが好ましく」

・「【0045】

(

透過率

)

本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の透過率は99.5以下であることが好ましく、・・・(略)・・・

また、本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の透過率は93.0以上であることが好ましく」

・「【0046】

容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の製造方法

本実施形態に係る容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料は、アントシアニン含有果汁、マメ科植物由来の抽出物およびアントシアニン含有混濁果汁を所定量含有させる以外、従来公知の方法により製造することができる。

【0047】

例えば、所定の硬度を有する天然水や、イオン交換水等を原料水として用い、アントシアニン含有果汁と、マメ科植物由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、さらに必要に応じて、果糖ブドウ糖液糖などの他の成分とを添加して攪拌し、必要に応じてpHの調整を行い、飲料原液を調製する。

【0048】

飲料原液を調製した後に、均質化して、容器に充填する。容器へ充填する工程は、当業界で公知の手法により行うことができる。例えば、プレート式ヒーターやチューブ式ヒーター等の加熱殺菌装置を用い、80~150°Cの温度下に10~120秒間保持する等して加熱殺菌を行い、その後、常法に従って容器に充填する。

このようにして容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料を得ることができる。」

・「【実施例】

【0050】

以下、試験例、製造例等を示すことにより本実施形態をさらに詳細に説明するが、本実施形態は下記の試験例、製造例等に何ら限定されるものではない。

【0051】

<試験例>

後述する市販の各原料を使用し試作品を作製した。果糖ブドウ糖液糖(果糖55%以上、ブドウ糖37%以上、日本食品化工社製)、赤ブドウ透明果汁(濃縮果汁、糖度55%、日本果実加工社製)、

赤ブドウ混濁果汁(糖度11%、日本果実加工社製)

、リンゴ混濁果汁(濃縮果汁、糖度55%、オーストリアジュース社製)、

エンジュエキス(エンジュHJK-4507、東洋精糖社製)

、及びアスコルビン酸(扶桑化学工業社製)を表1及び表2の配合に基づいて添加し、天然水でメスアップした。

【0052】

これらのサンプルを95°C加熱殺菌後、直ちに500mLのPET容器にホットパック充填し、試験区1~12を得た。下記方法により評価した結果を合わせて表1及び2に示す。なお、果汁とは果実を洗浄後加熱処理し、種を除去した後遠心分離を行い得られた果汁を適宜濾過や濃縮等の処理を行ったものであり、濃縮果汁または濃縮エキスの配合量については、ストレート換算した値を記載する。

・・・(略)・・・

【0062】

表1及び表2に従い調整、分析した試験区1~12について、以下のとおり官能評価を行った。

【0062】

〔官能評価〕

上記試験例で得られた各容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料について、飲料の開発を担当する訓練された4人のパネラーによる官能評価試験を行った。結果を表1及び表2に示す。

【0064】

「甘味と酸味のバランス」及び「果実のフレッシュ感」の項目については試験区1~12を製造直後に5°Cに冷却して飲用し、評価を行った。

【0065】

「加温後の液色」の項目については試験区1~12を製造後、45°C、暗室の環境下にて2週間保持した後に5°Cに冷却して飲用し、評価を行った。

【0066】

「光照射後の液色」の項目については試験区1~12を製造後、25°C、10000ルクスの環境下にて2週間保持した後に5°Cに冷却して飲用し、評価を行った。

【0067】

各評価項目は下記の基準に従って評価した。パネラー4人の最も多かった評価を表1及び2に示す。

・・・(略)・・・

【0072】

なお、表2については、「加温後の果実のフレッシュ感」と「光照射後の果実のフレッシュ感」の2項目についても追加的に評価を行った。・・・(略)・・・

【0080】

【表1】

141

148

0001430046000006.jpg

【0081】

【表2】

154

147

0001430046000007.jpg

【0082】

(結果・考察)

表1及び表2において、

赤ブドウ混濁果汁、エンジュエキスを含む試験区1~3及び7~12においては、「甘味と酸味のバランス」、「果実のフレッシュ感」、「加温後の液色」及び「光照射後の液色」の4つの項目において良好な結果を示していることがわかる。

【0083】

対して、

赤ブドウ混濁果汁を含まない試験区4においては、上記4つの項目のいずれも評価が低いという結果になった。

これは赤ブドウ混濁果汁が、上記4項目を改善する役割を果たしていることを示す。

【0084】

また、

エンジュエキスを含まない試験区5では、「甘味と酸味のバランス」以外の項目の評価が低く、特に、「加温後の液色」の評価が低かった。

この結果からエンジュエキスは、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料において、液色を維持する効果を有していることがわかる。

【0085】

次に、

赤ブドウ混濁果汁の代わりにリンゴ混濁果汁を用いた試験区6では、上記4つの項目のいずれも評価が低いという結果になり、特に光照射後の液色の項目の評価が低かった。

この結果から、赤ブドウ混濁果汁と、エンジュエキスと、の組み合わせが上記4項目を改善する役割を担っていることがわかる。」

3 申立理由2(実施可能要件)について

発明の詳細な説明の記載は上記2のとおりであり、発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし15の各発明特定事項及び実施例について具体的に記載されている。

したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし13を生産し、使用することができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明14の使用をし、それにより生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明15の使用をすることができる程度の記載があるといえる。

よって、本件特許発明1ないし15に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。

4 申立理由3(サポート要件)について

(1)特許請求の範囲の記載

本件特許の特許請求の範囲(以下、「特許請求の範囲」という。)の記載は上記第2のとおりである。

(2)発明の課題

発明の詳細な説明の【0001】ないし【0007】によると、本件特許発明1ないし13の解決しようとする課題は「アントシアニン含有果汁の自然な味わいを十分に有しながら、内容液の光への曝露や経時による劣化に起因する退色を抑制した容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料」「を提供すること」であり、本件特許発明14の解決しようとする課題は「アントシアニン含有果汁の自然な味わいを十分に有しながら、内容液の光への曝露や経時による劣化に起因する退色を抑制した容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料」「の製造方法」「を提供すること」であり、本件特許発明15の解決しようとする課題は「アントシアニン含有果汁の自然な味わいを十分に有しながら、内容液の光への曝露や経時による劣化に起因する退色を抑制した容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料」「における退色抑制方法を提供すること」である(以下、総称して「発明の課題」という。)。

(3)判断

発明の詳細な説明の【0008】には「本発明者は、上記問題を解決すべく研究を行った結果、マメ科植物由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を含む容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料が、アントシアニン含有果汁の自然な味わいを十分に有しながら、内容液の光への曝露や経時による劣化に起因する退色が抑制されたものとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。」と記載されている。

発明の詳細な説明の【0009】には「〔1〕 アントシアニン含有果汁含有飲料であって、

マメ科植物由来の抽出物と、

アントシアニン含有混濁果汁と、

を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔2〕 アスコルビン酸の含有量が60ppm以下である、〔1〕に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

〔3〕 前記マメ科植物が、エンジュ、ダイズより成る群より選ばれる1種以上のマメ科植物である、〔1〕または〔2〕に記載の容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料。

・・・(略)・・・

〔15〕 容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の製造方法であって、

マメ科植物由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を配合する工程を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の製造方法。

〔16〕 容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色抑制方法であって、

マメ科植物由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を配合する工程を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色抑制方法。」と記載され、文言上、本件特許発明1ないし15に対応する記載がある。

発明の詳細な説明の【0016】には「混濁果汁を含有させることで容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色、特に光による退色を効果的に抑制することができる。また、混濁果汁は味がよく、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の味を自然な味わいとすることができる。」と記載され、同【0021】には「アントシアニン含有果汁とは、アントシアニンを含む果実の果汁、果実抽出物あるいはそれらを濃縮したエキス等の加工物のことをいうが、好ましくは果汁及び/又は濃縮果汁である。果汁及び/又は濃縮果汁を配合することによって、より自然な香味および色調を得やすくなる。」と記載され、同【0027】には「マメ科植物由来の抽出物を含有することで、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色、特に経時による退色を抑制することができる。」と記載され、同【0028】には「エンジュの抽出物およびダイズの抽出物は、他のマメ科植物の抽出物と比べ、抽出物自体の味やにおいが少なく、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の香味に与える影響が少ないことから、エンジュ、ダイズが好ましい。また、エンジュの抽出物は果実のフレッシュ感に寄与するため、エンジュが特に好ましい。」と記載されている。

発明の詳細な説明の【0051】ないし【0085】には、「アントシアニン含有果汁含有飲料であって、エンジュ由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料」という条件を満たす試験区1ないし3及びし7ないし12は「甘味と酸味のバランス」、「果実のフレッシュ感」、「加温後の液色」及び「光照射後の液色」の4つの項目において良好な結果を示していることを確認し、上記条件を満たさない試験区4ないし6はそうではないことを確認する記載がある。

そうすると、発明の詳細な説明の記載から、当業者は「アントシアニン含有果汁含有飲料であって、エンジュ由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料」、「アントシアニン含有果汁含有飲料の製造方法であって、エンジュ由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を配合する工程を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の製造方法」及び「容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色抑制方法であって、エンジュ由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を配合する工程を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色抑制方法」は発明の課題を解決できると認識できる。

そして、本件特許発明1ないし13は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料」であるか、それをさらに限定したものであり、本件特許発明14は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「製造方法」であり、本件特許発明15は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「方法」である。

したがって、本件特許発明1ないし15は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし15に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

5 特許異議申立人の主張について

特許異議申立人の上記第3 2における主張について検討するに、次のとおりいずれの主張も採用できない。

(1)上記第3 2(1)における主張について

ア 上記第3 2(1)アにおける主張について

発明の詳細な説明の【0016】の「アントシアニン含有混濁果汁とは、アントシアニンを含有する果汁の清澄化処理していないものをいい、果実に由来する混濁成分や不溶成分などの固形物を含んだ果汁である。」という記載から、当業者は「アントシアニン含有混濁果汁」がどのようなものか理解できるし、同【0051】には「アントシアニン含有混濁果汁」の具体例が記載されていることから、当業者は「アントシアニン含有混濁果汁」としてどのようなものを使用すればいいのか理解できる。

また、上記4のとおり、発明の詳細な説明の記載から、当業者は「アントシアニン含有果汁含有飲料であって、エンジュ由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料」、「アントシアニン含有果汁含有飲料の製造方法であって、エンジュ由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を配合する工程を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の製造方法」及び「容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色抑制方法であって、エンジュ由来の抽出物と、アントシアニン含有混濁果汁と、を配合する工程を含む、容器詰アントシアニン含有果汁含有飲料の退色抑制方法」は発明の課題を解決できると認識できる。

さらに、「アントシアニン含有混濁果汁」で当業者が実施することができないものがあることの具体的な証拠が示されている訳ではないし、「アントシアニン含有混濁果汁」で発明の課題を解決できないものがあることの具体的な証拠が示されている訳でもない。

したがって、「本件特許発明1~15は、実施可能要件及びサポート要件を充足しない。」とはいえない。

イ 上記第3 2(1)イにおける主張について

「本件特許の実施例には、アントシアニン含有混濁果汁の含有量が0.11~2.70質量%である処方が示されているに過ぎない」としても、「アントシアニン含有混濁果汁」が含まれていれば、程度の差はあれ実施例と同様の効果を奏すると当業者は理解する。

したがって、「本件特許発明1~15は、サポート要件を充足しない。」とはいえない。

(2)上記第3 2(2)における主張について

ア 上記第3 2(2)アにおける主張について

発明の詳細な説明の【0027】には「抽出物」が「マメ科植物を抽出、搾汁、酵素処理等をした結果得られるものであって、エキス或いはピューレなどを含むもの」であることが記載され、同【0028】には、「エンジュ」が特に好ましい理由が記載されている。

そうすると、「エンジュ由来の抽出物」が「エンジュ」を「抽出、搾汁、酵素処理等をした結果得られるものであって、エキス或いはピューレなどを含むもの」であると当業者は理解できる。

また、「エンジュ由来の抽出物」である市販品(エンジュHJK-4507、東洋精糖社製)を使用した試験例で発明の課題を解決していることを確認している。

したがって、「エンジュ由来の抽出物」の具体的な成分が不明であるとしても、当業者は「エンジュ由来の抽出物」としてどのようなものを使用すればいいのか理解できるし、当業者は「エンジュ由来の抽出物」を使用すれば発明の課題を解決できると認識できる。

さらに、「エンジュ由来の抽出物」で当業者が実施することができないものがあることの具体的な証拠が示されている訳ではないし、「エンジュ由来の抽出物」で発明の課題を解決できないものがあることの具体的な証拠が示されている訳でもない。

したがって、「本件特許発明1~15は、実施可能要件及びサポート要件を充足しない。」とはいえない。

イ 上記第3 2(2)イにおける主張について

「本件特許の実施例には、エンジュ由来の抽出物の含有量が0.01~0.05質量%である処方が示されているに過ぎない」としても、「エンジュ由来の抽出物」が含まれていれば、程度の差はあれ実施例と同様の効果を奏すると当業者は理解する。

したがって、「本件特許発明1~15は、サポート要件を充足しない。」とはいえない。

(3)上記第3 2(3)における主張について

「実施例においては、エンジュ由来の抽出物及びアントシアニン含有混濁果汁の含有量について、それぞれ0.02質量%及び1.02質量%(試験区1)、・・・(略)・・・並びに0.02質量%及び0.11質量%(試験区12)含む飲料が開示されているのみ」であるとしても、「エンジュ由来の抽出物」と「アントシアニン含有混濁果汁」が含まれていれば、程度の差はあれ実施例と同様の効果を奏すると当業者は理解する。

また、「エンジュ由来の抽出物」と「アントシアニン含有混濁果汁」が含まれていても、発明の課題を解決できないものがあることの具体的な証拠が示されている訳でもない。

したがって、「本件特許発明1~15は、サポート要件を充足しない。」とはいえない。

(4)上記第3 2(4)における主張について

本件特許の実施例の試験区11は、「光照射後の果実のフレッシュ感」が「1」で低いものの、「果実のフレッシュ感」は「3」と比較対象の試験区4ないし6と比べて高いことから、「アントシアニン含有果汁の自然な味わいを十分に有しながら」という発明の課題を解決しているといえる。

なお、発明の課題は上記4 (2)のとおりであり、「光照射後の果実のフレッシュ感」は、追加的に評価されたものであって(発明の詳細な説明の【0072】)、発明の課題とは直接は関係がなく、「光照射後の果実のフレッシュ感」がどうであるかはサポート要件の判断を左右するものではない。

したがって、「本件特許発明1~15は、サポート要件を充足しない。」とはいえない。

6 申立理由2及び3についてのむすび

したがって、本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由2及び3によっては取り消すことはできない。

第6 結語

以上のとおり、本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。

また、他に本件特許の請求項1ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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