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Trademark Appeal Case

周知商標と混同のおそれ

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023017849
審判種別記載はありません。
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

結 論
原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。

理由テキスト

理 由

1 手続の経緯

本願は、令和4年9月8日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和4年12月19日 :刊行物等提出書

令和5年 2月 6日付け:拒絶理由通知書

令和5年 5月11日 :意見書及び手続補正書の提出

令和5年 6月27日付け:拒絶査定

令和5年10月20日 :審判請求書の提出

2 本願商標

本願商標は、「ZOOM」の文字を標準文字で表してなり、第36類、第38類、第41類及び第42類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として登録出願されたものであり、その後、指定役務については、原審における上記1の手続補正書により、第36類「研究助成金の給付,慈善のための募金」、第41類「映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,セミナー・研究会・研修会・講演会・シンポジウムの企画・運営又は開催,楽器の貸与,音響機器の貸与,ビデオカメラ及びビデオテープレコーダーの貸与,録音装置及びビデオ記録装置の貸与,オーディオ装置の貸与,録音又は録画済み記録媒体の貸与」及び第42類「技術的な研究,商品の研究・開発に関する情報の提供,情報処理技術の研究,機械器具に関する試験又は研究」と補正されたものである。

3 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、「ZOOM」の文字を標準文字で表してなるところ、この文字は、Zoom Video Communications,Inc.が、役務「通信」等について使用する商標として、本願商標の出願前から広く知られているものである。そうすると、本願商標をその指定役務に使用するときは、その役務が、あたかも前記会社の業務に係る役務であるかのように、あるいは同会社と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

4 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第15号該当性について

ア 引用標章の周知性

原審で示した証拠、原審において提出された刊行物等提出書(甲第1号証ないし甲第21号証)及び当審における職権調査によれば、以下のとおりである。

(ア)刊行物等提出書によれば、Zoom Video Communications,Inc.のウェブ会議サービス「Zoom」(以下「引用標章」という。)は、2012年に全世界でリリースされ、日本においても、リリース当初から広く利用されていた。また、原審で示した証拠及び当審における職権調査によれば、引用標章は、本願商標の登録出願時及び審決時において、上記ウェブ会議サービスを表す語として継続的に使用されている。

(イ)株式会社MM総研が2020年5月に発表した調査結果によれば、全国の企業・団体の役員・社員2119名を対象に「利用中」及び「利用検討中」のウェブ会議システムを確認したところ、「Zoom」が最多の35%であった(甲第2号証)。また、同社が2021年9月に実施した調査結果によれば、有料版のウェブ会議システムを契約している国内企業1241社を対象に最も利用するウェブ会議システムを確認したところ、「Zoom」が最多の60.1%であった(甲第3号証)。さらに、株式会社シード・プランニングが2020年11月に発表した調査結果によれば、ビデオコミュニケーションの企業の導入担当者200名及び業務用途でのユーザー400名を対象にしたサービス事業者の認知度や会社での導入、利用状況の調査において、「Zoom」が1位であった(甲第4号証)。

(ウ)引用標章に係るウェブ会議サービスは、複数の企業及び教育機関において導入されている(甲第5号証ないし甲第8号証)。また、リサーチ会社「アンド・ディ」が2020年5月に発表した調査結果によれば、高校生が授業で使用中又は使用予定のツールは、「Zoom」が最多の39.3%であった(甲第9号証)。さらに、日経BPコンサルティングが2021年8月に発表した調査結果によれば、2020年度にオンライン授業を実施した大学・短大・専門学校等310校において、オンライン授業で使用中のツール・システムは「Zoom」が最多の75.2%であった(甲第10号証)。

(エ)引用標章に係るウェブ会議サービスは、「Yahoo!検索対象2020流行語部門賞」(甲第11号証)並びに株式会社小学館が発表する「2020年DIMEトレンド大賞」及び「IT部門賞」(甲第12号証)を受賞した。

(オ)2020年から2021年にかけて、引用標章に係るウェブ会議サービス「Zoom」の利用方法を解説した書籍が複数発行、販売されている(甲第13号証)。

(カ)上記(ア)ないし(オ)からすれば、引用標章は、Zoom Video Communications,Inc.により、2012年頃から現在に至るまで、ウェブ会議サービス、すなわち、「ウェブ会議用コンピュータソフトウェア」及び「ウェブ会議用コンピュータソフトウェアの設計・開発・提供」について継続的に使用され、当該商品及び役務の取引者、需要者の間である程度知られていることがうかがえる。

しかしながら、引用標章を使用した商品及び役務の販売実績や市場シェア、広告宣伝の実績、規模等について、具体的な証拠の提出はなく、また、当審における職権調査によっても、それらを確認できる客観的な資料は見いだせない。

また、引用標章に係るウェブ会議サービスについての調査結果や受賞歴は、いずれもウェブ会議が急速に普及したコロナ禍の2020年ないし2021年頃の一時期を中心としたものであることに加え、上記の調査結果は、調査対象がウェブ会議システム市場全体をどの程度反映したものであるのか明らかではない。

そうすると、刊行物提出書、原審で示した証拠及び当審における職権調査によっては、引用標章の周知性の程度を客観的に推し量ることができないから、本願商標の登録出願時及び審決時において、引用標章が、Zoom Video Communications,Inc.の業務に係る商品及び役務を表すものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。

イ 本願商標と引用標章の類似性の程度

(ア)本願商標

本願商標は、「ZOOM」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、「〈レンズ・カメラ〉をズームさせる」(株式会社大修館書店「ジーニアス英和辞典第6版」)等を意味する平易な英語である。したがって、本願商標は、その構成文字に相応して「ズーム」の称呼を生じ、「〈レンズ・カメラ〉をズームさせる」程の観念を生じる。

(イ)引用標章

引用標章は、「Zoom」の文字よりなるところ、上記(ア)と同様に、その構成文字に相応して「ズーム」の称呼を生じ、「〈レンズ・カメラ〉をズームさせる」程の観念を生じる。

(ウ)本願商標と引用標章の比較

本願商標と引用標章を比較すると、外観においては、構成文字の一部に大文字か小文字かの差異はあるものの、欧文字のつづりを同じくするものであり、両者は、外観上、近似した印象を与えるものである。

また、両者は、「ズーム」の称呼及び「〈レンズ・カメラ〉をズームさせる」程の観念を共通にするものである。

そうすると、本願商標と引用標章は、外観において近似した印象を与え、称呼及び観念を共通にするものであるから、両者の類似性の程度は高い。

ウ 引用標章の独創性

引用標章は、「Zoom」の文字構成よりなるところ、当該文字は、上記イ(ア)のとおり、「〈レンズ・カメラ〉をズームさせる」等を意味し、我が国において一般に親しまれた平易な英語であるから、独創性が高いとはいえない。

エ 本願商標の指定役務と引用標章の使用に係る商品及び役務の関連性並びに役務等の提供者の共通性

本願商標の指定役務中、第36類「研究助成金の給付,慈善のための募金」は、助成金や募金に係る事業の運営等を内容とし、主として、政府機関や財団、非営利団体等によって提供される役務である。また、本願商標の指定役務中、第41類「セミナー・研究会・研修会・講演会・シンポジウムの企画・運営又は開催」は、教育又は文化のためのセミナーの企画等を内容とし、主として、教育機関やイベント会社等によって提供される役務であり、同「映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,楽器の貸与,音響機器の貸与,ビデオカメラ及びビデオテープレコーダーの貸与,録音装置及びビデオ記録装置の貸与,オーディオ装置の貸与,録音又は録画済み記録媒体の貸与」は、映像機器・音響機器等の操作や貸与を内容とするものであり、主として、各機器等を専門に取り扱うレンタル事業者や、音響・映像等のオペレーションを専門とする事業者によって提供される役務である。さらに、本願商標の指定役務中、第42類「技術的な研究,商品の研究・開発に関する情報の提供,情報処理技術の研究,機械器具に関する試験又は研究」は、依頼に基づき製品等に関する試験又は研究を行うものであり、主として、研究機関や受託検査を専門とする事業者等によって提供される役務である。

一方、引用標章は、上記ア(カ)のとおり、「ウェブ会議用コンピュータソフトウェア」に関連する商品及び役務に使用され、これは、一般に、ソフトウェア業界の事業者等によって販売・提供されるものである。

そうすると、本願商標の指定役務と引用標章の使用に係る商品及び役務とは、それぞれの商品又は役務の内容や提供事業者などが明らかに異なり、その役務間又は商品と役務間の関連性及び役務等の提供者の共通性は低いものである。

オ 小括

上記アのとおり、引用標章は、Zoom Video Communications,Inc.の業務に係る「ウェブ会議用コンピュータソフトウェア」及び「ウェブ会議用コンピュータソフトウェアの設計・開発・提供」を表すものとして、当該商品及び役務の取引者、需要者の間にある程度知られているものといえるものの、我が国の需要者等の間に広く認識されているとは認められないものである。また、上記イのとおり、本願商標と引用標章とは、類似するものといえるが、該構成文字は、上記ウのとおり、我が国において一般に親しまれた平易な英語であって、独創性が高い標章といえず、さらに、その役務間又は商品と役務間の関連性及び役務等の提供者の共通性は低いものである。

そうすると、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者・需要者が、引用標章を連想・想起するような事情はなく、Zoom Video Communications,Inc.又は同会社と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのごとく、その出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。

その他、本願商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。

したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(2)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではないから、本願商標が同項同号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。

その他、本願について拒絶の理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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